リーマン予想とは?わかりやすく|素数の謎・ゼータ関数の零点・懸賞金100万ドル

リーマン予想とは?わかりやすく|素数の謎・ゼータ関数の零点・懸賞金100万ドル

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未解決

リーマン予想

ひとことで言うと

「ゼータ関数の自明でない零点は、すべて実部1/2の直線上にある」という、素数の分布の謎の本丸。1859年に生まれ、2026年時点で未解決。

問題ゼータ関数 ζ(s) の自明でない零点は、すべて実部が 1/2 か
出された年1859年(リーマンの論文)
出した人ベルンハルト・リーマン(ドイツ)
状態未解決(2026年10月時点)
懸賞金100万ドル(クレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題、2000年)
確かめられていること最初の10兆個の零点が直線上にある(クレイ数学研究所の紹介)。虚部 3×10¹² 以下はすべて確認(2021年)
分野解析的整数論(素数の分布)
同じ意味の言い方素数の個数と x÷log x のずれが、およそ √x の大きさにおさまる

このページのポイント

  • リーマン予想は、ゼータ関数の零点がすべて実部1/2の直線上にあるという予想。素数の分布のずれの大きさを決めるかぎ
  • 1737年にオイラーが「自然数の足し算=素数のかけ算」を発見し、1859年にリーマンがゼータ関数の零点で素数を調べることを思いついた
  • 10兆個の零点が確かめられているが証明ではない。2026年時点で未解決で、解決すれば100万ドル

リーマン予想とは?(ひとことで)

リーマン予想とは、「ゼータ関数という特別な関数が0になる場所(自明でない零点)は、すべて、ある1本のまっすぐな線の上に並んでいるはずだ」という予想です。1859年にドイツの数学者リーマンの業績と生涯が論文の中でのべました。2026年10月の時点で、まだ証明も反例も見つかっていない未解決問題です。2000年には、アメリカのクレイ数学研究所が選んだ7つの「ミレニアム懸賞問題」の一つになり、解決した人には100万ドルの賞金が用意されています。

こう聞くと、ものすごく専門的に感じるかもしれません。でも、この予想がねらっているのは、小学生でも知っている素数(2, 3, 5, 7, 11, …)の謎です。「素数は、数が大きくなるほどどんなふうに現れるのか? そこに規則はあるのか?」。リーマン予想は、この問いに対するいちばん深い答えを約束してくれる予想だと考えられています。

素数は、素数とは(1とその数自身でしかわれない数)のことです。素数は無限にあります。けれども、「次の素数はどこに現れるか」は、規則正しいようでいて、まったく不規則にも見えます。たとえば10までに素数は4個(2, 3, 5, 7)、100までに25個、1000までに168個。この「だいたいの数え方」には美しい法則がある一方で、「ずれ」がどれくらい小さいかまでは分かっていません。そのずれの大きさを正確に決めてくれるのが、リーマン予想なのです。

素数定理(素数の個数のだいたいの数え方)は19世紀末に証明されましたが、リーマン予想はそのさらに細かい精度を保証します。素数に関するゴールドバッハ予想や双子素数予想といった別の難問も、素数の分布についての理解が深まれば進むと期待されているため、リーマン予想は「素数の謎の本丸」とよばれます。

うかるくん

うかるくん

ゼータ関数とか零点とか、聞いたことのない言葉ばかりで不安です…。

合格先生

合格先生

大丈夫。このページでは、(1) 素数の個数を数える、(2) ゼータ関数は素数と整数をつなぐ橋、(3) 零点は素数の「音」、の3つのたとえで説明していくよ。式が出てきても、意味を日本語で言いなおすから安心してね。

リーマン予想の意味をやさしく解説

ステップ1:素数の個数を数えてみる

まず、素数がどれくらいあるかを数えます。「xx 以下の素数の個数」を π(x)\pi(x) と書きます(ここでの π\pi は円周率ではなく、「個数を数える関数」の名前です)。たとえば、

  • π(10)=4\pi(10)=4(2, 3, 5, 7)
  • π(20)=8\pi(20)=8(2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19)
  • π(100)=25\pi(100)=25、π(1000)=168\pi(1000)=168、π(10000)=1229\pi(10000)=1229

π(x)\pi(x) をグラフにすると、素数が現れるたびにひとつ上がる階段になります。階段の段差はふぞろいですが、遠くから見ると、なめらかな曲線にそっくりです。

素数の個数は「階段」 02550 51015 ━ 本当の素数の個数┅ x÷log x(なめらかな近似) 近似とのずれの大きさが、リーマン予想の主役
素数の個数 π(x) は階段。遠くから見ると x÷log x というなめらかな曲線に近づいていく

このなめらかな曲線が、xlog⁡x\dfrac{x}{\log x}(log⁡\log は自然対数)です。たとえば x=1000x=1000 なら 1000÷log⁡1000≈1451000\div\log 1000\approx 145 で、本物の168個に近い値です。数学者ガウスは、10代のころ素数の表を眺めてこの近似に気づいたと伝えられています(ガウスの業績と生涯)。この「xx が大きいほど π(x)\pi(x) は x/log⁡xx/\log x に近づく」という事実が、素数定理です。

ステップ2:「ずれ」がどれくらいかが問題

素数定理は「だいたい合っている」と言うだけで、ずれの大きさは教えてくれません。階段と曲線のあいだのずれは、数が大きくなるとどのくらい大きくなるのか。もっとも小さい場合、xx の平方根 x\sqrt{x} くらいにおさまるのではないか。実は、リーマン予想が正しいことと、このずれが x\sqrt{x} にほぼ比例するくらいの大きさにおさまることは、同じ意味だと知られています(1901年にコッホが示しました)。

つまり、リーマン予想は「素数は、完全に規則的ではないけれど、でたらめな偶然のゆれの範囲内でしか乱れない」と言っているのです。コインを何回も投げると、表の回数が「半分ぴったり」にはならないけれど、ずれがほぼ回数の平方根くらいになる、あの感じに似ています。素数は、まるでコイン投げのようにふるまっている、というのが予想の意味です。

ステップ3:ゼータ関数って何?

リーマンは、素数の謎を解くためにゼータ関数 ζ(s)\zeta(s) を使いました。まずは ss が 2 以上の整数のときの定義です。

ζ(s)=1+12s+13s+14s+⋯\zeta(s)=1+\dfrac{1}{2^s}+\dfrac{1}{3^s}+\dfrac{1}{4^s}+\cdots

たとえば s=2s=2 のときは 1+14+19+116+⋯1+\dfrac14+\dfrac19+\dfrac1{16}+\cdots で、答えは π26≈1.645\dfrac{\pi^2}{6}\approx 1.645 です。これはバーゼル問題の答え π²/6として有名なバーゼル問題で、オイラーの業績と生涯が解きました。足し算を無限に続けても、答えは有限の値に近づきます(無限級数の収束の判定)。

ステップ4:ゼータ関数は「整数と素数をつなぐ橋」

オイラーは1737年に、おどろくべき事実を発見しました。ゼータ関数は、すべての自然数を使った足し算であると同時に、素数だけを使ったかけ算にも書けるのです。

1+12s+13s+⋯=11−2−s×11−3−s×11−5−s×⋯1+\dfrac{1}{2^s}+\dfrac{1}{3^s}+\cdots=\dfrac{1}{1-2^{-s}}\times\dfrac{1}{1-3^{-s}}\times\dfrac{1}{1-5^{-s}}\times\cdots

ゼータ関数の2つの顔 足し算(自然数)1 + 1/2ˢ + 1/3ˢ+ 1/4ˢ + 1/5ˢ +…すべての整数が登場 かけ算(素数)1/(1−1/2ˢ)×1/(1−1/3ˢ)×1/(1−1/5ˢ)×…素数だけが登場 = オイラーが1737年に発見。整数と素数を結ぶ橋
左は自然数すべてを使った足し算、右は素数だけを使ったかけ算。この2つが等しいことが、ゼータ関数を素数の研究に使える理由

なぜ等しくなるのでしょう。かけ算の右辺の各項は、たとえば 11−2−s=1+12s+14s+18s+⋯\dfrac{1}{1-2^{-s}}=1+\dfrac1{2^s}+\dfrac1{4^s}+\dfrac1{8^s}+\cdots のように、「2のべき乗」だけを足したものです(等比数列の和の公式、等比数列の和)。これを素数ごとにかけ合わせて展開すると、「どんな自然数も素数の積に1通りにしか分解できない」(素因数分解の一意性)という事実から、1,12s,13s,14s,⋯1,\dfrac1{2^s},\dfrac1{3^s},\dfrac1{4^s},\cdots がちょうど1回ずつ現れるのです。

これで、ゼータ関数の中に素数の情報がかくれていることが分かりました。素数のことを知りたければ、ゼータ関数をくわしく調べればよい。これがリーマンの発想でした。

ステップ5:複素数まで広げる

ここでリーマンは大胆なことをします。ss に入れる数を、整数だけでなく、複素数(i2=−1i^2=-1 となる数 ii を使った数、虚数と複素数・複素数平面)にまで広げたのです。複素数は a+bia+bi の形で、平面上の1点として表せます。横が実部 aa、たてが虚部 bb です。

上の足し算の式は、ss の実部が1より大きいときにしか使えません。そこでリーマンは、「なめらかにつなげる」やり方(解析接続)で、s=1s=1 を除くすべての複素数に関数の定義を広げました。この広げ方は一通りしかない、という点が大事です。

ステップ6:零点とは「答えが0になる場所」

関数の零点とは、関数の値が0になる ss のことです。たとえば二次方程式 x2−4=0x^2-4=0 の解 x=±2x=\pm2 は、関数 x2−4x^2-4 の零点です。ゼータ関数の零点には、2種類あります。

  • 自明な零点:s=−2,−4,−6,⋯s=-2,-4,-6,\cdots(負の偶数)。理由が簡単に分かるので「自明」とよびます。
  • 自明でない零点:実部が0より大きく1より小さいおび(臨界領域)の中にある零点。無限個あることが分かっています。
ゼータ関数の零点のありか 14.13…21.02…25.01… -2-4-6 01 緑:自明な零点(-2, -4, -6, …) 赤:自明でない零点予想:すべて実部 1/2 黄色のおびの中にある(上方向は虚部)
黄色い臨界領域の中の零点が、すべて実部1/2の赤い直線の上に乗っているというのがリーマン予想

計算で見つかった最初の零点は s=12+14.1347⋯is=\dfrac12+14.1347\cdots i、次は 12+21.0220⋯i\dfrac12+21.0220\cdots i、その次は 12+25.0108⋯i\dfrac12+25.0108\cdots i。どれも実部がぴったり 12\dfrac12です。これが偶然ではなく、自明でない零点の実部が、すべて 12\dfrac12 であるというのが、リーマン予想です。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

リーマン予想の「予想」の中身は、たった一言。「自明でない零点は、全部まっすぐな線 実部=1/2 の上にある」。意味は単純なのに、証明はだれにもできていないんだ。

零点は素数の「音」

では、なぜ零点の場所が素数の分布を決めるのでしょう。リーマンは、素数を数える階段 π(x)\pi(x) が、ゼータ関数の零点ひとつひとつに対応する「波」を足し合わせたもので表せることを見つけました(リーマンの明示公式)。

楽器の音は、基本の音と、いろいろな高さの倍音を足し合わせてできています。それと同じで、素数の階段は、なめらかな近似に、零点の高さに応じた波をひとつずつ足していくことで、細かい凹凸まで再現できるのです。零点の虚部が波の細かさ、実部が波の大きさを決めます。

零点=素数の「音」 零点 14.13… の波零点 21.02… の波零点 25.01… の波 3つを足し合わせた波 零点を増やすほど、素数の分布の凹凸に近づく
零点の高さに対応する波を足し合わせると、素数の分布の凹凸が少しずつ現れてくる(考え方を示した図)

ここで、実部が 12\dfrac12 のときがいちばんおとなしい波になります。実部が 12\dfrac12 より大きい零点が1つでもあれば、その波は大きくなりすぎて、素数の分布は予想以上に大きく乱れます。逆に、すべての零点の実部が 12\dfrac12 なら、素数の乱れはx\sqrt{x}ほどのおだやかな範囲におさまる。これが、リーマン予想と素数の分布が結びつく仕組みです。

リーマン予想の歴史と年表

1737年:オイラーが素数とゼータ関数をつなぐ

レオンハルト・オイラーが、自然数の足し算と素数のかけ算が等しいという「オイラー積」を発見しました。このときゼータ関数に入れる数は、まだ実数だけでした。オイラーはこの式から、素数が無限にあることの別の証明も得ています。

18世紀末〜19世紀前半:素数の個数のだいたいの数え方

ガウスは15〜16歳のころ(1792年ごろ)、素数の表をもとに「xx 以下の素数はおよそ x/log⁡xx/\log x 個」と予想したと伝えられています。ルジャンドルも1798年ごろ似た近似式を出しました。1850年ごろにはロシアのチェビシェフが、この近似がだいたい合っていることを部分的に証明し、あとは「ずれの小さい形」で証明するだけという段階になりました。

1859年:リーマンの論文

1859年、ベルリン科学アカデミーの通信会員に選ばれたリーマンは、その感謝のしるしとして論文「与えられた大きさ以下の素数の個数について」を提出しました。わずか8ページほどの論文です。この中でリーマンは、ゼータ関数を複素数まで広げ、零点と素数の関係を明らかにし、その途中で「零点はすべて実部が1/2だと考えられる(非常にありそうだ)」とのべました。リーマンは、少しだけ証明を試みたが成功せず、先の研究には不要なので、いったん置いておくことにした、という意味のことも書いています。

これがリーマン予想の始まりです。リーマンは1866年に39歳で亡くなり、この予想に関する数学者としての仕事は、ほとんど残されませんでした。亡くなったあとに残されたメモの中には、リーマンが零点を実際に計算していた形跡が見つかり、1932年にシーゲルがそれを整理して「リーマン・ジーゲルの公式」として発表しました。

1896年:素数定理の証明

フランスのアダマールとベルギーのド・ラ・ヴァレー・プーサンが、それぞれ別々に素数定理を証明しました(1896年)。使ったのは、実部が1の直線上には零点がないという事実です。リーマン予想の「実部1/2」には届きませんが、「零点が1本のおびの中に収まっている」ことは、素数の分布に大きな意味を持ちます。

1900年:ヒルベルトの第8問題

1900年、ヒルベルトの23の問題は、パリの国際数学者会議で「これから100年の数学の問題」を発表しました。その第8問題に、リーマン予想と、素数についてのゴールドバッハ予想が入っていました。ヒルベルトは、「もし私が千年眠ってから目覚めたら、最初にたずねるのは、リーマン予想が証明されたかどうかだ」という意味のことを言ったと伝えられています(本人の言葉かは、確かめられていません)。

1914年:ハーディの結果

イギリスのハーディ(ハーディの業績と生涯)は、1914年に実部1/2の直線上に零点が無限個あることを証明しました。「直線の上に零点がある」ことは分かったが、「ほかの場所に零点がない」ことはまだ分からない。そのもどかしさが続いています。

20世紀後半:計算機の登場、有限体での証明

1940年代にアンドレ・ヴェイユが、整数ではなく「有限個の数」で考える世界(有限体上の曲線)のゼータ関数ではリーマン予想に当たることが正しいと証明しました。1974年にはドリーニュが、これを高次元に広げました(ヴェイユ予想の解決)。これらは「本物のリーマン予想」ではありませんが、リーマン予想が正しいだろうという大きな手がかりになりました。

1950年代からは、電子計算機で零点を直接調べる研究も進みました。チューリング(チューリングの業績と生涯)も計算機を使って零点を調べた一人だと伝えられています。今では10兆個をこえる零点が確かめられています。

リーマン予想の主な歩み1737オイラーの積の公式1859リーマンが予想をのべる1896素数定理の証明1900ヒルベルト第8問題1914ハーディ:直線上に無限個1974ドリーニュ:有限体版2000100万ドルの懸賞問題に20213兆の高さまで確認
1737年のオイラーの積の公式から、1859年のリーマンの論文、2000年の懸賞問題、2021年の計算による確認まで
年できごと
1737年オイラーが「自然数の足し算=素数のかけ算」(オイラー積)を発見
1792年ごろガウスが「素数の個数はおよそ x÷log x」と予想したと伝えられる
1859年リーマンが論文で、ゼータ関数の零点の実部がすべて 1/2 だろうとのべる(リーマン予想)
1896年アダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンが素数定理を証明(実部1の直線上に零点がないことを使う)
1900年ヒルベルトが第8問題としてリーマン予想をあげる
1914年ハーディが、実部1/2の直線上に零点が無限個あることを証明
1942年セルバーグが、直線上の零点が一定の割合(正の割合)以上あることを証明
1974年ドリーニュが、有限体上の多様体でのリーマン予想にあたるヴェイユ予想を解決
2000年クレイ数学研究所が、リーマン予想を100万ドルの懸賞つきのミレニアム問題にする
2021年プラットとトルジアンが、虚部が3×10¹²以下のすべての零点で予想が正しいことを、誤差を厳密に管理した計算で確かめる

リーマン予想は今どこまで分かっている?(2026年時点)

結論から言うと、リーマン予想は2026年10月の時点で未解決です。証明も反例(実部が1/2でない零点)も、まだ見つかっていません。いつ解けるかは、だれにも予想できません。ここでは、これまでに分かっていることを整理します。

計算で確かめられていること

クレイ数学研究所は、最初の10兆個(10,000,000,000,000個)の自明でない零点が、すべて実部1/2の線の上にあると確かめられていることを紹介しています。さらに2021年には、プラットとトルジアンが、虚部が3×10¹²(3兆)以下のすべての零点が直線上にあることを、計算の誤差を厳密に管理した方法で確かめました。いずれも、予想を支える強い証拠ですが、証明ではありません。

数学では、「ものすごく大きな数まで確かめた」ことと「証明した」ことは、別のことです。数の大きさがものすごく大きくなったとき、はじめて予想が成り立たなくなる、という例が、数学の歴史にはいくつかあるからです。

理論で分かっていること

  • 無限個が直線上にある:ハーディ(1914年)。
  • 正の割合が直線上にある:セルバーグ(1942年)が正の割合を証明。その後、レヴィンソンが3分の1以上(1974年)、コンリーが40%以上(1989年)と、割合の下限は少しずつ引き上げられています。でも、「全部」までは届いていません。
  • 実部1の直線上には零点がない:1896年。これが素数定理につながりました。
  • 零点の並び方の統計:1973年にモンゴメリーは、零点の間隔の分布が、物理学でつかう「ランダム行列」(原子核のエネルギー準位をあつかう数学)の分布とそっくりであることを発見しました。数論と物理が思わぬところでつながっていることを示す発見です。

賞金について

クレイ数学研究所は、ミレニアム懸賞問題のそれぞれに100万ドルの賞金を出すと2000年に発表しました。リーマン予想は、そのうちの1問です。賞金は、論文が専門の雑誌に発表され、2年間の検討期間を経て、数学界で広く認められたあとで、研究所が決めることになっています。7問のうち、2026年時点で解決とされているのはポアンカレ予想だけです。

「証明した」という発表について

リーマン予想については、これまでも何度か「証明した」という発表がありました。しかし、専門家の検討に耐えて認められたものは、2026年10月の時点でありません。数学では、証明が正しいかどうかは、他の数学者が長い時間をかけて確かめて、はじめて決まります。インターネット上の「証明できた」という主張は、このような確認を経ていないものがほとんどです。

ひらめいたうかるくん

うかるくん

計算で10兆個確かめても、「証明」にはならない。だから数学者は「全部」を理由で説明する証明を探しているんだね!

リーマン予想はなぜ難しいのか

1. 零点は「無限個」あるのに、計算できるのは有限個

自明でない零点は無限個あります。どんな大きなコンピューターでも、確かめられるのは有限個。しかも、予想は「全部」の零点について言っています。だから、計算だけでは決着がつきません。

2. ゼータ関数は2つの顔をもつ

ゼータ関数は、足し算の顔と、かけ算の顔をもっています。足し算の顔は零点を調べるのに向いていますが、かけ算の顔は素数を調べるのに向いています。2つの顔をうまく使いこなして零点の場所を特定する方法は、まだだれも見つけていません。

3. 「実部1/2」がちょうどのさかい目

零点の実部が1/2から少しでもずれると、素数の分布が崩れます。つまり、答えは「ちょうど1/2」でなければならず、「だいたい1/2」では足りません。これは非常に厳しい条件で、近似的な議論だけでは到達できません。

4. ほかの分野にも影響が大きすぎる

リーマン予想が証明されれば、数学のたくさんの定理が「リーマン予想を仮定すれば成り立つ」から「無条件で成り立つ」に変わります。逆に言うと、これまでたくさんの論文が「リーマン予想が正しいとすれば」という前提で書かれています。この予想を証明するには、数論・解析・幾何・物理にまたがる新しい発想が必要だと考えられています。

よくある誤解:リーマン予想は「素数の公式」ではない

リーマン予想が証明されても、「次の素数はこれ」と教えてくれる公式が手に入るわけではありません。分かるのは、素数の個数のずれの大きさの限界です。素数が1個ずつどこに現れるかは、リーマン予想が証明されても、やはり予測できません。

また、収束と発散の違いを理解していないと、ゼータ関数のむずかしさは見えにくくなります。たとえば ζ(−1)=−112\zeta(-1)=-\dfrac1{12} という有名な値は、1+2+3+⋯=−1121+2+3+\cdots=-\dfrac1{12} という「見かけ」で語られることがありますが、これは足し算の式をそのまま計算したものではなく、解析接続という特別な拡張で得られた値です。「1+2+3+⋯1+2+3+\cdots をふつうに足すと −112-\dfrac1{12} になる」わけではありません。

サクラちゃん

サクラちゃん

10兆個も確かめたなら、もう正しいって決めちゃってもいいんじゃないですか?

合格先生

合格先生

気持ちは分かるよ。でも数学の歴史には、とても大きな数まで成り立っていたのに、さらに大きな数でくずれたという例がいくつもあるんだ。だから数学者は、「理由」をつけた証明がないと安心しない。それが数学の強さでもあるんだよ。

受験・勉強とリーマン予想のつながり

中学受験:素数と素因数分解

中学受験の算数には、素数・約数・倍数の問題が毎年のように出ます。「素数とは何か」「どんな整数も、素数の積にただ1通りに書ける」という素因数分解の性質は、リーマン予想の出発点のオイラー積と同じ考え方です(素因数分解のやり方と使い方)。素数に強くなる勉強をすることは、リーマン予想の入り口に立っていることでもあります。入試の年号にちなんだ素数の話題として、2027は素数?双子素数と西暦の入試問題や唯一の偶数の素数「2」の話もどうぞ。

高校数学:等比数列・無限級数・複素数

ゼータ関数に出てくる数学は、高校数学でも出会います。

  • 無限等比級数(数学Ⅲ):オイラー積に出てくる 11−2−s=1+2−s+2−2s+⋯\dfrac{1}{1-2^{-s}}=1+2^{-s}+2^{-2s}+\cdots は、公比が 2−s2^{-s} の無限等比級数です(等比数列の和の公式)。
  • 複素数平面(数学Ⅲ):零点を表す平面は、高校の複素数平面そのものです(複素数平面とは)。
  • 数列の極限・和の記号:Σ(シグマ)の計算公式を使いこなす力は、ゼータ関数の定義を読み解く土台になります。

大学入試:ゼータ関数そのものは出ない

入試で「リーマン予想を証明せよ」という問題が出ることはもちろんありません。ただ、リーマン予想の周辺の道具――素因数分解、無限級数、対数、バーゼル問題の答え π²/6の計算の考え方――は、数学Ⅲの内容と深く関わっています。対数の大きさの見積もりは、国公立大の2次試験でもよく出ます(常用対数とけた数の問題の解き方)。

勉強法として:「予想」と「証明」を区別する

リーマン予想から学べるいちばん大切なことは、「たくさんの例で確かめること」と「すべての場合に成り立つと証明すること」は別物だということです。答案でも、「いくつか試したら成り立った」で終わらせず、すべての場合にいえる理由を書く習慣をつけましょう。数学の勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

自由研究にも:素数の個数を数えてみよう

中学生なら、100までの素数の表を作って、10ごとに区切って素数の個数を数えてみましょう(エラトステネスのふるい、エラトステネスの業績と生涯)。0〜10に4個、10〜20に4個、20〜30に2個、…。個数は、だんだん減っていくようで、不規則にもゆれます。これを表やグラフにするだけでも、立派な自由研究になります。表計算ソフトを使えば、1万までの素数も数えられ、x/log⁡xx/\log x との比べっこもできます。

リーマン予想が数学・社会にあたえた影響

  • 数学の「前提」になっている:リーマン予想が正しいことを仮定した定理は、数多く知られています。もし予想が証明されれば、それらが一斉に「無条件の定理」になります。
  • ゼータ関数の仲間たち:ゼータ関数は、ディリクレのL関数、代数体のデデキント・ゼータ関数、楕円曲線のL関数など、いろいろな仲間に広がりました。それぞれに「リーマン予想の仲間」の予想があり、フェルマーの最終定理の証明でも、これらの考え方が活躍しました。
  • 数論と物理のつながり:零点の間隔が、ランダム行列(原子核の物理)の分布と似ているという発見は、数論と量子物理の意外な関係を示しています。「零点は、ある量子力学的な系のエネルギー準位ではないか」という見方(ヒルベルト=ポリア予想)も、研究が続いています。
  • 暗号と素数:インターネットの通信を守る暗号(RSA暗号)は、大きな素数の積を素因数分解するのが難しいことを利用しています。「大きな素数を効率よく見つける方法」の理論にも、リーマン予想が関わります。ただし、リーマン予想が証明されても、暗号がすぐに破られるわけではありません。
  • 計算数学の発展:零点を高速に計算する方法は、数値計算や誤差の厳密な管理の技術を進歩させました。

ABC予想やP≠NP予想といった他の現代の難問とも、「素数」「計算の難しさ」という視点でつながっています。ひとつの難問が、ほかの難問の見方を変える。難問どうしがつながっているところも、数学のおもしろさです。

リーマン予想に挑戦!練習問題

やさしい

  1. 20以下の素数は全部で何個ありますか。
    答えと解説を見る2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19 の8個です(π(20)=8\pi(20)=8)。
  2. ゼータ関数の最初の自明でない零点は、s=12+14.1347⋯is=\dfrac12+14.1347\cdots i です。この零点の実部はいくつですか。
    答えと解説を見る複素数 a+bia+bi の実部は aa なので、実部は12\dfrac12です。リーマン予想は、すべての自明でない零点の実部が 12\dfrac12 だという予想です。

ふつう

  1. ゼータ関数の定義 ζ(2)=1+14+19+116+⋯\zeta(2)=1+\dfrac14+\dfrac19+\dfrac1{16}+\cdots の最初の4項の和を、分数で求めなさい。
    答えと解説を見る通分して 144+36+16+9144=205144≈1.42\dfrac{144+36+16+9}{144}=\dfrac{205}{144}\approx 1.42。無限に足すと、答えは π26≈1.645\dfrac{\pi^2}{6}\approx 1.645 に近づきます。
  2. オイラー積で、素数 2 と 3 の2つだけをかけ合わせた 11−2−2×11−3−2\dfrac{1}{1-2^{-2}}\times\dfrac{1}{1-3^{-2}} の値を求めなさい。
    答えと解説を見る11−14=43\dfrac{1}{1-\frac14}=\dfrac43、11−19=98\dfrac{1}{1-\frac19}=\dfrac98 なので、43×98=32\dfrac43\times\dfrac98=\dfrac{3}{2}。素数をもっと増やしてかけ合わせると、ζ(2)≈1.645\zeta(2)\approx1.645 に近づいていきます。

むずかしい

  1. 50以下の素数の個数 π(50)\pi(50) を求め、近似式 x÷log⁡xx\div\log x(log⁡50≈3.91\log 50\approx3.91)の値とくらべなさい。
    答えと解説を見る50以下の素数は 2,3,5,7,11,13,17,19,23,29,31,37,41,43,47 の15個。近似は 50÷3.91≈12.850\div3.91\approx12.8 で、本物の15個のほうが少し多くなります。この「ずれ」の大きさこそが、リーマン予想で問われているものです。
  2. 無限等比級数 1+12s+14s+18s+⋯1+\dfrac1{2^s}+\dfrac1{4^s}+\dfrac1{8^s}+\cdots を、s=1s=1 のときに求めなさい。
    答えと解説を見る初項 1、公比 12\dfrac12 の無限等比級数なので、和は 11−12=2\dfrac{1}{1-\frac12}=2。これは、オイラー積の素数2の部分 11−2−s\dfrac{1}{1-2^{-s}} に s=1s=1 を入れた値と同じです。

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よくある質問

リーマン予想とは何ですか?

リーマン予想とは、ゼータ関数 ζ(s) の自明でない零点(値が0になる複素数)が、すべて実部1/2のまっすぐな線の上にあるという予想です。1859年にリーマンがのべ、素数の分布の謎と深く結びついています。

リーマン予想はもう解けましたか?

解けていません。2026年10月の時点で、証明も反例も専門家に認められたものはありません。最初の10兆個の零点が予想どおり直線上にあることは、計算で確かめられています。

リーマン予想はだれが考えたのですか?

ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンが、1859年の論文「与えられた大きさ以下の素数の個数について」の中でのべました。リーマンは「非常にありそうだ」と書き、証明はしていません。

リーマン予想と素数にはどんな関係がありますか?

ゼータ関数は、オイラーが示したように、自然数の足し算と素数のかけ算の両方で書けます。零点の場所が、素数の個数と x÷log x のずれの大きさを決めるため、リーマン予想は素数の分布の最も細かい法則に当たります。

ゼータ関数の零点とは何ですか?

零点とは、関数の値が0になる入力のことです。ゼータ関数には、負の偶数にある自明な零点と、実部が0と1のあいだにある自明でない零点があります。リーマン予想は後者についての予想です。

リーマン予想の賞金はいくらですか?

クレイ数学研究所が2000年に発表したミレニアム懸賞問題の一つで、解決した人には100万ドルが贈られることになっています。賞金は、論文の発表と数学界での検討を経て決まります。

コンピューターで確かめたのに、なぜ証明にならないのですか?

零点は無限個あるのに、計算で確かめられるのは有限個だからです。数学では、ものすごく大きな数まで成り立っても、すべての場合にいえる理由がなければ証明とは認められません。

リーマン予想が証明されると何が変わりますか?

リーマン予想を仮定して書かれた多くの定理が、無条件の定理になります。素数の個数のずれの大きさが、およそ x の平方根の範囲におさまることも保証されます。ただし、次の素数を言い当てる公式が手に入るわけではありません。

リーマン予想は受験に出ますか?

リーマン予想そのものは出ません。ただ、素数・素因数分解(中学受験)、無限等比級数・複素数平面(高校数学Ⅲ)など、予想を理解する土台になる内容は入試にも出ます。

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出典・参考

  • Clay Mathematics Institute, “Riemann Hypothesis”(ミレニアム懸賞問題の公式ページ)
  • B. Riemann, “Über die Anzahl der Primzahlen unter einer gegebenen Grösse”(1859年)
  • E. Bombieri, “The Riemann Hypothesis”(クレイ数学研究所による問題の公式な解説)
  • D. Platt, T. Trudgian, “The Riemann hypothesis is true up to 3·10^12”(Bulletin of the London Mathematical Society, 2021年)
  • MacTutor History of Mathematics, “Bernhard Riemann”
  • Marcus du Sautoy『素数の音楽』(冨永星訳、新潮社)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦