フワーリズミーは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|代数・アルゴリズムの語源・方程式の解き方

フワーリズミーは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|代数・アルゴリズムの語源・方程式の解き方

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フワーリズミーal-Khwarizmi

ひとことで言うと

方程式の解き方を体系化した本で「代数」の語源をつくり、名前が「アルゴリズム」の語源になった、9世紀バグダッドの数学者。インド・アラビア数字を世界に広めるきっかけも作った。

名前ムハンマド・イブン・ムーサー・アル=フワーリズミー(al-Khwarizmi)
生没年780年ごろ〜850年ごろ(はっきりした年は分かっていません)
国アッバース朝(バグダッドの「知恵の館」で活躍。出身はホラズムとも、バグダッド近郊ともいわれる)
分野代数・算術・天文学・地理学
主な業績方程式の6つの型と解き方の体系化、平方完成(図形による解法)、アル・ジャブルとアル・ムカーバラ、インド・アラビア数字の紹介、天文表、地理の本
名前がつくものアルゴリズム(algorithm)の語源・代数(algebra)の語源(本の題名「アル・ジャブル」)
主な著作『ジャブルとムカーバラの計算の簡約書』(830年ごろ)、インド数字の本(825年ごろ)、『大地の姿の書』

このページのポイント

  • 代数(algebra)の語源は、フワーリズミーの本の題名「アル・ジャブル」。方程式を6つの型に分け、図形(面積)で二次方程式を解いた
  • アルゴリズム(algorithm)の語源は、人名アル=フワーリズミーのラテン語形「アルゴリトミ」。決まった手順で答えを出す方法のこと
  • インド・アラビア数字と位取りを紹介した本が、12世紀にラテン語に訳されて、ヨーロッパの筆算につながった。生涯はほとんど分からず、諸説ある

フワーリズミーは何をした人?(業績をひとことで)

フワーリズミー(アル=フワーリズミー、780年ごろ〜850年ごろ)は、9世紀のイスラム世界(アッバース朝の都バグダッド)で活躍した数学者・天文学者・地理学者です。正式な名前はムハンマド・イブン・ムーサー・アル=フワーリズミーといいます。方程式の解き方を、はじめて体系的にまとめた本を書き、その本の題名から「代数(algebra)」という言葉が生まれました。さらに、フワーリズミーの名前そのものが、「アルゴリズム(algorithm)」という言葉のもとになりました。

いまの私たちが毎日使っている0〜9のインド・アラビア数字と、位取りの計算法を、イスラム世界やヨーロッパに広めるきっかけを作った人でもあります。コンピュータやスマートフォンのアプリが動く仕組み(アルゴリズム)と、中学・高校の数学の「方程式」(代数)。この両方の言葉の出どころが、1200年前のバグダッドの学者だったのです。

ただし、フワーリズミーの生涯は、ほとんど分かっていません。生まれた年・場所・亡くなった年も、はっきりしません。名前の「フワーリズミー」は、「ホラズム(中央アジアのアラル海の南)の人」という意味ですが、フワーリズミー本人がそこで生まれたのか、先祖がそこの出身なのかは、研究者の意見が分かれています。このページでは、確かなことと「〜と伝えられます」「諸説あります」の話を分けて書きます。

受験生にとってのフワーリズミーは、中学・高校で習う方程式とは・二次方程式とは・解の公式とはの、大きなご先祖さまです。中学3年の二次方程式の解の公式、高校の二次関数の頂点(平方完成)は、フワーリズミーの方法の発展形です。数式の「x」の書き方については、数式の x の書き方(エックスとカイ)も読んでみてください。

うかるくん

うかるくん

「アルゴリズム」って、プログラミングの言葉ですよね。人の名前から来ているんですか?

合格先生

合格先生

そうなんだ。アル=フワーリズミーという人の名前が、ヨーロッパでラテン語に直されて「アルゴリトミ」になり、そこからアルゴリズムという言葉ができたんだ。「決まった手順で答えを出す方法」という意味だよ。そして、「代数」も、この人が書いた本の題名から生まれたんだ。

フワーリズミーの生涯と年表

名前から分かること、分からないこと

「アル=フワーリズミー」の「アル」は「〜の」、「フワーリズミー」は「ホラズムの」という意味の呼び名です。ホラズムは、今のウズベキスタンのあたりにあった地方です。ところが、歴史家タバリーが、フワーリズミーに「アル=クトゥルブッリー」というもう一つの呼び名をつけています。これは、バグダッドの近くのクトゥルブルという地区の名前です。そのため、先祖がホラズムの出身で、本人はバグダッドの近くで育ったのではないか、という考えもあります。この点について、研究者の意見は一致していません。

「知恵の館」の学者

フワーリズミーが活躍した9世紀の前半、バグダッドは、世界最大級の学問の都でした。第7代カリフのアル=マームーン(在位813〜833年)は、「知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)」という学問の研究所を大きく発展させ、ギリシャ・インド・ペルシャの本を、アラビア語に翻訳する事業を進めました。フワーリズミーは、同じ時代の学者の一族バヌー・ムーサーたちとともに、ここで働いたとされます。

カリフのすすめで書いた代数の本

フワーリズミーは、820年代〜830年ごろに、『約分と消約の計算の簡約書』(アラビア語で「キターブ・アル=ムフタサル・フィー・ヒサーブ・アル=ジャブル・ワ・ル=ムカーバラ」)という本を書きました。長い題名ですが、「ジャブル」と「ムカーバラ」の2つの方程式の変形法が題名に入っています。フワーリズミーは、序文で、アル=マームーンにすすめられて、「遺産の分配、遺言、財産の分け方、訴訟、商売、土地の測量、運河の工事など、人びとが日々の暮らしで必要とする、計算のやさしくて役に立つ部分」を、この本にまとめたと述べています。つまり、この本は、実用の計算書として書かれたのです。

インド数字の本と、天文表・地理の本

フワーリズミーは、825年ごろ、インドの数字と計算法を紹介する本も書いたとされます。このアラビア語の原本は失われましたが、12世紀にラテン語に訳された本(『インドの数についてのアルゴリトミの本』)が残っています。そのほか、インドとギリシャの天文学をもとにした天文表(『ジージュ・アッ=シンドヒンド』)、地図と地名の緯度・経度をまとめた地理の本(『大地の姿の書』)なども書いたと伝えられます。亡くなったのは850年ごろとされますが、はっきりしません。

年できごと
780年ごろ生まれたとされる(バグダッド周辺とする説、ホラズム出身とする説がある)
813年アル=マームーンがカリフになる。のちに「知恵の館」で学問が盛んになる
820年ごろ天文表(『ジージュ』)を作ったとされる
825年ごろインド数字と計算法の本を書いたとされる(アラビア語の原本は失われた)
830年ごろ『ジャブルとムカーバラの計算の簡約書』(代数の本)を書く
9世紀前半地理の本『大地の姿の書』を書く
850年ごろ亡くなったとされる(はっきりしない)
1145年ロバート・オブ・チェスターが、代数の本をラテン語に翻訳する
12世紀インド数字の本が、ラテン語(Algoritmi de numero Indorum)に訳される
1202年フィボナッチが『算盤の書』で、インド・アラビア数字をヨーロッパに広める

フワーリズミーの主な業績をやさしく解説

業績1 方程式を「6つの型」に整理した(代数の本)

フワーリズミーの代数の本の前半は、一次方程式と二次方程式の解き方の説明です。この本には、数式の記号が1つも出てきません。すべて言葉で書かれています。「xx」の代わりに「根(ジズル)」、「x2x^2」の代わりに「平方(マール)」、ふつうの数を「数(ディルハム)」とよびました。

そして、フワーリズミーは、方程式を6つの型に分けました。いまの記号で書くと、つぎのようになります。

フワーリズミーの6つの型(現代の式で)①平方=根x² = 5x②平方=数x² = 9③根=数3x = 12④平方と根=数x² + 10x = 39⑤平方と数=根x² + 21 = 10x⑥根と数=平方3x + 4 = x²負の数を使わず、正の数どうしの式で分けた
フワーリズミーの6つの型。①〜③は一次方程式や単純な二次方程式、④〜⑥が二次方程式の3つの型

なぜ6つに分けたのでしょうか。それは、フワーリズミーが負の数を使わなかったからです。たとえば、現代なら x2+10x−39=0x^2+10x-39=0 と1つの形にまとめられますが、負の数を使わない世界では、「平方と根が数に等しい」「平方と数が根に等しい」「根と数が平方に等しい」のように、正の数どうしの式で、3つの別の型にしなければなりません。この整理が、フワーリズミーの大きな仕事でした。また、これらの型の解き方のきまり(手順)を、すべて書きました。くわしい考え方は、二次方程式の解の公式と比べると分かります。

業績2 図形を使った二次方程式の解き方(平方完成)

フワーリズミーは、二次方程式を、正方形と長方形の面積を使って解きました。有名な例が、x2+10x=39x^2+10x=39 です。

x² の正方形を1つ作ります。10x を、5x の長方形2つに分けて、正方形の2辺にくっつけます。すると、右下に、1辺5の正方形のすきまができます。このすきまを埋めると、1辺が x+5x+5 の大きな正方形ができます。すきまの面積は 5×5=255\times5=25 なので、方程式の両辺に25を足すと、(x+5)2=39+25=64(x+5)^2=39+25=64 です。だから x+5=8x+5=8、x=3x=3 となります。

図形で解く x²+10x=39x²5x5x25x5x5x²+10x=3925を両方に足す(x+5)²=64x+5=8x=3(負の解は、あつかわない)39+25=64=8² だから x=8−5=3
x²+10x=39。正方形と長方形で、すきまの25を足して(x+5)²=64。x+5=8、x=3

これは、現代の中学・高校の平方完成(二次関数の頂点を求める方法)と、まったく同じ考え方です。x2+10x=(x+5)2−25x^2+10x=(x+5)^2-25 と変形して、(x+5)2=64(x+5)^2=64 とします。いまでは、(x+a)2(x+a)^2 の展開(乗法公式と因数分解の公式)を使って、式で計算します。フワーリズミーは、図形の面積を使って、同じことをしたのです。

「手順書」で解く=アルゴリズム1xの係数の半分をとる10÷2=52それを2乗する5²=253右辺の数に足す39+25=644平方根をとる√64=85はじめの半分を引く8−5=3決まった手順を、順に行えば、だれでも答えが出る
x²+10x=39を解く5つの手順。決まった手順で順に進めれば、だれでも答えが出る

この図の5つの手順は、フワーリズミーの本にある「作り方のきまり」を、現代の言葉で書きなおしたものです。「根の数(10)の半分をとり、それを2乗し(25)、数(39)に足し(64)、その平方根(8)から、はじめの半分(5)を引く」。この、だれがやっても同じ答えになる手順が、まさにアルゴリズムの考え方です。

業績3 「アル・ジャブル」と「アル・ムカーバラ」(方程式の変形)

代数の本の題名にある2つの言葉は、方程式を変形するときの、2つの操作の名前です。

  • アル・ジャブル:「完成」「復元」という意味。方程式のなかに引き算の項(足りない部分)があるとき、両辺に同じものを足して、その引き算を取りのぞく操作です。たとえば、x2=40x−4x2x^2=40x-4x^2 の両辺に 4x24x^2 を足して、5x2=40x5x^2=40x にします。
  • アル・ムカーバラ:「つり合わせ」「対比」という意味。両辺にある同じ種類の項を、引き合って減らす操作です。たとえば、50+3x+x2=29+10x50+3x+x^2=29+10x から、数を引き合わせて、21+x2=7x21+x^2=7x にします。
2つの変形:ジャブルとムカーバラアル・ジャブル(完成・移項)引かれている項を、両辺に足して取りのぞくx² = 40x − 4x²→ 両辺に 4x² を足す → 5x² = 40xアル・ムカーバラ(つり合わせ)両辺の同じ種類の項を、引き合ってへらす50 + 3x + x² = 29 + 10x→ 21 + x² = 7x
アル・ジャブルは引かれた項を両辺に足して取りのぞく。アル・ムカーバラは同じ種類の項を引き合ってへらす

いまの言葉でいえば、ジャブルは「移項して負の項をなくす」、ムカーバラは「同類項をまとめる」操作にあたります。この2つの操作で、どんな二次方程式も、さきの6つの型のどれかに整理できるのが、フワーリズミーの方法の強みでした。方程式の変形の意味の基本的な形が、すでにここで整理されていたのです。

業績4 インド・アラビア数字と位取りを広めた

フワーリズミーは、インドで生まれた0〜9の10個の数字と、位取り(数字の置かれた位置で大きさが決まるしくみ)による計算法を、本にまとめて紹介したとされます。この本のアラビア語の原本は失われましたが、12世紀にラテン語に訳された本が残っていて、書き出しが「アルゴリトミは、こう言った(Dixit Algorizmi)」で始まります。ヨーロッパの人たちは、この本を通じて、インドの数字と計算法を知りました。

インド・アラビア数字と「0」01234567890〜9の10個の数字だけで、どんな数も書ける位取りの数字305百十一ローマ数字CCCV位取りがない0があるから、3と305と3005をまちがえずに書ける(位が空いていることを示す記号が0)
0〜9の数字と位取り。0があるから、3・30・305を区別でき、筆算ができる

位取りに必要なのが0です。0は、位が空いていることを示す記号です。「305」の0があるから、「35」ではなく、百の位が3、十の位が空き、一の位が5と分かります。ローマ数字には位取りがなく、足し算やかけ算が大変でした。ローマ数字一覧表(1〜3000)と書き方を見比べると、その差がよく分かります。0の話は、「ゼロ」と「れい(零)」の違いもどうぞ。

アラビア語で0は「スィフル(空っぽ)」といいます。これがヨーロッパに伝わって、「ゼロ(zero)」と「暗号(cipher)」の両方の言葉になった、といわれます。0の計算のきまりについては、インドのブラーマグプタが先に書いていて、その本がバグダッドでアラビア語に訳された、と伝えられます。フワーリズミーは、その流れの中にいる人でした。位取りの考え方は、n進法(2進法・5進法の計算)とつながります。

業績5 「代数」と「アルゴリズム」という言葉のもと

フワーリズミーの本は、12世紀にラテン語に訳されました。1145年ごろ、イギリスの学者ロバート・オブ・チェスターが、代数の本を訳して、題名の「アル・ジャブル」を、そのまま「アルジェブラ(algebra)」と書きました。これが、英語のalgebra、日本語の代数の語源です。いっぽう、インド数字の本は、著者名「アル=フワーリズミー」が「アルゴリトミ(Algoritmi)」とラテン語に直され、のちに「アルゴリズム(algorithm)」という言葉になりました。

2つの言葉の由来人の名前から アルゴリズムアル=フワーリズミーAlgoritmi(ラテン語)algorithmアルゴリズム本の題名から 代数アル・ジャブルalgebra(ヨーロッパ)代数(algebra)
アル=フワーリズミー→Algoritmi→アルゴリズム。アル・ジャブル→algebra→代数

なお、「代数」という日本語は、19世紀に中国で作られた翻訳語が日本にも伝わったと説明されることが多く、アラビア語の意味とは別に作られた言葉です。また、数学の未知数を「x」と書く理由には、「アラビア語のシャイ(もの、未知のもの)が、スペインでxayと書かれ、その頭文字になった」という説がありますが、確かではありません(デカルトの座標と未知数xの習慣が広まったから、という説明もあります)。数式の x の書き方(エックスとカイ)もあわせて読んでみましょう。

業績6 天文表と地理の本、そして実用の数学

フワーリズミーは、天文表(ジージュ)も作りました。インドの天文学(『シンドヒンド』とよばれる、ブラーマグプタの本を含む天文書の流れ)と、ギリシャの天文学の知識をもとに、太陽・月・惑星の動きを計算する表をまとめたものです。この表には、サイン(正弦)の表や、日時計の計算も入っていたといわれます。

地理の本『大地の姿の書』では、都市や山や川の位置を、緯度と経度で表した表をまとめ、プトレマイオスの地理学を改良しました。この本は、現代の地図づくりの先がけとして、地理学の歴史で大切にされています。

フワーリズミーの本はどれも、実用を意識していました。代数の本の後半には、遺産の分け方、土地の面積、運河の掘削、商売の計算など、くらしの問題が並んでいます。「数学は人の役に立つもの」という考え方が、フワーリズミーの数学の特徴です。

フワーリズミーの名前がつく公式・定理・用語

  • アルゴリズム(algorithm):問題を解くための、決まった手順。→ n進法の変換(10進法から2進法へ)は、典型的なアルゴリズムです。
  • 代数(algebra):文字や記号を使って、方程式や数の性質を調べる数学。語源は「アル・ジャブル」。→ 文字式とは
  • 平方完成(フワーリズミーの方法):x2+bxx^2+bx を (x+b2)2−(b2)2\left(x+\dfrac b2\right)^2-\left(\dfrac b2\right)^2 に直す方法。→ 二次関数の頂点(平方完成)
  • アル・ジャブル(移項)とアル・ムカーバラ(同類項をまとめる):方程式の2つの基本の変形。→ 1次方程式の解き方
  • 二次方程式の解の公式:フワーリズミーの方法を一般の式にしたもの。→ 二次方程式の解の公式、解と係数の関係
  • インド・アラビア数字:0〜9の数字と位取り記数法。→ n進法とは
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

二次方程式は、解の公式だけに頼らず、平方完成でも解けるようにしておこう。x2+10x=39x^2+10x=39 なら「半分の5を2乗して25を足す」。この手順は、1200年前のフワーリズミーと同じだよ。

フワーリズミーの逸話と名言

「人びとが日々の暮らしで必要とする計算」

遺産、遺言、分配、訴訟、商売、土地の測量、運河の掘削など、人びとが、たがいの取引でいつも必要とする計算の、やさしくて役に立つ部分。

フワーリズミーの代数の本の序文より(意訳)(ロゼンによる英訳(1831年)などを参考に、日本語にまとめたもの。原文の一字一句の訳ではありません)

この言葉は、フワーリズミーが、なぜ代数の本を書いたのかを述べた序文の一部です。理論のための数学ではなく、日々の暮らしに役立つ数学を目指していたことが分かります。

カリフ、アル=マームーンの夢

「知恵の館」をつくったカリフのアル=マームーンには、夢の中でアリストテレスが現れ、知識の大切さを説いたという話が伝えられています。この話は、後世の記録にある逸話で、実話かどうかは確かではありません。ただ、このような話が語られるほど、学問を大切にする空気が、バグダッドにあったことは確かだと考えられています。フワーリズミーの本は、その空気の中で生まれました。

「代数の父」はだれか

フワーリズミーは、よく「代数の父」とよばれます。ところが、ディオファントス(3世紀ごろ)も「代数の父」とよばれることがあります。ディオファントスは、記号を使って式を書き、整数の方程式を調べた人です。ふたりの「父」の考え方はちがい、ディオファントスは記号と整数の個別の問題、フワーリズミーは方程式の一般的な型とその解き方に特徴があります。どちらを「父」とするかは、専門家のあいだでも意見が分かれています。

12世紀のラテン語訳の「書き出し」

インド数字の本のラテン語訳は、「アルゴリトミは、こう言った」で始まります。ヨーロッパの人びとは、この人物を、「アルゴリトミ」という名前の、立派な学者として尊敬しました。やがて、「アルゴリトミの方法」が、「決まった手順で計算する方法」全般を指すようになり、アルゴリズムという言葉になったのです。

サクラちゃん

サクラちゃん

1200年前の人の名前が、今のスマホのアプリにも関係しているなんて、びっくりです……!

合格先生

合格先生

そうだね。手順を決めて、その通りに計算する。それがアルゴリズムで、スマホも検索サイトも、すべてその積み重ねで動いているんだ。受験勉強も同じだよ。問題の解き方を「手順書」にして、くり返し練習すると、本番でも落ち着いて解ける。フワーリズミーの本は、そのお手本だね。

受験・勉強とフワーリズミーのつながり

中学受験:文字を使わない「方程式の考え方」

中学受験では、方程式は習いませんが、つるかめ算・差集め算・消去算など、方程式の考え方が、算数の形で出てきます。フワーリズミーの「ジャブル(足して引き算を消す)」と「ムカーバラ(引き合う)」は、消去算の、両辺から同じものを引く考え方と、同じです。つるかめ算の解き方、帰一算の解き方などで練習してみましょう。インド式かけ算はインド式かけ算のやり方一覧にも載せています。

高校受験:二次方程式・平方完成・解の公式

中学3年の二次方程式は、まさにフワーリズミーが体系化した内容です。因数分解で解く方法、平方完成で解く方法、解の公式で解く方法の3つを、使い分けられるようにしましょう。二次方程式の解の公式、乗法公式と因数分解の公式、解と係数の関係を練習します。文章題では、方程式を立てる力が問われます。

大学受験:二次関数・二次方程式・n進法・アルゴリズム

高校数学では、二次関数の平方完成(頂点を求める)が、あらゆる単元の基本です。そのほか、n進法(2進法への変換)や、アルゴリズム(情報の科目、共通テスト「情報I」)でも、フワーリズミーの考え方が登場します。難関大の整数問題・方程式の問題の出方は、京大理系数学の出題分析(整数問題の出方)で確かめられます。

勉強法として:「手順書」を作る

フワーリズミーの方法には、勉強のヒントがあります。それは、問題の解き方を、「手順書」(アルゴリズム)にして、ことばで書いておく方法です。たとえば、「二次方程式の解き方」を、「①因数分解できるか見る、②できなければ解の公式、③答えを代入して確かめる」のように、手順にしておく。こうすると、迷ったときに、すぐに戻れるようになります。数学の勉強法は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

フワーリズミーがその後の数学にあたえた影響

  • 代数学の出発点:フワーリズミーの本は、イスラム世界で、ウマル・ハイヤーム(三次方程式の幾何学的な解法)へ受けつがれ、12世紀にヨーロッパへ伝わりました。のちに、カルダノ・タルタリアの三次方程式の解法、ヴィエトの文字式(記号代数)へと発展しました。
  • インド・アラビア数字の普及:フワーリズミーの本から、ヨーロッパへ位取りの数字が伝わり、フィボナッチが1202年の『算盤の書』で広めました。いまの筆算は、ここから始まります。
  • アルゴリズムの考え方:決まった手順で計算する考え方は、19世紀のエイダ・ラブレス(最初のプログラムを書いた人)、20世紀のチューリング(計算できるとは何かを定義した人)をへて、現代のコンピュータの基礎になりました。
  • 地理・天文学:フワーリズミーの天文表と地理の表は、イスラム世界の天文学・地図学の出発点のひとつになりました。
  • 翻訳と学問の継承:ギリシャ・インドの数学を、アラビア語に取り入れて発展させた「知恵の館」の仕事は、のちにヨーロッパでルネサンスが起こる土台になりました。

代数の「文字で表す」考え方は、ユークリッドの『原論』の図形中心の数学とは、別の方向の発展でした。数学の記号の意味は、数学でよく使う記号の意味一覧(Σ・∫・≡)、時計の数学は、理系時計(GeekClock)の数式の意味にも書いています。数学の公式を1つずつ確かめたいときは、算数・数学の公式一覧(公式辞典)もどうぞ。

フワーリズミーに挑戦!練習問題

やさしい

  1. フワーリズミーの方法で、x2+8x=33x^2+8x=33 の正の解を求めなさい。
    答えと解説を見る半分の4をとり、2乗して16。33+16=49。√49=7。7−4=x=3。(確かめ:3²+8×3=9+24=33)
  2. x2=40x−4x2x^2=40x-4x^2 を、アル・ジャブル(両辺に同じものを足す)で整理し、正の解を求めなさい。
    答えと解説を見る両辺に4x²を足して 5x²=40x。両辺を5xで割って(x>0)x=8。(確かめ:64=320−256=64)

ふつう

  1. x2+21=10xx^2+21=10x を解きなさい。(フワーリズミーの第5の型)
    答えと解説を見る(x−5)²=25−21=4 より x−5=±2。よって x=3、7。(確かめ:9+21=30=10×3、49+21=70=10×7)フワーリズミーは、この型は2つの正の解があることも書いています。
  2. x2+10x−39=0x^2+10x-39=0 を解の公式で解きなさい。(フワーリズミーの例と比べなさい)
    答えと解説を見るx=−10±100+1562=−10±162x=\dfrac{-10\pm\sqrt{100+156}}{2}=\dfrac{-10\pm16}{2} より x=3、−13。フワーリズミーは、負の数を扱わないので、正の解 x=3 だけを答えとしました。

むずかしい

  1. x2+bx=cx^2+bx=c(b、cは正の数)の正の解を、フワーリズミーの手順をそのまま式にして表しなさい。
    答えと解説を見る半分は b2\dfrac b2、2乗して b24\dfrac{b^2}{4}、cに足して c+b24c+\dfrac{b^2}{4}、平方根をとって引く。x=x=c+(b2)2−b2\sqrt{c+\left(\dfrac b2\right)^2}-\dfrac b2。b=10、c=39 なら √(39+25)−5=3 と、図の手順と一致します。
  2. 次のアルゴリズムで、10進法の13を2進法で表しなさい。「2で割って余りを書く。商が0になるまでくり返し、余りを下から順に読む」
    答えと解説を見る13÷2=6 余り1、6÷2=3 余り0、3÷2=1 余り1、1÷2=0 余り1。下から読んで 1101(2進法)。確かめ:8+4+0+1=13。

フワーリズミーと関係する数学者

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中世(インド・アラビア・中国)の数学者

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有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

フワーリズミーは何をした人ですか?

フワーリズミーは、9世紀のバグダッドで活躍した数学者・天文学者・地理学者です。方程式の解き方を体系化した代数の本で「代数(algebra)」の語源を作り、名前が「アルゴリズム」の語源にもなりました。インド・アラビア数字を広めるきっかけとなった本も書きました。

アルゴリズムの語源はフワーリズミーですか?

はい。アル=フワーリズミーという名前が、ラテン語で「アルゴリトミ」と書かれ、のちに「決まった手順で計算する方法」を意味するアルゴリズム(algorithm)という言葉になりました。12世紀にラテン語に訳されたインド数字の本が、「アルゴリトミは、こう言った」で始まります。

代数(algebra)の語源は何ですか?

フワーリズミーの本の題名に出てくる「アル・ジャブル(完成・復元)」です。12世紀にラテン語に訳されたときに「アルジェブラ」と書かれ、英語のalgebraになりました。日本語の「代数」は、19世紀に中国で作られた翻訳語が伝わったとされます。

アル・ジャブルとアル・ムカーバラとは何ですか?

方程式の2つの変形です。アル・ジャブルは、引かれている項を両辺に足して取りのぞく操作(移項)、アル・ムカーバラは、両辺の同じ種類の項を引き合ってへらす操作(同類項をまとめる)です。この2つで、二次方程式を6つの型に整理しました。

フワーリズミーはどうやって二次方程式を解いたのですか?

正方形と長方形の面積を使って解きました。たとえばx²+10x=39なら、x²の正方形と、5×xの長方形2つに、1辺5の正方形(面積25)を足して、1辺x+5の大きな正方形を作ります。面積は39+25=64なので、x+5=8、x=3です。今の平方完成と同じ考え方です。

フワーリズミーは何歳で、どこで亡くなりましたか?

850年ごろ、バグダッドで亡くなったとされますが、生まれた年・場所・亡くなった年とも、はっきりした記録がありません。780年ごろの生まれとすると、およそ70歳です。出身地もホラズムとする説、バグダッド近郊とする説があります。

フワーリズミーは「代数の父」ですか?

よくそうよばれますが、ディオファントス(3世紀ごろ)も「代数の父」とよばれることがあります。ディオファントスは記号を使って整数の方程式を調べた人、フワーリズミーは方程式の型を整理して一般的な解き方を示した人で、どちらを父とするかは意見が分かれています。

フワーリズミーの名言はありますか?

代数の本の序文で、人びとが日々の暮らしで必要とする、遺産の分配・商売・土地の測量などの、やさしくて役に立つ計算をまとめたと述べています。ただし、現代の日本語訳は意訳で、原文を一字一句訳したものではありません。

フワーリズミーはインド・アラビア数字とどう関係しますか?

825年ごろ、インドの数字と位取りの計算法を紹介する本を書いたとされます。アラビア語の原本は失われましたが、12世紀のラテン語訳が残り、ヨーロッパに位取りの数字が伝わるきっかけになりました。その後、フィボナッチが1202年に広めました。

フワーリズミーは受験とどう関係しますか?

中学3年の二次方程式(平方完成・解の公式)、高校の二次関数(頂点を求める平方完成)、n進法の変換や情報のアルゴリズムの問題などが関係します。フワーリズミーの手順をそのまま使えば、x²+bx=cの解がだれでも求められます。

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出典・参考

  • J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Abu Ja’far Muhammad ibn Musa Al-Khwarizmi”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
  • F. Rosen(訳), “The Algebra of Mohammed ben Musa”(1831年)
  • G. J. Toomer, “al-Khwarizmi”, Dictionary of Scientific Biography(1970年)
  • R. Rashed, “Al-Khwarizmi: The Beginnings of Algebra”(2009年)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦