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タレスThales
ひとことで言うと
「証明する数学」のはじまりとされる、古代ギリシャ最初の数学者・哲学者。タレスの定理(半円に対する円周角は直角)と、影でピラミッドの高さを測った話で知られる。ただし本人の著作は残らず、多くは「〜と伝えられる」話。
| 名前 | タレス(ミレトスのタレス、Thales of Miletus) |
|---|---|
| 生没年 | 前624年ごろ〜前547年ごろ(前546年ごろとする説もあり、はっきりしません) |
| 国 | 古代ギリシャ(小アジアの都市ミレトス。今のトルコ西岸) |
| 分野 | 幾何・天文・自然哲学 |
| 主な業績 | タレスの定理(半円の円周角は直角)、影によるピラミッドの高さの測定(相似)、5つの基本定理、日食の予言、「万物の根源は水」 |
| 名前がつくもの | タレスの定理(日本では半円の円周角、欧州では平行線と線分の比をさすことが多い)・タレスの切片定理・ミレトス学派 |
| よばれ方 | ギリシャの七賢人の一人。哲学の祖・数学の証明の祖とされる |
このページのポイント
- タレスの定理は「半円に対する円周角は直角」。二等辺三角形2つと内角の和で、かんたんに証明できる(中学3年)
- 影を使ってピラミッドの高さを測った話は、相似な三角形の考え方そのもの。中学受験の「影の長さ」問題につながる
- 本人の著書は残っておらず、業績の多くは数百年後の記録による。「理由をつけて説明する」姿勢が、のちの証明の数学を生んだとされる
タレスは何をした人?(業績をひとことで)
タレス(前624年ごろ〜前547年ごろ。前546年ごろとする本もあります)は、古代ギリシャの最初の数学者・哲学者・科学者とされる人です。小アジア(今のトルコの西海岸)の港町ミレトスで生まれました。「万物の根源(もと)は水である」と考え、神話ではなく自然そのものから世界を説明しようとした点で、のちの科学の出発点にいる人です。数学では、図形の性質に「理由をつけて」説明するという、証明の数学を最初にはじめた人として名前があがります。
タレスの名がついた定理で、いちばん有名なのがタレスの定理です。日本では、「半円に対する円周角は直角」のことをいいます。そのほか、ピラミッドの高さを影から求めた話(相似の考え方)、海の上の船までの距離を測る方法(三角形の合同の考え方)、日食を予言した話などが、昔から伝えられています。
ただし、タレスが書いた本は1冊も残っていません。何を発見したのかは、タレスより数百年あとの人たちが書いた本(ヘロドトス、アリストテレス、プロクロス、ディオゲネス・ラエルティオスなど)からわかるだけです。数学の歴史の専門家は、昔の有名人にはあとから「あれもこれもこの人の発見」と話をつけ足す習慣があったことを注意しています。そのため、このページでは「〜と伝えられます」「諸説あります」の書き方で、確かなことと伝説を分けて書きます。
受験生にとってのタレスは、相似・円周角・平行線と線分の比の人です。中学受験の影の長さと相似の問題の解き方、中学3年の円周角の定理と半円の角、平行線と線分の比の公式と証明はどれも、タレスの名前につながっています。用語としては相似とは(意味と記号)と円周角とはを先に読んでおくと、問題文の意味がつかめます。
うかるくん
タレスって、ピタゴラスより前の人ですか? 名前は聞いたことがあるけど、何をした人か分からなくて……。
合格先生
ピタゴラスよりも50年ほど前の人だよ。「理由を考えて説明する」という数学の考え方を、いちばん早くはじめたといわれているんだ。たとえば「半円の角はどこでも直角」を、「測ったらそうだった」ではなく「どうしてそうなるのか」で示そうとした。今の数学の証明の、いちばん古いご先祖さまだね。

タレスの生涯と年表
ミレトスの名家に生まれた
タレスは、エーゲ海に面した港町ミレトス(今のトルコ、ソケ市の近く)で、前624年ごろに生まれたとされます。ミレトスは、地中海と黒海を結ぶ交易でさかえた、ギリシャ人の大きな町でした。両親は名家の出身だと伝えられますが、フェニキア人(今のレバノンのあたりの人びと)だったとする説もあり、はっきりしません。タレスの職業は技術者(エンジニア)だったといわれ、そのほか政治家・商人・天文学者としての話も伝わっています。
エジプトで幾何を学んだ
5世紀の哲学者プロクロスは、「タレスはまずエジプトへ行き、そこから幾何学をギリシャへもち帰った」と書き残しています。エジプトでは、毎年のナイル川の洪水のあとに、畑の境界を測りなおす必要があったため、土地の測量の知識が発達していました。タレスはそこで、図形の測り方を学んだのではないかと考えられています。ただし、これはずっとあとの時代の記録で、本当にエジプトへ行ったのかは、確かめられません。
前585年の日食の予言
タレスの名前を有名にしたのが、日食の予言です。ギリシャの歴史家ヘロドトスは、リディア王国とメディア王国が戦っていたとき、昼が急に夜になる日食が起きて、両軍がおどろいて戦いをやめた、と書いています。そして「この年をあらかじめ告げていたのが、ミレトスのタレスだった」と述べています。この日食は、天文学の計算から前585年5月28日のものと考えられています。ただし、現代の研究者のあいだでは、当時の知識で日食を正確に予言することはできなかったはずで、「この時期に日食がおきるかもしれない」という見通し程度だったのではないか、という見方が有力です。
七賢人の一人として
タレスは、ソクラテス以前の哲学者のなかで、ただ一人ギリシャの七賢人に数えられた人です。七賢人とは、知恵で知られた古代ギリシャの7人の人物のことです。政治でも活躍したと伝えられ、ミレトスの近くのイオニア地方の都市国家どうしが力を合わせる連合を作ろうと呼びかけたり、リディア王クロイソスとの同盟に反対して町を守ったりしたと伝えられています。
弟子アナクシマンドロスと、ミレトス学派
タレスは、アナクシマンドロス(前611年ごろ〜前545年ごろ)の先生だったとされます。そのアナクシマンドロスの弟子がアナクシメネスで、この3人を合わせてミレトス学派とよびます。タレスが「万物は水」と考え、アナクシマンドロスが「無限なもの(アペイロン)」、アナクシメネスが「空気」を根源と考えました。3人とも、世界のなりたちを神様ではなく自然のはたらきで説明しようとした点が、新しかったのです。
亡くなったとき
3世紀の伝記作家ディオゲネス・ラエルティオスは、タレスが運動競技の観戦中、暑さとのどのかわきで亡くなったと書き残しています。年は78歳、あるいは90歳という説もあります。亡くなった年は、前546年ごろ、前547年ごろなど、本によってちがいます。生没年がはっきりしないのは、タレスがとても古い時代の人だからです。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 前624年ごろ | ミレトス(今のトルコ西岸)に生まれたとされる |
| 前6世紀はじめ | エジプトをおとずれ、幾何を学んだと伝えられる(プロクロスの記録) |
| 前585年5月28日 | 日食が起こる。タレスが予言したと、ヘロドトスが書いている |
| 前6世紀前半 | ピラミッドの高さを、影を使って測ったと伝えられる |
| 前6世紀前半 | リディア王クロイソスとの同盟に反対したと伝えられる(政治家として) |
| 前6世紀 | 弟子のアナクシマンドロスが、ミレトス学派を受けつぐ |
| 前546年ごろ | 運動競技の観戦中に亡くなったと伝えられる(前547年ごろとする説もある) |
| 前4世紀 | アリストテレスが「万物は水」という考えを、タレスの説として紹介する |
| 前300年ごろ | ユークリッドが『原論』にタレスの定理(第3巻命題31)を載せる |
| 5世紀 | プロクロスが『原論』第1巻の注釈で、タレスの発見を書き残す |
| 3世紀 | ディオゲネス・ラエルティオスが『ギリシャ哲学者列伝』にタレスの逸話をまとめる |
タレスの主な業績をやさしく解説
業績1 影からピラミッドの高さを測る(相似の考え方)
タレスはエジプトで、大ピラミッドの高さを、人の手で登らずに測ったと伝えられます。いちばん古い記録は、アリストテレスの弟子ヒエロニュモスの言葉をディオゲネス・ラエルティオスが引用したもので、「自分の影の長さが、自分の背の高さと同じになる時刻に、ピラミッドの影の長さを測った」という話です。その時刻には、どんなものも、影の長さが高さと同じになるからです。
もうひとつの記録は、プルタルコスのものです。こちらは棒を地面に立てて、ピラミッドの影のはしに立て、棒の影とピラミッドの影の比から高さを求めた、という説明です。これは、今の言葉でいうと相似な三角形の考え方そのものです。
しくみはこうです。太陽の光は遠くから来るので、地面にあたる角度は、棒でもピラミッドでも同じです。そのため、棒・影・光でできる直角三角形と、ピラミッド・影・光でできる直角三角形は、角の大きさが同じ相似な三角形になります。相似な三角形では、辺の比が等しいので、(高さ):(影の長さ)がどちらも同じです。たとえば、2mの棒の影が3mのとき、ピラミッドの高さと影の長さの比も2:3です。ピラミッドの影の先から、ピラミッドの底のまん中までの長さが220mなら、高さは mと求められます。大ピラミッドは、できたときの高さが約147mだったとされていて、この方法でほぼ合う値が出ます。
ただし、実際にピラミッドの影を測るときは、底のまん中から影のはしまでの長さを、そのままでは測れません。ピラミッドの底の1辺の半分を足す、などの工夫が必要です。プルタルコスの記録が、その工夫まで書いたものかは分かりません。ここでは、相似を使えば、直接登らなくても高さが分かるという考え方が大切です。影の長さの問題や相似の基本形(ピラミッド形・ちょうちょ形)は、まさにこの話の練習です。
業績2 タレスの定理(半円に対する円周角は直角)
円の直径(円の中心を通る線)をABとします。円周上のどこにPをとっても、三角形APBのPの角はかならず直角(90°)になる――これがタレスの定理です。「半円に対する円周角は直角」「直径に対する円周角は直角」ともいいます。
この定理は、ユークリッドの『原論』第3巻の命題31にのっています。ただ、最初にこの定理を見つけたのは本当にタレスなのかは、昔から意見が分かれています。古代の資料にはタレスがこの定理を発見したと書いてあるものがあり、プロクロスなどが、その話を伝えています。いっぽう、古代バビロニアの人たちが、タレスより前から、この関係を知っていた可能性も指摘されています。タレスの名前が定理についたのは、近代になってからだといわれます。
この定理は、二等辺三角形を2つ見つけることで、かんたんに証明できます。円の中心をOとして、OとPを結びます。OA、OB、OPは、どれも円の半径で長さが等しいので、三角形OAPと三角形OBPは二等辺三角形です。二等辺三角形の底角は等しいので、角OAPと角OPAをα、角OBPと角OPBをβとおきます。
三角形ABPの内角の和は180°なので、α+(α+β)+β=180°。つまり、 から となります。角APBは、角OPAと角OPBの和で ですから、90°と分かりました。この証明で使ったのは、三角形の内角の和が180°であることと、二等辺三角形の底角が等しいことだけです。
この定理の「逆」も成り立ちます。三角形の1つの角が直角なら、その直角の頂点は、斜辺を直径とする円の上にある、という意味です。この逆を使うと、直角三角形の斜辺の中点は、3つの頂点から等しい距離にあることが分かり、直角三角形の外接円の中心が斜辺の中点だという大切な事実が出てきます。円周角の定理の逆(4点が同一円周上にある条件)と合わせて覚えましょう。
業績3 タレスが見つけたと伝えられる5つの定理
プロクロスや、ディオゲネス・ラエルティオスの記録から、タレスは次の5つの初等幾何(図形の基本の定理)を、はじめて「理由をつけて」説明したとされています。ただし、どれも本当にタレスが見つけたのかは、確かではありません。それぞれ、エジプトやバビロニアではすでに知られていた事実を、タレスが理由づけして整理した、と考える歴史家もいます。
- 対頂角は等しい:2本の直線が交わってできる、向かい合った角は等しい。(プロクロスの記録)
- 二等辺三角形の底角は等しい:2つの辺が等しい三角形の、底の2つの角は等しい。
- 直径は円を2等分する:円の中心を通る線で、円は同じ大きさの2つの半円に分かれる。
- 1辺と両はしの角がそれぞれ等しい2つの三角形は合同:三角形の合同条件のひとつ(二角夾辺)。
- 半円に対する円周角は直角:上の業績2の、タレスの定理。
「対頂角が等しい」ことは、いまでは小学生でも知っていますが、当たり前のことを、わざわざ理由をつけて説明したところに、タレスの新しさがあるといわれます。対頂角の証明は、一直線の角は180°であることから、すぐできます。中学1年の図形で習う対頂角・同位角・錯角と内角の和は、ここからはじまったともいえます。
業績4 船までの距離を、陸の上で求める(合同の考え方)
プロクロスは、タレスが海の上の船までの距離を求める方法を示したと書いています。使ったのは、「1辺とその両はしの角が等しい三角形は合同」という定理だといいます。ここがその説明です。
高い塔の上で、船の方向と、塔の足元から見た真下の方向がつくる角度を測ります。つぎに、この角度と同じ大きさで、同じ高さの三角形を、陸の上にうつします。陸の上の三角形は、海の上の三角形と1辺と両はしの角が同じなので合同です。そのため、陸で測れる底辺の長さを測れば、船までの距離と等しいと分かります。海の上は直接測れませんが、合同な図形を陸に持ってくれば、測れるようになるわけです。
プロクロスが、どんな方法を実際に書いたかについては、くわしくは分かっていません。そのため、上の図のような説明は、後の時代の人が考えたものかもしれません。確かなのは、三角形の合同を使って、直接測れないものを測るという発想が、昔から語られてきたことです。いまの測量で使う三角測量も、同じ考え方です。
業績5 「万物の根源は水」と、自然を理由で説明する
タレスは、世界のあらゆるもののもと(アルケー)は水だと考えた、と伝えられています。アリストテレスは『形而上学』のなかで、「ほとんどの最初の哲学者たちは、ものごとのもとを、物質の形でのみ考えた。タレスは、それは水だと言った」という内容を書いています。そして、その理由として、すべての生き物は湿り気から生まれ、栄養も水分をふくんでいるからではないか、と推測しています。
いまの私たちから見ると、「万物は水」という考えは、正しいとはいえません。しかし大切なのは、答えが正しいかどうかよりも、神話ではなく、自然のなかにあるもとを探したという姿勢です。この姿勢は、あとのギリシャの哲学・科学・数学に、大きな影響をあたえました。数学でいえば、「なぜそうなるのか」を理由で説明するという態度が、タレスからピタゴラス、ユークリッドへと受けつがれていきました。
タレスは、地震も、神様のしわざではなく、大地が水にうかんでいて、波でゆれるからだと説明した、とも伝えられます。これもいまの地震の説明とはちがいますが、自然の現象を自然のしくみで説明しようとした点で、画期的でした。また、こぐま座を航海の目じるしに使うことを船乗りに教えた、という話もあります。
業績6 日食の予言と、天文学の出発
タレスが前585年の日食を予言したという話は、天文学の歴史のはじまりとして語られます。当時のバビロニアの人たちは、数百年の観察から、月食はおよそ18年ごとにくり返すことを知っていました。日食は、見える場所が限られるので、くり返しを見つけるのが月食よりずっとむずかしいものでした。そのため、タレスが日食を「予言」したというのは、本当は、バビロニアなどの観察の記録から「この年ごろに起こりそうだ」と告げた程度だったのではないか、と考えられています。
数学史家の中には、そもそもタレスが日食を予言したという話そのものを、疑う人もいます。有名人の話は、あとから作られることがあるからです。それでも、天体の動きに決まった周期があり、数で予測できるという考えを、ギリシャ人たちがタレスの名前とともに語ったことは、数学と天文学が結びつくきっかけになりました。この流れは、のちのエラトステネス(地球の大きさ)やアルキメデスにつながっていきます。
タレスの名前がつく公式・定理・用語
日本では「タレスの定理」といえば、ふつう半円の円周角が直角になる定理です。ところが、フランスなどヨーロッパの国では、「タレスの定理(théorème de Thalès)」というと、次の切片の定理(平行線と線分の比)のことをさします。国によって指すものがちがうので、海外の本を読むときは気をつけましょう。
- タレスの定理(半円の角は直角):直径に対する円周角は90°。→ 円周角の定理と半円の角(問題つき)。中学3年で習います。
- タレスの切片定理(平行線と線分の比):三角形ABCの辺BCに平行な線DEで、AD:DB=AE:EC。→ 平行線と線分の比の公式と証明。中学3年で習います。
- 相似な三角形と影の長さ:影からピラミッドの高さを求める話。→ 影の長さ(相似で解く・電灯と太陽の光)、三角形の相似条件
- 二角夾辺の合同条件:1辺とその両はしの角が等しければ三角形は合同。
- ミレトス学派:タレス・アナクシマンドロス・アナクシメネスの3人の学派。
- ギリシャの七賢人:知恵で知られた7人の人物。タレスはその一人。
この切片の定理の証明も、相似を使うとかんたんです。DEとBCが平行なので、三角形ADEと三角形ABCは、同じ形(相似)になります。対応する辺の比は等しいので、AD:AB=AE:AC。ここから、AD:DB=AE:EC がみちびけます。くわしい手順は平行線と線分の比の解説で確かめましょう。入試では、面積比や、辺の長さの比を求める問題で、必ずといってよいほど登場します。

合格先生
図に直径がかいてあったら、まず「タレスの定理が使えないか」と考えよう。円周上の点と直径の両はしを結ぶと、直角三角形ができるよ。直角が見つかれば、三平方の定理も使えるね。
タレスの逸話と名言
「万物の根源は水」
万物の根源(もと)は水である。
「自分自身を知ること」
もっとも難しいことは、自分自身を知ること。もっともやさしいことは、他人に忠告すること。
星を見て井戸に落ちた哲学者
プラトンの『テアイテトス』には、タレスが夜空の星に見とれて歩いていて、井戸に落ちてしまったという話があります。それを見た、トラキア出身の若い女の召使いが、「空のことは知りたがるのに、足元のことは分からないのね」と笑ったと伝えられています。プラトンは、この話を、哲学者は身近なことに気をとられないものだ、という例に使っています。ただし、これは本当にあった出来事というよりも、たとえ話として作られたものと考えられています。
オリーブしぼり機でお金もうけ
アリストテレスの『政治学』には、タレスがオリーブ油の豊作を天文の知識で予想して、町じゅうのオリーブしぼり機を安く借りておき、収穫期に高く貸して大もうけしたという話があります。「哲学者は貧しいといってバカにされるが、その気になれば、お金もうけもできる」ということを示すための話だったようです。この逸話も、どこまで本当かは分かりません。
ロバと塩
塩を運ぶロバが、川で転んで荷物がとけて軽くなったことに味をしめ、わざと川で転ぶようになった。そこでタレスは、荷物をスポンジ(海綿)に変えてロバをこらしめた――という話も、のちの時代の本に出てきます。作り話と考えられますが、タレスが知恵者としてのイメージで語られてきたことが分かります。
サクラちゃん
井戸に落ちたり、オリーブで大もうけしたり……。同じ人のお話なんですか?
合格先生
そうなんだ。でも、どちらもタレスの死後数百年たってから書かれた話で、本当かどうかは分からない。大事なのは、「昔の人が、タレスをどう思っていたか」が分かること。星のことで頭がいっぱいの学者でもあり、現実的な知恵者でもある、という二つの顔が語られていたんだよ。
受験・勉強とタレスのつながり
中学受験:相似・影の長さ・ピラミッド形
中学受験の図形では、相似が最大の山場のひとつです。タレスが使ったのと同じ「太陽の光が平行だから、影の三角形は相似」という考え方で、ビルや木の高さ、電柱と影の問題が出ます。影の長さと相似の問題、相似の基本形(ピラミッド形・ちょうちょ形)、相似の中心と拡大図・縮図は、中学受験の頻出テーマです。「ピラミッド形」という名前は、タレスのピラミッドの高さの話と重なります。面積比・体積比は相似な図形の面積比・体積比で練習しましょう。
高校受験:円周角・平行線と線分の比
高校入試では、円周角の定理が図形問題の主役です。そのなかでも、直径がある図は、まず90°を探すのが定石です。また、平行線と線分の比(切片の定理)は、中点連結定理・角の二等分線の定理・メネラウスの定理などの土台になります。「証明しなさい」という問題では、相似や合同を使って理由を順に書くという、タレスの数学そのものの力が問われます。
大学受験:座標・ベクトル・軌跡
タレスの定理は、大学入試では「2点A、Bを直径の両端とする円」のかたちで登場します。座標で、 となる点Pの軌跡を求める問題は、ベクトルの内積が0()という式にして解けます。これが、AとBを直径の両はしとする円の方程式になります。京大・東大などの難関大で、図形の性質を式で確かめる問題の出題の傾向を知りたいときは、京大理系数学の出題分析(図形と式の出方)も参考になります。
勉強法として:「なぜそうなる?」を3回問う
タレスの業績でいちばん大切なのは、「理由をつける」という態度です。定理を見たら、「なぜ成り立つのか」と3回問いかけてみてください。1回目は図で確かめる、2回目は言葉で説明する、3回目は式で証明する――この3つがそろうと、問題文が変わっても対応できる力がつきます。数学の勉強の全体像は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)を、数式で使うギリシャ文字(α・β・θ)の読み方はギリシャ文字の読み方一覧(24文字)を読んでください。
タレスがその後の数学にあたえた影響
- 証明の数学のはじまり:「理由をつけて、順に示す」というやり方は、ピタゴラス学派に受けつがれ、ユークリッドの『原論』と公理による証明で完成しました。タレスは、その最初の一歩とされます。
- ピタゴラスとの関係:ピタゴラスは若いころ、タレスにすすめられて、エジプトへ学びに行ったという伝承があります(年代の差が大きく、確かではありません)。ピタゴラスの業績と三平方の定理も参考に。
- 自然哲学と科学:「自然を自然で説明する」という考えは、アナクシマンドロス・アナクシメネス・ヘラクレイトスらに受けつがれ、アリストテレスの自然学や、後の科学へつながりました。
- 測量と三角法:影や角度から、直接測れない長さを求める考え方は、のちのエラトステネスの地球の大きさの測定や、アルキメデスの円周率の計算にいたる、ギリシャの測定の数学の原点です。
- 円周角の定理への発展:「直径に対する円周角が直角」は、ユークリッドの『原論』で、「円周角は中心角の半分」という一般の定理へ広げられました。
タレスは、「数学者」という職業ができる前の人です。そのため、何を発見したかよりも、数学のやり方(理由で説明する)をはじめた人として評価されます。日本の中学校の図形の学習が、「相似・合同・円周角・証明」という流れになっているのも、この古い伝統の延長線上にあります。数学の公式を1つずつ確かめたいときは、算数・数学の公式一覧(公式辞典)もどうぞ。
タレスに挑戦!練習問題
やさしい
- 高さ1.5mの棒の影が2mのとき、同じ時刻に影が40mのビルの高さを求めなさい。
答えと解説を見る
影と高さの比は同じなので、高さ:影=1.5:2=3:4。影40mなら、高さは 30m。 - 円の直径ABと、円周上の点Pについて、∠APBは何度ですか。
答えと解説を見る
タレスの定理(半円に対する円周角は直角)より、90°。
ふつう
- 直径ABの円周上の点Pについて、∠PAB=35°のとき、∠PBAは何度ですか。
答えと解説を見る
∠APB=90°(タレスの定理)。三角形ABPの内角の和は180°なので、∠PBA=180°−90°−35°=55°。 - 三角形ABCで、辺AB上の点Dと辺AC上の点EがDE∥BCです。AD=4cm、DB=6cm、AE=6cmのとき、ECの長さを求めなさい。
答えと解説を見る
AD:DB=AE:EC より 4:6=6:EC。EC=6×6÷4=9cm。
むずかしい
- 座標平面上に2点A(−2, 0)、B(4, 0)があります。∠APB=90°になる点Pの軌跡を、方程式で答えなさい(P≠A, B)。
答えと解説を見る
ABを直径とする円。中心は(1, 0)、半径は3。方程式は (x−1)²+y²=9(ただし、A、Bの2点は除く)。ベクトルで確かめると、PA・PB=(−2−x)(4−x)+y²=x²−2x−8+y²=0 から同じ式が出ます。 - 直角三角形の斜辺が10cmのとき、直角の頂点から斜辺の中点までの長さを求めなさい。
答えと解説を見る
斜辺を直径とする円を考えると、直角の頂点は円周上にある(タレスの定理の逆)。斜辺の中点は円の中心なので、求める長さは半径で 5cm。
タレスと関係する数学者
- ピタゴラス(三平方の定理):タレスの次の世代で、証明の数学を教団として発展させました。タレスの弟子だったという伝承もあります。
- ユークリッド(『原論』):タレスの定理を『原論』第3巻にまとめ、証明の数学を体系にしました。
- アルキメデス(円周率と球の体積):タレスがはじめた「測れないものを数で求める」道を、さらに深めました。
- エラトステネス(地球の大きさ):影の長さと角度から、地球の大きさを求めました。タレスの影の話とよく似た考え方です。
- ヘロン(ヘロンの公式):古代の測量・幾何の技術を、本にまとめた人です。
- デカルト(座標の発明者):図形を式で表す座標を作り、タレスの定理も式で調べられるようにしました。
数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、算数・数学の公式と用語を学年別・分野別に探すなら算数・数学 公式と用語の一覧(学年別・分野別)もどうぞ。
古代の数学者
- ピタゴラスの業績と生涯
三平方の定理(ピタゴラスの定理)。「万物は数である」の教団を開いた - ユークリッドの業績と生涯
『原論』で幾何学を体系にまとめた。ユークリッドの互除法・素数が無限にあることの証明 - アルキメデスの業績と生涯
円周率を3.14まで求め、球の体積と表面積を発見。てこ・浮力の原理 - エラトステネスの業績と生涯
素数を見つける「エラトステネスのふるい」。地球の大きさを測った - アポロニウス(前262ごろ〜前190ごろ)
『円錐曲線論』。楕円・放物線・双曲線の名前をつけた - ヘロンの業績と生涯
3辺の長さから三角形の面積を出す「ヘロンの公式」 - プトレマイオス(100ごろ〜170ごろ)
『アルマゲスト』。円に内接する四角形の「トレミーの定理」 - ディオファントス(200ごろ?〜284ごろ?)
『算術』。整数の解を求める方程式(ディオファントス方程式)。「代数の父」 - 劉徽(220ごろ?〜280ごろ?)
『九章算術』の注釈。正多角形で円周率を3.14まで求めた - パップス(290ごろ〜350ごろ)
中線定理・パップス=ギュルダンの定理。ギリシャ数学をまとめた - ヒュパティアの業績と生涯
記録に残る最初期の女性数学者。円錐曲線論などを注釈して教えた - 祖沖之の業績と生涯
円周率を3.1415926〜3.1415927の間と求め、355/113(密率)を示した
次の時代:ピタゴラスの業績と生涯 →
有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。
読みもの(合格大作戦の数学の記事)
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3³+4³+5³=6³
よくある質問
タレスは何をした人ですか?
タレスは、古代ギリシャのミレトスで活躍した、最初の数学者・哲学者・科学者とされる人物です。「万物の根源は水」と考え、半円に対する円周角が直角になるタレスの定理や、影からピラミッドの高さを求めた話などで知られます。
タレスはなぜ有名なのですか?
神話ではなく自然や理由で世界を説明しようとした最初の人とされ、「哲学の祖」「証明の数学の祖」とよばれるからです。ギリシャの七賢人にも数えられ、日食の予言やピラミッドの高さの測定などの逸話で知られます。
タレスの定理とは何ですか?
日本では、「半円に対する円周角は直角」という定理をいいます。円の直径ABと、円周上の点Pを結んでできる角APBは、Pがどこにあっても90°になります。中学3年の円周角の単元で習います。海外では、平行線と線分の比の定理をタレスの定理とよぶ国もあります。
タレスの定理はどうやって証明するのですか?
円の中心Oと点Pを結ぶと、OA、OB、OPが半径で等しいので、三角形OAPとOBPは二等辺三角形です。底角をα、βとおくと、三角形ABPの内角の和から 2α+2β=180° となり、角APB=α+β=90° が示せます。
タレスはどうやってピラミッドの高さを測ったのですか?
自分や棒の影の長さが高さと同じになる時刻に、ピラミッドの影の長さを測ったと伝えられます。同じ時刻には、どんなものも高さと影の比が同じ(相似な三角形)なので、影の長さからピラミッドの高さが分かります。実話かどうかは確かめられていません。
タレスの名言はありますか?
「万物の根源は水である」が、アリストテレスの本でタレスの説として伝えられています。また「もっとも難しいことは自分自身を知ること」もタレスの言葉として伝えられますが、本人の言葉かどうかは諸説あります。タレス自身の著作は残っていません。
タレスの日食の予言は本当ですか?
歴史家ヘロドトスが、前585年5月28日ごろの日食をタレスが予言した、と書いています。ただし当時の知識では正確な予言はむずかしく、「この時期に日食が起こりそうだ」という見通しだった、あるいは後世の作り話だという見方もあり、確かではありません。
タレスは何歳で亡くなりましたか?どこの人ですか?
小アジアの都市ミレトス(今のトルコ西岸)の人です。前546年ごろ、運動競技の観戦中に、暑さとのどのかわきで亡くなったと伝えられ、年は78歳または90歳といわれます。生没年は古い時代の人のため、資料によって前546年ごろ、前547年ごろと差があります。
タレスとピタゴラスにはどんな関係がありますか?
タレスはピタゴラスより少し前の世代で、ピタゴラスが若いころタレスに学んだという伝承があります。ただし年代の差が大きいため確かではありません。どちらも、理由をつけて説明する数学のはじまりに立つ人物として並んで語られます。
タレスは受験とどう関係しますか?
中学受験では相似・影の長さ、高校受験では円周角の定理・平行線と線分の比、大学受験では円と直径の問題や、ベクトルの内積による軌跡の問題に関係します。タレスの定理は、図に直径があるときの最初に使う道具です。
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出典・参考
- J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Thales of Miletus”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
- T. L. Heath, “A History of Greek Mathematics, Vol. 1”(1921年)
- D. Graham, “Thales”, Stanford Encyclopedia of Philosophy
- プロクロス『ユークリッド原論第1巻注釈』/ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシャ哲学者列伝』第1巻
- 肖像:作者不明の版画「Thales」、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



