フーリエは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|フーリエ級数・熱の方程式・フーリエ変換

フーリエは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|フーリエ級数・熱の方程式・フーリエ変換

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フーリエJoseph Fourier

ひとことで言うと

熱の伝わり方の研究から、どんな波もサインの波の和で表せるというフーリエ級数を作った。ナポレオンのエジプト遠征に同行し、県知事も務めた。

名前ジョゼフ・フーリエ(Joseph Fourier)
生没年1768年3月21日〜1830年5月16日(62歳)
国フランス(オーセール生まれ、パリで没)
分野解析学・数理物理学(熱伝導)
主な業績フーリエ級数、熱の方程式と熱伝導の法則、フーリエ変換のもとになる考え方、『熱の解析的理論』(1822年)、温室効果の先がけとなる考察
名前がつくものフーリエ級数・フーリエ係数・フーリエ変換・高速フーリエ変換・フーリエの法則・フーリエ解析
よばれ方フーリエ解析の父、ナポレオンの学者

このページのポイント

  • フーリエ級数は、周期のある波を、サインとコサインの波の和で表す方法。もとは熱の伝わり方の研究から生まれた
  • 音楽(MP3)・写真(JPEG)・通信・MRIなど、デジタル技術の基本のフーリエ変換につながる
  • ナポレオンのエジプト遠征に同行し、イゼール県の知事も務めた。1807年の論文は、ラグランジュらの反対にあったと伝えられる

フーリエは何をした人?(業績をひとことで)

ジョゼフ・フーリエ(1768〜1830年)は、フランスの数学者・物理学者です。どんな波も、サインとコサインの波を足し合わせて表せるという考え方を打ち出し、フーリエ級数を作りました。もともとは「熱が物の中をどう伝わるか」を調べる研究から生まれた考え方です。いまは、音楽の圧縮(MP3)、写真の圧縮(JPEG)、スマートフォンの通信、医療のMRIなど、デジタル技術のいたる所で使われています。

受験生にとってのフーリエは、まず「波を分解する」という発想の人です。高校数学の三角関数のサイン・コサインのグラフ(周期と振幅)や三角関数の合成を深く学ぶと、その先にフーリエがいます。大学に入ると、フーリエ級数の公式と求め方、フーリエ変換、熱の方程式を学ぶのが、理系の定番コースです。

ナポレオンのエジプト遠征に同行した学者でもあり、その後は県知事にもなっています。数学者としては、かなり変わった経歴の持ち主です。この点は、あとの章でくわしく紹介します。

うかるくん

うかるくん

波をサインに分けるって、どういうことですか? 波は波ですよね。

合格先生

合格先生

ふつうの音も、実はいくつかの「純粋な音(サイン波)」の重ね合わせなんだ。ピアノの「ド」と、バイオリンの「ド」が別の音に聞こえるのは、同じ高さのサイン波がどんな割合で混ざっているかがちがうから。フーリエは、それを数式で言えるようにした人だよ。

フーリエの肖像画(ブーイ作)
ジョゼフ・フーリエ(19世紀初めごろの肖像画)画像:Julien-Léopold Boilly/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

フーリエの生涯と年表

仕立て屋の子として生まれ、孤児になる

フーリエは1768年3月21日、フランス中部のブルゴーニュ地方にある町オーセールで生まれました。父は仕立て屋(服をつくる職人)でした。母はフーリエが9歳のとき、父はその翌年に亡くなり、フーリエは10歳で孤児になります。その後、地元の人の助けで、オーセールの学校に入りました。

オーセールの先生になる、フランス革命のなかで

学校では、数学の才能を現しました。1780年からは軍の学校(王立士官学校)で学び、1790年にはオーセールの学校の先生になります。フランス革命(1789年〜)のなかで、フーリエは政治にも関わりましたが、そのために一時、逮捕されたといわれます。その後、1795年にパリに新しくできた高等師範学校に入り、ラグランジュの業績と生涯・ラプラス・モンジュといった、フランスの大数学者から学びました。

ナポレオンとエジプトへ

1798年、フーリエはナポレオンのエジプト遠征に、科学者(学者)として加わりました。カイロにつくられた学術機関(エジプト学士院)の書記になり、エジプトの古代遺跡の調査にも関わったと伝えられます。1801年にフランスへ戻りました。後年、エジプトの調査をまとめた大きな本の序文を、フーリエが書いたとされます。

グルノーブルの県知事として、熱の研究へ

帰国後、ナポレオンは、フーリエをフランス南東部イゼール県の知事(県のトップ)に任命し、県庁所在地のグルノーブルに送りました。数学者が県知事になるのは、とても珍しいことです。知事としては、ブルゴワンの沼地の干拓と、グルノーブルからトリノ(イタリア)へ向かう道路の建設に力を入れました。

忙しい政治の仕事のあいだに、フーリエは熱の伝わり方の研究を進めます。1807年12月21日、パリの学士院に論文「固体の中の熱の伝播(でんぱ)について」を提出しました。この論文には、のちにラグランジュらが「三角関数の和で何でも表せるはずがない」と反対した、と伝えられます。論文はすぐには出版されませんでしたが、改良した論文が1811年の学士院の賞を受賞しました。

『熱の解析的理論』と晩年

1822年、フーリエは熱の研究をまとめた大著『熱の解析的理論』を出版します。同じ年に、科学アカデミーの数学部門の終身書記にも選ばれました。1830年5月16日、パリで62歳で亡くなりました。

年できごと
1768年3月21日、フランスのオーセールで仕立て屋の子として生まれる
1777年〜78年9歳で母、10歳で父を亡くし、孤児になる
1780年王立士官学校で学び始める
1790年オーセールの学校の先生になる
1795年高等師範学校で、ラグランジュらに学ぶ
1798年ナポレオンのエジプト遠征に、学者として同行する
1801年エジプトからフランスへ戻る
1802年ごろイゼール県の知事になる(グルノーブル)
1807年12月21日、熱の伝わり方の論文を学士院に提出
1811年熱の論文が学士院の賞を受ける
1822年『熱の解析的理論』を出版。科学アカデミーの終身書記に
1830年5月16日、パリで亡くなる(62歳)

フーリエの主な業績をやさしく解説

業績1 フーリエ級数:どんな波もサインの波の和

フーリエのいちばん大きな発見は、「周期のある波は、サインとコサインの波を足し合わせて表せる」という考え方です。たとえば、四角い形の波(矩形波)でさえ、なめらかな波をいくつも足すと作れます。

サインの波を足して四角い波を作る破線:めざす四角い波薄青:sin x だけ 緑:3つまで足す青:11つまで足す(ほぼ四角)
四角い波に、サインの波を1つ・3つ・11つと足していくと、だんだん四角い形に近づく

四角い波(高さ ±1、周期 2π2\pi)は、次のような式になります。

f(x)=4π(sin⁡x+sin⁡3x3+sin⁡5x5+⋯ )f(x)=\frac{4}{\pi}\left(\sin x+\frac{\sin3x}{3}+\frac{\sin5x}{5}+\cdots\right)

「基本のサイン波」に、3倍・5倍・7倍の速さのサイン波を、だんだん小さな割合で足していくのです。足す数が増えるほど、角の部分が直角に近づきます。このような級数が、フーリエ級数です。公式と求め方はフーリエ級数の公式と求め方にまとまっています。

ちなみに、この式に x=π2x=\dfrac\pi2 を入れると、1−13+15−⋯=π41-\dfrac13+\dfrac15-\cdots=\dfrac\pi4 という有名な式(ライプニッツの級数)が出てきます。サインの波の和が、円周率とつながるのです。

業績2 熱の方程式:熱が広がるしくみを式にした

フーリエが解きたかったのは、「細い棒の一部をあたためたとき、時間がたつとどう温度が広がるか」という問題でした。

熱は時間とともに広がる細い棒の位置はじめ少したつとずっとたつと高いところから低いところへ、熱がなだらかに広がる
棒の中央を熱したとき、時間がたつにつれて山が低くなり、横に広がる。最後は均一な温度に近づく

フーリエは、熱の流れが「温度の差に比例する」と考えました(フーリエの法則)。そこから、温度 u(x,t)u(x,t) が次の熱の方程式をみたすことを導きました。

∂u∂t=k ∂2u∂x2\frac{\partial u}{\partial t}=k\,\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
フーリエの熱伝導の法則熱い冷たい熱の流れ熱の流れ = −k ×(温度の傾き)
熱は高温から低温へ流れ、温度の傾きが大きいほど速い。これがフーリエの法則

この方程式を解く道具として、フーリエははじめの温度の山を、サインの波の和で表すことを思いつきました。サインの波は、熱の方程式の解として、時間とともに指数関数的に小さくなることが分かっています。だから、波の成分ごとに計算してから足し合わせれば、全体が分かるのです。これが、フーリエ級数が生まれたきっかけです。

業績3 フーリエ変換:時間の波を周波数の成分へ

フーリエ級数の考え方を、周期のない波にまで広げたものがフーリエ変換です。時間とともに変わる波(音や電気信号)を、「周波数ごとの成分」に分けます。

波を「成分」に分ける(スペクトル)縦:成分の大きさ1倍13倍1/35倍1/57倍1/79倍1/9振動の速さが、基本の何倍か高い音ほど、成分は小さい
四角い波を成分に分けると、基本の速さの成分が大きく、3倍、5倍と高くなるほど小さくなる

図のような「成分の大きさを並べたグラフ」をスペクトルとよびます。音をスペクトルにすると、どの高さの音がどれだけ含まれているかが分かります。ノイズ(雑音)を消す、特定の音だけ取り出す、データを小さくする、といったことが、すべてこの考え方でできるようになります。

フーリエ変換は、オイラーの公式の発見者が見つけた オイラーの公式 e^{iθ}=cosθ+i sinθ を使うと、とてもすっきりした形で書けます。回転する点(複素数)の重ね合わせとして、波を見るのです。

回転と波:サインの正体円の上を回る点高さを時間の順に並べる回転の高さ = sin。波はぐるぐる回るものの影
円の上を回る点の高さを時間の順に並べると、サインの波になる

三角関数が円の上の動きと同じだという考え方は、中学・高校でも学びます。三角関数の意味を、波と回転の両方から見られるようにしておきましょう。

業績4 地球の温度を数学で考えた(温室効果の先がけ)

フーリエは、地球の温度についても考えました。1820年代の論文で、「地球が太陽から受ける熱と、宇宙へ逃がす熱の関係」を論じ、大気がまるでガラスのおおいのように熱を閉じこめる可能性を指摘したといわれます。これが、のちに「温室効果」とよばれる考え方の先がけの1つです。

ただし、二酸化炭素などの気体がどのくらい熱を吸収するかを、実験で示したのは、のちの時代の科学者たちです。フーリエは、地球の温度を数式で考えることの、最初期の人物の1人といえます。

業績5 『エジプト誌』への貢献と古代エジプト研究

フーリエは、エジプト遠征でつくられた大型の調査記録『エジプト誌』のまとめ役を務め、序文を書いたとされます。この記録は、のちのエジプト学のもとになりました。フーリエは、グルノーブルの県知事のとき、少年だったシャンポリオン(のちにロゼッタストーンの文字を読み解いた人)の才能を見いだし、励ましたと伝えられます。数学者でありながら、学問全体を支えた人でもありました。

業績6 身近なところで働くフーリエ:MP3・JPEG・ノイズ除去

フーリエの考え方は、いまのスマートフォンの中で毎日使われています。たとえば音楽のデータ(MP3)では、音を周波数ごとの成分に分けたあと、人の耳にほとんど聞こえない高さの成分や、大きな音にかくれてしまう小さな成分を思い切って減らします。すると、聞こえ方はほとんど変わらないのに、データの大きさは10分の1ほどになります。

写真のデータ(JPEG)も同じです。写真を小さなブロックに区切り、明るさの変化を「ゆるやかな変化」と「こまかい変化」に分けます。目につきにくいこまかい変化を減らすことで、写真を小さくします(実際には、サインとコサインを使う「離散コサイン変換」という、フーリエ変換の仲間が使われています)。

さらに、ノイズ(雑音)を消すときにも使います。ざあざあという雑音の成分は、特定の周波数にかたまっていることが多いので、スペクトルを見て、その成分だけを小さくすれば、元の音を取り出せます。ラジオのチューニング(見たい局の周波数だけを取り出す)や、地震の波の分析、心電図の解析、天気予報の計算にも、フーリエ変換の考えが入っています。

フーリエ自身は、MP3やJPEGを想像することはできなかったはずです。しかし、「複雑なものを単純な波の和に分ける」という考え方が、200年以上のちの世界で、これほど役立つようになったのです。

フーリエの名前がつく公式・定理・用語

  • フーリエ級数:周期関数を、サインとコサインの和で表したもの。→ フーリエ級数の公式・求め方・例題
  • フーリエ係数:フーリエ級数の係数 an,bna_n, b_n。積分で求めます。
  • フーリエ変換・逆変換:時間の関数と、周波数の関数をむすぶ変換。大学の工学・物理で必須。
  • 高速フーリエ変換(FFT):フーリエ変換を速く計算するアルゴリズム(1965年のクーリーとテューキーの論文が有名)。
  • フーリエの熱伝導の法則:熱は温度の高い方から低い方へ流れ、流れの大きさは温度の傾きに比例する。
  • 熱の方程式(熱伝導方程式):温度の時間変化を表す偏微分方程式。
  • フーリエ解析:フーリエ級数・フーリエ変換にまつわる数学の分野の総称。
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

高校で習うサイン・コサインの周期・振幅・合成が、フーリエの出発点だよ。三角関数のグラフを、「波」として見るくせをつけておくと、大学で習うフーリエ級数がずっと楽になるよ。

フーリエの逸話と名言

冬でも、部屋をとても暑くした?

フーリエは、熱の研究に打ち込むあまり、「熱の効果は体にいい」と信じるようになったといわれます。晩年は、真夏のようにあたためた部屋で、厚い服を何枚も着て過ごしていた、と伝えられます。訪ねてきた客が、部屋の暑さにおどろいたという話もあります。この話は、フーリエの死因と結びつけて語られることがありますが、どこまで本当か、確かめることはむずかしいです。

ラグランジュの反対

1807年にフーリエが論文を提出したとき、審査した学者の中にラグランジュがいました。伝えられるところでは、ラグランジュは、「サインとコサインの和で、角のある関数が表せるはずがない」と強く反対したといいます。当時は、サインのような「なめらかな関数」の和は、やはりなめらかな関数になると思われていたからです。フーリエの論文は、すぐには出版されませんでした。

その後の数学者たち、特にディリクレ(1829年)が、フーリエ級数がきちんと収束する条件をはっきりさせました。そしてリーマンの積分の定義や、カントールの集合論も、フーリエ級数を正しく理解したいという動機から生まれたといわれます。

自然を深く研究することは、数学の発見のもっとも豊かな源である。

フーリエ(『熱の解析的理論』(1822年)の序文(予備的論説)の趣旨。言い回しは訳によってちがう)

エッフェル塔に名前が刻まれた

パリのエッフェル塔には、フランスの科学者・技術者72人の名前が刻まれています。その中には、フーリエの名前もあります。ほかに、ラグランジュ・ラプラス・ルジャンドル・コーシーなども並びます。19世紀のフランスが、科学を大切にしていたことを示す例です。

数学と現実をつなぐ人

フーリエは、数学を「自然現象を理解するための言葉」と考えていました。熱、地球の温度、音や光——それらを式で表して予想できるようになることを、数学の目的にしたのです。こうした見方は、現代の物理学や工学にも受けつがれています。

サクラちゃん

サクラちゃん

ラグランジュさんは、フーリエさんの考えに反対したんですよね。それでもフーリエさんは、あきらめなかったんですか?

合格先生

合格先生

そうだね。フーリエは自分の考えを信じて、改良を続けた。そして、その考えが完全に正しいと数学的に確かめられたのは、フーリエの死後だった。新しい考えは、はじめは理解されないことがある、という見本だよ。

受験・勉強とフーリエのつながり

中学受験:周期とくり返しの問題

中学受験では、サインの波は出ませんが、周期的な動き(くり返しの規則)が出ます。時計の針、日付と曜日、旅人算やグラフの問題などです。「くり返しの一周期を調べる」考え方は、フーリエ級数と同じです。

高校受験:グラフと波の入口

高校受験の理科では、音の波形(オシロスコープの画面)から、音の高さや大きさを読み取る問題が出ます。波の山の高さが振幅(しんぷく)、1回分の長さが波長、1秒あたりの波の数が振動数(周波数)です。これは、フーリエの考え方の入口になります。

大学受験:三角関数・積分・極限

大学受験では、フーリエそのものは出ませんが、使う道具がたくさん出ます。

  • 三角関数のグラフ・周期・合成(数学Ⅱ):三角関数のグラフの描き方。
  • 三角関数の積分(数学Ⅲ):∫02πsin⁡mxsin⁡nx dx\int_0^{2\pi}\sin mx\sin nx\,dx は m≠nm\ne n のとき0、などの計算。これは直交性(ちょっこうせい)という、フーリエ級数のかなめの性質です。
  • 無限級数(数学Ⅲ):収束と発散を理解しておくと、フーリエ級数の意味が分かります。

難関大学の入試問題には、三角関数の積分を使うものが多く、京大理系数学の出題分析(積分・微分の出題傾向)で出題の頻度を確かめられます。数学の記号に慣れるには、数学でよく使う記号の意味一覧(Σ・∫・π)も役に立ちます。

理科の波・音・光とのつながり

中学理科の「音の大きさと高さ」では、振幅が大きいほど音が大きく、振動数が多いほど音が高いと習います。高校物理の「波」の単元では、山と谷が進んでいく波を y=Asin⁡(ωt−kx)y=A\sin(\omega t-kx) のような式で表します。この AA が振幅、ω\omega が角振動数です。ギリシャ文字の読み方はギリシャ文字の読み方一覧(24文字)で確かめておくと、物理の式も読みやすくなります。数学と理科の両方で「波」を学んだとき、その先にフーリエの考え方があると知っておくと、勉強がつながって見えてきます。

勉強法として:「複雑なものを、単純な部品に分ける」

フーリエの考え方は、「複雑なものは、単純な部品の和として見る」ということです。難しい問題も、小さな問題に分けると解きやすくなります。勉強の計画も、1日の目標や週ごとの目標に分けると続けやすくなります。数学の勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

フーリエがその後の数学にあたえた影響

  • 数学の厳密化:フーリエ級数が本当に収束するのか、という疑問から、コーシー・ディリクレ・リーマンらによる、解析学の厳密な土台作りが進みました。
  • 関数の概念の広がり:「関数とは何か」という問いが、フーリエ級数をきっかけに深められました。のちの集合論や測度論(ルベーグ積分)につながります。
  • 物理学・工学:電気回路、振動、音響学、光学、量子力学の基本の道具です。量子力学の「位置と運動量」の関係は、フーリエ変換で結ばれています。
  • 情報技術:MP3、JPEG、MPEG(動画)、Wi-Fiや携帯電話の通信、CTやMRIの画像再構成にも、フーリエ変換が使われています。
  • 気候科学:地球の温度を物理で考える発想は、現代の気候モデルにつながっています。

四角い波の角の部分には、サインを何個足しても、約9%ほどの「出っぱり」が残ることが知られています。これはギブズ現象とよばれ、1898年にアメリカの物理学者ギブズが指摘しました(それより前の1848年に、イギリスのウィルブラハムが気づいていたとされます)。足す数を増やしても出っぱりの高さは変わらず、幅だけがせまくなります。「無限に足せば、かならずぴったり重なる」とは限らない、という例で、フーリエ級数の収束の難しさを教えてくれます。図1の青い線の角のあたりでも、少し出っぱっているのが分かります。

フーリエが残した考え方は、「どんな複雑な現象も、単純な波の組み合わせで理解できる」ということです。デジタル社会のしくみの多くが、この発想の上に成り立っています。

フーリエに挑戦!練習問題

やさしい

  1. y=cos⁡3xy=\cos3x の周期を求めなさい。
    答えと解説を見る周期は 2π3\dfrac{2\pi}{3}。(cos⁡kx\cos kx の周期は 2πk\dfrac{2\pi}{k})答えは2π3\dfrac{2\pi}{3}。
  2. y=sin⁡x+sin⁡3xy=\sin x+\sin3x の周期を求めなさい。
    答えと解説を見るsin⁡x\sin x の周期は 2π2\pi、sin⁡3x\sin3x の周期は 2π3\dfrac{2\pi}{3}。どちらも 2π2\pi だけずらすと元にもどるので、周期は2π2\pi。

ふつう

  1. ∫02πsin⁡2x dx\displaystyle\int_0^{2\pi}\sin^2x\,dx を求めなさい。
    答えと解説を見るsin⁡2x=1−cos⁡2x2\sin^2x=\dfrac{1-\cos2x}{2}。∫02π1−cos⁡2x2dx=[x2−sin⁡2x4]02π=\displaystyle\int_0^{2\pi}\dfrac{1-\cos2x}{2}dx=\left[\dfrac x2-\dfrac{\sin2x}{4}\right]_0^{2\pi}= π\pi。
  2. ∫02πsin⁡xsin⁡2x dx\displaystyle\int_0^{2\pi}\sin x\sin2x\,dx を求めなさい。(フーリエ級数の直交性の例)
    答えと解説を見る積を和に直すと sin⁡xsin⁡2x=12(cos⁡x−cos⁡3x)\sin x\sin2x=\dfrac12(\cos x-\cos3x)。00 から 2π2\pi までの cos⁡x\cos x と cos⁡3x\cos3x の積分はどちらも0なので、答えは0。

むずかしい

  1. −π<x<π-\pi<x<\pi で f(x)=xf(x)=x のとき、フーリエ係数 b1=1π∫−ππxsin⁡x dxb_1=\dfrac1\pi\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}x\sin x\,dx を求めなさい。
    答えと解説を見る部分積分で ∫xsin⁡x dx=−xcos⁡x+sin⁡x\int x\sin x\,dx=-x\cos x+\sin x。[−xcos⁡x+sin⁡x]−ππ=π−(−π)=2π[-x\cos x+\sin x]_{-\pi}^{\pi}=\pi-(-\pi)=2\pi。よって b1=2ππ=b_1=\dfrac{2\pi}{\pi}= 2。
  2. (上の問題の続き)f(x)=xf(x)=x の展開 x=2(sin⁡x−sin⁡2x2+sin⁡3x3−⋯ )x=2\left(\sin x-\dfrac{\sin2x}{2}+\dfrac{\sin3x}{3}-\cdots\right) に x=π2x=\dfrac\pi2 を代入して、1−13+15−⋯1-\dfrac13+\dfrac15-\cdots の値を求めなさい。
    答えと解説を見るsin⁡π2=1\sin\dfrac\pi2=1、sin⁡π=0\sin\pi=0、sin⁡3π2=−1\sin\dfrac{3\pi}{2}=-1、sin⁡2π=0\sin2\pi=0、sin⁡5π2=1\sin\dfrac{5\pi}{2}=1 …。右辺は 2(1−13+15−⋯ )2\left(1-\dfrac13+\dfrac15-\cdots\right)。左辺は π2\dfrac\pi2。よって求める値はπ4\dfrac\pi4。

フーリエと関係する数学者

数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、ギリシャ文字(ω・π・Σ)の読み方はギリシャ文字の読み方一覧(24文字)もどうぞ。

18世紀の数学者

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読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

フーリエは何をした人ですか?

フーリエは、18〜19世紀のフランスの数学者・物理学者です。熱の伝わり方の研究から、周期のある波をサインとコサインの和で表すフーリエ級数を作りました。ナポレオンのエジプト遠征に同行し、県知事も務めています。

フーリエ級数とは何ですか?

周期のある関数を、サインとコサインの波を足し合わせた無限級数で表したものです。たとえば四角い波も、サインの波をだんだん小さな割合で足していくと作れます。熱の方程式を解くためにフーリエが考えました。

フーリエ変換とは何ですか?

時間とともに変わる波(音や電気信号)を、周波数ごとの成分に分ける変換です。フーリエ級数の考え方を、周期のない波にも使えるように広げたものです。音声の圧縮、画像処理、通信などに広く使われています。

熱の方程式とは何ですか?

物の中で温度がどう変化するかを表す偏微分方程式です。温度の時間変化が、位置についての2回微分に比例します。フーリエが熱の伝わり方を調べて、1807年の論文や1822年の『熱の解析的理論』で扱いました。

フーリエはなぜナポレオンと関係があるのですか?

1798年のナポレオンのエジプト遠征に、フーリエは学者として同行しました。のちにナポレオンは、フーリエをイゼール県の知事に任命しました。その間に、熱の研究が進められました。

フーリエはいつ、どこで亡くなりましたか?

フーリエは1830年5月16日にパリで亡くなりました。62歳でした。1768年3月21日にフランス中部のオーセールで、仕立て屋の子として生まれ、10歳までに両親を亡くしたと伝えられます。

フーリエの論文はなぜ反対されたのですか?

1807年の論文で、角のある関数もサインの和で表せると主張したためです。ラグランジュらは、なめらかなサインを足してもなめらかな関数にしかならないはずだと考えました。のちにディリクレらが、正しい条件を示しました。

フーリエは温室効果と関係がありますか?

1820年代の論文で、地球の温度を決めるしくみを考え、大気が熱をとじこめる可能性を論じたといわれます。温室効果の先がけの1つとされますが、二酸化炭素の働きが実験で調べられたのは、のちの時代です。

フーリエは受験にどう関係しますか?

三角関数のグラフ・周期・合成、三角関数の積分、無限級数が、フーリエの考え方の基礎です。大学入試にフーリエ級数そのものは出ませんが、直交性の積分計算がよく出ます。理科の波の単元もつながります。

フーリエ変換は身のまわりのどこで使われていますか?

MP3の音楽、JPEGの写真、スマートフォンやWi-Fiの通信、ノイズを消す機能、MRIやCTの画像づくり、地震や心電図の分析などで使われています。複雑な信号を周波数ごとの成分に分けて、必要な部分だけを取り出したり減らしたりします。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics, “Joseph Fourier”(セント・アンドルーズ大学)
  • J. Fourier, “Théorie analytique de la chaleur”(1822年)
  • 肖像画:Julien-Léopold Boilly「Joseph Fourier」、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦