カントールは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|集合論・対角線論法・無限の大きさ

カントールは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|集合論・対角線論法・無限の大きさ

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カントールGeorg Cantor

ひとことで言うと

「無限にも大きさのちがいがある」ことを証明し、集合論をつくった数学者。対角線論法は、現代数学とコンピュータ科学の土台になった。

名前ゲオルク・カントール(Georg Cantor)
生没年1845年3月3日〜1918年1月6日(72歳)
国ドイツ(ロシアのサンクトペテルブルク生まれ、ハレ大学で活躍)
分野集合論・解析学・数学基礎論
主な業績集合論の創始、濃度(無限の大きさ)の理論、実数がかぞえられないことの証明、対角線論法、超限数、連続体仮説の提起
名前がつくものカントールの対角線論法・カントールの定理・カントール集合・カントール・ベルンシュタイン・シュレーダーの定理
よばれ方集合論の父

このページのポイント

  • 自然数・整数・分数は同じ数(可算)。でも実数はそれより多い――ということを、対角線論法で証明した
  • 集合のすべての部分集合を集めると、かならず元より大きい(カントールの定理)。無限の大きさの階段には終わりがない
  • 考え方は集合・背理法・1対1対応。中学受験のベン図から、大学の濃度・計算可能性まで、受験勉強の「集合」の土台

カントールは何をした人?(業績をひとことで)

ゲオルク・カントール(1845〜1918年)は、ドイツの数学者です。集合論(ものの集まりを数学として調べる分野)をほぼ一人で作り上げ、「無限にも大きさのちがいがある」ことを世界ではじめて証明した人として知られています。その証明に使った対角線論法は、現代数学とコンピュータ科学の最も重要な考え方の一つです。

カントール以前、「無限」は数学者がふれてはいけない話題でした。「無限はどこまでいっても無限で、数えられない」と考えられていたからです。カントールは、無限の集まりを「1対1に結ぶ」ことで比べる方法を考え、自然数(1, 2, 3, …)や分数と同じ数の「かぞえられる無限」と、実数のようにそれよりも大きな「かぞえられない無限」があることを示しました。今の数学は、ほとんどすべてが集合の言葉で書かれています。中学・高校で習う集合の意味と記号の記号 ∪\cup・∩\cap や補集合の意味と求め方も、カントールの仕事の子孫です。

受験生にとってのカントールは、集合の考え方の生みの親です。中学受験では集合の要素の個数(ベン図と包除原理)、高校では集合と命題、大学では実数の性質や濃度の話に進みます。この記事では、実数とはと自然数・整数を比べるとき、何が起きるのかを図でたどります。

うかるくん

うかるくん

無限って、どれも同じ「ずっと続く」じゃないの? 大きいとか小さいとかあるんですか?

合格先生

合格先生

そこがカントールのすごいところだよ。無限どうしも「1対1に結べるか」で比べられるんだ。自然数と偶数は同じ数だけあるのに、自然数と実数は実数のほうが「もっと多い」。信じられないけれど、証明できるんだ。

ゲオルク・カントールの肖像写真(1870年ごろ)
25歳ごろのカントール(1870年ごろの写真)画像:作者不明/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

カントールの生涯と年表

ロシア生まれ、音楽一家の長男

カントールは1845年3月3日、ロシア帝国の首都サンクトペテルブルクで生まれました。父は商人で、母の家は音楽家の家系でした。カントール自身もバイオリンがとても上手で、のちに数学者になってからも芸術への関心を持ちつづけたといわれます。1856年ごろ、一家はドイツに移り、ヴィースバーデン、フランクフルトで暮らしました。

ベルリンでワイエルシュトラスに学ぶ

カントールは最初、技術者になるようすすめられましたが、数学の道に進みたいと父を説得しました。チューリッヒ大学を経て、1863年にベルリン大学へ。ここでワイエルシュトラス(解析学の厳密化)らに学び、1867年に整数論の論文で博士号を取りました。ワイエルシュトラスの「極限や実数を厳密に定義する」という学風は、のちのカントールの仕事の土台になります。

ハレ大学へ。実数の研究から集合論が生まれる

1869年、カントールは中部ドイツのハレ大学に就職します。同僚のハイネに勧められて「三角級数の一意性」を研究するうちに、実数の集まり(点の集合)を詳しく調べる必要が出てきました。ここから、無限集合の研究が始まります。1872年にはスイスの休暇地でデデキント(実数の切断)と出会い、以後、手紙で数学の議論を交わす生涯の友となりました。

1873年12月:実数はかぞえられない

1873年12月7日、カントールはデデキントへの手紙で、実数は自然数のように番号をつけられないことの証明を書きました。この結果は1874年の論文「すべての実代数的数の集まりの1つの性質について」として発表されます。一方で、オイラーの時代からの課題だった「方程式の解になる数(代数的数)」は自然数と同じ数しかないことも示し、「方程式の解にならない数(超越数)が、ほとんどすべての実数だ」という結論が出てきました。

批判と病気

カントールの理論は、同じベルリンで師でもあったクロネッカーから強く批判されました。クロネッカーは「整数は神がつくり、ほかはすべて人間の仕事だ」という立場で、無限を実際に存在するものとしてあつかうカントールを認めなかったと伝えられます。カントールは1884年ごろから心の病(うつ状態など)をくりかえすようになり、その後の生涯でも何度か入院しました。批判のストレスが原因だったと語られることもありますが、専門家の間でも見方は分かれています。

晩年の評価

1890年代に入ると、カントールの仕事は次第に評価されます。1890年にはドイツ数学者協会を作って初代会長となり、1897年にスイスのチューリッヒで開かれた第1回国際数学者会議の開催にも力を尽くしました。1904年にはイギリスの王立協会からシルベスター・メダルを受け、ヒルベルトは「カントールがつくった楽園から、だれも私たちを追い出せない」と述べて支持しました。カントールは1918年1月6日、ハレの療養施設で心臓の病のため72歳で亡くなりました。

年できごと
1845年3月3日、ロシアのサンクトペテルブルクで生まれる
1856年ごろ一家でドイツに移り、ヴィースバーデン・フランクフルトで育つ
1863年ベルリン大学に移り、ワイエルシュトラスらに学ぶ
1867年ベルリン大学で博士号(整数論の論文)
1869年ハレ大学の講師になる
1872年デデキントと出会う。ハレ大学の員外教授になる
1873年12月7日、実数がかぞえられないことを証明(デデキントへの手紙)
1874年実数の集合論の最初の論文を発表。ヴァリー・グットマンと結婚
1877年直線と平面は同じ数の点を持つと発見し、手紙に「見えているのに信じられない」と書く
1879年ハレ大学の教授になる
1883年『一般集合論の基礎』を出版。カントール集合を紹介
1884年最初の大きな心の病の発作
1890年ドイツ数学者協会を作り、初代会長になる
1891年対角線論法の論文を発表
1895年〜1897年『超限集合論の基礎づけへの寄与』(2編)を発表
1918年1月6日、ハレで亡くなる(72歳)

カントールの主な業績をやさしく解説

業績1 無限どうしを「1対1」で比べる

2つの集まりが「同じ数」かどうかは、数えなくても調べられます。1つずつ線で結んで、あまりが出なければ同じ数です。たとえば、講堂に人がいて、いすがある。全員が座って、いすもあまらなければ、人の数といすの数は同じです。カントールは、この考え方を無限の集まりにも使いました。

1対1に結べれば「同じ数」12345…246810…自然数 と 偶数12345…01-12-2…自然数 と 整数
自然数と偶数は、n と 2n を結べば1対1。自然数と整数も、0, 1, −1, 2, −2, … と順に結べる

自然数は 1, 2, 3, … と終わりなく続き、偶数 2, 4, 6, … はその半分に見えます。しかし、自然数 nn に偶数 2n2n を結べば、あまりなく1対1に対応します。つまり無限の集まりでは、「一部分」が「全体」と同じ数になることがあるのです。ガリレオ・ガリレイも似たことに気づきましたが、「だから無限は比べられない」と考えました。カントールは逆に「だから無限の集まりの数え方は、有限とは別の決まりで考えよう」と進んだのです。

このような、自然数と1対1に結べる集まりを「かぞえられる(可算)」といい、その大きさをℵ₀(アレフゼロ)とよびます。ℵ はヘブライ文字の最初の字で、カントールが無限の大きさを表すために選びました。整数も、番号のつけ方をくふうすれば、自然数と整数が同じ数だけあることがわかります。

業績2 分数(有理数)は自然数と同じ数

数直線上で、分数はぎっしりつまっています。どんな2つの分数の間にも、またべつの分数があります。そのため、「分数のほうが自然数よりずっと多い」と感じます。ところが、カントールは分数も、自然数と同じ数しかないことを示しました。

分数をジグザグにたどる1/12/13/14/11/22/23/24/21/32/33/34/31/42/43/44/4分子 → 1・2・3・41/1 が1番目、1/2 が2番目、2/1 が3番目 …分母
分数を表にならべ、ななめにジグザグにたどれば、すべての分数に1番、2番…と番号をつけられる(2/2 のように重なるものは飛ばす)

表の横が分子、たてが分母です。表をななめにジグザグたどれば、どの分数もいつかは必ず通ります。番号をつけられるので、分数(正の有理数とは)は自然数と同じ「かぞえられる無限」です。さらにカントールは、方程式 anxn+⋯+a0=0a_nx^n+\cdots+a_0=0 の解になる代数的数(2\sqrt{2} など)も、自然数と同じ数しかないことを示しました。

業績3 対角線論法:実数は「かぞえられない」

では、実数はどうでしょうか。ここで、カントールの最も有名な証明が登場します。1891年の対角線論法です。0 と 1 の間の実数が、すべて番号つきでならべられると仮定します(背理法の使い方です)。

対角線論法(0と1の間の数)r1=0.314159r2=0.718281r3=0.500000r4=0.414213r5=0.618033r6=0.577215新しい数=0.444444赤い数字(ななめ)と別の数字にした数は、表のどこにもない
表のななめ(赤)の数字を、すべて別の数字(4)に変えて新しい数をつくる。この数は、表のどの数ともどこかの桁がちがう

表の1番目の数の1桁目、2番目の数の2桁目、3番目の数の3桁目、……とななめに数字を拾い、それぞれとちがう数字にしていきます。(ここでは「4なら5、それ以外は4」と決めました。0 と 9 を使わないのは、0.4999⋯=0.50.4999\cdots=0.5 のような別の書き方のまぎれを避けるためです。)こうしてできた数は、1番目の数とは1桁目が、2番目の数とは2桁目が……と、表のどの数ともかならずどこかの桁がちがいます。つまり、表にのっていない実数が必ず存在します。

「すべてをならべた」はずの表にのらない数ができてしまったので、仮定がまちがいでした。したがって、実数は自然数のようには並べられない、つまり実数のほうが「大きな無限」です。この大きさを連続体の濃度(cc や 2ℵ02^{\aleph_0})とよびます。考え方はたった一つの「ななめに見る」アイデアなのに、無限の世界を二つに分けてしまいました。

業績4 もっと大きな無限と、カントールの定理

カントールは、さらに無限に大きさの階段があることも示しました。どんな集合 AA でも、そのすべての部分集合を集めた集合(べき集合)は、AA 自身よりもかならず大きいのです。これをカントールの定理といいます。

無限にも大きさの階段がある3段め:実数の集合をすべて集めたもの関数全体など(さらに大きい)2段め:連続体(c)実数・直線・平面・空間1段め:ℵ₀(アレフゼロ)自然数・整数・有理数・代数的数「集合のすべての部分集合を集める」と、かならず1段大きくなる
べき集合をつくるたびに、無限の大きさが1段ずつ上がる。自然数→実数→実数の部分集合の集まり…と終わりがない

有限の集合なら、確かめるのは簡単です。要素が3個の集合 {a,b,c}\{a,b,c\} の部分集合は、何も選ばない場合も入れて 23=82^3=8 個あり、8>38>3 です。一般に、要素が nn 個なら部分集合は 2n2^n 個で、必ず 2n>n2^n>n になります。カントールは、これが無限集合でも成り立つことを、対角線論法と同じ考え方で証明しました。ですから、無限の階段には最上段がありません。集合の要素の個数の考え方を、無限まで広げたものです。

業績5 線と面、短い線分と長い線分も「同じ数」

1877年、カントールは、線分の点と正方形の点が1対1に対応することを発見しました。直線(1次元)より平面(2次元)のほうが点が多いはずだと思っていたカントールは、自分の証明が信じられず、デデキントへの手紙に「見えている。しかし信じられない」と書いたと伝えられています(原文はフランス語で “Je le vois, mais je ne le crois pas”)。

短い線分と直線は「同じ数」の点PAB直線全体(どこまでも長い)※線分は両はしをのぞいて考える
上の点Pから線をのばすと、短い線分ABの点と直線上の点が1つずつ結ばれる。短い線分にも、直線全体と同じ数の点がある

もっと簡単な例は、短い線分と直線です。図のように、上の点Pから線をひくと、線分上の点がかならず直線上の点に1つずつ対応します。短い線分は、どこまでも長い直線と同じ数の点を持っているのです。直感と数学が食いちがうとき、数学は「1対1の対応」という物差しで決着をつけます。

業績6 カントール集合と連続体仮説

線分から真ん中の3分の1をくりぬく操作をくりかえすと、カントール集合ができます(1883年の論文にのっています)。

カントール集合(まん中をくりぬく)0回残り 11回残り 2/32回残り 4/93回残り 8/274回残り 16/81無限にくりかえすと、長さは0なのに点は「実数と同じ数」
線分の真ん中3分の1を取り除く操作を5回くりかえした図。のこる線分は2倍ずつふえ、長さの合計は (2/3)ⁿ で0に近づく

くりかえすたびに残りの長さは 23\tfrac23 倍になり、無限回やると、長さは 0 になります。ところが、残った点の数は実数と同じ、つまり「長さ0なのに、点は実数ほどたくさんある」という不思議な集合です。こうした「ぎざぎざ」の図形は、のちにマンデルブロ(フラクタル)のフラクタルへとつながります。

カントールはまた、「ℵ₀ と連続体 cc の間の大きさの無限は存在するか」という問いを立て、これを連続体仮説とよびました。カントールは生涯この問題を解けませんでした。1900年にヒルベルトが出した「23の問題」の第1問になり、その後、ゲーデル(1940年)とポール・コーエン(1963年)が、「いまの集合論の公理だけでは、正しいとも誤りとも決められない」ことを証明しました。カントールの問いは、数学の「証明できることの限界」まで見せてくれたのです。

カントールの名前がつく公式・定理・用語

カントールの名前は、集合論の基本的な用語にたくさん使われています。高校の教科書にはほとんど出てきませんが、大学の数学や情報科学の入口になる言葉ばかりです。

  • カントールの対角線論法:実数が自然数より多いことの証明。のちにチューリングやゲーデルの定理の証明にも使われます。
  • カントールの定理:集合 AA のべき集合は、AA よりも濃度が大きい。
  • カントール集合:線分の真ん中3分の1を取り除く操作を無限にくりかえしてできる集合。フラクタルの原型です。
  • カントール・ベルンシュタイン・シュレーダーの定理:集合 AA から BB への1対1の写像と、BB から AA への1対1の写像があれば、AA と BB は同じ濃度。
  • 濃度・可算(かぞえられる)・連続体濃度・ℵ₀(アレフゼロ)・超限順序数(ω\omega など)。
  • 連続体仮説:ℵ₀ と cc の間の濃度はあるか、という問い。
  • カントールのパラドックス:「すべての集合の集合」を考えると矛盾が出る、という指摘。

高校数学で「集合」を学ぶときの基本の記号 ∈\in, ⊂\subset, ∪\cup, ∩\cap は、共通部分・和集合や補集合の意味と求め方として出てきます。また、「ない」ことを証明する背理法の使い方は、対角線論法の中心になる証明法です。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

集合論の記号は、ほとんどカントールの時代に整ったものなんだ。∪\cup は「または」、∩\cap は「かつ」。そして「1対1に結べるか」という発想は、プログラミングの世界でも大活躍しているよ。

カントールの逸話と名言

博士論文のことば:「問いを立てる技のほうが大切」

カントールは博士論文の最後に、いくつかの主張(テーゼ)をつけました。その中に、ラテン語で「数学では、問題を解くよりも問いを立てる技のほうが大事にされるべきだ」という意味の一文があったと伝えられます。実際に、カントールは「無限の大きさは比べられるか」という新しい問いを立てることで、数学の世界を広げた人でした。

数学の本質は、その自由にある。

カントールの言葉として伝えられるもの(1883年の著作『一般集合論の基礎』の中の言葉として紹介される。ドイツ語では “Das Wesen der Mathematik liegt gerade in ihrer Freiheit”)

「見えているのに信じられない」

線分と平面の点が同じ数だとわかったとき、カントールがデデキントに書いた「見えている。しかし信じられない」は、数学史で最も有名な手紙の一節の一つです。直感に反する結論でも、論理がまちがっていなければ受け入れる――数学者の姿勢がよく表れています。

クロネッカーとの対立

師でもあったクロネッカーは、カントールを激しく批判したといわれます。ある手紙では「科学のペテン師」「青年をだますもの」とまで書いたと伝えられますが、ことばの細部は資料によって差があります。クロネッカーの影響で、カントールはベルリン大学のような大学に移ることができず、地方のハレ大学で一生を過ごしました。

神とカントール

カントールは熱心なキリスト教徒で、ローマ教皇庁の神学者たちとも手紙をやりとりして「実際に存在する無限は神の考えに反しないか」を語り合ったと伝えられます。カントールは、無限集合論は神がもたらした真理だと信じていたともいわれます。数学者でありながら、哲学や神学にも深い関心を持っていた人でした。

ヒルベルトの「楽園」のことば

ヒルベルトが1925年ごろの講演で述べたとされる「カントールが私たちのためにつくった楽園から、だれも私たちを追い出すことはできない」という言葉は、集合論の支持を表す名言として知られています。無限ホテルの話(ヒルベルトのホテル)は、カントールの考え方をやさしく説明するための例えです。

サクラちゃん

サクラちゃん

自分の考えを、同じ数学者に否定されつづけるなんて、つらかったでしょうね……。

合格先生

合格先生

そうだね。でも証明が正しければ、時間がかかっても数学は認めてくれる。カントールの仕事は、今では数学の土台になっているよ。入試でも、「わからない」と投げ出さず、論理で一歩ずつ進める姿勢が大切だね。

受験・勉強とカントールのつながり

中学受験:集合と場合の数

中学受験の算数では、ベン図を使って「両方に当てはまる人の数」を求める問題が出ます。これは集合の考え方の入口で、カントールが整えた集合の言葉を、小学生向けにやさしくしたものです。基本の公式は「A または B = A + B - 両方」です。詳しくは集合の要素の個数と包除原理にまとめました。

高校受験:集合の記号と「例外を探す」考え方

高校受験では集合そのものは少なめですが、「ある数がどの集まりに入るか」を考える力は、数の分類(自然数・整数・有理数・無理数)で必要です。2\sqrt2 が無理数とはである証明も、背理法を使います。

大学受験:集合と命題、背理法、写像

高校の数学Ⅰでは、集合と命題を学びます。集合の意味と記号の包含関係、補集合の意味と求め方、ド・モルガンの法則、必要条件・十分条件などです。また、対角線論法と同じ「仮定して矛盾を導く」背理法は、背理法とはとして多くの証明問題で登場します。反例の使い方を1つ挙げて命題が成り立たないことを示す考え方も、カントールの「表にのらない数をつくる」手法と近いものです。

大学の数学科では、集合・写像・濃度を最初に学びます。自然数と整数が同じ数であることを示す問題や、「実数全体は可算でない」ことを示す問題は、ほぼ定番です。京大・東大などの難関大学でも、数列や集合の個数を「ちょうど決めてかぞえる」問題が出題され、京大理系数学の出題分析(整数・確率の出方)が参考になります。

勉強法として:疑いから考える

カントールの発見は、「当たり前だと思っていたこと」を疑うことから始まりました。「無限はどれも同じ」と思いこまず、「本当に?」と問う。問題を解くときも、答えを丸暗記するのではなく「なぜそうなるか」を自分の言葉で説明できるようにしておくと、初めて見る問題にも対応できます。数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。数学の記号の意味は数学でよく使う記号の意味一覧(∞・Σ・∫)にまとめています。

カントールがその後の数学にあたえた影響

  • 数学の土台としての集合論:数も関数も図形も、すべて「集合」で定義できるようになりました。20世紀の数学は、集合論を土台にして書き直されます。ラッセル(ラッセルのパラドックス)が集合論の矛盾を指摘したことで、ツェルメロらが公理的集合論をつくりました。
  • 数学基礎論:「数学とは何か」を考える分野。ヒルベルトの形式主義、フレーゲの論理主義、そしてゲーデルの不完全性定理へと発展しました。
  • 計算機科学:チューリング(計算できない問題)は、対角線論法を使って「どんなプログラムでも判定できない問題」があることを示しました。計算可能性の理論は、カントールの考え方の応用です。
  • 実解析・測度論:ルベーグ(ルベーグ積分)は、集合の「長さ」をはかる測度論を築きました。カントール集合は、その重要な例です。
  • フラクタル:カントール集合は、自己相似な図形(フラクタル)の最初の例の一つとされ、マンデルブロのフラクタル幾何学につながります。

カントールが名づけた「かぞえられない無限」の考え方は、現代の確率論や統計学(連続な確率分布は、1点の確率が 0 になる理由)にも関わります。

カントールに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 自然数 1, 2, 3, … と、奇数 1, 3, 5, … は同じ数だけありますか。1対1の結び方を説明しなさい。
    答えと解説を見る自然数 nn に奇数 2n−12n-1 を結べば、あまりなく結べます(1→1、2→3、3→5、…)。したがって同じ数(どちらもかぞえられる無限)です。
  2. 3つの要素 {a,b,c}\{a,b,c\} の部分集合は、何も選ばない場合も入れて全部で何個ありますか。
    答えと解説を見る各要素について「入れる・入れない」の2通りが3回なので 23=2^3= 8個です。(何も入れない集合、{a}\{a\}, {b}\{b\}, {c}\{c\}, {a,b}\{a,b\}, {a,c}\{a,c\}, {b,c}\{b,c\}, {a,b,c}\{a,b,c\})

ふつう

  1. 線分から「真ん中の3分の1」を取り除く操作を3回くりかえしたとき、のこっている長さの合計は、もとの長さの何倍ですか。
    答えと解説を見る1回ごとに 23\tfrac23 倍になるので、3回で (23)3=\left(\tfrac23\right)^3= 8/27倍です。
  2. 次の4つの数を上から順にならべたとします。「nn番目の数のnn桁目が4なら5、それ以外なら4」にした数を、小数第4位まで答えなさい。
    0.1234… 0.4467… 0.8901… 0.2345…
    答えと解説を見る対角線の数字は 1, 4, 0, 5。1→4、4→5、0→4、5→4 なので、新しい数は 0.4544…。この数は、1番目から4番目のどの数ともどこかの桁がちがいます。

むずかしい

  1. 整数を 0, 1, −1, 2, −2, 3, −3, … の順に、1番目、2番目、3番目、…とならべます。−5 は何番目ですか。また、100 は何番目ですか。
    答えと解説を見る0 が1番目、1が2番目、−1が3番目、2が4番目…と、正の整数 kk は 2k2k 番目、負の整数 −k-k は 2k+12k+1 番目です。−5 は 11番目、100 は 200番目。
  2. 10個の要素を持つ集合の部分集合の個数を求め、その個数が元の要素の数10より大きいことを確かめなさい。
    答えと解説を見る210=2^{10}= 1024個。1024 は 10 よりずっと大きいので、部分集合の集まりのほうが多くなっています。(これが「べき集合は元より大きい」というカントールの定理の有限版です)

カントールと関係する数学者

数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、用語の意味は数学用語辞典(用語の意味を1語1ページ)も合わせて読んでください。ギリシャ文字(ω\omega など)の読み方はギリシャ文字の読み方一覧(24文字)で確かめられます。

19世紀の数学者

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カントールがかかわった数学の難問

有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

カントールは何をした人ですか?

カントールは、19世紀のドイツの数学者で、集合論をつくった人です。無限の集まりを「1対1に結べるか」で比べる方法を考え、自然数より実数のほうが「大きな無限」であることを証明しました。現代数学のほとんどは、カントールの集合の言葉で書かれています。

カントールはなぜ有名なのですか?

「無限にも大きさのちがいがある」という、それまでだれも考えなかった事実を、論理で証明したからです。この考え方は、数学の基礎・コンピュータ科学・論理学に大きな影響をあたえました。

対角線論法とは何ですか?

実数が自然数より多いことを示す証明法です。0と1の間の実数がすべて番号つきでならんでいると仮定し、n番目の数のn桁目をべつの数字に変えた新しい数をつくると、その数は表のどの数ともちがってしまいます。これが矛盾なので、実数は並べられないと結論します。

無限に大きさがあるとはどういう意味ですか?

2つの集まりを1つずつ線で結んで、あまりが出なければ「同じ数」と考えます。自然数・整数・分数は結べるので同じ数ですが、実数は自然数と結ぶとかならずあまりが出るので、実数のほうが多い、ということです。

ℵ₀(アレフゼロ)とは何ですか?

ℵ₀は、自然数全体の大きさ(濃度)を表すカントールの記号です。ℵはヘブライ文字の最初の字で、自然数と1対1に結べる「かぞえられる無限」の大きさをさします。整数や分数の集合も、ℵ₀です。

連続体仮説とは何ですか?

自然数の大きさℵ₀と実数の大きさの間に、もう一つの大きさの無限はあるか、という問いです。カントールは解けませんでしたが、ゲーデル(1940年)とコーエン(1963年)が、現在の集合論の公理からは正しいとも誤りとも決められないことを証明しました。

カントールの名言はありますか?

「数学の本質は、その自由にある」が1883年の著作の言葉として知られます。また、デデキントへの手紙に書いた「見えている。しかし信じられない」も有名です。ただし、日本語訳や文脈には異なる紹介もあります。

カントールは病気だったのですか?

カントールは1884年ごろから、うつ状態などの心の病をくりかえしたと伝えられ、晩年は何度か入院しました。原因については、批判のストレスのほか、もともとの体質などの説があり、専門家の間でも見方が分かれます。

カントールは受験の数学と関係がありますか?

あります。中学受験のベン図(集合の要素の個数)、高校数学Ⅰの集合と命題、背理法、大学の写像・濃度は、いずれもカントールの集合論につながります。

カントール集合とは何ですか?

線分から真ん中の3分の1を取り除く操作を無限にくりかえしてできる集合です。のこる部分の長さは0に近づきますが、点の数は実数と同じだけあります。フラクタル図形の最初の例の一つとされます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • J. W. Dauben, “Georg Cantor: His Mathematics and Philosophy of the Infinite”(1979年)
  • J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Georg Cantor”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
  • G. Cantor, “Über eine elementare Frage der Mannigfaltigkeitslehre”(1891年)
  • 肖像写真:作者不明「Georg Cantor」(1870年ごろ)、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦