三大作図問題とは?わかりやすく|円積・立方倍積・角の三等分が不可能と証明(ヴァンツェル1837・リンデマン1882)

三大作図問題とは?わかりやすく|円積・立方倍積・角の三等分が不可能と証明(ヴァンツェル1837・リンデマン1882)

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三大作図問題

ひとことで言うと

定規とコンパスだけで円積・立方倍積・角の三等分はできるか。2000年以上後の1837年と1882年に「不可能」と証明された。

問題定規とコンパスだけで、円積・立方倍積・角の三等分を作図できるか
出された年紀元前5世紀ごろ(古代ギリシャ)
解かれた年1837年(立方倍積・角の三等分)、1882年(円積)
解いた人ピエール・ヴァンツェル、フェルディナント・フォン・リンデマン
答え3つとも定規とコンパスだけでは不可能
かかった年数2000年以上
分野幾何・代数(体の拡大)・超越数
特ちょう「できない」ことが証明された代表的な問題

このページのポイント

  • 三大作図問題は円積・立方倍積・角の三等分。目もりのない定規とコンパスだけで作れるかを問う
  • 1837年ヴァンツェルが立方倍積と角の三等分を、1882年リンデマンが円積を不可能と証明した
  • 作図できる長さは足し算・かけ算・平方根だけ。³√2 や π はこれでは作れない。折り紙なら三等分できる

三大作図問題とは?(ひとことで)

三大作図問題とは、古代ギリシャから伝わる、「定規とコンパスだけで、次の3つの図形を作れるか」という3つの問題のことです。

  • 円積問題:与えられた円と同じ面積の正方形を作る。
  • 立方倍積問題:与えられた立方体の体積が2倍の立方体を作る。
  • 角の三等分問題:与えられた角を3等分する。

答えは、3つとも「できない」です。立方倍積と角の三等分は1837年にフランスのピエール・ヴァンツェルが、円積問題は1882年にドイツのフェルディナント・フォン・リンデマンが、不可能であることを証明しました。2000年以上の間、多くの人が挑戦して、できなかったのです。

「できない」と証明するのは、「できた」と示すよりずっとむずかしいことです。ここで活躍したのが、デカルトの座標の考え方と、ガロアの方程式の理論につながる代数の考え方でした。中学校で習う作図(垂直二等分線・角の二等分線・垂線)は、この歴史の入口にあたります。

うかるくん

うかるくん

角の三等分って、分度器を使えば簡単にできますよね?

合格先生

合格先生

そこがポイントなんだ。目もりのない定規とコンパスだけという約束だから、分度器は使えない。分度器を使えば60度を20度ずつに分けられるけれど、約束を守ると、どんなに工夫してもできないと証明されたんだよ。

三大作図問題の意味をやさしく解説

「作図」のルールは2つだけ

数学でいう作図とは、次の2つの道具だけを、決まった使い方で使って図形をかくことです。

  • 定規:2つの点を通る直線をひく。目もりは使わない(長さをはかれない)。
  • コンパス:1つの点を中心に、決まった半径の円(または弧)をかく。

この古代ギリシャのルールは、ユークリッドの『原論』で整理されました。たとえば、線分の垂直二等分線は、両端を中心に同じ半径の弧を2つかき、交わった2点を結べばかけます。

定規とコンパスでできる作図 ABPQ中点 A・Bを中心に同じ半径の弧 → P・Qを結ぶ
定規とコンパスだけで、線分ABの垂直二等分線がかける。このような手順を何回かくり返して図形を作るのが作図

この基本のほかにも、垂直二等分線、角の二等分線、垂線、平行線、正三角形、正六角形、90度の角の三等分(30度)などが作図できます。逆に、「作れないもの」があるのではないか、という疑問が、三大作図問題でした。

3つの問題

三大作図問題 体積2倍の立方体立方倍積問題 = 同じ面積の正方形円積問題 角を3等分角の三等分問題 どれも定規とコンパスだけでは「不可能」
立方倍積問題・円積問題・角の三等分問題。どれも定規とコンパスだけでは作図できない

① 円積問題

円の面積は 円周率とはを使って πr2\pi r^2 ですね(半径を r とします)。同じ面積の正方形の1辺は π r\sqrt{\pi}\,r です。つまり、長さ r から、長さ π r\sqrt{\pi}\,r を作図できるか、という問題になります。円の面積は円の面積と円周の長さの公式で確かめられます。

② 立方倍積問題

辺の長さが 1 の立方体の体積は 1 です。体積が 2 倍の立方体の1辺は、23\sqrt[3]{2}(約1.26)です。長さ 1 から、長さ 23\sqrt[3]{2} を作図できるか、という問題です。「デロス島の問題」ともよばれます。

③ 角の三等分問題

与えられた角を、定規とコンパスだけで3等分できるか、という問題です。なお、特別な角(90度、180度など)は3等分できます。できない例があることが、この問題の中心です。

なぜ「できない」ことが証明できるの?

作図で作れる長さには、きまりがあります。定規とコンパスで最初の長さ 1 から作れるのは、足し算・引き算・かけ算・わり算と平方根(√)を、何回かくり返してできる長さだけです。デカルトの業績と生涯が座標を使って、図形の問題を式で考える方法を示した(1637年)ことで、このことが調べられるようになりました。

平方根は作図できる 13√3 直径の上の三角形は直角 → 高さの2乗=1×3
長さ1と3の線分をつなげて半円をかき、つなぎ目から垂線を立てると、高さが√3になる。このように、平方根は作図できる

つまり、作図できる長さは「整数と√を何回か使った式」で書けるものだけです。平方根とははいくらでも作れますが、3乗根(23\sqrt[3]{2} など)は、この方法では作れません。

三大作図問題の歴史と年表

紀元前5世紀ごろ:古代ギリシャで生まれた問題

3つの問題は、紀元前5世紀ごろの古代ギリシャで知られていたとされます。円積問題は、アナクサゴラスが牢屋の中で考えた、という話が伝えられています。キオスのヒポクラテスは、円とは別の「三日月形」の面積を、直線で作れる図形と同じ面積にできることを示しました(ヒポクラテスの三日月)。これで円積問題も近いのでは、と期待が高まりましたが、結局うまくいきませんでした。

デロス島の伝説

立方倍積問題は、「デロス島の問題」とも呼ばれます。デロス島で疫病が流行したとき、神殿の神のお告げで「アポロン神の祭壇(立方体の形)を2倍の体積にせよ」と命じられた、という伝説があります。ただし、これは後の時代の話で、本当かどうかは確かめられていません。

定規とコンパス以外の道具なら…

古代ギリシャの数学者は、道具をふやせば解けることを見つけました。アルキメデスの業績は、目もりをつけた定規を使う方法で角の三等分を行いました。また、メナイクモスは円すい曲線(放物線と双曲線)を使って立方倍積を行いました。アポロニウスが研究した円すい曲線は、2次曲線(放物線・楕円・双曲線)として今も学びます。ただし、これらは「定規とコンパスだけ」のルールを破っています。

1775年:パリ科学アカデミーが円積の投稿を受けつけなくなる

円積問題の「解法」を送る人があまりに多かったため、フランスの科学アカデミーは1775年に、円積・立方倍積・角の三等分の解法を審査しない、と決めたとされています。「円を四角にする」という言い回しが、「不可能なことをする」という意味で使われるようになりました。

1796年:ガウスが正十七角形を作図

ガウスの業績と生涯は、1796年、18歳のときに、正十七角形が定規とコンパスで作図できることを見つけたとされます。ガウスは、この発見に感激して、数学者になることを決めた、と伝えられています。ガウスは、正n角形が作図できるための条件も述べました(証明の一部はのちにヴァンツェルが完成)。

作図できる正多角形(正n角形)3作れる4作れる5作れる6作れる7作れない8作れる9作れない10作れる11作れない12作れる13作れない14作れない15作れる16作れる17作れる18作れない19作れない20作れる17角形は、ガウスが18歳で見つけた
定規とコンパスで作図できる正n角形。正十七角形はガウスが18歳で見つけた

1837年:ヴァンツェルが2つを不可能と証明

1837年、フランスのピエール・ヴァンツェル(1814〜1848)が、立方倍積問題と、角の三等分問題が、定規とコンパスだけでは不可能であることを証明しました。ヴァンツェルの論文は、リウヴィルの数学雑誌に載りました。それ以前に、ガウスは「不可能だ」と書き残していたものの、証明を公表していませんでした。

1882年:リンデマンが円積問題も不可能と証明

円積問題は、少し別の理由で不可能です。π\pi が「超越数」であることが分かれば、π\sqrt{\pi} も作図できません。1873年、フランスのエルミートが自然対数の底 e が超越数であることを示し、これを受けて1882年、ドイツのリンデマンが、π\pi が超越数であることを証明しました。これで、円積問題は不可能と決まりました。詳しい話は円周率の超越性(πは超越数か)の解説にもあります。

解決まで2000年以上前5世紀ギリシャで3つの問題が知られる1796ガウスが正17角形を作図1837ヴァンツェルが2つを不可能と証明1882リンデマンが円積問題も不可能と証明「できる」と信じた期間が長かった
2000年以上も未解決だった3つの問題が、1837年と1882年に「不可能」と決着した
年できごと
前5世紀古代ギリシャで円積・立方倍積・角の三等分が知られる。キオスのヒポクラテスが三日月形の面積を求める
前300年ごろユークリッドが『原論』で、定規とコンパスによる作図を整理する
前3世紀アルキメデスが、目もりつきの定規で角の三等分を行う
1637年デカルトが『幾何学』で、作図できる長さを式で考える方法を示す
1775年パリ科学アカデミーが、円積などの解法を審査しないと決めたとされる
1796年ガウスが、正十七角形が作図できることを見つける
1837年ヴァンツェルが、立方倍積と角の三等分は不可能と証明する
1873年エルミートが、e が超越数であることを示す
1882年リンデマンが、π が超越数であることを示し、円積問題も不可能と決まる
1980年日本の阿部恒さんの方法が報告され、折り紙なら角の三等分ができると知られる

三大作図問題はいつ・だれが解いた?

答えをまとめると、次のようになります。

問題答え証明した人年
立方倍積問題不可能ヴァンツェル1837年
角の三等分問題不可能(一般の角)ヴァンツェル1837年
円積問題不可能リンデマン1882年

なぜ立方倍積は不可能か(ざっくり)

辺の長さ 1 の立方体の体積を2倍にするには、x3=2x^3 = 2 をみたす長さ x が必要です。ヴァンツェルは、定規とコンパスで作れる長さは、2次方程式を何回か解いて出てくる数だけであることに注目しました。すると、作れる長さは、「次数」(その数を解にもつ最も簡単な整数係数の方程式の次数)が 1、2、4、8、…と2のべき乗になります。

作図できる長さの「次数」 整数・分数 次数 1√ を1回 次数 2√ を2回 次数 4√ を3回 次数 8 ³√2 は次数 32のべきでない 1, 2, 4, 8, … の次数だけが作図できる
作図できる長さの次数は1, 2, 4, 8, …と2のべき乗。³√2 の次数は3なので作図できない

x3=2x^3 = 2 をみたす数の次数は 3 です。3は2のべき乗ではないので、23\sqrt[3]{2} は作図できません。したがって、立方体の体積を2倍にすることもできないのです。(背理法とはの考え方で、作図できると仮定して矛盾を導きます。)

なぜ角の三等分は不可能か(60度の場合)

60度を3等分して20度が作れるか、を考えます。cos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta という三角関数の加法定理(3倍角の公式)で、θ=20∘\theta = 20^\circ とすると、cos⁡60∘=12\cos 60^\circ = \tfrac{1}{2} なので、x=2cos⁡20∘x = 2\cos 20^\circ は x3−3x−1=0x^3 - 3x - 1 = 0 をみたします。この3次方程式は、有理数の解をもたず、次数が3になります。だから、cos⁡20∘\cos 20^\circ は作図できず、20度の角も作れません。

ここで注意したいのは、「どんな角も三等分できない」のではないことです。90度の角は、正三角形で60度を作って二等分すれば30度が作れるので、3等分できます。三等分できないのは、「すべての角を三等分する、同じ手順」であり、60度のように具体的な角で作れない場合があるということです。

60°を3等分すると 20° 60°20°?20°? 60°は作れる。でも20°は作れない
60度は作図できるが、その3分の1の20度は作図できない
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

「できない」ことの証明は、「やり方を探す」のではなく「できる長さの正体を調べる」ことで決まったんだ。問題の見かたを変えるのが、数学の大きな力だよ。

ほかの道具や方法ならできる

  • 折り紙:折り紙を折る操作は、定規とコンパスより強力です。角の三等分は、日本の阿部恒さんの方法(1980年に報告)で折り紙ならできることが知られています。立方倍積も、1986年にピーター・メッサーが折り紙でできることを示しました。
  • 目もりつきの定規:アルキメデスの方法です。
  • 円すい曲線(放物線など):メナイクモスの方法です。
  • 円積問題は例外:π が超越数なので、折り紙でも円積問題はできません。

角の三等分と折り紙については、公式辞典の角の二等分・三等分と折り紙で、くわしく紹介しています。

三大作図問題はなぜ難しかったのか

1. 「できない」ことを示すのは、むずかしい

「できる」ことは、1つの作図の方法を見せればよいのですが、「できない」ことは、あらゆる方法がだめだと示さなければなりません。可能な作図の方法は無限にあるので、手あたりしだいに試すことはできません。

2. 図形の問題が「方程式の問題」に変わった

解決の鍵は、図形の問題を数と方程式の問題に置きかえたことです。作図できる長さを、足し算・かけ算・平方根で表せる数と考えることで、「その数が方程式のどんな解か」を調べれば、答えが出るようになりました。これは、デカルトが座標を発明してはじめてできた考え方です。

3. 代数の理論が育つのを待つ必要があった

ヴァンツェルの証明には、方程式の解の性質や、数の「次数」を調べる代数の道具が必要でした。そのような道具は、ラグランジュの業績やガウスの研究、アーベルの業績、ガロアの理論らの研究を通して、18〜19世紀にようやく整いました。これは、5次方程式の解の公式が存在しないことの証明と、同じ時代の道具でできています。

4. π が超越数であることの証明がむずかしかった

円積問題は、πが「超越数」(どんな整数係数の方程式の解にもならない数)であることを示す必要がありました。これは立方倍積などよりずっとむずかしく、リンデマンが証明したのは1882年です。超越数の存在を示す研究は、カントールの無限の理論にもつながっています。

5. 「作れそうで作れない」のが、人をひきつけた

三大作図問題は、中学生にも意味が分かります。ところが、証明には代数の道具が必要です。このため、数学をくわしく学ばないまま、「三等分の方法を発見した」と主張する人が、昔から後をたたないといわれます。数学者は、このような人を「円積家」とよぶことがあります。前に出たとおり、18世紀にはパリの科学アカデミーが、この種の投稿の審査をやめたとされています。数学では、「できない」と証明されたことに、「できた」と主張する場合は、まず証明のどこがまちがっているかを探すのが、ふつうの対応です。

よくある誤解:「分度器を使えば三等分できる」?

分度器を使えば、60度は簡単に20度ずつに分けられます。しかし、作図問題は「目もりのない定規とコンパスだけ」というルールの問題です。ルールを守ったまま三等分できないことに意味があります。また、「あと少しで三等分できる近似の方法」を見つけた、という人も今も多いのですが、ほんのわずかにでもずれているなら、証明の意味では三等分ではありません。

サクラちゃん

サクラちゃん

三等分の方法を見つけた、という人がいるって聞きました。本当ですか?

合格先生

合格先生

「とても近い値」が得られる方法はあるよ。でも「ぴったり」には、証明でなれないと分かっている。近いのと、ぴったりなのは別というのも、数学の大事な考え方なんだ。

受験・勉強と三大作図問題のつながり

中学受験・高校受験:作図の問題

中学校の数学では、基本の作図を学びます。

  • 線分の垂直二等分線
  • 角の二等分線
  • 垂線(点から直線への垂直な線)
  • 正三角形・30度・45度・60度・90度の角

入試では、「図形が条件をみたすような点を作図しなさい」という問題が出ます。たとえば、「2つの点から等しい距離にある点」は垂直二等分線の上にあります。作図の手順は、どの線がどの性質をもつかを整理して、順に組み立てます。

高校:√ と作図、三角比

高校の数学では、三平方の定理を使って、√2、√3、√5などの長さを作図します。長さ 1 の正方形の対角線は √2、直角三角形の組み合わせで √3 が作れる、といった具合です。平方根の意味と作図のつながりを知っておくと、図形の問題に強くなります。

大学:体の拡大と代数学

大学の代数学では、「作図できる数の集合」は体になり、「体の拡大の次数」が2のべき乗になることで、作図可能性を判定します。三大作図問題の証明は、大学の代数学の入門的な授業でよく取り上げられます。くわしくは、ガロア理論の入門で学びます。

数学オリンピックと入試の「証明」

三大作図問題の証明は、「ある仮定から矛盾を導く」背理法の典型例です。入試の証明問題でも、「こういう形は存在しない」ことを示すのに同じ発想を使います。数学オリンピックの問題にも、作図と証明を組み合わせた問題が出ます。勉強の進め方は数学の勉強法も参考にしてください。

例題:作図の考え方を使う

「2点A・Bから等しい距離にある点を、直線ℓ上に作図しなさい」という問題を考えましょう。2点A・Bから等しい距離にある点は、線分ABの垂直二等分線の上にあります。したがって、まず線分ABの垂直二等分線を作図し、それが直線ℓと交わる点を探せば、答えになります。

このように、入試の作図問題では、「条件をみたす点が、どんな線の上にあるか」を考えるのが基本です。「2点から等しい距離=垂直二等分線」「2直線から等しい距離=角の二等分線」「1点からの距離が一定=円」という3つの対応を覚えておくと、ほとんどの問題が解けます。三大作図問題のような「作れない」問題は出ませんが、作図の約束を守る力は、この基本の積み重ねから育ちます。

正多角形と正十七角形

入試で「正五角形の1辺の長さ」を黄金比で求める問題が出ることがあります(黄金比と白銀比)。黄金比と正五角形の作図は、ユークリッドの『原論』にものっている古い話です。さらに、正十七角形の作図を見つけたガウスは、ガウスの生涯のなかでも、とくに誇りにしていた業績の一つだと伝えられています。

「ぴったり」と「近似」のちがい

円周率のπを、355/113 のような分数で近似する方法は、作図でも使われます。π≈3.14159…\pi \approx 3.14159\ldots に対して、355/113 ≈ 3.1415929 は小数第6位まで正しく、実用上は十分です。それでも、πが超越数である以上、分数で正確に表せることはありません。「近似」と「正確な値」の差を知っておくことは、数学の勉強にも役に立ちます。

三大作図問題が数学にあたえた影響

  • 代数学の発展:作図の問題を解く過程で、数の「次数」や「体」の考え方が育ちました。これは、5次方程式の解の公式の研究とも結びついています。
  • 超越数の研究:πやeが超越数であることの証明は、「無理数の中にも種類がある」ことを教えてくれました。のちに、超越数の研究は円周率の超越性の問題として整理されます。
  • 「不可能性の証明」という新しい数学:「ある方法では解けない」ことを証明する考え方は、のちの連続体仮説や算術の無矛盾性などの研究に受けつがれています。
  • 折り紙の数学:定規とコンパスでは解けない問題が、折り紙では解ける、ということから、折り紙の幾何学が研究されるようになりました。人工衛星の太陽電池パネルの折りたたみなどの技術にも、折り紙の数学が応用されています。
  • 「円積問題」ということば:「円を四角にする」は、今でも「不可能なことをしようとする」という意味の言い回しとして使われます。

三大作図問題に挑戦!練習問題

やさしい

  1. 三大作図問題をすべて答えなさい。
    答えと解説を見る円積問題(円と同じ面積の正方形)、立方倍積問題(体積が2倍の立方体)、角の三等分問題(角を3等分)の3つです。
  2. 定規とコンパスだけで、30度の角は作図できますか。
    答えと解説を見るできます。正三角形を作図して60度の角を作り、その角を二等分すると30度の角が作れます。

ふつう

  1. 長さ 1 の線分から、長さ √2 の線分を作図するには、どうすればよいですか。
    答えと解説を見る1辺の長さが 1 の正方形を作図します。対角線の長さは、三平方の定理より 12+12=2\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt{2} です。この対角線が √2 の線分です。
  2. 辺の長さが 1 の立方体の体積を2倍にした立方体の、1辺の長さは何ですか(式で答えなさい)。
    答えと解説を見る体積が 2 なので、1辺を x とすると x3=2x^3=2。よって x=23x=\sqrt[3]{2}(約1.26)です。この長さは作図できません。

むずかしい

  1. 半径 r の円と同じ面積の正方形の、1辺の長さを r で表しなさい。
    答えと解説を見る円の面積は πr2\pi r^2。正方形の1辺を a とすると a2=πr2a^2=\pi r^2 なので、a=π ra=\sqrt{\pi}\,r(約1.77r)です。π が超越数なので、この長さは作図できません。
  2. x=2cos⁡20∘x = 2\cos 20^\circ が x3−3x−1=0x^3-3x-1=0 をみたすことを、3倍角の公式 cos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta を使って確かめなさい。
    答えと解説を見るθ=20∘\theta=20^\circ として cos⁡60∘=12=4c3−3c\cos 60^\circ = \tfrac12 = 4c^3-3c(c は cos 20°)。両辺を2倍すると 1=8c3−6c1 = 8c^3-6c。x=2cx=2c とおくと 8c3=x38c^3=x^3、6c=3x6c=3x なので、x3−3x−1=0x^3-3x-1=0 です。

三大作図問題と関係する数学者・難問

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よくある質問

三大作図問題とは何ですか?

三大作図問題とは、定規とコンパスだけで、円と同じ面積の正方形(円積)、体積が2倍の立方体(立方倍積)、任意の角の3等分を作図できるか、という古代ギリシャからの3つの問題です。3つとも不可能と証明されています。

三大作図問題はだれがいつ証明しましたか?

立方倍積と角の三等分の不可能性は1837年にフランスのヴァンツェルが、円積問題の不可能性は1882年にドイツのリンデマンが証明しました。

なぜ円積問題は不可能なのですか?

円周率πが超越数(整数係数の方程式の解にならない数)だからです。リンデマンが1882年にπが超越数であることを証明し、πの平方根も作図できないと分かりました。

なぜ立方倍積は不可能なのですか?

体積が2倍の立方体の1辺は³√2で、これは3次方程式x³=2の解です。作図できる長さの次数は1・2・4・8のように2のべき乗ですが、³√2の次数は3なので作図できません。

角の三等分はどんな角でもできないのですか?

いいえ。90度や180度のように三等分できる角もあります。不可能なのは、60度のように、どんな角にも通用する一般の手順は存在しない、という意味です。

「作図」とはどんなルールですか?

目もりのない定規で2点を通る直線をひき、コンパスで円をかく、という2つの操作だけを使うルールです。長さをはかったり、分度器を使ったりしてはいけません。

折り紙なら角の三等分ができるのですか?

できます。日本の阿部恒さんの方法が1980年に報告されています。立方倍積も、1986年にピーター・メッサーが折り紙でできることを示しました。ただし、円積問題は折り紙でも不可能です。

正十七角形はなぜ有名なのですか?

ガウスが1796年に18歳で、正十七角形が定規とコンパスで作図できることを見つけたからです。ガウスはこの発見をきっかけに、数学者の道を選んだと伝えられています。

三大作図問題は受験に出ますか?

三大作図問題そのものは出ませんが、垂直二等分線や角の二等分線などの作図が中学・高校入試に出ます。√の長さの作図や、3倍角の公式を使う問題も高校で学びます。

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出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics, “Pierre Laurent Wantzel”(セント・アンドルーズ大学)
  • P. L. Wantzel, “Recherches sur les moyens de reconnaître si un problème de Géométrie peut se résoudre avec la règle et le compas”(Journal de Mathématiques Pures et Appliquées, 1837年)
  • F. Lindemann, “Über die Zahl π”(Mathematische Annalen, 1882年)
  • ジョン・スティルウェル『数学の歴史』

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦