スメイルは何をした人?業績をわかりやすく|5次元以上のポアンカレ予想・フィールズ賞・球面の裏返し

スメイルは何をした人?業績をわかりやすく|5次元以上のポアンカレ予想・フィールズ賞・球面の裏返し

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スメイルStephen Smale

ひとことで言うと

5次元以上のポアンカレ予想を1961年に証明し、1966年にフィールズ賞を受けたアメリカの数学者。球面の裏返し、馬蹄写像、18の問題でも知られる。

名前スティーヴン・スメイル(Stephen Smale)
生年1930年7月15日生まれ(存命)
国アメリカ(ミシガン州生まれ)
分野位相幾何学・力学系・数理経済・計算理論
主な業績5次元以上のポアンカレ予想(1961年)、h-コボルディズム定理、球面の裏返し(1958年)、馬蹄写像、スメイルの18の問題(1998年)
主な受賞フィールズ賞(1966年)、ヴェブレン賞(1966年)、全米科学賞(1996年)、ウルフ賞(2007年)
名前がつくものスメイル馬蹄・スメイルの問題・h-コボルディズム定理・ブラム・シャブ・スメイルのモデル

このページのポイント

  • 1961年、5次元以上のポアンカレ予想を証明。1966年にフィールズ賞
  • 球面は、穴をあけず折り目なしで裏返せる(1958年)。馬蹄写像でカオスの数学を作った
  • 1998年、21世紀に向けた18の問題(リーマン予想・ポアンカレ予想・P対NP・ナビエ–ストークスなど)を発表

スメイルは何をした人?(業績をひとことで)

スティーヴン・スメイル(Stephen Smale、1930年〜)は、アメリカの数学者です。位相幾何学(図形をのばしたり曲げたりしても変わらない性質を調べる数学)と力学系(時間とともに変化するものの数学)の両方で、世界を変える仕事をしました。いちばん有名なのは、1961年に「5次元以上のポアンカレ予想」を証明したことです。この功績などで、1966年にフィールズ賞を受けました。フィールズ賞は、数学のノーベル賞ともいわれる賞で、4年に一度、40歳未満の数学者に贈られます。

スメイルの仕事は、ほかにもあります。球面を裏返す(球面の反転)ことが、穴をあけたり折り目をつけたりせずにできると示しました(1958年ごろ)。また、馬蹄写像とよばれる仕組みを発見して、「カオス」(予測のむずかしい動き)の数学的な理解をつくりました。さらに1998年には、21世紀に向けた「スメイルの18の問題」を発表して、世界中の数学者の目標になりました。

この記事は、スメイルが今も現役で知られる数学者であることをふまえて、公に知られた業績・受賞・論文・公の発言だけを書いています(2026年11月時点の内容です)。受験生にとってのスメイルは、「数学の問題は、次元をかえると解きやすくなることがある」と教えてくれる人です。難しい問題の前では、条件を変えて、考えやすい形にしてみる。その大切さを、スメイルの仕事は示しています。

うかるくん

うかるくん

5次元以上って……4次元までしか想像できません。数学の次元って、ふつうの次元と同じですか?

合格先生

合格先生

いい質問だね。数学の次元は、「自由に動かせる方向の数」のことなんだ。直線は1次元、平面は2次元、空間は3次元。そこから先は目で見えなくても、式なら同じように扱える。スメイルは、見えない高い次元のほうが、むしろ「動かす余地が広くて」問題が解きやすいことに気づいたんだ。

スメイルの生涯と年表

アメリカ・ミシガン州で生まれ、ミシガン大学で学ぶ

スメイルは1930年7月15日、アメリカのミシガン州フリントで生まれました(MacTutor)。ミシガン大学で1952年に学士、1953年に修士を受け、博士号は1957年に受けました。論文の題は『リーマン多様体の上の正則曲線』、指導教員は位相幾何学の大物ラウル・ボットです。シカゴ大学で講師を務めたあと(1956〜58年)、1958年から2年間プリンストン高等研究所の研究員になりました。

リオデジャネイロで見つけた「馬蹄」(1960年)

1960年、スメイルはブラジルのリオデジャネイロに滞在して研究しました。後年の本人の回想によると、ビーチで研究したことでも知られます。この時期に発見したのが馬蹄写像です。のちにカオス理論の基礎となる重要な発見でした。スメイル自身が、1998年に「リオの浜辺で馬蹄を見つける」という題の回想記事を書いています。

1961年、高次元のポアンカレ予想

1961年には、一般化されたポアンカレ予想を、5次元以上で証明しました。バークレーのカリフォルニア大学とコロンビア大学を経て、1964年からバークレーの教授になり、1995年に退職しました。その後は香港城市大学に所属し、2009年から特別教授を務めています。

1966年、モスクワのフィールズ賞と、社会への発言

1966年、モスクワで開かれた国際数学者会議でフィールズ賞を受けました。同じ年の受賞者は、アティヤ、コーエン、グロタンディーク、そしてスメイルです。スメイルは、このモスクワの会議の記者会見で、アメリカのベトナム戦争政策とソ連の行動を批判したと広く報じられました。のちにアメリカ下院の非米活動委員会から召喚を受けたことも知られています。公の場で政治的な意見を述べる数学者としても、よく知られました。

数学の外へ:経済、計算、知能

スメイルは1970年代以降、経済学の数学、計算の理論、学習の理論にも仕事を広げました。1998年の「スメイルの問題」には、その関心が反映されています。受賞は、1996年の全米科学賞(アメリカ)、2007年のウルフ賞などです。

スメイルの歩み(公に知られた経歴)1930アメリカ・ミシガン州で生まれる1957ミシガン大学で博士号1958球面の裏返しが可能と示す1960馬蹄写像(リオデジャネイロで)19615次元以上のポアンカレ予想1966フィールズ賞(モスクワ)1998「スメイルの問題」18問2007ウルフ賞公に知られた経歴・受賞だけを年表にした
スメイルの歩み。ミシガン→リオ→バークレー→モスクワ(フィールズ賞)→スメイルの問題
年できごと
1930年7月15日、アメリカのミシガン州フリントで生まれる
1952〜53年ミシガン大学で学士・修士
1957年ミシガン大学で博士号(指導はボット)
1958年球面の裏返しが可能であることを示す(球面の反転)。プリンストン高等研究所へ
1960年リオデジャネイロで馬蹄写像を見つける。バークレーの准教授に
1961年一般化されたポアンカレ予想を5次元以上で証明
1962年h-コボルディズム定理を示す
1964年カリフォルニア大学バークレー校の教授に
1966年フィールズ賞(モスクワ)。ヴェブレン賞
1988年ショーヴネ賞
1996年アメリカの全米科学賞
1998年『21世紀に向けた数学の問題』で18の問題を発表
2007年ウルフ賞
2009年香港城市大学の特別教授に

スメイルの主な業績をやさしく解説

業績1 高次元のポアンカレ予想(1961年)

ポアンカレ予想は、ポアンカレの業績と生涯が1904年に出した問題で、「穴のない3次元の図形は、球と同じ形といえるか」というものです。2次元(曲面)の場合は、輪にしたひもがいつでも1点に縮められる曲面は、球面と同じ形だと、19世紀には分かっていました。

「穴のない図形は球と同じ形」とは 球面輪(赤)は縮んで1点になる ドーナツ(穴が1つ)穴をまわる輪(赤)は縮められない 縮まらない輪があれば、球とは違う形
球面ではどんな輪も縮むが、ドーナツの穴をまわる輪は縮まない。縮まる輪だけの図形は球と同じ形か?

この予想を、次元を広げた形にしたものが一般化されたポアンカレ予想です。「nn 次元の図形で、どんな輪も縮められて、ほかの条件も同じなら、nn 次元の球と同じ形か」。スメイルは、nn が5以上の場合に、これが正しいことを証明しました(1961年)。使った方法は、ハンドル分解とよばれるものです。図形を「ハンドル」(取っ手)という部品に分けて、一つずつ打ち消していく方法です。

次元ごとに見るポアンカレ予想 2次元(曲面)19世紀に分類ずみ穴のない閉じた曲面は球 5次元以上1961年 スメイルハンドル分解の方法 4次元1982年 フリードマン位相的な場合(のちフィールズ賞) 3次元(本来の予想)2002〜03年 ペレルマンリッチフローの方法 高い次元のほうが「動かす余地が広く」先に解けた3次元はせまい分だけ、いちばん難しかった
一般化されたポアンカレ予想。5次元以上はスメイル(1961年)、4次元はフリードマン(1982年)、3次元はペレルマン

ほぼ同じ時期に、ジョン・スタリングスとクリストファー・ジーマンが別の方法で、また、マックス・ニューマンも関連する結果を得た、とされます。スメイルの証明の中心となったh-コボルディズム定理(1962年)は、その後の位相幾何学の基礎になりました。

面白いのは、高い次元のほうが先に解けたことです。次元が高いほど、図形を動かす「すき間」が広くなるので、ハンドルを打ち消しやすいのです。4次元は1982年にフリードマン、3次元(本来のポアンカレ予想)は2002〜03年にペレルマンが解決しました。3次元はせまい分だけ、いちばん最後まで残ったのです。

業績2 球面の裏返し(球面の反転)

ゴムのように、のびたり曲がったりする球面を考えます。この球面を穴をあけず、やぶらず、折り目をつけずに、表と裏を入れかえて「裏返し」にできるでしょうか。ただし、途中で、球面の一部が自分自身をすり抜けてもよい、とします。

球面の裏返し(断面のイメージ) はじめ表が外向き とちゅう自分とすれ合ってよい おわり表が内向き 穴をあけない・やぶらない・折り目をつけないこの3つを守っても、裏返せる(1958年に存在を証明)
球面の裏返し。途中で自分とすれ合ってもよいが、折り目はつけない。外向きが内向きになる

スメイルは1958年ごろ、できることを証明しました。しかし、証明は存在を示すだけで、どう動かせばよいかは分かりませんでした。そのため、「スメイルのパラドックス」とよばれ、専門家の間でも驚かれたと伝えられます。スメイルの指導教員のボットは、最初、この結果を信じなかったと伝えられます(逸話として語られている話です)。

具体的な裏返しの方法は、1960年代にアーノルド・シャピロやバーナード・モランらが見つけました。のちにサーストンの業績と生涯も、別の方法(コルゲーション)を示しました。1994年には、これを映像にした作品「アウトサイド・イン」がつくられています。

業績3 馬蹄写像とカオス

正方形を、横に引きのばして、たてに縮め、馬の蹄のようにU字形に折り曲げて、もとの正方形に重ねます。この操作を馬蹄写像とよびます。

馬蹄写像:のばして、折って、重ねる ① 正方形 ② 横にのばしたてにちぢめる ③ 馬蹄に折る ③をもとの正方形に重ねて、くり返す近くにあった2点が、遠くに引きはなされる→ 未来の予測がむずかしい「カオス」の原因
馬蹄写像。正方形をのばして、折り曲げて、もとの正方形に重ねる。くり返すと近い2点が離れる

この操作をくり返すと、最初にとても近かった2つの点が、あっという間に離れていくことがあります。つまり、最初の状態のちょっとした違いが、あとで大きな違いになるのです。これが、いわゆるカオスの正体です。天気の予報が長期ではむずかしいのも、この性質によるものとされます。気象学者ローレンツが1960年代に見つけた「バタフライ効果」(ちょうの羽ばたきが遠くの天気を変えるかもしれない)という言葉も、このカオスの性質をたとえたものです。ただし、実際に羽ばたきひとつで天気が変わると言い切れるわけではなく、あくまで「最初のわずかな違いが大きくなりうる」というたとえです。スメイルは、馬蹄写像が、カオスの本質的な構造を持っていることを見つけ、力学系の見方を一新しました。

もっと簡単に、カオスの様子を調べる例として、xn+1=4xn(1−xn)x_{n+1}=4x_n(1-x_n)(ロジスティック写像)があります。ここで、最初の値を x0=0.2x_0=0.2 と x0=0.2001x_0=0.2001 で比べてみましょう。

  • n=0n=0:0.2000 と 0.2001(差は 0.0001)
  • n=5n=5:0.5854 と 0.5815
  • n=10n=10:0.1478 と 0.2492
  • n=15n=15:0.0039 と 0.7232

最初の差は 0.0001 でしたが、15回くり返すと、全然ちがう値になっています。式はとても簡単ですが、数列の極限ではおさまらない、複雑な動きをします。この「初期値のわずかな違いが大きく広がる」性質を、初期値鋭敏性といいます。

業績4 スメイルの18の問題(1998年)

1900年、ヒルベルトの業績と生涯は「20世紀に解くべき23の問題」を発表して、数学の流れを方向づけました。それにならって、1998年、スメイルは「21世紀に向けた数学の問題」として18の問題を発表しました。ロシアの数学者アーノルドが国際数学連合を代表して求めたのに応じたもの、とされます。

スメイルの18の問題(1998年)から 第1問リーマン予想(未解決) 第2問ポアンカレ予想(ペレルマンが解決) 第3問P対NP問題(未解決) 第14問ローレンツ・アトラクター(解決ずみ) 第15問ナビエ–ストークス方程式(未解決) ほかに、力学系・経済・計算・知能にかかわる13問最後の第18問は「人間の知能の限界は何か」
スメイルの18の問題から。リーマン予想、ポアンカレ予想、P対NP、ローレンツ・アトラクター、ナビエ・ストークス方程式など

第1問はリーマン予想、第2問はポアンカレ予想(その後ペレルマンが解決)、第3問はP対NP問題、第15問はナビエ–ストークス方程式の問題です。これらは、のちに「ミレニアム懸賞問題」にも選ばれました。第14問のローレンツ・アトラクターは、2002年にウォリック・タッカーによって解決されたと報じられました。ほかにも、経済の数学、計算の理論、そして最後の第18問「人間の知能の限界は何か」など、幅広い問題がならんでいます。

スメイルの名前がつく公式・定理・用語

  • スメイル馬蹄写像(馬蹄形):カオスの典型的な構造。
  • スメイルの球面の反転(スメイルのパラドックス):球面は、裏返しにできる。
  • h-コボルディズム定理:高次元の図形の分類の基本定理。
  • スメイル–バーコフの定理:馬蹄の構造が現れる条件についての定理。
  • スメイルの問題:1998年に発表された18の数学の問題。
  • ブラム・シャブ・スメイルの計算モデル:実数を使う計算の理論。
  • モース・スメイル系:力学系の安定性の研究。

高校までの数学で、関係の深い公式・用語は次のとおりです。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

位相幾何学では、「のばす・縮める・曲げる」は同じ形とみなすんだ。コーヒーカップとドーナツが同じ形(穴が1つ)という、有名な話もそこからきているよ。入試ではオイラーの多面体定理が入口になるね。

スメイルの逸話と名言(公に知られた話)

「リオの浜辺」で見つけた馬蹄

スメイルは1960年にリオデジャネイロに滞在したとき、ビーチで研究したことで知られます。のちに本人が、この時期を回想して書いた記事の題は、そのまま「リオの浜辺で馬蹄を見つける」でした。数学の大発見が、研究室ではなく海辺で生まれた、という話は、よく紹介されます。

Finding a Horseshoe on the Beaches of Rio(リオの浜辺で馬蹄を見つける)

スティーヴン・スメイル(1998年の回想記事の題(The Mathematical Intelligencer 20巻)。本人の文章の題)

モスクワでの発言

1966年のモスクワの国際数学者会議のとき、スメイルは記者会見で政治的な意見を述べたとされ、広く報じられました。数学者が、授賞式の場で政治についての意見をはっきり述べたことは、当時、話題になりました。のちの回想や報道でも、よく取り上げられます。ただし、細かい経緯は資料によって書き方が異なります。

パズルのような難しさ

球面の裏返しは、証明が出たあとも、直感に反する結果として語りつがれました。「ゴムの球面を、折り目なしに裏返せる」という結果は、数学者にとっても驚きでした。直感でできないと思っていたことが、実は可能だった。「できない」と決めつけないことの大切さを教える話です。

「高い次元のほうが解きやすい」はなぜ?

この感覚を、ひもで例えてみましょう。机の上(2次元)で、2本のひもが交差していて、ほどけない状態を考えます。ひもを机から持ち上げて、空間(3次元)で動かせれば、すり抜けてほどけます。動かせる方向が1つ増えるだけで、「ひっかかり」が消えるのです。スメイルが5次元以上で問題を解けたのは、図形を動かす余地が十分に広く、じゃまなひっかかりを取りのぞけたから、と説明されます。逆に、3次元や4次元は、余地がせまいため、別の新しい道具が必要でした。このように、次元ごとに問題の姿がまったく変わるのは、位相幾何学のふしぎな面白さです。

教科書も書く

スメイルは、モリス・ハーシュとの共著の教科書『微分方程式・力学系・線形代数』(1974年)でも知られます。力学系を学ぶ人の定番の本として、長く読まれてきました。研究だけでなく、後進の育成にも力を入れた数学者です。

サクラちゃん

サクラちゃん

難しい問題で、全然手が出ないとき、どうしたらいいですか?

合格先生

合格先生

スメイルのやり方が参考になるよ。次元を変えて、考えやすい形にしてみる。受験でも、数を小さくしたり、条件をへらしたりして、解ける形から攻める。それが、本当の問題への近道になるんだ。

受験・勉強とスメイルのつながり

中学受験:立体とかたちの見方

中学受験の算数には、立体の展開図や、回転体、一筆書きなどが出ます。「形を変えても変わらないもの」を探す見方は、位相幾何学の入口です。球やドーナツのような立体の表面積・体積の計算は、球の体積と表面積の公式の練習になります。

高校受験・大学受験:多面体と、変化の数学

多面体の頂点・辺・面の数について、V−E+F=2V-E+F=2 が成り立つ、オイラーの多面体定理は、位相幾何学の最初の定理のひとつです。穴のある図形(ドーナツ型)では V−E+F=0V-E+F=0 となります。また、微分方程式は、スメイルの力学系の土台です。大学入試では、微分・積分と関数の増減の問題として、時間変化の数学が出題されます。カオスの入口として、漸化式の扱いに慣れておくことも役に立ちます。

大学入試の数列・漸化式

xn+1=4xn(1−xn)x_{n+1}=4x_n(1-x_n) のような漸化式は、入試問題にも出てきます。最初の数項を計算して、規則を探すのが定石です。京大理系数学の出題分析(1999〜2026年度)を見ると、漸化式や数列が頻出であることが分かります。

勉強法として:「条件を変えて、解ける形にする」

スメイルの「5次元以上のほうが先に解けた」という結果は、受験勉強にも教訓を与えます。難しい問題に直面したら、条件を変えて簡単にした問題をまず解いてみます。数を小さくする、図形を特殊な形にする、次元を下げる、といった方法です。この考え方は、ポリアの業績と生涯の「補助問題を作る」にも通じます。数学の勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も読んでください。

スメイルがその後の数学にあたえた影響

  • 位相幾何学(多様体の分類):ハンドル分解とh-コボルディズム定理は、高次元の多様体を分類する理論の出発点になりました。
  • カオス理論・力学系:馬蹄写像は、カオスの数学的な理解の基礎となり、天気・生態系・経済の研究にも広がりました。
  • 球面の反転:のちにグロモフらが発展させたh原理(ホモトピー原理)の先駆けとなった結果とされます。
  • 計算と経済:実数を使う計算の理論や、数理経済学(一般均衡理論)にも新しい視点をもたらしました。
  • 問題を示す人:18の問題は、21世紀の数学の目標を示しました。

スメイルの仕事は、リーマンの業績と生涯やポアンカレの業績と生涯が始めた、「形」の数学の流れを、次の世代につなぐものです。マンデルブロの業績と生涯が作ったフラクタルの幾何学も、カオスの研究と深く関わっています。

なお、スメイルは現在も知られる数学者です。新しい業績や活動は、これからも伝えられていくでしょう。この記事は、2026年11月時点で公に知られている内容にもとづいています。最新の情報は、大学の発表や専門誌でご確認ください。

スメイルに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 立方体の頂点の数 V、辺の数 E、面の数 F を求めて、V−E+F を計算しなさい。
    答えと解説を見るV=8、E=12、F=6。V−E+F=8−12+6=2。(球と同じ形の多面体では、いつも2になります)
  2. 正四面体で V−E+F を計算しなさい。
    答えと解説を見るV=4、E=6、F=4。V−E+F=4−6+4=2。立方体と同じ値になります。

ふつう

  1. 漸化式 xn+1=2xn(1−xn)x_{n+1}=2x_n(1-x_n) で、x0=0.25x_0=0.25 のとき、x1x_1 と x2x_2 を求めなさい。
    答えと解説を見るx1=2×0.25×0.75=x_1=2\times0.25\times0.75=0.375。x2=2×0.375×0.625=x_2=2\times0.375\times0.625=0.46875。
  2. 同じ漸化式 xn+1=2xn(1−xn)x_{n+1}=2x_n(1-x_n) で、xn+1=xn=ax_{n+1}=x_n=a(a≠0a\ne0)となる値 aa を求めなさい。
    答えと解説を見るa=2a(1−a)a=2a(1-a) より、a≠0a\neq0 で割って 1=2(1−a)1=2(1-a)、a=a=1/2。(変化しない点を「不動点」といいます)

むずかしい

  1. 漸化式 xn+1=4xn(1−xn)x_{n+1}=4x_n(1-x_n) で、x0=0.2x_0=0.2 のとき x1x_1、x2x_2 を求めなさい。
    答えと解説を見るx1=4×0.2×0.8=x_1=4\times0.2\times0.8=0.64。x2=4×0.64×0.36=x_2=4\times0.64\times0.36=0.9216。
  2. 同じ漸化式で、x0=0.21x_0=0.21 とします。x1x_1 を求め、x0=0.2x_0=0.2 のときの x1=0.64x_1=0.64 との差を答えなさい。最初の差 0.01 と比べて何倍になりましたか。
    答えと解説を見るx1=4×0.21×0.79=0.6636x_1=4\times0.21\times0.79=0.6636。差は 0.6636−0.64=0.0236。最初の差 0.01 の2.36倍に広がっています。(これをくり返すと、差はどんどん大きくなります)

スメイルと関係する数学者

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20世紀の数学者

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読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

スメイルは何をした人ですか?

スティーヴン・スメイルは、アメリカの数学者です。1961年に5次元以上の一般化されたポアンカレ予想を証明し、1966年にフィールズ賞を受けました。球面の裏返し、馬蹄写像とカオス、18の問題でも知られます。

スメイルのフィールズ賞はいつ、何の業績で受けましたか?

1966年にモスクワで開かれた国際数学者会議で受賞しました。高次元のポアンカレ予想の解決をはじめとする、位相幾何学での業績が評価されました。同じ年に、アティヤ、コーエン、グロタンディークも受賞しています。

5次元以上のポアンカレ予想とは何ですか?

n次元の図形で、どんな輪も1点に縮められるなら、n次元の球と同じ形か、という予想です。スメイルが1961年に、nが5以上の場合を証明しました。4次元は1982年にフリードマン、3次元は2002〜03年にペレルマンが解決しました。

球面の裏返しとは何ですか?

球面を、穴をあけず、やぶらず、折り目をつけずに、途中で自分自身とすれ合うことを許して、表と裏を入れかえることです。スメイルが1958年ごろ、できることを証明し、専門家を驚かせました。

馬蹄写像とは何ですか?

正方形をのばして折り曲げ、馬蹄の形にして、もとの正方形に重ねる操作です。くり返すと近い2点が離れていく性質があり、カオスの数学的な基礎になりました。スメイルが1960年に発見しました。

スメイルの問題とは何ですか?

1998年にスメイルが発表した、21世紀に向けた18の数学の問題です。ヒルベルトの23の問題にならったもので、リーマン予想、ポアンカレ予想、P対NP問題、ナビエ–ストークス方程式などが含まれています。

ポアンカレ予想はスメイルが解決したのですか?

スメイルが解決したのは、5次元以上の一般化された場合です。本来の3次元の場合は、ペレルマンが2002〜03年に解決しました。スメイルの18の問題の第2問にも、ポアンカレ予想が入っています。

スメイルの受賞歴を教えてください。

主な受賞は、フィールズ賞(1966年)、ヴェブレン賞(1966年)、全米科学賞(1996年)、ウルフ賞(2007年)などです。

スメイルの業績は受験に関係がありますか?

直接の出題はありませんが、オイラーの多面体定理(V−E+F=2)や、漸化式、微分方程式といった考え方は入試につながります。難問は条件を変えて簡単にして解く、というスメイルの教訓は、受験勉強でも役立ちます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Stephen Smale」(セント・アンドルーズ大学)
  • S. Smale, “Generalized Poincaré’s conjecture in dimensions greater than four”, Annals of Mathematics 74(1961年)
  • S. Smale, “A classification of immersions of the two-sphere”, Transactions of the AMS 90(1958年)
  • S. Smale, “Mathematical problems for the next century”, The Mathematical Intelligencer 20(1998年)
  • 国際数学連合(IMU)「Fields Medal 1966」

最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦