この公式のポイント
- 定義は置換の和。各行について1次式で、2行を入れかえると符号が変わる
- 余因子展開の符号は (−1)i+j(市松模様)
- det(AB)=detAdetB。和では成り立たない
- det(kA)=kndetA。掃き出しで0を増やしてから展開

うかるくん
4次の行列式って、サラスの方法みたいに斜めにかければいいの?
![合格先生]()
合格先生
サラスの方法は3次だけだ。4次は掃き出しで1つの列に0を増やし、余因子展開で次数を下げよう。
行列式の定義・余因子展開・積の行列式
n 次の正方行列 A=(aij) に1つの数 detA(∣A∣ とも書く)を対応させたものが行列式です。逆行列があるかどうか、連立方程式の解が1つに決まるかどうか、固有値など、線形代数のほとんどの場面で使います。
行列式の定義と2つの基本公式
定義(Sn は 1,2,⋯,n の並べかえ(置換)全体、sgnσ は偶置換なら +1、奇置換なら −1)
detA=σ∈Sn∑sgn(σ)a1σ(1)a2σ(2)⋯anσ(n)2次なら acbd=ad−bc。3次は 3!=6 個の項の和で、図1のサラスの方法で書き出せます。
余因子展開(第 i 行で展開。Δij は A から第 i 行と第 j 列を取り除いた n−1 次の行列式)
detA=j=1∑n(−1)i+jaijΔij列についても同じ形で展開できます。(−1)i+jΔij を (i,j) 余因子といいます。
積の行列式(A, B は同じ次数の正方行列)
det(AB)=detAdetB
計算でいつも使う性質をまとめます(どれも定義から示せます)。
- detA⊤=detA(行についての性質は、そのまま列についても成り立つ)
- 2つの行を入れかえると符号が変わる。2つの行が等しければ 0
- 1つの行を k 倍すると、行列式も k 倍。だから det(kA)=kndetA
- ある行に別の行の定数倍を足しても、値は変わらない
- 三角行列の行列式は、対角成分の積
サラスの方法:右下がりの積を足し、右上がりの積を引く(3次だけ)
なぜ成り立つのか(証明)
① 定義から出る3つの性質
定義の式は、各項が「各行から1つずつ」成分を取ってかけたものなので、1つの行について1次式です(多重線形性)。たとえば第1行が u+v なら、行列式は「第1行が u のもの」+「第1行が v のもの」に分かれます。
2つの行を入れかえると、置換に互換が1つかかり、すべての項で sgn が反転するので符号が変わります(交代性)。等しい2行を入れかえても行列は同じなので、detA=−detA、つまり detA=0。さらに detE=1 です。
「ある行に別の行の k 倍を足しても値は変わらない」は、多重線形性で「元の行列式」+「k×(2行が等しい行列式 =0)」に分かれることから出ます。
② 余因子展開
第1行を a1=∑ja1jej(ej は第 j 成分だけ1の行ベクトル)と分けると、多重線形性より
detA=j=1∑na1jdetAj(Aj は第1行を ej にした行列)
Aj の第 j 列を、となりの列との入れかえ j−1 回で第1列に移すと、第1行が (1,0,⋯,0) になり、符号は (−1)j−1 倍。第1行が (1,0,⋯,0) の行列式は、定義で σ(1)=1 の項しか残らないので、右下の n−1 次の行列式 Δ1j に等しくなります。よって detAj=(−1)1+jΔ1j。
第 i 行で展開するときは、第 i 行を i−1 回の入れかえで一番上に移してから同じことをするので、符号は (−1)i−1⋅(−1)j−1=(−1)i+j です。列での展開は detA⊤=detA から出ます(detA⊤=detA は、置換 σ と逆置換 σ−1 の符号が等しいことから示せます)。
③ 積の行列式
B を固定して f(A)=det(AB) と考えます。AB の第 i 行は(A の第 i 行)×B なので、f も A の各行について1次式で、2行を入れかえると符号が変わります。A の各行を ai=∑jaijej と分けて展開すると
f(A)=j1,⋯,jn∑a1j1⋯anjnf(ej1,⋯,ejn)
j1,⋯,jn に同じものがある項は(2行が等しいので)0。残るのは並べかえ σ の項で、行を入れかえて並べ直すと f(eσ(1),⋯,eσ(n))=sgn(σ)f(E)。f(E)=detB なので
det(AB)=detBσ∑sgn(σ)a1σ(1)⋯anσ(n)=detAdetB
図形の意味:2次の行列式は、2つの列ベクトルが作る平行四辺形の(向きつきの)面積です。行列 A で平面をうつすと、どの図形の面積も ∣detA∣ 倍になります。続けてうつせば倍率はかけ算になる、というのが det(AB)=detAdetB の意味です。
列ベクトル (3,1), (1,2) が作る平行四辺形の面積は 3⋅2−1⋅1=5:単位正方形(面積1)が面積 ∣detA∣ の図形にうつる
大学院入試では
院試では、具体的な4次の行列式、文字を含む行列式の因数分解、性質だけで値を決める問題がよく出る形です。掃き出しで0を増やしてから余因子展開するのが基本の流れです。
大学院入試例題1(4次の行列式)
次の行列式を求めなさい。
1201211003121021解き方
第1行の −2 倍を第2行に、−1 倍を第4行に足す(値は変わらない)。1201211003121021=10002−31−203121−220
第1列で余因子展開すると、(1,1) 成分の項だけが残り −31−2312−220。
この3次の行列式を、0をふくむ第3行 (−2, 2, 0) で展開する。(3,1) 余因子は、第3行と第1列を除いた行列式で +(3⋅2−(−2)⋅1)=8。(3,2) 余因子は、第3行と第2列を除いて −{(−3)⋅2−(−2)⋅1}=4。
よって (−2)⋅8+2⋅4+0=−8。
答え −8
大学院入試例題2(ヴァンデルモンドの行列式)
次の行列式を因数分解しなさい。
1aa21bb21cc2解き方
まず第2行の −a 倍を第3行に足し、次に第1行の −a 倍を第2行に足す(どちらも値は変わらない)。1aa21bb21cc2=1001b−ab(b−a)1c−ac(c−a)
第1列で展開し、第1列から b−a、第2列から c−a をくくり出すと (b−a)(c−a)1b1c=(b−a)(c−a)(c−b)。
答え (b−a)(c−a)(c−b)
大学院入試例題3(性質だけで値を決める)
n が奇数のとき、
A⊤=−A をみたす
n 次の実正方行列(交代行列)
A について、
detA=0 を示しなさい。
解き方
detA=detA⊤=det(−A)。−A は A の各行を −1 倍したものなので det(−A)=(−1)ndetA=−detA(n は奇数)。
よって detA=−detA、detA=0。
答え 証明終わり(n が偶数なら 0 とは限らない。例:(0−110) は行列式 1)
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:大学1年の線形代数学で、置換を使った定義 → 多重線形性・交代性 → 余因子展開 → 積の公式、の順に学ぶことが多い内容です。逆行列(余因子行列)、クラメルの公式、固有多項式へとつながります。
- 答案で示すこと:行基本変形を使うときは、どの操作をしたか(入れかえは符号が変わる、k 倍は k 倍になる、定数倍を足すのは不変)を書きそえます。途中で行を k でわったら、外に k をかけるのを忘れないこと。
- よくある出題の形:4次程度の具体的な計算、文字を含む行列式の因数分解(ヴァンデルモンド型・巡回型)、n 次の行列式を漸化式で求める問題、det(kA)・detA−1・detA⊤ など性質を使う問題、直交行列の行列式が ±1 であることの証明。
- 証明問題:「det(AB)=detAdetB を示せ」と問われたら、何を前提にしてよいか(多重線形性・交代性は使ってよいか)を問題文から読み取り、③の流れで書きます。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
det(kA)=kdetA は誤りだ。n 個の行がすべて k 倍されるから kndetA になるぞ。
- det(kA)=kdetA としてしまう:k 倍されるのは n 個の行すべてなので det(kA)=kndetA です。
- det(A+B)=detA+detB としてしまう:和では成り立ちません(たとえば A=B=E(2次)なら左辺 4、右辺 2)。成り立つのは積です。
- サラスの方法を4次に使う:4次の行列式は 4!=24 項あり、斜めの線8本では足りません。サラスの方法は3次だけです。
練習問題
![指さして説明するサクラちゃん]()
サクラちゃん
符号は市松模様、ここを確かめてから展開しよう。
- 大学院入試 次の行列式を求めなさい。2131−10321
答えと解説を見る
サラスの方法で 2⋅(−1)⋅1+1⋅2⋅3+3⋅1⋅0−3⋅(−1)⋅3−2⋅2⋅0−1⋅1⋅1=−2+6+0+9−0−1=12。答え 12 - 大学院入試 3次の正方行列 A が detA=4 をみたすとき、det(2A−1) と det(A⊤A) を求めなさい。
答えと解説を見る
det(A−1)=detA1=41(AA−1=E の両辺の行列式から)。det(2A−1)=23⋅41=2。det(A⊤A)=detA⊤detA=4⋅4=16。答え 2, 16 - 大学院入試 対角成分がすべて 2、そのすぐ上と下の成分が 1、ほかは 0 の n 次の行列式 Dn=2112⋱⋱⋱112 を求めなさい。
答えと解説を見る
第1行で展開すると Dn=2Dn−1−Dn−2(2つ目の項はさらに第1列で展開)。D1=2, D2=3 なので Dn−Dn−1=Dn−1−Dn−2=⋯=D2−D1=1。答え Dn=n+1
関連する公式
よくある質問
行列式とは何ですか?
正方行列に対応させる1つの数で、置換全体の和 Σ sgn(σ) a1σ(1)…anσ(n) で定義されます。2次なら ad−bc です。0でないことが、逆行列をもつための条件になります。
余因子展開の符号はどう決まりますか?
(i, j) 成分のところは (−1)^(i+j) です。左上を+として、+と−が市松模様にならびます。
det(AB)=detA·detB はどうやって証明しますか?
B を固定して det(AB) を A の関数と見ると、各行について1次式で、2行の入れかえで符号が変わります。この性質から det(AB)=det(E·B)·detA=detB·detA となります。
4次以上の行列式はどう計算しますか?
サラスの方法は3次だけです。行基本変形で1つの列(行)に0を増やしてから余因子展開し、次数を下げて計算します。
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出典・参考
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦