行列の対角化の公式|P⁻¹AP=Dの求め方とAⁿ=PDⁿP⁻¹・対角化できる条件の証明と例題【大学院入試・線形代数】

行列の対角化の公式|P⁻¹AP=Dの求め方とAⁿ=PDⁿP⁻¹・対角化できる条件の証明と例題【大学院入試・線形代数】

合格大作戦 算数・数学公式辞典 › ベクトル

大学院入試

P−1AP=(λ1⋱λn),Ak=P(λ1 k⋱λn k)P−1P^{-1}AP=\begin{pmatrix}\lambda_1&&\\&\ddots&\\&&\lambda_n\end{pmatrix},\qquad A^k=P\begin{pmatrix}\lambda_1^{\,k}&&\\&\ddots&\\&&\lambda_n^{\,k}\end{pmatrix}P^{-1}

P=(p1 ⋯ pn)P=(\boldsymbol{p}_1\ \cdots\ \boldsymbol{p}_n) は1次独立な固有ベクトルを並べた行列、λi\lambda_i は pi\boldsymbol{p}_i の固有値

この公式のポイント

  • 固有ベクトルを並べた PP で P−1APP^{-1}AP が対角行列に
  • An=PDnP−1A^n=PD^nP^{-1}(順番に注意)
  • 固有値がすべて異なれば対角化できる
  • 重解では固有空間の次元=重複度かを調べる
うかるくん

うかるくん

An=PDnP−1A^n=PD^nP^{-1} と P−1DnPP^{-1}D^nP、どっちが正しいのか迷うよ。

合格先生

合格先生

P−1AP=DP^{-1}AP=D だから A=PDP−1A=PDP^{-1} だ。かけると間の P−1PP^{-1}P が消えて PDnP−1PD^nP^{-1} になる。

対角化の条件と行列の n 乗の公式

AA の固有ベクトルを並べた行列 PP を使うと、AA を対角行列に直せることがあります。これを対角化といいます。対角行列の nn 乗は各成分を nn 乗するだけなので、AnA^n が一気に求まります。

対角化と行列の n 乗

nn 次の正方行列 AA の1次独立な固有ベクトル p1,⋯ ,pn\boldsymbol{p}_1,\cdots,\boldsymbol{p}_n(固有値 λ1,⋯ ,λn\lambda_1,\cdots,\lambda_n)を並べて P=(p1 ⋯ pn)P=(\boldsymbol{p}_1\ \cdots\ \boldsymbol{p}_n) とすると

P−1AP=D=(λ1⋱λn),Ak=PDkP−1=P(λ1 k⋱λn k)P−1P^{-1}AP=D=\begin{pmatrix}\lambda_1&&\\&\ddots&\\&&\lambda_n\end{pmatrix},\qquad A^k=PD^kP^{-1}=P\begin{pmatrix}\lambda_1^{\,k}&&\\&\ddots&\\&&\lambda_n^{\,k}\end{pmatrix}P^{-1}

対角化できる条件:

  • AA が対角化できる   ⟺  \iff 1次独立な固有ベクトルが nn 個ある
  •   ⟺  \iff どの固有値でも(固有空間の次元)=(固有方程式の解としての重複度)
  • とくに、固有値がすべて異なれば対角化できる
A21−25×1112=3438p₁ p₂3p₁ 4p₂=1112×3004PDPAP=PD列ごとに見ると Ap₁=3p₁、Ap₂=4p₂(固有ベクトル)
AP=PDAP=PD は、列ごとに見ると「Api=λipiA\boldsymbol{p}_i=\lambda_i\boldsymbol{p}_i」のこと(例題1の数)

なぜ成り立つのか(証明)

① P−1AP=DP^{-1}AP=D は「固有ベクトルを並べた」ということ

APAP の第 ii 列は ApiA\boldsymbol{p}_i、PDPD の第 ii 列は λipi\lambda_i\boldsymbol{p}_i です。だから

AP=PD  ⟺  Api=λipi(i=1,⋯ ,n)AP=PD\iff A\boldsymbol{p}_i=\lambda_i\boldsymbol{p}_i\quad(i=1,\cdots,n)

P−1P^{-1} があること(det⁡P≠0\det P\neq0)は、p1,⋯ ,pn\boldsymbol{p}_1,\cdots,\boldsymbol{p}_n が1次独立であることと同じです。よって「P−1APP^{-1}AP が対角行列になる PP がある」  ⟺  \iff「1次独立な固有ベクトルが nn 個ある」。

② Ak=PDkP−1A^k=PD^kP^{-1}

A=PDP−1A=PDP^{-1} なので、間の P−1P=EP^{-1}P=E が消えて

Ak=(PDP−1)(PDP−1)⋯(PDP−1)=PDkP−1A^k=(PDP^{-1})(PDP^{-1})\cdots(PDP^{-1})=PD^kP^{-1}

対角行列 DD の kk 乗は、対角成分をそれぞれ kk 乗したものです。

③ 固有値がすべて異なれば対角化できる

固有値と固有ベクトルのページの証明③のとおり、異なる固有値に対する固有ベクトルは1次独立です。固有値が nn 個とも異なれば、固有ベクトルを1本ずつとって nn 本の1次独立なベクトルがそろいます。

重解の固有値があるときは、その固有空間の次元(n−rank(A−λE)n-\mathrm{rank}(A-\lambda E))が重複度に足りるかを調べます(各固有空間から選んだ基底を合わせたものが1次独立になることも、③と同じ考え方で示せます)。

xふつうの座標Aⁿxふつうの座標y=P⁻¹x固有ベクトルの座標Dⁿy3ⁿ倍・4ⁿ倍するだけAⁿ(n回かける)P⁻¹DⁿPAⁿ=P Dⁿ P⁻¹
AnA^n の計算は、固有ベクトルの座標に直して(P−1P^{-1})、λi n\lambda_i^{\,n} 倍して(DnD^n)、元にもどす(PP)

大学院入試では

院試では、対角化して AnA^n を求める問題、対角化できるかの判定、漸化式への応用がよく出る形です。

大学院入試

例題1(対角化して Aⁿ)

A=(21−25)A=\begin{pmatrix}2&1\\-2&5\end{pmatrix} を対角化し、AnA^n を求めなさい。

解き方

det⁡(λE−A)=λ2−7λ+12=(λ−3)(λ−4)\det(\lambda E-A)=\lambda^2-7\lambda+12=(\lambda-3)(\lambda-4)。固有値は 3, 43,\ 4。

λ=3\lambda=3:−x+y=0-x+y=0 より (1,1)(1,1)。λ=4\lambda=4:−2x+y=0-2x+y=0 より (1,2)(1,2)。P=(1112),P−1=(2−1−11),P−1AP=(3004)P=\begin{pmatrix}1&1\\1&2\end{pmatrix},\quad P^{-1}=\begin{pmatrix}2&-1\\-1&1\end{pmatrix},\quad P^{-1}AP=\begin{pmatrix}3&0\\0&4\end{pmatrix}

An=(1112)(3n004n)(2−1−11)A^n=\begin{pmatrix}1&1\\1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3^n&0\\0&4^n\end{pmatrix}\begin{pmatrix}2&-1\\-1&1\end{pmatrix} を計算する。n=1n=1 を入れると AA にもどることで検算できる。

答え An=(2⋅3n−4n4n−3n2⋅3n−2⋅4n2⋅4n−3n)A^n=\begin{pmatrix}2\cdot3^n-4^n&4^n-3^n\\2\cdot3^n-2\cdot4^n&2\cdot4^n-3^n\end{pmatrix}

大学院入試

例題2(対角化できない行列)

A=(2102)A=\begin{pmatrix}2&1\\0&2\end{pmatrix} は対角化できないことを示し、AnA^n を求めなさい。

解き方

固有値は 22(重解)。A−2E=(0100)A-2E=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix} の階数は1なので、固有空間の次元は 2−1=12-1=1。1次独立な固有ベクトルが2本とれないので対角化できない。

A=2E+NA=2E+N(N=(0100)N=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix})とすると N2=ON^2=O、2E2E と NN はかけ算の順序を入れかえられるので、二項定理が使えて An=(2E)n+n(2E)n−1N=2nE+n2n−1NA^n=(2E)^n+n(2E)^{n-1}N=2^nE+n2^{n-1}N。

答え An=(2nn⋅2n−102n)A^n=\begin{pmatrix}2^n&n\cdot2^{n-1}\\0&2^n\end{pmatrix}

大学院入試

例題3(漸化式への応用)

a1=1, a2=1, an+2=an+1+2ana_1=1,\ a_2=1,\ a_{n+2}=a_{n+1}+2a_n で定まる数列の一般項を、行列の対角化の考え方で求めなさい。

解き方

(an+2an+1)=(1210)(an+1an)\begin{pmatrix}a_{n+2}\\a_{n+1}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&2\\1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a_{n+1}\\a_n\end{pmatrix}。この行列の固有値は λ2−λ−2=0\lambda^2-\lambda-2=0 より 2, −12,\ -1、固有ベクトルは (2,1)(2,1) と (1,−1)(1,-1)。

初めのベクトルを固有ベクトルで分けると (a2a1)=(11)=23(21)−13(1−1)\begin{pmatrix}a_2\\a_1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}=\frac23\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}-\frac13\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}。

行列を n−1n-1 回かけると、それぞれ 2n−12^{n-1} 倍、(−1)n−1(-1)^{n-1} 倍になるので (an+1an)=23⋅2n−1(21)−13(−1)n−1(1−1)\begin{pmatrix}a_{n+1}\\a_n\end{pmatrix}=\frac23\cdot2^{n-1}\begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix}-\frac13(-1)^{n-1}\begin{pmatrix}1\\-1\end{pmatrix}。

下の成分を読んで an=23⋅2n−1+13(−1)n−1=2n−(−1)n3a_n=\dfrac23\cdot2^{n-1}+\dfrac13(-1)^{n-1}=\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}。a3=3a_3=3 と一致する。

答え an=2n−(−1)n3a_n=\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}

学部の授業とのつながり・院試での注意

  • どの授業で習うか:大学1年の線形代数学で固有値のあとに学びます。対角化できない場合は、2年以降の授業や発展的な教科書でジョルダン標準形として扱われます。連立線形微分方程式・マルコフ連鎖・漸化式などでも使います。
  • 答案で示すこと:PP の列が固有ベクトルであること、PP が正則(det⁡P≠0\det P\neq0)であること、P−1APP^{-1}AP の対角成分がPP の列の並び順どおりの固有値であることを書きます。PP の選び方は1通りではありません。
  • 判定のしかた:重解の固有値 λ\lambda について n−rank(A−λE)n-\mathrm{rank}(A-\lambda E) を計算し、重複度と比べます。
  • よくある出題の形:2次・3次の行列の対角化と AnA^n、対角化できるかの判定(文字を含む場合も)、対角化できない行列の AnA^n、連立漸化式・3項間漸化式への応用、AnA^n の極限。

よくある間違い

腕でバツを作る合格先生

合格先生

重解があると対角化できない、と決めつけるな。固有空間の次元が重複度と等しければ対角化できるぞ。

  • An=P−1DnPA^n=P^{-1}D^nP と順番を逆にする:P−1AP=DP^{-1}AP=D なら A=PDP−1A=PDP^{-1} なので、An=PDnP−1A^n=PD^nP^{-1} です。n=1n=1 を入れて AA にもどるかで確かめます。
  • DD の並びと PP の列の並びをずらす:PP の第 ii 列の固有ベクトルの固有値が、DD の第 ii 対角成分です。
  • 重解があると対角化できないと決めつける:練習問題3のように、重解があっても固有空間の次元が重複度と等しければ対角化できます。

練習問題

ひらめいたうかるくん

うかるくん

n=1n=1 を入れて AA にもどるか確かめよう。

  1. 大学院入試 A=(3102)A=\begin{pmatrix}3&1\\0&2\end{pmatrix} について AnA^n を求めなさい。
    答えと解説を見る固有値 3, 23,\ 2、固有ベクトル (1,0)(1,0)、(1,−1)(1,-1)。P=(110−1)P=\begin{pmatrix}1&1\\0&-1\end{pmatrix} は P−1=PP^{-1}=P。An=P diag(3n,2n)P−1A^n=P\,\mathrm{diag}(3^n,2^n)P^{-1} を計算して、答え (3n3n−2n02n)\begin{pmatrix}3^n&3^n-2^n\\0&2^n\end{pmatrix}
  2. 大学院入試 A=(110010002)A=\begin{pmatrix}1&1&0\\0&1&0\\0&0&2\end{pmatrix} は対角化できるか答えなさい。
    答えと解説を見る固有値は 11(重複度2)と 22。A−EA-E の階数は2なので、固有値1の固有空間の次元は 3−2=13-2=1 で、重複度2に足りない。答え 対角化できない
  3. 大学院入試 A=(311242113)A=\begin{pmatrix}3&1&1\\2&4&2\\1&1&3\end{pmatrix} を対角化しなさい。
    答えと解説を見る固有値は 22(重解)と 66。λ=2\lambda=2 の固有空間は x+y+z=0x+y+z=0 で次元2((1,−1,0)(1,-1,0)、(1,0,−1)(1,0,-1))、λ=6\lambda=6 は (1,2,1)(1,2,1)。det⁡P=4≠0\det P=4\neq0。答え P=(111−1020−11), P−1AP=(200020006)P=\begin{pmatrix}1&1&1\\-1&0&2\\0&-1&1\end{pmatrix},\ P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&2&0\\0&0&6\end{pmatrix}

関連する公式

よくある質問

行列の対角化とは?

正則な行列Pを使って P⁻¹AP を対角行列にすることです。Pの列にはAの固有ベクトルを、対角成分には対応する固有値が並びます。

対角化するとなぜ Aⁿ が求めやすいのですか?

A=PDP⁻¹ なので Aⁿ=PDⁿP⁻¹ となり、対角行列Dのn乗は対角成分をn乗するだけだからです。

どんなときに対角化できますか?

1次独立な固有ベクトルがn個あるときです。固有値がすべて異なれば必ずでき、重解があるときは、その固有空間の次元が重複度に等しいかで決まります。

対角化できないときの Aⁿ はどうしますか?

2次なら A=λE+N(N²=O)と分けて二項定理を使う方法や、ケーリー・ハミルトンの定理を使う方法があります。一般にはジョルダン標準形を使います。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 大学初年級の線形代数学(範囲外の発展内容)

最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦