アティヤは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|指数定理・K理論・フィールズ賞とアーベル賞

アティヤは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|指数定理・K理論・フィールズ賞とアーベル賞

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アティヤMichael Atiyah

ひとことで言うと

図形の形(位相)と微分方程式(解析)を結ぶアティヤ=シンガーの指数定理を作った。K理論の創始者で、フィールズ賞とアーベル賞の受賞者。

名前マイケル・アティヤ(Michael Atiyah、サー・マイケル・フランシス・アティヤ)
生没年1929年4月22日〜2019年1月11日(89歳)
国イギリス(ロンドン生まれ、ケンブリッジ・オックスフォード・エディンバラで活躍)
分野幾何・位相幾何・解析・数理物理
主な業績アティヤ=シンガーの指数定理、K理論(ヒルツェブルフと共同)、数学と物理学の橋渡し
主な受賞フィールズ賞(1966年)、コプリー・メダル(1988年)、アーベル賞(2004年、シンガーと共同)
名前がつくものアティヤ=シンガーの指数定理・アティヤ=ヒルツェブルフのK理論・アティヤ=ボットの不動点定理・ADHM構成

このページのポイント

  • 1963年、シンガーとともに指数定理を発表。微分方程式の「解の数の差」が、図形の形(位相)から計算できることを示した
  • ヒルツェブルフとともにK理論を作り、1966年にフィールズ賞を受賞。2004年にはアーベル賞(シンガーと共同)
  • 穴の数で決まるオイラーの多面体定理(V−E+F=2)の考え方の、いちばん大きな発展形。数学と物理学の橋渡し役としても知られる

アティヤは何をした人?(業績をひとことで)

マイケル・アティヤ(1929〜2019年)は、イギリスの数学者です。図形の形(位相幾何学)と、微分方程式(解析学)を結びつけた「アティヤ=シンガーの指数定理」で世界的に知られています。また、ヒルツェブルフとともにK理論という新しい道具を作りました。1966年にフィールズ賞、2004年にアーベル賞(シンガーと共同)を受け、20世紀後半を代表する数学者のひとりです。

受験生にとってのアティヤは、直接の名前は出ないものの、「図形の形を見るだけで、数が決まる」という、正多面体の頂点・辺・面の数のオイラーの多面体定理(V−E+F=2)と同じ考え方の、いちばん大きな発展形です。中学入試・高校入試で習うオイラーの多面体定理 V−E+F=2や、大学入試で出る連立方程式の解の次元(階数)の考え方が、アティヤの指数定理の入り口です。

うかるくん

うかるくん

「指数定理」って、指数関数と関係があるんですか?

合格先生

合格先生

いい質問だね。でもこの「指数(インデックス)」は、「解の自由度から取り残しをひいた数」のことなんだ。方程式の中身がどう変わっても変わらない数で、図形の形だけで決まる。それを示したのが、アティヤとシンガーの定理だよ。

アティヤの生涯と年表

ロンドンで生まれ、エジプトのカイロで学ぶ

アティヤは1929年4月22日、ロンドンで生まれました。父はレバノン出身、母はスコットランド出身といわれます。子ども時代の多くを、中東(スーダンとエジプト)で過ごし、カイロのヴィクトリア・カレッジで学んだのち、イギリスのマンチェスター・グラマー・スクールに進みました。その後、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに入学し(1949年)、1952年に卒業しました。

博士号と幾何学者としての出発

1955年、ケンブリッジ大学で博士号を取りました。論文の題は『代数幾何学への位相幾何学的方法の応用』で、指導者はウィリアム・ホッジです。のちにアティヤは「自分は、ずっとおもに幾何学者だった(I became, and remained, primarily a geometer)」と語っています。

オックスフォード、ケンブリッジ、そしてエディンバラ

アティヤは、オックスフォード大学やプリンストン高等研究所で研究したのち、1990年にケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの学寮長(マスター)と、ケンブリッジに新設されたアイザック・ニュートン研究所の初代所長になりました。1990年から1995年まで、英国王立協会(イギリスの最も権威ある科学者の団体)の会長も務めました。晩年はスコットランドのエディンバラで過ごし、2005年から2008年にはエディンバラ王立協会の会長も務めています。2019年1月11日、エディンバラで89歳で亡くなりました。

年できごと
1929年4月22日、ロンドンで生まれる
1949年ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに入学
1952年ケンブリッジ大学を卒業
1955年ケンブリッジ大学で博士号(指導者はホッジ)
1950年代末〜60年代初めヒルツェブルフとK理論を作る
1963年シンガーとともに指数定理を発表
1966年フィールズ賞を受賞(モスクワの国際数学者会議)
1968年指数定理のK理論を使った証明を論文(『数学年報』)で発表
1983年ナイト爵(サーの称号)を受ける
1988年英国王立協会のコプリー・メダルを受ける
1990年ニュートン研究所の初代所長、トリニティ・カレッジの学寮長に。王立協会会長(〜1995年)
2004年アーベル賞を受賞(シンガーと共同)
2005〜2008年エディンバラ王立協会の会長を務める
2019年1月11日、エディンバラで亡くなる(89歳)

アティヤの主な業績をやさしく解説

業績1 「穴の数」から数が決まる(位相幾何学のこころ)

アティヤの数学を理解するための第一歩は、位相幾何学です。位相幾何学は、図形を粘土のようにぐにゃぐにゃ変形しても変わらない性質を調べます。たとえば、コーヒーカップとドーナツは、穴が1つなので同じ仲間です。立体の頂点の数 VV、辺の数 EE、面の数 FF から作る数 V−E+FV-E+F は、穴の数だけで決まります。穴がない立体は2、穴が1つなら0、穴が2つなら −2-2 です。

穴の数で決まる数(オイラー数) 穴 0個穴 1個穴 2個 V−E+F=2V−E+F=0V−E+F=−2穴が1つ増えるごとに 2 ずつ減る:2−2×(穴の数)
穴の数が0・1・2のとき、オイラー数(V−E+F)は 2・0・−2 になる

オイラーの多面体定理(V−E+F=2)は、中学入試・高校入試でも出る、位相幾何学の入り口です。立方体なら 8−12+6=28-12+6=2、三角すいなら 4−6+4=24-6+4=2 になります。アティヤの仕事は、この「形から決まる数」が、微分方程式のような「式の世界」とつながっていることを示しました。

業績2 指数(インデックス)とは? 「自由度−取り残し」は変わらない

連立1次方程式を考えます。未知数が3つ、式が2つのとき、ふつうは「1つ自由に動かせる」解がたくさんあります。式が特別な形で、2つの式が実は同じになっているときは、「自由に動かせる向き」が2つに増えますが、そのかわり、「式の側に出てこない(取り残される)向き」が1つ出てきます。2つの数は変わりますが、その差(自由度−取り残し)は、いつも未知数−式の数=1のままです。

指数=自由度−取り残し(3つの未知数・2つの式)ふつうの場合ランク 2ゆるされる動き:1取り残される向き:01−0=1特別な場合ランク 1ゆるされる動き:2取り残される向き:12−1=1中身がかわっても、差の「1」は変わらない
解の自由度から取り残しをひいた数(指数)は、式の中身を変えても変わらない

たとえるなら、「持ち物のうち、使える道具の数」から「足りない道具の数」をひいた数のようなものです。道具の中身をいくつ入れかえても、使える数と足りない数が同じだけ動くので、ひき算の答えは変わりません。数学では、このように「少しくらい変えても変わらない数」を不変量とよび、とても大切にします。

この「差」を指数(インデックス)とよびます。行列なら、これは階数(ランク)と連立方程式の解の考え方の言いかえで、「未知数の数 − ランク」=解の自由度、という式がもとになっています。微分方程式のような無限次元の世界でも、この「差」は、式を少しずつ変えても変わらない、「安定な数」になります。

業績3 アティヤ=シンガーの指数定理(1963年)

1963年、アティヤはアメリカの数学者アイザドア・シンガー(1924〜2021年)とともに、指数定理を発表しました。内容は、楕円型微分方程式(ラプラス方程式のような、なめらかな解をもつ方程式のグループ)の指数は、解析で決まる数と図形の形(位相)から決まる数が等しい、というものです。

アティヤ=シンガーの指数定理 解析の世界微分方程式の解の数の差(解析的指数) 位相の世界図形の形から計算する数(位相的指数) = 解くのが難しい方程式の「解の数」が図形の形を見るだけで分かる(1963年発表・1968年にK理論による証明)
解析的な指数(微分方程式の解の数の差)と、位相的な指数(図形の形から計算する数)が等しい

この定理のすごいところは、解くのがむずかしい方程式について、解を1つも求めなくても、「解の数の差」だけは、図形の形を調べて分かる点です。さらに、これまでに別々に知られていた有名な定理を、次のようにまとめて含みます。

  • 曲面の曲がり具合と穴の数を結ぶガウス=ボンネの定理(ガウスの曲面の研究から)
  • 複素曲線の関数の数を数えるリーマン=ロッホの定理(リーマンの研究から)と、その高次元版(ヒルツェブルフ)
  • 図形の「符号数」を調べるヒルツェブルフの符号数定理

のちに、素粒子物理学のゲージ理論や、スピンをもつ粒子を表すディラック作用素の研究にもこの定理が使われ、数学と物理学の橋になりました。

業績4 ガウス=ボンネの定理(球面の三角形で体験する)

指数定理の特別な場合のひとつ、ガウス=ボンネの定理を、身近な例で見てみましょう。平面上の三角形の角の和は、いつも180°です。でも、地球のような球面の上で、「北極から赤道まで南へ進み、赤道に沿って90°東へ進み、また北極にもどる」三角形を作ると、3つの角はすべて直角になり、角の和は270°になります。

球面の三角形は角の和が 180° をこえる 北極赤道赤道 90°90°90° 90°+90°+90°=270°(180°より90°多い)多い分=球面の曲がり具合(面積×曲率)
球面上の三角形は、3つの角がすべて直角で、角の和が270°になる

180°を超えた分は、球面の曲がり具合(曲率)× 面積に等しくなります。この三角形は球面全体の8分の1の面積で、半径1の球なら面積は 4π8=π2\dfrac{4\pi}{8}=\dfrac{\pi}{2}、超えた角は 270∘−180∘=90∘=π2270^\circ-180^\circ=90^\circ=\dfrac{\pi}{2} で、ぴったり一致します。「曲がり具合の合計」が「穴の数」と等しいことを示したのが、ガウス=ボンネの定理で、指数定理の入り口です。

業績5 K理論(ベクトル束を数える)

円の上に、細い線をびっしり並べた「帯」を考えます。長方形の左右のはしを、同じ向きに貼ると円柱、逆向きに貼ると、ねじれて裏表のないメビウスの帯になります。どちらも「円の上に線を並べたもの」ですが、全体としての形はちがいます。このような「図形の上に空間(線や平面)を並べたもの」をベクトル束とよびます。

帯の貼り合わせ方は2通り円柱向きを同じに貼るメビウスの帯向きを逆に貼るベクトル束=円の上に「線」を並べたもの
長方形のはしを同じ向きに貼ると円柱、逆向きに貼るとメビウスの帯。どちらも円の上の線の束(ベクトル束)

アティヤはヒルツェブルフとともに、ベクトル束の種類を代数的に整理するK理論を作りました(1950年代末〜1960年代初め)。ボットの「周期性定理」という発見を土台に、位相幾何学に新しい計算の道具をもたらしました。1966年のフィールズ賞は、このK理論の仕事が中心にあったと説明されています。1968年に論文として発表された指数定理の証明も、K理論を使っています(1963年の発表のときは、別の方法の証明の筋道が示されました)。なお、K理論のもとになった考えは、グロタンディークが代数幾何学で考えたもので、アティヤとヒルツェブルフはそれを位相幾何学に移しました。

業績6 数学と物理学の橋渡し

アティヤは、数学と理論物理学の橋渡し役としても知られます。1970年代後半、素粒子物理学のヤン=ミルズ理論の「インスタントン」という解を、数学の言葉で分類する仕事(ADHM構成)に関わりました。のちには、エドワード・ウィッテンなどの物理学者と交流し、物理の考えが数学の新しい発見を生む流れを後押ししました。ウィッテンは、1990年に物理学者としてはじめてフィールズ賞を受賞しています。

また、アティヤは、数学者のコミュニティをつなぐ活動にも熱心でした。ニュートン研究所の所長として、世界の数学者を集めた研究会を作り、若手を励ましたと紹介されています。

アティヤの名前がつく公式・定理・用語

アティヤの名前がつくものは、大学以降の数学で出会う用語が中心です。受験の基礎になる考え方と合わせて、まとめました。

  • アティヤ=シンガーの指数定理:楕円型微分作用素の解析的指数と位相的指数が等しい。
  • アティヤ=ヒルツェブルフのK理論:ベクトル束を整理する理論。
  • アティヤ=ボットの不動点定理:不動点の数を図形の形から数える定理。
  • アティヤ=パトディ=シンガーの指数定理:境界のある図形への拡張。
  • ADHM構成:インスタントンの分類(アティヤ・ドリンフェルト・ヒッチン・マニン)。
  • アティヤ=ヒッチン・アティヤ=ボットなど、多くの共同研究の名前。

受験で出てくる、アティヤの専門分野の入り口は次のとおりです。→ オイラーの多面体定理・連立方程式と階数(ランク)・行列とは・方程式とは

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

式がどう変わっても変わらない数を見つけると、問題がぐっとラクになるよ。オイラーの多面体定理の V−E+F=2 も、「立体をどう変形しても変わらない数」の代表例なんだ。

アティヤの逸話と名言

「ずっと幾何学者だった」

アティヤは、数学者としての自分を、つぎのように語ったと紹介されています。

私は幾何学者になり、そしてずっと、おもに幾何学者であり続けた。

マイケル・アティヤ(訳。MacTutor(セント・アンドルーズ大学)の伝記ページに載る自己紹介の言葉(原文:I became, and remained, primarily a geometer.))

代数・解析・位相・物理と、さまざまな分野で仕事をしながらも、アティヤは「図形(幾何)の直感」を大切にしたといわれます。

「代数は悪魔の申し出」?

アティヤの言葉として、「代数は、悪魔が数学者に差し出す申し出だ」という短い言い方が、MacTutorの名言集にも載っています。もとになった文章は、アティヤの論説『20世紀の数学』(Mathematics in the 20th Century、2001〜2002年)の「幾何と代数」の部分とされます。そこでは、悪魔が数学者に「どんな問いにも答える強力な機械をあげよう。かわりに魂をよこせ、つまり幾何学を捨てなさい」と持ちかける、という例え話になっています。

代数は、悪魔が数学者に差し出す申し出である。

マイケル・アティヤ(訳。MacTutor(セント・アンドルーズ大学)のアティヤ名言集(原文:Algebra is the offer made by the devil to the mathematician.))

式をあやつるだけで答えが出る代数の便利さと、そのかわりに図形の意味(幾何の直感)を手放してしまう危うさを、ユーモアをこめて表した言葉です。この言葉は、幾何の直感を大切にする、というアティヤの考えをよく表すものとして引用されます。

数学者は「話す」ことが大切

アティヤは、他の人との共同研究や会話を大切にした数学者として知られています。シンガーとの共同研究のほか、ヒルツェブルフ、ボット、ヒッチンなど多くの数学者と、研究を進めました。研究会やセミナーを通じて、物理学者と数学者の間をつなぐ役割をはたしたと紹介されています。

ヒルツェブルフ・ボット・シンガー:共同研究の人

アティヤは、ひとりで研究するより、人と話しながら研究を進めるのが好きな数学者として知られています。K理論は、ドイツの数学者フリードリヒ・ヒルツェブルフとの共同研究から生まれました。ヒルツェブルフは、リーマン=ロッホの定理を高い次元に広げた人で、その結果をさらに一般にしたものが指数定理です。K理論の土台になったボットの周期性定理は、ハンガリー出身のアメリカの数学者ラウル・ボットが見つけたもので、「ベクトル束の種類は、次元が2つ上がるごとに同じ形がくり返す」という、ふしぎな規則性を示します。

数学では、こうした共同研究は、論文の題名に「アティヤ=ヒルツェブルフ」「アティヤ=ボット」「アティヤ=シンガー」のように、2人の名前を並べて残ります。名前を見ると、「だれとだれが協力したか」が分かるのも、数学の定理名のおもしろさのひとつです。

晩年とリーマン予想

2018年9月、アティヤは、ドイツのハイデルベルクで開かれた国際的な研究者の集まりで、「リーマン予想の証明を発表する」と報じられました。しかし、その証明は、専門家のあいだで証明として認められていません。数学では、新しい証明は、他の専門家の検証を経て初めて認められるという決まりがあります。リーマン予想は、リーマン予想(難問ページ)のとおり、今も未解決の問題です。

サクラちゃん

サクラちゃん

「式がどう変わっても変わらない数」って、考え方が高級すぎます……。

合格先生

合格先生

身近な例があるよ。三角形の角の和=180°は、三角形をどんな形にしても変わらないよね。変わらない数を見つけるのが、数学のいちばんのコツなんだ。アティヤは、その考えを何十倍にもふくらませたんだよ。

受験・勉強とアティヤのつながり

中学受験:立体の頂点・辺・面の数、メビウスの帯

中学受験の算数では、立体の頂点・辺・面の数を数える問題がよく出ます。三角すいなら頂点4・辺6・面4、立方体なら頂点8・辺12・面6です。どちらも V−E+F=2V-E+F=2 になることを知っていると、数え間違いに気づけます。メビウスの帯は、国語・算数・理科の読み物でも出てくる話題で、「表と裏の区別がない面」として有名です。

高校受験:多面体と規則性、三角形の角

平面の三角形の内角の和が180°であることは、高校入試の図形問題の基礎です。「球面の三角形はちがう」と知ると、「180°」が平らな面の特別な性質だったと気づけます。

大学受験:連立方程式の解の次元・行列のランク・曲面の面積

京大・東大の理系数学では、空間図形・行列・整数の問題がよく出ます。京大理系数学の出題分析(空間図形・行列の出方)で、出題の傾向を確かめてみてください。

算数・数学の読み物として:メビウスの帯で遊んでみよう

細長い紙の帯を1回ひねってからはしをのりづけすると、メビウスの帯ができます。指で表面をなぞっていくと、いつのまにか裏側にきていて、表と裏の区別がありません。このまま中央線にそってはさみを入れる、帯の幅の3分の1のところで切ってみるなど、いろいろ試すと、思いがけない形ができて、位相幾何学のおもしろさが実感できます。「ふつうの形」と「ねじれた形」のちがいを、手を動かして確かめることが、アティヤのK理論の第一歩です。

勉強法として:「変わらないもの」を探す

アティヤの数学の教えは、「形が変わっても変わらない数に注目する」ことです。図形の問題では、角度の和・面積の比・辺の比など、「変わらない量」を探すと解き方が見つかります。数式の問題でも「どの値を変えても結果が同じになる部分はどこか」を探すと、計算がラクになります。勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

アティヤがその後の数学にあたえた影響

  • 位相幾何学と解析学の融合:指数定理は、微分方程式と図形の形を結びつけ、現代の幾何学・解析学の中心的な定理になりました。
  • K理論の広がり:K理論は、代数的K理論や作用素環のK理論など、数学の多くの分野に広がり、グロタンディークのベクトル束の研究ともつながっています。
  • 数理物理学への影響:ゲージ理論・ひも理論・位相的場の理論など、素粒子物理学と数学の交流のきっかけをつくりました。
  • 幾何学の新しい分野:インスタントンのモジュライ空間や、ポアンカレ以来の位相幾何学の発展に、大きな影響を与えました。
  • 数学コミュニティ:ニュートン研究所や王立協会で、数学の国際交流を進めました。

アティヤの講義や講演は、むずかしい内容を、身近なたとえで伝えることでも知られていました。専門家以外にも数学のおもしろさを語る機会を大切にした、と紹介されています。若い数学者が、研究の入り口で「何が大事か」を見きわめる力を育てることにも、力を入れていたといわれます。

ヒルベルトの時代から続く「数学と物理学の対話」を、20世紀後半に最も活発にした数学者のひとりといえます。

アティヤに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 立方体と三角すい(正四面体)の、頂点の数 VV・辺の数 EE・面の数 FF から、それぞれ V−E+FV-E+F を求めなさい。
    答えと解説を見る立方体は V=8, E=12, F=6V=8,\ E=12,\ F=6 で 8−12+6=8-12+6=2。三角すいは V=4, E=6, F=4V=4,\ E=6,\ F=4 で 4−6+4=4-6+4=2。どちらも2です。
  2. 3つの未知数と2つの独立な式からなる連立1次方程式の、解の自由度(自由に動かせる向きの数)はいくつですか。
    答えと解説を見る未知数の数−独立な式の数=3−2=1。(階数と解の自由度の関係)

ふつう

  1. 4つの未知数 x,y,z,wx,y,z,w の連立1次方程式で、独立な式が2つのとき、解の自由度はいくつですか。
    答えと解説を見る未知数の数−独立な式の数=4−2=2です。解は、2つの文字を自由に決めると、残りが決まる形で表されます。
  2. 半径1の球の表面の「北極から赤道へ、赤道を90°進み、北極へもどる」三角形の面積を求めなさい。(球の表面積は 4π4\pi です)
    答えと解説を見る3つの角がすべて直角で、球面全体の8分の1にあたるので、面積は 4π÷8=4\pi\div8=π2\dfrac{\pi}{2}。角の和は270°で、180°を超えた90°(=π2=\dfrac\pi2)と面積が一致します。

むずかしい

  1. 穴が gg 個あるドーナツ形の立体では、V−E+F=2−2gV-E+F=2-2g となります。穴が3つのときの値を求めなさい。
    答えと解説を見る2−2×3=2-2\times3=−4。穴が1つ増えるごとに2ずつ減ります。
  2. メビウスの帯の中央線にそって、はさみで切ると、どうなりますか。バンドの数と、おおよその形を答えなさい。
    答えと解説を見る2つには分かれず、1本の長い輪になります(長さは元の約2倍で、ねじれは2回転ぶん)。メビウスの帯は「表と裏がつながった1つの面」なので、中央で切っても分離しません。

アティヤと関係する数学者

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よくある質問

アティヤは何をした人ですか?

マイケル・アティヤは、イギリスの数学者です。シンガーとともに、図形の形(位相)と微分方程式(解析)を結びつけるアティヤ=シンガーの指数定理を示し、ヒルツェブルフとK理論を作りました。1966年にフィールズ賞、2004年にアーベル賞を受賞しています。

アティヤ=シンガーの指数定理とは何ですか?

楕円型微分方程式について、「解の数の差(解析的指数)」が、「図形の形から計算できる数(位相的指数)」と等しいという定理です。1963年に発表され、ガウス=ボンネの定理やリーマン=ロッホの定理などをまとめて含みます。

指数(インデックス)とは何ですか?

方程式の「解の自由度」から「取り残される向きの数」をひいた数です。たとえば未知数が3つ、式が2つの連立1次方程式では、式の中身を変えても、この差はいつも1になります。式を変えても変わらない、安定な数であることが大切です。

K理論とは何ですか?

図形の上に空間(線や平面)を並べたベクトル束の種類を、代数的に整理する理論です。アティヤとヒルツェブルフが1950年代末から1960年代初めにかけて作りました。円柱とメビウスの帯のように、同じ円の上でも形がちがう束を区別できます。

アティヤは何歳で亡くなりましたか?どこの人ですか?

アティヤは1929年4月22日にロンドンで生まれ、2019年1月11日にスコットランドのエディンバラで89歳で亡くなりました。イギリスの数学者で、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学で研究し、晩年はエディンバラで過ごしました。

アティヤはどんな賞を受けましたか?

1966年のフィールズ賞、1983年のナイト爵、1988年の英国王立協会コプリー・メダル、2004年のアーベル賞(シンガーと共同)などがあります。1990年から1995年は英国王立協会の会長も務めました。

アティヤの名言はありますか?

「私は幾何学者になり、ずっとおもに幾何学者であり続けた」という自己紹介が知られています。また「代数は悪魔が数学者に差し出す申し出だ」という言葉もよく紹介されます。MacTutorの名言集に載り、論説『20世紀の数学』で語った例え話がもとだとされます。

アティヤとシンガーの関係は?

アイザドア・シンガーは、アメリカの数学者で、アティヤの共同研究者です。2人は1963年に指数定理を発表し、2004年にアーベル賞を共同で受賞しました。シンガーは1924年に生まれ、2021年に亡くなりました。

アティヤはリーマン予想を証明したのですか?

2018年にアティヤはリーマン予想の証明を発表したと報じられましたが、その証明は数学界で広くは受け入れられていません。新しい証明は、他の専門家による検証を経て初めて認められます。

アティヤは受験に関係がありますか?

名前は出ませんが、考え方はつながっています。立体の頂点・辺・面の数のオイラーの多面体定理、連立方程式の解の自由度(ランク)、メビウスの帯などは、アティヤの指数定理やK理論の入り口です。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Michael Atiyah」(セント・アンドルーズ大学)
  • M. Atiyah and I. Singer, “The index of elliptic operators on compact manifolds”, Bulletin of the AMS 69(1963年)
  • M. Atiyah and I. Singer, “The index of elliptic operators I”, Annals of Mathematics 87(1968年)
  • M. F. Atiyah, “K-theory”(1967年)
  • Abel Prize「Michael Francis Atiyah and Isadore M. Singer」(2004年、abelprize.no)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦