三寸の舌(さんずんのした)の意味と由来|毛遂と平原君「三寸の舌を以て百万の師よりも彊し」の原文・書き下し文・現代語訳、舌先三寸とのちがい・例文をイラストで【故事成語】

三寸の舌(さんずんのした)の意味と由来|毛遂と平原君「三寸の舌を以て百万の師よりも彊し」の原文・書き下し文・現代語訳、舌先三寸とのちがい・例文をイラストで【故事成語】

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三寸の舌さんずんのした

ひとことで言うと

弁舌(ことばで人を動かす力)のこと。話し方がたくみなことのたとえ。平原君が毛遂を「三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し」とほめたことから。

読み方さんずんのした
意味弁舌。ことばで人を動かす力。話し方がたくみなことのたとえ。「三寸の舌をふるう」の形でよく使う。
出典『史記』平原君虞卿列伝「毛先生以三寸之舌,彊於百萬之師(毛先生三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し)」
お話秦に都を囲まれた趙のため、毛遂が楚王を弁舌だけで説き伏せて同盟(合従)を結ばせ、平原君が「その舌は百万の軍より強い」とほめた
似た言葉弁舌さわやか・立て板に水・ペンは剣よりも強し・合従連衡
反対の言葉舌先三寸(口先だけ)・口は禍の門・口下手
漢文の句法比較(A於B)・使役(使A〜)・以て(以の用法)・否定(不敢)

このページのポイント

  • 「三寸の舌」は、弁舌(ことばで人を動かす力)のこと。小さな舌が百万の軍より強い、というたとえ
  • もとは『史記』平原君虞卿列伝。平原君が毛遂を「三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し」とほめた
  • 三寸の長さの図解、平原君の2つのほめ言葉、張良・張儀の「舌」、舌先三寸とのちがい、入試の出方まで分かります

「三寸の舌」の意味と読み方

「三寸の舌」はさんずんのしたと読みます。意味は「弁舌(話す力・ことばで人を動かす力)のこと。また、話し方がたくみなことのたとえ」です。「三寸の舌をふるう(弁舌をふるう)」「三寸の舌で説き伏せる」のように使います。

もとになったのは、中国の歴史書『史記』平原君虞卿列伝(へいげんくんぐけいれつでん)です。趙の平原君が、楚の王を説き伏せた家来の毛遂を「三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し(三寸の舌で、百万の軍隊よりも強い)」とほめたことから生まれました。毛遂は、嚢中の錐の意味と由来(毛遂の故事)や毛遂自薦の意味と由来にも出てくる人物です。

「三寸」はどれくらいの長さ?古代中国(戦国〜漢)の一寸=約2.3cm一寸一寸一寸三寸=約7cm日本の昔の一寸=約3cm一寸一寸一寸三寸=約9cm舌=三寸ほど小さな舌が百万の軍より強い=ことばの力(長さはおよその目安。時代によって少しずつちがいます)
「三寸」は舌の長さくらい。そんな小さな舌が、百万の軍隊よりも強い力を持つ、というたとえです
うかるくん

うかるくん

舌の長さが「三寸」なんですか? ほめ言葉には聞こえないんですけど……。

ミスターT先生

ミスターT先生

「三寸」は舌の長さくらいの、ほんの小さなものを表しているんだ。古代中国の一寸は約2.3cmだから、三寸は7cmほど。そんなちっぽけな舌(ことば)が、「百万の師(百万の軍隊)」よりも強い――この大きさの差が、ほめ言葉のポイントなんだよ。剣や兵ではなく、ことばだけで大国を動かしたことへの、最大級のほめ言葉だね。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○交渉役の彼は三寸の舌をふるって、反対していた相手を説き伏せた。
  • ○一人の外交官の三寸の舌が、二つの国の争いを止めた。
  • ○武器を持たない彼女の武器は、三寸の舌だった。

「三」は「三」の読み方・書き順・部首、「寸」は「寸」の読み方・書き順・部首、「舌」は「舌」の読み方・書き順・部首で、読み方と書き順を確かめておきましょう。「寸」は長さの単位で、「寸法」「一寸先は闇」の「寸」です。「三寸」は「さんずん」とにごって読みます。

絵で読む「三寸の舌」のお話

お話の舞台は、今から2300年ほど前、中国の戦国時代の終わりごろです。西の秦が大きく力をのばし、ほかの国々をおびやかしていました。趙は長平(ちょうへい)の戦いで秦に大敗し、そのあと都の邯鄲を秦の大軍に囲まれてしまいます。趙が助かる道は、南の大国・楚と手を結ぶ「合従(がっしょう)」しかありませんでした。

絵で読む「三寸の舌」(『史記』平原君虞卿列伝の4こま)

1秦が邯鄲を囲む趙秦秦楚に助けを求めよう邯鄲(趙の都)
1戦国時代の終わりごろ、強国の秦(しん)の大軍が、趙(ちょう)の都・邯鄲(かんたん)を囲みました。趙の王族の平原君(へいげんくん)は、南の大国・楚(そ)に助けを求めに行くことになります。
2毛遂の弁舌楚王毛遂利と害白起は小僧楚の恥合従は楚のため。趙のためではありません
2平原君の一行に加わった毛遂(もうすい)は、話がまとまらない楚王の前に進み出て、「合従(がっしょう)は楚のためで、趙のためではありません」と、ことばの力で楚王を説き伏せました。
3楚の援軍が出発楚楚趙邯鄲へ趙を救いに向かうぞ!
3こうして楚と趙の同盟(合従)が結ばれ、楚は趙を救うために軍を送り出しました。一人の弁舌が、大国の軍隊を動かしたのです。
4舌は軍より強い三寸の舌百万の師三寸の舌は百万の師より彊しことばの力が、軍隊よりも強い
4趙に帰った平原君は、毛遂をこうほめました。「毛先生は三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し(毛先生は、わずか三寸の舌で、百万の軍隊よりも強い力を出した)」。

2こま目の毛遂の説得は、とても大胆なものでした。剣のつかに手をかけて階段を上り、「今、十歩の内では、王は楚の大軍をたのむことはできません。王のお命は、この遂の手の中にあります」と言ったうえで、秦の将軍・白起(はっき)について「白起は小豎子(しょうじゅし=小僧)にすぎないのに、楚の都を攻め落とし、王の先祖の墓まではずかしめた。趙でさえ恥と思うのに、王は恥とお思いにならないのか」と、楚王のほこりにうったえました。そして「合従は楚のためで、趙のためではない」としめくくったのです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

毛遂の弁舌のすごさは、相手の立場で話したところにある。「趙を助けてください」とお願いするのではなく、「これは楚の得になる話だ」「楚の恥をすすぐ話だ」と、楚王の心に届くことばを選んだんだ。これが「三寸の舌」の中身だよ。

毛遂の「三寸の舌」の3つの作戦

毛遂の説得を整理すると、短いことばの中に3つの作戦が入っていることが分かります。

  1. 今の状況に気づかせる:「十歩の内では、楚の大軍もたのめない」。王のまわりの兵の数ではなく、目の前の一人のことばに向き合わせました。
  2. 相手のほこりにうったえる:「白起のような小僧に、楚は都を奪われ、先祖をはずかしめられた」。楚王が本当は気にしていたことを、はっきりことばにしました。
  3. 相手の得を示す:「合従は楚のためで、趙のためではない」。お願いではなく、楚にとっての利益として話をまとめました。

この3つは、今の交渉やスピーチ、面接でもそのまま使える考え方です。「三寸の舌」とは、ただ口がうまいことではなく、相手の心が動くことばを選ぶ力なのです。

4こま目のほめ言葉の前に、平原君は「勝(わたし)は二度と、人物を見分けるなどとは言わない」と言っています。千人もの人物を見てきた自分が、すぐそばにいた毛遂の才能を見落としていた、と反省したのです。そのうえで毛遂を、いちばん上のお客(上客)としてあつかいました。

平原君の2つのほめ言葉1趙をして九鼎大呂よりも重からしむ一度楚へ行っただけで、趙の重みを増した趙の重み>九鼎大呂(国宝)2三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し弁舌で、百万の軍隊よりも強い力を出した三寸の舌>百万の師(軍隊)
平原君のほめ言葉は2つ。どちらも「BよりもA」とくらべる形です

「三寸の舌」の原文・書き下し文・現代語訳

もとになった文章は、『史記』平原君虞卿列伝にあります。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう(書き下し文は読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方とルールでくわしく説明しています。

白文(『史記』平原君虞卿列伝)勝不敢復相士。…毛先生一至楚、而使趙重於九鼎大呂。毛先生以三寸之舌、彊於百万之師。勝不敢復相士。

1文目:勝敢へて復た士を相せず

書き下し文勝しよう敢あへて復また士しを相さうせず。

(『史記』平原君虞卿列伝(趙に帰った平原君の言葉))

現代語訳わたし(勝)は、もう二度と人物を見分けるなどとは言いません。

ここがポイント「勝」は平原君の名前(趙勝)で、自分のことを名前で呼んでいます。「不敢〜(敢へて〜せず)」は「決して〜しない・〜する気はない」という強い打ち消しで、否定の句法(不・弗・非・無・莫)でまとめています。「相す」は人相を見る、つまり人物を見分けることです。

2文目:趙をして九鼎大呂よりも重からしむ

書き下し文毛もう先せん生せい一ひとたび楚そに至いたりて、趙てうをして九きう鼎てい大たい呂りよよりも重おもからしむ。

(『史記』平原君虞卿列伝)

現代語訳毛先生は一度楚へ行っただけで、趙の(国の)重みを、九鼎や大呂(国の宝)よりも重くした。

ここがポイント「使A〜(Aをして〜しむ)」は「Aに〜させる」という使役の句法(使・令・遣・教)です。「九鼎」は夏の禹王が作ったと伝えられる九つの鼎(かなえ)、「大呂」は周の大きな鐘で、どちらも国の宝。鼎については鼎の軽重を問うの意味と由来(鼎の図解)でくわしく説明しています。

3文目:三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し

書き下し文毛もう先せん生せい三さん寸ずんの舌したを以もつて、百ひゃく万まんの師しよりも彊つよし。

(『史記』平原君虞卿列伝)

現代語訳毛先生は、三寸の舌(弁舌)によって、百万の軍隊よりも強い(力を発揮した)。

ここがポイントここが「三寸の舌」のもとの文です。「以A(Aを以て)」は「Aによって・Aで」と手段を表す形で、「以」の読み方と用法(以て・以為)で整理しています。「A於B(BよりもA)」は比較の句法(於・不如・莫如)。「師(し)」はここでは「先生」ではなく「軍隊」です。
比べる形「A於B」=BよりもA彊A(つよし)於置き字百萬之師B(百万の軍隊)百万の師よりも彊し「於」は読まないが、送り仮名「よりも」で比べる同じ形:「趙をして九鼎大呂よりも重からしむ」
「於」は読まない置き字。でも送り仮名「よりも」で、比べる意味をしっかり表します

「三寸の舌」は張良も使った

『史記』には、もう一人「三寸の舌」を口にした人がいます。漢の劉邦の軍師・張良(ちょうりょう)です。天下が定まったあと、張良は自分の一生をふり返ってこう言いました(『史記』留侯世家)。

張良:三寸の舌を以て帝者の師と為る

書き下し文今いま三さん寸ずんの舌したを以もつて帝てい者しやの師しと為なる。

(『史記』留侯世家(張良の言葉))

現代語訳今、(わたしは)三寸の舌(弁舌)によって、皇帝の先生(相談役)となった。

ここがポイントここの「師」は「先生・相談役」の意味で、上の「百万の師(軍隊)」とはちがいます。張良はこのあと「布衣(ふい=無位無官の人)としては、これ以上ない出世で、もう十分だ。俗世のことを捨てて、仙人の赤松子(せきしょうし)について行きたい」と続けました。

「舌さえあれば」と言った張儀

ことばで国を動かした人の代表が、戦国時代の張儀(ちょうぎ)です。若いころ、楚の宰相の宝の璧(へき)を盗んだと疑われ、むちで何百回も打たれました。妻に「あなたが書物を読んで遊説(ゆうぜい)などしなければ、こんな目にあわなかったのに」と言われると、張儀はこう返しました(『史記』張儀列伝)。

張儀:吾が舌を視よ、尚ほ在りや不や

書き下し文吾わが舌したを視みよ、尚なほ在ありや不いなや。

(『史記』張儀列伝)

現代語訳わたしの舌を見てくれ。まだあるか、ないか。

ここがポイント妻が笑って「舌はありますよ」と答えると、張儀は「足れり(それで十分だ)」と言いました。「〜や不や」は「〜か、どうか」とたずねる形で、疑問の句法(乎・哉・何・〜や不や)のひとつです。舌(ことば)さえあれば、まだ何でもできる、という自信の言葉です。

原典(『史記』平原君虞卿列伝)の本文では

維基文庫(中国語のウィキソース)の『史記』平原君虞卿列伝では、平原君の言葉は次のようになっています(句読点は維基文庫の本文のとおり)。

『史記』平原君虞卿列伝の本文(一部)平原君已定從而歸,歸至於趙,曰:「勝不敢復相士。勝相士多者千人,寡者百數,自以爲不失天下之士,今乃於毛先生而失之也。毛先生一至楚,而使趙重於九鼎大呂。毛先生以三寸之舌,彊於百萬之師。勝不敢復相士。」遂以爲上客。
  • 「勝相士多者千人,寡者百數」:わたしが人物を見てきた数は、多いときは千人、少ないときでも百人単位だった。
  • 「今乃於毛先生而失之也」:それなのに、毛先生については見落としていた。
  • 「彊」:「強」と同じ意味の字です。「萬」「爲」は「万」「為」の昔の字体です。
  • 「遂以爲上客」:そこで毛遂をいちばん上の客(上客)とした。

出典『史記』と話の背景

『史記』は、前漢の司馬遷(しばせん)が書いた歴史書です。平原君虞卿列伝は、趙の王族・平原君(名は趙勝)と、趙の宰相をつとめた虞卿(ぐけい)の伝記を合わせた巻です。平原君は、斉の孟嘗君(もうしょうくん)・魏の信陵君(しんりょうくん)・楚の春申君(しゅんしんくん)とならぶ「戦国四君」のひとりで、何千人もの食客(しょっかく=屋敷に養っている人材)をかかえていました。孟嘗君の食客の話は鶏鳴狗盗の意味と由来(孟嘗君と食客)で読めます。

戦国時代の国と「合従」秦趙燕魏斉韓楚合従(たて)六国が組んで秦に対抗いちばん強い国(位置はおおよそ。毛遂は趙と楚を結ばせた)
強い秦に、ほかの国々がたてにつながって対抗するのが「合従」です

「合従」と「連衡」――ことばで国が動いた時代

戦国時代は、合従連衡(がっしょうれんこう)の意味の時代でした。「合従」は、秦以外の国々が南北(たて)に手を結んで秦に対抗する作戦で、蘇秦(そしん)が説いたとされます。「連衡」は、それぞれの国が秦と東西(よこ)に手を結ぶ作戦で、張儀が説きました。この時代には、国から国へ旅をして王たちを説得する「遊説家(縦横家)」が活躍しました。蘇秦が韓の王に「大国の牛のしりになるより、小国の鶏の口になれ」と説いた言葉が鶏口牛後の意味と由来(蘇秦の弁舌)です。

ことばの力で活躍した人たち蘇秦六国の合従をまとめる「鶏口となるも牛後となるなかれ」張儀秦のために連衡を説く「吾が舌を視よ、尚ほ在りや不や」毛遂楚王を説き、合従を結ばせる「三寸の舌は百万の師より彊し」張良劉邦の作戦を立てた軍師「三寸の舌を以て帝者の師と為る」(どれも『史記』に書かれた言葉)
戦国時代から漢のはじめは、ことばの力で歴史を動かした人が次々に現れました

毛遂も、こうした「ことばの時代」の人でした。武器を持った兵が百万いても動かせなかった楚王を、毛遂は一人で動かしました。そして楚は春申君に兵を率いさせて、趙を救いに向かわせます。魏の信陵君の軍も救援に向かい、やがて秦の軍は邯鄲の囲みをといて引き上げました。「三寸の舌は百万の師より彊し」は、大げさなお世辞ではなく、実際に起きたことをたたえた言葉だったのです。

嚢中の錐・毛遂自薦との書き分け

毛遂の話から生まれた3つの言葉嚢中の錐出発の前(平原君の屋敷)才能は自然に表れる、というたとえ毛遂自薦出発の前(自分から名乗り出る)自分で自分を推薦する三寸の舌帰国のあと(平原君のほめ言葉)ことば(弁舌)が軍より強い
同じ毛遂の話でも、場面によって3つの言葉に分かれます

毛遂の話からは、3つの言葉が生まれています。出発の前、二十人目に名乗り出た毛遂に、平原君が「才能のある人は袋の中の錐(きり)のように、すぐ先が出てくるものだ」と言ったのが嚢中の錐(のうちゅうのきり)の意味。自分から名乗り出たことが毛遂自薦(もうすいじせん)の意味。そして、楚から帰ったあとの平原君のほめ言葉が「三寸の舌」です。「才能」「名乗り出る勇気」「ことばの力」と、注目するところがちがいます。

「三寸の舌」の使い方と例文・似た言葉

「三寸の舌」は、弁舌の力・ことばで人を動かす力を表すときに使います。「三寸の舌をふるう」「三寸の舌で〜を説き伏せる」「三寸の舌にかかる」のような形が多く、ややかたい書き言葉です。交渉・外交・説得・弁論など、「ことばで勝負する場面」にぴったりです。

  • ○社長は三寸の舌をふるい、大口の取引をまとめてきた。
  • ○武力ではなく三寸の舌で国を守るのが、外交官の仕事だ。
  • ○弁論大会で、彼女は三寸の舌だけで会場じゅうを味方につけた。
  • ○この交渉がうまくいくかどうかは、代表の三寸の舌にかかっている。
  • ×彼は口先だけで中身がない。まさに三寸の舌だ。(口先だけを悪く言うのは「舌先三寸」)
  • ×ソフトクリームを三寸の舌でなめた。(本当の舌の長さの話ではない)

日本語には「舌」を使った慣用句がたくさんあります。「舌を巻く(ひどく感心する)」「舌つづみを打つ(おいしく食べる)」「二枚舌(うそをつく)」「舌の根の乾かぬうち(言ったすぐあとで)」などです。この中で「三寸の舌」は、ことばの力をほめる数少ない言い方です。まとめて覚えておくと、慣用句の問題で役に立ちます。

似た言葉

  • 弁舌さわやか:話し方がはっきりしていて、聞いていて気持ちがよいこと。
  • 立て板に水:すらすらと、よどみなく話すこと。
  • 能弁(のうべん)・雄弁(ゆうべん):話がうまく、力強いこと。
  • ペンは剣よりも強し:ことば(文章)の力は、武力よりも強い、という英語のことわざから。「三寸の舌は百万の師より彊し」と考え方がよく似ています。
  • 合従連衡(がっしょうれんこう)の意味:毛遂や蘇秦・張儀が活躍した、ことばで国を結ぶ外交の時代を表す四字熟語です。
「三寸の舌」と「舌先三寸」三寸の舌○弁舌の力そのものことばで人や国を動かすほめる意味三寸の舌をふるって相手を説き伏せる舌先三寸×口先だけ心がこもっていない悪い意味舌先三寸で人をまるめこむ
同じ「三寸」でも、「三寸の舌」はほめ言葉、「舌先三寸」は悪い意味です
三寸の舌のなかまの言葉三寸の舌弁舌の力弁舌さわやか立て板に水能弁ことば>武力ペンは剣よりも強し(英語のことわざ)反対・くらべたい言葉舌先三寸(口先だけ)口は禍の門言わぬが花
「弁舌の力」のなかまと、くらべたい言葉

反対の言葉・くらべたい言葉

  • 舌先三寸(したさきさんずん):口先だけで、心がこもっていないこと。「舌先三寸で人をまるめこむ」のように悪い意味で使います。
  • 口は禍の門(くちはわざわいのかど):うっかり言ったことばが、わざわいのもとになる、という戒め。
  • 言わぬが花:はっきり言わないほうが、かえって味わいがあってよい、ということ。
  • 口下手(くちべた)・訥弁(とつべん):話すのがうまくないこと。

英語では、"a silver tongue"(銀の舌=弁が立つこと)や "silver-tongued"(弁舌さわやかな)が近い言い方です。原文の意味をそのまま言うなら、"His tongue was mightier than an army of a million."(彼の舌は百万の軍よりも強かった)となります。

受験勉強への生かし方

受験でも「三寸の舌」、つまりことばで伝える力はとても大切です。面接や小論文、国語の記述問題は、まさに「ことばで相手(採点者)を動かす」場面です。毛遂の弁舌のポイントは、相手の立場に立って、相手にとっての意味を話したことでした。記述問題でも、「問われていることに、相手(採点者)が分かることばで答える」ことが一番の近道です。理系の受験生でも国語の力が合否を分けることは、理系でも京大は国語が要る(理系の国語の勉強法)でくわしく説明しています。

また、福沢諭吉は『学問のすゝめ』の中で、学んだことを人に伝える「演説(スピーチ)」の大切さも説きました。学問は覚えて終わりではなく、ことばにして人に伝えてこそ力になります。「天は人の上に人を造らず」の本当の意味(学問のすゝめ)もあわせて読んでみてください。友だちに解き方を説明してみる勉強法は、自分の「三寸の舌」をきたえる練習にもなります。心に残る短いことばを集めた受験の格言・名言100選(意味・出典つき)も、ことばの力を感じられる記事です。

「三寸の舌」のよくあるまちがい

  • 「さんすんのした」と読む:正しくは「さんずんのした」。「寸」は「ずん」とにごります。
  • 「舌先三寸」と同じ意味だと思う:「三寸の舌」は弁舌の力そのもので、毛遂をたたえたほめ言葉がもとです。「舌先三寸」は口先だけで心がこもっていないという悪い意味です。
  • 毛遂が自分で言った言葉だと思う:「三寸の舌は百万の師より彊し」と言ったのは平原君です。毛遂をほめた言葉です。
  • 「百万の師」を「百万人の先生」と訳す:ここの「師」は軍隊です。ただし張良の「帝者の師」の「師」は「先生・相談役」なので、文の中で見分けます。
  • 「三尺の舌」「三寸の口」と書く:「三寸の舌」です。「三尺」は剣の長さを言うときなどに使う別の言い方です。
サクラちゃん

サクラちゃん

「三寸の舌」と「舌先三寸」、どっちがいい意味だったか、すぐ忘れちゃいそうです……。

ミスターT先生

ミスターT先生

「舌が先(舌先三寸)」は、心より先に舌が動く――つまり口先だけ、と覚えよう。「三寸の舌」は、毛遂の舌が百万の軍に勝った話だから、ほめ言葉。「舌先は口先」と語呂で覚えておけば、まちがえないよ。

入試ではこう出る

「三寸の舌」は、大学受験の漢文では毛遂の話の一部として、中学受験・高校受験の国語では体の部分を使った慣用句・ことわざの問題で、「舌先三寸」などとあわせて出会うことがある言葉です。

  • 中学受験・高校受験:「舌」を使った慣用句(舌を巻く・舌つづみを打つ・二枚舌・舌先三寸など)の意味を選ぶ問題で、「三寸の舌」と「舌先三寸」の意味のちがいがねらわれることがあります。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験の漢文:「以三寸之舌,彊於百萬之師」の書き下し文、「師」の意味(軍隊)、「A於B」の比較、「使趙重於九鼎大呂」の使役が問われます。「平原君は毛遂のどんな点をほめたのか」を説明させる問題もあります。
  • 同じ話の言葉との区別:嚢中の錐・毛遂自薦・三寸の舌のどれが、どの場面の言葉かを問う問題もあります。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「三寸の舌」は弁舌の力! 平原君が毛遂を「三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し」とほめました。「師」は軍隊、「舌先三寸」は口先だけの悪い意味です!

練習問題

やさしい

  1. 「三寸の舌」の読み方を、ひらがなで答えましょう。
    答えと解説を見るさんずんのした。「寸」は「ずん」とにごります。
  2. 「三寸の舌」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 口先だけで心がこもっていないこと イ 弁舌の力・話し方がたくみなこと ウ 食べ物の味にうるさいこと エ ひどくおどろくこと
    答えと解説を見るイ。アは「舌先三寸」、エは「舌を巻く」の意味です。

ふつう

  1. 「毛先生以三寸之舌、彊於百万之師」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る毛先生三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し。
  2. 「百万の師」の「師」と、張良の「帝者の師」の「師」は、それぞれどんな意味ですか。
    答えと解説を見る「百万の師」の「師」は軍隊、「帝者の師」の「師」は先生・相談役です。

むずかしい

  1. 「使趙重於九鼎大呂」を書き下し文に直し、使われている句法を2つ答えましょう。
    答えと解説を見る趙をして九鼎大呂よりも重からしむ。句法は使役(使A〜=Aをして〜しむ)と比較(A於B=BよりもA)です。
  2. 平原君は、毛遂の何をどのようにほめましたか。「三寸の舌」という言葉を使って説明しましょう。
    答えと解説を見る毛遂が弁舌(三寸の舌)だけで楚王を説き伏せ、合従を成功させたことを、「その舌は百万の軍隊よりも強い」とほめました。

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よくある質問

三寸の舌とはどういう意味ですか?

三寸の舌とは、弁舌、つまりことばで人を動かす力のことで、話し方がたくみなことのたとえです。「三寸の舌をふるって相手を説き伏せる」のように使います。

三寸の舌の読み方は何ですか?

「さんずんのした」と読みます。「寸」は「ずん」とにごり、「さんすん」とは読みません。

三寸の舌の由来・出典は何ですか?

中国の歴史書『史記』平原君虞卿列伝が由来です。秦に都を囲まれた趙のため、毛遂が楚王を弁舌で説き伏せて同盟を結ばせ、平原君が「毛先生は三寸の舌で百万の軍より強かった」とほめました。

三寸の舌の原文と書き下し文は?

原文は「毛先生以三寸之舌,彊於百萬之師」で、書き下し文は「毛先生三寸の舌を以て、百万の師よりも彊し」です。「師」は軍隊、「A於B」は「BよりもA」という比較の形です。

三寸の舌と舌先三寸のちがいは何ですか?

三寸の舌は、ことばで人を動かす弁舌の力そのもので、ほめる意味で使います。舌先三寸は、口先だけで心がこもっていないことで、「舌先三寸で人をまるめこむ」のように悪い意味で使います。

三寸の舌はどう使いますか?例文は?

交渉・外交・説得など、ことばで勝負する場面で使います。「三寸の舌をふるって取引をまとめる」「交渉の成否は代表の三寸の舌にかかっている」のように、ややかたい書き言葉として使います。

三寸の舌はビジネスで使えますか?

使えます。営業や交渉で、ことばの力で相手を納得させる人をほめるときに使えます。ただし「口がうまいだけ」という悪い意味にとられないよう、「舌先三寸」とまちがえないことが大切です。

三寸の舌の似た言葉・反対の言葉は?

似た言葉には「弁舌さわやか」「立て板に水」「能弁」「ペンは剣よりも強し」があります。反対やくらべたい言葉には「舌先三寸」「口は禍の門」「口下手」があります。

三寸の舌は英語で何と言いますか?

"a silver tongue"(銀の舌=弁が立つこと)や "silver-tongued"(弁舌さわやかな)が近い言い方です。

三寸の舌は入試でどう出ますか?

中学・高校受験では「舌」を使った慣用句の問題で、舌先三寸との意味のちがいがねらわれることがあります。大学受験の漢文では、書き下し文、「師」の意味、比較(A於B)や使役(使A〜)の句法がよく問われます。

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出典・参考

  • 原文:『史記』平原君虞卿列伝(維基文庫の本文で確認)
  • 張良の言葉:『史記』留侯世家(維基文庫の本文で確認)
  • 張儀の言葉:『史記』張儀列伝(維基文庫の本文で確認)
  • 一寸の長さ・長平の戦い・楚と魏の救援・戦国四君・合従連衡:一般的な説明
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(教科書で多い読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦