ユークリッドは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|原論・互除法・素数が無限にある証明

ユークリッドは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|原論・互除法・素数が無限にある証明

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ユークリッドEuclid

ひとことで言うと

少数の約束(公理)から証明を積みあげる『原論』を書き、互除法と素数の無限性の証明を残した古代ギリシャの数学者。経歴はほとんど分からない。

名前ユークリッド(エウクレイデス、Euclid)
生没年前330年ごろ〜前275年ごろ(推定。はっきりした年は分かっていません)
国古代ギリシャ(アレクサンドリアで活躍したとされる。出身地は不明)
分野幾何・数論
主な業績『原論』全13巻(465の命題)、互除法、素数が無限にあることの証明、完全数、5つの正多面体、平行線の公準
名前がつくものユークリッドの互除法・ユークリッドの補題・ユークリッド幾何学・ユークリッド空間・ユークリッド距離
よばれ方「幾何学の父」。『原論』は聖書の次に読まれた本ともいわれる

このページのポイント

  • 『原論』は、公理から定理を順に証明する形で、平面図形・整数・無理数・立体をまとめた全13巻。2000年以上、数学の教科書だった
  • ユークリッドの互除法(最大公約数)と素数が無限にあることの証明は、今の中学受験から大学入試の整数問題までそのまま使う
  • 平行線の公準への疑問が非ユークリッド幾何学を生んだ。ただし生涯は不明で、名言や逸話は「諸説あり」

ユークリッドは何をした人?(業績をひとことで)

ユークリッド(前330年ごろ〜前275年ごろ、ギリシャ語読みでエウクレイデス)は、古代ギリシャの数学者です。エジプトの都市アレクサンドリアで活躍したとされ、それまでの数学の成果を集め、少数の約束(公理)から順に証明していく形に整理した『原論(げんろん)』全13巻を書きました。この本は、2000年以上のあいだ、世界の数学の教科書として読まれつづけました。

名前は、ユークリッドの互除法(2つの数の最大公約数を求める方法)、素数が無限にあることの証明、ユークリッド幾何学(ふつうの平面や空間の幾何学)として、今も教科書に出てきます。受験生にとっては、ユークリッドの互除法のやり方と証明が最重要です。そのほか、約数・倍数・素因数分解の考え方最大公約数と最小公倍数の求め方、図形の作図や証明の書き方も、ユークリッドの流れの上にあります。

ただし、ユークリッド本人の生涯はほとんど分かっていません。生まれた年も亡くなった年も、出身地も不明で、前330年ごろという数字は、「プラトンの弟子たちよりあと、アルキメデスよりも前」という古代の記録からの推定です。このページでは、確かな事実と、「〜と伝えられます」「諸説あります」の話を分けて書きます。

サクラちゃん

サクラちゃん

ユークリッドって、図形の人ですか?それとも整数の人ですか?

合格先生

合格先生

どっちもだよ。『原論』の前半は図形、真ん中の第7〜9巻は整数。互除法も、素数が無限にあることの証明も、整数の巻に出てくる。2000年前に書かれたのに、今の入試の整数問題とそのままつながっているのがすごいところだね。

ユークリッドの生涯と年表

ほとんど分からない人物

ユークリッドの経歴で、昔から語られてきたのは、「プトレマイオス1世(エジプトの王、在位前323〜前283年)の時代にアレクサンドリアにいた」ということだけです。5世紀の哲学者プロクロスが『原論』第1巻の注釈に書いた記録で、プラトンの周りの学者たちより後の人で、アルキメデスとエラトステネスより前の人、とされています。アルキメデスが著作の中で『原論』の内容にふれていることが、その理由の一つです。

アレクサンドリアには王が建てた大図書館と研究所(ムセイオン)があり、ユークリッドはそこで教えたという説が有力です。ただし、これも推定にすぎません。中世のヨーロッパでは、哲学者の「メガラのエウクレイデス」と同一人物と思いちがえられた時代もありました。別人だと分かったのは、ルネサンス期になってからです。

『原論』と、ほかの著作

『原論』のほかに、ユークリッドの作品として次のものが伝わっています。『与えられたもの(デドメナ)』は図形の問題の解き方、『光学』は視線と遠近を幾何で調べた本、『現象』は天文学の本、『図形の分割』は図形を決まった比に分ける問題集です。『円錐曲線』『誤謬推理』などは失われました。これらも含め、数学の分野が広かったことが分かります。

2000年以上、教科書でありつづけた

『原論』はギリシャ語の写本として伝わり、のちにアラビア語・ラテン語に訳されました。1482年にはヴェネツィアで印刷本が出され、聖書の次によく出版された本ともいわれます。17世紀の中国では、イタリアの宣教師マテオ・リッチと中国の学者徐光啓(じょこうけい)が、1607年に第1〜6巻を『幾何原本』として漢訳しました。この本の題から、現代の「幾何(きか)」という言葉が生まれたといわれます。日本には江戸時代にこの本が伝わっています。

年できごと
前330年ごろ生まれたとされる(生年は推定。出身地は不明)
前300年ごろアレクサンドリアで『原論』全13巻を書いたとされる
前3世紀アルキメデスが著作で『原論』の内容にふれる
前275年ごろ亡くなったとされる(没年は推定)
前1〜後1世紀ごろ『原論』のパピルス断片が残る(古い写本の例)
5世紀プロクロスが『原論』第1巻の注釈に、ユークリッドの記録を書き残す
9世紀アラビア語に訳される。のちに東方から西ヨーロッパへ
1482年ヴェネツィアで『原論』の印刷本が出る
1607年徐光啓とマテオ・リッチが『原論』の前半を『幾何原本』として漢訳
19世紀ガウス・ボーヤイ・ロバチェフスキーらが非ユークリッド幾何学へ。ユークリッド幾何学以外の世界が見つかる
1899年ヒルベルトが『幾何学の基礎』を発表。ユークリッドの公理の抜けを補う

ユークリッドの主な業績をやさしく解説

業績1 『原論』(公理から証明を積みあげる)

『原論』の最大の特徴は、「少しの約束から、順番に定理を証明していく」書き方を、はじめて徹底したことです。最初に、定義(点とは部分をもたないもの、など)、公準(5つの約束)、共通概念(「同じものに等しいものは互いに等しい」など)を置きます。そのうえで、命題を1つずつ、前の命題だけを使って証明していきます。

『原論』全13巻・465の命題第1〜4巻平面図形(三角形・平行線・円)第5〜6巻比と比例・相似な図形第7〜9巻整数の性質(互除法・素数・完全数)第10巻無理数の分類(いちばん長い巻)第11〜13巻立体(体積・5つの正多面体)最後は5つの正多面体で終わる
『原論』全13巻のあらまし。平面図形から整数、無理数、立体まで、465の命題が順にならぶ

5つの公準は次のとおりです。①2点を通る直線がひける。②線分をどこまでものばせる。③中心と半径が決まれば円がかける。④直角はすべて等しい。⑤2直線に1つの直線が交わり、同じ側の内角の和が2直角(180度)より小さければ、その側で2直線は交わる。

第1巻の最初の命題は、定規とコンパスだけで正三角形をかく方法です。線分ABの両端を中心に、ABを半径とする円を2つかき、その交点をCとすればよいのです。AC=AB、BC=ABだから、3辺が等しい正三角形になります。この作図は、基本の作図(垂直二等分線・角の二等分線)につながっています。

原論の命題1:正三角形の作図ABC定規とコンパスだけ:AB=AC=BC
線分ABを半径とする2つの円の交点Cをとると、ABCは正三角形になる。原論の最初の命題

『原論』には、三平方の定理の証明(第1巻の命題47)、三角形の合同条件、円周角の定理、相似、5つの正多面体の作図まで、現在の中学・高校の幾何のほとんどが入っています。命題の総数は465といわれています。

業績2 ユークリッドの互除法(最大公約数)

『原論』第7巻の最初の命題(命題1・2)が、互除法とよばれるやり方です。2つの数 aa、bb(a>ba>b)の最大公約数を求めるとき、aa を bb で割った余りを rr とすると、次の関係が成り立ちます。

gcd⁡(a, b)=gcd⁡(b, r)\gcd(a,\ b)=\gcd(b,\ r)

これをくり返して、余りが0になったとき、割る数が最大公約数です。例として、1071と462で確かめましょう。

1071 と 462 の最大公約数1071 = 462 × 2 + 147↓ 割る数と余りで、また割る462 = 147 × 3 + 21↓ 割る数と余りで、また割る147 = 21 × 7 + 0余りが0になった割る数 21 が答え大きな数でも、数回の割り算で求まる
1071÷462=2あまり147、462÷147=3あまり21、147÷21=7あまり0。答えは21

なぜうまくいくのかというと、a=bq+ra=bq+r のとき、aa と bb の公約数は、そのまま bb と rr の公約数にもなるからです(r=a−bqr=a-bq)。つまり、公約数の集まりが変わらないので、最大公約数も同じです。数がどんどん小さくなるので、必ずいつか余りが0になります。

互除法は「正方形でしきつめる」こと1818126648と18をおおう、いちばん大きい正方形の1辺= 最大公約数 = 648=18×2+12 18=12×1+6 12=6×2
長方形を正方形でしきつめると、いちばん小さい正方形の1辺が最大公約数になる

図にすると、「縦18、横48の長方形を、まず大きな正方形で埋めて、残りをまた大きな正方形で埋めていく」という作業そのものです。最後にぴったり埋めた正方形の1辺(6)が、最大公約数です。素因数分解をしなくても求められるので、大きな数ほど有利です。詳しい解説と入試問題は、ユークリッドの互除法の証明と使い方を見てください。

互除法を逆にたどると、ax+by=1ax+by=1 の整数解(1次不定方程式)も見つかります。たとえば 17 と 5 では、17=3×5+217=3\times5+2、5=2×2+15=2\times2+1 から、1=5−2×2=5−2×(17−3×5)=7×5−2×171=5-2\times2=5-2\times(17-3\times5)=7\times5-2\times17。つまり 17×(−2)+5×7=117\times(-2)+5\times7=1 です。この方法は1次不定方程式の解き方の基本で、大学入試の整数問題によく出ます。

業績3 素数は無限にある

『原論』第9巻の命題20には、「素数は、どんな有限個よりもたくさんある」という定理があります。素数とは(1とその数自身でしか割りきれない2以上の数)が、終わりなく続くことの証明です。ユークリッドは3つの素数を例にして書きましたが、考え方は変わりません。

素数は無限にある(背理法)① 素数は有限個と仮定する2, 3, 5, …, p(これで全部)↓② N=2×3×5×…×p + 1全部かけて 1 を足した数↓③ N は、どの素数で割っても余り1↓④ Nの素因数はリストにない新しい素数仮定と矛盾 → 素数は無限にある
素数が有限個だと仮定して矛盾を導く。全部かけて1を足した数Nの素因数は、新しい素数になる

具体例で確かめてみましょう。素数を2、3、5、7、11、13だけとして、全部かけて1を足すと、2×3×5×7×11×13+1=300312\times3\times5\times7\times11\times13+1=30031 です。この数は素数ではなく、59×50959\times509 と分解できます。59も509も、はじめの6つの素数には入っていない新しい素数です。このように、どんなに素数を並べても、もう1つ別の素数が必ず見つかるのです。

ここで大切なのは、「NN は必ず素数になる」とは言っていない点です。ふくまれていなかった素因数がどこかに存在することを示すのです。背理法の見本のような証明で、唯一の偶数の素数「2」の話や、2027は素数?双子素数と西暦の入試問題のような素数の話題とあわせて読むと、素数の世界が広がります。

業績4 完全数と素因数分解の土台

第9巻の命題36では、2p−12^p-1 が素数のとき、2p−1(2p−1)2^{p-1}(2^p-1) は完全数になることが示されています。完全数とは、自分自身をのぞく約数の和が自分と等しい数です。p=2p=2 なら 2×3=62\times3=6、p=3p=3 なら 4×7=284\times7=28、p=5p=5 なら 16×31=49616\times31=496、p=7p=7 なら 64×127=812864\times127=8128 です。6の約数は1・2・3で、1+2+3=61+2+3=6 になります。

これはピタゴラス学派の完全数の研究を、きちんとした定理にしたものです。のちにオイラーが、偶数の完全数は、すべてこの形に限ることを証明しました。奇数の完全数があるかどうかは、今も未解決です。

第7〜9巻には、ほかにも「素数 pp が積 abab を割り切るなら、aa か bb のどちらかを割り切る」という性質(ユークリッドの補題)が入っています。これは、素因数分解の一意性(どの順に分解しても同じ)の土台になります。ガウスの業績と生涯が『整数論の研究』で整数論を大きく発展させるまで、整数の世界の基本は『原論』第7〜9巻だったのです。

業績5 平行線の公準と、ユークリッド幾何学

5つの公準のうち、第5公準(平行線の公準)だけは、文が長く、「本当に証明できる定理ではないのか」と2000年のあいだ疑われました。もし他の公準から証明できれば、公準の数を減らせるからです。多くの数学者が挑戦しましたが、どれもうまくいきませんでした。

第5公準(平行線の公準)αβまじわるα+β<180° なら、右側でかならず交わる(この公準は、ほかの公準より長くて複雑)
第5公準:α+β<180° のとき、2本の直線は右側でかならず交わる

19世紀に入って、ロバチェフスキーとボーヤイは、「第5公準を認めない、別の幾何学」も矛盾なく作れることを示しました。ガウスの業績と生涯も同じ考えをもっていたことが、手紙から分かっています。さらにリーマンは、曲がった空間の幾何学へと進み、これがアインシュタインの相対性理論の数学になりました。ふつうの平面の幾何学(三角形の内角の和が180度の世界)は、今ではユークリッド幾何学とよばれ、無数にある幾何学の一つです。

ユークリッドの名前がつく公式・定理・用語

  • ユークリッドの互除法:2つの数の最大公約数を、割り算のくり返しで求める方法。→ 互除法の手順・証明・入試問題
  • ユークリッドの補題:素数 pp が abab を割り切るなら、pp は aa か bb を割り切る。素因数分解の一意性の土台。
  • 素数が無限にあることの証明:『原論』第9巻命題20(ユークリッドの定理とよばれることもあります)。
  • ユークリッド・オイラーの定理:偶数の完全数は 2p−1(2p−1)2^{p-1}(2^p-1)(2p−12^p-1 が素数)の形。→ 整数の性質(約数・倍数・素数)
  • ユークリッド幾何学:平行線の公準を認める、ふつうの平面・空間の幾何学。→ 平行線と角の性質
  • ユークリッド空間・ユークリッド距離:大学の数学で、ふつうの空間や距離(x2+y2\sqrt{x^2+y^2})をよぶ名前。三平方の定理とはと同じ形です。
  • ユークリッドの原論:全13巻、465の命題。数学の教科書の原型。
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

互除法は、「大きい数 ÷ 小さい数 の余り」をくり返すだけ。素因数分解が難しい大きい数でも、数回の割り算で最大公約数が出せる。手順をそのまま覚えておこう。

ユークリッドの逸話と名言

「幾何学に王道なし」

ユークリッドの名言として、最もよく知られているのが次の言葉です。

幾何学に王道なし。

ユークリッドの言葉として伝えられるもの(プロクロスの『原論』注釈に、王プトレマイオスに「もっと手っとり早く幾何を学ぶ方法はないか」とたずねられた答えとして書かれる。ただし、同じ話はほかの数学者(メナイクモスとアレクサンドロス大王)の逸話としても伝わり、本人の言葉かは確かめられていません)

どんな身分の人でも、学問には近道がない、という意味です。受験勉強にも当てはまる言葉として、よく引用されます。

「学んで何の得があるの?」

もう一つ、5世紀ごろの本に書かれた逸話があります。ユークリッドに幾何学を習いはじめた若者が、最初の定理を学んだあとで「これを学んで、どんな得があるのですか」と質問しました。ユークリッドは召使いをよび、「この人に小銭を渡しなさい。学んだことから、得をしないといけないらしいから」と言ったといわれます。数学そのものの面白さを知ってほしい、という気持ちが伝わる話ですが、これも後世の作り話ともいわれ、本当に起きたことかは分かりません。

おだやかで、ほかの学者を大切にした人?

4世紀の数学者パッポスは、ユークリッドを「たいへんおだやかで、だれに対しても親切で、他人の仕事を正しく評価した人」と書いたとされます。同じころ活躍したアポロニウス(円錐曲線)を、「うぬぼれの強い人だ」と書いた箇所とくらべられることもあります。どちらも、数百年のちの人が書いた評価で、人柄の確かな記録ではありません。

リンカーンも『原論』を読んだ?

アメリカ合衆国のリンカーン大統領は、弁護士の仕事で論理的に考える力をきたえようと、『原論』を勉強したと伝えられています。ユークリッドの「証明の積みあげ方」は、数学だけでなく、法律・哲学など多くの分野の手本とされてきました。アメリカ独立宣言の書き方にも影響があったという説もありますが、これは諸説あります。

うかるくん

うかるくん

「公理」って、証明しなくていいんですか?ずるくないですか……。

合格先生

合格先生

いい質問だね。何もないところからは証明を始められないから、「これだけは認めよう」という出発点を最初に決めておくんだ。ユークリッドの偉いところは、その出発点をたった5つに絞ったこと。問題を解くときも、「何が条件で、何を認めて進むのか」をはっきり書くのが、いい答案のコツだよ。

受験・勉強とユークリッドのつながり

中学受験:最大公約数・最小公倍数・作図

中学受験の算数では、最大公約数と最小公倍数の問題が必ず出ます。小さな数なら素因数分解や連除法を使いますが、大きな数や、「2つの数の最大公約数がわかっているとき」の条件整理には、互除法の考えが役に立ちます。「aa と bb の最大公約数が gg なら、a=g×xa=g\times x、b=g×yb=g\times y(xx と yy は互いに素)と置く」という方法も、最大公約数と最小公倍数の関係式として何度も使います。

高校受験:作図と証明問題

中学1年の作図(垂直二等分線・角の二等分線・垂線)は、ユークリッドの「定規とコンパスだけ」の約束にしたがっています。中学2年の図形の証明(三角形の合同条件を使って「△ABC≡△DEF を証明しなさい」と書く問題)も、『原論』の考え方そのものです。三角形の合同条件と証明の書き方を何度も練習しましょう。

大学受験:互除法・1次不定方程式・整数問題

大学入試の整数問題では、互除法の考え(gcd⁡(a,b)=gcd⁡(b,a−bq)\gcd(a,b)=\gcd(b,a-bq))を使って、互いに素であることを示す問題が定番です。たとえば「nn と n+1n+1 は互いに素」「2n+12n+1 と nn の最大公約数」などです。また、素数が無限にある証明の型(「p1p2⋯pn+1p_1p_2\cdots p_n+1 を考える」)は、「4で割って3余る素数は無限にある」のような発展問題にも応用されます。京大理系数学の出題分析(整数問題の出方)を見ると、整数問題が毎年のように出ていることが分かります。

勉強法として:「何が仮定で、何を示すか」をはっきり書く

ユークリッドの教えは、答案づくりそのものです。①仮定(条件)を書く、②使う定理をはっきり示す、③順番に進める、④結論に着く。この4つがそろうと、採点者に伝わる答案になります。数学全体の勉強の進め方は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)で読めます。

ユークリッドがその後の数学にあたえた影響

  • 証明の形式:「定義→公理→定理→証明」の形は、数学だけでなく、哲学・法律・物理にも広がりました。ニュートンの『プリンキピア』も、『原論』のような形式で書かれています。
  • 非ユークリッド幾何学:第5公準の疑問から、ロバチェフスキー・ボーヤイ・リーマンの新しい幾何学が生まれ、相対性理論の数学になりました。
  • 公理主義:ヒルベルトは1899年に『幾何学の基礎』で、『原論』の公理の抜けを補い、現代の公理系に作りかえました。
  • 整数論:互除法は連分数・不定方程式・暗号(RSA暗号の計算)にまで使われています。素数の無限性は、オイラーが別の方法で証明するなど、現代の素数研究へ続きます。
  • 教育:19世紀まで、ヨーロッパの学校では『原論』が幾何の教科書でした。日本でも、江戸時代の末から明治にかけて、幾何学の教育の土台になりました。

互除法は、現代では、パソコンやスマートフォンでの暗号通信で毎日のように使われています。2000年以上前のアルゴリズム(計算の手順)が、現在も現役で働いているのです。

ユークリッドに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 互除法を使って、36と48の最大公約数を求めなさい。
    答えと解説を見る48=36×1+1248=36\times1+12、36=12×3+036=12\times3+0 なので、最大公約数は12。
  2. 互除法を使って、91と35の最大公約数を求めなさい。
    答えと解説を見る91=35×2+2191=35\times2+21、35=21×1+1435=21\times1+14、21=14×1+721=14\times1+7、14=7×2+014=7\times2+0。最大公約数は7。

ふつう

  1. 互除法を使って、1260と462の最大公約数を求めなさい。
    答えと解説を見る1260=462×2+3361260=462\times2+336、462=336×1+126462=336\times1+126、336=126×2+84336=126\times2+84、126=84×1+42126=84\times1+42、84=42×2+084=42\times2+0。最大公約数は42。
  2. 28が完全数であることを、約数の和で確かめなさい。また、2p−1(2p−1)2^{p-1}(2^p-1) の形で表しなさい。
    答えと解説を見る28の約数は1、2、4、7、14、28。自分自身をのぞく和は 1+2+4+7+14=281+2+4+7+14=28 なので完全数。p=3p=3 のとき 23−1=72^3-1=7 が素数なので、22×7=2^2\times7=4×7=28 と表せます。

むずかしい

  1. 最大公約数が12で、和が120になる2つの自然数 aa、bb(a>ba>b)の組をすべて求めなさい。
    答えと解説を見るa=12xa=12x、b=12yb=12y(x>yx>y、xx と yy は互いに素)と置くと、12(x+y)=12012(x+y)=120 より x+y=10x+y=10。互いに素な組は (x,y)=(9,1),(7,3)(x,y)=(9,1),(7,3)。よって (a,b)=(a,b)=(108, 12)、(84, 36)。(x,y=5,5x,y=5,5 は互いに素でないので不適)
  2. nn を自然数とする。n!+1n!+1 の素因数は、どれも nn より大きいことを示しなさい。
    答えと解説を見るn!+1n!+1 を、2〜nn のどの数で割っても、n!n! が割り切れるので、余りは1になります。よって、2〜nn の数は n!+1n!+1 の約数になれません。したがって素因数はすべて nn より大きい。(これで「素数は無限にある」ことも示せます)

ユークリッドと関係する数学者

数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、数学で使う記号の意味は数学でよく使う記号の意味一覧(Σ・∫・≡)もどうぞ。

古代の数学者

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ユークリッドがかかわった数学の難問

有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

ユークリッドは何をした人ですか?

ユークリッドは、古代ギリシャの数学者で、『原論』全13巻を書いた人物です。平面図形、整数の性質、無理数、立体を、少数の公理から順に証明する形でまとめ、2000年以上のあいだ数学の教科書として読まれました。互除法と素数が無限にあることの証明でも知られます。

ユークリッドはなぜ「幾何学の父」とよばれるのですか?

『原論』で、それまでの幾何学の成果を公理から順に証明する形に整理し、数学の書き方の手本をつくったからです。今も、ふつうの平面や空間の幾何学を「ユークリッド幾何学」とよびます。

ユークリッドの互除法とは何ですか?

2つの数の最大公約数を、割り算の余りを使ってくり返し求める方法です。大きい数を小さい数で割った余りで、さらに割る数を割り、余りが0になったときの割る数が最大公約数です。たとえば1071と462の最大公約数は21です。

素数が無限にあることは、どう証明しますか?

素数が有限個だと仮定して、その全部をかけて1を足した数Nを考えます。Nはどの素数で割っても余り1になるので、Nの素因数は仮定にない新しい素数になり、矛盾します。この背理法による証明が、『原論』第9巻命題20にあります。

ユークリッドの生没年や生涯は分かっていますか?

ほとんど分かっていません。生没年はおおよそ前330年ごろ〜前275年ごろと推定されますが、出身地も亡くなった場所も不明です。プトレマイオス1世のころアレクサンドリアにいたという記録が、プロクロスの注釈に残っているだけです。

「幾何学に王道なし」はユークリッドの言葉ですか?

プロクロスの『原論』注釈に、王プトレマイオスに近道はないかと聞かれたユークリッドの答えとして書かれています。ただ、同じ逸話は別の数学者の話としても伝わっており、本人の言葉かどうかは確かめられていません。

平行線の公準とは何ですか?

『原論』の5つ目の公準で、2直線に1本の直線が交わるとき、同じ側の内角の和が180度より小さければ、その側で2直線は交わる、という約束です。この公準を疑ったことから、19世紀に非ユークリッド幾何学が生まれました。

ユークリッドとピタゴラスやアルキメデスとの関係は?

ピタゴラス学派の成果(三平方の定理、完全数、無理数など)は『原論』に取り入れられました。アルキメデスはユークリッドより少しあとの人で、『原論』を読んで学んだうえで、円周率や球の体積などの発見をしたと考えられます。

ユークリッドは受験とどう関係しますか?

互除法は中学受験の最大公約数、大学入試の1次不定方程式や互いに素の証明に出ます。三角形の合同条件と証明は高校受験で、素数が無限にある証明の型は大学入試の発展問題で使います。

完全数とユークリッドの関係は?

ユークリッドは、2のp乗−1が素数のとき、2のp−1乗×(2のp乗−1)が完全数になることを証明しました。6、28、496、8128がその例です。のちにオイラーが、偶数の完全数はすべてこの形になると示しました。

あわせて読みたい

出典・参考

  • T. L. Heath, “The Thirteen Books of Euclid’s Elements”(1908年)
  • J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Euclid of Alexandria”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
  • D. Joyce, “Euclid’s Elements”, Clark University(オンライン版原論)
  • プロクロス『ユークリッド原論第1巻注釈』(5世紀)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦