合格大作戦 数学用語辞典 › 集合と論理
大学受験
背理法とは
証明したいことが「成り立たない」と仮定し、そこから矛盾を導いて、もとのことが正しいと示す証明の方法です。 が無理数であることの証明が有名です。
うかるくん
わざと「まちがい」を仮定するなんて、ずるくないですか?
合格先生
ずるくないよ。「そうでないとすると矛盾する」なら、そうであるしかない。推理小説の名探偵も、ありえない可能性を消して真相にたどり着くよね。
この用語のポイント
- 結論の否定を仮定 → 推論 → 矛盾 → 結論は正しい
- 「無理数である」「無限にある」「存在しない」の証明で活躍
- 答案には何と矛盾したかを必ず書く
やさしく言うと
背理法は、「もしそうでなかったら、おかしなことになる。だから、そうに決まっている」と考える証明の方法です。
- 推理小説のアリバイ:「もし犯人がAなら、Aは同じ時刻に2か所にいたことになる。それはありえないので、Aは犯人ではない」。
- かぎのありか:「かぎを家の外に落としたとしたら、さっき家の中でドアを開けられたはずがない。だから、かぎは家の中にある」。
- くじの当たり:「当たりが1本もないとしたら、さっき友だちが当たりを引いたことと合わない。だから当たりは少なくとも1本ある」。
まとめると、背理法は「反対の場合をつぶして、残った答えを正しいと決める」方法です。
有名な例1:√2 は無理数
証明
が有理数だと仮定すると、( は互いに素な自然数)と表せる。
両辺を2乗して 。右辺は偶数なので は偶数、よって も偶数。 とおくと 、つまり で、 も偶数。
がどちらも偶数になり、互いに素であることに矛盾。よって は無理数である。
途中の「 が偶数なら も偶数」は、対偶で証明できます( が奇数なら も奇数)。

うかるくん
「互いに素」と最初に決めておいたから、「両方偶数」で矛盾が出せるんだ!
有名な例2:素数は無限にある
素数が有限個しかないと仮定し、それを全部 とします。 を考えると、 はどの で割っても1余ります。ところが なので、 は何かの素数で割り切れるはずです。その素数はリストにない素数になり、「全部」と仮定したことに矛盾します。古代ギリシャのユークリッドの証明として知られています。
図の下の例のように、 そのものが素数になるとは限りません。 は素数ではありませんが、リストにない素数 59 と 509 で割り切れます。証明で使っているのは「 を割り切る素数が、リストの外にある」ことです。
図で見る:対偶証明法とのちがい
「 ならば 」を示すとき、背理法とよく似た方法に対偶証明法があります。2つを図でくらべます。
対偶証明法は「 でない ⇒ でない」をまっすぐ示します。背理法は「 である」と「 でない」の両方を使ってよく、どこかで矛盾が出ればゴールです。使える材料が多いぶん、背理法のほうが広い場面で使えます。
うかるくん
じゃあ、いつも背理法を使えばいいんじゃないですか?
合格先生
使える場面は多いけど、ふつうに示せるならふつうに示すほうが読みやすいよ。背理法は「〜でない」「無理数」「無限」「少なくとも1つ」のように、まっすぐ示しにくいときの切り札なんだ。
背理法を使うとき
○ 背理法が向いている
- 「〜でない」「無理数である」を示す
- 「無限にある」「存在しない」を示す
- 「少なくとも1つは〜」を示す
- 「ただ1つしかない」(2つあると仮定して矛盾)を示す
- 「〜人いれば同じものがある」(鳩の巣原理)を示す
× 向いていない・ダメな使い方
- ふつうに式を変形すれば示せる問題
- 何と矛盾したかを書かずに終える
- 否定をまちがえて仮定する(「少なくとも1つ」の否定を「1つもない」以外にする)
- 矛盾が出ないまま「よって成り立つ」と書く
- 具体的な数を1つ入れて成り立たないことを見せるだけ(これは反例)
| 示したいこと | 仮定すること(否定) |
|---|---|
| 少なくとも1つは正 | すべて 0 以下 |
| すべて正 | 少なくとも1つは 0 以下 |
| 無理数である | 有理数である |
| 無限にある | 有限個しかない |

サクラちゃん
「〜でない」を示したいときは、背理法が使えないか考えてみて!
テスト・入試ではこう出る
背理法は数学Ⅰの「集合と命題」で習います。教科書の定番は が無理数であることの証明で、定期テストでは や に変えた形がよく出ます。大学入試では、無理数であることの証明( など)、整数の問題、「少なくとも1つ」の証明で使われます。数学Aの整数の性質や、数学Bの数列の問題の中で使うこともあります。
例題1(対数が無理数)
が無理数であることを証明しなさい。
- なので、有理数だと仮定すると ( は自然数)と表せる。
- 対数の定義から 。両辺を 乗して 。
- なので左辺 は偶数、右辺 は奇数。偶数と奇数が等しくなり矛盾。
- よって は無理数である。
例題2(少なくとも1つ)
実数 について、 ならば、 の少なくとも1つは正であることを証明しなさい。
- 結論を否定して、、、(すべて 0 以下)と仮定する。
- 3つをたすと 。
- これは に矛盾する。
- よって の少なくとも1つは正である。
まちがえやすい点

合格先生
「矛盾した、終わり」はダメ! 何と矛盾したのかを答案に書こう。
- 対偶証明法と混同する:対偶証明法は「 でない」から出発して「 でない」を導きます。背理法は「 なのに でない」と仮定して、何かとの矛盾を導きます。
- 何と矛盾したかを書かない:「仮定(互いに素)に矛盾」「 に矛盾」のように、矛盾の相手をはっきり書きます。答案ではここが採点されます。
- 否定の仮定をまちがえる:「少なくとも1つは正」の否定は「すべて0以下」です。否定を正しく作らないと、証明全体がくずれます。
- 「 は素数」と書いてしまう:素数が無限にあることの証明で、 が素数とは限りません()。「 を割り切る素数がある」と書きます。
- で「互いに素」を書き忘れる:あとで「両方偶数で矛盾」と言うためには、はじめに既約分数(互いに素)としておく必要があります。
ことばの由来
「背理」は、理(道理)に背くという意味です。「そうでないとすると、道理に合わないことが起きる」という証明のしくみを表しています。別名の帰謬法(きびゅうほう)は「誤り(謬)に帰着させる方法」という意味です。ラテン語の reductio ad absurdum(レドゥクティオ・アド・アブスルドゥム)は「ばかげたことに導く」という意味で、英語では proof by contradiction(矛盾による証明)ともいいます。
ミニ問題
問題1 実数 について「 ならば、 の少なくとも一方は 1 より大きい」を背理法で証明するとき、はじめに何を仮定しますか。また、どう矛盾しますか。
答えと解き方を見る
「 かつ 」と仮定します(「少なくとも一方は 1 より大きい」の否定は「両方とも 1 以下」)。すると となり、 に矛盾します。
問題2 が無理数であることを使って、 が無理数であることを証明しましょう。
答えと解き方を見る
が有理数だと仮定し、( は有理数)とおきます。すると です。有理数から有理数をひいた数は有理数なので、 は有理数になります。これは が無理数であることに矛盾します。よって は無理数です。
問題3 13 人いれば、誕生日の月が同じ人が少なくとも 2 人いることを、背理法で説明しましょう。
答えと解き方を見る
誕生月が同じ人がいない(13 人の誕生月がすべてちがう)と仮定します。月は 12 種類しかないので、誕生月がすべてちがう人は最大 12 人です。13 人いることに矛盾します。よって、誕生月が同じ人が少なくとも 2 人います。この考え方を鳩の巣原理(部屋割り論法)といいます。
関連する公式・用語
公式辞典で、くわしい証明と例題を見る
あわせて覚えたい用語
よくある質問
背理法とは簡単にいうと何ですか?
証明したいことが成り立たないと仮定して、おかしなこと(矛盾)が起きることを示し、もとのことが正しいと結論する証明の方法です。
背理法と対偶証明法のちがいは?
対偶証明法は「qでない⇒pでない」をまっすぐ示します。背理法は「pかつqでない」と仮定して、仮定や既知の事実との矛盾を導きます。
背理法はどんなときに使いますか?
「無理数である」「無限にある」「存在しない」「少なくとも1つは〜」など、直接示しにくい命題で使います。
「少なくとも1つ」の否定は何ですか?
「すべて〜でない」です。たとえば「少なくとも1つは正」の否定は「すべて0以下」です。
背理法の別名は?
帰謬法(きびゅうほう)ともいいます。英語では proof by contradiction です。
背理法は何年生で習いますか?
高校の数学Ⅰの「集合と命題」で習います。√2が無理数であることの証明が教科書の定番です。
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編」数学Ⅰ(数と式:集合と命題)
- ユークリッド『原論』第9巻 命題20(素数が無限にあること)
最終更新:2026年10月13日/作成:大学受験合格大作戦


