ABC予想とは?わかりやすく|望月新一のIUT理論・rad・証明は認められたか

ABC予想とは?わかりやすく|望月新一のIUT理論・rad・証明は認められたか

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解決と発表・評価が分かれる中学受験大学受験

ABC予想

ひとことで言うと

「a+b=c のとき、c は a・b・c の素因数をかけた数(rad)より、ふつうは大きくならない」という予想。2012年に望月新一氏が証明を発表、評価は今も分かれている。

問題互いに素な a+b=c で、c>rad(abc)^(1+ε) となる組は有限個か
出された年1985年(オステルレとマッサー)
証明の発表2012年8月(望月新一、IUT理論)。論文は2021年3月にPRIMSに掲載
現在の状態数学界全体としては未解決とみる立場と、解決とみる立場がある(2026年10月時点で評価は分かれている)
別名オステルレ・マッサー予想
分野数論(数論的幾何)
特ちょう多くの数論の難問をまとめて導くとされる。IUT理論の検証が続いている

このページのポイント

  • ABC予想は「足し算 a+b=c と、素因数を1回ずつかけた数 rad(abc) の関係」を問う予想。3+125=128では rad(abc)=30 なのに c=128
  • 2012年に望月新一氏がIUT理論で証明を発表、2021年に論文掲載。2018年にショルツェ氏らが疑問を示すなど、評価は分かれている
  • 2026年にはLeanによる検証計画LANAが発表されたが、結論は出ていない。このページは特定の立場に肩入れしない

ABC予想とは?(ひとことで)

ABC予想とは、「足し算 a+b=c で、a・b・c の素因数をくわしく見ると、c はふつう“素因数の積”より大きくならない」という数論の予想です。1985年にヨーゼフ・オステルレとデイヴィッド・マッサーが述べたため、オステルレ・マッサー予想ともよばれます。

2012年、京都大学数理解析研究所の望月新一氏が、宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)を使ってこの予想を証明したと発表しました。論文は2021年に学術誌に掲載されましたが、世界の数学者の評価は分かれたままです。このページでは、どちらの立場にも肩入れせず、分かっている事実を順に説明します。

問題の意味は、素因数分解を習った中学生にも分かります。かぎになる 素因数分解の考え方は、素因数分解と約数の個数のページで復習できます。足し算(和)と、かけ算(素因数)という、数の2つの顔の関係を問う問題です。

うかるくん

うかるくん

足し算とかけ算の関係って、そんなに大きな問題なんですか?

合格先生

合格先生

そうなんだ。たとえば 2×2×…と2だけをかけて作った数に1を足すと、その数にはたくさんの素因数があらわれるように見える。足し算とかけ算は、数のなかで水と油のようにまざりにくい。そのまざり方に法則があるか、というのがABC予想なんだよ。

ABC予想の意味をやさしく解説

rad(根基)とは?

まず新しい言葉 rad(n)(ラディカル、根基)を説明します。rad(n) は、n を素因数分解したとき、現れる素数を1回ずつかけた数です。同じ素数が何回出てきても、1回しか数えません。

rad:素因数を1回ずつかける 数素因数分解rad 122²×3→6182×3²→6162⁴→2302×3×5→301002²×5²→10 指数(右肩の数)は無視して、素数を1回ずつ
rad は「素数のかたまり」だけを見る。12=2²×3 も 18=2×3² も rad は 6

たとえば 12=2×2×3 なので、rad(12)=2×3=6 です。16=2×2×2×2 は素数 2 だけなので rad(16)=2、100=2²×5² は rad(100)=2×5=10 です。素数 p ならば rad(p)=p になります。

互いに素な足し算を考える

次に、a+b=c で、a・b・c がどの2つも共通の約数をもたない(互いに素)ものだけを考えます。たとえば 3+125=128 は、3 と 125 と 128 が互いに素なので条件を満たします。6+9=15 は、どれも 3 の倍数なので、これは対象外です。対象外にするのは、すべてを 2 倍、3 倍した例まで数えてしまうと、意味がなくなるからです。

予想の中身

互いに素な a+b=c について、abc の rad(素因数を1回ずつかけた数)を rad(abc) とすると、ふつうはc は rad(abc) より小さいのですが、まれに c のほうが大きくなる例があります。

3 + 125 = 128 a3 b5³ c2⁷ += 使う素数は 2・3・5 だけ rad(abc) = 2×3×5 = 30 rad(abc)30 c128 c が rad(abc) より大きい、めずらしい例
3+125=128 では、rad(abc)=2×3×5=30 なのに c=128。めずらしい「c が大きい」例

ABC予想は、そのようなめずらしい例は、あまり大きくなれないと主張します。くわしく言うと、どんな小さな正の数 ε(イプシロン)をとっても、c>rad(abc)1+ε となる組は、有限個しかない、というものです。たとえば ε=0.01 なら、c が rad(abc) の 1.01 乗を超える例は、あるところで打ち止めになる、という意味です。

「質」でくらべる

どれくらい c が大きいかを、質 q = log c ÷ log rad(abc) という数で表します。q>1 なら「c が rad(abc) より大きい」例です。3+125=128 は q=1.4266、1+80=81 は q=1.2920、1+8=9 は q=1.2263 です。

例の「質 q」くらべ(q>1 がめずらしい) q=10 1+8=91.235+27=321.021+48=491.041+80=811.293+125=1281.432+3¹⁰×109=23⁵1.63
質 q が 1 を超える例は少なく、見つかっている中で最大級の例でも約1.63。ABC予想は「1+ε を超えるものは有限個」と主張する

対数とは何かの計算に慣れていない人は、「q が 1 より大きいほど、c が rad より“どれだけ大きいか”を表す目安」と考えれば十分です。対数の計算は、指数法則と対数の公式で確かめられます。いま知られているq が最も大きい例は、2+310×109=235(6436341+2=6436343)で、q は約 1.6299 です。これは数学者のエリック・レサイが見つけた例として知られています。

なぜ「めずらしい」の?

足し算では素数の指数(右肩の数)がまったく関係なく動くのに、rad は指数を無視します。たとえば 2 のべき乗(2, 4, 8, 16, …)のそばに、3 のべき乗や 5 のべき乗が都合よくあらわれる、というような「全員が小さな素数だけでできている足し算」は、とても少ないのです。ABC予想は、その少なさに数の上限をつけます。

ABC予想の歴史と年表

1985年:オステルレとマッサーの提案

1985年に、フランスのヨーゼフ・オステルレがイギリスのデイヴィッド・マッサーと話すなかで、この予想が述べられました。もともとはマッサーが、多項式(式の形の数)についての似た定理をもとに、整数でも同じことが言えるのでは、と考えた、と伝えられています。多項式の場合は、メーソン・ストーサーズの定理として、すでに証明されています。

数論の“予想の予想”

ABC予想は、数論の多くの未解決問題のつながりのかなめだと考えられています。もしABC予想が正しければ、フェルマーの最終定理の大きな n での成立が別の方法で分かる、モーデル予想(ファルティングスの定理)の強い形が出る、カタラン予想(ミハイレスクの定理)の類似が分かる、など多くの結果が一度にまとめて得られます。そのため「証明されたらすごい」問題の筆頭とされてきました。

ABC予想がもたらす見通し ① xⁿ+yⁿ=zⁿ とおくa=xⁿ,b=yⁿ,c=zⁿ(互いに素) ▼ ② rad(abc) は小さいrad(abc) ≦ x×y×z < z³ ▼ ③ ABC予想と合わせるzⁿ が z³ より何倍も大きいと矛盾
ABC予想が正しければ、xⁿ+yⁿ=zⁿ の n が大きいときの解の有無について、強い見通しが得られる

この図のように、rad(abc) は xyz 以下、つまり z³ より小さくなります。ところが c=zⁿ なので、n が大きければ zⁿ は z³ をはるかに超えてしまいます。これは「c が rad(abc) より大きすぎる」例で、ABC予想が「有限個しかない」と言っている状況です。くわしい計算には、予想の中の定数が必要ですが、ABC予想が正しければ、ある n より大きい n については、フェルマーの最終定理の形の式に解がほとんどないことが分かります。実際の最終定理は、ワイルズの業績と証明が1995年に別の方法で証明しました。くわしくはフェルマーの最終定理とは?わかりやすく解説を見てください。

2012年:IUT理論の論文公開

2012年8月、望月新一氏は、宇宙際タイヒミュラー理論(Inter-universal Teichmüller theory、IUT理論)に関する4本の論文を公開し、この理論を使うとABC予想などが示せる、と発表しました。全体で600ページを超える大きな論文で、使われている言葉も新しく、数学者がすぐに読んで確かめることはできませんでした。

2018年:疑問が示される

2018年、ドイツのペーター・ショルツェ氏とヤコブ・スティックス氏が京都を訪れて望月氏と議論し、その後、論文の中のある部分(系3.12とよばれる部分)に、証明を成り立たせない欠けた部分があるのではないか、という疑問を文書で公表しました。この文書の題は「ABCがなぜ今も予想なのか」といいます。これに対して望月氏は、指摘は理論の理解がちがっているためだ、という反論を公表し、2人の見解は一致しませんでした。

2020〜2021年:論文の掲載

2020年4月、京都大学数理解析研究所の学術誌 Publications of the Research Institute for Mathematical Sciences(PRIMS)に、IUT論文が受理されたことが発表され、論文は2021年3月に掲載されました。同誌の編集長は望月氏ですが、この論文の審査では関与しなかったと説明されています。掲載後も、世界の数学界では「証明が完成した」という見方と、「まだ納得できない」という見方がならんでいます。

2023年以降:賞と、検証の試み

2023年7月、ドワンゴの創業者である川上量生氏の個人的な資金で、IUT理論を研究する組織 IUGC(宇宙際幾何センター)と、2つの賞が設けられたと発表されました。1つは「IUT Challenger Prize」で、IUT理論に本質的な欠陥があることを示す論文を最初に書いた数学者に100万ドルを贈るというものです。もう1つは「IUT Innovator Prize」で、IUT理論の発展に貢献した論文に毎年、賞金が贈られます。2026年10月の時点で、Challenger Prize の受賞者が決まったという公式な発表は、私たちは確かめられていません。

2026年3月31日には、ZEN大学(日本)、ユトレヒト大学(オランダ)、アルバータ大学(カナダ)の研究者による、IUT理論をコンピューターの証明支援ソフト Lean で確かめる国際プロジェクトLANAが発表されました。2026年7月17日には中間報告会も開かれましたが、報告では、問題の部分を「定理3.11から系3.12を導くところ」にしぼりこんだ一方、そこを形式化して確かめるには至っておらず、IUT理論でABC予想が証明されたかどうかの結論は、まだ出されていません。プロジェクトは中立の立場だと説明されています。

年できごと
1985年オステルレとマッサーがABC予想を述べる
1990年代予想から多くの数論の問題が導かれると知られる(モーデル予想の強い形、ほか)
2012年8月望月新一氏がIUT理論の論文4本を公開し、ABC予想の証明を発表
2018年ショルツェ氏とスティックス氏が京都で議論し、疑問を示す文書を公表
2020年4月IUT論文の学術誌PRIMSへの掲載が決まったと発表
2021年3月IUT論文がPRIMSに掲載される
2023年7月川上量生氏の資金で、IUGCと IUT Challenger Prize・Innovator Prize が発表される
2026年3月IUT理論をLeanで確かめるLANAプロジェクトが発表される(7月に中間報告)
ABC予想をめぐる流れ1985オステルレとマッサーが予想を述べる2012年8月望月新一がIUT理論の論文4本を公開2018年ショルツェとスティックスが疑問を示す2020〜21年論文が学術誌 PRIMS に掲載2023年7月川上量生氏の資金で賞と研究組織が発表2026年3月Leanによる検証計画LANAが発表
1985年に生まれた予想。2012年に証明の発表があり、検証は2026年現在も続いている

ABC予想は今どこまで分かっている?(2026年10月時点)

ABC予想は、数学界全体が「解決した」と認めた状態にはなっていません。一方で、望月氏の論文は学術誌に掲載されています。ここでは、2つの立場を、できるだけ公平に並べます。

立場1:証明は正しいとする人たち

望月氏とIUT理論の支持者は、論文は掲載され、理論の中身に誤りは見つかっていないと考えます。国際的な研究者のなかにも、IUT理論を読み進めて、理論の構成を支持する数学者がいます。IUT理論の入門書も出されており、日本語でも解説書が刊行されています。IUGCが開く研究集会では、IUT理論を学ぶ研究者たちが集まり、理論の発展をめざしています。

立場2:まだ納得できないとする人たち

ショルツェ氏とスティックス氏は、論文の中の一部の推論が、どうしても成り立たないように見える、と述べています。ショルツェ氏は2018年にフィールズ賞を受けた数論の専門家です。ほかにも、証明の大事な部分が、論文のなかで十分に説明されていない、と考える数学者がいます。この立場の人たちは、「説明が足りない」ことと「まちがっている」ことをわけて、十分な説明が足りないと主張しています。

どちらでもなく、確かめようとする人たち

LANAプロジェクトのように、コンピューターで1行ずつ確かめることで決着をつけようとする試みも始まりました。理論が大きいため時間はかかり、プロジェクトは「まだ結論を出していない」と説明しています。私たちも、結論を決めつけず、最新の発表を見守る立場をとります。

その他の動き

ほかに、キルティ・ジョシ(Kirti Joshi)氏が、IUT理論の考え方をもとに、系3.12について別の形の議論を論文で公開しています。これについても、評価は定まっていません。いずれにせよ、ABC予想の最終的な評価は、2026年10月の時点で定まっていません。

今分かっている結果

ABC予想そのものではなく、弱い形なら、すでに分かっています。たとえば、c は rad(abc) の 1/3 乗ほどを指数にした“指数関数”の大きさより小さい、という形の結果(スチュアートとユーの2001年の結果など。1991年の結果を改良したものです)があります。これは予想が主張する「rad(abc) の1+ε乗」にくらべるとずっとゆるい上限で、予想にはほど遠い、というのが現状です。また、コンピューターを使った探索(ABC@Home という計算プロジェクトなど)によって、質 q の大きい例が多数見つかっています。ただし、これは「証明」ではなく実験データです。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

証明が「正しいか」は、数学者が1行ずつ読んで納得できるかで決まるんだ。答案でも、自分の書いた式の意味を、まだ読んでいない人にも伝わるように書くくせをつけよう。

ABC予想はなぜ難しいのか

1. 足し算とかけ算は、仲が悪い

素因数分解は「かけ算の世界」の話、a+b=c は「足し算の世界」の話です。数論では、この2つの世界のつながりが、ほとんど分かっていません。たとえば 2n+1 がどんな素因数をもつか、2のべき乗と3のべき乗がどれだけ近づけるか、といった問題は、ゴールドバッハ予想やコラッツ予想と同じように、とても簡単な式のなかに難しさがかくれています。

2. 数の“全体”を相手にする

ABC予想は「どんな互いに素な足し算でも」という全体についての主張です。コンピューターで 10^18 までの例をいくら調べても、それより大きな数に例外がないとは言えません。数学では「調べた範囲では成り立つ」と「いつでも成り立つ」はまったくちがうことを、反例の考え方の考え方で学びます。反例が1つでも見つかれば予想は崩れますが、見つからなくても証明にはなりません。

3. 道具が新しい

IUT理論は、数学の“宇宙”(普通の集合の世界のようなもの)を複数用意して、あいだを“つなぐ”という新しい考え方を使います。使う言葉も、「ホッジ劇場」「Θリンク」など、ほかの分野の専門家になじみのないものです。理論を読んで確かめる人が少ないこと自体が、評価を難しくしています。

4. 証明の確かめ方そのものの難しさ

ポアンカレ予想や四色問題のときは、証明を読んだ専門家たちが数年のうちに、あるいはコンピューターを使って、おおむね同じ結論に達しました。ABC予想は、この点で例外的です。同じ“公開された証明”をめぐって、専門家の考えが10年以上わかれている、数学の歴史でもめずらしい状況です。

サクラちゃん

サクラちゃん

証明が出て、論文にもなったのに、どうして「解けた」と言えないんですか?

合格先生

合格先生

数学では、世界の専門家が読んで「正しい」と納得してはじめて解決と考えるんだ。論文が掲載されたことは大事な一歩だけれど、読んだ人のあいだで意見が分かれている。だから、いまは“結論待ち”の状態だと説明するしかないんだよ。

受験・勉強とABC予想のつながり

中学受験:素因数分解と約数

rad(n) は、素因数分解ができれば誰でも計算できます。たとえば 360=2³×3²×5 なので、rad(360)=2×3×5=30 です。中学受験の「約数の個数」「最小公倍数と最大公約数」は、同じ素因数分解の考え方です。素因数分解と約数の個数の公式や最大公約数・最小公倍数の考え方で練習しましょう。

高校受験・大学受験:整数問題と対数

大学入試の整数問題では、「a+b=c の形の式と素因数分解を組み合わせる」ことがよくあります。ユークリッドの互除法で互いに素かどうかを調べ、常用対数とけた数で大きな数の大きさをはかる、という道具は、ABC予想の「質」の計算とまったく同じです。常用対数とけた数の問題の解き方もあわせて読んでください。

勉強法として

ABC予想から学べるのは、「数の見方を変える」と難しさが変わる、ということです。足し算で見ていた式を、素因数の形(かけ算)で見直すと、まったくちがう顔があらわれます。入試でも、困ったときは「素因数分解の形に直したら?」「和と積の両方で見たら?」と見方を変えてみましょう。数学全体の勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考になります。

ABC予想が数学にあたえる影響

  • 多くの未解決問題の“まとめ役”:ABC予想が正しければ、フェルマーの最終定理の大きな n、モーデル予想の強い形、カタラン予想の類似、ロスの定理の強い形など、数論の多くの結果が一度に導かれます。
  • 数論の新しい道具づくり:望月氏のIUT理論は、数論的幾何(数論と図形の組み合わせ)の分野に、新しい見方をもちこみました。この理論が最終的に認められるかどうかにかかわらず、理論を読み解く研究が、数学者たちの理解を広げています。
  • 「証明の確かめ方」を考えなおすきっかけ:LANAプロジェクトのように、証明支援ソフト Lean を使って確かめる試みは、ケプラー予想の形式的証明(Flyspeck)とも共通します。長く複雑な証明を、コンピューターで1行ずつ確認するという手法の広がりを示しています。
  • 数学の社会への開き方:企業家の資金による賞や研究組織の設立は、数学の研究支援のあり方についても、議論を生みました。

ABC予想は、リーマン予想やBSD予想などと並んで、現代数論の中心的な問題の1つです。ガウスの業績と生涯が「数学は科学の女王、数論は数学の女王」と呼んだとされる数論は、いまも新しい道具をもとめて動き続けています。

ABC予想に挑戦!練習問題

やさしい

  1. rad(12)、rad(36)、rad(100) をそれぞれ求めなさい。
    答えと解説を見る12=2²×3 なので rad=2×3=6。36=2²×3² なので 6。100=2²×5² なので 2×5=10。
  2. 1+8=9 で、a=1、b=8、c=9 です。rad(abc) を求め、c と大小をくらべなさい。
    答えと解説を見るabc=1×8×9=72=2³×3²。rad(72)=2×3=6。c=9 は rad(abc)=6 より大きい(c>rad(abc))。

ふつう

  1. 5+27=32 は、5・27・32 が互いに素な足し算です。rad(abc) を求め、c=32 と大小をくらべなさい。
    答えと解説を見る5 と 27=3³ と 32=2⁵ で、使う素数は 2・3・5。rad(abc)=2×3×5=30。c=32 は 30 より大きい。
  2. 互いに素な a+b=c で、rad(abc)=rad(a)×rad(b)×rad(c) が成り立つのはなぜですか。3+125=128 で確かめなさい。
    答えと解説を見るa・b・c は互いに素なので、どの素数も 3 つのうち 1 つにしか現れません。だから各数の rad をそのままかけたものが、abc の rad になります。3+125=128 なら rad(3)×rad(125)×rad(128)=3×5×2=30。

むずかしい

  1. a<b、互いに素、c≦10、rad(abc)=6 となる a+b=c をすべて求めなさい。
    答えと解説を見る使える素数は 2 と 3 だけ。互いに素なので、a と b の一方が 2 のべき乗、もう一方が 3 のべき乗(1 もよい)。c≦10 で c も 2 と 3 だけでできるのは、1+2=3、1+3=4、1+8=9 の3組。確かめると abc=6、12、72 で、どれも rad は 6。
  2. 質 q=log c ÷ log rad(abc) について、3+125=128 の q が 1 より大きいことを、rad(abc)=30、c=128 から説明しなさい。
    答えと解説を見るc=128 は rad(abc)=30 より大きいので、log 128 > log 30。したがって q=log 128 ÷ log 30 > 1。実際の値は約 1.43(log 128 ≒ 4.852、log 30 ≒ 3.401)。

ABC予想と関係する数学者・難問

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よくある質問

ABC予想とは何ですか?

ABC予想とは、足し算 a+b=c で互いに素な a・b・c について、c が素因数を1回ずつかけた数 rad(abc) の「1+ε乗」を超える例は有限個しかない、という数論の予想です。1985年にオステルレとマッサーが述べました。

radとは何ですか?

rad(n) は、n を素因数分解して現れる素数を1回ずつかけた数です。たとえば 12=2²×3 の rad は 2×3=6、100=2²×5² の rad は 2×5=10 です。

ABC予想は証明されましたか?

望月新一氏が2012年にIUT理論による証明を発表し、論文は2021年にPRIMSに掲載されました。しかし、ショルツェ氏とスティックス氏が疑問を示すなど、数学界の評価は分かれており、2026年10月時点で広く合意された結論はありません。

望月新一とはだれですか?

望月新一氏は、京都大学数理解析研究所の数学者で、数論的幾何を専門としています。宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)をつくり、2012年にABC予想の証明を発表しました。

なぜ評価が分かれているのですか?

IUT理論は新しい考え方と言葉を多く使う600ページ超の論文で、読み解く専門家が限られているためです。2018年にショルツェ氏らが論文の一部に疑問を示し、望月氏が反論しましたが、見解は一致していません。

ABC予想が正しいと何が分かりますか?

フェルマーの最終定理の大きな n についての見通し、モーデル予想の強い形、カタラン予想の類似など、数論の多くの結果が導かれるとされます。そのため、数論の中心的な予想の1つと考えられています。

賞金はあるのですか?

2023年7月に、川上量生氏の個人的な資金で、IUT理論に本質的な欠陥を示した論文に100万ドルを贈る「IUT Challenger Prize」が発表されました。ほかに IUT Innovator Prize もあります。ただし、ABC予想を解いた人にクレイ数学研究所のような公式の懸賞金があるわけではありません。

質 q とは何ですか?

質 q は、log c ÷ log rad(abc) で表す数で、c が rad(abc) よりどれだけ大きいかの目安です。q>1 なら c のほうが大きい例です。知られている最大級の例は 2+3¹⁰×109=23⁵ で、q は約1.63です。

LANAプロジェクトとは何ですか?

IUT理論を証明支援ソフト Lean で確かめる国際プロジェクトで、2026年3月31日にZEN大学の研究所が発表しました。2026年7月の中間報告の時点では、IUT理論でABC予想が証明されたかの結論は出されていません。

ABC予想は受験に出ますか?

ABC予想そのものは出ませんが、素因数分解、互いに素、約数、対数の計算など、基本の考え方は中学受験から大学入試までの整数問題に出ます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • J. Oesterlé, “Nouvelles approches du théorème de Fermat”(Séminaire Bourbaki, 1988)
  • S. Mochizuki, “Inter-universal Teichmüller Theory I〜IV”(Publications of the Research Institute for Mathematical Sciences, 2021年)
  • P. Scholze, J. Stix, “Why abc is still a conjecture”(2018年)
  • ZEN大学 ZEN数学センター「LANAプロジェクト」発表(2026年3月31日、7月17日)
  • 加藤文元『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』(KADOKAWA)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦