ポリアは何をした人?業績・名言をわかりやすく|いかにして問題をとくか・4段階・ランダムウォーク

ポリアは何をした人?業績・名言をわかりやすく|いかにして問題をとくか・4段階・ランダムウォーク

有名な数学者一覧 › 20世紀 › ハンガリー・アメリカ

中学受験高校受験大学受験

ポリアGeorge Pólya

ひとことで言うと

『いかにして問題をとくか』で「理解する・計画を立てる・実行する・ふり返る」の4段階を示した、問題解決の教師。ランダムウォークの定理でも知られる。

名前ジョージ・ポリア(ポーヤ・ジェルジュ、George Pólya)
生没年1887年12月13日〜1985年9月7日(97歳)
国ハンガリー生まれ。スイス(チューリッヒ)、のちアメリカ(スタンフォード大学)で活躍
分野解析学・確率論・組合せ論・数学教育
主な業績『いかにして問題をとくか』(1945年)、ランダムウォークの再帰性の定理(1921年)、ポリアの壺、ポリアの数え上げ定理、セゲーとの『解析における問題と定理』
名前がつくものポリアの4段階・ポリアの壺・ポリアの数え上げ定理・ポリアの定理(ランダムウォーク)
よばれ方問題解決の先生、ヒューリスティクスの提唱者

このページのポイント

  • 『いかにして問題をとくか』(1945年)で、①理解する ②計画を立てる ③実行する ④ふり返るの4段階を示した。受験勉強にそのまま使える
  • 1921年、ランダムウォークは1・2次元ならかならず出発点にもどり、3次元以上ではもどらないことがあると証明した
  • ポリアの壺(当たった色が増える確率モデル)や、図形を数えるポリアの数え上げ定理でも知られる

ポリアは何をした人?(業績をひとことで)

ジョージ・ポリア(ハンガリー名はポーヤ・ジェルジュ、George Pólya、1887〜1985年)は、ハンガリー生まれでスイス、のちにアメリカで活躍した数学者です。日本では「ポリア」と書かれることが多く、「ポーヤ」とも書かれます。解析学(微積分の発展)・確率・組合せ論で大きな仕事をしましたが、世界でいちばん名前が知られているのは、数学の問題の考え方を本にした『いかにして問題をとくか(How to Solve It)』(1945年)の著者としてです。この本は100万部をこえて売れ、17の言語に翻訳されたと伝えられます。

この本の中心は、問題を解くときの4つの段階です。①問題を理解する ②計画を立てる ③計画を実行する ④ふり返る。たったこれだけですが、数学だけでなく、受験勉強、仕事、ふだんの困りごとまで、あらゆる「解けない」に使える考え方として世界中の先生に読まれてきました。受験生にとっては、「答えが合っていたら終わり」ではなく、④のふり返りまでやって力にするための、いちばんの手引きです。

研究者としてのポリアは、確率の分野でもよく知られています。1921年に証明したランダムウォーク(酔っぱらいの千鳥足)の再帰性の定理は、「1次元と2次元の千鳥足は、いつかかならず出発点にもどる。3次元以上ではもどらないことがある」という、ふしぎな結果です。さらにポリアの壺、図形を数えるポリアの数え上げ定理、友人セゲーとの問題集『解析における問題と定理』などがあります。この記事では、「ポリアの4段階」を中心に、ランダムウォークと壺の話まで、図と計算をつかってやさしく説明します。

うかるくん

うかるくん

問題が解けないとき、どこから手をつければいいか分からなくなります……。

合格先生

合格先生

それこそポリアが一生をかけて答えた問いだよ。「分からない」のは、才能がないからじゃない。考え方の「手順」を知らないだけ、と彼は考えた。だから、誰でも使える手順を本にしたんだ。この記事では、その手順を受験に使える形にして紹介するよ。

ポリアの生涯と年表

ブダペストで生まれ、数学の先生をきらった少年

ポリアは1887年12月13日、ハンガリーの首都ブダペストで生まれました(MacTutor)。ブダペスト大学に入ったのは1905年です。法律を半年学んだあと、言語学や文学を学び、そののちに数学へ進みました。最初から数学一筋ではなく、回り道をした人なのです。のちに本人は、学校の数学の授業が好きになれなかったことを語っていると伝えられます。「教えられ方がつまらないから、数学がきらいになる」という経験が、のちの『いかにして問題をとくか』や数学教育への情熱につながったといわれます。

ウィーン・ゲッティンゲン、そしてチューリッヒへ

ブダペストで博士号を受けたのは1911〜12年ごろです。そのあとウィーンやゲッティンゲンに学び、1914年にスイスのチューリッヒ工科大学(ETH)に私講師として迎えられました。大学の同僚だったアドルフ・フルヴィッツの手配で、この職についたと資料にあります。1920年に員外教授、1928年に正教授になりました。チューリッヒでの約25年間に、ポリアの代表的な研究が生まれます。

ランダムウォークの定理(1921年)と、セゲーとの問題集(1925年)

1921年に、格子の上のランダムウォークの定理を証明しました。1925年には、ブダペスト時代からの友人ガーボル・セゲーとの共著『解析における問題と定理(Aufgaben und Lehrsätze aus der Analysis)』を出しました。この本は、基本的な問題を順に解きながら、数学の考え方を学べるように作られていて、のちの『いかにして問題をとくか』の考え方のもとになったと見られています。

アメリカへ、スタンフォード大学で数学教育に力を注ぐ

ヨーロッパの政治情勢が悪くなり、1940年にアメリカへ渡りました。ブラウン大学、スミス大学で教えたあと、スタンフォード大学の教授になりました。1953年にスタンフォードを退職したあとも名誉教授として、授業や講演を続けました。『いかにして問題をとくか』は1945年に出版されました。ドイツ語で書き始めたものを英語に直した本で、アメリカで出版社を見つけるのにも苦労したと資料にあります。それが、いまや数学教育の古典です。

晩年まで教壇へ

ポリアは長生きで、高齢になってからも、教師向けの講座や講演で教えつづけました。1967年には、1913年の訪問から54年ぶりに故郷ハンガリーを訪れています。ハンガリー科学アカデミーの名誉会員でもあります。1985年9月7日、カリフォルニア州パロアルトで亡くなりました。97歳でした。

ポリアの歩み1887ブダペストで生まれる1914チューリッヒ工科大学へ1921ランダムウォークの定理1925セゲーと問題集を出版1940アメリカへ(のち、スタンフォード大学)1945『いかにして問題をとくか』196754年ぶりに故郷ハンガリーへ1985パロアルトで亡くなる(97歳)年は本文の年表のとおり
ポリアの歩み。ブダペスト→チューリッヒ→アメリカ。1945年に『いかにして問題をとくか』
年できごと
1887年12月13日、ハンガリーのブダペストで生まれる
1905年ブダペスト大学に入学(法律・言語学ののち、数学へ)
1911〜12年ごろブダペストで博士号(資料により年が少し異なる)
1912〜13年ゲッティンゲンで学ぶ
1914年スイスのチューリッヒ工科大学(ETH)に私講師として着任
1921年ランダムウォークの再帰性の定理を証明(1・2次元はもどる、3次元以上はもどらない)
1923年壺のモデル(ポリアの壺)を論文にする(エッゲンベルガーとの共著)
1925年セゲーと『解析における問題と定理』を出版
1928年チューリッヒ工科大学の正教授になる
1937年図形・化合物を数える「ポリアの数え上げ定理」の論文
1940年ヨーロッパを離れ、アメリカへ。のちスタンフォード大学へ
1945年『いかにして問題をとくか』を出版
1954年『数学と蓋然的推論(Mathematics and Plausible Reasoning)』を出版
1967年54年ぶりにハンガリーを訪れる
1985年9月7日、アメリカ・パロアルトで亡くなる(97歳)

ポリアの主な業績をやさしく解説

業績1 『いかにして問題をとくか』と4つの段階

ポリアは、数学の問題を解くときに、頭の中でどんなことが起こっているかを、ていねいに言葉にしました。それが次の4つの段階です。

ポリアの4つの段階 ① 問題を理解する何が分かっていて、何を求めるのか ② 計画を立てる似た問題は? 図は? 逆から考えたら? ③ 計画を実行する1歩ずつ、正しいかを確かめながら ④ ふり返る答えの検算・別解・ほかの問題に使えるか ④のあと、新しい問題の①へ。この循環が実力になる
ポリアの4つの段階。理解する→計画を立てる→実行する→ふり返る。ふり返りのあと、次の問題へ

① 問題を理解する。「未知のものは何か? 与えられているもの(データ)は何か? 条件は何か?」を、自分の言葉で言い直します。図をかき、記号を入れます。問題の意味が分かっていないまま計算を始めるのが、いちばんの失敗のもとです。

② 計画を立てる。ここがポリアの本の中心です。「前に見た問題と似ていないか?」「似た問題で、結果を使えないか?」「未知のものを同じようにもつ、別の問題を知っているか?」「補助になる問題はないか?」「条件のどこかを少し変えられないか?」と、自分に問いかけます。ポリアは、そのためのヒューリスティクス(発見のための経験的な手がかり)を整理しました。代表的なものを次にまとめます。

  • 図をかく:問題の関係を目に見える形にする。
  • 類題を思い出す:似た問題の解き方や結果を借りる。
  • 逆向きに考える:求めるものから、さかのぼって考える。
  • 特殊な場合で試す:数を小さくして実験し、きまりを見つける。
  • 一般化する:特別な数を文字に置きかえて、問題を広く見る。
  • 補助の問題・補助線を入れる:もとの問題に近づく、やさしい問題を作る。
  • 条件を分ける:条件を分けて、一部ずつ満たす方法を考える。

この中でポリアが大事にした言葉があります。「ある問題が解けなければ、それより易しい問題で、解けるものがある。それを見つけよ」(MacTutor に引用される言葉)。つまり、難しい問題の前でまず止まらずに、「できる形」に作り変えるのです。

③ 計画を実行する。立てた計画を1歩ずつ実行します。各段階で、「この一歩は正しいか? 正しいと証明できるか?」と確かめます。

④ ふり返る。ポリアは、この段階をいちばん重く見ました。「答えを検算できるか? 別のやり方でも出せるか? 一目で分かる方法はないか? この結果や方法を、ほかの問題に使えないか?」。解けたあとにこそ、いちばん多くのことを学べるというのが、ポリアの考えです。

この4段階は、中学受験の算数の文章題にも、大学入試の証明問題にも使えます。たとえば、つるかめ算を次の図で考えてみましょう。

図をかく:つるかめ算の面積図鶴 3匹亀 5匹足が2本多い分2本合わせて8匹(横の長さ)全部が鶴なら足は 2×8=16本。実際は26本足りない 10本 ÷ 亀1匹で増える2本 = 亀5匹鶴は 8−5=3匹図にすると式の意味が見える
つるかめ算の面積図。全部が鶴なら足16本。足りない10本を、亀1匹の分2本でわって亀5匹

「鶴と亀が合わせて8匹、足の数は合わせて26本。鶴と亀は何匹ずついるか」。① 理解:求めるのは鶴の数と亀の数、分かっているのは合計の数と足の合計。② 計画:図をかく。全部が鶴だと仮に考える(特殊な場合)。③ 実行:全部が鶴なら足は16本、実際は26本なので10本足りない。亀に1匹置きかえるごとに足は2本増えるから、10÷2=5匹が亀。鶴は3匹。④ ふり返り:鶴3匹×2本+亀5匹×4本=6+20=26本。合っている。じゃあ、文字を使って方程式でも解けるか? 2x+4(8−x)=262x+4(8-x)=26 を解くと x=3x=3。同じ答えだ。この「別の方法でも確かめる」までが、④です。つるかめ算はつるかめ算の解き方と面積図で、方程式の解き方は連立方程式の解き方でも確かめられます。

業績2 ランダムウォークの再帰性の定理(1921年)

ランダムウォークは、「酔っぱらいの千鳥足」ともよばれます。方眼の目の上を、1歩ごとに上下左右のどれかを同じ確率で選んで進む、という模型です。次の図は、90歩の一例です。

2次元のランダムウォーク(90歩の一例)出発点1歩ごとに上下左右をサイコロで決める1・2次元では「いつかかならず」出発点にもどる
平面のしき目の上を、上下左右に同じ確率で1歩ずつ進むランダムウォークの一例。赤い点が出発点

ここで問題です。「このふらふら歩きは、いつか出発点にもどってくるだろうか?」。ポリアは1921年に、答えを証明しました。1次元(直線)と2次元(平面)では、確率1で(つまり「ほぼかならず」)何度でも出発点にもどってくる。3次元(空間)以上では、もどらないまま遠くへ行ってしまう確率が正になるというのです。

いつか出発点にもどる確率1次元(直線)100%2次元(平面)100%3次元(空間)34.1%4次元19.3%5次元13.5%2次元と3次元のあいだで、性質ががらりと変わる(3次元以上の値はよく知られた数値の近似)
次元ごとの、出発点にいつかもどる確率。1・2次元は100%、3次元は約34%、4次元は約19%、5次元は約14%

3次元でもどる確率はおよそ0.34(約34%)、つまり3次元の酔っぱらいは、約66%の確率で二度と出発点にもどれません。次元が増えるほど、この確率はさらに小さくなります。

この結果には、有名な逸話があります。ポリアは、チューリッヒ郊外の森を散歩していたとき、同じ学生のカップルに何度も出会い、「こんなに偶然会うなんて」と恥ずかしくなった、ということです。それが、平面のランダムウォークが何度も出会う(もどってくる)ことを調べるきっかけになったと伝えられます(ポリア自身が語った逸話とされますが、細かい点は話によって異なります)。

1次元の場合を、小さく計算してみましょう。直線の上を、右か左に1歩ずつ、同じ確率(12\tfrac12)で進みます。2歩で出発点にもどる確率は、「右左」「左右」の2通りが4通り中なので 24=12\dfrac{2}{4}=\dfrac12 です。4歩でもどる確率は、4C224=616\dfrac{{}_4\mathrm{C}_2}{2^4}=\dfrac{6}{16}。一般に 2n2n 歩でもどる確率は

2nCn22n≈1πn\frac{{}_{2n}\mathrm{C}_n}{2^{2n}}\approx\frac{1}{\sqrt{\pi n}}

で、組合せの公式 nCrを使って求められます。この確率を足し合わせると「限りなく大きくなる」(発散する)ことが、「何度でももどる」ことに対応します。平面では 1πn\dfrac{1}{\pi n} のように小さくなりますが、それでも足し合わせると発散し、3次元では n−3/2n^{-3/2} のように急に小さくなって足し合わせた値が有限に収まります。これが、2次元と3次元の境目の正体です。

業績3 ポリアの壺:「当たった色が増える」確率モデル

壺に赤い玉1個と青い玉1個が入っています。1個取り出して色を見て、取り出した玉と同じ色の玉を1個足して壺にもどします。これをくり返すのが、ポリアの壺です。

ポリアの壺:当たった色が増える最初:赤1・青1赤を引く確率 1/2 赤2・青1次に赤 2/3 赤3・青1次に赤 3/4 引いた玉と同じ色を1個足してもどす赤1・青1から3回引くと、赤の回数はどれも確率 1/4(練習問題で確認)「勝つほど勝ちやすい」感染や人気の広がりの模型
ポリアの壺。赤を引くと赤が増え、次に赤を引く確率が上がる。赤1青1から始まる

赤を引くと赤が2個になるので、次に赤を引く確率は 23\tfrac23 に上がります。さらに赤を引けば 34\tfrac34。「当たりが出ると、さらに当たりやすくなる」しくみです。この模型は、病気が広がるとき、人気のものがさらに人気を集めるとき、といった「増えるほど増えやすい」現象の最も簡単な模型として知られています。

ふしぎなのは、赤1・青1から nn 回引いたとき、赤を引く回数が 0,1,…,n0,1,\dots,n のどれになる確率もすべて等しく 1n+1\dfrac{1}{n+1} になることです。n=3n=3 なら、各 14\tfrac14。たとえば「赤赤赤」の確率は 12×23×34=14\dfrac12\times\dfrac23\times\dfrac34=\dfrac14 です。確率の基本は確率の基本と余事象、玉の取り出しの問題はふくろの中の玉の問題にまとめてあります。壺の問題は、大学の確率論や、現代の機械学習・統計学(ベイズ統計)でも出てくる古典です。

業績4 ポリアの数え上げ定理と、解析学の問題集

ポリアは1937年に、「対称性を使って、図形や分子の数を数える」方法を発表しました。たとえば、正方形の4つの頂点を赤か青でぬる方法は、回してぴったり重なるものを同じと考えると何通りあるでしょうか? 単純に数えると 24=162^4=16 通りですが、回転で重なるものを同じとみなすと、6通りになります。このような「重なるものを1つと数える」問題を、一般的に解いたのがポリアの定理です。化学で、分子に結合する原子の並べ方の数を数えるときにも使われます。順列の数え方は円順列・重複順列の公式の延長にあたります。

また、1925年にセゲーと書いた『解析における問題と定理』は、およそ1000の問題を、やさしい順に並べて、解答と解説をつけた本です。問題を解きながら、数列・級数・関数の使い方を学んでいく構成で、いまでも解析学を学ぶ人の定番の問題集として読まれています。

ポリアの名前がつく公式・定理・用語

  • ポリアの4段階(理解する・計画を立てる・実行する・ふり返る):『いかにして問題をとくか』の中心。
  • ポリアのランダムウォークの定理:1・2次元では何度でも出発点にもどり、3次元以上ではもどらないことがある(1921年)。
  • ポリアの壺:同じ色の玉を足してもどす確率モデル。
  • ポリアの数え上げ定理:対称性を使って図形や分子の種類を数える。
  • ポリア・セゲーの問題集:『解析における問題と定理』。
  • ヒューリスティクス:問題を解く手がかりを探すための経験的な方法。ポリアが数学教育に広めた用語。

受験で使う関連する公式・用語には次のものがあります。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

ポリアの4段階の中で、いちばん大事なのは④ふり返りだよ。答えが合っていても、「どうして解けたのか」「別のやり方は?」を1分考える。この1分が、次の入試で同じタイプの問題を解く力になるんだ。

ポリアの逸話と名言

「ある問題が解けなければ、易しい問題を見つけよ」

ポリアの言葉として、MacTutor は次の言葉を紹介しています。

If you can't solve a problem, then there is an easier problem you can solve: find it.(ある問題が解けなければ、解けるもっと易しい問題がある。それを見つけよ)

ジョージ・ポリア(MacTutor History of Mathematics「George Pólya」に引用される言葉)

ポリアが好んだ「易しい問題を見つける」とは、問題の一部を取り出す、数を小さくする、条件を1つ外す、といった作業のことです。難問の前で止まらずに、1歩踏み出す勇気をくれる言葉です。

A great discovery solves a great problem but there is a grain of discovery in the solution of any problem.(大発見は大問題を解くが、どんな問題の解決にも、ひとつぶの発見がある)

ジョージ・ポリア(『いかにして問題をとくか』の序文にある言葉として知られる)

森で何度も会う人たち(ランダムウォークのきっかけ?)

ポリアが、チューリッヒの郊外の森を散歩していて、同じ学生のカップルと何度も出会った、という話があります。「こんなに偶然会うなんて」と気まずくなり、2次元のランダムウォークは何度も同じ点にもどるはずだ、と気づいたのだと伝えられます。出典は本人の回想とされますが、細かい点は語られ方によって変わるため、「諸説あり」の逸話として楽しむのがよいでしょう。

数学を教えることに、一生をかけた人

ポリアは、研究者としても一流でしたが、「数学をどう教えるか」に一生の力を注いだ人として知られます。アメリカに渡ってからは、高校の数学教師向けの講座を長く続けました。『いかにして問題をとくか』のほか、『数学と蓋然的推論(Mathematics and Plausible Reasoning、全2巻、1954年)』、『数学的発見(Mathematical Discovery、1960年代)』など、「発見のしかた」の本をいくつも書いています。数学教育の研究者のシェーンフェルドは、数学の問題解決の研究を「ポリアの前と後に分けられる」と評した、と MacTutor に紹介されています。

「もっともらしい推論」を大事にした

ポリアは、証明のような「確かな推論」だけでなく、「もっともらしい推論」(例を調べて、ほぼ正しいだろうと見当をつける考え方)も大事にしました。数学者は、完成した証明を発表するまでに、たくさんの見当・失敗・やり直しを重ねています。教科書には、きれいな完成形しか載っていません。ポリアは、その「舞台裏」を見せたかったのです。

サクラちゃん

サクラちゃん

先生、ポリアって、数学が得意な人にしか役に立たない考え方じゃないですか?

合格先生

合格先生

いいや、逆だよ。得意な人は、無意識にこの手順をやっているんだ。苦手な人が、手順を意識して1つずつ使えば、少しずつ同じことができるようになる。ポリアは、そのために手順を書き出したんだよ。

受験・勉強とポリアのつながり

ポリアは、受験生にとって「最高の勉強法の先生」です。「数学の勉強法」の記事を書くとき、ほぼ全員がポリアの考えを土台にしているといってもよいほどです。受験での使い方を、段階ごとに具体的に書きます。

① 問題を理解する:問題文を「図と式」にする

文章題は、いきなり計算せず、まず図や表にします。つるかめ算なら面積図、旅人算なら線分図、確率なら樹形図です。樹形図と数え上げは、確率・場合の数の問題の「理解」の道具です。「求めるものは何か」に線を引く習慣をつけると、問題の読みまちがいが減ります。

② 計画を立てる:「ストックから探す」力

入試問題は、まったく新しい問題ではありません。ほとんどが、「どこかで見た型」の組み合わせです。解法を暗記するのは、悪いことではなく、②で使うストックを作る作業です。ただし、暗記した解法を、「いつ・なぜ使うか」と合わせて覚えておく必要があります。数学の勉強の進め方は、数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)にくわしく書いています。また、国語や英語も含めた、勉強法全般は大学受験の勉強法のまとめが参考になります。

③ 計画を実行する:計算ミスを減らす

「実行」の段階では、1行ごとに「ここは合っているか」を意識します。途中式を省かない、符号や約分を確かめる、といった基本が大切です。記述式の試験では、途中の考えを書くことが、そのまま部分点になります。

④ ふり返る:復習ノートを作る

解いたあとに、次の3つをノートに書いてみましょう。①この問題の「かぎ」は何だったか(1行)。②別の解き方はないか。③似た問題にどう使えるか。これだけで、同じタイプの問題を落とさなくなります。入試の過去問演習でも同じです。京都大学の入試を例にとると、京大理系数学の出題分析(1999〜2026年度)を読んで、出題の傾向を「ふり返り」の材料にできます。難関大の数学は、ポリアの言う「特殊な場合で試す」「小さい数で実験する」が効く問題がよく出ます。

中学受験:図をかく習慣

中学受験の算数では、「線分図」「面積図」「ダイヤグラム」など、図で考える力が点数に直結します。ポリアの「図をかく」はそのまま使えます。算数オリンピックなど難しい問題の雰囲気は数学オリンピックの問題(長方形に詰めた正方形)で味わえます。

高校受験・大学受験:「特殊化」と「一般化」

高校・大学受験では、整数問題や数列の問題で、n=1,2,3n=1,2,3 と小さい数で実験してきまりを見つけ、nn で一般化して証明する(数学的帰納法)、という流れが定番です。これはポリアのヒューリスティクスそのものです。確率の応用問題では、ランダムウォークのような「動く点の確率」も出ます。反復試行の確率と順列・組合せの基本を固めておくと、道具としてすぐ使えます。

ポリアがその後の数学にあたえた影響

  • 数学教育:『いかにして問題をとくか』は、世界中の数学の先生に読まれ、「問題解決型の学習」「探究学習」のもとになりました。日本の学習指導要領でも、「見通しをもつ」「ふり返る」という考え方が重視されています。
  • 確率論:ランダムウォークの再帰性の研究は、のちの確率過程論(ブラウン運動など)や、物理の拡散の研究につながりました。「再帰的」と「一時的」という区別は、いまも確率論の基本です。
  • 組合せ論・化学:ポリアの数え上げ定理は、対称性を使った数え上げの基礎として、化学の分子構造、グラフ理論、暗号の研究にも使われています。
  • ポリア賞:数学の賞に「ポリア賞(George Pólya Prize)」が、応用数学の学会や、数学教育の分野などで設けられています。
  • 弟子・影響を受けた人:数学者のイムレ・ラカトシュは『証明と反駁』を書くとき、ポリアの考えに影響を受けたといわれます。計算機科学や人工知能の研究者にも、「ヒューリスティクス」という考え方は引きつがれています。

ポリアの仕事は、オイラーの業績と生涯やガウスの業績と生涯のような、数学の「内容」を作った人たちとは少し違います。ポリアは、数学の「考え方」を言葉にして、誰でも使える形にした人です。同じ時代のハーディの業績と生涯やリトルウッドの業績とは、解析学の同じ分野で、親しく交流しました。ポリアの死後も、その考え方は教室で生き続けています。

ポリアに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 鶴と亀が合わせて10匹います。足の数は合わせて32本です。鶴は何匹ですか。(ポリアの方法:全部が鶴だと仮定して考える)
    答えと解説を見る全部が鶴なら足は 2×10=20本。実際は32本なので12本足りません。亀1匹に置きかえると足は2本ふえるので、亀は 12÷2=6匹。鶴は 10−6=4匹。検算:4×2+6×4=8+24=32本で合っています。
  2. ある数に3をかけて、5をひくと19になりました。ある数はいくつですか。(逆向きに考える)
    答えと解説を見る逆向きにたどります。19に5をたすと 24。24を3でわると 8。ある数は8。検算:8×3−5=19。

ふつう

  1. 直線の上で、右か左へ同じ確率(1/2)で1歩ずつ進みます。出発点から始めて、ちょうど4歩目に出発点にもどってくる確率を求めなさい。
    答えと解説を見る4歩のうち、右が2回・左が2回になればよいので 4C2=6通り。全部で 2⁴=16通り。確率は 6/16=3/8。
  2. 赤玉1個、青玉1個が入った壺から1個取り出し、同じ色の玉を1個足してもどします。続けて2回引くとき、2回目に赤が出る確率を求めなさい。
    答えと解説を見る1回目が赤(確率1/2)なら、壺は赤2・青1なので2回目が赤の確率は2/3。1回目が青(1/2)なら、赤1・青2なので赤の確率は1/3。合計 1/2×2/3+1/2×1/3=1/3+1/6=1/2。(最初と同じ確率になる、ふしぎな結果です)

むずかしい

  1. ポリアの壺(赤1・青1から開始)で、続けて3回引くとき、赤をちょうど2回引く確率を求めなさい。
    答えと解説を見る赤2回・青1回の並び方は「赤赤青」「赤青赤」「青赤赤」の3通り。「赤赤青」:1/2×2/3×1/4=1/12(赤赤のあと壺は赤3・青1なので、青は1/4)。「赤青赤」:1/2×1/3×2/4=1/12(青のあと壺は赤1・青2で、赤が1/3。そのあと赤2・青2で赤が2/4)。「青赤赤」:1/2×1/3×2/4=1/12。どれも 1/12 なので、合計 1/4。(0〜3回のどれも 1/4 になります)(0〜3回のどれも 1/4 になります)
  2. 特殊な場合から一般化する練習:1+3+5=9、1+3+5+7=16 です。最初の奇数から数えて n 個の奇数の和を予想し、n=10 のときの値を求めなさい。
    答えと解説を見る1個:1、2個:4、3個:9、4個:16 と並ぶので、n 個の和は n²(平方数)と予想できます。n=10 のとき100。(証明は、正方形に L の字の形を1つずつ足していく図や、数学的帰納法でできます)

ポリアと関係する数学者

数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、数学で使う用語の意味は数学用語辞典(意味と使い方)、勉強の進め方は数学の勉強法もどうぞ。

20世紀の数学者

← 前の時代:ラマヌジャンの業績と生涯 | 次の時代:バナッハの業績と生涯 →

有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

ポリアは何をした人ですか?

ポリアは、ハンガリー生まれでアメリカで活躍した数学者です。問題解決の4つの段階を示した『いかにして問題をとくか』(1945年)の著者として最も有名で、確率論ではランダムウォークの再帰性の定理(1921年)やポリアの壺でも知られます。

ポリアの4つの段階とは何ですか?

①問題を理解する、②計画を立てる、③計画を実行する、④ふり返る、の4つです。解けたあとにも検算・別の解き方・ほかの問題への応用を考えるのが、ポリアの方法の特徴です。

『いかにして問題をとくか』はどんな本ですか?

数学の問題を解くときの考え方を、質問のリストとして整理した本です。1945年に出版され、100万部をこえて売れ、17の言語に翻訳されたと伝えられます。数学だけでなく、受験勉強や仕事にも使える考え方が書かれています。

ポリアのランダムウォークの定理とは何ですか?

方眼の上を、上下左右に同じ確率で1歩ずつ進むふらふら歩きは、1次元と2次元ではかならず出発点にもどり、3次元以上では二度ともどらない確率が正になる、という1921年の定理です。3次元でもどる確率は約34%です。

ポリアの壺とは何ですか?

壺から玉を1個取り出し、同じ色の玉を1個足してもどす操作をくり返す確率モデルです。当たった色が増えやすくなる様子を表し、赤1・青1から始めると、赤を引く回数がどの値になる確率も等しくなるというふしぎな性質があります。

ポリアの有名な名言は何ですか?

「ある問題が解けなければ、それより易しくて解ける問題がある。それを見つけよ」という言葉が MacTutor に引用されています。難問の前で止まらず、できる形に作り変えてみる、という意味です。

ポリアの名前は「ポリア」と「ポーヤ」のどちらが正しいですか?

ハンガリー語の発音に近いのは「ポーヤ(Pólya)」ですが、日本では「ポリア」と書かれることが多く、どちらも使われます。名前はハンガリー語ではポーヤ・ジェルジュ、英語圏ではジョージ・ポリアと書かれます。

ポリアの考え方は、受験勉強にどう役立ちますか?

問題を解いたあとの④ふり返りが、いちばん効果的です。別の解き方がないか、この問題のかぎは何か、似た問題に使えないかをノートに書くと、同じタイプの問題を落とさなくなります。図をかく、小さい数で試す、逆向きに考える、といった方法も有効です。

ポリアはどこで亡くなりましたか?

1985年9月7日、アメリカのカリフォルニア州パロアルトで亡くなりました。97歳でした。晩年までスタンフォード大学の名誉教授として教壇に立ちつづけたと伝えられます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「George Pólya」(セント・アンドルーズ大学)
  • G. Pólya, “How to Solve It”, Princeton University Press(1945年)
  • G. Pólya, “Über eine Aufgabe der Wahrscheinlichkeitsrechnung betreffend die Irrfahrt im Straßennetz”, Mathematische Annalen 84(1921年)
  • G. Pólya, G. Szegő, “Aufgaben und Lehrsätze aus der Analysis”(1925年)

最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦