素数定理とは?わかりやすく|x以下の素数は約x÷log x個・ガウスの予想と1896年の証明

素数定理とは?わかりやすく|x以下の素数は約x÷log x個・ガウスの予想と1896年の証明

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素数定理

ひとことで言うと

「x以下の素数はおよそ x÷log x 個」。ガウスの予想から約100年、1896年に証明された、素数のちらばり方の法則。

問題x以下の素数の個数 π(x) は、x が大きいときどのくらいか
答えπ(x) は x÷log x に近い(比の極限が 1)
予想した人ガウス(1792〜93年ごろ)・ルジャンドル(1798年)
証明された年1896年
証明した人アダマール、ド・ラ・ヴァレー・プーサン(別々に)
その後1949年にエルデシュとセルバーグが初等的な証明、1980年にニューマンが短い証明
分野数論(解析的整数論)
特ちょう素数の並びはでたらめでも、個数だけは決まった式にしたがう

このページのポイント

  • 素数定理は「x以下の素数の個数は、およそ x÷log x 個」。言いかえると、x のあたりでは約 log x 個に1個が素数
  • ガウスとルジャンドルが1790年代に予想し、1896年にアダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンがゼータ関数を使って証明した
  • 誤差までくわしく調べる問題はリーマン予想につながる。暗号の素数探しにも役立ち、対数・極限・積分の学習にも通じる

素数定理とは?(ひとことで)

素数定理とは、「xx 以下の素数の個数は、およそ xlog⁡x\dfrac{x}{\log x} 個である」という定理です。素数が「どのくらいの割合で出てくるか」を教えてくれる法則で、1896年に、フランスのアダマールの業績と生涯とベルギーのド・ラ・ヴァレー・プーサンが、それぞれ別々に証明しました。

この予想は、さらに100年さかのぼる1790年代に、ガウスの業績と生涯とルジャンドルの業績と生涯が、素数の表をながめて立てました。ガウスは15〜16歳だった1792〜93年ごろから考えていたと、のちに語っています。「素数はでたらめに並んでいるのに、その数だけを数えると、きれいな式にしたがう」――これが素数定理のおもしろさです。

ここでの log⁡x\log x は、ネイピア数 ee を底とする自然対数(高校の数学Ⅲで習います)です。たとえば x=1000x=1000 なら、log⁡1000≈6.9\log 1000\approx 6.9 ですから、1000以下の素数は 1000÷6.9≈1451000\div6.9\approx145 個と見積もれます。実際は168個ですから、だいたい合っています。指数法則と対数の公式や対数とはが出発点です。

うかるくん

うかるくん

素数って、ばらばらに出てくるのに、個数だけは決まった式で分かるんですか?

合格先生

合格先生

そうなんだ。「1つ1つの位置は分からないけれど、全体の量は分かる」んだよ。天気予報で、明日の雨は分からなくても、1年に降る雨の量はだいたい決まっているのと似ているね。

素数定理の意味をやさしく解説

素数の個数を数える関数 π(x)\pi(x)

数学では、「xx 以下の素数の個数」を π(x)\pi(x) と書きます。円周率の π\pi とは関係ありません(素数=prime の頭文字にあたるギリシャ文字として使われています)。たとえば 10以下の素数は 2、3、5、7 の4個なので π(10)=4\pi(10)=4、100以下は25個で π(100)=25\pi(100)=25、1000以下は168個で π(1000)=168\pi(1000)=168 です。素数は無限にあるか(ユークリッドの証明)で見たとおり、素数は無限にあるので、π(x)\pi(x) は xx とともにどこまでも増えていきます。問題は、どのくらいの速さで増えるかです。

見積もりの式 x÷log⁡xx \div \log x

下の表は、実際の素数の個数と、x÷log⁡xx\div\log x をくらべたものです。右はしの「比」は、実際の個数 ÷ 見積もりです。

実際の個数と x÷log xx素数の個数x÷log x比10440.92110025221.15110001681451.1611万1,2291,0861.13210万9,5928,6861.104100万78,49872,3821.08410億50,847,53448,254,9421.054比がだんだん 1 に近づく=素数定理
実際の素数の個数と x÷log x。100万までは約8%、10億では約5%見積もりが少ない。比は1に近づいていく

表を見ると、10までは比が1より小さいのに、100では1.15、1000では1.16と、見積もりより実際のほうがやや多いことが分かります。ところが xx が大きくなるにつれて、比は1.16、1.13、1.10、1.08、…と下がっていき、10億では1.054になります。素数定理は、この比が、xx を限りなく大きくすると1に近づくと言っているのです。数式では、

lim⁡x→∞π(x)x/log⁡x=1\lim_{x\to\infty}\frac{\pi(x)}{x/\log x}=1

と書きます。「π(x)\pi(x) と x/log⁡xx/\log x は、xx が大きいところで、ほとんど同じ大きさ」という意味です(このことを「漸近的に等しい」といい、π(x)∼x/log⁡x\pi(x)\sim x/\log x と書きます)。極限とはの考え方が使われています。

比が 1 に近づいていく0.91.01.11.21010²10³10⁴10⁵10⁶10⁷10⁸10⁹x が大きくなるほど、見積もりが正確に極限=1
xを10倍ずつ大きくしていくと、比は1.15あたりをピークに下がり、1に近づいていく。ただし近づく速さはとてもゆっくり

「何個に1個が素数か」と読みかえる

素数定理は、「xx のあたりの整数のうち、素数は約 log⁡x\log x 個に1個」と言いかえられます。1000のあたりでは約6.9個に1個、100万のあたりでは約13.8個に1個です。桁がふえるごとに、素数はまばらになりますが、ゆっくりです。log⁡x\log x は、xx が1000倍になっても、約6.9しか増えません。

素数は「約 log x 個に1個」10約2.3個に1個100約4.6個に1個1000約6.9個に1個100万約13.8個に1個10億約20.7個に1個1兆約27.6個に1個桁が3つ増えるごとに、間隔は約6.9ずつ広がる
x付近の整数のうち、素数がおよそ何個に1個の割合で現れるか。その数は log x に等しい

もっと正確な見積もり:対数積分 Li(x)\mathrm{Li}(x)

x÷log⁡xx\div\log x は覚えやすい式ですが、実はそれほど正確ではありません。もっとよい見積もりが、対数積分とよばれるLi(x)=∫2xdtlog⁡t\mathrm{Li}(x)=\displaystyle\int_2^x\frac{dt}{\log t} です(積分の公式で習う定積分です)。ガウスは、この形を最初に考えたと伝えられます。下のグラフでは、Li(x)\mathrm{Li}(x) のほうが階段にずっと近いことが分かります。

階段と、2本のなめらかな線051015202530050100━ 実際の個数┅ x÷log x━ Li(x)小さい範囲でも、形はよく似ている
100までの素数の個数(階段)と、x÷log x(点線)、Li(x)(緑の線)。Li(x) のほうがよく合う

たとえば x=109x=10^9(10億)では、実際の個数は50,847,534個。x/log⁡xx/\log x は約48,254,942個で、約260万個ずれます。いっぽう Li(x)\mathrm{Li}(x) とのずれは、たった1,701個です(数学の公式と用語の一覧でも、対数を学ぶ入口が見つかります)。

ふだんの感覚で言うと

素数定理は、「くじ引き」にたとえられます。xx のあたりの数それぞれが、「確率 1/log⁡x1/\log x で当たり(素数)」のくじだと考えるのです。1つ1つの結果は予測できませんが、たくさんひくと、当たりの総数はほぼ決まります。実際の素数は、さいころのような偶然ではなく、きちんとした規則で決まっています。それでも、全体は「くじ引き」と同じ形になる――これが、リーマン予想までつながる、素数の「ふしぎな秩序」です。

素数定理の歴史と年表

1790年代:ガウスとルジャンドルの予想

ガウスは、素数の表をながめて、「xx 付近で素数が現れる割合は 1/log⁡x1/\log x に近い」ことに気づいたと、のちの1849年にエンケに宛てた手紙で語っています。気づいたのは1792年か93年、ガウスが15〜16歳のころです。ただし、ガウスはこれを論文として発表せず、証明も示しませんでした。

いっぽうルジャンドルは、1798年の著書『数の理論についての試論』で、π(x)\pi(x) が x/(Alog⁡x+B)x/(A\log x+B) の形で近似されるという推測を述べ、1808年の改訂版では xlog⁡x−1.08366\dfrac{x}{\log x-1.08366} という具体的な式を書きました。この「−1.08366-1.08366」は、ルジャンドルが表から求めた数で、のちに(xx が無限に大きいところでは)正確には「−1-1」であるべきことが分かりました。ふたりとも、証明はできなかったが、予想は的中していたのです。

1848〜50年:チェビシェフが道をひらく

ロシアの数学者チェビシェフは、1848年と1850年の論文で、大きな一歩を踏み出しました。「もし比 π(x)/(x/log⁡x)\pi(x)/(x/\log x) の極限があるなら、それは1に等しい」ことを示し、さらに比が約0.92から1.11のあいだに入ることを証明しました。極限があるとまでは示せませんでしたが、素数の個数が x/log⁡xx/\log x の「定数倍」ではさめることが分かったのです。同時に、「nn と 2n2n のあいだには、n>3n>3 ならかならず素数がある」というベルトランの仮説を証明しました(1850年)。

1859年:リーマンの論文

1859年、リーマンの業績と生涯は、数論についての唯一の論文『与えられた数より小さい素数の個数について』を書きました。ここでリーマンは、ゼータ関数ζ(s)\zeta(s) を複素数 ss まで広げ、その「零点」の位置が、素数の分布の細かい波打ちを決めていることを示しました。証明は完全ではなかったものの、この考え方が、素数定理の証明の決め手になります。リーマンが論文の中で述べた予想が、リーマン予想です。

1896年:ついに証明

1896年、アダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンは、それぞれ独立に、「ゼータ関数 ζ(s)\zeta(s) は、実部が1の直線の上に零点をもたない」ことを証明し、そこから素数定理を導きました。予想から約100年後のことです。チェビシェフがはさみうちまでできていた比を、1にしぼりこんだのです。ふたりは同じ年に証明を発表しました。ド・ラ・ヴァレー・プーサンは1899年に、誤差についても、よりくわしい結果を出しました。

予想から証明まで約100年1792ごろガウスが表を見て予想1798年ルジャンドルも予想1850年チェビシェフが範囲をしぼる1859年リーマンの論文1896年アダマール・プーサンが証明1949年初等的な証明証明の決め手は、複素数の関数(ゼータ関数)
予想から証明まで約100年。その間、実数の世界から複素数の世界へと、素数を調べる道具が広がった

1949年:「初等的」な証明

アダマールたちの証明は、複素数の関数を使う、少し高度なものでした。「素数を数える問題なのだから、複素数を使わなくても証明できるはずだ」と考える数学者も多く、実際、1949年にエルデシュの業績と生涯とセルバーグが、複素数を使わない「初等的な証明」を発表しました。ただし、「初等的」とは「簡単」という意味ではなく、証明はむしろたいへん込み入っています。この発見をめぐって、ふたりのあいだで先取権(だれが先に見つけたか)についての論争があったと伝えられます。セルバーグは、この仕事などで1950年にフィールズ賞を受けました。

1980年には、ニューマンが、複素関数の基本定理(コーシーの積分定理)だけを使う、短い証明を発表しました。教科書では、いまはこの証明が使われることが多いです。

年できごと
1792〜93年ごろガウスが素数の表を見て、素数の現れる割合は 1/log⁡x1/\log x に近いと気づく(のちの手紙による)
1798年ルジャンドルが、著書の中で π(x)\pi(x) の近似式の形を推測
1808年ルジャンドルが、x/(log⁡x−1.08366)x/(\log x-1.08366) という具体的な式を書く
1848年チェビシェフが、「比の極限があれば1に等しい」ことを示す
1850年チェビシェフが、比が約0.92と1.11のあいだにあること、ベルトランの仮説を証明
1859年リーマンが、ゼータ関数と素数の個数の関係を論文に書く
1896年アダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンが、素数定理を証明
1899年ド・ラ・ヴァレー・プーサンが、誤差の評価を改良
1949年エルデシュとセルバーグが、複素数を使わない初等的な証明を発表
1980年ニューマンが、短い証明を発表

素数定理はいつ・だれが解いた?

素数定理は、1896年に、アダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンが、別々に証明しました。解決ずみの問題です。ここでは、証明の「ざっくりした考え方」と、その後の進展を紹介します。

証明の考え方(ざっくり)

  1. 素数をゼータ関数にむすびつける:オイラーが見つけた式 ζ(s)=∑n=1∞1ns=∏p11−p−s\zeta(s)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^s}=\prod_{p}\frac{1}{1-p^{-s}} は、足し算(左)と素数の積(右)を結びます。左の足し算は、素因数分解の一意性があるから、右の積と等しくなります。
  2. 素数の個数をゼータ関数で表す:リーマンやフォン・マンゴルトは、素数の個数に近い量が、ゼータ関数の「零点」と関係した式で書けることを示しました。
  3. 実部が1の線に零点がないことを示す:アダマールとプーサンは、この点を証明しました。零点がもしそこにあったら、式にじゃまな波が入りこみ、x/log⁡xx/\log x 以外の大きさになってしまうからです。
  4. 素数定理がしたがう:ほかの部分はおさえられるので、結局、個数は x/log⁡xx/\log x にもっとも近くなります。

つまり、「素数の分布を知るには、ゼータ関数の零点の位置を知ればよい」ということです。零点の位置をもっと正確に分かれば、誤差もさらに正確に分かります。

誤差についての今

素数定理は「ほぼ Li(x)\mathrm{Li}(x)」と言っているだけで、誤差の大きさについては、さらに細かい問題があります。ド・ラ・ヴァレー・プーサンの結果(1899年)では、誤差は xx より少し小さい程度と分かっていますが、リーマン予想が正しければ、誤差はおおよそ xlog⁡x\sqrt{x}\log x 程度におさえられると分かっています(フォン・コッホ、1901年)。つまり、リーマン予想は「素数定理の誤差をいちばんせまく押さえられるか」という問いと同じ意味をもっています。この意味で、素数定理は終点ではなく、リーマン予想への入口でもあります。

おもしろい事実:Li(x) は、いつも π(x) より大きい?

xx が小さいうちは、Li(x)\mathrm{Li}(x) は π(x)\pi(x) より、いつも少し大きくなります。実際に調べられた範囲(101810^{18} ぐらいまで)では、ずっとそうです。そのため、「Li(x) は、いつも π(x) より大きい」と思われていました。ところが1914年、リトルウッドが、この大小が、無限に何度も入れかわることを証明しました。最初に逆転する場所は、1031610^{316} のあたりだろうと推測されていて、いまも見つかっていません。「どんなに大きな数まで確かめても、証明にはならない」好例です。ゴールドバッハ予想でも同じことが言えます。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

素数定理は「xx が大きいほど、見積もりが正しくなる」という約束。小さい xx では、ずれがあるのが当然なんだ。「→\to 1」と書くときの矢印の意味を、しっかり確かめておこう。

素数定理はなぜ難しかったのか

1. 素数の並びは、でたらめに見える

素数を小さい順に並べても、規則的な式は見つかりません。2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、…。差は 1、2、2、4、2、4、2、4、6、2、6、…。この不規則さの中から、「個数だけは規則的」という法則を見つけ、証明するのは、とても難しいことでした。数え上げの方法だけでは、チェビシェフのように「ある範囲にはさむ」ところまでしか行けませんでした。

2. 実数だけでは足りなかった

チェビシェフまでは、実数の世界の道具で素数を調べていました。ところが、素数定理を証明するには、複素数(虚数・複素数)の世界でゼータ関数を調べる必要がありました。「整数の問題を解くために、複素数の関数を使う」という発想は、リーマンが1859年に示すまで、だれも思いつかなかったことです。そのため、リーマンの論文から証明まで、さらに37年かかりました。

3. 「零点がない」ことを示すのが難しい

決め手となる「実部が1の直線上に零点がない」を示すのは、アダマールの業績ほどの数学者にとっても大仕事でした。ここで使われた技は、三角関数の不等式を使って「もし零点があれば、矛盾が出る」と示すものでした(プーサンとアダマールの証明の中心です)。

4. 「初等的」な証明がなかなか見つからなかった

複素数を使わない証明は、1949年までなかったので、その間、「複素数を使わなければ、素数定理は証明できないのでは」とすら言われました。ハーディが、そのような初等的な証明が見つかれば、数論の基本的な理論をもう一度作り直す必要が出るだろう、と述べたことが知られています(といわれます)。エルデシュとセルバーグが証明を見つけたとき、数学者たちは大きく驚きました。

サクラちゃん

サクラちゃん

整数の問題なのに、複素数が出てくるんですか?

合格先生

合格先生

そうなんだ。数学は、一見関係のない分野が、とつぜんつながることがある。素数と複素数が結びついたことで、「素数の問題は、実は関数の問題だった」と分かった。それが解析的整数論のはじまりなんだよ。

よくある誤解:素数定理は「素数の公式」?

「素数定理があれば、nn 番目の素数が分かる」と思う人がいますが、それはまちがいです。素数定理が教えてくれるのは、個数のおおよその大きさだけで、「何番目の素数がいくつか」や「ある数が素数か」は教えてくれません。ただし、素数定理から、「nn 番目の素数はおよそ nlog⁡nn\log n」という見積もりは出てきます(n=1000n=1000 なら約6908。実際は7919です)。

受験・勉強と素数定理のつながり

中学受験:素数は「だんだんまばらになる」

中学受験で習う素数の表を見ると、1〜10に4個、11〜20に4個、21〜30に2個、…と、少しずつ減っていきます。100までに25個(4分の1)、1000までに168個(約6分の1)、1万までに1229個(約8分の1)です。これは、素数定理の「約 log⁡x\log x 個に1個」という性質のひとつの現れです。素因数分解と約数の個数と合わせて、100までの素数25個はぜひ覚えましょう。

高校・大学受験:対数と極限の練習になる

素数定理そのものは入試には出ませんが、その中に出てくる道具は、入試のど真ん中です。

  • 対数:log⁡x\log x の値を見積もる(log⁡102≈0.3010\log_{10}2\approx0.3010、log⁡103≈0.4771\log_{10}3\approx0.4771 など)。常用対数とけた数・最高位の数は国公立大2次の頻出問題です。自然対数と常用対数の関係 log⁡x=log⁡10x÷log⁡10e≈2.3026log⁡10x\log x=\log_{10}x\div\log_{10}e\approx2.3026\log_{10}x を覚えておくと、素数定理の見積もりが速くなります。
  • 極限:lim⁡x→∞π(x)x/log⁡x=1\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{\pi(x)}{x/\log x}=1 のように、比の極限を考える。数列の極限・無限等比級数や収束と発散の考え方です。
  • 積分:Li(x)\mathrm{Li}(x) は定積分。定積分と面積で、曲線の下の面積として考えられます。
  • 数列の和と積分の大小:積分による不等式の評価(和と積分の大小)は、素数定理の証明の下ごしらえにも使われる技術です。

「素数の個数を見積もる」ような問題に出会ったら、まず小さい xx で表を作ることです。そして、近似式と実際の値をくらべる。これは、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)の「実験する」習慣そのものです。

数学オリンピックと大学以降

数学オリンピックでは、素数定理そのものは使えませんが、チェビシェフの結果(nn から 2n2n のあいだに素数がある)や、素数の個数の簡単な評価が使われることがあります。大学では、解析的整数論の授業で、この定理を学びます(数学オリンピックの問題(長方形に詰めた正方形)も参考にどうぞ)。

素数定理が数学・社会にあたえた影響

  • 解析的整数論の誕生:整数の問題を、複素関数で調べるという新しい分野が、素数定理を中心にひらけました。ディリクレの業績と生涯の算術級数定理から、リーマン、アダマール、プーサンへと続く道です。
  • リーマン予想の動機:素数定理の証明に使われたゼータ関数の零点の話は、そのままリーマン予想につながります。リーマン予想は、素数定理の誤差を最小にする問題でもあります。
  • 暗号(RSA暗号):インターネットの暗号は、大きな素数を2つ見つけてかけ合わせることに頼っています。素数定理があるから、たとえば2の1024乗ぐらいの数のなかから素数を探すと、log⁡(21024)≈710\log(2^{1024})\approx710 なので、約710個に1個(奇数だけ調べれば約355個に1個)の割合で見つかる、と見積もれます。「探せばすぐ見つかる」と分かるおかげで、安全な暗号を毎回つくれるのです。
  • 確率的な見方:素数を「確率 1/log⁡x1/\log x で出てくる数」と見る考え方(クラメールのモデル)は、双子素数やゴールドバッハ予想の予測にも使われます。双子素数予想やゴールドバッハ予想で、予想される個数を見積もるのに使えます。
  • コンピューターの検算:π(x)\pi(x) の正確な値は、10の20乗をはるかに超える大きさまで計算されています。素数定理の見積もりと比べることで、プログラムが正しいかの検査もできます。

ガウスの時代には、素数の表を手で作っていました。いまはパソコンで何十億もの素数を一瞬で調べられます。それでも「なぜ x/log⁡xx/\log x なのか」を理解するには、オイラーの業績と生涯の積の式からリーマンの複素関数まで、200年以上の数学が必要でした。

素数定理に挑戦!練習問題

やさしい

  1. 100以下の素数は25個です。100÷log⁡100100\div\log 100 で見積もると、およそ何個になりますか(log⁡100≈4.6\log 100\approx4.6 とします)。
    答えと解説を見る100÷4.6≈100\div4.6\approx 21.7個。実際の25個より少し少なめですが、だいたい合っています。
  2. 1000のあたりでは、素数はおよそ何個に1個の割合で出てきますか(log⁡1000≈6.9\log 1000\approx6.9 とします)。
    答えと解説を見る約7個に1個(6.9個に1個)。実際、1000以下の素数は168個で、約6個に1個です。

ふつう

  1. 100万以下の素数の個数を、x÷log⁡xx\div\log x で見積もりなさい(log⁡106≈13.8\log 10^6\approx13.8 とします)。
    答えと解説を見る1000000÷13.8≈1000000\div13.8\approx 72,400個。実際は78,498個です。
  2. 上の問題で、実際の個数78,498個と見積もりのちがいは、実際の何%でしょうか(約72,400個として、小数第1位を四捨五入)。
    答えと解説を見る78498−72400=609878498-72400=6098 個の差。6098÷78498≈0.0786098\div78498\approx0.078 なので、約8%。10億まで行くと、約5%まで小さくなります。

むずかしい

  1. 10億(10910^9)のあたりでは、素数はおよそ何個に1個の割合で現れますか(log⁡109=9log⁡10≈9×2.3=20.7\log10^9=9\log10\approx9\times2.3=20.7 とします)。また、10億から連続する100個の整数には、素数がおよそ何個ふくまれますか。
    答えと解説を見る約20.7個に1個。100個の整数なら、100÷20.7≈100\div20.7\approx 約4.8個です。
  2. 素数定理から、「nn 番目の素数はおよそ nlog⁡nn\log n」という見積もりが出ます。n=1000n=1000 のとき、この見積もりはいくつですか(log⁡1000≈6.9\log1000\approx6.9 とします)。実際の1000番目の素数は7919です。
    答えと解説を見る1000×6.9=1000\times6.9= 約6900。実際の7919より少し小さい値です。見積もりが少し小さくなるのは、x/log⁡xx/\log x が実際の個数より小さめだったことと同じ理由です。

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よくある質問

素数定理とは何ですか?

素数定理とは、x以下の素数の個数がおよそ x÷log x 個になるという定理です。xが大きくなるほど、実際の個数と x÷log x の比が1に近づきます。1896年にアダマールとド・ラ・ヴァレー・プーサンが証明しました。

素数定理はだれが考えたのですか?

ガウスが1792〜93年ごろ、15〜16歳のときに素数の表から気づいたと、のちの手紙で語っています。ルジャンドルも1798年に近い推測を発表しました。ふたりとも証明はできませんでした。

素数定理はだれがいつ証明しましたか?

1896年に、フランスのアダマールとベルギーのド・ラ・ヴァレー・プーサンが、それぞれ別々に証明しました。ゼータ関数の零点が実部1の直線上にないことを示すのが決め手でした。

x÷log x のlogは何ですか?

ネイピア数 e を底とする自然対数です。たとえば log 1000 は約6.9です。常用対数との関係は、自然対数が常用対数の約2.3026倍になります。

素数定理を使うと、素数がどのくらいの割合で出てくると分かりますか?

xのあたりでは、約 log x 個に1個が素数です。1000付近なら約7個に1個、100万付近なら約14個に1個です。桁がふえるとまばらになりますが、ゆっくりです。

素数定理は、n番目の素数を教えてくれますか?

いいえ。個数のおおよその大きさが分かるだけです。n番目の素数はおよそ n×log n という見積もりが出ますが、正確な値までは分かりません。

リーマン予想と素数定理のちがいは?

素数定理は「おおよその個数」を教え、すでに証明されています。リーマン予想は「その誤差がどれだけ小さいか」を決める予想で、未解決です。予想が正しければ、誤差がほぼ√x×log x の大きさにおさまると分かります。

素数定理は暗号にどう役立つのですか?

RSA暗号などは大きな素数を使います。素数定理のおかげで、2の1024乗付近では約710個に1個が素数と分かり、ランダムに探せば現実的な時間で見つかると見積もれます。

素数定理は受験に出ますか?

定理そのものは出ませんが、対数、極限、積分、不等式の評価といった、素数定理の中で使われる道具は大学入試の中心です。中学受験でも、素数が大きいほどまばらになることを表で体験できます。

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出典・参考

  • J. Hadamard, “Sur la distribution des zéros de la fonction ζ(s) et ses conséquences arithmétiques”, Bulletin de la Société Mathématique de France, 1896年
  • C. J. de la Vallée Poussin, “Recherches analytiques sur la théorie des nombres premiers”, Annales de la Société Scientifique de Bruxelles, 1896年
  • B. Riemann, “Über die Anzahl der Primzahlen unter einer gegebenen Grösse”, 1859年
  • D. J. Newman, “Simple analytic proof of the prime number theorem”, The American Mathematical Monthly, 1980年
  • MacTutor History of Mathematics, “Pafnuty Lvovich Chebyshev”(University of St Andrews)
  • Wikipedia(英語)“Prime number theorem”

最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦