フィボナッチは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|算盤の書・ウサギの問題・黄金比

フィボナッチは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|算盤の書・ウサギの問題・黄金比

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フィボナッチFibonacci

ひとことで言うと

『算盤の書』で算用数字(0〜9)と位取りをヨーロッパに広めた中世の数学者。ウサギの問題からフィボナッチ数列が知られるようになった。

名前ピサのレオナルド(通称フィボナッチ、Leonardo Pisano / Fibonacci)
生没年1170年ごろ〜1250年ごろ(はっきりした年は分かっていません)
国イタリア(ピサ生まれ。北アフリカのブギーで学ぶ)
分野数論・算術・代数・商業計算
主な業績『算盤の書』(1202年)で算用数字と筆算を紹介、ウサギの問題(フィボナッチ数列)、『平方の書』、『実用幾何学』
名前がつくものフィボナッチ数・フィボナッチ数列・ブラーマグプタ=フィボナッチの恒等式・フィボナッチ・クォータリー
よばれ方「フィボナッチ」は19世紀に使われはじめた呼び名。本人は「ピサのレオナルド」「ビゴロ」と名乗った

このページのポイント

  • 1202年の『算盤の書』で、0〜9の算用数字と位取りの筆算をヨーロッパの商人に紹介した。インド・アラビアの数学を西へ伝えた橋わたし役
  • 本のウサギの問題から生まれた 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13…(フィボナッチ数列)は、階段の上り方・黄金比・ひまわりの渦につながる
  • 「フィボナッチ」の呼び名は19世紀のもの。数列はインドで先に知られていたとも。自然界の例は「多いが全部ではない」

フィボナッチは何をした人?(業績をひとことで)

フィボナッチ(1170年ごろ〜1250年ごろ、本名ピサのレオナルド)は、中世イタリアの数学者です。1202年に書いた『算盤の書(リベル・アバチ)』で、0から9までの10個の数字(算用数字)と位取りの計算をヨーロッパに広めました。この本に載っていた「ウサギのつがいの問題」から生まれた数の並び(1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21…)が、フィボナッチ数列です。

受験では、フィボナッチ数列は「階段を1段または2段ずつのぼるときの上り方」という形で、中学受験から大学入試までよく出ます。階段の上り方とフィボナッチ数の求め方は、規則性・場合の数の定番です。大学入試では数列とはの漸化式、黄金比と白銀比、互除法、数学的帰納法などの問題で、フィボナッチ数が主役になります。

ただし、フィボナッチ本人の記録は少なく、有名な話のなかには「〜と伝えられます」「諸説あります」の部分があります。たとえば「フィボナッチ」という呼び名自体、本人の死後600年近くたった19世紀に使われはじめたものといわれ、本人は「ピサのレオナルド」と名乗っていました。このページでは、確かな事実と、そうでない話を分けて書きます。

うかるくん

うかるくん

フィボナッチ数列って、花びらの数が全部これになるって聞きました。本当ですか?

合格先生

合格先生

花びらの数はふつうの花で3, 5, 8, 13…が多いのは本当。でも、必ずそうなるわけじゃなく、例外もたくさんあるんだ。「自然の中にはフィボナッチ数が多い、でも全部ではない」と覚えておこう。理由は、あとの章で図で説明するよ。

フィボナッチをえがいた19世紀の想像画
19世紀にえがかれたフィボナッチの想像画(生前の肖像は伝わっていないため、後の時代の想像による絵です)画像:19世紀の画家(不詳)/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

フィボナッチの生涯と年表

ピサの商人の子として北アフリカへ

レオナルドは、1170年ごろ、イタリアの港町ピサで生まれたとされます。父ボナッチョ(グリエルモ)は、ピサの商人たちの代表として、北アフリカのブギー(今のアルジェリアのベジャイア)で、税関の役人を務めていました。レオナルドは、少年のころ父に呼ばれてブギーに渡り、アラビアの先生から計算の方法を習ったと、自分の本の中に書いています。

ここで学んだのが、インドで生まれ、アラビアの世界で発展した算用数字による計算(0〜9の10個の数字と位取りの考え)でした。当時のヨーロッパでは、ローマ数字(I, V, X, L, C, D, M)を使い、計算はそろばん(アバクス)のような計算盤で行っていました。レオナルドは、商人たちの旅について、エジプト、シリア、ギリシャ、シチリア、プロヴァンスなど、地中海の国々をおとずれ、各地の計算方法をくらべたと伝えられます。

『算盤の書』(1202年)

1202年、レオナルドはピサにもどって『算盤の書(Liber Abaci)』を書きました。題に「算盤」とありますが、そろばんの本ではなく、算用数字を使った「計算全般」の本です。全15章で、数字の書き方、たし算・ひき算・かけ算・わり算、分数、商売の利益や両替の計算、合金の配合、方程式の解き方、平方根などが、たくさんの練習問題とともに書かれています。第12章に、後に有名になったウサギの問題があります。1228年には、改訂版が出されたことが知られています。

皇帝フリードリヒ2世との出会い

『算盤の書』が評判になり、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の宮廷の人たちが、1225年ごろにピサをおとずれた際、レオナルドに数学の問題を出して試した、と伝えられます。その中には、3次方程式 x3+2x2+10x=20x^3+2x^2+10x=20 の解を求める問題があり、レオナルドは60進法の小数で、およそ 1.3688 という近い値を答えたといわれます。この答えは、実際の解(1.36880810…)によく合っています。その後、『平方の書』『実用幾何学』『花』などを書き、1240年代にピサ市から年金が出されたという記録がありますが、正確な亡くなった年は分かっていません。

年できごと
1170年ごろイタリアのピサで生まれたとされる
12世紀末父のいる北アフリカのブギーで、アラビア人の先生から算用数字の計算を習う
12世紀末〜エジプト・シリア・ギリシャ・シチリア・プロヴァンスなどをめぐったと伝えられる
1202年『算盤の書(リベル・アバチ)』を書く。算用数字とウサギの問題
1220年ごろ『実用幾何学』を書く
1225年ごろ皇帝フリードリヒ2世の宮廷の数学者たちと問題を出しあう。『平方の書』『花』を書く
1228年『算盤の書』の改訂版を書く
1240年代ピサ市が功績を認めて年金を出した、という記録がある
1250年ごろ亡くなったとされる(正確な年は不明)
1838年フランスの数学者リブリが「フィボナッチ」の呼び名を使いはじめたといわれる(諸説あり)
19世紀後半リュカが、ウサギの問題の数の並びを「フィボナッチ数列」と名づけたとされる
1963年アメリカでフィボナッチ協会がつくられ、研究誌『フィボナッチ・クォータリー』が創刊される

フィボナッチの主な業績をやさしく解説

業績1 算用数字(0〜9)と位取りをヨーロッパに広めた

『算盤の書』の第1章は、次のような言葉ではじまります(ラテン語からの意訳)。「インドの9つの数字は、9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1です。この9つの数字と、アラビア語で『ゼフィルム』とよばれる記号0で、どんな数でも書けます」。この「ゼフィルム」が、のちの英語の zero や cipher のもとになったといわれます。

10個の数字で、どんな数も書ける0123456789ゼロ0 が「位取り」を可能にした(ゼフィルム → ゼロ)ローマ数字 M C C I Iたし算・かけ算は面倒算用数字 1 2 0 2位取りで筆算ができる(同じ数 1202年)
10個の数字と位取りで、どんな数も短く書けて筆算もできる。ローマ数字MCCIIは算用数字の1202

ローマ数字の計算は、とても面倒です。たとえば MCCII(1202)に XXXIV(34)をかけるには、そろばん(計算盤)が必要でした。算用数字なら、紙とペンで筆算ができます。この便利さが商人に評判になり、数百年かけて、ヨーロッパ全体に広まりました。ただし、レオナルドの本だけで広まったのではなく、ほかの本や、商人たちの実際の取引のなかで広まった面も大きいと考えられています。数字の歴史は、ローマ数字一覧表(1〜3000)と書き方や「ゼロ」と「れい(零)」の違いでも読めます。

アラビアの数学を紹介した先人に、アル=フワーリズミー(アルゴリズムの語源)がいます。算用数字の考えそのものは、インドのアーリヤバタやブラーマグプタ(0の計算規則)らが築いたものを、アラビア世界が受けついだものです。フィボナッチは、それをヨーロッパの商人が使える形で説明した人でした。

業績2 ウサギの問題とフィボナッチ数列

『算盤の書』第12章の問題は、次のようなものです(意訳)。「1つがいのウサギを、かこいの中に入れる。ウサギは、1か月ごとに1つがいの子を産み、生まれた子も、産まれて2か月目から子を産む。1年後には、何つがいになるか」。ウサギは死なないものとします。

ウサギのつがいの増え方はじめ1つがい1か月後2つがい2か月後3つがい3か月後5つがい4か月後8つがい5か月後13つがい● おとな○ 子ども1,2,3,5,8,13…
おとな●は毎月、子ども○を1組産む。子どもは1か月でおとなになる。つがいは1, 2, 3, 5, 8, 13…と増える

図のように、各月のつがいの数は、前の月とその前の月の数の和になります(おとなの数は前の月の全部、新しい子どもの数は前の月のおとなの数だからです)。1年後(12か月後)には、377つがいになる、とレオナルドは書いています。この数の並びが次のとおりで、F1=1, F2=1F_1=1,\ F_2=1 から、Fn+2=Fn+1+FnF_{n+2}=F_{n+1}+F_n で作れます。

1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, ⋯1,\ 1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 8,\ 13,\ 21,\ 34,\ 55,\ 89,\ 144,\ 233,\ 377,\ \cdots

こうした「前の項から次の項を決める式」を数列の漸化式といいます。ただし、実際のウサギは、こんなふうには増えません(現実の動物の数はもっと複雑です)。レオナルドも、数学の練習問題として出しただけで、この数列を深く調べたわけではなかったようです。数列が本格的に調べられたのは、19世紀にオイラーらの公式が再発見され、フランスの数学者リュカ(エドゥアール・リュカ)が研究してからです。

また、この数の並びは、インドで先に知られていたともいわれます。サンスクリット語の詩では、短い音と長い音(1拍と2拍)を組みあわせた詩の型の数を数える必要があり、その数が1, 2, 3, 5, 8…となるため、ヴィラハーンカ(7世紀ごろ)やヘーマチャンドラ(12世紀ごろ)らの本に、同じ規則が書かれています。フィボナッチより数百年前のことです。

業績3 階段の上り方とフィボナッチ数

受験で最もよく出るのが、階段の上り方です。1回に1段または2段ずつのぼるとき、nn 段の階段を上る方法の数 ana_n を考えます。最後の一歩が「1段」なら、その前は (n−1)(n-1) 段で an−1a_{n-1} 通り、「2段」なら、その前は (n−2)(n-2) 段で an−2a_{n-2} 通りです。したがって、次の式が成り立ちます。

an=an−1+an−2a_n=a_{n-1}+a_{n-2}
階段の上り方1段か2段ずつ段数 → のぼり方1段→1通り2段→2通り3段→3通り4段→5通り5段→8通り6段→13通りn段 = (n−1段) + (n−2段)最後の1歩が「1段」か「2段」かで分ける
1段か2段ずつのぼる。1段で1通り、2段で2通り、3段で3通り、4段で5通り、5段で8通り

1段で1通り、2段で2通り(1+1、2)、3段で3通り(1+1+1、1+2、2+1)、4段で5通り、5段で8通り、と、まさにフィボナッチ数です。くわしくは階段の上り方の数え方と問題で練習できます。同じ形の問題には、2×n の長方形を1×2のタイルでうめる方法の数、1と2の和で n を表す方法の数、「連続して使えない」条件の並べ方などがあります。見かけがちがっても、「最後の部分で場合分けして、小さい問題に分ける」という考え方は同じです。

業績4 黄金比とのつながり

フィボナッチ数のとなり合う数の比(次の数÷前の数)を計算すると、1, 2, 1.5, 1.666…, 1.6, 1.625, 1.6153…, 1.6190…と、上下にゆれながら、ある値に近づいていきます。その値が黄金比 φ=1+52=1.6180339⋯\varphi=\dfrac{1+\sqrt5}{2}=1.6180339\cdots です。

となり合う比は黄金比へ黄金比 1.618…121/12/13/2…次の数 ÷ 前の数(1, 2, 1.5, 1.67, 1.6, 1.625, …)
次の数÷前の数は、1, 2, 1.5, 1.67, 1.6…とゆれながら、黄金比1.618…に近づく

フィボナッチ数を辺の長さにした正方形を、1, 1, 2, 3, 5, 8と順にならべていくと、きれいな長方形ができ、各正方形に四分円をかくと渦まきの曲線になります。この形は黄金のらせんによく似ています(厳密には少しちがいます)。

フィボナッチ数の正方形と渦まき1123581・1・2・3・5・8・13 … 前の2つを足して次の正方形
1・1・2・3・5・8の正方形をならべて四分円をつなぐと、渦まきの曲線ができる

この関係は、17世紀のケプラーがすでに気づいていた、と伝えられます。黄金比 φ\varphi は、方程式 x2=x+1x^2=x+1 の正の解です。フィボナッチ数列の漸化式 Fn+2=Fn+1+FnF_{n+2}=F_{n+1}+F_n と、よく似た形をしていることが分かります。実は、nn 番目のフィボナッチ数は、次の式で直接求められます(ビネの公式)。

Fn=15{(1+52)n−(1−52)n}F_n=\frac{1}{\sqrt5}\left\{\left(\frac{1+\sqrt5}{2}\right)^n-\left(\frac{1-\sqrt5}{2}\right)^n\right\}

整数ばかりの数列に、5\sqrt5 が出てくるのは、おどろきです。この式は、大学入試の特性方程式の問題の定番です。黄金比そのものについては、黄金比と白銀比の求め方や、理系時計(GeekClock)の数式の意味の記事でも読めます。

業績5 自然の中のフィボナッチ数と、ひまわりの渦

花びらの数は、ユリ・アヤメが3枚、キンポウゲが5枚、コスモスが8枚、マリーゴールドが13枚、キクの仲間が21枚や34枚など、フィボナッチ数であることが多い、といわれます。松ぼっくりのうろこの渦は、右まわり8本・左まわり13本、ひまわりの種は、右まわり34本・左まわり55本といった形になる例が、よく紹介されます。

ひまわりの種のならび1つずつ約137.5°(黄金角)回して置く渦の本数は 34 と 55 などフィボナッチ数になりやすい
約137.5°ずつ回して種を置くと、すきまなく渦ができ、渦の本数がフィボナッチ数になりやすい

この理由として、黄金角が知られています。1周360度を黄金比 φ\varphi で分けた角度が、360°×(1−1φ)≈137.5°360°\times\left(1-\dfrac{1}{\varphi}\right)\approx137.5° です。新しい種を、前の種から約137.5度ずつ回して置いていくと、種が重ならず、すきまなく詰まります。このとき、渦の本数が、黄金比にきわめて近い、となり合うフィボナッチ数の比から、決まるのです。

ただし、自然界のすべてがフィボナッチ数になるわけではありません。花びらの数は、種類や個体によってちがい、フィボナッチ数でない例も多数あります。「数学が自然の姿を説明する」ことの面白い例として、慎重に受けとめておきたい話題です。

業績6 『平方の書』と数論

1225年の『平方の書(Liber quadratorum)』は、フィボナッチの数論の最高傑作とされます。平方数(1,4,9,16,⋯1, 4, 9, 16,\cdots)の性質を調べた本で、たとえば、連続する奇数の和は平方数になる(1+3+5+7=16=421+3+5+7=16=4^2)、という規則や、「2つの平方数の和どうしの積も、2つの平方数の和で表せる」という次の式が登場します。

(a2+b2)(c2+d2)=(ac−bd)2+(ad+bc)2(a^2+b^2)(c^2+d^2)=(ac-bd)^2+(ad+bc)^2

この式は、「ブラーマグプタ=フィボナッチの恒等式」とよばれ、複素数の絶対値の積の性質(∣z1z2∣=∣z1∣∣z2∣|z_1z_2|=|z_1||z_2|)につながります。フィボナッチは、ディオファントスが研究した整数の方程式を、ヨーロッパで受けついだ数学者でもありました。

フィボナッチの名前がつく公式・定理・用語

  • フィボナッチ数・フィボナッチ数列:1,1,2,3,5,8,⋯1,1,2,3,5,8,\cdots。Fn+2=Fn+1+FnF_{n+2}=F_{n+1}+F_n。→ 階段の上り方とフィボナッチ数
  • ビネの公式:FnF_n を黄金比で表す式。5\sqrt5 が出てくる。→ 黄金比と白銀比
  • フィボナッチ数の和:F1+F2+⋯+Fn=Fn+2−1F_1+F_2+\cdots+F_n=F_{n+2}-1。入試の帰納法・漸化式の定番。
  • カッシーニの恒等式:Fn−1Fn+1−Fn2=(−1)nF_{n-1}F_{n+1}-F_n^2=(-1)^n。有名な「消えるマス目」のパズルのもと。
  • ゼッケンドルフの定理:どんな自然数も、となり合わないフィボナッチ数の和で、ただ1通りに表せる。例:100=89+8+3100=89+8+3。
  • フィボナッチ数と最大公約数:gcd⁡(Fm,Fn)=Fgcd⁡(m,n)\gcd(F_m,F_n)=F_{\gcd(m,n)}。→ ユークリッドの互除法とフィボナッチ数
  • 黄金のらせん・黄金角(約137.5°):自然界の渦巻きに見られる形。
  • フィボナッチ・クォータリー:フィボナッチ協会が1963年から出している研究雑誌。
  • ブラーマグプタ=フィボナッチの恒等式:(a2+b2)(c2+d2)=(ac−bd)2+(ad+bc)2(a^2+b^2)(c^2+d^2)=(ac-bd)^2+(ad+bc)^2。
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

フィボナッチ数列は、1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144 までは暗記しておこう。階段の問題を見たら「最後の1歩で場合分け」→「前の2つを足す」の形になるかを、まず考えるんだ。

フィボナッチの逸話と名言

「ビゴロ」とよばれたレオナルド

レオナルド本人は、自分の本で「ピサのレオナルド」「ビゴロ(Bigollo)」と名乗っていたとされます。ビゴロの意味は「旅人」とも、「でくのぼう」ともいわれ、はっきりしません。後者の場合、「商人のあいだではそういわれたが、やがて数学の先生として尊敬された」という見方もありますが、これも推測の域を出ません。「フィボナッチ(ボナッチョの息子)」という呼び方は、冒頭でのべたとおり、19世紀になってからのものです。

インドの9つの数字は、9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1です。この9つの数字と、アラビア語でゼフィルムとよばれる記号0で、どんな数でも書けます。

フィボナッチ『算盤の書』第1章のはじめ(ラテン語の原文から意訳したもの。ここから算用数字がヨーロッパに広まった、と説明されます)

ウサギは死なない?

ウサギの問題は、「ウサギは死なない」「必ず毎月1組の子を産む」という、現実にはありえない仮定でできています。それでも、仮定を決めて、数学の問題にすることで、数列の規則が見えます。入試の問題でも、「次のような規則にしたがって増えるとする」と条件を書くのは、同じ考え方です。

見かけは同じ、ふしぎな消えるマス目

カッシーニの恒等式を使ったパズルが、昔から有名です。8×8の正方形を4つの部分に切り分けて並べかえると、5×13の長方形になりますが、面積は64から65に増えてしまうように見えます。実は、並べた図形の対角線に、よく見ると目立たない細長いすきまがあり、面積は変わっていません。図形の「見かけ」をうたがう練習として、数学の授業でよく紹介されます。

フィボナッチ数は、互除法がいちばん苦手

互除法(ユークリッドの互除法)の割り算の回数が、いちばん多くなるのは、となり合う2つのフィボナッチ数のときだと知られています(ラメの定理、1844年)。たとえば、(89, 55) の最大公約数を求めると、89=55×1+34、55=34×1+21、34=21×1+13…と、ずっと商が1のまま続き、10回近く割ることになります。計算が一番「遅く」なる例が、フィボナッチ数なのです。

サクラちゃん

サクラちゃん

階段の問題に、ウサギの数列と黄金比と、ひまわりまで全部つながってるなんて、びっくりです!

合格先生

合格先生

そうなんだ。「前の2つを足す」という、小学生でも分かるルールが、数学のあちこちに顔を出す。だから入試にも出るし、研究者も今でも調べているんだよ。まず1, 1, 2, 3, 5, 8…と自分で書いてみて、規則を見つけることが大事だね。

受験・勉強とフィボナッチのつながり

中学受験:規則性・階段・場合の数

中学受験の算数では、「階段を1段または2段ずつ上る方法」「1と2だけで整数を作る方法」「ぬりわけ」などの問題で、フィボナッチ数が出ます。「数を書き出して、規則を見つける」ことが基本です。1, 2, 3, 5, 8と書いたところで、「前の2つの和になっている」と気づけば、一気に解けます。階段の上り方の解き方で練習しましょう。

高校受験:規則性の文章題と黄金比

高校受験では、図形や数の並びの規則を調べる文章題で、フィボナッチ数が使われることがあります。黄金比(正五角形の対角線と辺の比、長方形の分割)の問題も出ます。黄金比の問題と解き方を確認しておきましょう。

大学受験:漸化式・帰納法・極限・整数

大学入試では、an+2=an+1+ana_{n+2}=a_{n+1}+a_n の形の3項間漸化式を、特性方程式 x2=x+1x^2=x+1 で解く問題が出ます。ほかにも、次のような問題があります。

  • 数学的帰納法:和の公式 F1+⋯+Fn=Fn+2−1F_1+\cdots+F_n=F_{n+2}-1 の証明。
  • 互いに素:となり合う FnF_n と Fn+1F_{n+1} が互いに素であることの証明(互除法を使う)。
  • 極限:lim⁡n→∞Fn+1Fn=1+52\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{F_{n+1}}{F_n}=\dfrac{1+\sqrt5}{2} を示す。数列の極限の公式と問題
  • 場合の数:タイルの敷きつめ、「連続しない」条件の並べ方、確率の漸化式。

難関大の数列・整数問題でも、フィボナッチ数が題材になることがあります。京大理系数学の出題分析(数列・整数の出方)もあわせて見てみましょう。

勉強法として:「小さい場合を書き出す」

フィボナッチの問題の解き方は、いつも同じです。①1段、2段、3段と、小さい場合を実際に書き出す。②規則を見つける。③なぜそうなるのか、理由を考える。④式にする。この流れが身についていると、見たことのない問題でも手がかりが見つかります。数学の勉強法は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も読んでみてください。

フィボナッチがその後の数学にあたえた影響

  • 算用数字と筆算:商人の計算から始まった算用数字の普及は、ヨーロッパの商業・銀行・会計の発展を支えました。複式簿記などの発展にもつながったといわれます。
  • 代数学のヨーロッパ導入:『算盤の書』は、アラビアの代数(アル=フワーリズミー)をヨーロッパに紹介し、のちのタルタリア・カルダノによる3次方程式の解法につながる土台になりました。
  • 数列の研究:19世紀のリュカの研究以後、フィボナッチ数は整数論・組合せ論・計算機科学で研究される対象になり、1963年からは専門の雑誌も出ています。
  • コンピュータ:フィボナッチ数は、プログラミングの入門(再帰関数)の定番の題材です。フィボナッチ・ヒープ、探索法などの名前にも使われています。
  • 自然界と芸術:花・貝・松ぼっくりの形を数学で説明する「葉序(ようじょ)論」や、黄金比を使った建築・デザインの話題にもつながります。
  • 最大公約数の研究:互除法の回数の上限(ラメの定理)では、フィボナッチ数が最悪の例になるため、ユークリッドの互除法の研究が深まりました。

なお、ウサギの問題は『算盤の書』の数百ある問題のひとつにすぎません。フィボナッチが歴史に残ったいちばんの理由は、数列ではなく、算用数字をヨーロッパの人に分かりやすく教えたことだといわれます。

フィボナッチに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 1, 1, 2, 3, 5, 8, □, □, 34, … の□に入る数を答えなさい。
    答えと解説を見る前の2つを足すと次の数になります。5+8=13、8+13=21。(21+13=34 で確かめられます)
  2. 1回に1段または2段ずつ階段をのぼるとき、4段をのぼる方法は何通りありますか。
    答えと解説を見る1段、2段、3段は1, 2, 3通り。4段は、3段の3通りと2段の2通りの和で5通り。(1111、112、121、211、22)

ふつう

  1. 2×5のマス目を、1×2の長方形のタイル(たてでも横でもよい)で、すき間なく、重ならないようにしきつめる方法は何通りですか。
    答えと解説を見る2×nの場合を ana_n とします。左はしにたてに1枚置くと残りは2×(n−1)、横に2枚重ねて置くと残りは2×(n−2)なので、an=an−1+an−2a_n=a_{n-1}+a_{n-2}。a1=1a_1=1、a2=2a_2=2 から、1, 2, 3, 5, 8。答えは8通り。
  2. 1回に1段または2段ずつ階段をのぼるとき、7段をのぼる方法は何通りありますか。
    答えと解説を見る段数ごとの方法は 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21。7段は21通り。(前の2つの和をくり返します)

むずかしい

  1. フィボナッチ数を F1=F2=1F_1=F_2=1、Fn+2=Fn+1+FnF_{n+2}=F_{n+1}+F_n とします。F1+F2+⋯+F10F_1+F_2+\cdots+F_{10} を求めなさい。
    答えと解説を見るF1F_1 から F10F_{10} は 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55。和は 143。(F12=144F_{12}=144 なので、公式 Fn+2−1=144−1=143F_{n+2}-1=144-1=143 と一致)
  2. となり合うフィボナッチ数 FnF_n と Fn+1F_{n+1} が互いに素であることを、互除法を使って示しなさい。
    答えと解説を見るFn+1=Fn+Fn−1F_{n+1}=F_n+F_{n-1} より、gcd⁡(Fn+1,Fn)=gcd⁡(Fn,Fn−1)\gcd(F_{n+1},F_n)=\gcd(F_n,F_{n-1})。これをくり返すと、gcd⁡(F2,F1)=gcd⁡(1,1)=1\gcd(F_2,F_1)=\gcd(1,1)=1 に行きつきます。したがって、最大公約数は1で、互いに素です。

フィボナッチと関係する数学者

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中世(インド・アラビア・中国)の数学者

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よくある質問

フィボナッチは何をした人ですか?

フィボナッチは、中世イタリアの数学者で、本名はピサのレオナルドです。1202年の『算盤の書』で、0から9までの算用数字と位取りの計算をヨーロッパに広めました。この本のウサギの問題から、フィボナッチ数列が知られるようになりました。

フィボナッチ数列とは何ですか?

1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21…と、前の2つの数を足して次の数をつくる数の並びです。ウサギのつがいが増える問題から生まれたとされ、階段の上り方、黄金比、ひまわりの種の渦などと関係します。

フィボナッチ数列はフィボナッチが発見したのですか?

フィボナッチは『算盤の書』にウサギの問題としてのせましたが、同じ規則はインドの詩の研究で、数百年前から知られていたといわれます。「フィボナッチ数列」という名前も、19世紀に後の数学者がつけたものです。

フィボナッチは算用数字をどう広めましたか?

北アフリカでアラビア人の先生から習った算用数字の計算を、『算盤の書』にまとめました。ローマ数字より位取りで筆算がしやすく、商人の計算に役立つことを、たくさんの練習問題で示しました。広まったのは数百年かけてです。

階段の上り方とフィボナッチ数の関係は?

1回に1段または2段ずつのぼるとき、n段の上り方は、最後の一歩で場合分けして、(n−1)段の上り方とn−2段の上り方の和になります。このため1, 2, 3, 5, 8…とフィボナッチ数になります。

フィボナッチ数列と黄金比の関係は?

数列のとなり合う数の比(次の数÷前の数)は、1, 2, 1.5, 1.667…と、上下にゆれながら黄金比1.618…に近づきます。ビネの公式では、n番目の数を黄金比を使った式で直接表せます。

花びらの数は本当にフィボナッチ数ですか?

3, 5, 8, 13, 21枚の花は多いのですが、必ずそうなるわけではなく、例外もたくさんあります。ひまわりの種の渦では、黄金角約137.5度で種が置かれるため、渦の本数が34と55などになりやすいことが知られています。

フィボナッチはいつ、どこで亡くなりましたか?

1250年ごろとされますが、はっきりしません。生まれた年も1170年ごろとされるだけで、ピサの町で亡くなった可能性が高いものの、確かな記録はありません。1240年代にピサ市が功績を認めたという記録は残っています。

フィボナッチは受験とどう関係しますか?

中学受験では階段の上り方や規則性の問題、高校受験では規則性や黄金比の問題が出ます。大学入試では、3項間の漸化式、数学的帰納法、互除法を使った互いに素の証明、数列の極限などに出題されます。

なぜ「フィボナッチ」とよばれるのですか?

ボナッチョの息子(filius Bonacci)を縮めた呼び方といわれ、19世紀の学者が使いはじめたとされます。レオナルド本人はピサのレオナルドと名乗っていました。呼び名の由来には諸説があります。

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出典・参考

  • 肖像:19世紀の想像画(作者不詳)、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
  • Laurence Sigler (trans.), “Fibonacci’s Liber Abaci”(Springer, 2002年)
  • J. J. O’Connor and E. F. Robertson, “Leonardo Pisano Fibonacci”, MacTutor History of Mathematics Archive(セントアンドルーズ大学)
  • Keith Devlin, “The Man of Numbers: Fibonacci’s Arithmetic Revolution”(2011年)
  • The Fibonacci Association, “The Fibonacci Quarterly”

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦