ポアンカレは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|ポアンカレ予想・トポロジー・カオス

ポアンカレは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|ポアンカレ予想・トポロジー・カオス

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ポアンカレHenri Poincaré

ひとことで言うと

ポアンカレ予想の出題者。位相幾何学(トポロジー)とカオスの入口を開き、数学・物理学の両方で活躍した「最後の万能数学者」。

名前アンリ・ポアンカレ(Henri Poincaré)
生没年1854年4月29日〜1912年7月17日(58歳)
国フランス(ナンシー生まれ、パリで活躍)
分野位相幾何学・微分方程式・天体力学・数理物理・科学哲学
主な業績ポアンカレ予想、位相幾何学の創始、三体問題とカオス、保型関数、双曲幾何学の円板モデル、相対性理論の数学的整備
名前がつくものポアンカレ予想・ポアンカレ円板・ポアンカレ回帰定理・ポアンカレ群・ポアンカレ双対性・ポアンカレ写像
よばれ方最後の万能の数学者

このページのポイント

  • 1904年に出したポアンカレ予想は、約100年後にペレルマンが解決。7つのミレニアム懸賞問題で唯一解けた問題
  • 「ドーナツとマグカップは同じ形」という位相幾何学(トポロジー)を始め、穴の数で形を調べる方法をつくった
  • 三体問題の研究でカオス(わずかな差が大きな差になる)に気づき、特殊相対性理論の数学の形も整えた

ポアンカレは何をした人?(業績をひとことで)

アンリ・ポアンカレ(1854〜1912年)は、フランスの数学者・物理学者・科学思想家です。位相幾何学(トポロジー)の基礎をつくり、三体問題の研究からカオス(わずかな差が大きな差になる現象)の入口を発見し、特殊相対性理論の誕生にも深く関わりました。数学のほぼすべての分野と、物理学・天文学の両方で一流の仕事を残したことから、「最後の万能の数学者」とよばれることがあります。

その名前を世界中に知らせたのは、ポアンカレ予想です。1904年にポアンカレが出した問いは、およそ100年のあいだ、世界中の数学者を悩ませました。2002年から2003年にかけて、ロシアの数学者ペレルマン(ポアンカレ予想の証明)が解決し、現在の数学で最も有名な「解決された難問」の一つになりました。アメリカのクレイ数学研究所が2000年に発表した7つのミレニアム懸賞問題のなかで、解決されたのはポアンカレ予想ただ一つです。

受験生にとってのポアンカレは、「ドーナツとマグカップが同じ形」という話で知られるトポロジーの創始者です。高校数学ではオイラーの多面体定理(頂点−辺+面=2)、大学では位相空間・基本群・微分方程式の定性的理論と、ポアンカレの考えに何度も出会います。座標とはや平行線とはの考え方を広げると、ポアンカレの世界がぐっと近づきます。

うかるくん

うかるくん

ポアンカレ予想って、100年もだれも解けなかったんですよね? どんな問題なんですか?

合格先生

合格先生

一言でいうと「3次元の世界で、ひもが全部縮められる形は、球(の3次元版)だけか?」という問いなんだ。2次元の「球の表面」なら昔から分かっていた。でも3次元になると、とたんにむずかしくなる。くわしくは図で説明するよ。

アンリ・ポアンカレの肖像写真
晩年のポアンカレ(20世紀初めの写真)画像:作者不明/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

ポアンカレの生涯と年表

フランス東部ナンシーの名家に生まれる

ポアンカレは1854年4月29日、フランス東部のナンシーで生まれました。父は医学部の教授で、家は学問の盛んな家庭でした。のちにフランスの大統領になるレーモン・ポアンカレは、いとこにあたります。幼いころに病気(ジフテリア)になり、一時ことばがうまく出なかったともいわれますが、記憶力はずばぬけていて、一度読んだ本の内容をほぼ覚えていたと伝えられます。

小さいころの運動は苦手で、手先も不器用だったといわれます。絵や図形のスケッチは苦手で、図を正しくかくことが得意ではなかったという話もあります。それでも頭の中で図形を思い浮かべる力は強く、それが後の位相幾何学につながったとする見方もあります。

理工科学校(エコール・ポリテクニーク)から鉱山技師へ

1873年、ポアンカレは名門のエコール・ポリテクニークに入学試験1位で入学し、続いて国立高等鉱業学校で学びました。卒業後は鉱山技師として働きながら、1879年にパリ大学で微分方程式の研究で博士号を取りました。1879年にカーン大学、1881年にパリ大学(ソルボンヌ)の教授になり、1912年まで教えました。

フックス関数と、クラインとの競争

1880年代はじめ、ポアンカレは保型関数(フックス関数)の研究で大きな成功をおさめます。同じ時期にドイツのクライン(クラインの壺・エルランゲン・プログラム)も同じテーマに取り組んでおり、2人は手紙を通じて競争しました。この研究のなかで、ポアンカレは双曲幾何学(平行線の公理が成り立たない幾何学)に出会い、後に「ポアンカレの円板」とよばれる図を使うようになります。

三体問題とスウェーデン王の懸賞

1887年、スウェーデン・ノルウェーの王オスカル2世が、数学の問題に懸賞金を出すことを決めました。問題の一つが「太陽系は安定か」を調べる三体問題です。ポアンカレの論文が1889年に最優秀に選ばれますが、出版の準備中に重大な誤りが見つかりました。ポアンカレは誤りを認めて論文を書き直し、その過程で、軌道が複雑に絡み合う(ホモクリニック交差)という、のちのカオスの発見に到達したとされます。印刷代が賞金を上回ったという話も伝わっています。

位相幾何学の誕生

1895年、ポアンカレは論文『位置解析(アナリシス・シトゥス)』を発表し、位相幾何学を独立した分野として始めました。その中で、図形の「穴」を数える方法(ベッティ数、基本群)を導入します。その後、5編の補遺を書き、最後の1904年の補遺の中で、のちにポアンカレ予想とよばれる問いを書きました。

特殊相対性理論と、晩年

1900年代に入ると、ポアンカレは物理学者ローレンツらと「光の速さと運動」の関係を考えました。1905年6月には「電子の力学」の論文を発表し、ローレンツ変換が群をなすことなど、特殊相対性理論の数学的な形を整えました。同じ1905年にアインシュタインが相対性理論の論文を出し、のちに「だれの功績か」という議論が起きますが、ここでは立ち入りません。1908年にはアカデミー・フランセーズ(フランス語と文学の最高の学会)の会員にも選ばれました。同じ年のローマ国際数学者会議には、体調不良のため出席できず、講演原稿が代読されたと伝えられます。1912年7月17日、手術のあと、パリで58歳の若さで亡くなりました。

年できごと
1854年4月29日、フランスのナンシーで生まれる
1873年エコール・ポリテクニークに入学
1879年パリ大学で博士号。カーン大学の講師になる
1881年パリ大学(ソルボンヌ)の教授になる
1880年代前半保型関数(フックス関数)の研究。クラインと競う
1887年フランス科学アカデミーの会員に選ばれる
1889年スウェーデン王の懸賞(三体問題)で最優秀。のち誤りが見つかり、1890年に書き直す
1895年『位置解析』を発表。位相幾何学の始まり
1902年『科学と仮説』を出版。科学思想家としても有名に
1904年ポアンカレ予想の問いを書く
1905年「電子の力学」の論文。特殊相対性理論の数学的な形を整える
1908年アカデミー・フランセーズの会員に。『科学と方法』を出版
1912年7月17日、パリで亡くなる(58歳)
2003年ペレルマンがポアンカレ予想の証明を発表(2002〜2003年)

ポアンカレの主な業績をやさしく解説

業績1 位相幾何学(トポロジー):やわらかい図形の数学

ふつうの幾何学では、辺の長さや角度を調べます。ところが位相幾何学では、ゴムや粘土のように「切らない・くっつけない」で変形できる形は、同じ形とみなします。長さも角度も気にしません。大切なのは穴の数やつながり方だけです。

ドーナツ = マグカップ(位相では同じ) 穴が1つ ⇔ 穴が1つ(持ち手) 切らない・くっつけない変形なら、同じ形の仲間
ドーナツとマグカップは、穴が1つのやわらかい形どうし。切らずに変形できるので、位相幾何学では同じ形とされる

これは「ドーナツとマグカップは同じ」という有名な例え話の元になっています。ポアンカレは、この考え方を使い、形の特徴を数で表す方法を作りました。たとえばオイラーの多面体定理は、凸の多面体なら「頂点の数 − 辺の数 + 面の数 = 2」が成り立つという定理ですが、ドーナツ形の多面体では「= 0」になります。この「2」や「0」は、穴の数で決まる形の指紋です。ポアンカレはこれを高次元に広げ、オイラー・ポアンカレの公式に発展させました。

業績2 ポアンカレ予想:ひもが縮む形は「球」だけ?

球の表面にゴムひもを輪にして巻いたとします。球の表面の上だけで動かせるなら、ひもはどんな巻き方をしても縮めて1点にできます。一方、ドーナツの表面では、穴をぐるっと一周するひもは、表面の上では縮められません。

ひもは表面の上で縮められる? 球面輪は1点まで縮む=単連結 ドーナツ面穴を回る輪は縮まない=単連結ではない
球面では、どんな輪も表面の上で縮めて1点にできる。ドーナツ面では、穴を回る輪は縮まらない

2次元の面については、「ひもがすべて縮む閉じた面は、球面と同じ形」だと昔から分かっていました。ポアンカレは1904年、これを3次元の空間(宇宙のような「3次元の閉じた世界」)に拡張して問いを書きました。つまり「ひもがすべて縮む、閉じた3次元の世界は、3次元の球面(4次元空間の球の表面)と同じ形か?」という問いです。これがポアンカレ予想です。

この予想は、次元が上がるほど解きやすくなるという不思議な性質を持っています。5次元以上はスメイルが1960年に、4次元はフリードマンが1982年に解きました。もっとも身近な3次元が最後まで残ったのです。そして2002年11月から2003年にかけて、ペレルマンが3本の論文をインターネットに公開し、3次元の場合も正しいことを示しました。

業績3 三体問題とカオスの発見

ニュートンの運動法則を使うと、太陽と地球のような2つの天体の動きは、式で正確に求められます(楕円の軌道です)。ところが天体が3つになると、一般的な式で表すことができません。これが三体問題で、オイラーやラグランジュ、ラプラスといった大数学者も取り組んだ難問でした。

ポアンカレは、「式で解けないなら、軌道全体の性質を調べよう」と考えました。そして、ほんのわずかな出発点のちがいが、時間がたつと大きなちがいになる場合があることに気づきます。この性質は、のちにカオスとよばれ、天気予報が長期にはあたりにくい理由や、気象・生態系・経済の分析に関わっています。

カオス:わずかな差が大きくなる青:出発点 0.300赤:出発点 0.301計算の回数 →(x→4x(1−x) をくりかえした例。10回ほどでずれが目立つ)
出発点が0.300と0.301の2つの数を、同じ規則で計算しつづける。最初は重なっているが、やがてまったくちがう動きになる

図は、数列とはのように1つ前の値から次の値を決めていく簡単な規則(x → 4x(1−x))で、ほんの1000分の1のちがいが大きくなる様子を示したものです。ポアンカレが調べた三体問題そのものではありませんが、カオスの考え方をつかむ例としてよく使われます。ポアンカレは、定性的な理論(軌道の形から全体の性質を調べる方法)を始めた人としても知られ、ポアンカレ写像・回帰定理・ポアンカレ・ベンディクソンの定理など、多くの結果を残しました。

業績4 双曲幾何学の「ポアンカレ円板」

ふつうの平面では「直線の外の1点を通り、その直線と交わらない直線はちょうど1本」です(平行線の公理)。ところが、この公理を変えた幾何学が19世紀に見つかりました(ロバチェフスキー・ボーヤイの非ユークリッド幾何学)。ポアンカレは、それを円の内側を使って目で見える形にしました。

ポアンカレの円板(もう一つの世界)青と赤はどれも「直線」(円周と直角に交わる)外ふちにちかいほど、ものさしの1目もりが小さくなる
円の内側を世界全体と考える。この世界の「直線」は、円周と直角に交わる円弧。1点を通り交わらない直線が何本もひける

この円板モデルでは、円の外ふちにちかづくほど、ものさしの1目もりが小さくなります。そのため、中の人から見ると円の外ふちは「無限に遠い」場所です。この世界での「直線」は、円周と直角に交わる円弧になります。すると、1点を通って交わらない直線が何本もひけます。画家エッシャーの版画『円の極限』も、このモデルをもとにしたものとして知られています。平行とはの意味を考え直すことで、新しい幾何学が見えてくるのです。

業績5 特殊相対性理論への貢献と科学の哲学

ポアンカレは1904年に「相対性原理」という言葉を使い、「どんな実験でも、動いているかどうかは分からない」という原理を物理学の基本にすえることを主張しました。1905年には、電子の運動を調べてローレンツ変換が「群」の構造を持つことを示し、時間と空間の関係を数学的にまとめました。この群は、のちにポアンカレ群とよばれます。

ポアンカレは『科学と仮説』(1902年)、『科学の価値』(1905年)、『科学と方法』(1908年)などの本で、科学の考え方も一般向けに書きました。「幾何学の公理は、真か偽かではなく、便利かどうかで選ばれる」という約束主義が有名で、この本はアインシュタインら次の世代の科学者にも読まれました。

業績6 ペレルマンによる証明とミレニアム懸賞問題

2000年5月24日、アメリカのクレイ数学研究所はパリで、7つの未解決問題をそれぞれ100万ドルの賞金つきで発表しました(ミレニアム懸賞問題)。ポアンカレ予想はその一つでした。

ミレニアム懸賞問題(1問100万ドル)ポアンカレ予想リーマン予想P≠NP予想ホッジ予想ヤン–ミルズ方程式ナビエ–ストークスBSD予想解決されたのは「ポアンカレ予想」ただ1つ
7つのミレニアム懸賞問題のうち、解決されたのはポアンカレ予想ただ1つ

ペレルマンの証明は、サーストンの幾何化予想と、リチャード・ハミルトンのリッチフロー(形を熱が広がるようにゆっくり変化させる方程式)を土台にしています。形をなめらかに変化させ、とがった部分(特異点)を切り取っていくことで、最後は球に行きつくことを示しました。

ポアンカレ予想が解かれるまで1904ポアンカレが問いを出す1960スメイルが5次元以上を解く1982フリードマンが4次元を解く1982ハミルトンがリッチフローを提案2002〜03ペレルマンが3次元を解く(論文3本)2010クレイ研究所が賞を決定(本人は辞退)問いが出てから、約100年かかった
1904年の問いから約100年。次元の小さい順ではなく、5次元以上→4次元→3次元の順に解決された

世界の数学者による検証を経て、証明は正しいと認められました。ペレルマンは2006年のフィールズ賞を辞退し、2010年にクレイ研究所が賞を決めたときも、賞金を辞退しました。ほかの6問のうち、リーマン予想などは、私が確かめた範囲では解決が正式に認められていません(最新の状況はクレイ数学研究所の公式ページで確かめてください)。

ポアンカレの名前がつく公式・定理・用語

ポアンカレの名前がついたものは、数学と物理を合わせると非常に多く、「ポアンカレ○○」と名のつく用語は数十あるといわれます。主なものを挙げます。

  • ポアンカレ予想:単連結な閉3次元多様体は、3次元球面と同相か、という問い(ペレルマンが証明)。
  • ポアンカレの円板モデル/上半平面モデル:双曲幾何学を目で見える形にしたもの。
  • ポアンカレの回帰定理:閉じた空間で保存則が成り立つ系は、十分長い時間待てば、ほぼもとの状態にもどる。
  • ポアンカレ写像(断面):軌道が一定の面を通るたびに記録する方法。カオスの研究に使う。
  • ポアンカレの補題:微分形式の理論の基本定理。
  • ポアンカレ双対性:多様体の穴の数の対称性を表す定理。
  • ポアンカレの不等式:偏微分方程式で使う不等式。
  • ポアンカレ群:特殊相対性理論の対称性を表す群。
  • オイラー・ポアンカレの公式:多面体の頂点・辺・面の数の関係を、高次元に広げた式。

高校数学に直接出てくるのは、オイラーの多面体定理の仲間としてのオイラー標数くらいですが、大学の数学科では「ポアンカレ」の名前は何度も出てきます。極限とはや連続とはを正確に理解すると、位相空間の入口に立てます。

指し棒で説明する合格先生

合格先生

ポアンカレの定理は、どれも「形の全体を見る」のが特徴なんだ。式を1つずつ計算するのではなく、まず全体の姿を考える。それは入試でも、図をかいて全体をつかむ練習につながるよ。

ポアンカレの逸話と名言

バスのステップでひらめいた

ポアンカレは『科学と方法』の中で、フックス関数の研究のとき、乗り合いバスのステップに足をかけた瞬間に、解法のひらめきを得たと語っています。それまでの何日も、その問題を考えつづけて行きづまっていましたが、旅行に出てほかのことを考えていたとき、突然ひらめいたというのです。本人は、「無意識の中で考えがすすんでいた」と説明しました。数学者たちの間でよく語られる、発見のしくみの例です。

論理によって私たちは証明し、直観によって私たちは発見する。

ポアンカレの言葉として知られるもの(『科学の価値』(1905年)のフランス語「C’est par la logique qu’on démontre, c’est par l’intuition qu’on invente」ほか)

「数学とは、ちがうものに同じ名前をつける技」

数学とは、異なるものに同じ名前をつける技術である。

ポアンカレの言葉として知られるもの(『科学と方法』(1908年)の中の言葉。原文はフランス語で “La mathématique est l’art de donner le même nom à des choses différentes”)

たとえば「3」という数は、3人の人にも、3本の木にも、3秒にも使えます。ちがうものの共通点に気づいて名前をつけることが、数学の力だ、という意味です。

パン屋の話(統計)

統計学の本などでよく語られる逸話です。ポアンカレは毎日、1キロのパンを買い、重さをはかり記録しました。1年後に重さの分布を調べると、平均が950グラム程度の山の形になりました。「1キロのはずなのに平均が少ない」と抗議すると、パン屋は重いパンをくれるようになりました。ところが次の1年の記録は、平均が1キロに近づいても、山の形が左右対称ではなく重いほうに偏った形になっていました。ポアンカレは「パン屋は、店に並んだ中から大きめのパンを選んで私に渡しているだけだ」と見抜いたというのです。この話の統計の考え方は、正規分布の理解に役立ちますが、実際にあった出来事かは確かめられていません。

集中して仕事をする習慣

ポアンカレは、1日の決まった時間(午前の2時間と夕方の2時間ほど)にだけ集中して仕事をし、それ以外の時間には数学の仕事をしなかったと伝えられます。夜は早く寝て、昼間に頭を休めることで、無意識の中でのひらめきを生かしたといわれます。

ドレフュス事件で科学の力を貸す

フランスで起きた冤罪事件ドレフュス事件では、1904年の再審のとき、ポアンカレも専門家の一人として加わり、証拠として使われた筆跡鑑定の「確率の計算」が成り立たないことを指摘したとされます。数学が社会の正義を守る場面で役立った例として語られます。

サクラちゃん

サクラちゃん

バスに乗った瞬間にひらめくなんて、うらやましいです。

合格先生

合格先生

でもポアンカレは、それ以前に何日も必死に考えたんだよ。ひらめきは、そのあとに来るんだ。受験勉強でも、考えて、いったん休んで、また考える。この繰り返しが大切だよ。

受験・勉強とポアンカレのつながり

中学受験:展開図・立体の穴・オイラーの定理

中学受験の算数では、立体の頂点・辺・面の数を数える問題がよく出ます。「頂点の数+面の数−辺の数」が一定になるのは、オイラーの多面体定理によるものです。展開図とはを組み立てて立体の面の数を確かめるのも、トポロジーの入口です。

高校受験:図形の見方と最短経路

高校受験の立体の問題では、立体の表面を通る最短の道を展開図で求める問題があります。これは、立体の表面を平面にひらいて考えるという「形を変えても性質を保つ」トポロジー的な発想とも重なります。

大学受験:極限・連続・数列の漸化式・確率

大学受験でポアンカレの名前そのものはほとんど出ませんが、関連する考え方は多くあります。たとえば、漸化式の解き方で「x_{n+1} = f(x_n)」の形の数列を扱うとき、極限が存在するか、出発点でどう変わるかを調べます。また、収束と発散の理解は、カオスの安定・不安定を考える基礎になります。大学院入試になると、位相空間・基本群・微分方程式の問題が出題されます。

確率の問題で、正規分布や標準化を使って「平均より大きく外れた値」を考えるとき、パン屋の話のような統計的な考え方を使います。正規分布と標準化の公式も参考にしてください。確率の直感のずれについてはモンティ・ホール問題をわかりやすくも読んでみてください。

勉強法として:全体を見てから細部へ

ポアンカレは、細部の計算よりも、まず全体の姿をとらえることを大切にしました。入試の数学でも、いきなり計算に入るのではなく、図をかく・グラフを思い浮かべる・場合分けの全体を見渡すといった作業が、遠回りに見えても近道になります。数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

ポアンカレがその後の数学にあたえた影響

  • 位相幾何学:ポアンカレが築いた基本群・ホモロジーの考え方は、20世紀の数学の中心的な道具になりました。サーストン(3次元多様体)は、3次元の形の分類まで発展させました。
  • カオスと力学系:三体問題の研究が出発点です。20世紀後半に、コンピュータで計算できるようになって、カオスの研究が大きく進み、マンデルブロ(フラクタル)などの研究とも結びつきました。
  • 相対性理論:ポアンカレの相対性原理とローレンツ群の理論は、アインシュタインの理論とともに現代物理学の土台になりました。
  • 双曲幾何学:ポアンカレの円板モデルは、現代では複素関数、整数論、さらにネットワークの研究にも使われています。
  • ペレルマンによる解決:ポアンカレ予想の解決は、ペレルマンの仕事として、21世紀の数学の最大の成果の一つとされます。

ポアンカレは、ヒルベルトと並んで、19世紀から20世紀への転換期を代表する数学者です。2人はよく比較されますが、ヒルベルトが数学の形式化を進めたのに対し、ポアンカレは直観の役割を重視しました。

ポアンカレに挑戦!練習問題

やさしい

  1. ドーナツ形の立体の表面にある「穴」はいくつですか。また、マグカップの「穴」はいくつですか。
    答えと解説を見るドーナツは1つ(真ん中の穴)。マグカップも1つ(持ち手の穴)。そのため、位相幾何学では同じ形の仲間として扱います。
  2. 立方体の頂点の数 V、辺の数 E、面の数 F を求めて、V − E + F を計算しなさい。
    答えと解説を見る立方体は V=8、E=12、F=6 なので、V − E + F = 8 − 12 + 6 = 2。(オイラーの多面体定理)

ふつう

  1. 正四面体、正八面体の V − E + F をそれぞれ求めなさい。
    答えと解説を見る正四面体は V=4、E=6、F=4 で 2。正八面体は V=6、E=12、F=8 で 6 − 12 + 8 = 2。どちらも 2 になります。
  2. x → 4x(1 − x) の規則で、x=0.5 から始めたとき、次の2回分の値を求めなさい。
    答えと解説を見る1回め:4 × 0.5 × 0.5 = 1。2回め:4 × 1 × (1 − 1) = 0。このあとはずっと 0 のままです(ふつうの出発点ではカオスのような動きになりますが、0.5 は特別な出発点です)。

むずかしい

  1. 凸多面体のすべての面が三角形で、面の数が 8 であるとき、辺の数と頂点の数を求めなさい。
    答えと解説を見る面が三角形で、1つの辺は2つの面に共有されるので、3F = 2E より E = 3 × 8 ÷ 2 = 12。V − E + F = 2 より V = 2 + 12 − 8 = 6。(正八面体の場合です)
  2. ある凸多面体の面は、すべて正五角形か正六角形で、頂点には3つの面が集まります。面の数が 32 のとき、正五角形の面の数を求めなさい(ヒント:頂点の数と辺の数を、面の数の和で表す)。
    答えと解説を見る正五角形が a 面、正六角形が b 面とすると a + b = 32。辺の数は E = (5a + 6b) ÷ 2、各頂点に3面集まるので V = (5a + 6b) ÷ 3。V − E + F = 2 に代入すると (5a+6b)(1/3 − 1/2) + 32 = 2 より 5a + 6b = 180。a + b = 32 を使うと 5a + 6(32 − a) = 180 より a = 12。(サッカーボールの形で、b = 20)

ポアンカレと関係する数学者

フェルマーの最終定理のように有名な難問が解けるまでの物語は、フェルマーの最終定理とは?わかりやすく解説で読めます。数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)もどうぞ。

19世紀の数学者

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ポアンカレがかかわった数学の難問

有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

ポアンカレは何をした人ですか?

ポアンカレは、19世紀末から20世紀初めのフランスの数学者・物理学者です。位相幾何学(トポロジー)の基礎をつくり、三体問題の研究でカオスの入口を発見し、特殊相対性理論の数学的な形も整えました。ポアンカレ予想の出題者としても有名です。

ポアンカレ予想とは何ですか?

「閉じた3次元の空間で、その中の輪がすべて縮められるものは、3次元の球面と同じ形か」という問いです。1904年にポアンカレが出し、2002〜2003年にペレルマンが正しいことを示しました。

ポアンカレ予想はだれが解きましたか?

ロシアの数学者グリゴリー・ペレルマンが、2002年から2003年に3本の論文を公開して解決しました。ペレルマンは2006年のフィールズ賞と、2010年のミレニアム賞金を辞退したことでも知られています。

ミレニアム懸賞問題とは何ですか?

2000年にアメリカのクレイ数学研究所が発表した、各100万ドルの賞金つきの7つの未解決問題です。そのうち解決されたのはポアンカレ予想だけです。リーマン予想やP≠NP予想などは、確かめた範囲では解決が正式に認められていません。

トポロジー(位相幾何学)とは何ですか?

切ったりくっつけたりしないで変形できる形を同じ形とみなして、穴の数やつながり方を調べる数学です。ドーナツとマグカップは穴が1つなので同じ形とされます。ポアンカレが基礎を築きました。

ポアンカレとカオスはどういう関係ですか?

ポアンカレは三体問題の研究のなかで、出発点のわずかなちがいが時間とともに大きなちがいになる場合があることに気づきました。これがカオスの発見の出発点とされます。

ポアンカレの有名な名言はありますか?

「論理によって私たちは証明し、直観によって私たちは発見する」や「数学とは、異なるものに同じ名前をつける技術である」がよく知られています。いずれも『科学の価値』『科学と方法』という著作に由来します。

ポアンカレは相対性理論に関わっていますか?

はい。ポアンカレは1904年ごろから相対性原理を主張し、1905年にはローレンツ変換が群をなすことを示すなど、特殊相対性理論の数学的な形を整えました。同じ年にアインシュタインも論文を出し、功績の評価には議論があります。

ポアンカレは何歳で亡くなりましたか?

ポアンカレは1912年7月17日、手術のあと、パリで58歳で亡くなりました。当時、数学・物理学・哲学の分野でなお活躍中だったため、その早い死は大きな損失といわれました。

ポアンカレは受験の数学と関係がありますか?

あります。オイラーの多面体定理(頂点−辺+面=2)は、ポアンカレの位相幾何学の入口です。展開図、立体の穴の数、漸化式や極限、正規分布の考え方など、中学受験から大学受験までの題材とつながります。

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出典・参考

  • J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Henri Poincaré”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
  • H. Poincaré, “Science et méthode”(1908年)、“La valeur de la science”(1905年)
  • クレイ数学研究所「ミレニアム懸賞問題」の公式ページ
  • 肖像写真:作者不明「Henri Poincaré」、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦