素数は無限にあるか?わかりやすく|ユークリッドの証明(背理法)・だれが証明・最大の素数

素数は無限にあるか?わかりやすく|ユークリッドの証明(背理法)・だれが証明・最大の素数

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素数は無限にあるか

ひとことで言うと

「素数は無限にある」。紀元前300年ごろ、ユークリッドが「全部かけて1を足す」工夫で証明した、背理法の原点。

問題素数は無限にあるか(最後の素数はあるか)
答えある。素数は無限にあり、最大の素数は存在しない
証明した人ユークリッド(『原論』第9巻 命題20)
証明された年紀元前300年ごろ
証明の方法全部の素数をかけて1を足した数を考え、新しい素数が必要になることを示す(背理法の形で書かれることが多い)
別の証明オイラー(1737年)、エルデシュ、フルステンバーグ(1955年)ほか
分野数論(初等整数論)
特ちょう2300年以上読まれ続ける、数学でもっとも有名な証明の一つ

このページのポイント

  • 素数は無限にある。ユークリッドは、有限個の素数をすべてかけて1を足した数を考え、「リストにない素数」が必ず出ることで証明した
  • 1を足した数は素数とは限らない(2×3×5×7×11×13+1=30031=59×509)。でも、新しい素数の因数が必ず出てくる
  • 背理法の最初の見本で、中学受験の素数・高校の整数問題・大学入試の証明問題につながる。素数の散らばり方は、素数定理やリーマン予想へ

素数は無限にあるか(ユークリッドの証明)とは?(ひとことで)

「素数は無限にあるか」という問題の答えは、「ある。素数はどこまでも続く」です。これを最初に証明したのが、古代ギリシャの数学者ユークリッドの業績と生涯で、紀元前300年ごろに書かれた『原論』の第9巻に載っています。2300年以上たった今も、世界でもっとも美しい証明の一つと言われます。

証明の中身は、とてもかんたんです。「素数が全部で何個かしかないとする。その全部をかけ合わせて1を足した数を考えると、どの素数でもわり切れない。これは、リストにない新しい素数が必要だということだから、矛盾する」。使うのはかけ算・足し算・割り算の余りだけで、中学生でも理解できます。そして、背理法とは何かという証明の型をはじめて学ぶのに、いちばんよい例の一つです。

この問題は、ゴールドバッハ予想(偶数は素数2つの和?)や双子素数予想(差が2の素数は無限にある?)のように今も解けていない問題とはちがい、すでに解決ずみです。ただし、「素数が無限にある」とわかったあとにも、「ではどのくらいの割合で出てくるのか」「差が2の組はどうか」と、つぎつぎに新しい問いが生まれました。その入口にあたる、数論でもっとも大事な定理です。素数について知りたい人は、唯一の偶数の素数「2」の話や2027は素数?双子素数と西暦の入試問題もあわせて読んでみてください。

うかるくん

うかるくん

素数って、大きくなるほどすくなくなりますよね。いつか、なくなっちゃわないんですか?

合格先生

合格先生

いい疑問だね。たしかに大きい数ほど素数はまばらになる。でも「まばら」と「なくなる」は別なんだ。ユークリッドは、「もし最後の素数があるなら、それより大きい素数をかならず作れる」ことを示して、「最後はない」と証明したんだよ。

素数が無限にあるとは?問題の意味をやさしく解説

素数とは

素数とは、1とその数自身でしかわり切れない、2以上の整数です。2、3、5、7、11、13、…と続きます。1は素数に入れません。また、偶数の素数は2だけです。素数の定義と見分け方をまず確かめましょう。素数でない2以上の整数(合成数)は、素数のかけ算に分けられます。これが素因数分解と約数の個数です。素数は、あらゆる整数をつくる「原子」のようなものです。

100までの素数は25個123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142434445464748495051525354555657585960616263646566676869707172737475767778798081828384858687888990919293949596979899100黄色が素数。1は素数ではない
100までの素数は25個。1〜10では4個、11〜20では4個、91〜100では1個と、後ろへ行くほど少なくなる

「無限にある」とはどういうこと?

「素数は無限にある」とは、「どんなに大きな数を考えても、それより大きな素数がかならず見つかる」ということです。言いかえると、「最後の素数」は存在しない、ということです。これを数学では「素数の集合は無限集合である」と言います。

注意したいのは、「たくさんある」と「無限にある」はちがうことです。「100までに25個」「1000までに168個」とふえていても、それだけでは「無限」とは言えません。どこかで止まるかもしれないからです。止まらないことを、すべての場合をおおって示す必要があります。ここに証明の出番があります。

素数の個数の「階段」0510152025050100段の間隔は広がるが、止まらない
素数を見つけるごとに1段ずつ上がる階段。段の間隔はだんだん広がるが、ユークリッドの証明は「階段はどこまでも続く」と保証する

証明の手順を、例でたどる

ユークリッドの考え方を、小さな数で試してみます。まず「素数はこの何個かだけ」というリストを作ります。リストの素数を全部かけて、1を足すのです。

  • リストが {2} だけなら、2+1=3。3は素数で、リストにない新しい素数。
  • リストが {2, 3} なら、2×3+1=7。7も新しい素数。
  • リストが {2, 3, 5} なら、2×3×5+1=31。31も新しい素数。
  • リストが {2, 3, 5, 7} なら、210+1=211。211も素数です。
  • リストが {2, 3, 5, 7, 11, 13} なら、30030+1=30031。これは素数ではなく、59×509です。
「かけて1を足す」実験今の素数の積1を足した数結果22+1=3素数2×36+1=7素数2×3×530+1=31素数2×3×5×7210+1=211素数…×112310+1=2311素数…×1330030+1=3003159×509素数でなくても、新しい素数の因数が出てくる
「素数の積に1を足した数」は、いつも素数になるわけではない。でも、どの場合も、リストにない素数が因数に入っている

最後の例が大事です。30031は素数ではありません。でも、59も509も、リスト {2, 3, 5, 7, 11, 13} には入っていません。新しい素数が因数として出てきたのです。これがユークリッドの証明の核心です。「かけて1を足した数が素数だ」とは言っていません。「リストにない素数をかならず1つ生み出す」と言っているのです。

よくある誤解:「かけて1を足すと素数になる」?

この証明を読んで、「素数を全部かけて1を足した数は素数になる」と思いこむ人がいます。これはまちがいです。上の30031が反例です。ほかにも、2×3×5×7×11×13×17+1=510511=19×97×277 のように、素数でない例が続きます。ユークリッドが言っているのは、「その数は、リストのどの素数でもわり切れない。だから、素因数分解したとき、リストにない素数が出てくる」ということだけです。

また、「ユークリッドの証明は、素数をつぎつぎに作る方法だ」という言い方も、実は少し正確ではありません。小さい順に素数を作る方法ではなく、「有限のリストでは足りない」ということを示す証明だからです。

素数が無限にあることの歴史と年表

紀元前300年ごろ:ユークリッドの『原論』

ユークリッドは古代ギリシャのアレクサンドリアで活躍した数学者とされ、その著書『原論』は、2000年以上にわたって数学の教科書でした。第9巻の命題20は、現代の言葉で書くと「素数は、どんな有限個の素数の集まりよりも多い」という内容です。ユークリッドは「素数は無限にある」とは書かず、「どんな素数の個数より多い」と言いました。ギリシャ人は「無限」という言葉を慎重に扱ったからだと説明されることがあります。

なお、『原論』の証明は、よく言われる背理法ではなく、場合分けの形で書かれているという指摘があります。「Nが素数なら新しい素数、Nが素数でないなら新しい素因数」の2つに分ける形です。一方、現代の教科書では、背理法の形で書かれることが多いです。

1737年:オイラーの証明(素数の逆数の和)

オイラーの業績と生涯は、まったく別の方法で証明しました。素数の逆数をすべて足した12+13+15+17+⋯\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdotsという和が、どこまでも大きくなる(発散する)ことを示したのです。もし素数が有限個なら、この和は有限の値で終わるはずなので、素数は無限にあることになります。オイラーのこの結果は1737年に見つけられ、論文として出たのは1744年です(といわれます)。

この方法は、ユークリッドの証明より「強い」結果をもたらします。素数が無限にあるだけでなく、素数がじゅうぶん多い(逆数の和が発散するほど)ことまで分かるからです。たとえば、平方数(1、4、9、16、…)の逆数の和は有限の値 π26\frac{\pi^2}{6} になりますから、素数は平方数よりも「多い」ことになります。この考え方は、リーマン予想(素数の分布のかぎ)や、素数がどのくらい出てくるかを調べる素数定理(素数の散らばり方の法則)へつながっていきます。

18〜19世紀:さまざまな証明

ゴールドバッハは、フェルマー数 Fn=22n+1F_n=2^{2^n}+1 のどの2つも「互いに素」(共通の約数が1だけ)であることを使って、素数が無限にあることを示したと伝えられます。1878年には、ドイツの数学者クンマーがユークリッドの証明を少し形を変えて書き直しました(積に1を足す代わりに、小さい素数の積から1を引く形です)。

20世紀:位相空間から数え上げまで

1938年ごろには、エルデシュの業績と生涯が「平方数を使う数え上げ」の証明を示したことが知られています(平方因子のない数と平方数の積で、すべての整数を書く方法です)。1955年には、ヒレル・フルステンバーグが位相空間という大学数学の道具を使った、たった1ページの証明を発表しました。数論の問題が、まったく別の分野の言葉で証明できてしまう――その鮮やかさで有名です。

2300年の歩み前300ごろユークリッド『原論』第9巻1737年オイラー:素数の逆数の和1878年クンマー:別の証明1955年フルステンバーグ:位相の証明2024年最大の素数は4102万桁証明は100通り以上ある、といわれる
ユークリッド以来、2300年のあいだに、さまざまな分野の方法で証明が見つかってきた
年できごと
前300ごろユークリッドが『原論』第9巻命題20で「素数はどんな有限個の素数の集まりより多い」ことを示す
1730年ごろゴールドバッハが、フェルマー数が互いに素であることを使った別証明を見つけたと伝えられる
1737年オイラーが、素数の逆数の和が発散することを示す(論文は1744年)
1837年ディリクレが、等差数列 a,a+d,a+2d,…a, a+d, a+2d,\dots に素数が無限に含まれることを証明(ディリクレの算術級数定理)
1850年チェビシェフが、nと2nの間に素数があること(ベルトランの仮説)を証明
1878年クンマーが、ユークリッドの証明を書き直した別証明を発表
1896年アダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンが素数定理を証明。素数の個数の大きさまで分かる
1955年フルステンバーグが、位相空間を使った1ページの証明を発表
2024年41,024,320桁の素数 2136279841−12^{136279841}-1 が発見される(2026年時点で知られている最大の素数)

素数が無限にあることは、いつ・だれが証明した?

この問題は、紀元前300年ごろに、ユークリッドが解決しました。すでに解決ずみの問題なので、「今どこまで分かっているか」ではなく、証明の中身をていねいに見てみましょう。

ユークリッドの証明(現代風)

  1. 仮定:素数が有限個だとして、その全部を p1,p2,…,pnp_1, p_2, \dots, p_n とする。
  2. 数をつくる:N=p1×p2×⋯×pn+1N = p_1 \times p_2 \times \cdots \times p_n + 1 という数を考える。
  3. 調べる:NN を p1p_1 でわると、p1×(ほかの全部)p_1 \times (\text{ほかの全部}) の部分はわり切れるので、余りは1。p2,…,pnp_2, \dots, p_n でわっても、どれも余りは1。つまり、NN はどの pip_i でもわり切れない。
  4. 矛盾:NN は2以上の整数なので、素数であるか、素数のかけ算に分けられるかのどちらか。素数なら、それはどの pip_i とも別の素数。素数でなければ、NN の素因数がある。その素因数もどの pip_i でもない。どちらにしても、「リストにない素数」がある。これは「p1,…,pnp_1, \dots, p_n が素数の全部」という仮定に反する。
  5. 結論:素数が有限個という仮定がまちがい。だから、素数は無限にある。
ユークリッドの証明の流れ ① 素数は有限個だと仮定する ② 全部かけて1を足す N=p₁×…×pₙ+1 ③ どの pᵢ でわっても 1 余る ④ 新しい素数が現れる → 矛盾! だから、素数は無限にある(Nが素数でも、素数でなくても④になる)
背理法:まず「素数は有限個」と仮定して、そこから矛盾を引き出す。矛盾したので、仮定が誤り

このなかで、「余りが1になる」というところが、合同式(mod の計算)の使い方の考え方です。合同式で書くと、N≡1(modpi)N \equiv 1 \pmod{p_i} です。

オイラーの証明(概略)

オイラーは、「素数だけで作れる数」の足し算を、すべての整数の足し算とくらべました。素数だけを材料にして、整数 1,2,3,…1, 2, 3, \dots の逆数 1n\frac{1}{n} をすべて足したもの(調和級数)は、つぎのように素数の積の形に書けます:

∑n=1∞1n=∏p11−1p\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}=\prod_{p}\frac{1}{1-\frac{1}{p}}

左側は、収束と発散でいう発散(どこまでも大きくなる)です。もし素数が有限個なら、右側は有限の値になるはずなので、等号が成り立ちません。だから、素数は無限にある。これが、素因数分解が1通りだけであること(素因数分解の一意性)を使った、オイラーの証明です。

エルデシュの証明(数え上げ)

エルデシュの証明は、「数の個数を数える」だけで終わります。素数がもし kk 個しかないとします。1以上 NN 以下の整数は、a×b2a \times b^2(aa は平方因子をもたない数)の形に1通りに書けます。aa の選び方は、素数が kk 個なら高々 2k2^k 通り、bb の選び方は高々 N\sqrt{N} 通りです。だから NN 以下の整数の個数 NN は、2kN2^k\sqrt{N} 以下でなければなりません。でも、NN をじゅうぶん大きくすると N>2kNN > 2^k\sqrt{N} になって矛盾します。この証明は、「素数が少なすぎると、数を作り切れない」という考え方です。さらに、NN 以下の素数が少なくとも 12log⁡2N\frac{1}{2}\log_2 N 個はあることまで読み取れます。

フルステンバーグの証明(位相)

整数を等差数列で「区切る」特別な位相を定めると、素数の倍数の集まりが「開かつ閉」になります。もし素数が有限個なら、{−1,1}\{-1, 1\} 以外のすべての整数が、有限個の閉集合の和になってしまい、{−1,1}\{-1, 1\} が開集合になる、という矛盾が出ます。位相空間の言葉を知らないと分かりにくいですが、「数論の問題を、別の分野の道具で解く」例として有名です。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

証明のいちばん大事なところは「N は、どの p でわっても1余る」ということ。「1を足す」のは、わり切れなくするための工夫なんだ。

では、最大の素数は?

素数が無限にあるので、「最大の素数」は存在しません。ただし、「人間が見つけた中で最大の素数」はあります。2024年10月に、アメリカのルーク・デュラント氏が、GIMPS(ギンプス:世界中のコンピューターを使ってメルセンヌ素数を探すプロジェクト)で、2136279841−12^{136279841}-1 という数が素数であることを見つけました。これは41,024,320桁の数で、52番目のメルセンヌ素数です(順位は暫定)。2024年10月12日の発見で、2026年11月時点でもGIMPS公式ページで最大のままです。ユークリッドの証明によって、この数よりも大きな素数がまだ必ずあると分かっています。

素数の問題は、なぜ奥が深い?

「素数が無限にある」こと自体の証明は、2300年前にすでに終わっています。それでも素数が数学者を引きつけ続けているのは、「無限にある」の先にある問いが、どれもとても難しいからです。ここでは、その理由を3つに分けて見てみます。

1. 素数は「かけ算」でできていて、「足し算」と合わない

素数は、かけ算で分けられない数として決まります。ところが、素数がどこに並んでいるかは、足し算の世界(1、2、3、…と順に数える世界)で見ると、ふしぎなほど不規則です。2、3、5、7 のあと、11、13、17、19、23、…。次の素数がどこに現れるかを決める簡単な式は、見つかっていません。「素数をすべて並べて出す式」は、今も見つかっていないのです。

2. 「無限にある」だけでは、散らばり方は分からない

ユークリッドの証明は、「かならずある」ことしか教えてくれません。たとえば「1000以下に素数は何個あるか」は、証明からは出てきません。この疑問に答えたのが素数定理(x以下の素数はおよそ x÷log x 個)で、証明は1896年まで待たなければなりませんでした。さらに、リーマン予想が解ければ、誤差まで正確に分かると考えられています。

3. 「差が小さい素数」「和で書ける素数」は、今も未解決

素数が無限にあるのなら、差が2の素数の組(3と5、11と13、…)は無限にあるのか――これが双子素数予想で、今も未解決です。また、ゴールドバッハ予想(偶数は素数2つの和)も未解決です。「素数が無限にある」と分かっても、「どんな形の素数が無限にあるか」は、一つひとつ調べなければなりません。

そのなかで、等差数列の中に素数が無限にある、という結果(1837年、ディリクレの業績と生涯)や、「素数の中にいくらでも長い等差数列がある」という結果(2004年、グリーンとタオ)は、解決ずみです。

サクラちゃん

サクラちゃん

素数が無限にあるって分かったのに、どうして、まだ難しい問題がたくさん残っているんですか?

合格先生

合格先生

「ある」と分かるのと、「どこにある」と分かるのは別なんだ。宝探しにたとえるなら、「宝は島のどこかにある」とは分かったけれど、「地図」がまだ書けていない状態だね。数学者は、その地図を少しずつ描いているんだよ。

受験・勉強と「素数は無限にある」のつながり

中学受験:素数を使いこなす

中学受験の算数では、素数に関する問題が毎年のように出ます。基本は100までの素数25個を覚えることです。2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47、53、59、61、67、71、73、79、83、89、97。そして「ある数が素数か調べる」には、その数の平方根以下の素数でわってみれば十分です。たとえば 97 が素数か調べるなら、97\sqrt{97} は10に近い数なので、2、3、5、7 でわって、どれもわり切れなければ素数と分かります。整数の性質(約数の個数・倍数の判定)と素因数分解と約数の個数をセットで練習しておきましょう。

「エラトステネスのふるい」(2の倍数、3の倍数、…を消していって、残った数が素数)は、小学校高学年の自由研究にぴったりです。エラトステネスの業績と生涯は、ユークリッドとほぼ同じ時代の人です。

高校受験・大学受験:背理法と整数の証明

ユークリッドの証明は、高校数学で習う背理法の最初の見本です。「2\sqrt{2} は無理数である」の証明と並んで、入試の定番です。型は同じで、①結論を否定して仮定する、②そこから矛盾を導く、③だから仮定がまちがい、の3ステップです。背理法の考え方と命題と証明の考え方を確かめておきましょう。

大学入試では、ユークリッドの証明をまねる問題がよく出ます。つぎのような問題です。

例題:4で割って3余る素数は、無限にあることを示せ

有限個だとして、全部を p1=3,p2=7,…,pnp_1=3, p_2=7, \dots, p_n とします。P=p1p2⋯pnP=p_1p_2\cdots p_n として、N=4P−1N=4P-1 を考えます。

  • NN は奇数で、N≡3(mod4)N\equiv 3\pmod 4 です(4で割ると3余る)。
  • もし NN のすべての素因数が「4で割って1余る」なら、それらの積である NN も4で割ると1余ります。これは矛盾。だから、NN には「4で割って3余る」素因数 qq がある。
  • この qq は、どの pip_i とも等しくありません。もし q=piq=p_i なら、qq は NN と 4P4P の両方をわり切るので、1=4P−N1=4P-N をわり切ることになり、不可能です。
  • これは「p1,…,pnp_1,\dots,p_n が全部」という仮定に反するので、4で割って3余る素数は無限にあります。

同じ方法は、「6で割って5余る素数」「3で割って2余る素数」でも使えます。ただし、「4で割って1余る素数」では、この方法は少し形を変える必要があります。ここで合同式(合同式の使い方)に慣れていると、とても楽です。この一般の場合が、ディリクレの算術級数定理(1837年)です。大学入試の範囲ではありませんが、数学オリンピックなどでは使われます。

「連続した合成数」の問題

入試でよく出るもう一つの定番が、「連続する nn 個の合成数(素数でない数)を作れ」という問題です。答えは (n+1)!+2,(n+1)!+3,…,(n+1)!+(n+1)(n+1)!+2, (n+1)!+3, \dots, (n+1)!+(n+1) です。たとえば n=5n=5 なら 6!+2=7226!+2=722 から 6!+6=7266!+6=726 までの5個が、それぞれ 2、3、4、5、6 でわり切れます。ここから、素数と素数の間はいくらでも広がることが分かります。素数が無限にある一方、すき間も限りなく大きくなる。この2つの事実は、同時に成り立つのです。

勉強法として:「ありえない」を見つける力

ユークリッドの証明から学べるのは、「つくった数が、どの素数でもわり切れない」ことに気づく力です。入試の整数問題では、「1を足す」「1を引く」「階乗を使う」といった工夫で、わり切れない数をつくる場面がよく出ます。自分で手を動かして、小さな数で実験することが大切です。数学の勉強の進め方は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

「素数が無限にある」が数学・社会にあたえた影響

  • 背理法という証明のお手本:2000年以上、「証明とはこういうもの」というお手本として読まれてきました。ハーディは『ある数学者の弁明』のなかで、ユークリッドの素数の証明を「第一級の数学」の例として取り上げています。
  • 解析的整数論のはじまり:オイラーの証明は、素数と無限級数をむすびつけました。そこから、ディリクレの算術級数定理、素数定理、リーマン予想へと、素数を解析学で調べる道が開けました。
  • 暗号の安全性:インターネットで使われるRSA暗号は、「大きな素数を2つ見つけるのは簡単だが、その積を素因数分解するのは難しい」ことに頼っています。素数が無限にあるから、毎回「新しい大きな素数」を選べるのです。
  • コンピューターによる素数探し:メルセンヌ素数(2p−12^p-1 の形の素数)を探すプロジェクトは、世界中の人々がパソコンの空き時間を提供して続けています。見つかった素数は、完全数(約数の和が自分の2倍になる数)ともつながっています。
  • 「無限」を扱う数学の基礎:「有限個では足りない」という論法は、集合論やヒルベルトの業績と生涯の「無限ホテル」の話など、無限を扱う数学全体の考え方につながっています。

ガウスの業績と生涯は15〜16歳のころに、素数の表をながめて「x以下の素数の個数は、およそ x/log⁡xx/\log x」という予想を立てたと伝えられます。「素数が無限にある」とわかった次に、「どのくらいあるか」を問うたのです。それは、ユークリッドの証明から2000年以上たってからの、新しい一歩でした。

素数の無限に挑戦!練習問題

やさしい

  1. 100以下の素数は、全部で何個ありますか。
    答えと解説を見る25個です。2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47、53、59、61、67、71、73、79、83、89、97。
  2. 2×3×5+1 はいくつですか。それは素数ですか。
    答えと解説を見る2×3×5+1=31。31は2、3、5のどれでもわり切れず、素数です(5までの素数のリスト {2, 3, 5} にはない、新しい素数)。

ふつう

  1. 2×3×5×7×11×13+1=30031 は素数ではありません。素因数分解しなさい。
    答えと解説を見る30031=59×509。59も509も素数で、どちらも {2, 3, 5, 7, 11, 13} にはありません。「素数の積に1を足した数」は素数とは限らないが、新しい素数の因数をもつ、ということの例です。
  2. 5!+1(=121)を素因数分解し、5より大きい素数を答えなさい。
    答えと解説を見る5!+1=121=11×11 なので、5より大きい素数は11。5!は 1、2、3、4、5 のどれでもわり切れるので、5!+1 はこれらでわると1余り、素因数は5より大きくなります。

むずかしい

  1. 4で割って3余る素数が、3と7の2つだけだと仮定します。4×3×7-1 を計算し、できた数が3でも7でもわり切れないことを確かめなさい。また、この数から何が分かりますか。
    答えと解説を見る4×3×7-1=83。83÷3=27余り2、83÷7=11余り6 で、どちらもわり切れません。83は素数で、4で割ると3余るので、「3と7だけ」という仮定に反します。これがユークリッドの証明のまねです。
  2. 連続する5つの整数で、どれも素数でないものを1組あげなさい。
    答えと解説を見る6!=720 を使って、722、723、724、725、726。722は2で、723は3で、724は4で、725は5で、726は6でわり切れるので、どれも素数ではありません。素数の間のすき間が広がることを示す例です。

「素数は無限にある」と関係する数学者・難問

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よくある質問

素数は無限にありますか?

素数は無限にあります。紀元前300年ごろ、ユークリッドが証明しました。どんなに大きな素数をとっても、それより大きな素数がかならず存在するので、最後の素数(最大の素数)はありません。

ユークリッドの証明を、かんたんに説明してください

素数が有限個だと仮定して、その全部をかけて1を足した数Nを考えます。Nはどの素数でわっても1余るので、Nが素数であってもなくても、リストにない素数が現れます。これは仮定に反するので、素数は無限にあります。

全部の素数をかけて1を足すと、素数になりますか?

いつも素数になるとは限りません。たとえば2×3×5×7×11×13+1は30031で、59×509と分けられます。ただし、新しい素数の因数が必ず出てくるので、証明は成り立ちます。

素数が無限にあることは、背理法で証明するのですか?

現代の教科書では背理法で書かれることが多いです。ただし、『原論』の元の形は、Nが素数の場合と素数でない場合に分ける場合分けだ、という指摘もあります。どちらでも結論は同じです。

最大の素数はいくつですか?

素数は無限にあるので、最大の素数は存在しません。人が見つけた最大の素数は、2024年に発見された2の136279841乗マイナス1で、41,024,320桁です。これより大きい素数が必ずあることは、ユークリッドの証明から分かります。

素数が無限にあることの、別の証明はありますか?

あります。オイラーは素数の逆数の和が発散することを使い、エルデシュは数の個数を数える方法を使い、フルステンバーグは位相空間を使いました。証明は100通り以上あるといわれます。

素数が無限にあるなら、双子素数も無限にありますか?

それは分かっていません。差が2の素数の組が無限にあるかは双子素数予想とよばれる未解決の問題です。素数が無限にあることと、特別な形の素数が無限にあることは別の問題です。

素数はどのくらいの割合で現れますか?

x以下の素数の個数は、およそxをlog xでわった値になります。これが素数定理で、1896年にアダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンが証明しました。大きい数ほど素数は少なくなりますが、なくなりません。

素数が無限にあることは、受験に出ますか?

証明そのものは出ませんが、背理法の型は大学入試でよく問われます。「4で割って3余る素数は無限にある」など、ユークリッドの証明をまねる問題や、素数の見分け方を使う中学受験の問題が出ます。

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出典・参考

  • Euclid『原論』第9巻 命題20(ヒース訳 “The Thirteen Books of Euclid’s Elements” ほか)
  • L. Euler, “Variae observationes circa series infinitas”(1737年に発表、1744年に出版)
  • H. Furstenberg, “On the infinitude of primes”, The American Mathematical Monthly, 62 (1955)
  • G. H. Hardy『ある数学者の弁明』(柳生孝昭訳、丸善)
  • GIMPS(Great Internet Mersenne Prime Search), “GIMPS Discovers Largest Known Prime Number: 2^136,279,841-1”(2024年10月)

最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦