コルモゴロフは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|確率の公理・乱流・コルモゴロフ複雑性

コルモゴロフは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|確率の公理・乱流・コルモゴロフ複雑性

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コルモゴロフAndrey Kolmogorov

ひとことで言うと

1933年に、確率を3つの公理で定義し直した、20世紀を代表するロシアの数学者。乱流・力学系・情報理論・数学教育にも大きな足あとを残した。

名前アンドレイ・ニコラエヴィチ・コルモゴロフ(Andrey Nikolaevich Kolmogorov)
生没年1903年4月25日〜1987年10月20日(84歳)
国ロシア(ソ連)(タンボフ生まれ、モスクワで活躍)
分野確率論・解析学・力学系・流体力学・情報理論
主な業績確率の公理(1933年)、大数の強法則、乱流の理論(1941年)、KAM理論、コルモゴロフ複雑性、ヒルベルト第13問題
名前がつくものコルモゴロフの公理・0-1法則・コルモゴロフ・スミルノフ検定・−5/3乗則・コルモゴロフ複雑性・KAM理論
受賞などバルザン賞(1962年)、レーニン賞(1965年)、ウルフ賞(1980年)

このページのポイント

  • 1933年の『確率論の基礎概念』で、確率を「全体の確率は1」「マイナスはない」「同時に起こらないなら足し算」の3つの公理で定義した
  • 乱流で大きな渦から小さな渦へエネルギーが流れる理論(1941年)や、情報の複雑さを測るコルモゴロフ複雑性など、確率以外でも大きな仕事をした
  • 高校の確率(余事象・加法定理・条件つき確率)は、コルモゴロフの公理から導かれる。大数の法則や統計的な推測にもつながる

コルモゴロフは何をした人?(業績をひとことで)

アンドレイ・コルモゴロフ(1903〜1987年)は、ソ連(今のロシア)の数学者です。1933年に、確率を「公理」で定義し直したことで、世界中の確率論の教科書を書き変えました。いま高校で習う確率の考え方(全体の確率は1、同時に起こらないなら足し算)は、コルモゴロフの公理の、やさしい形です。

コルモゴロフは確率だけの人ではありません。乱流(水や空気の乱れた流れ)の理論、力学系の安定性(KAM理論)、情報とアルゴリズムの理論(コルモゴロフ複雑性)、そして数学教育と、20世紀の数学のほとんどの分野で大きな仕事を残しました。「20世紀最大の数学者の一人」とよばれることもあります。

受験生にとってのコルモゴロフは、確率の根っこを作った人です。確率の基本(場合の数と確率)、さいころ2個の確率、条件つき確率の公式は、どれもコルモゴロフの公理から導かれます。モンティ・ホール問題(確率の直感のずれ)のような「直感がまちがう問題」も、公理に戻れば、まちがえずに解けます。

うかるくん

うかるくん

確率って、サイコロの目の数を数えれば出てくるものですよね? 公理なんて必要なんですか?

合格先生

合格先生

サイコロやコインのように、同じ確率で起こる場合なら数えるだけでいい。でも、「ダーツが的の真ん中に当たる確率」のように、起こりうる場合が無限にあるときはどうだろう。コルモゴロフは、どんな場合にも通用する確率の定義を作ったんだ。

コルモゴロフの歩み19034月25日、ロシアのタンボフで生まれる1920モスクワ大学に入学1933『確率論の基礎概念』(確率の公理)1941乱流の理論(−5/3乗則)1954KAM理論(ふるまいの安定性)1957ヒルベルトの13番めの問題を解く1980ウルフ賞198710月20日、モスクワで亡くなる
コルモゴロフの歩み。確率の公理から乱流・KAM理論・教育まで

コルモゴロフの生涯と年表

タンボフに生まれ、おばさんに育てられる

コルモゴロフは1903年4月25日、ロシア中部のタンボフで生まれました。母は出産のときに亡くなったと伝えられ、おもに母方のおばさんのヴェーラに育てられたとされています。少年のころから数学の才能があって、5歳のころに「奇数を1から順に足すと、平方数になる」ことに自分で気づいた、という話が伝えられています。つまり、1+3+5+⋯+(2n−1)=n21+3+5+\cdots+(2n-1)=n^2 という関係です(ペアノの帰納法の練習問題にも出てくる式です)。

モスクワ大学で、ルージンの弟子に

1920年にモスクワ大学に入ったコルモゴロフは、数学だけでなく、金属の研究やロシア史も学びました。学生のころから研究を発表し、1922年に「ほとんどの点でフーリエ級数が発散する関数」を作って、国際的な注目を浴びます。1925年に大学を卒業して、ルージン教授のもとで研究をはじめました。1929年に博士号、1931年にはモスクワ大学の教授になりました。

1933年:『確率論の基礎概念』

1933年、30歳のコルモゴロフは、ドイツ語で薄い本『確率論の基礎概念(Grundbegriffe der Wahrscheinlichkeitsrechnung)』を出版しました。この本で、確率を測度論(面積や体積の考え方を広げた理論)の言葉で定義しました。これは、ヒルベルトが1900年に出した「23の問題」のうち、第6問題(物理の公理化、確率論をふくむ)に答える仕事とされています。

乱流・力学系・情報理論、そして教育

1941年には、乱流の理論に関する大事な論文を発表しました。1950年代には、力学系の安定性に関するKAM理論(コルモゴロフ、アーノルド、モーザーの頭文字)の出発点となる研究を行い、1954年のアムステルダムでの国際数学者会議で発表しました。1957年には、弟子のアーノルドと一緒に、ヒルベルトの第13問題に答えを出しました。晩年は、特別な才能を持つ生徒のための学校の指導にも力を入れ、数学教育の改革にも関わりました。

多くの賞を受けた人でもあります。1962年にバルザン賞、1965年にレーニン賞、1964年に英国王立協会の外国人会員、1980年にウルフ賞を受けました。1987年10月20日、モスクワで亡くなりました。84歳でした。

年できごと
1903年4月25日、ロシア中部のタンボフで生まれる
1920年モスクワ大学に入学
1922年ほとんどの点で発散するフーリエ級数を作って、国際的に有名になる
1925年モスクワ大学を卒業。ルージンのもとで研究。ヒンチンと確率論の最初の論文
1929年博士号。大数の強法則などを研究
1931年モスクワ大学の教授になる
1933年『確率論の基礎概念』で確率の公理を発表
1938年ステクロフ数学研究所の確率・統計部門の責任者になる
1941年乱流の理論の論文を発表(同じ年にソ連の国家賞も受賞)
1954年KAM理論の出発点となる研究。国際数学者会議で講演
1957年ヒルベルトの第13問題を(アーノルドとともに)解く
1965年レーニン賞
1980年ウルフ賞
1987年10月20日、モスクワで亡くなる(84歳)

コルモゴロフの主な業績をやさしく解説

業績1 確率の公理(1933年)

それまでの確率は、「同じ確率で起こる場合を数えるもの」でした。パスカルとフェルマーが1654年に手紙でやりとりした「賭けの問題」が確率論のはじまりとされ、ラプラスが体系的にまとめましたが、「確率とは何か」の定義は、実はあいまいなままでした。

コルモゴロフは、確率を「起こりうるすべての場合の集合 Ω\Omega の部分集合(事象)に、0から1までの数をわりあてるルール」として定義しました。次の3つの公理を満たすものが確率です。

確率の公理(コルモゴロフ、1933年) ①どの事象 A でも P(A) ≧ 0マイナスの確率はない ②全体(Ω)の確率は P(Ω) = 1なにかは起こる=100% ③A と B が同時に起こらないならP(A∪B) = P(A) + P(B)例:偶数の目は 3/6,奇数の目は 3/6 この3つから確率の計算ルールがすべて出てくる
確率の公理。P(A)≧0、P(Ω)=1、排反なら足し算の3つ

ふつうの高校数学では、確率は ① 0≤P(A)≤10\le P(A)\le 1、② 全体の確率は 1、③ 同時に起こらない(排反)なら足し算、と習います。これは、コルモゴロフの3つの公理を、やさしくしたものです。ここから、余事象の確率 P(Aˉ)=1−P(A)P(\bar A)=1-P(A) や、加法定理 P(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B)P(A\cup B)=P(A)+P(B)-P(A\cap B) などが、公理から導けます。たとえば、「少なくとも1回」の確率を 1 から引いて求める解き方は、公理②③そのものです。

確率論は、数学の一分野として、幾何学や代数学とまったく同じように、公理から出発して作ることができるし、そうすべきである。

アンドレイ・コルモゴロフ(『確率論の基礎概念』(1933年)の序文の一節、訳)

公理で決めたことの大きな利点は、サイコロのような有限の場合も、ダーツや連続的なデータのような無限の場合も、同じルールで扱えることです。確率変数とはやルベーグの測度(面積の考え方を広げた理論)との結びつきも、ここで生まれました。

業績2 標本空間と、さいころの確率

「起こりうるすべての場合の集合」を標本空間(Ω)といいます。2個のさいころを投げるとき、標本空間は 6×6=366\times6=36 通りの目の組です。「目の和が7になる」という事象は、そのうちの6通りですから、確率は 636=16\dfrac{6}{36}=\dfrac16 です。

2個のさいころ:全部で36通り112233445566234567345678456789567891067891011789101112 縦:1個めの目 横:2個めの目 和が7:6通り → P = 6/36 = 1/6
2個のさいころの36通りの表。目の和が7になるのは6マス

高校の確率の問題では、まず標本空間を決め、事象を数えることがだいじです。「何を全体として数えるか」を決めるのが、コルモゴロフの考え方の最初の一歩です。さいころの目の出方の数え方や反復試行の確率の公式でも、同じように、標本空間をはっきりさせましょう。

コルモゴロフの理論では、条件つき確率も、公理の上に定義されます。「BB が起こったことが分かっているとき、AA が起こる確率」は、P(A∣B)=P(A∩B)P(B)P(A\mid B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(B)} と決めます。これは、「標本空間を BB だけにせまくして、あらためて数える」ことを式にしたものです。本ページの練習問題の最後の問題(和が7以上と分かっているとき)も、標本空間を36通りから21通りにせばめて数えています。

業績3 大数の法則と、確率論の基礎定理

コルモゴロフは、「大数の強法則」の条件を明らかにしました。コインを何回も投げると、表が出る割合は 12\dfrac12 に近づきます。この「回数をふやすと、割合が確率に近づく」という性質を大数の法則といいます。

大数の法則:コイン投げの割合 1/2 101回300回 回数がふえるほど、表の割合は 1/2 に近づく(コンピューターで作った例)
コインを投げ続けたときの表の割合。回数がふえるほど 1/2 に近づく

コルモゴロフは、どんな条件のもとで割合がほぼかならず(確率1で)近づくのかを示しました。これは、保険の計算や世論調査(母集団と標本)の根拠になっています。また、伊藤清(確率微分方程式)のような後の確率論の発展も、コルモゴロフの公理の上に築かれました。「0-1法則」(ある種の事象の確率は0か1のどちらかになる)や、2つの分布を比べる「コルモゴロフ・スミルノフ検定」にもコルモゴロフの名前がついています。

業績4 乱流の理論(1941年)

水道の蛇口を大きくひらくと、水はぐちゃぐちゃに乱れて流れます。これが乱流です。乱流の数学的な理解は、いまでも20世紀から続く未解決の大きな課題です。コルモゴロフは1941年、乱流の中では、大きな渦が小さな渦にこわれていき、エネルギーが次々に受けわたされ、最後に熱になるという「エネルギーの滝(カスケード)」を考えました。

乱流:大きな渦から小さな渦へ 大きな渦 中 小 熱 かきまぜるこわれてわかれる エネルギーが「滝」のように大→小へ流れる(カスケード)
乱流のエネルギーは、大きな渦から小さな渦へ流れて、最後に熱になる

この考え方から、渦の大きさごとのエネルギーの分布が、波の細かさ kk の −53-\dfrac53 乗に比例するという「−5/3-5/3 乗則」が導かれました。実験でもよく確かめられていて、「コルモゴロフの法則」として、天気予報・飛行機の設計・川の流れの研究などで使われています。なお、乱流を数学的に完全に説明することは、今でも難しい問題です。マンデルブロ(フラクタル)の研究にも、乱流の考え方がつながっています。

業績5 コルモゴロフ複雑性と、KAM理論・ヒルベルト第13問題

1960年代に、コルモゴロフは「ある文字列を出力する、いちばん短いプログラムの長さ」を、その文字列の複雑さとする考えを提案しました(同じ考えは、ほぼ同じころにほかの人たちも独立に出しました)。これをコルモゴロフ複雑性といいます。「0101…」のように規則がある列は短く説明できるので複雑さが小さく、でたらめな列は全部書くしかないので複雑さが大きい、という考え方です。

コルモゴロフ複雑性 0101010101010101010101……(つづく)→「01 をくり返す」短く説明できる=複雑さ:小 0111001010001101100101……(つづく)→ そのまま全部書くしかないほぼ同じ長さで必要=複雑さ:大 「いちばん短い説明の長さ」=複雑さ(情報量・圧縮・乱数の定義につながる)
短く説明できる列は複雑さが小さい。でたらめな列は複雑さが大きい

この考えは、データ圧縮、乱数の定義、機械学習の理論に使われています。シャノン(情報理論)の情報量とも関係が深い考え方です。また、KAM理論は、太陽系のような力学系が、少しの乱れで壊れてしまわない(安定している)ことを説明する理論で、コルモゴロフが出発点をつくり、弟子のアーノルドとモーザーが完成させました。1957年には、「3変数の連続関数は、2変数の関数の組みあわせでは表せない」というヒルベルトの予想がまちがいであることを、アーノルドと一緒に示しています(ヒルベルトの第13問題の一部)。

コルモゴロフの名前がつく公式・定理・用語

  • コルモゴロフの公理(確率の公理):確率を決める3つのきまり。→ 確率の基本の公式(余事象・加法定理)
  • 大数の強法則:回数をふやすと、割合がほぼかならず確率に近づく。
  • コルモゴロフの0-1法則:ある種の事象の確率は、0か1のどちらかになる。
  • コルモゴロフ・スミルノフ検定:2つの分布を比べる統計の方法。
  • コルモゴロフの法則(−5/3乗則):乱流のエネルギー分布。
  • コルモゴロフ複雑性:文字列を説明する、最短のプログラムの長さ。
  • KAM理論:コルモゴロフ・アーノルド・モーザーの理論。力学系の安定性。
  • コルモゴロフの方程式:確率過程の変化を表す方程式(前向き・後ろ向き)。
指し棒で説明する合格先生

合格先生

確率の問題でまよったら、コルモゴロフの3つの公理にもどろう。「①マイナスはない、②全体は1、③同時に起こらないなら足し算」。それだけで、たいていの確率は解けるよ。

コルモゴロフの逸話と名言

5歳で見つけた「奇数の和」

コルモゴロフは、5歳のころ、「1、1+3、1+3+5、……」の和が 1、4、9、……と平方数になることを自分で見つけて、家の人に自慢した、という話が伝えられます。あとになって、学校の雑誌に自分で作った算数の問題をのせた、という話もあります。この話の細部は、後年の本人の思い出にもとづくとされ、確かめにくいところもあります。

数学と詩、そしてスキーと旅

コルモゴロフは、数学だけの人ではありませんでした。ロシアの詩のリズムを統計の方法で調べる研究も行った、と伝えられています。また、親友のアレクサンドロフ(位相数学の大数学者)とは、1929年ごろから生涯にわたる親友で、一緒に旅行したりスキーをしたりして、にぎやかな学生や弟子たちを連れて歩くのが好きだったといわれます。

弟子たちと、特別な学校

コルモゴロフの弟子には、確率論のグネジェンコ、代数のマルツェフ、のちにKAM理論を完成させたアーノルド、数学者ゲルファントなど、そうそうたる人たちがいます。1960年代には、特別な才能を持つ生徒のための寄宿学校(のちに「コルモゴロフ学校」とよばれた学校)を作り、自分で授業もしたと伝えられています。ソ連の学校数学の改革にも関わりましたが、その評価は人によって分かれています。

サクラちゃん

サクラちゃん

詩の研究まで! 数学と国語が一緒なんて、すごいです。

合格先生

合格先生

数学は、世の中のどんなことにも使える道具だからね。コルモゴロフは「規則があるか、でたらめか」を、詩にも数列にも使ったんだ。いろんなものを数学の目で見ると、勉強もずっと楽しくなるよ。

受験・勉強とコルモゴロフのつながり

中学受験:場合の数と確率のはじまり

中学受験の算数では、「場合の数」が出ます。サイコロを2個投げて目の和が決まった数になる場合を数える問題は、標本空間の表を作る典型例です(本ページの図)。数え漏れ・重なりをなくすには、表や樹形図を使って、全体を先に決めることが基本です。

高校受験:確率の基本

高校受験の確率は、「同じ確率で起こる場合の数」で解きます。「少なくとも1つ」の問題は、全体から余事象を引くのがコツです。これは公理②③から出てきます。

大学受験:確率・統計・極限

京大理系数学の出題分析(確率の出題傾向)や京大文系数学の出題分析を見ると、確率がどれほど頻出かが分かります。数学の勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

余事象の使い方の例:誕生日のパラドックス

「23人のクラスで、同じ誕生日の2人がいる確率は、どのくらいでしょうか」。直感では「とても低そう」ですが、答えは約50.7%です(うるう年は考えないものとします)。解き方は、公理②③から出る余事象の考え方です。「同じ誕生日の組がある」の余事象は、「23人全員の誕生日がちがう」です。この確率は 365365×364365×⋯×343365≈0.493\dfrac{365}{365}\times\dfrac{364}{365}\times\cdots\times\dfrac{343}{365}\approx0.493 なので、求める確率は 1−0.493=0.5071-0.493=0.507 になります。「少なくとも1組」を直接数えるのはたいへんですが、余事象なら1つの積で済みます。直感と計算の答えがずれる点では、モンティ・ホール問題と同じタイプの話題です。

勉強法として:まず全体を決める

確率の問題で点を落とす原因の多くは、「何を全体として数えるか」が決まっていないことです。コルモゴロフの教えは、「まず標本空間を決める」ことです。「区別するか、しないか」を最初に決めて、書いておきましょう。たとえばサイコロ2個を「(1,2)と(2,1)は別」と数えるなら、最後までそれで通します。

コルモゴロフがその後の数学にあたえた影響

  • 確率論・統計学:コルモゴロフの公理は、今の確率論の標準的な出発点です。伊藤清の確率微分方程式の確率微分方程式や金融工学も、この土台の上にあります。
  • 情報・計算の理論:コルモゴロフ複雑性は、データ圧縮・機械学習・乱数の理論の基本で、チューリングの計算の理論ともつながります。
  • 流体力学・気象:コルモゴロフの乱流理論は、天気予報や航空機の設計の基礎です。
  • 力学系:KAM理論は、天体の運動や、カオスの研究の出発点です。
  • 数学教育:特別な才能を持つ生徒のための教育の仕組みづくりは、世界の数学オリンピックなどの人材育成のお手本のひとつとされます。

コルモゴロフの名前を冠した賞やメダルもあり、数学や情報科学の分野で、いまも多くの研究者にとっての目標になっています。また、確率の公理は、天気予報の降水確率、保険料の計算、迷惑メールを見分けるフィルター、AIが「どの答えがどのくらい確からしいか」を計算する仕組みなど、身のまわりのさまざまな技術の土台です。高校の確率の勉強は、そのまま現代社会を支える考え方の入口になっているのです。

コルモゴロフに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 1個のさいころを投げるとき、偶数の目が出る確率を求めなさい。
    答えと解説を見る偶数は 2・4・6 の3通りなので、確率は 3/6=1/2。(偶数と奇数は同時に起こらないので、公理③から 1/2+1/2=1 となることも確かめられます)
  2. 2個のさいころを投げるとき、目の和が7になる確率を求めなさい。
    答えと解説を見る全体は 36通り。和が7になるのは (1,6)(2,5)(3,4)(4,3)(5,2)(6,1) の6通り。確率は 6/36=1/6。

ふつう

  1. 2個のさいころを投げるとき、少なくとも1個は6の目が出る確率を、余事象を使って求めなさい。
    答えと解説を見る「1個も6が出ない」確率は (5/6)×(5/6)=25/36。したがって求める確率は 1−25/36=11/36。
  2. 確率の公理から、空事象の確率 P(∅)=0 を導きなさい。
    答えと解説を見る全体 Ω と空事象 ∅ は同時に起こらず、Ω∪∅=Ω。公理③から P(Ω)=P(Ω)+P(∅)。したがって P(∅)=0。

むずかしい

  1. 確率の公理を使って、P(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B) を示しなさい。
    答えと解説を見るA∪B は、A と「B のうち A に入らない部分」に分けられ、この2つは同時に起こらない。P(A∪B)=P(A)+P(B−A)。また B は「A∩B」と「B−A」に分けられるので P(B)=P(A∩B)+P(B−A)、つまり P(B−A)=P(B)−P(A∩B)。代入すると P(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B)。
  2. 2個のさいころを投げて、目の和が7以上であることが分かっているとき、少なくとも1個が6である確率を求めなさい。
    答えと解説を見る和が7以上の目の組は、和が7:6通り、8:5通り、9:4通り、10:3通り、11:2通り、12:1通りで全部で21通り。そのうち少なくとも1個が6なのは 11通り((6,1)〜(6,6)の6通りと(1,6)〜(5,6)の5通り、いずれも和は7以上)。条件つき確率は 11/21。

コルモゴロフと関係する数学者

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よくある質問

コルモゴロフは何をした人ですか?

コルモゴロフは、20世紀のソ連(ロシア)の数学者です。1933年に確率を3つの公理で定義して現代の確率論の土台を作り、乱流の理論、KAM理論、情報の複雑さを測るコルモゴロフ複雑性、数学教育など、幅広い分野で大きな業績を残しました。

コルモゴロフの確率の公理とは何ですか?

確率を決める3つのきまりです。どの事象の確率も0以上、全体の確率は1、同時に起こらない事象の確率は足し算できる、の3つです。高校の確率の計算は、すべてここから導かれます。

確率の公理はなぜ必要なのですか?

サイコロのように同じ確率で起こる場合なら数えるだけでよいのですが、ダーツのように起こりうる場合が無限にあると、数える方法は使えません。公理で定義すると、有限の場合も無限の場合も同じルールで扱えます。

コルモゴロフ複雑性とは何ですか?

ある文字列を出力する、いちばん短いプログラムの長さを、その文字列の複雑さとする考え方です。規則のある列は短く説明できるので複雑さが小さく、でたらめな列は全部書くしかないので大きくなります。データ圧縮や乱数の理論に使われます。

コルモゴロフの乱流の理論とは何ですか?

1941年に提案された理論で、乱流では大きな渦から小さな渦へエネルギーが受けわたされ、最後に熱になると考えます。渦の大きさごとのエネルギーの分布が −5/3 乗に比例するという「−5/3乗則」が導かれ、実験でも確かめられています。

コルモゴロフは何歳で亡くなりましたか?

1903年4月25日に生まれ、1987年10月20日にモスクワで亡くなりました。84歳でした。

コルモゴロフとヒルベルトの関係は?

ヒルベルトは1900年の「23の問題」で、確率論をふくむ物理の公理化(第6問題)を挙げました。コルモゴロフの確率の公理は、これに答える仕事とされます。また1957年には、アーノルドとともにヒルベルトの第13問題の一部を解きました。

コルモゴロフは受験とどう関係しますか?

高校数学Aの確率(余事象・加法定理・条件つき確率・反復試行)は、コルモゴロフの公理から導かれます。数学Bの統計的な推測の大数の法則や正規分布も、コルモゴロフの確率論が土台です。

KAM理論とは何ですか?

コルモゴロフ(Kolmogorov)、アーノルド(Arnold)、モーザー(Moser)の頭文字をとった理論で、太陽系のような力学系が、少しの乱れが加わっても壊れずに安定している条件を説明します。1950年代にコルモゴロフが出発点をつくりました。

コルモゴロフの弟子にはだれがいますか?

KAM理論を完成させたアーノルド、確率論のグネジェンコ、代数のマルツェフ、ゲルファントなどの名前があげられます。コルモゴロフは、数学の才能のある生徒のための寄宿学校の指導にも力を入れたと伝えられています。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Andrey Nikolaevich Kolmogorov」(セント・アンドルーズ大学)
  • A. N. Kolmogorov, “Grundbegriffe der Wahrscheinlichkeitsrechnung”(1933年)
  • A. N. Kolmogorov, 乱流に関する論文(1941年)
  • 王立協会・ウルフ財団の公表資料(受賞歴)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦