天網恢恢疎にして漏らさずの意味と由来|老子の原文・書き下し文・現代語訳、例文・似た言葉をイラストで解説【故事成語】

天網恢恢疎にして漏らさずの意味と由来|老子の原文・書き下し文・現代語訳、例文・似た言葉をイラストで解説【故事成語】

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天網恢恢疎にして漏らさずてんもうかいかいそにしてもらさず

ひとことで言うと

天の網は広くて目があらいようでも、悪いことをした人をのがさない。悪事は必ずむくいを受けるということ。

読み方てんもうかいかいそにしてもらさず
意味天がはりめぐらせた網は、広くて目があらいように見えるが、悪いことをした人をのがすことはない。悪事をはたらけば、いつか必ず天罰を受けるということ。
出典『老子』七十三章「天網恢恢、疏而不失(天網は恢恢、疏にして失はず)」
別の形天網恢恢(四字熟語)・天網恢々疎にして漏らさず
似た言葉因果応報・自業自得・天知る地知る我知る人知る
反対の言葉網呑舟の魚を漏らす・憎まれっ子世にはばかる
英語Heaven's net is wide, but nothing escapes it.
漢文の句法否定(不〜而)・反語(孰か〜ん)・置き字(而・於)

このページのポイント

  • 「天網恢恢疎にして漏らさず」は、悪いことをすれば、いつか必ずむくいを受けること
  • もとは『老子』七十三章の「天網は恢恢、疏にして失はず」。原文は「漏らさず」でなく「失はず」
  • 「天の道」の4つのはたらき、「漏」の形の諸説、句法、入試での出方まで分かります

「天網恢恢疎にして漏らさず」の意味と読み方

「天網恢恢疎にして漏らさず」はてんもうかいかいそにしてもらさずと読みます。意味は「天がはりめぐらせた網は、とても広くて目があらいように見えるが、悪いことをした人をのがすことはない。悪事をはたらけば、いつか必ずむくいを受ける」ということです。前半だけを取り出した「天網恢恢(てんもうかいかい)」の4字でも、同じ意味の四字熟語として使います。

「天網(てんもう)」は天の網、つまり天(自然や世の中の道理)が悪をとらえるためにはっている網のことです。「恢恢(かいかい)」は広くて大きいようす。「疎(そ)」は目があらい・すき間が多いこと。「漏らさず」は取りこぼさないことです。人の目をごまかしたり、法律のすき間をくぐりぬけたりして「うまくいった」と思っても、天の網はちゃんと見ていて、最後には悪事が明らかになる――そんな、昔から多くの人が信じてきた考えを表しています。

言葉を4つに分けると天網てんもう天がはりめぐらせた網恢恢かいかい広くて大きいようす疎にしてそにして目があらいけれども漏らさずもらさず悪い者を取りにがさない→ 悪いことをすれば、いつか必ずむくいを受ける
「天網」「恢恢」「疎にして」「漏らさず」の4つに分けると、意味がよく分かります
うかるくん

うかるくん

「天の網」って、本当に空に網があるんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

もちろん、本物の網があるわけじゃない。天(世の中の道理や自然のはたらき)を、大きな網にたとえたんだ。目があらいのは、悪いことをしてもすぐにはつかまらないことがある、というところまでちゃんと言っているのがすごいところだよ。「すぐにはばれないかもしれない。でも、最後はのがれられない」という意味なんだ。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○十年前の事件の犯人が、とうとうつかまった。天網恢恢疎にして漏らさずだ。
  • ○会社のお金をごまかしていた人が、帳簿の調査で見つかった。まさに天網恢恢だね。
  • ○ずるをしてもいつか必ずばれる。天網恢恢疎にして漏らさずと言うだろう。

「網」は「網」の読み方・書き順・部首、「疎」は「疎」の読み方・書き順・部首、「漏」は「漏」の読み方・書き順・部首で、書き順と読み方を確かめておきましょう。「恢」は常用漢字ではありません。また、同じ字のくり返しの記号「々」を使って「天網恢々」と書くこともあります。

絵で読む「天網恢恢疎にして漏らさず」のたとえ

「天網恢恢疎にして漏らさず」は、「矛盾」や「蛇足」のように一つの出来事から生まれた言葉ではなく、中国の思想家・老子が語った言葉です。そこで、言葉の意味をたとえの場面として4こまの絵にしました(1〜3こまは実際にあった出来事ではありません。4こま目は老子の言葉を場面にした想像の絵です)。

絵で読む「天網恢恢疎にして漏らさず」(1〜3こまはたとえの場面)

1だれも見ていない?だれも見ていないぞずるい男
1たとえの場面です。夜、ずるい男が蔵から米俵をこっそり持ち出します。「だれも見ていないぞ」。でも空には、目に見えない大きな網が広がっています。
2網はすき間だらけ?すき間だらけだ。逃げられるぞ
2天の網は目があらく、すき間だらけに見えます(疎)。男は「これなら逃げられる」と笑って走り去ろうとします。
3のがれられないなぜだ!すき間はあったのに
3ところが、網はふわりと下りてきて、男をすっぽりつつみました。すき間はあっても、悪いことをした人はのがさないのです。
4老子のことば(想像の場面)天の網は何も見のがさない天網恢恢、疎にして失はず
4老子は「天網恢恢、疎にして失はず(天の網は広くて目があらいが、取りにがすことはない)」と語りました(老子の言葉を場面にした想像の絵)。

2こま目のように、天の網はすき間だらけに見えます。だから、悪いことをした人が、しばらくの間は何ごともなく暮らしていることもあります。でも3こま目のように、網は最後には悪い人をとらえます。ここで大事なのは、「疎(目があらい)」なのに「漏らさない」という、ふつうとは逆の組み合わせです。目が細かい網なら何もにがさないのは当たり前ですが、目があらいのににがさない――そこに、人の考えをこえた天のはたらきの大きさがあるのです。

目はあらいのに、のがさない網目があらい=疎でも、のがさない黒い点=悪いことをした人。にげようとしても…最後は必ず網にかかる
天の網は、目があらいのに、どこにいる悪人ものがしません
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

すき間が多いのは、天がいちいち口うるさく見はっているわけではないからなんだ。老子は「天はあらそわず、何も言わないのに、最後はうまくいく」と考えた。その考えが、この網のたとえにこめられているんだよ。

「天網恢恢疎にして漏らさず」の原文・書き下し文・現代語訳

もとの言葉は、『老子』(『道徳経』)の第七十三章の最後の一文です。この章は、「勇気」の使い方の話から始まり、「天の道」のはたらきを述べて、最後に「天網恢恢」でしめくくられます。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方とルールでくわしく説明しています。

白文(『老子』七十三章・全文)勇於敢則殺、勇於不敢則活。此両者、或利或害。天之所悪、孰知其故。是以聖人猶難之。天之道、不争而善勝、不言而善応、不召而自来、繟然而善謀。天網恢恢、疏而不失。

1文目:むこうみずな勇気は命を落とし、ひかえる勇気は命を生かす

書き下し文敢あへてするに勇ゆうなれば則すなはち殺ころされ、敢あへてせざるに勇ゆうなれば則すなはち活いく。

(『老子』七十三章)

現代語訳思い切って何でもやってしまうことに勇ましい人は、命を落とす。あえてやらないことに勇ましい人は、命を保つ。

ここがポイント「於」は読まない置き字で、「敢へてするに」の「に」にはたらきが残っています(置き字(而・於・矣・焉)の一覧と働き)。「則(すなは)ち」は「〜すると、そのときは」の意味で、「則」の読み分けは「而・則・乃・即」の読み方と違いへ。

2文目:天がきらうわけを、だれが知ろうか

書き下し文天てんの悪にくむ所ところは、孰たれか其その故ゆゑを知しらん。

(『老子』七十三章)

現代語訳天がにくむものについて、だれがそのわけを知っていようか(いや、だれにも分からない)。

ここがポイント「孰(たれ)か〜ん」は、「だれが〜か、いや、だれも〜ない」という反語です。疑問と反語の見分け方は反語の句法(豈・安・何・孰「〜んや」)で練習できます。このあと「是を以て聖人すら猶ほ之を難しとす(だから聖人でさえ、これを決めるのはむずかしいとする)」と続きます。

3文目:天の道は、あらそわずに勝ち、言わずにこたえる

書き下し文天てんの道みちは、争あらそはずして善よく勝かち、言いはずして善よく応おうず。

(『老子』七十三章)

現代語訳天の道(自然のはたらき)は、あらそわないのにうまく勝ち、何も言わないのにうまくこたえる。

ここがポイント「不〜而」は「〜ずして」と読み、「〜しないで、それでも」という意味。「而」は置き字です。否定の読み方は否定の句法(不・無・非・莫・弗)でまとめています。「あらそわない」は、上善は水の如し(老子・第八章)の水と同じ、老子の大事な考えです。

4文目:よばなくても来て、ゆったりとはかりごとをする

書き下し文召めさずして自みづから来きたり、繟せん然ぜんとして善よく謀はかる。

(『老子』七十三章)

現代語訳よびよせなくても自分からやって来て、ゆったりとしているのに、うまくはかりごとをめぐらす。

ここがポイント「繟然(せんぜん)」は、ゆったりとして、こせこせしないようす。天は、いそがず、さわがず、それでいてすべてを見通して手を打っている、と言っています。

5文目:天の網は広く、目はあらいが、取りにがさない

書き下し文天てん網もうは恢くわい恢くわい、疏そにして失うしなはず。

(『老子』七十三章)

現代語訳天の網は広々として大きく、その目はあらいけれども、何ひとつ取りにがすことはない。

ここがポイントここが言葉の出どころです。原文は「失はず(不失)」で、今の日本でよく使う「漏らさず」ではありません。「疏」は「疎」と同じ意味の字。「恢恢」の読みは、昔のかなづかいで「くわいくわい」、今は「かいかい」です。
「天の道」の4つのはたらき不争而善勝あらそわずにうまく勝つ不言而善応何も言わずにうまくこたえる不召而自来よばなくても自分からやって来る繟然而善謀ゆったりしていてうまくはかりごとをする天網恢恢、疎にして失はず
「天網恢恢」は、天の道の4つのはたらきをまとめた一句です

原典(王弼本『老子』)の本文では

維基文庫(中国語のウィキソース)の王弼本『道徳経』七十三章の本文では、次のようになっています(句読点は維基文庫の本文のとおり)。

『老子』七十三章の本文勇於敢則殺,勇於不敢則活。此兩者,或利或害。天之所惡,孰知其故?是以聖人猶難之。天之道,不爭而善勝,不言而善應,不召而自來,繟然而善謀。天網恢恢,疏而不失。
  • 「不失」であって「不漏」ではない:もとの『老子』は「疏にして失はず」です。「漏らさず」の形については、下の「出典と背景」でくわしく見ます。
  • 「疏」と「疎」:どちらも「まばら・目があらい」という意味の字で、日本では常用漢字の「疎」を使います。
  • 「両」が「兩」、「争」が「爭」、「応」が「應」など:昔の字体(旧字体)で書かれています。意味は同じです。
原文で覚える句法4つ不〜而〜ずして〜しないで(それでも)否定+置き字孰たれかだれが〜か(いや、だれも〜ない)疑問・反語則すなはち〜すると、そのときは条件於(読まない)「敢に」の「に」を表す置き字
七十三章の原文には、否定と置き字の「不〜而」、反語の「孰」、条件の「則」、置き字の「於」が出てきます

出典『老子』と話の背景

『老子』は、『道徳経(どうとくきょう)』とも呼ばれる中国の古い思想の本で、全部で八十一章あります。書いたのは老子(老聃〈ろうたん〉)とされますが、どんな人だったのか、いつの時代の人なのかには諸説あります。老子の考えは「道家(どうか)」と呼ばれ、人がわざと何かをするより、自然のなりゆきにまかせる(無為自然)ことを大切にしました。孔子・孟子の儒家とのちがいは諸子百家(儒家・道家・法家)の考え方で図にしています。

七十三章で老子が言いたかったのは、もともとは「悪人は必ずつかまる」という教訓だけではありませんでした。前半では、むこうみずに突き進む勇気は身をほろぼし、ひかえめにする勇気は身を生かすと述べています。そして、天の道はあらそわず、しゃべらず、よびよせもせず、ゆったりしているのに、すべてがうまくいく、と続けます。最後の「天網恢恢、疏にして失はず」は、そうした天のはたらきの大きさ・確かさを、網にたとえてまとめたものです。人が細かいきまりをたくさん作って、こせこせと取りしまらなくても、天の道は何ひとつ見のがさない――という考えです。

「失はず」から「漏らさず」へもとの形:『老子』七十三章天網恢恢、疏而不失疎にして失はず(取り失わない)『魏書』任城王澄の上奏(老子を引く)天網恢恢、疏而不漏「漏」の字で引かれている例今の日本の形天網恢恢疎にして漏らさず「天網恢恢」の4字だけでも使う※「漏」に変わった時期・いきさつは、はっきりしない
原文は「失はず」。「漏らさず」の形が広まったいきさつは、はっきりしません

「失はず」が「漏らさず」になったのはいつ?(諸説あり)

今の日本では「疎にして漏らさず」の形がふつうですが、もとの『老子』は「疏にして失はず」です。では、「漏」の形はどこから来たのでしょうか。

確かめられた範囲では、中国の北魏の歴史をしるした『魏書』(北斉の魏収が編んだ歴史書)の任城王澄(にんじょうおうちょう)伝に、任城王の元澄が皇帝に出した意見書の中で、「老聃云ふ」として「法令滋(ますます)彰らかにして、盗賊多く有り」などとならべ、「天網恢恢、疏而不漏」と「漏」の字で引いている所があります。いっぽう、同じ『魏書』の別の巻(術芸伝・張淵の「観象賦」の注)では「疏而不失」と、もとの形で引かれています。

つまり、ずっと昔から「失」と「漏」の両方の形で引かれていたことは分かりますが、どの時代に、なぜ「漏」の形が広まったのかは、はっきりした資料が見つかりません(諸説あり)。意味は「失はず(取り失わない)」も「漏らさず(取りこぼさない)」もほとんど同じなので、日本では、網から「漏れる」というイメージが分かりやすい「漏らさず」の形が定着したと考えられます。中国の後の時代の小説(清の『児女英雄伝』など)にも「天網恢恢、疏而不漏」の形が出てきます。

同じ『老子』のほかの言葉

老子は、力ずくでなくしなやかに、ゆったりと生きることを説きました。同じ『老子』からは、上善は水の如し(老子・第八章)、大器晩成(老子・四十一章)、足るを知る(老子の言葉)、千里の道も一歩から(老子・第六十四章)などの言葉も生まれています。「大器晩成」が「本当に大きなものは、すぐには完成して見えない」と言うように、「天網恢恢」も「天のはたらきは、すぐには見えないが、確かだ」と言っている点で、通じ合っています。

サクラちゃん

サクラちゃん

悪い人がつかまらないまま、一生を終えることもありますよね。それでも「漏らさず」なんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

するどいね。じつは中国でも、昔から「本当に天は悪人を見のがさないのか」という疑問はあったんだ。司馬遷も『史記』の伯夷列伝で「天道是か非か(天の道は正しいのか、まちがっているのか)」となやんでいる。「天網恢恢」は、そうであってほしいという願いと、自分をいましめる言葉として受けつがれてきた、と考えるといいよ。

「天網恢恢疎にして漏らさず」の使い方と例文・似た言葉

「天網恢恢疎にして漏らさず」は、悪いことをした人が、時間がたってからつかまったり、悪事が明らかになったりしたときに使います。また、「悪いことはいつかばれるから、するべきではない」と、自分や人をいましめるときにも使います。少しかたい言葉なので、会話より文章やスピーチ、ニュースの解説などでよく見かけます。

  • ○何年もかくされていた不正が、内部の調査で明らかになった。天網恢恢疎にして漏らさずである。
  • ○ひき逃げの犯人が、防犯カメラの映像からつかまった。天網恢恢とはこのことだ。
  • ○「だれも見ていない」と思っても、天網恢恢疎にして漏らさず。正直に生きよう。
  • ×この漁師の網は目が細かいので、魚を一匹も逃がさない。天網恢恢だ。(本物の網や漁の話ではない)
  • ×彼の知識は広くて、どんな質問にも答えられる。天網恢恢の人だ。(知識の広さをほめる言葉ではない)
天網恢恢疎にして漏らさず似た言葉因果応報自業自得悪事千里天知る地知る我知る人知る反対の言葉網呑舟の魚を漏らす憎まれっ子世にはばかる
似た言葉と反対の言葉

似た言葉

  • 因果応報(いんがおうほう):よい行いにはよいむくいが、悪い行いには悪いむくいがあること。もとは仏教の言葉です。
  • 自業自得(じごうじとく):自分のした悪い行いのむくいを、自分が受けること。
  • 天知る地知る我知る人知る:だれも知らないと思っても、天も地も自分も相手も知っている。悪事は必ずばれる、ということ。『後漢書』楊震伝の話(「四知」)から生まれた言葉です。
  • 悪事千里を走る:悪いうわさは、すぐに遠くまで知れわたる。
  • お天道様(おてんとさま)が見ている:人が見ていなくても、天は見ている。日本でよく言われる言い方です。

反対の言葉

  • 網呑舟(あみどんしゅう)の魚を漏らす:舟をのみこむほどの大きな魚は網をやぶってにげる。大きな悪人ほど、法の網をのがれるというたとえで、「天網恢恢」とは反対の見方です(『史記』酷吏列伝の序の「網漏於呑舟之魚」から)。
  • 憎まれっ子世にはばかる:人からきらわれるような人が、かえって世の中で幅をきかせる。

英語では、"Heaven's net is wide, but nothing escapes it."(天の網は広いが、何ものがれられない)のように訳されます。似た英語のことわざに "Murder will out."(悪事は必ずばれる)や、"The mills of God grind slowly, but they grind exceedingly fine."(神の臼はゆっくり回るが、とても細かくひく=天罰はおそくても必ず来る)があります。

受験勉強への生かし方

受験勉強にも「天網恢恢」はあてはまります。宿題の答えを写したり、分からない問題を分かったふりをして飛ばしたりしても、その場ではだれにも気づかれないかもしれません。でも、ごまかした所は、模試や本番の入試で必ず「穴」となって出てきます。試験は、天の網のように、あなたが本当に分かっているかどうかを最後に確かめるのです。

だからこそ、いちばんの相手は、ごまかしたくなる自分の心です。受験の格言「最大の敵は自分自身だ」の意味は、だれも見ていない所で自分に負けないための考え方をまとめています。実際に、2011年の京都大学などの入試では、試験中に問題をインターネットの質問サイトに投稿するカンニングが起きました(2011年 京大入試カンニング事件(試験中に問題がネットに投稿))。投稿した受験生はその後に特定され、逮捕されています(京大入試カンニング事件の投稿者の逮捕)。「だれにも分からないだろう」と思った不正も、まさに天網恢恢、疎にして漏らさずです。また、試験の当日にルールを守ることも大切です。うっかりでも不正とみなされることがあるので、共通テスト当日の注意22(会場・試験中のルール)や、受験生に買ってはいけないグッズ(試験で使えない文房具・時計)も前もって読んでおきましょう。正直にコツコツ積み上げた力は、天の網にかかるどころか、本番であなたを助けてくれます。

「天網恢恢疎にして漏らさず」のよくあるまちがい

  • 「てんもうかいかい」を「てんあみかいかい」「てんもうけいけい」と読む:正しくは「てんもうかいかい」。「網」は音読みで「もう」です。
  • 「天網快々」「天網解々」と書く:「恢」は「広い・大きい」という意味の字で、「快(こころよい)」や「解(とく)」とは別の字です。「天網恢々」と「々」で書くことはありますが、「快」は使いません。
  • 「疎」を「粗」「祖」と書く:「疎(そ)」は「まばら・目があらい」。「粗(あらい)」も意味は近いですが、この言葉では「疎」と書きます。
  • 「天網恢恢、密にして漏らさず」と言う:目が「細かい(密)」のではなく「あらい(疎)」のがポイント。目があらいのににがさない、というところに意味があります。
  • 悪いことをしていない人に使う:「すべてを見のがさない」という意味だけで、「何でもよく気がつく人」をほめるのに使うのはまちがいです。悪事とそのむくいについて使います。
  • 孔子(論語)の言葉だと思う:出典は『老子』の七十三章です。
うかるくん

うかるくん

書き下し文のテストで「漏らさず」と書いたら、まちがいになりますか?

ミスターT先生

ミスターT先生

白文が「疏而不失」なら、書き下しは「疏にして失はず」だ。白文にない字を書いたら、もちろんバツになる。いっぽう、ことわざとして書くなら「疎にして漏らさず」がふつう。問題文の漢字をよく見て、どちらを聞かれているかを確かめよう。

入試ではこう出る

「天網恢恢疎にして漏らさず」「天網恢恢」は、中学受験の発展的な四字熟語・故事成語から、大学受験の漢文・倫理まで出てくることがある言葉です。

  • 中学受験:むずかしめの四字熟語として、「天網恢恢」の読み、意味を選ぶ問題、「天網□□」の空欄補充などで見かけることがあります。物語文で、悪いことをした人物がむくいを受ける場面の説明に使われることもあります。「因果応報」「自業自得」と意味の近い言葉としてセットで覚えておくと安心です。
  • 高校受験:四字熟語・故事成語の意味の問題、「天網恢恢」の漢字の書き取り(網・疎・漏)、似た意味の言葉を選ぶ問題がよく問われます。漢文の対策は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:『老子』の思想(無為自然・柔弱謙下)を問う倫理の問題や、漢文で「孰知其故」の反語、「不争而善勝」の読み方などが問われます。原文が「疏而不失」であることも、知っておくと差がつきます。共通テストの漢文の対策は共通テストの漢文(句法と時間配分)へ。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「天網恢恢」は「目があらい(疎)のに、のがさない」。「密」とまちがえないように、「疎」の字をしっかり覚えておきます!

練習問題

やさしい

  1. 「天網恢恢疎にして漏らさず」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 天気が悪いと、魚がとれない イ 悪いことをすれば、いつか必ずむくいを受ける ウ 知識が広く、何でも知っている エ 目のあらい網では何もとれない
    答えと解説を見るイ。天の網は目があらいようでも、悪い人をのがさない、という意味です。
  2. 「天網恢恢」の読み方をひらがなで答えましょう。
    答えと解説を見るてんもうかいかい。「網」は音読みで「もう」と読みます。

ふつう

  1. 「天網恢恢疎にして漏らさず」と似た意味の四字熟語を、次から選びましょう。
    ア 大器晩成 イ 因果応報 ウ 温故知新 エ 一石二鳥
    答えと解説を見るイ。「因果応報」は、行いに応じたむくいがあること。悪い行いには悪いむくいがある、という点で似ています。
  2. 「天網恢恢、疏而不失。」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る天網は恢恢、疏にして失はず。「不失」は下から返って「失はず」と読みます。「而」は読まない置き字です。

むずかしい

  1. 「天之所悪、孰知其故。」を書き下し文に直し、「孰」の働きを説明しましょう。
    答えと解説を見る天の悪む所は、孰か其の故を知らん。「孰か〜ん」は「だれが〜か、いや、だれも〜ない」という反語です。
  2. 『老子』七十三章の「天網恢恢、疏而不失」で、網の目が「疎(あらい)」とわざわざ言っているのはなぜですか。章全体の内容をふまえて説明しましょう。
    答えと解説を見る天の道は、あらそわず、言わず、よびよせもせず、ゆったりしているのに、すべてがうまくいくものだからです。細かく見はったり取りしまったりしなくても(目があらくても)、天のはたらきは何ひとつ取りにがさない、という天の大きさ・確かさを表しています。

「天網恢恢疎にして漏らさず」とあわせて覚えたい関連ページ

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よくある質問

天網恢恢疎にして漏らさずとはどういう意味ですか?

天網恢恢疎にして漏らさずとは、悪いことをすれば、いつか必ずむくいを受けるという意味です。天の網は広くて目があらいように見えても、悪いことをした人をのがすことはない、というたとえです。

天網恢恢疎にして漏らさずの読み方は何ですか?

「てんもうかいかいそにしてもらさず」と読みます。前半の「天網恢恢」だけなら「てんもうかいかい」です。

天網恢恢疎にして漏らさずの出典・由来は何ですか?

出典は中国の思想家・老子の言葉をまとめた『老子』(道徳経)の七十三章です。天の道は、あらそわず、言わず、ゆったりしているのに、すべてを見通している、という話の最後にこの一句があります。

天網恢恢疎にして漏らさずの原文と書き下し文は?

原文は「天網恢恢、疏而不失」で、書き下し文は「天網は恢恢、疏にして失はず」です。もとの『老子』は「漏らさず」ではなく「失はず」で、「漏」の形は『魏書』任城王澄伝などに見えますが、広まったいきさつははっきりしません。

「恢恢」「疎」とはどういう意味ですか?

「恢恢(かいかい)」は広くて大きいようす、「疎(そ)」は目があらい・すき間が多いという意味です。「目があらいのに、何ものがさない」という組み合わせに、この言葉の面白さがあります。

天網恢恢疎にして漏らさずの例文を教えてください。

「十年前の事件の犯人が、とうとうつかまった。天網恢恢疎にして漏らさずだ」のように使います。「悪いことはいつかばれる」と人や自分をいましめるときにも使います。

天網恢恢疎にして漏らさずに似た言葉・反対の言葉は?

似た言葉は「因果応報」「自業自得」「天知る地知る我知る人知る」などです。反対の見方の言葉には、大きな悪人ほど法の網をのがれるという「網呑舟の魚を漏らす」があります。

天網恢恢疎にして漏らさずは英語で何と言いますか?

"Heaven's net is wide, but nothing escapes it."(天の網は広いが、何ものがれられない)のように訳されます。似た英語のことわざに "Murder will out."(悪事は必ずばれる)があります。

天網恢恢疎にして漏らさずはビジネスや日常で使えますか?

はい、不正や悪事が明らかになったときの感想や、「ずるはいつかばれる」といういましめとして使えます。ただし、人を責める強い言葉なので、相手を名指しして使うときは場面に気をつけましょう。

天網恢恢疎にして漏らさずは入試でどう出ますか?

中学受験・高校受験では「天網恢恢」の読みや意味、「因果応報」など似た言葉を選ぶ問題で出ることがあります。大学受験では、『老子』の思想や、七十三章の「孰知其故」の反語、「不争而善勝」の読み方が問われます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 原文:『老子』(道徳経)七十三章(王弼本、維基文庫の本文で確認)
  • 『魏書』任城王澄伝(巻十九中)・術芸伝(巻九十一、張淵「観象賦」の注)の引用の形(維基文庫の本文で確認)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(教科書で多い読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦