- 歌
- 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり
- 意味
- (「しめぢが原のさせも草」の歌のように、私を頼りにせよと)約束してくださった、恵みの露のようなお言葉を、命のように大切に頼みにしてきたのに、ああ、今年の秋も(望みがかなわないまま)むなしく過ぎ去っていくようです。
- 作者
- 藤原基俊(ふじわらのもととし)
- 出典
- 『千載和歌集』雑上・1023番
- 決まり字
- 「ちぎりお」(4字決まり)

契りおきし させもが露を 命にて
あはれ今年の 秋もいぬめり
読みちぎりおきし させもがつゆを いのちにて
あわれことしの あきもいぬめり
歴史的仮名遣いちぎりおきし させもがつゆを いのちにて
あはれことしの あきもいぬめり
約束してくださった恵みの言葉を命と頼みにしてきたのに、ああ、今年の秋も望みがかなわずに過ぎていくようだ——息子の出世を願う親心を詠んだ藤原基俊の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 契りおきし | ちぎりおきし | 「約束しておいた」。「し」は過去「き」の連体形です。 |
| させもが露 | させもがつゆ | させも草(ヨモギ)に置いた露。約束の言葉を、草をうるおす恵みの露にたとえています。 |
| 命にて | いのちにて | 命として、命のように頼みにして。 |
| あはれ | あわれ | ああ(感動詞)。 |
| いぬめり | いぬめり | 「去っていくようだ」。「いぬ」は去る、「めり」は推定の助動詞です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 契り | 動詞・ラ行四段「契る」連用形 | |
| おき | 動詞・カ行四段「おく」連用形 | |
| し | 助動詞「き」連体形 | 過去 |
| させも | 名詞 | |
| が | 格助詞 | |
| 露 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| 命 | 名詞 | |
| にて | 格助詞 | 資格 |
| あはれ | 感動詞 | |
| 今年 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 秋 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | |
| いぬ | 動詞・ナ変「いぬ」終止形 | 去る |
| めり | 助動詞「めり」終止形 | 推定 |
表現技法・文法のポイント
約束の言葉を「させもが露」にたとえ、それを命のように頼みにしたことを表しています。
清水観音の歌とされる「なほ頼めしめぢが原のさせも草わが世の中にあらむ限りは」をふまえています。
目の前の様子から推し量る「〜ようだ」。入試頻出の助動詞です。
歌の背景・鑑賞
『千載和歌集』雑上に入っています。作者は、僧である息子の光覚を、奈良の興福寺の大切な法会(維摩会)の講師にしてもらおうと、藤原忠通(76番)に頼みました。忠通は「しめぢが原の(私を頼りにしなさい)」と答えて約束してくれましたが、その年も選ばれませんでした。その恨みを詠んだのがこの歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
基俊は、息子の出世のために、関白・藤原忠通(76番)に何度もお願いしました。約束してもらったのに、また選ばれなかった――。恋の歌ではなく、親心を詠んだ歌が百人一首に選ばれているのは珍しいことです。
基俊は名門の出身で学識も豊かでしたが、自信家で人を見下すところがあったため、出世できなかったともいわれます。それでも晩年には若き藤原俊成(83番)を弟子にし、その俊成の子が百人一首を選んだ定家です。基俊がいなければ、百人一首は生まれなかったかもしれません。
作者:藤原基俊
平安時代後期の貴族・歌人・書家、藤原基俊(ふじわらのもととし)です。藤原道長のひ孫という名門の出身ですが、官位には恵まれませんでした。源俊頼(74番)と並ぶ歌壇の指導者で、古い歌風を重んじました。晩年には藤原俊成(83番)を弟子にしています。
決まり字と覚え方
上の句が「ちぎりお」まで読まれたら、取り札が決まります。「ち」で始まる歌は3首あります。
覚え方:「ちぎりお」と聞いたら「あはれことしの」。42番「ちぎりき」と4字目で分かれる4字決まりです。契り置き(ちぎりお)しも、あはれ今年も、と覚えます。
入試で問われるポイント
- 推定の「めり」
- ナ変動詞「いぬ」
- 比喩・本歌をふまえる表現
- 42番との見分け(4字決まり)
よくある質問
「させもが露」とは何のことですか?
させも草に置いた露のことで、約束してくれた恵みの言葉をたとえています。
誰との約束だったのですか?
76番の作者・藤原忠通との約束です。息子を法会の講師にしてもらう約束でした。
「いぬめり」とはどういう意味ですか?
「去っていくようだ」という意味です。「いぬ」はナ変動詞で「去る」、「めり」は推定の助動詞です。
あわせて読みたい
- 76番「わたの原」(法性寺入道前関白太政大臣・雑)
- 83番「世の中よ」(皇太后宮大夫俊成・雑)
- 74番「憂かりける」(源俊頼朝臣・恋)
- 42番「契りきな」(清原元輔・恋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
