メビウスは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|メビウスの帯・重心座標・メビウス関数

メビウスは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|メビウスの帯・重心座標・メビウス関数

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メビウスAugust Möbius

ひとことで言うと

紙の帯を1回ひねるだけで裏と表がなくなる「メビウスの帯」で有名なドイツの数学者・天文学者。重心座標やメビウス関数も作った。

名前アウグスト・フェルディナント・メビウス(August Ferdinand Möbius)
生没年1790年11月17日〜1868年9月26日(77歳)
国ドイツ(ザクセンのシュルプフォルタ生まれ、ライプツィヒで活躍)
分野幾何学・位相幾何学・整数論・天文学
主な業績メビウスの帯、重心座標(『重心計算』1827年)、メビウス関数と反転公式(1831年)、メビウス変換、五人の王子の問題
名前がつくものメビウスの帯(輪)・メビウス関数・メビウスの反転公式・メビウス変換・重心座標
よばれ方ライプツィヒ大学の天文学教授・天文台長

このページのポイント

  • 紙の帯を1回ひねってつなぐと、面が1つ・ふちが1本の「メビウスの帯」ができる(1858年ごろ発見)
  • 三角形の頂点の重みの比で点を表す重心座標(1827年)は、高校数学の重心・内分点の考え方の先がけ
  • 整数論のメビウス関数 μ(n) や、複素数のメビウス変換にも名前が残る

メビウスは何をした人?(業績をひとことで)

アウグスト・フェルディナント・メビウス(1790〜1868年)は、ドイツの数学者・天文学者です。「メビウスの帯」(裏と表がない、一面だけの曲面)の発見で世界的に有名で、そのほかにも重心座標(重心計算)、整数論のメビウス関数、複素数平面のメビウス変換など、名前のつく仕事をたくさん残しました。生涯のほとんどを、ライプツィヒ大学の天文学の教授・観測所長として過ごした人です。

受験生にとってのメビウスは、まず「メビウスの帯」のふしぎな性質です。紙の帯を1回ひねってつなぐだけで、裏と表のない面ができます。さらに、高校数学の三角形の重心の性質と公式や位置ベクトルと内分点の公式は、メビウスの重心座標の考え方に通じます。また、オイラーの多面体定理(V−E+F=2)を使う図形の問題は、メビウスが研究した「面と辺のつながり」の話とつながっています。

うかるくん

うかるくん

メビウスの帯って、リサイクルのマークとか、ベルトコンベアで見たことがあります!

合格先生

合格先生

よく気づいたね。ねじれがあるから、1周するとちょうど反対側に来る。その性質が、機械の部品や図案でも使われているんだ。でもメビウスは、帯だけの人じゃない。星を観測しながら、数学の新しい道具をいくつも作った人だよ。

メビウスの生涯と年表

ドイツのシュルプフォルタで生まれる

メビウスは1790年11月17日、ドイツ中部ザクセンのシュルプフォルタで生まれました。父はダンスの先生だったと伝えられ、幼いころに亡くなったといわれます(細かい事情は資料によってちがいます)。メビウスは13歳まで母の手で教育を受け、1803年に、ドイツの名門学校シュルプフォルタ校で学びはじめました。

法律から数学・天文学へ

1809年にライプツィヒ大学に入りましたが、はじめは法律を学ぶ予定だったともいわれます。やがて、数学・物理・天文学に夢中になり、1813年にはゲッティンゲン大学で天文学のガウスの研究に学びました。続いて、ガウスの先生でもあったプファフのもとでも学び、1815年に博士の学位を受けました。

ライプツィヒで天文学者・数学者として

1816年、メビウスはライプツィヒ大学の天文学と高等力学の員外教授になりました。ほかの大学から誘いを受けたこともありましたが、ほとんど生涯をライプツィヒで過ごします。1844年に天文学の正教授、1848年には観測所の所長になりました。観測所の仕事をしながら、数学の研究を続けるという生活でした。

重心の本、メビウス関数、そして帯

1827年に『重心計算(Der barycentrische Calcul)』を出版し、座標の考え方を大きく広げました。1831年には、整数論のメビウス関数(反転公式)を発表。1840年には「五人の王子」の問題を講義で出したと伝えられ、四色問題の先がけとも言われています。そして晩年の1858年ごろ、メビウスの帯を発見しました。同じ年にドイツのリスティングも発見していて、リスティングのほうが先に見つけていたとされる資料もあります。1868年9月26日、ライプツィヒで77歳で亡くなりました。

年できごと
1790年11月17日、ドイツ・ザクセンのシュルプフォルタで生まれる
1803年シュルプフォルタ校に入学(〜1809年)
1809年ライプツィヒ大学に入る
1813年ゲッティンゲン大学でガウスに天文学を学ぶ
1815年博士の学位を受ける
1816年ライプツィヒ大学の天文学・高等力学の員外教授に
1827年『重心計算』を出版。同次座標(重心座標)を導入
1831年論文で「メビウス関数」とメビウスの反転公式を発表
1840年「五人の王子」の問題(四色問題の先がけ)を講義で出したと伝えられる
1844年天文学の正教授になる
1848年ライプツィヒの天文台長に
1858年メビウスの帯を発見(同年にリスティングも発見)
1868年9月26日、ライプツィヒで亡くなる(77歳)

暮らしぶりと、おだやかな研究生活

メビウスは1820年に結婚し、子どもにも恵まれたと伝えられます。大きな事件や、派手な逸話があまり残っていないことからも、ライプツィヒで長く、静かな研究生活を送った人だったことが想像できます。天文学の教授として、星の位置を観測し、学生に力学と天文学を教えながら、そのあい間に数学の新しい考えを論文にまとめていきました。メビウスの数学の論文は、当時の数学の主流から少しはなれた、とても独創的なものだったため、生きているあいだには、それほど大きく評価されなかったともいわれます。けれども、20世紀に入って、位相数学(トポロジー)が大きく発展すると、メビウスの帯は「現代の幾何学の出発点のひとつ」として、あらためて注目を集めました。

メビウスの主な業績をやさしく解説

業績1 メビウスの帯

細長い紙の帯を用意して、1回だけひねってから両はしをのりでつなぐ。すると「メビウスの帯」ができます。ふつうの輪(ひねらずにつないだ輪)は、内側と外側、つまり「裏と表」の2つの面がありますが、メビウスの帯は面が1つしかありません。インクをつけた指で帯の面をなぞっていくと、ひっくり返さなくても、帯の両面をぜんぶ通って、元の場所にもどります。

メビウスの帯1回ひねって、はしとはしをつなぐふち(へり)をたどると1本の線になる
メビウスの帯。紙の帯を1回ひねってつなぐと、裏と表がつながった「面が1つ」の曲面になる

ふちの線も不思議です。ふつうの輪には、ふちが2本ありますが、メビウスの帯のふちは1本だけ。このような面を、数学では向きづけ不可能な曲面といいます。ふつうの面は、「こちら側が表」と決められますが、メビウスの帯では、帯の上を1周すると、表と裏が入れかわってしまうからです。

メビウスの帯を発見したのは1858年とされ、同じ年にドイツのヨハン・リスティングも独立に見つけました。メビウスは、1865年の論文で、片面だけの多面体や曲面について書きました。

業績2 帯を切ると、ふしぎなことが起こる

メビウスの帯は、切ってみるとさらにおもしろくなります。ふつうの輪を、ふちと平行に真ん中で切ると、2本の輪になります。ところがメビウスの帯を真ん中で切ると、1本の、長さが2倍の輪になります。しかも、この輪は2回ねじれた(半回転が4回)、ふつうの両面のある輪です。

切ってみると、ふしぎ!ふつうの輪を、真ん中で切る→2本の輪に2つに分かれるメビウスの帯を、真ん中で切る→1本の長い輪に2倍の長さ・ねじれ2回メビウスの帯を、3分の1で切る→大小2つの輪がからみあう
ふつうの輪は真ん中で切ると2本。メビウスの帯は1本の長い輪になり、3分の1のところで切ると大小2つの輪がからむ

さらに、3分の1のところで切ると、大きさのちがう2つの輪が、たがいにくさりのようにからみあってできます。1つは元と同じ長さのメビウスの帯、もう1つは2倍の長さの輪です。実際に紙で作って、はさみで切ってみると、とても驚きます。この遊びは、理系時計(GeekClock)の数式の意味のようなパズル好きの人にも人気です。

業績3 重心座標(『重心計算』)

1827年の『重心計算』で、メビウスは平面の点を「重みの比」で表すという新しい座標を考えました。三角形ABCの3つの頂点に、おもりを置いたとします。おもりの重さの比を a:b:ca:b:c とすると、全体がつりあう点(重心)がただ1つに決まります。この (a:b:c)(a:b:c) を、その点の重心座標といいます。

重心座標(重みで場所を表す)A(1:0:0)B(0:1:0)C(0:0:1)重心 (1:1:1)P (2:1:1)中点 (0:1:1)「A・B・Cにおもりを置いたときのつりあいの点」
三角形ABCの頂点に重みを置いたときのつりあいの点。1:1:1が三角形の重心、0:1:1が辺BCの中点

式にすると、点Pの位置ベクトルは、重みの比を使って次のようになります(a+b+c=1a+b+c=1 とすると、重みは「割合」になります)。

OP→=a OA→+b OB→+c OC→(a+b+c=1)\overrightarrow{OP}=a\,\overrightarrow{OA}+b\,\overrightarrow{OB}+c\,\overrightarrow{OC}\quad(a+b+c=1)

この考え方は、高校数学の三角形の重心の公式(重心は各中線を2:1に内分する)や、位置ベクトルと内分点の問題の中に、そのまま入っています。さらに、メビウスは座標に「比」だけを使うことで、無限に遠い点も数で扱えるようにしました。これが現代の同次座標の先がけで、コンピューターグラフィックス(3D画像)の計算でも使われています。

業績4 メビウス関数と反転公式

1831年にメビウスは、整数論のメビウス関数 μ(n)\mu(n) を考えました。決まりはかんたんです。nn を素因数分解したとき、

  • n=1n=1 なら μ(1)=1\mu(1)=1。
  • 同じ素数が2回以上かけられていれば(4=224=2^2、12=22×312=2^2\times3 など)、μ(n)=0\mu(n)=0。
  • ちがう素数の積なら、素数の個数が偶数個で +1+1、奇数個で −1-1。(μ(6)=μ(2×3)=+1\mu(6)=\mu(2\times3)=+1、μ(30)=μ(2×3×5)=−1\mu(30)=\mu(2\times3\times5)=-1)
メビウス関数 μ(n)n=11+1n=22−1n=33−1n=42×20n=55−1n=62×3+1n=77−1n=82³0n=93²0n=102×5+1n=1111−1n=122²×30素因数が重ならない数は、素数の個数の偶奇で+1か−1
メビウス関数 μ(n) の1〜12の値。素数1個なら−1、2個の積なら+1、同じ素数が重なると0

この関数には、約数の和の求め方のような計算に使う大切な性質があります。n>1n>1 のとき、nn のすべての約数 dd についての μ(d)\mu(d) の和は 0 になります(n=12n=12 なら、約数 1, 2, 3, 4, 6, 12 で 1−1−1+0+1+0=01-1-1+0+1+0=0)。この性質から、メビウスの反転公式という強力な式が出ます。「約数についての和」から「もとの関数」を取り出せる公式で、数え上げの問題(素数の意味を数える、互いに素な数の個数を数える)で使われます。

メビウス関数は、リーマン予想とも深く結びついています。μ(n)\mu(n) を nn までたした値(メルテンス関数)の増え方が、リーマン予想と同じ内容を表すことが知られています。くわしくはリーマン予想とは?わかりやすくで説明しています。

業績5 メビウス変換(一次分数変換)

複素数平面の点 zz を、次の式で別の点にうつす変換をメビウス変換といいます(ad−bc≠0ad-bc\neq0)。

f(z)=az+bcz+df(z)=\frac{az+b}{cz+d}

この変換は、円を円にうつす(直線は円とみなす)という美しい性質をもっていて、複素関数や非ユークリッド幾何学で大切な道具になっています。ポアンカレやクラインの幾何学が、ロバチェフスキーの非ユークリッド幾何学の「モデル」を作るときに使ったのが、この変換です。ただし、この名前がつく変換をメビウス自身がどこまで研究したかは、資料によって見方がちがいます。射影幾何学(ものが遠近法でどう見えるか)の研究が、のちにこの名前の変換に結びつけられたといわれます。

業績6 「五人の王子」と四色問題の先がけ

1840年ごろ、メビウスは講義で、こんな問題を出したと伝えられます。「ある王様が、5人の王子に国をわけたい。どの2つの国も、国境を接するようにしたい。そんな分け方はできるか」。答えは「できない」です。

五人の王子と五つの国5つの国:赤い線が交わってしまう4つの国ならかける国を点、となり合う国を線でむすぶ
五人の王子の問題。5つの国のすべてが接する地図は平面にかけない(4つの国ならかける)

国を点、となり合う国を線でむすぶと、5つの点のどれも線でむすぶ図ができます。これを平面にかくと、どうしても線が交わってしまいます。オイラーの多面体定理 V−E+F=2を使うと、「点5個、線10本の図は平面に描けない」と証明できます。この話は、のちの四色問題(地図は4色で塗り分けられる)の歴史の先がけともいわれます。くわしくは四色問題とは?だれがいつ解いた?を読んでください。

メビウスの名前がつく公式・定理・用語

  • メビウスの帯(メビウスの輪):1回ひねってつないだ、面が1つの曲面。
  • 重心座標:三角形の頂点の重みの比で点を表す座標。→ 三角形の重心の性質・位置ベクトル・内分点
  • メビウス関数 μ(n)\mu(n):素因数分解にもとづく、1・0・−1 の値をとる関数。→ 素因数分解の方法
  • メビウスの反転公式:約数についての和から、もとの関数を取り出す公式。
  • メビウス変換(一次分数変換):f(z)=az+bcz+df(z)=\dfrac{az+b}{cz+d}。円を円にうつす。→ 複素数平面とは
  • メビウスの格子・メビウス双対:射影幾何学の用語(大学で学習)。
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

三角形の重心は、3つの頂点にまったく同じ重さをのせたときのつりあいの点だよ。1:1:1という重みのすがたを、メビウスは座標にしたんだ。

メビウスの逸話と名言

帯の発見は「ゆずり合い」?

メビウスの帯は、1858年にメビウスとリスティングが別々に見つけました。数学の歴史では「先に見つけたのは、じつはリスティングだった」という見方も根強く、帯には両方の名前をつけて「メビウス=リスティングの帯」とよぶべきだ、という意見もあります。けれど、世の中ではメビウスの名前のほうが広まりました。同じ時期に別々の人が同じものを見つけるという例は、数学ではめずらしくありません(ロバチェフスキーとボーヤイの非ユークリッド幾何学もその一つです)。

芸術やデザインへの広がり

メビウスの帯の遊びは、のちの芸術家にも大きな影響をあたえました。オランダの画家エッシャーは、1960年代に、メビウスの帯の上をはうアリのようすを版画にしています。紙1枚で作れる身近なふしぎなので、数学の入門にもよく使われます。1970年にアメリカで考えられたリサイクルマークの矢印の形も、メビウスの帯がもとになっていると伝えられています。

有名な名言は伝わっていない

メビウス本人が書いた「名言」として確かなものは、残念ながら伝わっていません。ただ、天文学者として夜空を観測しながら、数学の新しい見方を作り続けたことが、メビウスの何よりの言葉だといえるでしょう。数学の「ねじれ」という新しい感覚は、メビウスの時代から現在まで、多くの人をひきつけています。

ガウスの教え子として

メビウスは1813年、ガウスの研究のもとで天文学を学びました。ガウスが亡くなったのは1855年、メビウスが帯を発見する3年前です。ガウスの「曲面の幾何学」の影響を受けて、メビウスが曲面の研究に向かったのではないか、という見方もあります。ただし、ガウスとメビウスが具体的にどんな関係だったかは、資料からは詳しく分かりません。

サクラちゃん

サクラちゃん

紙で作ってみたくなりました! 切ったら本当に1本になるんですか?

合格先生

合格先生

ぜひやってみて。まず予想を立てて、それから切る。当たったらうれしいし、外れても「なぜ?」が生まれる。それが数学の入り口なんだ。ただし、1回ひねるのを忘れずに(笑)。

受験・勉強とメビウスのつながり

中学受験・高校受験:重心と面積比、展開図

中学受験・高校受験では、三角形の重心が、中線を2:1に内分すること、重心で三角形が面積の等しい6つの小さな三角形に分けられることがよく出ます。これは、メビウスの重心座標 (1:1:1)(1:1:1) の特別な場合です。紙テープを使った「輪」の問題や、立体の展開図(メビウスの帯のように、ねじって貼る問題)も、位相数学の入口です。

大学受験:位置ベクトル・複素数平面

  • 位置ベクトルと内分点:OP→=aOA→+bOB→+cOC→\overrightarrow{OP}=a\overrightarrow{OA}+b\overrightarrow{OB}+c\overrightarrow{OC}(a+b+c=1a+b+c=1)の形で、点Pが三角形の内部にあるための条件(a,b,c>0a,b,c>0)を考える問題は、重心座標そのものです。
  • 複素数平面:w=az+bcz+dw=\dfrac{az+b}{cz+d} の形の変換で、円がどんな図形にうつるかを考える問題(メビウス変換)が、難関大学で出ることがあります。
  • 整数の問題:約数の和と個数や、「nn と互いに素な数の個数」を求める問題は、メビウス関数の考え方で整理できます。

京大理系数学の出題分析(整数問題の出方)を見ると、整数・ベクトル・複素数平面がよく出ることが分かります。数学の勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

中高生の自由研究にも:帯を切る実験

メビウスの帯は、自由研究の題材としても人気です。細長い紙とのり、はさみがあれば作れます。「幅の3分の1のところで切ったらどうなるか」「ひねりを2回、3回にしたらどうなるか」など、条件を変えて結果を予想し、実際に切って確かめてみると、数学的な「予想→実験→説明」の練習になります。ひねりの回数が奇数なら面が1つ、偶数なら面が2つになる、という規則も見つかります。結果を、図と表にまとめれば、立派なレポートになります。

勉強法として:「ひとひねり」の発想

メビウスの帯は、ただ1回ひねるだけで、まったく別の性質をもつものになります。数学の問題でも、「ひとひねり」した見方——場合分けの方法を変える、図をかき直す、1つ文字をおきかえる——で、急に解ける問題があります。行き詰まったら、ちがう角度から見てみることを試してください。

メビウスがその後の数学にあたえた影響

  • 位相幾何学(トポロジー):向きづけ不可能な曲面は、リーマン・ポアンカレらの位相数学の発展の中で大切な例になりました。メビウスの帯は、「曲面とは何か」を考える出発点です。ポアンカレ予想とは?の歴史にもつながります。
  • 射影幾何学・コンピューターグラフィックス:重心座標と同次座標は、クラインらに受けつがれ、今の3D画像の計算でも使われています。三角形の中の点の色をなめらかに塗る計算に、重心座標が使われます。
  • 整数論:メビウス関数は、ディリクレやリーマンの解析的整数論で重要な役割を果たし、素数定理の証明にも使われました。
  • 複素関数論・非ユークリッド幾何学:メビウス変換は、ロバチェフスキーの幾何学のモデルの基礎になりました。
  • 工学・デザイン:ベルトコンベアにメビウスの帯の形を使うと、帯の両面が均等にすり減るため、長持ちするといわれます。電気回路や、録音テープでも似た工夫があるとされます。

メビウスの名前は、数学の外にも広がりました。ブランドや音楽のタイトル、小説やアニメの題名などで、「ねじれてつながる」「終わりのない循環」の象徴として使われることがあります。1本の紙のおびが、数学・芸術・工学・文化のあちこちで顔を出すのは、とても珍しいことです。それは、メビウスの帯が「だれでも手を動かして確かめられる、本物の数学」だからでしょう。

メビウスに挑戦!練習問題

やさしい

  1. メビウスの帯には、面(表と裏)がいくつありますか。ふち(へり)は何本ありますか。
    答えと解説を見る面は1つ(表と裏がつながっている)、ふちは1本です。ふつうの輪は、面が2つ・ふちが2本です。
  2. メビウス関数の値 μ(6)、μ(10)、μ(12) を求めなさい。
    答えと解説を見る6=2×3(異なる2つの素数)なので μ(6)=+1。10=2×5 で μ(10)=+1。12=2²×3 は同じ素数2が2回かけられているので μ(12)=0。答えは+1、+1、0。

ふつう

  1. A(0,0)、B(6,0)、C(0,6) の三角形で、A・B・C にそれぞれ重み 1・2・3 を置いたときのつりあいの点Pの座標を求めなさい。
    答えと解説を見るP=(1×A+2×B+3×C)÷(1+2+3)。x座標=(0+12+0)÷6=2、y座標=(0+0+18)÷6=3。よってP(2, 3)。
  2. 12の約数 1,2,3,4,6,12 について、メビウス関数の値の和を求めなさい。
    答えと解説を見るμ(1)=1、μ(2)=−1、μ(3)=−1、μ(4)=0、μ(6)=+1、μ(12)=0。和は 1−1−1+0+1+0=0。(n>1 のとき、約数についての和はいつも0です)

むずかしい

  1. 5つの国がどの2つも国境を接する地図は、平面上にかけません。国を点、国境を接する関係を線とした平面グラフで、点が5個・線が10本の図がかけない理由を、「平面グラフの線の数は 3×(点の数)−6 以下」を使って説明しなさい。
    答えと解説を見る点5個なら線は 3×5−6=9本以下になるはず。ところが5つの国がすべて接するには線が 5C2=10本必要で、9本をこえます。よって平面にはかけません。
  2. メビウスの帯を、ふちと平行に、帯の幅の真ん中で切ると、どうなりますか。輪の数、長さ、ねじれについて答えなさい。
    答えと解説を見る輪は1本になり、長さは元の2倍、ねじれは半回転が4回(2回転)になります。できた輪は表と裏のあるふつうの輪です。

メビウスと関係する数学者

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読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

メビウスは何をした人ですか?

メビウスは、19世紀のドイツの数学者・天文学者です。面が1つしかない「メビウスの帯」の発見のほか、重心座標、整数論のメビウス関数とメビウスの反転公式、複素数平面のメビウス変換などで名前が残っています。

メビウスの帯とは何ですか?

細長い紙の帯を1回ひねって、両はしをつないだ形です。面が1つ(裏と表がつながっている)、ふちが1本だけという性質があります。ふつうの輪は面が2つ・ふちが2本です。

メビウスの帯を真ん中で切るとどうなりますか?

1本の、長さが2倍の輪になります。この輪は半回転が4回ねじれていて、ふつうの両面のある輪です。3分の1の位置で切ると、大小2つの輪がからみ合ってできます。

メビウスの帯はメビウスだけが見つけたのですか?

1858年に、ドイツのリスティングも独立に発見しました。リスティングのほうが先に見つけていたとする資料もあり、両者の名前をあわせてよぶべきだという意見もあります。

重心座標とは何ですか?

三角形ABCの頂点に重さa、b、cのおもりを置いたときのつりあいの点を(a:b:c)と表す座標です。メビウスが1827年の『重心計算』で導入しました。高校数学の重心・位置ベクトルの内分点の考え方につながります。

メビウス関数とは何ですか?

nを素因数分解して、同じ素数が2回以上かけられていれば0、異なる素数の積なら素数の個数が偶数個で+1、奇数個で−1とする関数です。1は+1とします。メビウスの反転公式に使われ、リーマン予想とも関係します。

メビウス変換とは何ですか?

複素数平面の点zを、f(z)=(az+b)/(cz+d)(ad−bc≠0)で別の点にうつす変換です。円(直線をふくむ)を円にうつす性質があり、非ユークリッド幾何学のモデルなどで使われます。

五人の王子の問題とは何ですか?

5人の王子に国を分けて、どの国も他のすべての国と国境を接するようにできるか、という問題です。答えは「できない」。メビウスが1840年ごろに講義で出したと伝えられ、四色問題の先がけともいわれます。

メビウスはいつ・どこの人ですか?

1790年11月17日にドイツのシュルプフォルタ(ザクセン)で生まれ、1868年9月26日にライプツィヒで亡くなりました。ガウスに学び、ライプツィヒ大学の天文学の教授・観測所長を務めました。

メビウスは受験とどう関係しますか?

三角形の重心や位置ベクトルの内分点の問題は、重心座標の考え方そのものです。複素数平面の一次分数変換の問題はメビウス変換にあたります。紙の帯を使った輪の問題や、オイラーの多面体定理を使う図形の問題もつながっています。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics, “August Ferdinand Möbius”(セント・アンドルーズ大学)
  • A. F. Möbius, “Der barycentrische Calcul”(1827年)
  • A. F. Möbius, “Über eine besondere Art von Umkehrung der Reihen”(1831年)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦