ルベーグは何をした人?業績・生涯・名言|ルベーグ積分・測度・区分求積法との違いをわかりやすく

ルベーグは何をした人?業績・生涯・名言|ルベーグ積分・測度・区分求積法との違いをわかりやすく

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大学受験大学院入試

ルベーグHenri Lebesgue

ひとことで言うと

グラフを「よこ切り」にして足すルベーグ積分と測度をつくった、フランスの数学者。確率論や解析学の土台を築いた。

名前アンリ・ルベーグ(Henri Lebesgue、アンリ・レオン・ルベーグ)
生没年1875年6月28日〜1941年7月26日(66歳)
国フランス(ボーヴェ生まれ、パリで没)
分野解析学・測度論・位相幾何学
主な業績測度の理論(1901年)、ルベーグ積分(1902年)、博士論文『積分、長さ、面積』、『積分と原始関数の探究についての講義』(1904年)、優収束定理、ルベーグ被覆次元
名前がつくものルベーグ積分・ルベーグ測度・ルベーグの優収束定理・ルベーグの微分定理・ルベーグ数・ルベーグ被覆次元・Lᵖ(ルベーグ)空間
よばれ方現代の積分論の創始者、測度論の父のひとり

このページのポイント

  • 1902年、グラフを高さごとに「よこ切り」にして足すルベーグ積分と、長さの一般化である測度をつくった
  • リーマン積分(区分求積法)では積分できない関数(ディリクレ関数など)も、ルベーグ積分なら積分できる
  • 確率論(期待値)・フーリエ解析・関数解析など、20世紀の解析学の土台になった

ルベーグは何をした人?(業績をひとことで)

アンリ・ルベーグ(1875〜1941年)は、フランスの数学者です。1902年、ルベーグ積分という、新しい積分の考え方をつくりました。それまでの積分は、グラフを「たて」に細く切って足していく方法(リーマン積分)でした。ルベーグは、「よこに、高さごとに分けて足す」という、まったく別の切り方を考えました。この考え方のおかげで、ずっと広い範囲の関数を積分できるようになり、「測度」という、長さや面積を一般にした概念も生まれました。

ルベーグの積分は、いまの大学数学では、解析学や確率論の土台です。確率を厳密に定めるコルモゴロフの確率論も、ルベーグの積分を使っています。受験生にとっては、高校の「区分求積法」や「定積分と面積」の、さらに先にいる人です。

ルベーグは、しかし、なんでも一般化するのは好みませんでした。「一般的な理論だけでは、数学は中身のないきれいな形になってしまう」という意味の言葉を残した、と伝えられます。具体的な問題を大切にした数学者でした。

うかるくん

うかるくん

積分って、グラフをたてに細かく切って足すんですよね? ほかに切り方があるんですか?

合格先生

合格先生

あるんだ。ルベーグは、「高さごとによこに切る」ことを考えた。「高さ1以上のところは、全部でどれだけの長さか」「高さ2以上のところは?」と数えて、足していく。ちょっと変わっているけれど、これだと、グラフがぐちゃぐちゃに暴れている関数でも積分できるんだよ。

ルベーグの著書『積分と原始関数の探究についての講義』(1904年)の扉
ルベーグが1904年に出版した『積分と原始関数の探究についての講義』の扉(パリ)。ルベーグ積分を世に広めた本画像:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

ルベーグの生涯と年表

ボーヴェに生まれ、高等師範学校へ

ルベーグは1875年6月28日、フランス北部の町ボーヴェで生まれました。地元のコレージュで学び、パリのリセ・サン=ルイとルイ=ル=グランで勉強したのち、1894年に名門の高等師範学校(エコール・ノルマル)に入学しました。在学中に、ベールの不連続関数についての論文を読み、深い影響を受けたとされます。1897年に数学の教員資格を取りました。

ナンシーのリセの先生をしながら

1899年から1902年まで、ルベーグは、ナンシーのリセ(高校)の先生として、教えながら研究を続けました。この時期に、測度の理論(1901年)とルベーグ積分(1902年)を考え出します。これは、ボレルとジョルダンの先行研究の上に立つものでした。1902年に、博士論文『積分、長さ、面積』を提出しました(130ページ。イタリアの雑誌に掲載)。

大学の先生へ。ベールとの対立

1902年、レンヌ大学の講師になり、1906年にポワティエ大学へ移ります(1907年から力学の教授)。1903年と1905年には、「ペコ講義」という、若い数学者の名誉ある講義を担当しました。1904年には、その講義をもとにした本『積分と原始関数の探究についての講義』を出版し、ルベーグ積分は広く知られるようになりました。ただし同じ年、ペコ講義をめぐって、ベールと対立しました。のちの第一次世界大戦中には、どちらも国の防衛のための仕事をしていたころに、ボレルとも仲たがいしたとされます(MacTutor の伝記による。理由はくわしく書かれていません)。

ソルボンヌ、コレージュ・ド・フランスへ

1910年にソルボンヌ(パリ大学)の講師になり、1918年に教授になりました。1921年、コレージュ・ド・フランスの教授になり、亡くなるまで務めました。1922年5月29日には、フランス科学アカデミーの会員にも選ばれています。この年以降は、研究よりも、教育・数学史・初等幾何学に関心を向けたとされます。

晩年と、亡くなるまで

ルベーグは1941年7月26日、第二次世界大戦中のパリで亡くなりました(66歳)。ルベーグの考えは、20世紀の解析学・確率論の標準語になりました。

年できごと
1875年6月28日、フランスのボーヴェで生まれる
1894年高等師範学校(エコール・ノルマル)に入学
1897年数学の教員資格を取る
1899年ナンシーのリセで教えはじめる(1902年まで)
1901年測度の理論を発表する
1902年ルベーグ積分を発表。博士論文『積分、長さ、面積』
1903年ペコ講義を担当する(1905年にも)
1904年『積分と原始関数の探究についての講義』を出版する
1906年ポワティエ大学へ移る(1907年に力学の教授)
1910年ソルボンヌ(パリ大学)の講師に(1918年に教授)
1921年コレージュ・ド・フランスの教授になる
1922年5月29日、フランス科学アカデミーの会員になる
1941年7月26日、パリで亡くなる(66歳)

ルベーグの主な業績をやさしく解説

業績1 ルベーグ積分(よこに切る積分)

高校で習う積分(リーマン積分)は、グラフの下の面積を、たてに細長い短冊に切って、足し合わせるものです(区分求積法)。ルベーグの考え方は、高さを基準にします。「高さが0.4以上のところの長さ」「高さが0.9以上のところの長さ」……と、よこの層ごとに長さを測り、足し合わせるのです。

たてに切る? よこに切る?リーマン積分たてに細く切って足すルベーグ積分よこに高さで分けて足す赤い線の長さ(測度)×層の厚さ を足していく
同じグラフでも、たてに切る(左)か、高さでよこに分ける(右)かで、積分の作り方が変わる

この「よこ切り」には、おもしろいたとえがあります。ルベーグは、次のような例え話で、2つの積分のちがいを説明した、と伝えられます(数学者ポール・モンテルにあてた手紙の中の言葉として紹介されることが多いお話です)。借金を払うために、ポケットのお金を出てきた順に数えて渡すのが、リーマン積分。いったんぜんぶ出して、種類ごとにまとめて数えるのが、ルベーグ積分です。

ポケットのお金で考える積分出てきた順に足す(リーマン流)101510110510+1+5+10+1+10+5=42種類ごとにまとめて数える(ルベーグ流)101010551110円×3=305円×2=101円×2=230+10+2=42(合計は同じ)
出てきた順に足しても、種類別にまとめて数えても、合計は同じ。ルベーグは後者の考え方

お金なら、どちらの数え方でも合計は同じです。ここでは、ポケットのお金が7枚しかないので、どちらもすぐ終わります。ところが、お金の種類が無数にあって、金額がめちゃくちゃにばらつく(暴れる関数にあたる)場合を考えると、「出てきた順に足す」方法は手に負えなくなります。「種類ごとにまとめる」方法なら、同じ値のものを集めて、その量を測ればよいので、はるかに扱いやすくなります。

業績2 測度(長さ・面積の一般化)とディリクレ関数

ルベーグ積分の土台は、測度です。測度とは、ふつうの「長さ」や「面積」を、ものすごく複雑な集合にまで広げた考え方です。区間 [0,1][0,1] の測度は1、有理数だけを集めた集合の測度は0、と決めます。有理数は、1番目、2番目、……と「数えられる」ので、どんなに点が多くても、全部合わせて長さ0にできる、と考えるのです。

この測度のおかげで、次の関数 f(x)f(x) が積分できます。xx が有理数なら f(x)=1f(x)=1、無理数なら f(x)=0f(x)=0(ディリクレ関数)。リーマン積分では、どんなに細かく切っても、上の和は1、下の和は0で、決まりません。ところが、ルベーグ積分では、「値1の部分(有理数)の測度は0、値0の部分の測度は1」なので、1×0+0×1=01\times0+0\times1=0 と、ちゃんと決まります。

ディリクレ関数の積分0101有理数のところは値 1(点がとびとび)無理数のところは値 0(ほとんど全部)リーマン積分:上の和は1、下の和は0 → 決まらないルベーグ積分:1×0(有理数の測度)+0×1=0
ディリクレ関数。リーマン積分では決まらないが、ルベーグ積分では0

ルベーグは、さらに、「どんな関数がリーマン積分できるか」にも、きれいな答えを出しました。ルベーグの判定条件です。有界な関数 ff がリーマン積分できるのは、ff が不連続になる点の集合の測度が0のとき、かつ、そのときに限ります。ディリクレ関数は、すべての点で不連続(測度1)なので、リーマン積分できません。一方、グラフに有限個のとびがあるだけの関数や、有限個の点でとぶ階段関数は、不連続な点が数えられるほどしかないので、リーマン積分できます。さらに、リーマン積分できる有界な関数は、必ずルベーグ積分もでき、その値は一致します。ルベーグ積分は、リーマン積分の「拡張」になっているのです。

この関数は、ディリクレの業績と生涯が、「関数とは何か」を考える例として使ったことから、名前がつきました。関数の意味と有理数の意味・無理数の意味も確かめると、この関数のおもしろさが分かります。

業績3 カントール集合:測度0なのに、点は無数にある

線分 [0,1][0,1] から、真ん中の3分の1を取りのぞきます。残った2本の線分からも、それぞれ真ん中の3分の1を取りのぞきます。これをずっと続けると、最後に残る点の集まりが、カントールの業績と生涯のカントール集合です。取りのぞいた長さの合計は 13+29+427+⋯=1\dfrac13+\dfrac29+\dfrac4{27}+\cdots=1 ですから、残る長さ(測度)は 0 です。ところが、この集合には、実数と同じくらい、無数の点が残っています。

カントール集合と測度合計 1合計 2/3合計 4/9合計 8/27合計 16/81真ん中の3分の1を、何度も取りのぞく残る長さ → 0(測度0)、でも点は無数に残る
真ん中の3分の1を取りのぞく操作をくり返す。残る長さの合計は0に近づく

「長さが0なのに、点がたくさんある」という不思議な集合は、カントールの集合論と、ルベーグの測度論が出会う場所です。ルベーグは、このような「奇妙な集合」も扱えるように、理論を作ったのでした。

業績4 極限と積分を入れかえる定理(優収束定理)

ルベーグ積分の大きな利点は、極限と積分の順番を入れかえてよい条件が、はっきり分かることです。関数の列 f1,f2,⋯f_1,f_2,\cdots が、ある関数 ff に近づいていくとき、「∫fn\int f_n の極限」と「∫f\int f」が同じになるかを問う、とても大切な問題です。ルベーグは、「列が、ある積分できる関数に抑えられていれば、入れかえてよい」という優収束定理(1900年代はじめから、のちに今の形に整えられました)を示しました。これで、フーリエ級数を項ごとに積分することが、正しく行えるようになりました(フーリエの業績と生涯、フーリエ級数)。

高校の数学でも、積分による不等式の評価や数列の極限・無限等比級数で、「極限と積分(または和)を入れかえる」場面は、さりげなく出てきます。たいていは、入れかえてよい条件を、ていねいに確かめるまでもなく、そのまま使っています。

業績5 確率論・フーリエ解析・そのほか

ルベーグの測度は、確率の厳密な土台になりました。「確率」とは、全体の測度が1の測度のこと、と考えるのです。1933年、コルモゴロフは、これを使って、確率論の公理をつくりました。確率変数の期待値は、ルベーグ積分で書けます(期待値の求め方、確率変数の意味)。「値ごとにまとめて、値×確率を足す」という期待値の計算は、まさにルベーグ流の「よこ切り」です。

積分の考え方の歴史1680年ごろニュートン・ライプニッツ微分と積分が結びつく1820年代コーシー連続関数の積分を定義1854年リーマンリーマン積分(たてに切る)1902年ルベーグルベーグ積分(よこに切る)1933年コルモゴロフ確率をルベーグ積分で
積分の考え方は、少しずつ広い関数を扱えるように育ってきた

ルベーグは、ほかにも、次元の理論(ルベーグ被覆次元、1911年ごろ)、ポテンシャル論(ディリクレ問題)、曲面の面積などで、仕事を残しました。さらに、1905年の論文に、「ボレル集合の射影はボレル集合になる」という主張があり、のちの1917年にスースリンがこの誤りに気づいたことが、「解析集合」という新しい分野につながった、と伝えられます。

ルベーグの名前がつく公式・定理・用語

  • ルベーグ積分:値のほうを基準に、よこ切りで定める積分(1902年)。
  • ルベーグ測度:区間の長さを、複雑な集合に広げた測度。
  • 優収束定理(ルベーグの収束定理):積分できる関数におさえられた関数列では、極限と積分を入れかえてよい。
  • ルベーグの微分定理:積分できる関数は、ほとんどすべての点で、積分を微分すると、もとの関数にもどる。
  • ルベーグの判定条件:有界な関数がリーマン積分できるための条件は、「不連続な点の集合の測度が0」であること。
  • ルベーグ数(被覆の補題):コンパクトな空間をおおう開集合の列について成り立つ補題。大学の位相空間論で習う。
  • ルベーグ被覆次元:図形の「次元」の、位相的な定義のひとつ。
  • ルベーグ空間(Lᵖ 空間):ルベーグ積分を使って作る、関数の空間(名前の由来は、のちの数学者によるもの)。

区分求積法は、区分求積法の公式と例題、区分求積法の意味、定積分と面積は定積分と面積・定積分の意味で確かめられます。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

「ルベーグ」は、入試では区分求積法・定積分の「さらに先」にいる人。高校の積分は「たて切り」、大学で「よこ切り」を習う、と覚えておこう。

ルベーグの逸話と名言

「中身のない、きれいな形」

ルベーグは、数学者たちが、なんでも一般的な理論にまとめたがる傾向に、批判的でした。MacTutor の伝記は、ルベーグが次のように書いたと紹介しています。

一般的な理論ばかりに行きついてしまったら、数学は中身のない、きれいな形になってしまう。そして、すぐに死んでしまうだろう。

アンリ・ルベーグ(MacTutor の伝記が紹介する英訳 “Reduced to general theories, mathematics would be a beautiful form without content. It would quickly die.” からの訳)

ルベーグ自身の理論は、きわめて一般的なものでしたが、出発点はいつも、具体的な問題(長さ・面積・フーリエ級数)でした。理論と問題を行き来する、というルベーグの姿勢は、現代の私たちが学ぶときにも役立ちます。

高校の先生をしながらの大発見

ルベーグが、測度と積分の理論を考えたのは、まだ大学の先生ではなく、ナンシーのリセ(高校)の先生だったころです。毎日、授業をしながら、26歳で、数学の歴史を変える発想にたどり着いたのです。若い人にとって、大きな励みになる話です。

ライバルや仲たがい

ルベーグには、数学者どうしの、いくつかの対立もありました。1904年のペコ講義をめぐるベールとの対立や、第一次世界大戦中のボレルとの仲たがいです。数学の新しい理論は、競争や対立の中から生まれることもあります。ただし、ボレルの測度の考えがなければ、ルベーグの積分も生まれなかったことは、ルベーグ自身も認めていた、とされます。

サクラちゃん

サクラちゃん

ルベーグさんは、高校の先生をしながら、そんな大きな発見をしたんですか? 忙しくなかったんでしょうか。

合格先生

合格先生

ナンシーのリセで、毎日、授業をしていたはずだよ。それでも、ずっと同じ問題を考え続けていたから、発見できたんだと思う。ひらめきは、忙しい日々の中でも、考え続けた人のところに来るんだね。

受験・勉強とルベーグのつながり

高校数学:区分求積法と定積分

高校で習う区分求積法は、「グラフの下の面積を、たての短冊で近似して、短冊の幅を限りなく細かくする」という考え方で、リーマン積分の入口です。定積分と面積、微分積分学の基本定理を学ぶとき、「たて切りの積分」をしているのだと意識すると、大学で習うルベーグ積分との違いが、見えやすくなります。

高校数学:確率と期待値は「よこ切り」

確率の期待値の計算は、「値ごとに、値×確率を足す」形です。さいころの目の期待値は、1×16+2×16+⋯+6×16=3.51\times\dfrac16+2\times\dfrac16+\cdots+6\times\dfrac16=3.5。これは、まさにルベーグ流の足し方です。期待値の求め方、期待値の意味を、「よこ切り」という目で見直してみてください。

大学入試・大学1年:広義積分とガウス積分

大学入試の難問や、大学1年の微分積分では、広義積分とガウス積分や、ガンマ関数・ベータ関数が登場します。積分と極限を入れかえる場面では、ルベーグの優収束定理が、背後で支えています。

大学院入試:測度論

数学科の大学院入試では、ルベーグ測度とルベーグ積分は、解析の中心的な内容として出題されます。「優収束定理を使って、積分と極限の順番を入れかえなさい」や、「カントール集合の測度を求めなさい」のような問題がよく出ます。

勉強法として:同じものを、別の切り方で見る

ルベーグの教えは、同じものを、別の切り方で見ることで、問題がやさしくなる、ということです。面積を、たてではなく、よこで求める。場合の数を、足し方を変えて数える。この「切り方を変える」習慣は、受験の数学でも大きな力になります。数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)、京大理系数学の出題分析(積分は頻出)、数学でよく使う記号の意味一覧(Σ・∫・≡)もどうぞ。

ルベーグがその後の数学にあたえた影響

  • 解析学:ルベーグ積分は、いまの解析学の標準的な積分です。関数解析・偏微分方程式・フーリエ解析などは、すべてルベーグ積分の上に立っています。
  • 確率論:コルモゴロフ(1933年)の確率論の公理は、ルベーグ測度の考え方をもとにしています(コルモゴロフの業績と生涯)。いまの統計学・金融工学・機械学習は、この確率論の上に作られています。
  • 関数の空間:Lᵖ 空間は、ヒルベルト空間や、バナッハ空間の理論の、基本的な例になりました。
  • フーリエ解析:ルベーグ積分により、フーリエ級数の理論が、ずっと自然な形になりました(フーリエの仕事の完成形のひとつ)。
  • 位相幾何学(次元論):ルベーグ被覆次元は、位相幾何学の基本の道具です。
  • 数学教育:「積分を、たてと、よこの2つの目で見る」考え方は、大学の解析学の最初の授業で、必ず語られます。

ルベーグ積分は、「数学を、より広い関数・集合にまで使えるようにする」という、20世紀の数学の大きな方向を象徴しています。

ルベーグに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 10円玉3枚、5円玉2枚、1円玉2枚があります。合計金額を、(1)出てきた順(10、1、5、10、1、10、5の順)に足す方法と、(2)種類ごとにまとめて足す方法、の2つで求めなさい。
    答えと解説を見る(1) 10+1+5+10+1+10+5=10+1+5+10+1+10+5= 42。(2) 10×3+5×2+1×2=30+10+2=10\times3+5\times2+1\times2=30+10+2= 42。どちらも42円で、同じです。ルベーグ積分は、(2)のような「まとめて足す」考え方にあたります。
  2. 区分求積法を使って、∫01x dx\int_0^1x\,dx の値を求めなさい。
    答えと解説を見る区間 [0,1][0,1] を nn 等分して、∑k=1nkn⋅1n=1n2⋅n(n+1)2=n+12n\sum_{k=1}^{n}\dfrac kn\cdot\dfrac1n=\dfrac{1}{n^2}\cdot\dfrac{n(n+1)}{2}=\dfrac{n+1}{2n}。n→∞n\to\infty で 12\dfrac12。三角形の面積 12×1×1\dfrac12\times1\times1 と一致します。

ふつう

  1. 区間 [0,1][0,1] で、xx が有理数のとき f(x)=1f(x)=1、無理数のとき f(x)=0f(x)=0 とします。この関数のルベーグ積分を求めなさい。また、リーマン積分は可能ですか。
    答えと解説を見る有理数の集合は、数えられるので測度0です。値1の部分の測度が0、値0の部分の測度が1なので、ルベーグ積分は 1×0+0×1=1\times0+0\times1= 0。リーマン積分は、どんな細かい分割でも、上の和が1、下の和が0になるので、できません。
  2. カントール集合は、[0,1][0,1] から、真ん中の3分の1を、くり返し取りのぞいて作ります。取りのぞいた長さの総和を求め、カントール集合の測度を答えなさい。
    答えと解説を見る取りのぞく長さは、13\dfrac13、29\dfrac29、427\dfrac4{27}、……と、初項 13\dfrac13、公比 23\dfrac23 の等比数列。総和は 1/31−2/3=1\dfrac{1/3}{1-2/3}=1。したがって残る長さ(測度)は 1−1=1-1= 0 です。

むずかしい

  1. 「よこ切り」の考え方で、∫01x2 dx\int_0^1x^2\,dx を求めなさい。(ヒント:高さ yy 以上になる xx の範囲の長さは?)
    答えと解説を見る0<y≦10<y\leqq1 のとき、x2≧yx^2\geqq y となる xx の範囲は y≦x≦1\sqrt y\leqq x\leqq1 で、長さは 1−y1-\sqrt y。よこの層を足す(yy で積分する)と、∫01(1−y) dy=1−23=\int_0^1(1-\sqrt y)\,dy=1-\dfrac23= 13\dfrac13。たて切りで求めた ∫01x2dx=13\int_0^1x^2dx=\dfrac13 と一致します。
  2. fn(x)=nf_n(x)=n(0≦x≦1n0\leqq x\leqq\dfrac1n)、fn(x)=0f_n(x)=0(それ以外)とします。∫01fn dx\int_0^1f_n\,dx の極限と、各点の極限関数の積分を比べ、極限と積分は入れかえられるか答えなさい。
    答えと解説を見る∫01fn dx=n×1n=1\int_0^1f_n\,dx=n\times\dfrac1n=1 なので、その極限は1。一方、各点の極限は、x=0x=0 以外すべて0(x=0x=0 だけ発散しますが、1点の測度は0)。極限関数の積分は0。1 ≠ 0 で、入れかえられません。優収束定理の「おさえる関数」がないためです。

ルベーグと関係する数学者

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20世紀の数学者

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よくある質問

ルベーグは何をした人ですか?

アンリ・ルベーグは、フランスの数学者です。1902年にルベーグ積分と測度の理論をつくりました。それまでの積分(リーマン積分)では扱えなかった関数も積分できるようになり、20世紀の解析学・確率論の土台になりました。

ルベーグ積分とは何ですか?

グラフの下の面積を、高さごとによこに分けて、高さ以上になる部分の長さ(測度)を足し合わせて求める積分です。たてに切るリーマン積分と違い、ひどく暴れる関数でも積分できます。

リーマン積分とルベーグ積分の違いは?

リーマン積分は定義域(x軸)を細かく分け、ルベーグ積分は値域(y軸)を細かく分けます。ルベーグ積分のほうが、積分できる関数の範囲が広く、極限と積分の入れかえの条件もはっきり分かります。高校の区分求積法はリーマン積分です。

測度とは何ですか?

ふつうの長さ、面積、体積を、複雑な集合にまで広げた考え方です。区間の測度はその長さで、有理数だけの集合のように数えられる集合の測度は0です。確率は、全体の測度が1の測度と考えられます。

ルベーグの名言はありますか?

一般的な理論ばかりになると、数学は中身のないきれいな形になり、すぐに死んでしまう、という意味の言葉が、MacTutor の伝記で紹介されています。ポケットのお金のたとえでも、積分の違いを説明したと伝えられます。

ルベーグは何歳で亡くなりましたか?どこの国の人ですか?

ルベーグは1875年にフランスのボーヴェで生まれ、1941年7月26日にパリで66歳で亡くなりました。

ディリクレ関数とは何ですか?

有理数で値1、無理数で値0をとる関数です。リーマン積分では決まりませんが、有理数の測度が0なので、ルベーグ積分は0になります。リーマン積分とルベーグ積分の違いを示す、有名な例です。

ルベーグは中学受験・高校受験・大学受験に関係がありますか?

高校の区分求積法と定積分(リーマン積分)の、さらに先にあたります。確率の期待値は、ルベーグ流の「値ごとにまとめて足す」形です。大学院入試では、ルベーグ測度とルベーグ積分が、解析の中心的な内容として出ます。

カントール集合とは何ですか?

線分の真ん中の3分の1を、何度もくり返し取りのぞいて残る点の集合です。取りのぞいた長さの総和が1になるので、残る長さ(ルベーグ測度)は0ですが、点は無数に残っています。

優収束定理とは何ですか?

関数の列が、積分できる関数におさえられているとき、極限と積分を入れかえてよい、という定理です。ルベーグが1904年ごろに示し、フーリエ級数の項別積分などを正しく扱えるようにしました。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Henri Lebesgue」(セント・アンドルーズ大学)
  • H. Lebesgue『Leçons sur l'intégration et la recherche des fonctions primitives』(1904年)
  • 扉の画像:同書(1904年)の扉、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦