小国寡民(しょうこくかみん)の意味と由来|老子八十章の原文・書き下し文・現代語訳、理想の村の図解、桃花源記・和光同塵とのちがいをイラストで【故事成語】

小国寡民(しょうこくかみん)の意味と由来|老子八十章の原文・書き下し文・現代語訳、理想の村の図解、桃花源記・和光同塵とのちがいをイラストで【故事成語】

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小国寡民しょうこくかみん

ひとことで言うと

国は小さく、人民は少なく、人々が素朴に満ち足りてくらすこと。老子が理想とした国のすがた。便利な道具も舟も武器もあっても使わず、鶏や犬の声が聞こえるほど近い隣国とも行き来しない、という『老子』八十章から。

読み方しょうこくかみん
意味国が小さく人口が少ないこと。老子が理想とした、素朴で争いのない小さな社会。
出典『老子』八十章「小國寡民,使有什伯之器而不用…鄰國相望,雞犬之聲相聞,民至老死,不相往來」
お話老子が、道具も舟も車も武器も使わず、今のくらしに満足し、隣国とも行き来しない小さな国を理想として描いた
似た言葉桃源郷・ユートピア・無為自然(老子の考え)
反対の言葉富国強兵・大国主義
漢文の句法使役(使A〜)・逆接(雖〜)・否定(無所〜・不相〜)

このページのポイント

  • 「小国寡民」は国は小さく民は少なく、素朴に満ち足りてくらすという、老子の理想の国のすがた
  • 『老子』八十章の原文7文を訓読文で読み、理想の村の図・使わないものと楽しむものの図で分かります
  • 桃花源記(桃源郷)・和光同塵とのちがい、使役「人をして〜しむ」の句法、入試の出方まで

「小国寡民」の意味と読み方

「小国寡民」はしょうこくかみんと読みます。意味は「国は小さく、人民は少なく、人々が素朴に満ち足りてくらすこと」で、中国の思想家・老子が理想とした国(社会)のすがたを表す言葉です。今では、「小さな国」「人口の少ない国」をたとえて言うときにも使われます。

字を見ると、「小国」は小さな国、「寡民」は少ない民(人々)です。「寡」は「寡黙(かもく)」「多寡(たか)」の「寡」で、「少ない」という意味です。「国を小さくし、民を寡なくす」と動詞のように読む読み方もあります。

「小国寡民」を1字ずつ見る小しょう小さい国こくくに寡か少ない民みん人々小国=小さな国寡民=少ない民「国を小さくし、民を寡なくす」とも読む寡=少ない(寡黙・多寡・寡占の「寡」)
小国=小さな国、寡民=少ない民。「寡」は「少ない」という意味の字です

出典は『老子』の八十章です。この章は「小國寡民」の4字で始まり、便利な道具も、舟や車も、武器も使わず、今のくらしに満足し、となりの国とさえ行き来しない――そんなのどかで小さな村のような国を描いています。

うかるくん

うかるくん

国が小さくて人が少ないのが理想? ふつう、国は大きくて強いほうがいいんじゃないですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

そう思うよね。でも老子の生きた時代は、大きな国どうしが土地をうばい合い、戦争ばかりしていた。国を大きくしようとするから人がかり出され、武器がいる。だったらいっそ小さく、少なく、静かにくらせば、争いもなくなる――老子は、みんなと反対の方向から理想を考えたんだ。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○山あいの小さな村のくらしは、老子の言う小国寡民を思わせる。
  • ○小国寡民の理想は、成長ばかりを追う今の社会に、別の幸せの形を問いかけている。
  • ○倫理の授業で、老子が理想とした小国寡民の社会について学んだ。

「小」は「小」の読み方・書き順・部首、「国」は「国」の読み方・書き順・部首、「寡」は「寡」の読み方・書き順・部首、「民」は「民」の読み方・書き順・部首で、読み方と書き順を確かめておきましょう。

絵で読む「小国寡民」のお話

「小国寡民」は、だれかの出来事の話ではなく、老子が理想の国のすがたを言葉で描いたものです。原文に書かれていることを、そのまま村の場面にして4つの絵にしました(村や人物は、原文をもとにした想像の絵です)。

絵で読む「小国寡民」(『老子』八十章の理想の村を描いた4こま)

1小さな国、少ない民舟も車もあるけど、使わなくていい村人荷車(使わない)舟
1小さな村に、家が数けん。川には舟、小屋には荷車がありますが、だれも使いません。「舟も車もあるけど、使わなくていい」。
2縄を結び、食をおいしくああ、おいしい縄で数をおぼえるごはんがおいしい
2文字のかわりに縄を結んで数をおぼえます。ふだんのごはんを「ああ、おいしい」と、心から味わって食べています。
3鶏と犬の声が聞こえる国ざかいコケコッコーワンワンこちらの国の鶏となりの国の犬
3となりの国は見えるほど近く、鶏や犬の鳴き声までたがいに聞こえてきます。
4老子の理想(想像の場面)老いて死ぬまで、たがいに行き来しない小国寡民(国は小さく、民は少なく)
4それでも人々は、年老いて死ぬまでたがいに行き来しない。老子は、これを理想の国「小国寡民」として語りました。

1こま目の舟と車は、原文の「舟輿有りと雖も、之に乗る所無し」です。遠くへ行く必要がないので、乗り物はあっても使いません。2こま目の縄は「人をして復た縄を結びて之を用ゐしむ」。昔、文字がなかったころは、縄の結び目で数や出来事を記録したと伝えられています。3こま目の鶏と犬は「鶏犬の声相聞こゆ」、4こま目は「民老死に至るまで、相往来せず」です。

老子の理想の村(小国寡民)国ざかい①小さな国・少ない民となりの国(見えるほど近い)コケコッコー・ワン④声は聞こえるでも行き来しない②舟・車・武器はあっても使わない縄を結んで記録③今のくらしに満足する甘其食食をおいしく美其服服を美しく安其居安らかに住む楽其俗ならわしを楽しむ
小さな国・使わない道具・今のくらしへの満足・行き来しない隣国。原文がそのまま村の絵になります
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

大事なのは、この村の人たちががまんしているわけではないこと。食べ物をおいしいと思い、服を美しいと思い、住まいに安心し、村のならわしを楽しんでいる。満ち足りているから、外へ出る必要がないんだ。

「小国寡民」の原文・書き下し文・現代語訳

『老子』八十章は短い章なので、ほぼ全部を1文ずつ訓読文で読んでいきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方とルールでくわしく説明しています。

白文(『老子』八十章)小国寡民、使有什伯之器而不用、使民重死而不遠徙。雖有舟輿、無所乗之、雖有甲兵、無所陳之。使人復結縄而用之、甘其食、美其服、安其居、楽其俗。隣国相望、鶏犬之声相聞、民至老死、不相往来。

1文目:小さな国、少ない民

書き下し文小せう国こく寡くわ民みん。

(『老子』八十章)

現代語訳国は小さく、人民は少ない(のがよい)。

ここがポイント4字のまま「小国寡民」と読むのがふつうですが、「国を小さくし民を寡なくす」と、動詞のように読む読み方もあります。「寡」は「少ない」。この4字が章の題のような役目をしています。

2文目:便利な道具があっても使わせない

書き下し文什じふ伯はくの器き有ありて用もちゐざらしむ。

(『老子』八十章)

現代語訳十倍・百倍もの働きをする(便利な)道具があっても、使わないようにさせる。

ここがポイント「使〜(〜しむ)」は「〜させる」という使役の形で、使役の句法(使・令・教・遣)でくわしく説明しています。上下点とレ点を組み合わせた「上レ」がある、少しむずかしい返り点です。「什伯之器」が何をさすかは、便利な道具とする説、兵器(什・伯は軍の人数の単位)とする説などがあります。

3文目:舟や車があっても乗らない

書き下し文舟しう輿よ有ありと雖いへども、之これに乗のる所ところ無なし。

(『老子』八十章)

現代語訳舟や車があっても、それに乗って出かける所がない。

ここがポイント「雖〜(〜と雖も)」は「〜けれども・〜であっても」という逆接の形です(逆接の句法(雖・而・然))。「無所〜(〜する所無し)」は「〜するところがない」という否定で、否定の句法(不・弗・非・無・莫)でまとめています。レ点が3つ続き、下の「之」から順にさかのぼって読みます。原文はこのあと「甲兵有りと雖も、之を陳ぬる所無し(武器があっても、ならべて使う所がない)」と同じ形が続きます。

4文目:縄を結んで使わせる

書き下し文人ひとをして復また縄なはを結むすびて之これを用もちゐしむ。

(『老子』八十章)

現代語訳人々に、もう一度(文字のない昔のように)縄を結んで記録に使わせる。

ここがポイント「使A〜(Aをして〜しむ)」の形。「A」にあたる「人」に「ヲシテ」という送り仮名をつけるのが使役の目じるしです。「而」は読まない置き字で、漢文の置き字(而・於・矣・焉)にまとめています。

5文目:食・服・住まい・ならわしに満足する

書き下し文其その食しよくを甘うましとし、其その服ふくを美びとし、其その居きよに安やすんじ、其その俗ぞくを楽たのしむ。

(『老子』八十章)

現代語訳自分たちの食べ物をおいしいと思い、自分たちの着物を美しいと思い、自分たちの住まいに安心し、自分たちのならわしを楽しむ。

ここがポイント4つとも「動詞+其の+名詞」の同じ形がならぶ対句で、一二点で下の名詞から読みます。「甘し」は「おいしい」という意味の古い言葉です。ぜいたくなものでなく、今あるものに満足していることがポイントです。

6文目:となりの国は見え、鶏と犬の声も聞こえる

書き下し文隣りん国こく相あひ望のぞみ、鶏けい犬けんの声こゑ相あひ聞きこゆ。

(『老子』八十章)

現代語訳となりの国はたがいに見えるほど近く、鶏や犬の鳴き声もたがいに聞こえる。

ここがポイント「相(あひ)」は「たがいに」。返り点はなく、上から順に読めます。鶏と犬の声は、のどかな村のくらしを表す決まった言い方として、のちの詩や文章にもよく使われます。

7文目:老いて死ぬまで行き来しない

書き下し文民たみ老らう死しに至いたるまで、相あひ往わう来らいせず。

(『老子』八十章)

現代語訳人々は年老いて死ぬまで、たがいに行き来することがない。

ここがポイント「不相〜(相〜せず)」は「たがいに〜しない」。行き来しないのは、仲が悪いからではなく、自分の村で満ち足りているからだと読むのがふつうです。
原文で覚える句法4つ使A〜Aをして〜しむAに〜させる使役雖〜〜と雖も〜けれども逆接無所〜〜する所無し〜するところがない否定不相〜相〜せずたがいに〜しない否定
「小国寡民」の原文には、使役・逆接・否定の形がつまっています

原典(『老子』八十章)の本文では

維基文庫(中国語のウィキソース)の『老子』(王弼本)では、八十章は次のようになっています(句読点は維基文庫の本文のとおり)。

『老子』八十章(王弼本)小國寡民,使有什伯之器而不用,使民重死而不遠徙。雖有舟輿,無所乘之;雖有甲兵,無所陳之。使人復結繩而用之,甘其食,美其服,安其居,樂其俗。鄰國相望,雞犬之聲相聞,民至老死,不相往來。
  • 「國」「乘」「繩」「樂」「鄰」「雞」「聲」「來」:昔の字体(旧字体)です。今の字では「国」「乗」「縄」「楽」「隣」「鶏」「声」「来」です。
  • 「使民重死而不遠徙」(民をして死を重んじて遠く徙らざらしむ):人々に命を大切にさせ、遠くへ移り住まないようにさせる、という意味です。「徙」は「うつる」と読みます。
  • 「什伯之器」:「什」は十、「伯」は百で、「十倍・百倍の働きをする道具」と説明されることが多いです。一方で、什・伯を軍の人数の単位と見て「兵器」とする説もあり、はっきりしません。
  • 本によるちがい:『老子』には王弼本のほかに、河上公本や、1973年に見つかった馬王堆(まおうたい)の帛書(はくしょ)などがあり、字や章の順番が少しずつちがいます。このページの訓読は王弼本によっています。
原文を2つに分けると使わないもの什伯之器便利な道具・兵器(諸説)舟輿舟と車甲兵よろいと武器(文字)→縄を結んで記録楽しむもの其の食おいしいと思う其の服美しいと思う其の居安らかに住む其の俗ならわしを楽しむ新しさより「今あるくらし」を大切に
使わないもの(道具・乗り物・武器・文字)と、楽しむもの(食・服・住まい・ならわし)

出典『老子』八十章と話の背景

出典の『老子』は、春秋時代の思想家・老子が書いたと伝えられる本で、『道徳経』とも呼ばれます。全八十一章の中で、八十章は終わりから2番目の章です。老子の考えは、のちの荘子とあわせて「老荘思想」と呼ばれ、儒家の孔子とはちがう道を説きました。諸子百家のちがいは諸子百家(儒家・道家・法家)の考え方で図にしています。

なぜ「小さな国」が理想なのか

当時の大国と、老子の理想争う大国人を集める土地を広げる武器を増やす遠くへ攻めていくとなりの国と争う小国寡民人は少なく国は小さく武器は使わない遠くへ移らない隣国とも争わない※老子の時代は、国どうしの争いが続いた春秋・戦国時代
大きくなろうと争う国々に対して、老子は「小さく・少なく・争わない」国を理想にしました

老子の時代(とされる春秋時代)から戦国時代にかけて、中国では多くの国が争い、強い国が弱い国をのみこんで大きくなっていきました。国を大きくするには、人を集め、土地を広げ、武器をそろえ、遠くへ攻めていく必要があります。そのたびに人々は戦争にかり出されました。

老子は、この流れそのものを疑いました。便利な道具があるから、もっと欲しくなる。乗り物があるから、遠くへ行きたくなる。武器があるから、使いたくなる。だから、道具も乗り物も武器もあっても使わず、今あるくらしに満足すれば、争う理由がなくなる――これが小国寡民の考えです。老子のいちばん大切な考え「無為自然(むいしぜん)」(よけいなことをせず、自然のままにまかせる)を、国の形にしたものだと言えます。

同じ老子の「和光同塵」とのちがい

同じ老子でも、ここがちがう和光同塵一人の生き方才能をひけらかさず世の中にまじる小国寡民国・社会のすがた小さな国で素朴にくらす共通点:大きく・目立とうとしない人なら和光同塵、国なら小国寡民
人の生き方なら和光同塵、国・社会のすがたなら小国寡民

同じ『老子』の和光同塵(わこうどうじん)の意味と由来は、才能をひけらかさず世の中にまじる一人の人の生き方の言葉です。それに対して小国寡民は、国や社会がどうあるべきかを言った言葉です。また、足るを知るの意味(知足者富)は欲の量を、上善は水の如しの意味と由来は争わない心を言います。小国寡民は、そうした考えを全部まとめて「では国はどんな形がよいか」に答えた章だと考えると分かりやすいでしょう。

小国寡民はどう読まれてきたか

小国寡民の章は、昔からいろいろに読まれてきました。ひとつは「文明が進む前の、素朴な時代にもどろう」という考えとして読む見方です。これに対しては、「便利なものを使わないのは現実的でない」「世の中から目をそむけているだけだ」という批判もあります。

一方で、ものがあふれ、遠くへ簡単に行けるようになった今の時代に、あらためて小国寡民を読み直す人もいます。「もっと多く・もっと大きく」だけが幸せなのか、という問いは、二千年以上たった今も古くなっていないからです。どちらの読み方が正しいと決めるより、原文が何を「使わない」と言い、何を「楽しむ」と言っているかをしっかり読むことが、この章を理解する近道です。

「桃花源記」の村とのつながり

小国寡民と「桃花源記」『老子』八十章老子(春秋時代)理想の国の考え国は小さく民は少なく雞犬の声相聞こゆ往来しない桃花源記陶淵明(東晋)漁師が見つけた村世の中からかくれた村雞犬相聞こゆ→「桃源郷」の語源どちらも「争いのない、のどかな村」鶏と犬の声が、平和なくらしのしるし
「鶏と犬の声が聞こえる」のどかな村。老子の理想と陶淵明の物語には共通点があります

小国寡民の村を読むと、陶淵明(とうえんめい)の「桃花源記(とうかげんき)」を思い出す人も多いでしょう。漁師が桃の花の林をぬけた先で、世の中から長いあいだかくれて平和にくらす村を見つける、という物語で、ここから「桃源郷(とうげんきょう)」という言葉が生まれました。この物語にも「雞犬相聞(鶏と犬の声が聞こえる)」という言い方が出てきます。

老子の小国寡民は「こうあるべきだ」という考え、桃花源記は「こんな村があった」という物語という点でちがいますが、どちらも争いのない、のどかな小さな世界を描いています。陶淵明は漢詩の作者としても有名で、漢詩の読み方は漢詩のきまり(絶句・律詩・押韻・対句)で学べます。

「小国寡民」の使い方と例文・似た言葉

「小国寡民」は、老子の理想の社会を指して使うのが基本です。そこから、小さくて人口の少ない国・地域、あるいは大きさを追わず、小さくまとまって満ち足りたくらしをたとえて言うときにも使われます。

  • ○この島は、まさに小国寡民。人々は自分たちの海と畑で満ち足りてくらしている。
  • ○社員十人の会社だが、小国寡民の心で、むりに大きくしようとは考えていない。
  • ○老子の小国寡民は、文明の進歩に対する、もっとも古い問いかけの一つだ。
  • ×このクラスは小国寡民で、人数が少ないから文化祭の出し物ができない。(ただ人数が少なくて困っているだけ。理想の意味がない)
  • ×あの国は小国寡民なので、軍隊を大きくして強くなろうとしている。(小国寡民は、武器を使わない国のこと)

似た言葉・関係の深い言葉

言葉意味小国寡民との関係
無為自然よけいなことをせず、自然のままにまかせる小国寡民のもとにある老子の考え
桃源郷(武陵桃源)世の中からはなれた平和な理想の世界近い(陶淵明の物語から)
ユートピア理想郷。トマス・モアの本の題から近い(西洋の理想の社会)
足るを知る(老子)ほどほどで満足する同じ老子の考え(一人の心がけ)
富国強兵国を豊かにし、軍隊を強くする反対(大きく強くなる)
  • 桃源郷:上で見た「桃花源記」から生まれた言葉で、「この世の理想の世界」を表します。小国寡民と並べて出てくることが多い言葉です。
  • 無為自然:老子の考えの中心です。小国寡民は、無為自然を国の形にあてはめたもの、とよく説明されます。
  • 反対の考え:「富国強兵」のように、国を大きく強くしようとする考えは、小国寡民と正反対の方向です。

英語では、決まった訳はありませんが、"a small state with few people"(人の少ない小さな国)と直訳され、意味としては "a simple, self-sufficient small community"(素朴で自給自足の小さな共同体)や、utopia(理想郷)が近い言葉です。

受験勉強への生かし方

小国寡民の村の人たちは、便利な道具があっても使わないことで、くらしをシンプルに保っていました。受験勉強にも同じことが言えます。参考書をあれこれ買い集め、アプリやスマホで調べものをしているうちに、勉強そのものが進まない――そんな経験はありませんか。

大切なのは、使う道具を少なくしぼって、その中で満ち足りることです。英単語の単語帳を何冊も持たずに1冊を極める方法は英単語の覚え方(単語帳は1冊を極める)に、完璧をめざしすぎずに1冊をやり切る考え方は「完璧を目指すよりまず終わらせろ」の意味と由来にまとめています。また、小さな積み重ねを大切にする「積小為大」の意味(二宮尊徳)も、小さな世界を深く耕す小国寡民の考えと通じます。机の上をシンプルにして、スマホを遠ざける工夫は勉強机の整理整頓(スマホの置き場所と片付け方)が参考になります。

「小国寡民」のよくあるまちがい

  • 「しょうこくかじん」「こぐにかみん」と読む:正しくは「しょうこくかみん」です。「寡」は「カ」、「民」は「ミン」と読みます。
  • 「寡」を「募」「寝」と書く:「寡」はうかんむりの字です。形の似た「募(つのる)」や、同じうかんむりの「寝(ねる)」と書きまちがえないようにしましょう。
  • 「人口が少なくて困っている国」の意味だと思う:小国寡民は、もとは理想の国のすがたです。人が少なくて困っている、という悪い意味で使うのは本来の使い方ではありません。
  • 「文明をすべてすてろ」という意味だと思う:原文は道具や舟・車が「有っても使わない」と言っています。持っていないのではなく、持っていても欲ばって使わない、という点が大切です。
  • 孔子(論語)の言葉だと思う:出典は『老子』八十章です。孔子は、人々を礼で治め、よい政治を行う国を考えた人で、老子とは考え方がちがいます。
サクラちゃん

サクラちゃん

「となりの国と行き来しない」って、ちょっとさびしくないですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

たしかに、今のわたしたちにはそう感じられるね。だからこの章には、昔から賛成も反対もあるんだ。ただ、老子の時代は「行き来」がしばしば戦争や重い税につながった。老子は「外に出ていかなくても幸せな国」を考えたんだね。どう思うかを自分で考えることが、この章を読むいちばんの勉強になるよ。

入試ではこう出る

「小国寡民」は、おもに大学受験の漢文や倫理で出てくる言葉です。中学受験・高校受験の故事成語の問題で出ることは多くありませんが、高校の漢文の授業では『老子』の代表的な章として読まれることがあります。

  • 大学受験(漢文):八十章の本文が出て、「使有什伯之器而不用」の使役の形、「雖有舟輿、無所乗之」の逆接と否定、「甘其食」などの対句の書き下しが問われることがあります。「なぜ行き来しないのか」を説明させる問題も考えられます。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(出題の形と対策)にまとめています。
  • 倫理:老子の思想として「無為自然」「柔弱謙下」と並んで「小国寡民」が出ます。老子=小国寡民、孔子=仁と礼、と結びつけて覚えましょう。
  • 評論文:文明や経済成長を見直す評論で、老子の小国寡民が引かれることがあります。「大きいことがよいことか」という問いを読み取ると、文章の流れがつかみやすくなります。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

小国寡民は「国は小さく、民は少なく」。老子の理想の国で、道具も舟も武器も使わず、鶏犬の声相聞こゆほど近い隣国とも行き来しない。使役の「使A〜(Aをして〜しむ)」も覚えます!

練習問題

やさしい

  1. 「小国寡民」の読み方をひらがなで答えましょう。
    答えと解説を見るしょうこくかみん。「寡」は「少ない」という意味の字です。
  2. 「小国寡民」を理想の国として説いた思想家はだれですか。
    ア 孔子 イ 孟子 ウ 老子 エ 韓非子
    答えと解説を見るウ 老子。出典は『老子』八十章です。

ふつう

  1. 「雖有舟輿、無所乗之」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
    答えと解説を見る舟輿有りと雖も、之に乗る所無し。訳:舟や車があっても、それに乗って出かける所がない。
  2. 「鶏犬之声相聞」の「相」の意味を答えましょう。また、同じように「鶏と犬の声が聞こえる」村を描いた、陶淵明の作品名を答えましょう。
    答えと解説を見る「相」はたがいに。作品は「桃花源記」で、「桃源郷」という言葉のもとになりました。

むずかしい

  1. 「使人復結縄而用之」を書き下し文に直し、使役の形の目じるしを2つ答えましょう。
    答えと解説を見る人をして復た縄を結びて之を用ゐしむ。目じるしは、文の初めの「使」と、させる相手(人)につく送り仮名「ヲシテ」です。
  2. 老子が、便利な道具や舟・車・武器が「有っても使わない」国を理想としたのはなぜですか。当時の社会のようすにふれて説明しましょう。
    答えと解説を見る当時は国どうしが土地をうばい合って争い、人々が戦争にかり出されていた。道具や乗り物や武器を使えば、さらに欲が生まれ、遠くへ出て争うことになる。今あるくらしに満足して使わなければ、争う理由がなくなると考えたから(無為自然の考え)。

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よくある質問

小国寡民とはどういう意味ですか?

小国寡民とは、国は小さく人民は少なく、人々が素朴に満ち足りてくらすという意味で、老子が理想とした国のすがたです。今では、小さくて人口の少ない国や地域をたとえて言うときにも使います。

小国寡民の読み方は何ですか?

「しょうこくかみん」と読みます。「寡」は「カ」と読み、「少ない」という意味の字です。

小国寡民の出典はどこですか?

中国の思想書『老子』の八十章です。章の初めが「小國寡民」の4字で、そのあとに道具や舟・車・武器を使わず、隣国とも行き来しない理想の村のようすが書かれています。

小国寡民の原文と書き下し文は?

代表的な部分は「雖有舟輿、無所乗之」(舟輿有りと雖も、之に乗る所無し)、「隣国相望、鶏犬之声相聞、民至老死、不相往来」(隣国相望み、鶏犬の声相聞こゆ、民老死に至るまで、相往来せず)です。

老子はなぜ小国寡民を理想としたのですか?

老子の時代は国どうしの争いが続き、大きくなろうとする国が人々を戦争にかり出していたからです。道具や乗り物や武器を使わず、今のくらしに満足すれば争う理由がなくなると考えました。無為自然の考えを国の形にしたものと説明されます。

小国寡民と桃源郷の関係は?

どちらも争いのない、のどかな小さな世界を描いています。桃源郷は陶淵明の「桃花源記」から生まれた言葉で、そこにも小国寡民と同じく「鶏と犬の声が聞こえる」という表現があります。

小国寡民と和光同塵のちがいは?

どちらも『老子』の言葉ですが、和光同塵は才能をひけらかさず世の中にまじる一人の人の生き方、小国寡民は小さな国で素朴にくらす国や社会のすがたを言った言葉です。

小国寡民は英語で何と言いますか?

決まった英訳はありませんが、"a small state with few people" と直訳されます。意味としては "a simple, self-sufficient small community" や utopia(理想郷)が近い言葉です。

小国寡民の反対の言葉は?

国を豊かにし軍隊を強くする「富国強兵」のように、国を大きく強くしようとする考えが反対の方向です。小国寡民は武器を使わず、大きくなろうとしない国を理想にしています。

小国寡民は入試でどう出ますか?

おもに大学受験の漢文で『老子』八十章の本文として出て、使役「使A〜」、逆接「雖〜」、否定「無所〜」の書き下しなどが問われます。倫理では老子の思想として、無為自然と並んで出てきます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 原文:『老子』八十章(維基文庫の王弼本で確認)
  • 「什伯之器」の意味:注釈による諸説(便利な道具/兵器)
  • 桃花源記・桃源郷・無為自然:一般的な国語辞典・倫理の説明による
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(教科書で多い読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦(4こまは原文をもとにした想像の場面)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦