ヘロンは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|ヘロンの公式・蒸気で回る球・自動販売機

ヘロンは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|ヘロンの公式・蒸気で回る球・自動販売機

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ヘロンHeron

ひとことで言うと

3辺の長さだけから三角形の面積を求めるヘロンの公式で知られる、アレクサンドリアの数学者・技術者。蒸気で回る球やコインで水が出る機械など、数学と機械の両方で仕事を残した。

名前ヘロン(アレクサンドリアのヘロン、Heron of Alexandria、Hero)
生没年10年ごろ〜70〜75年ごろ(はっきりした年は分かっていません。1世紀に活躍)
国古代ギリシャ世界(エジプトのアレクサンドリア)
分野幾何・測量・機械学・気体の力学・光学
主な業績ヘロンの公式(三角形の面積)、平方根の計算法、反射光学とヘロンの問題、蒸気で回る球(アイオロスの球)、自動販売機・自動ドアの設計
名前がつくものヘロンの公式・ヘロン三角形・ヘロンの問題・ヘロンの方法(平方根)・ヘロンの噴水
よばれ方古代の工学者・実用幾何学者。『メトリカ』『気体装置』『自動機械』の著者

このページのポイント

  • ヘロンの公式 S=√{s(s−a)(s−b)(s−c)} で、3辺だけから三角形の面積が出る(数学I)。13・14・15の三角形は面積84
  • 鏡の反射の最短経路(ヘロンの問題)は、対称移動で解く。高校入試・大学入試の定番で、フェルマーの原理につながる
  • 蒸気で回る球・コインで水が出る機械・自動ドアなど、数学と機械の両方の仕事。ただし生涯はほとんど分からず、逸話には諸説ある

ヘロンは何をした人?(業績をひとことで)

ヘロン(アレクサンドリアのヘロン、英語ではヒーローHero。1世紀ごろ)は、古代ギリシャ世界の数学者・技術者です。エジプトの都市アレクサンドリアで活躍しました。三角形の3辺の長さだけから面積を求める「ヘロンの公式」で、世界中の高校生に知られています。そのほかにも、蒸気で回る球(世界でもっとも古い蒸気機関の一つ)、コインを入れると水が出る自動販売機、自動で開くとびら、平方根の計算法、鏡で反射する光の最短の道など、数学と機械の両方の分野で、ふしぎなほど幅広い仕事を残した人です。

ヘロンは、数学の本と、機械の本の両方を書いた、数学と工学の橋わたし役でした。教科書のように、問題と解き方をならべた『メトリカ』(測定術)、からくり人形のしくみを説明した『自動機械』、空気や水や蒸気の力を使った『気体装置(プノイマティカ)』などがあります。大学の講義ノートのような文章が多く、アレクサンドリアのムセイオン(学問の研究所)で教えていたのではないか、と考えられています。

ただし、ヘロンの生涯については、ほとんど何も分かっていません。生まれた年も、亡くなった年も、はっきりしません。ヘロンという名前は当時とてもありふれていて、昔の記録に出てくる「ヘロン」が、この人のことなのか、別人なのかを区別するのがむずかしいのです。そのため、このページでも、確かなことと「〜と伝えられます」「諸説あります」の話を分けて書きます。

受験生にとってのヘロンは、なんといってもヘロンの公式と三角形の面積の求め方です。高校の数学Iの三角比の単元で習い、辺の長さしか分からない三角形の面積を求める問題で使います。三角比とは(sin・cos・tan)と合わせて、先に読んでおくと理解が進みます。

うかるくん

うかるくん

ヘロンの公式って、数学Iで出てくる、面積の公式ですよね。でも、蒸気機関とか自動販売機とか、同じ人の話なんですか?

合格先生

合格先生

そうなんだ。ヘロンは、「数学を、ものを作ることにも使った」人だよ。三角形の面積を求める公式を考えた人が、同じ頭で、蒸気で回る球やコインで水が出る機械も考えた。数学と機械は、もともとつながっていたんだ。

ヘロンの生涯と年表

いつの時代の人か、長い間わからなかった

ヘロンが、いつの時代の人なのかは、長い間、決着がつきませんでした。「アルキメデス以後の本を引用していない」ことから前150年ごろという説、「プトレマイオスより後」と考えて紀元後250年ごろという説、さらに、農業の本を書いたローマ人コルメッラ(紀元後62年ごろに執筆)と同じ時代だという説がありました。

この論争に決着をつけたのが、1938年のノイゲバウアーという研究者の発見です。ヘロンの本に出てくる月食の記述(アレクサンドリアで見えた月食と、ローマで見えた月食の時刻の差を、距離を測るために使う方法を説明した部分)が、紀元後62年3月13日の夜23時ごろに実際に起こった月食と一致することが分かったのです。このため、ヘロンは1世紀の後半に活躍した人とされています。生まれは10年ごろ、亡くなったのは70〜75年ごろと、おおまかに考えられています。

アレクサンドリアのムセイオンで教えた

ヘロンの本は、数学・物理学・気体の力学・機械学を教える、講義ノートのような形をしています。そのため、ヘロンは、アレクサンドリアのムセイオンで、これらの科目を教えていたのだろうと推測されています。4世紀の数学者パッポスは、『数学集成』のなかで、「ヘロンの学派の機械学者たち」という言い方で、ヘロンの機械学を紹介しています。それによれば、ヘロンの学派は、機械学を理論の部分(幾何・算術・天文・物理)と手を動かす部分(金属加工・建築・大工仕事・絵画)に分けて考えていたといいます。

『メトリカ』の発見(1896年)

ヘロンの最も重要な数学の本『メトリカ』は、長い間、失われたと思われていました。ところが、1896年に、ドイツの研究者シェーネが、コンスタンティノープル(今のイスタンブール)の図書館で、この本の写本を見つけました。これによって、ヘロンの公式の証明が、ヘロン自身の本に書かれていたことが確かめられたのです。

年できごと
10年ごろ生まれたとされる(おそらくアレクサンドリア。はっきりしない)
1世紀後半アレクサンドリアのムセイオンで、数学・機械学を教えたと考えられる
62年3月13日アレクサンドリアで月食が見られた。ヘロンの本に出てくる月食と一致する
70〜75年ごろ亡くなったとされる(70年ごろとする本もあり、はっきりしない)
2世紀プトレマイオスが活躍。ヘロンはその少し前の世代の人と分かっている
4世紀パッポスが『数学集成』でヘロンの機械学をまとめる
11世紀ごろイスラムの学者ビールーニーが、ヘロンの公式をアルキメデスの発見としても伝える
1896年コンスタンティノープルで、『メトリカ』の写本が発見される
1938年ノイゲバウアーが、月食の記述からヘロンが1世紀の人であることを確かめる

ヘロンの主な業績をやさしく解説

業績1 ヘロンの公式(3辺の長さから三角形の面積を求める)

三角形の面積は、ふつう「底辺×高さ÷2」で求めますが、高さが分からないと使えません。三角形の3辺の長さを aa、bb、cc として、辺の和の半分(半周長)を s=a+b+c2s=\dfrac{a+b+c}{2} とすると、面積 SS は次の式で求められます。

S=s(s−a)(s−b)(s−c)S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}

これがヘロンの公式です。たとえば、3辺が13、14、15の三角形では、s=21s=21 ですから、S=21×8×7×6=7056=84S=\sqrt{21\times8\times7\times6}=\sqrt{7056}=84 と求められます。高さを使った計算(底辺14、高さ12で 14×12÷2=8414\times12\div2=84)と、ぴったり一致します。

ヘロンの公式で面積を求める141315高さ12s=(13+14+15)÷2s=2121−13=8 21−14=721−15=6面積=√(21×8×7×6)=√7056=84底辺14×高さ12÷2=84 とも一致する
3辺が13・14・15の三角形。s=21、面積=√(21×8×7×6)=84。高さ12から出した面積とも一致する

この公式は、三角比(余弦定理)を使って証明できます。三角形の面積は S=12absin⁡CS=\dfrac12ab\sin C で、余弦定理から cos⁡C=a2+b2−c22ab\cos C=\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab} です。sin⁡2C=1−cos⁡2C\sin^2C=1-\cos^2C を使うと、

16S2=4a2b2−(a2+b2−c2)2=(a+b+c)(−a+b+c)(a−b+c)(a+b−c)16S^2=4a^2b^2-(a^2+b^2-c^2)^2=(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)

となります。右辺の4つの因数を、2s2s、2(s−a)2(s-a)、2(s−b)2(s-b)、2(s−c)2(s-c) で表すと、16S2=16 s(s−a)(s−b)(s−c)16S^2=16\,s(s-a)(s-b)(s-c) ですから、ヘロンの公式が出ます。くわしい手順は三角形の面積(1/2 ab sinC・ヘロンの公式)で確かめられます。ただし、ヘロン自身の証明は、三角比ではなく、内接円と図形の比の関係を使った、幾何学の方法でした。

この公式は、本当にヘロンが最初に見つけたのでしょうか。じつは、アルキメデスがすでに知っていたと、11世紀のイスラムの学者ビールーニーが伝えています。ヘロンの『メトリカ』が、証明つきで残る最も古い記録であるため、ヘロンの名前がついたというのが、一般的な説明です。この公式は、のちのブラーマグプタによって、円に内接する四角形へ広げられました(ブラーマグプタの公式)。三角形・四角形の面積の公式は四角形の面積とブラーマグプタの公式で比べて学べます。

業績2 平方根の計算法(ヘロンの方法)

『メトリカ』には、平方根のおおよその値を求める方法が書かれています。たとえば、720\sqrt{720} を求めるには、720に近い平方数(729=27227^2)を見つけ、720を27で割って(約26.67)、27との平均をとります(約26.83)。これで、720≈2656\sqrt{720}\approx26\dfrac56 と、かなり良い近似値が得られます。さらに精度を上げたいときは、この値を使って同じ計算をくり返します。

この方法を、N\sqrt{N} に一般化すると、ある近似値 xx から、次の近似値を 12(x+Nx)\dfrac12\left(x+\dfrac Nx\right) とします。これは、バビロニア(今のイラク)の粘土板にも同じ計算があるため、バビロニア法ともよばれます。ヘロンが最初ではなく、古い方法をギリシャ語で書きとめたと考えられていますが、「ヘロンの方法」という名前でも知られています。

面積2の長方形を、正方形に近づけるたて1×よこ2たて4/3×よこ3/2ほぼ正方形→→よこの長さ:2 → 3/2 → 17/12 → 577/408=1.4166… → 1.41421…(√2=1.41421356…)
面積2の長方形のたてとよこの平均をとって作り直すと、だんだん正方形に近づく。よこの長さが√2に近づいていく

この方法は、図で考えると分かりやすくなります。2\sqrt{2} を求めるとき、面積が2の長方形(たて1、よこ2)から始めます。たてとよこの平均を新しいよこの長さにして、面積が2になるようにたてを決め直すと、長方形が正方形に近づきます。2→3/2→17/12→577/408と、わずか3回で、2=1.41421356⋯\sqrt2=1.41421356\cdots に小数点以下5けたまで近づきます。

この方法は、のちのニュートンが考えたニュートン法(方程式の解を近似する方法)の特別な場合になっています。大学入試では、「an+1=12(an+2an)a_{n+1}=\dfrac12\left(a_n+\dfrac2{a_n}\right) で定まる数列が 2\sqrt2 に近づく」ことを証明させる問題(漸化式と極限)として出ます。漸化式とはと数列の極限と無限級数、平方根の計算とあわせて学ぶとよいでしょう。

業績3 ヘロンの問題(鏡で反射する光の最短の道)

ヘロンの『反射光学(カトプトリカ)』には、光が鏡で反射するとき、入射角と反射角は等しいことの理由が書かれています。ヘロンの説明は、光は、いちばん短い道を通るという考えにもとづいています。

ヘロンの問題:鏡で反射する最短の道鏡ABB′P入射角反射角AP+PB = AP+PB′ 。A・P・B′が一直線のとき最短→ 入射角=反射角
AからPで反射してBに行く道。Bを鏡について対称な点B′にうつすと、A・P・B′が一直線のときが最短で、入射角=反射角

ここで使うのが、直線について対称な点の考え方です。点Bを鏡の線について反対側に対称にうつした点をB′とします。鏡の上のどの点Pでも、PBとPB′は同じ長さなので、「A→P→B」の長さは「A→P→B′」の長さと等しくなります。A→P→B′が一直線のときに、最も短くなります。このとき、入射角と反射角が等しくなることが、対称なので分かります。

この考え方は、「鏡で反射する最短の道」だけでなく、「川に水くみに寄ってから家に帰る最短の道」のような問題にも使えます。そのため、これらの問題は「ヘロンの問題」とよばれることがあります。高校入試でも、対称移動を使って、折れ線の長さを最小にする問題は、毎年のように出題されます。図形の移動(平行・回転・対称移動)も合わせて練習してみましょう。

ヘロンが考えた「光はいちばん短い道を通る」という考えは、17世紀のフェルマーが「光は、かかる時間がいちばん短い道を通る」というフェルマーの原理として発展させました。2000年近く前の考えが、現代の光学の土台になっているのです。

業績4 蒸気の力で回る球(アイオロスの球)

ヘロンの『気体装置(プノイマティカ)』には、蒸気の力で球が回る装置が書かれています。後世に「アイオロスの球」(風の神アイオロスにちなむ名前)とよばれる装置です。つくりは、つぎのとおりです。

  • 水の入ったかまどの上に、2本の管が立ち、そこから空洞の球に蒸気が送られる。
  • 球の上下には、反対向きにL字に曲がった管がついている。
  • 蒸気が管の先からふき出すと、その反作用で球がくるくる回る。
ヘロンの蒸気機関(アイオロスの球)水(熱する)蒸気蒸気反対向きに回るふき出す蒸気の反作用で、球が回る
水を熱して出た蒸気が、球の曲がった管から反対向きにふき出して、球が回る

これは、噴射の反作用で回転する仕組みで、現代のジェットエンジンやロケット、反動式の蒸気タービンの原理と同じです。「世界でもっとも古い蒸気機関(蒸気タービン)の一つ」と紹介されることもあります。ただし、ヘロンの時代には、これを仕事に使うという発想はなく、おもちゃや、神殿の見せものとして作られたと考えられています。産業革命の蒸気機関が実用化されるまで、1700年近くかかりました。

ヘロンの本には、ほかにもたくさんの装置があります。祭壇で火をたくと、空気がふくらんで神殿のとびらが自動で開くしかけ、水の圧力で噴きあがる「ヘロンの噴水」、風で動く楽器、鳥の声が出る水鳥の人形などです。ヘロン自身は、これらの装置を、気体や液体の性質を学生に教えるための教材として、書いたのではないかと考えられています。

業績5 コインを入れると水が出る機械、からくり人形

ヘロンの本に出てくるもので、特に有名なのが、コインを入れると聖水が出る機械です。古代エジプトの神殿の入口にある水がめから、コイン(5ドラクマ貨)を投げ入れると、決まった量の水が出る、という装置です。コインが皿にのると、その重みでてこが傾き、水の出口の弁が持ち上がって水が出ます。コインが皿からすべり落ちると、てこがもどって、弁がしまります。これは、世界でもっとも古い自動販売機といわれます。

コインで水が出る機械(と伝えられる)投入口水そうコインの重みで皿が下がるてこ弁水が出るコインがすべり落ちる → てこがもどる → 弁がしまる=世界でもっとも古い自動販売機といわれる
コインの重みでてこが傾いて弁が開き、水が出る。コインが落ちるともとにもどる

また、『自動機械(アウトマタ)』には、糸・ひも・重り・砂などを使い、決められた動きをくり返す人形劇のしくみが書かれています。ひもの巻き方を変えると動きを変えられるため、「世界でもっとも古い、プログラムできる機械」と紹介されることもあります。これらは、実際に作られたというより、設計図として書かれたものも多いと考えられています。

業績6 測量の道具ディオプトラと、『メトリカ』の幾何

ヘロンは、測量の道具も作りました。『ディオプトラ(測量儀)』という本には、土地の高さの差や、2つの地点の距離を測る道具のしくみが書かれています。また、トンネルを両側から掘って、まん中で出会わせるための測量の方法や、運河を掘るための計算なども、説明されています。ここで使われているのは、相似な三角形と三平方の定理です。タレスの影で高さを測る考え方と、よく似ています。

『メトリカ』(全3巻)では、三角形・四角形・正多角形・円の面積、円すい・円柱・角柱・角すい・球の体積などが、数値の例をあげて説明されています。たとえば、表面積の意味や体積の考え方のもとになる、実用の幾何です。第3巻には、図形を決まった比で分ける方法や、立方根の近似の計算法も出てきます。「理論」のユークリッドの幾何学に対して、ヘロンの幾何学は「実用」の幾何学といわれます。

ヘロンの名前がつく公式・定理・用語

  • ヘロンの公式:3辺から三角形の面積を求める公式。S=s(s−a)(s−b)(s−c)S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}。→ ヘロンの公式の証明と入試問題。数学Iで習います。
  • ヘロン三角形:3辺の長さも面積も、すべて整数になる三角形。(3, 4, 5)、(5, 5, 6)、(13, 14, 15) など。入試で「整数の辺」の問題として登場します。
  • ヘロンの問題(反射の最短経路):対称な点を使って、折れ線の最短の長さを求める。→ 直線について対称な点
  • ヘロンの方法(平方根の計算法):x→12(x+Nx)x\to\dfrac12\left(x+\dfrac Nx\right) をくり返す。バビロニア法、ニュートン法の特別な場合。→ 平方根の計算
  • ヘロンの噴水・アイオロスの球:『気体装置』に出てくる装置。
  • 半周長 ss:3辺の和の半分。内接円の半径 rr は、S=rsS=rs から r=Ssr=\dfrac Ss と求められます。→ 三角形の五心(外心・内心・重心・垂心・傍心)
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

3辺しか分からない三角形の面積は、ヘロンの公式だよ。まず ss を出して、s−as-a、s−bs-b、s−cs-c を作る。計算ミスを防ぐコツは、ss からの引き算が正しいか、足して ss になるかを確かめることだよ。

ヘロンの逸話と名言

「自然は無駄なことをしない」

自然は、むだなことをしない。

ヘロンの考えとして伝えられるもの(光が最短の道を通るという、ヘロンの反射の説明の根拠として、後世の著者が伝えている。ヘロン自身の言葉そのままかどうかは、確かではありません)

ヘロンは、「自然は、むだな道を通らない。だから光も、最短の道を通る」という考えを、反射の説明にしたと伝えられます。この考えは、のちの「最小作用の原理」など、物理学の大きな考え方につながっていきます。

「ヘロンは本当は何人いる?」

ヘロンという名前は、古代では非常によくある名前でした。そのため、昔の本に出てくる「ヘロン」が、この人なのかどうかが、よく分からないことがあります。ヘロン作とされる本の中にも、ほかの人が書いたもの、あとから加えられたものが混じっています。たとえば、『定義集(デフィニティオネス)』は、ヘロン本人ではなく、のちの時代の編者がまとめたものと考えられています。

プログラムできる荷車

ヘロンの『自動機械』には、おもりの落ちる力で、ひもを使って荷車を決まった道筋で動かす装置が出てきます。ひもを巻く場所を変えると、動きを変えられるので、「ロボットの先祖」と紹介されることもあります。ただし、これが実際に作られたかどうかは分かっておらず、現代の人が再現して、動くことは確かめられています。

本当に発明したのはヘロン?

ヘロンの装置の中には、ヘロン以前の人が作ったものを、本にまとめただけのものも多いと考えられています。たとえば、アルキメデスや、アレクサンドリアのクテシビオス(前3世紀)たちが考案した、空気や水の装置があります。ヘロンがどこまで自分で考案したのかは、確かではありません。それでも、ヘロンの本があったから、これらの知識が後世に残ったことは確かです。

サクラちゃん

サクラちゃん

蒸気で回る球があったのに、どうして蒸気機関がすぐに作られなかったんですか?

合格先生

合格先生

いい質問だね。当時のアレクサンドリアでは、人手(奴隷)がたくさんいて、機械で力を出す必要が少なかった、という説明がよくされるよ。ただし、本当の理由はよく分かっていないんだ。数学でもそうだけど、見つけたことが、すぐ役に立つとは限らない。ヘロンの装置は、1700年後に生きる人たちが使う技術の、種だったんだね。

受験・勉強とヘロンのつながり

中学受験:三角形の面積・3:4:5

中学受験では、ヘロンの公式そのものは使いませんが、三角形の面積の問題は毎年のように出ます。3辺が3・4・5や、5・12・13、13・14・15などの三角形が、図に出てきたとき、どこが直角か、高さがいくつかを見つけると、面積が求められます。三角形・平行四辺形の面積の公式と、面積比と辺の比を練習しておきましょう。

高校受験:三平方の定理・対称移動

高校入試では、3辺が分かっている三角形の面積を、三平方の定理で高さを出して求める問題が出ます。13・14・15の三角形は、高さが12になる有名な例です。また、対称移動を使って折れ線の長さを最小にする問題(ヘロンの問題)は、ほぼ毎年、どこかの県で出題されます。三平方の定理の公式・証明・入試問題も合わせて練習しましょう。

大学受験:ヘロンの公式・内接円・漸化式

数学Iでは、ヘロンの公式を使って、三角形の面積・内接円の半径・外接円の半径を求める問題が定番です。13・14・15の三角形の場合、内接円の半径は r=Ss=8421=4r=\dfrac{S}{s}=\dfrac{84}{21}=4、外接円の半径は R=abc4S=2730336=658R=\dfrac{abc}{4S}=\dfrac{2730}{336}=\dfrac{65}{8} です。そのほか、数学IIIでは、an+1=12(an+2an)a_{n+1}=\dfrac12\left(a_n+\dfrac{2}{a_n}\right) のような漸化式で、平方根に近づく数列を調べる問題が出ます。京大の整数・図形・極限の問題の出方は、京大理系数学の出題分析(図形と式の出方)も参考になります。

勉強法として:公式の「つながり」を知る

ヘロンの公式は、余弦定理・三角形の面積・内接円という、図形の3つの道具が、1つにつながった公式です。ばらばらに覚えるより、「どこから出てきたか」を知っていると、忘れにくく、応用しやすくなります。数学の勉強法は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も読んでください。

ヘロンがその後の数学にあたえた影響

  • 四角形の面積の公式:ブラーマグプタの公式と数学が、ヘロンの公式を、円に内接する四角形に広げました。さらに、一般の四角形にも広げた「ブレートシュナイダーの公式」があります。
  • 最短経路と変分原理:「光は最短の道を通る」というヘロンの考えは、フェルマーの原理、さらに、物理学の最小作用の原理へ発展しました。
  • 数値計算:ヘロンの平方根の方法は、ニュートンの近似法を経て、現代のコンピュータが平方根を計算するときの基本アルゴリズムにも通じています。
  • 機械工学:蒸気の反作用で回る球は、近代の蒸気タービン・ロケットの原理の先がけと見られます。実用の蒸気機関は、18世紀にワットが完成させました。
  • 実用数学の伝統:測量・面積・体積を数値で計算する「ヘロンの実用幾何」は、ローマ、ビザンツ、イスラム世界、そして近代ヨーロッパの測量・土木に受けつがれました。

ヘロンは、「理論の数学」と「ものを作る数学」の間に立った人です。ユークリッドやアルキメデスのような理論の天才に比べて目立たないこともありますが、日常のくらしと数学を結びつけた点が、いまの工学・応用数学の先祖といえます。数学の公式を1つずつ確かめたいときは、算数・数学の公式一覧(公式辞典)もどうぞ。

ヘロンに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 3辺が3cm、4cm、5cmの三角形の面積を、ヘロンの公式で求めなさい。
    答えと解説を見るs=(3+4+5)÷2=6。面積=√(6×3×2×1)=√36=6cm²。(直角三角形なので、3×4÷2=6とも一致)
  2. 3辺が5cm、5cm、6cmの三角形の面積を求めなさい。
    答えと解説を見るs=8。面積=√(8×3×3×2)=√144=12cm²。(底辺6、高さ4で、6×4÷2=12とも一致)

ふつう

  1. 3辺が13cm、14cm、15cmの三角形の面積を、ヘロンの公式で求めなさい。
    答えと解説を見るs=21。面積=√(21×8×7×6)=√7056=84cm²。(7056=84²)
  2. a1=2a_1=2、an+1=12(an+2an)a_{n+1}=\dfrac12\left(a_n+\dfrac2{a_n}\right) のとき、a2a_2、a3a_3 を求めなさい。
    答えと解説を見るa2=12(2+1)=a_2=\dfrac12\left(2+1\right)=3/2。a3=12(32+43)=12⋅176=a_3=\dfrac12\left(\dfrac32+\dfrac43\right)=\dfrac12\cdot\dfrac{17}{6}=17/12(約1.4167)。√2=1.4142…に近づいています。

むずかしい

  1. 3辺が13、14、15の三角形について、内接円の半径 rr と外接円の半径 RR を求めなさい。
    答えと解説を見る面積 S=84S=84、s=21s=21。内接円:S=rsS=rs より r=84÷21=r=84\div21=4。外接円:S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R} より R=13×14×154×84=2730336=R=\dfrac{13\times14\times15}{4\times84}=\dfrac{2730}{336}=65/8。
  2. 座標平面で、A(0, 3)、B(6, 1) があります。x軸上の点Pで、AP+PBが最小になるPの座標と、そのときの最小値を求めなさい。
    答えと解説を見るBをx軸について対称にうつした点を B′(6, −1) とする。AP+PB=AP+PB′ が最小になるのは、A・P・B′が一直線のとき。直線AB′:y=3−(2/3)x で、y=0 となるのは x=9/2。よって P(9/2, 0)。最小値は AB′=√(6²+4²)=√52=2√13。

ヘロンと関係する数学者

数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、数学で使う記号の読み方は数学でよく使う記号の意味一覧(Σ・∫・√)もどうぞ。

古代の数学者

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有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

ヘロンは何をした人ですか?

ヘロンは、1世紀ごろにエジプトのアレクサンドリアで活躍した数学者・技術者です。3辺から三角形の面積を求めるヘロンの公式、平方根の計算法、鏡の反射の最短経路、蒸気で回る球、コインで水が出る機械などの業績で知られます。

ヘロンの公式とは何ですか?

三角形の3辺の長さをa、b、cとし、半周長をs=(a+b+c)÷2とすると、面積はS=√{s(s−a)(s−b)(s−c)}で求められるという公式です。高さが分からなくても、3辺の長さだけで面積が出せます。数学Iで習います。

ヘロンの公式の使い方を例で教えてください。

3辺が13、14、15の三角形なら、s=21で、面積は√(21×8×7×6)=√7056=84です。底辺14、高さ12から出した面積と一致します。3辺が3、4、5なら、s=6、面積は√(6×3×2×1)=6です。

ヘロンの公式は本当にヘロンが見つけたのですか?

11世紀のイスラムの学者ビールーニーは、アルキメデスがすでに知っていたと伝えています。ただし、証明つきで残る最も古い記録がヘロンの『メトリカ』(1896年に写本が再発見)なので、ヘロンの名前がついています。

ヘロンは何歳で、いつ亡くなりましたか?

はっきりした記録はありません。ヘロンの本に出てくる月食が紀元後62年3月13日のものと分かり、1世紀の後半に活躍した人とされます。10年ごろに生まれ、70〜75年ごろに亡くなったと、おおまかに考えられています。

ヘロンの蒸気機関とは何ですか?

アイオロスの球ともよばれる装置で、水を沸かした蒸気が空洞の球に送られ、球の曲がった管から反対向きにふき出すことで、反作用で球が回ります。蒸気タービンやロケットの原理に通じますが、ヘロンの時代には、おもちゃや見せものとして作られたと考えられています。

ヘロンの問題とは何ですか?

鏡の上の点で反射してAからBへ行く最短の道を求める問題で、Bを鏡について対称な点B′にうつし、A・P・B′を一直線にして解きます。入射角と反射角が等しくなる理由にもなり、高校入試の折れ線の最短距離の定番です。

ヘロンの名言はありますか?

「自然は、むだなことをしない」という考えが、ヘロンの反射の説明の根拠として、後世の著者に伝えられています。ただし、ヘロン自身の言葉そのままかどうかは確かではありません。

ヘロンの平方根の方法とは何ですか?

√Nの近似値xから、次の近似値を(x+N/x)÷2で求め、くり返す方法です。√2なら、2→3/2→17/12→577/408と、3回で小数第5位まで近づきます。ニュートン法の特別な場合で、数学IIIの漸化式と極限の問題でも使われます。

ヘロンは受験とどう関係しますか?

数学Iでヘロンの公式を使った面積・内接円・外接円の問題が出ます。高校入試では、ヘロンの問題(対称移動による最短経路)が定番です。数学IIIでは、ヘロンの方法を表す漸化式の極限が出題されます。

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出典・参考

  • J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Heron of Alexandria”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
  • T. L. Heath, “A History of Greek Mathematics, Vol. 2”(1921年)
  • O. Neugebauer, “Über eine Methode zur Distanzbestimmung Alexandria–Rom bei Heron”(1938年)
  • Heron of Alexandria, “Metrica”, “Pneumatica”, “Catoptrica”

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦