ブラーマグプタは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|0の計算のきまり・四角形の面積の公式

ブラーマグプタは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|0の計算のきまり・四角形の面積の公式

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ブラーマグプタBrahmagupta

ひとことで言うと

0(ゼロ)と負の数(借金)の計算のきまりを、はっきり文章に書いた7世紀のインドの数学者。円に内接する四角形の面積のブラーマグプタの公式やペル方程式でも知られる。

名前ブラーマグプタ(ブラフマグプタ、Brahmagupta)
生没年598年〜668年ごろ(670年ごろとする本もあります)
国インド(ウッジャインの天文台の長。生まれはビンマル付近といわれる)
分野代数・数論・幾何・天文学
主な業績0と負の数の計算のきまり、四角形の面積のブラーマグプタの公式、二次方程式の規則、ペル方程式の合成法、数列の和(2乗・3乗)、サインの補間公式
名前がつくものブラーマグプタの公式・ブラーマグプタの定理・ブラーマグプタの恒等式(ブラーマグプタ・フィボナッチの恒等式)
主な著作『ブラーマスプタ・シッダーンタ』(628年)、『カンダカーディヤカ』(665年)

このページのポイント

  • 0と負の数:「a−a=0」「0−(−a)=a」「借金×借金=財産」など、いまの正負の数のきまりを、628年にはっきり書いた
  • ブラーマグプタの公式:円に内接する四角形の面積 √{(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)}。d=0 にするとヘロンの公式(数学I・大学入試)
  • 二次方程式の解き方、ペル方程式の合成法、1²+…+n² や 1³+…+n³ の公式も書いた。本は770年ごろアラビア語に訳されて世界に広がったと伝えられる

ブラーマグプタは何をした人?(業績をひとことで)

ブラーマグプタ(598年〜668年ごろ。670年ごろとする本もあります)は、7世紀のインドを代表する数学者・天文学者です。628年に書いた大著『ブラーマスプタ・シッダーンタ』(「ブラーマ神の正しく確立された教え」という意味)のなかで、0(ゼロ)を数として扱う計算のきまりと、負の数(借金)を使った計算のきまりを、はっきりとした形で書いた人です。いま私たちが学校で習う「正の数・負の数の計算」の、いちばん古い説明のひとつといわれます。

ほかにも、円に内接する四角形の面積の公式(ブラーマグプタの公式)、二次方程式の解き方、ペル方程式とよばれる整数の方程式、1²+2²+…+n² や 1³+2³+…+n³ の和の公式など、現代の高校数学や大学入試にもつながる仕事を、たくさん残しました。

ただし、ブラーマグプタの生涯は、くわしくは分かっていません。分かっているのは、父の名前がジシュヌグプタであること、ビッラマーラ(今のインド・ラジャスターン州のビンマル)という町で本を書いたこと、ウッジャイン(インド中部の学問の中心地)の天文台の長になったこと、くらいです。このページでは、確かな記録にもとづくことと、「〜と伝えられます」「諸説あります」の話を分けて書きます。

受験生にとってのブラーマグプタは、まず二次方程式の解の公式の古い仲間、そして中学1年の正の数・負の数とはにつながる人です。「0」の読み方や漢字の話は、「ゼロ」と「れい(零)」の違いも読んでみてください。大学受験では、四角形の面積とブラーマグプタの公式として名前が出てきます。

うかるくん

うかるくん

0って、昔からあったんじゃないんですか? 「何もない」って、だれでも分かるような……。

合格先生

合格先生

「何もない」ことを数として計算したのは、じつはそう古くないんだ。「0+3は3」「0に何をかけても0」「0−(−3)は+3」といった0と負の数の計算のきまりを、はっきり文章にしたのが、ブラーマグプタだといわれているよ。0の記号そのものは、もっと前のインドの資料にもあるんだけどね。

ブラーマグプタの生涯と年表

インド北西部の人、ウッジャインの天文台長

ブラーマグプタは、598年ごろに生まれたとされます。生まれた場所は、ウッジャインやビンマルのあたりといわれますが、はっきりしません。父はジシュヌグプタです。ブラーマグプタ自身が本の中で、「ビッラマーラ(今のビンマル)で、グルジャラ王国のヴィヤーグラムカ王の時代に書いた」と述べています。

のちにブラーマグプタは、ウッジャインの天文台の長になったと伝えられます。ウッジャインは、古代インドの天文学・数学の中心地で、ブラーマグプタ以前にも、ヴァラーハミヒラのような有名な学者が活躍していました。ここでの学問の伝統が、ブラーマグプタの仕事の土台になりました。

628年、『ブラーマスプタ・シッダーンタ』を書く

628年、30歳のブラーマグプタは、『ブラーマスプタ・シッダーンタ』を完成させます。25章からなる大著です。前半の10章は、惑星の位置、月食・日食、月の満ち欠けなど、インドの天文学の本として、ふつうの内容です。後半の15章には、数学の章(第12章「計算法」)と代数の章(第18章「クッタカ(粉砕法)」)が入っていて、ここに数学の大切な発見があります。

665年、67歳で2冊目の本

665年、67歳のとき、2冊目の本『カンダカーディヤカ』(「食べやすいひとかけら」という意味)を書きました。この本には、サイン(正弦)の値を補間する公式が出てきます。現代の言葉でいえば、二次の補間の公式で、のちにヨーロッパで発見されるニュートン・スターリングの補間公式の特別な場合にあたる、という研究があります。

アラビアへ伝わる

ブラーマグプタの本は、8世紀の後半(770年ごろ)に、バグダッドの王宮(アッバース朝のカリフ、アル・マンスール)の命令で、アラビア語に訳されたと伝えられます。このアラビア語訳『シンドヒンド』を通じて、インドの天文学と数学が、イスラム世界に伝わりました。その流れの先に、フワーリズミー(代数とアルゴリズムの語源)がいます。

年できごと
598年生まれたとされる(インド。ウッジャインかビンマルのあたり)
7世紀前半ウッジャインの天文台の長になったと伝えられる
628年『ブラーマスプタ・シッダーンタ』を書く(30歳、25章)。0と負の数の計算のきまりを書く
628年ごろ円に内接する四角形の面積の公式と対角線の公式を書く
628年ごろ二次方程式の解き方と、ペル方程式(Nx²+1=y²)の解き方を示す
665年『カンダカーディヤカ』を書く(67歳)。サインの補間公式を示す
668年ごろ亡くなったとされる(670年ごろとする本もある。インド)
770年ごろバグダッドで『ブラーマスプタ・シッダーンタ』がアラビア語に訳されたと伝えられる
825年ごろフワーリズミーが、インド式の数字の本を書く
12世紀バースカラ2世が、ブラーマグプタのペル方程式の方法(チャクラヴァーラ)を完成させる

ブラーマグプタの主な業績をやさしく解説

業績1 0(ゼロ)の計算のきまり

ブラーマグプタは、『ブラーマスプタ・シッダーンタ』のなかで、0を「ある数から、その数自身を引いた結果」と定義しました。つまり、a−a=0a-a=0 です。そして、0を使った計算のきまりを、つぎのように書いています(現代の言葉になおしてあります)。

  • 数に0を足しても、引いても、数は変わらない。(a+0=aa+0=a、a−0=aa-0=a)
  • どんな数に0をかけても0になる。(a×0=0a\times0=0)
  • 借金から0を引くと借金。財産から0を引くと財産。0から0を引くと0。
  • 0から借金を引くと財産。0から財産を引くと借金。(0−(−a)=a0-(-a)=a、0−a=−a0-a=-a)
  • 0と、借金または財産の積は0。0と0の積は0。
数直線で見る「0」と引き算−4−3−2−10+1+2+3+4← 借金(−)財産(+)→0 −(−3)=+33 − 3 = 0 (数からその数を引くと0)0 + 3 = 3 3 × 0 = 0 (0のきまり)
数直線で0−(−3)=+3。借金を取りのぞくと財産がふえる。3−3=0、3×0=0 などの0のきまり

ここで、ブラーマグプタは財産(正の数)と借金(負の数)という言葉を使っています。借金(「リナ」)を負の数として扱ったのは、とても早い例です。「借金の借金は財産」というような言い回しは、中学1年の「マイナスかけるマイナスはプラス」を、お金のたとえで説明するのと同じ考え方です。

ブラーマグプタは、さらに0で割ることにも挑戦しましたが、ここは、いまの数学とはちがう答えを書いています。「0÷0=0」としたり、「正の数や負の数を0で割ると、分母が0の分数になる」と書いたりしました。現代の数学では、0で割ることは定義されません(「0÷0」も決まりません)。ブラーマグプタの試みは、0の割り算がなぜむずかしいかを、人類がはじめて文章で考えた例として、数学の歴史では大切にされています。

なお、0という数字(記号)そのものは、ブラーマグプタが発明したものではありません。インドでは、それ以前から、位取りの空きを示す点や丸の記号が使われていました。「0を数として計算の中で使うルール」をまとめて書いたことが、ブラーマグプタの大きな功績です。

業績2 財産と借金のかけ算・割り算のきまり

ブラーマグプタは、正の数と負の数のかけ算・割り算を、つぎのように書いています。

財産(+)と借金(−)のかけ算財産 × 財産= 財産借金 × 借金= 財産財産 × 借金= 借金借金 × 財産= 借金(+)×(+)=+ (−)×(−)=+(+)×(−)=− (−)×(+)=−同じ符号なら+、ちがう符号なら−
財産×財産=財産、借金×借金=財産、財産×借金=借金、借金×財産=借金(現代の+と−の符号のきまり)

「2つの財産の積・商は、財産。2つの借金の積・商も、財産。借金と財産の積・商は、借金」。これは、中学1年で習う符号のきまり(同符号なら+、異符号なら−)そのものです。たとえば、(−3)×(−4)=12(-3)\times(-4)=12、(−3)×4=−12(-3)\times4=-12 です。ヨーロッパでは、負の数が数として受け入れられたのは、17世紀ごろまでかかったので、ブラーマグプタの考え方は、約1000年も先に進んでいました。

ただし、ブラーマグプタが「なぜ借金と借金のかけ算が財産になるのか」を、証明したわけではありません。いまの数学では、分配法則などから、この符号のきまりを導きます。中学1年の正の数・負の数の学習では、ブラーマグプタのこのきまりが、そのままの形で出てきます。

業績3 円に内接する四角形の面積(ブラーマグプタの公式)

三角形には、3辺から面積を求めるヘロンの公式と生涯がありました。ブラーマグプタは、これを四角形へ広げました。四角形ABCDの4辺を aa、bb、cc、dd とし、4辺の和の半分を s=a+b+c+d2s=\dfrac{a+b+c+d}{2} とすると、円に内接する四角形の面積 SS は次の式になります。

S=(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)S=\sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}
円に内接する四角形の面積abcds=(a+b+c+d)÷2 とおくと面積=√{(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)}
円に内接する四角形の面積は、4辺と半周長sだけで決まる。d=0(三角形)にするとヘロンの公式になる

たとえば、たて3、よこ4の長方形は、円に内接する四角形です。s=7s=7 なので、S=(7−3)(7−4)(7−3)(7−4)=144=12S=\sqrt{(7-3)(7-4)(7-3)(7-4)}=\sqrt{144}=12 となり、3×4=123\times4=12 と一致します。また、d=0d=0 とすると、四角形は三角形になり、S=s(s−a)(s−b)(s−c)S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}(ヘロンの公式)が出てきます。ブラーマグプタの公式が、ヘロンの公式を含むことが分かります。

ここで注意があります。ブラーマグプタ自身の文章には、「円に内接する」という条件が書かれていません。そのため、歴史家のなかには「条件を書き忘れた誤りだ」という人もいれば、「円に内接する四角形のことを言っているのだと、はじめから分かっていた」という人もいます。現代の数学では、この公式は円に内接する四角形でだけ成り立つことが分かっています(一般の四角形には、ブレートシュナイダーの公式が必要です)。円に内接する四角形の性質(対角の和180°)やトレミーの定理とあわせて学ぶと、理解が深まります。

ブラーマグプタは、円に内接する四角形の対角線の長さの公式も書いています。さらに、「ブラーマグプタの定理」という、きれいな定理も知られています。対角線が直角に交わる、円に内接する四角形で、対角線の交点から1辺にひいた垂線をのばすと、向かいの辺の中点を通る、というものです。

業績4 二次方程式の解き方

ブラーマグプタは、二次方程式の解の公式に近い規則を書いています。ax2+bx=cax^2+bx=c という方程式の解を、つぎのようにして求めるのです。「c に a の4倍をかけ、b の平方をたして、その平方根をとる。そこから b を引き、2a で割る」。式で書くと、次のようになります。

x=4ac+b2−b2ax=\frac{\sqrt{4ac+b^2}-b}{2a}

たとえば、x2+6x=16x^2+6x=16 なら、x=4×1×16+36−62=10−62=2x=\dfrac{\sqrt{4\times1\times16+36}-6}{2}=\dfrac{10-6}{2}=2 です。現代の解の公式 x=−b±b2−4ac2ax=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a} とは、書き方がちがいますが、同じ考え方です(式の c の符号が反対だからです)。ブラーマグプタは、負の解にも言葉で触れていて、「正の解を求める」ことを中心に書いています。

この解き方は、のちのフワーリズミーの「平方完成」の方法と、よく似ています。二次方程式とは・解の公式とはを先に読んで、二次方程式の解の公式と、ブラーマグプタの式を見比べてみてください。

業績5 ペル方程式と「合成」のしくみ

ブラーマグプタは、Nx2+1=y2Nx^2+1=y^2 という形の、整数解を求める方程式に取り組みました。いまはペル方程式とよばれます(イギリスの数学者ペルとは関係なく、オイラーが名前をまちがえてつけたといわれます)。たとえば、8x2+1=y28x^2+1=y^2 の解は、(x,y)=(1,3)(x,y)=(1,3)、(6,17)(6,17)、(35,99)(35,99)、(204,577)(204,577)……と、いくらでも作れます。

8x²+1=y² の整数解(ペル方程式)合成のきまりで、次々に解が作れる(x, y)=(1, 3)8×1²+1=9=3²(x, y)=(6, 17)8×6²+1=289=17²(x, y)=(35, 99)8×35²+1=9801=99²(3+√8)¹=3+1√8 (3+√8)²=17+6√8(3+√8)³=99+35√8 …… と続く
8x²+1=y²の整数解は、3+√8のべき乗から次々と作れる。(1,3)・(6,17)・(35,99)…

ブラーマグプタは、「2つの解を合成して、新しい解を作る」方法を発見しました。たとえば、(1,3)(1,3) と (1,3)(1,3) を合成すると (6,17)(6,17) になります。式にすると、y+x8y+x\sqrt8 を2乗するイメージです。(3+8)2=9+68+8=17+68(3+\sqrt8)^2=9+6\sqrt8+8=17+6\sqrt8 ですから、(x,y)=(6,17)(x,y)=(6,17) が出てきます。この方法を使うと、一つの解から、無数の解を作ることができます。

この「合成」のきまりは、現代ではブラーマグプタの恒等式(ブラーマグプタ・フィボナッチの恒等式)とよばれる式になっています。

(a2+nb2)(c2+nd2)=(ac−nbd)2+n(ad+bc)2(a^2+nb^2)(c^2+nd^2)=(ac-nbd)^2+n(ad+bc)^2

n=8n=8 で、a=c=3a=c=3、b=d=1b=d=1 とすると、(9+8)(9+8)=289=172(9+8)(9+8)=289=17^2 になっていることを確かめられます。ブラーマグプタ自身が例にあげたのは「92x2+1=y292x^2+1=y^2」で、最小の解は x=120x=120、y=1151y=1151 です(解がとても大きくなる例です)。「61x2+1=y261x^2+1=y^2」(最小の解は x=226153980x=226153980、y=1766319049y=1766319049)は、17世紀にフェルマーがヨーロッパの数学者たちへの挑戦問題として出した例で、インドでは12世紀のバースカラ2世が一般的な方法(チャクラヴァーラ)で解いたことで知られます。ラグランジュが、18世紀に、すべてのペル方程式に解があることを証明しました。

業績6 数列の和・かけ算の工夫・サインの補間

ブラーマグプタは、数列の和の公式も書いています。自然数の2乗の和と、3乗の和です。

12+22+⋯+n2=n(n+1)(2n+1)6,13+23+⋯+n3={n(n+1)2}21^2+2^2+\cdots+n^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}{6},\qquad 1^3+2^3+\cdots+n^3=\left\{\frac{n(n+1)}{2}\right\}^2

どちらも、高校数学Bの数列で習うΣ(シグマ)の公式です。n=10n=10 なら、2乗の和は385、3乗の和は3025です。ただし、ブラーマグプタの本には、証明が書かれていません。どうやって発見したのかは、分かっていません。公式の使い方はΣの公式(シグマの計算)で練習できます。

ブラーマグプタは、かけ算の方法も紹介しています。そのうちのひとつ「ゴームートリカ」(牛の通り道のように、という意味)は、かけられる数を、かける数の位ごとにかけて、位をずらして足す方法です。235×264 なら、235×2=470(→47000)、235×6=1410(→14100)、235×4=940 を足して、62040 になります。

ゴームートリカ(牛の通り道)のかけ算235 × 264 を、位ごとにわけて計算する百の位 2 :235×2=470 → 47000十の位 6 :235×6=1410 → 14100一の位 4 :235×4=940 → 94047000+14100+940=62040いまの筆算(かけ算の位のずらし)と同じ考え方
235×264を、位ごとにかけて足す。47000+14100+940=62040

いまの筆算のしくみが、すでに書かれていたことが分かります。インド式の暗算法は、インド式かけ算のやり方一覧やくれない算(11〜19のかけ算の暗算)でも紹介しています。

天文学では、1年の長さを365日6時間5分19秒と計算しました(のちの本では少しちがう値)。また、「地球は動かない」と考え、地球が自転しているというアーリヤバタの説を、くり返し批判しました。いっぽう、「物が下に落ちるのは、地球の性質であり、地球が物を引きよせるからだ」と書いた、という紹介もありますが、これはのちの解釈で、本人の意図は諸説あります。

ブラーマグプタの名前がつく公式・定理・用語

  • ブラーマグプタの公式:円に内接する四角形の面積 S=(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)S=\sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}。→ 四角形の面積(対角線と角・ブラーマグプタの公式)。ヘロンの公式の拡張です。→ 三角形の面積(ヘロンの公式)
  • ブラーマグプタの定理:対角線が直角に交わる、円に内接する四角形で、対角線の交点から辺への垂線は、向かいの辺の中点を通る。
  • ブラーマグプタの恒等式:(a2+nb2)(c2+nd2)=(ac−nbd)2+n(ad+bc)2(a^2+nb^2)(c^2+nd^2)=(ac-nbd)^2+n(ad+bc)^2。ペル方程式の解を合成するときの道具。
  • ブラーマグプタの0の定義と、財産・借金のきまり:a−a=0a-a=0、0−(−a)=a0-(-a)=a など。→ 正の数・負の数の意味と計算
  • ブラーマグプタの二次方程式の規則:ax2+bx=cax^2+bx=c の解 x=4ac+b2−b2ax=\dfrac{\sqrt{4ac+b^2}-b}{2a}。→ 二次方程式の解の公式
  • 1次不定方程式 ax+c=byax+c=by の解き方:整数解を求める方法。→ 1次不定方程式(整数解)
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

(−)×(−)=(+)は、「借金×借金=財産」とお金のたとえで覚えると忘れにくいよ。計算の途中で符号を書き落としたら、「同じ符号なら+、ちがう符号なら−」と、声に出して確かめよう。

ブラーマグプタの逸話と名言

「0が自分を引くと、0になる」

ある数から、その数自身を引いたものが、ゼロである。

ブラーマグプタの考えとして伝えられるもの(『ブラーマスプタ・シッダーンタ』の0の定義を、今の言葉でまとめたもの。原文のサンスクリット語の韻文を、そのまま訳した文ではありません)

詩(韻文)で書かれた数学

ブラーマグプタの本は、サンスクリット語の詩(韻文)で書かれています。古代のインドでは、数学や天文学の本を、暗唱しやすいように、詩の形で書くのがふつうでした。そのため、ブラーマグプタの文章は、とても短く、証明や説明が省かれています。後の学者が、注釈という形で、くわしい説明をつけていきました。

ほかの学者をはげしく批判した

ブラーマグプタは、自分より前の天文学者たち、特にアーリヤバタ(476年生まれ)を、しばしばはげしく批判しました。たとえば、アーリヤバタが「地球は自転する」と書いたことを、「ありえない」としりぞけています。いまの私たちから見るとアーリヤバタが正しいのですが、ブラーマグプタは、それでも数学の分野では、アーリヤバタの成果を受けついで、さらに発展させました。

「問題を作って解く人」のなぞなぞ

ブラーマグプタの本には、生活に身近な問題が多く出てきます。たとえば、「500ドラマ(お金の単位)を、ある利率で貸した。その4か月分の利子を、同じ利率で別の人に貸したところ、10か月で78ドラマになった。利率はいくらか」といった問題です。利子・割合・方程式が、すでに使われています。

「ブラーマグプタは数学の先生」と言われた理由

のちの時代の数学者バースカラ2世は、ブラーマグプタを、「数学の円(学者たちの輪)の宝石」とたたえたと伝えられます。ブラーマグプタの数学が、のちのインドの数学者たち(バースカラ2世、バースカラたち)の出発点になったことを、示しています。

サクラちゃん

サクラちゃん

0で割ったら、どうなるんですか? ブラーマグプタさんは「0÷0=0」って書いたんですよね……。

合格先生

合格先生

いまの数学では、0で割ることはできないと決めているんだ。たとえば「6÷0=□」なら「□×0=6」になる□が必要だけど、どんな数に0をかけても0だから、そんな数はない。ブラーマグプタの答えは、いまの数学とはちがうけれど、はじめて文章で考えたところに価値があるんだよ。

受験・勉強とブラーマグプタのつながり

中学受験:正の数・負の数、0の計算の考え方

中学受験の算数では、負の数そのものは習いませんが、「0に何をかけても0」「0で割ることはできない」という考えは大切です。また、ブラーマグプタの数列の和に近い「1+2+…+10」のような、規則性の問題が毎年出ます。等差数列の和の公式で練習しましょう。インド式の暗算に興味があれば、インド式かけ算のやり方一覧も参考になります。

高校受験:正負の数・二次方程式・円

中学1年の正の数・負の数の単元では、「同符号のかけ算は+、異符号は−」が基本です。中学3年の二次方程式では、解の公式や平方完成が主役です。また、円に内接する四角形では、対角の和が180°になる性質を使います。円に内接する四角形の性質(対角の和180°)は、ブラーマグプタの公式の前提になる性質です。

大学受験:四角形の面積・数列の和・ペル方程式

大学入試では、円に内接する四角形の面積を求める問題(余弦定理とヘロンの公式の組み合わせ)、Σの公式(2乗の和、3乗の和)、整数の問題(ペル方程式型の x2−ny2=1x^2-ny^2=1)などが出ます。難関大の整数問題では、ペル方程式に近い問題が出題されることがあります。京大・東大の整数問題の傾向は、京大理系数学の出題分析(整数問題の出方)でも確かめられます。

勉強法として:「符号のミス」を減らす

数学の計算ミスのうち、いちばん多いのが符号のミスだといわれます。ブラーマグプタの「財産と借金」のたとえで、(−)×(−)は借金が借金を取りのぞくから財産、とお金の話で言いかえると、まちがいにくくなります。数学の勉強法は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も読んでください。

ブラーマグプタがその後の数学にあたえた影響

  • 0と負の数の広がり:ブラーマグプタの本は、アラビア語に訳されて、イスラム世界に伝わり、フワーリズミー(インドの数字の本とアルゴリズム)をへて、13世紀にフィボナッチ(『算盤の書』)がヨーロッパに紹介しました。
  • ペル方程式の研究:ブラーマグプタの合成法は、バースカラ2世のチャクラヴァーラに発展し、17世紀のフェルマー、18世紀のオイラー・ラグランジュにつながりました。現代の整数論の重要な分野です。
  • 四角形の面積の公式:ヘロンの公式からブラーマグプタの公式、さらにブレートシュナイダーの公式へと、面積の公式は一般化されていきました。
  • 補間法(サインの表):カンダカーディヤカの補間公式は、ヨーロッパのニュートンらの補間法(表の値のあいだを計算する方法)の先がけといわれます。
  • インド数学の伝統:ブラーマグプタ、アーリヤバタ、バースカラ2世と続くインドの数学は、代数と数論に強みがありました。のちの「ケーララ学派」の無限級数研究にまで続きます。
「0」の計算が世界に広がるまで628年ブラーマグプタインドで「0の計算のきまり」を書く770年ごろバグダッド本がアラビア語に訳されたと伝えられる825年ごろフワーリズミーインド数字と計算法の本を書く1202年フィボナッチヨーロッパに紹介(『算盤の書』)(年や人物のつながりには諸説あります)
628年のブラーマグプタから、バグダッド、フワーリズミー、フィボナッチへ。インドの0と計算法が世界へ広がる

インドの数字と0は、世界中の計算を変えました。ローマ数字一覧表(1〜3000)と書き方と比べると、位取りと0がどれほど便利か、よく分かります。数学の記号の意味は、数学でよく使う記号の意味一覧(Σ・∫・≡)もどうぞ。

ブラーマグプタに挑戦!練習問題

やさしい

  1. つぎを計算しなさい。(−3)×(−4)、(−3)×4、0×(−7)、0−(−5)
    答えと解説を見る(−3)×(−4)=12(借金×借金=財産)、(−3)×4=−12、0×(−7)=0、0−(−5)=5(借金を取りのぞくと財産)。
  2. 1²+2²+3²+…+10² を、ブラーマグプタの公式で求めなさい。
    答えと解説を見るn(n+1)(2n+1)6\dfrac{n(n+1)(2n+1)}{6} に n=10n=10 を入れると、10×11×216=\dfrac{10\times11\times21}{6}=385。

ふつう

  1. たて3cm、よこ4cmの長方形の面積を、ブラーマグプタの公式で求めなさい。
    答えと解説を見るs=(3+4+3+4)÷2=7。面積=√{(7−3)(7−4)(7−3)(7−4)}=√(4×3×4×3)=√144=12cm²。(3×4=12と一致)
  2. ブラーマグプタの規則 x=4ac+b2−b2ax=\dfrac{\sqrt{4ac+b^2}-b}{2a} を使って、x2+6x=16x^2+6x=16 の正の解を求めなさい。
    答えと解説を見るa=1、b=6、c=16。x=4×1×16+36−62=10−62=x=\dfrac{\sqrt{4\times1\times16+36}-6}{2}=\dfrac{10-6}{2}=2。(確かめ:2²+6×2=16)

むずかしい

  1. 8x2+1=y28x^2+1=y^2 の整数解 (x,y)(x,y) は、y+x8=(3+8)ny+x\sqrt8=(3+\sqrt8)^n の形で作れます。n=3n=3 のときの解を求めなさい。
    答えと解説を見る(3+8)2=17+68(3+\sqrt8)^2=17+6\sqrt8。(17+68)(3+8)=51+178+188+48=99+358(17+6\sqrt8)(3+\sqrt8)=51+17\sqrt8+18\sqrt8+48=99+35\sqrt8。よって (x, y)=(35, 99)。確かめ:8×35²+1=9801=99²。
  2. 1³+2³+…+10³ を求め、(1+2+…+10)² と比べなさい。
    答えと解説を見る3乗の和の公式 {n(n+1)2}2\left\{\dfrac{n(n+1)}{2}\right\}^2 に n=10n=10:552=55^2=3025。1+2+…+10=55 なので、(1+2+…+10)²=55²=3025 と等しくなります(3乗の和は、和の2乗になる)。

ブラーマグプタと関係する数学者

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よくある質問

ブラーマグプタは何をした人ですか?

ブラーマグプタは、7世紀のインドの数学者・天文学者です。628年の『ブラーマスプタ・シッダーンタ』で、0と負の数を使った計算のきまりを書いたことで知られます。円に内接する四角形の面積のブラーマグプタの公式や、二次方程式、ペル方程式の研究も残しました。

ブラーマグプタは0を発明した人ですか?

0の記号そのものを発明した人ではありません。インドでは、それ以前から、位取りの空きを示す点や丸が使われていました。ブラーマグプタの功績は、0を「ある数から同じ数を引いたもの」と定義し、0を使った足し算・引き算・かけ算のきまりをまとめて書いたことです。

ブラーマグプタの公式とは何ですか?

円に内接する四角形の面積の公式で、4辺をa、b、c、d、半周長をsとすると、面積は√{(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)}です。d=0にすると三角形になり、ヘロンの公式になります。長方形なら、たて×よこと一致します。

ブラーマグプタの公式は、どんな四角形でも使えますか?

使えません。円に内接する四角形のときにだけ成り立ちます。ブラーマグプタの文章には「円に内接する」という条件が書かれていないため、誤りか、当然の前提だったのかは、歴史家の間でも意見が分かれています。一般の四角形には、ブレートシュナイダーの公式が必要です。

ブラーマグプタは0で割ることをどう考えましたか?

「0÷0=0」とし、正の数や負の数を0で割ると分母が0の分数になる、と書きました。現代の数学では、0で割ることは定義されません。ただし、0の割り算がむずかしいことを文章ではじめて考えた例として、数学史では大切にされています。

ブラーマグプタは何歳で亡くなりましたか?

598年ごろに生まれ、668年ごろ(670年ごろとする本もあります)に亡くなったとされ、およそ70歳です。628年に30歳で『ブラーマスプタ・シッダーンタ』、665年に67歳で『カンダカーディヤカ』を書いたと、本人の記述から分かっています。

ブラーマグプタの業績はどのように世界に伝わりましたか?

8世紀後半(770年ごろ)に、バグダッドで『ブラーマスプタ・シッダーンタ』がアラビア語に訳されたと伝えられます。その後、フワーリズミーなどのイスラムの学者を通して、13世紀にフィボナッチがヨーロッパに紹介しました。

ブラーマグプタの名言はありますか?

「ある数から、その数自身を引いたものがゼロである」という0の定義が有名です。ただし、これは原文の韻文をそのまま訳したものではなく、今の言葉でまとめたものです。本の多くは、詩の形で短く書かれています。

ペル方程式とは何ですか?ブラーマグプタとの関係は?

Nx²+1=y² の形の、整数解を求める方程式です。ブラーマグプタは、2つの解を合成して新しい解を作る方法を発見しました。8x²+1=y² なら、(1, 3)、(6, 17)、(35, 99) と次々に解が作れます。名前のペルは、オイラーがまちがえてつけたといわれます。

ブラーマグプタは受験とどう関係しますか?

中学1年の正の数・負の数の符号のきまり、中学3年の二次方程式、高校の数学Iの四角形の面積(ブラーマグプタの公式)、数学BのΣの公式(2乗・3乗の和)、整数問題のペル方程式などに関係します。

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出典・参考

  • J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Brahmagupta”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
  • H. T. Colebrooke(訳), “Algebra, with Arithmetic and Mensuration, from the Sanskrit of Brahmegupta and Bhascara”(1817年)
  • G. Ifrah, “The Universal History of Numbers”(2000年)
  • T. Hayashi, “Brahmagupta”, Encyclopaedia of the History of Science, Technology, and Medicine in Non-Western Cultures

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦