この公式のポイント
- a+d(対角の和)とad−bc(行列式)だけで決まる式
- 証明は成分を計算するだけ
- A2 を A と E で書いて次数を下げる
- 逆は成り立たない(A=kE の場合に注意)

うかるくん
A100 なんて、100回もかけ算しないといけないの?
![合格先生]()
合格先生
A2 を A と E で書けるのがこの定理だ。xn を割った余り px+q を求めれば、An=pA+qE ですぐ出るぞ。
ケーリー・ハミルトンの定理(2次正方行列)
2次の正方行列 A は、自分自身の「2次方程式」をいつでもみたします。A2 を A と E で書きかえられるので、An の計算が一気に楽になります。
2次の正方行列について
A=(acbd)、単位行列 E=(1001)、零行列 O について、いつでも
A2−(a+d)A+(ad−bc)E=Oa+d は対角成分の和、ad−bc は行列式。2次方程式 x2−(a+d)x+(ad−bc)=0 の x に A を入れ、定数項に E をつけた形です。
式に出てくるのは、対角成分の和 a+d と、たすきがけの差 ad−bc
なぜ成り立つのか(証明)
成分を計算して確かめます。
A2=(acbd)(acbd)=(a2+bcca+dcab+bdbc+d2)
(a+d)A=(a2+adac+cdab+bdad+d2)
引くと、対角でない成分は消えて
A2−(a+d)A=(bc−ad00bc−ad)=−(ad−bc)E
移項すれば A2−(a+d)A+(ad−bc)E=O。どんな a, b, c, d でも成り立つ式です。
使い方のかなめ:次数を下げる。A2=(a+d)A−(ad−bc)E なので、A2 は A と E で書けます。これをくり返すと、An も必ず pA+qE の形になります。
p, q は、xn を x2−(a+d)x+(ad−bc) で割った余り px+q から求められます(剰余の定理)。xn={x2−(a+d)x+(ad−bc)}Q(x)+px+q は x の恒等式で、A と E はかけ算の順序を入れかえても同じなので、x に A(定数には E)を入れてよく、{ } の部分が定理により O になって An=pA+qE となります。
例題2の流れ:xn を割った余り px+q が、そのまま An=pA+qE になる
大学受験での使い方
大学受験例題1(次数を下げて A³ を求める)
A=(2314) のとき、
A3 を求めなさい。
解き方
a+d=6、ad−bc=8−3=5 なので、ケーリー・ハミルトンの定理より A2−6A+5E=O、つまり A2=6A−5E。
A3=A⋅A2=6A2−5A=6(6A−5E)−5A=31A−30E。
成分を計算して 31A−30E=(32933194)。
答え A3=(32933194)
大学受験例題2(Aⁿ を求める)
A=(41−21) のとき、
An(
n は正の整数)を求めなさい。
解き方
a+d=5、ad−bc=4+2=6 より A2−5A+6E=O。
xn を x2−5x+6=(x−2)(x−3) で割った商を Q(x)、余りを px+q とすると xn=(x−2)(x−3)Q(x)+px+q。
x=2, 3 を入れて 2n=2p+q、3n=3p+q。よって p=3n−2n、q=3⋅2n−2⋅3n。
x に A を入れると An=pA+qE。成分を計算すると答えの行列になる(n=1, 2 を入れると A、A2 と一致する)。
答え An=(2⋅3n−2n3n−2n2n+1−2⋅3n2n+1−3n)
大学受験例題3(逆向きに使うときの注意)
2次の正方行列
A=(acbd) が
A2−3A+2E=O をみたすとき、
a+d と
ad−bc の値の組をすべて求めなさい。
解き方
定理の式 A2−(a+d)A+(ad−bc)E=O から A2−3A+2E=O を引くと (a+d−3)A=(ad−bc−2)E。
(ア)a+d=3 のとき:A=kE(k は実数)の形になる。A2−3A+2E=O に入れて k2−3k+2=0、k=1, 2。A=E なら (a+d, ad−bc)=(2, 1)、A=2E なら (4, 4)。
(イ)a+d=3 のとき:(ad−bc−2)E=O より ad−bc=2。たとえば対角成分が 1, 2 の対角行列で実際に起こる。
答え (a+d, ad−bc)=(3, 2), (2, 1), (4, 4)
高校の範囲をこえる内容と入試での使い方
今の高校の学習指導要領では、行列は数学Cの「数学的な表現の工夫」で表現の道具としてふれる程度で、ケーリー・ハミルトンの定理は今の教科書の中心内容ではありません(以前の課程の数学Cでは、2次の行列とこの定理を学んでいました)。大学では線形代数で、一般の n 次の正方行列について学ぶ定理です。
- 答案での使い方:2次の場合は、証明が成分の計算だけで数行なので、使う前に確かめておくと安全です。
- 逆は成り立たない:A2−pA+qE=O をみたしても、p=a+d、q=ad−bc とは限りません(例題3の A=kE の場合)。
- 漸化式とのつながり:2つの数列の連立漸化式 an+1=pan+qbn、bn+1=ran+sbn は行列で書け、An を求めることは漸化式を解くことと同じです。行列を使わない問題でも、背景にこの考え方があることがあります。
- 検算:An の答えに n=1, 2 を入れて、A、A2 と一致するか確かめます。
- 難関大の入試では、この定理が背景になっている問題があります。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
逆向きに使うな。A2−3A+2E=O でも、a+d=3 とは限らない。A=kE の場合を忘れないようにしよう。
- 逆向きに使う:A2−3A+2E=O から、すぐに a+d=3、ad−bc=2 とするのは誤り。A=kE の場合を落とさない。
- 数のように因数分解して決めつける:(A−E)(A−2E)=O から「A=E または A=2E」とはできない。行列では XY=O でも X=O や Y=O とは限らない。
- 定数項の E を忘れる:A2−5A+6=O は書きまちがい。行列と数は足せないので 6E と書く。
練習問題
![「ここが大事!」と説明する合格先生]()
合格先生
次数を下げる、これが行列の n 乗のかなめだ。
- 大学受験 A=(1324) について、A2=pA+qE となる実数 p, q を求めなさい。
答えと解説を見る
a+d=5、ad−bc=4−6=−2 より A2−5A−2E=O、A2=5A+2E。A は E の実数倍ではないので、p, q はこの1組だけ。答え p=5, q=2 - 大学受験 A=(1−110) のとき、A100 を求めなさい。
答えと解説を見る
a+d=1、ad−bc=1 より A2−A+E=O。両辺に左から A+E をかけると A3+E=O、A3=−E、A6=E。100=6⋅16+4 より A100=A4=A3A=−A=(−11−10) - 大学受験 A=(32−10) のとき、An(n は正の整数)を求めなさい。
答えと解説を見る
a+d=3、ad−bc=2 より A2−3A+2E=O。xn=(x−1)(x−2)Q(x)+px+q に x=1, 2 を入れて p=2n−1、q=2−2n。An=pA+qE=(2n+1−12n+1−21−2n2−2n)
関連する公式
よくある質問
ケーリー・ハミルトンの定理とは?
2次の正方行列 A(成分 a, b, c, d)について、A²−(a+d)A+(ad−bc)E=O がいつでも成り立つという定理です。
どうやって証明しますか?
A² と (a+d)A を成分で計算して引くと、−(ad−bc)E になることから示せます。
Aⁿ を求めるときはどう使いますか?
xⁿ を x²−(a+d)x+(ad−bc) で割った余り px+q を求めると、Aⁿ=pA+qE になります。
今の高校で習いますか?
今の学習指導要領では行列は数学Cで表現の道具としてふれる程度で、この定理は教科書の中心内容ではありません。大学の線形代数で一般の形を学びます。
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出典・参考
- 大学初年級の線形代数(範囲外の発展内容)
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」数学C(数学的な表現の工夫)
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦