この公式のポイント
- 実対称行列の固有値はすべて実数
- 異なる固有値の固有ベクトルは直交する
- 直交行列 P で P⊤AP=D(P−1=P⊤)
- 2次形式は∑λiyi2 に。∣x∣=1 での最大・最小は固有値

うかるくん
対称行列の対角化って、ふつうの対角化と何がちがうの?
![合格先生]()
合格先生
固有ベクトルを長さ1で直交するように並べるんだ。すると P は直交行列になり、P−1 の代わりに P⊤ が使えるぞ。
対称行列の性質と直交対角化
A⊤=A をみたす行列を対称行列といいます。実数の対称行列は、どんなときでも直交行列(向きをそろえた回転・折り返し)で対角化できます。これを使うと、2次形式(x2, xy, y2 などの2次の項だけの式)を平方の和に直せます。
実対称行列の直交対角化(スペクトル定理)
A を n 次の実対称行列(A⊤=A)とすると
- 固有値はすべて実数
- 異なる固有値の固有ベクトルは直交する
- 直交行列 P(P⊤P=E、つまり P−1=P⊤)で対角化できる:
P⊤AP=λ1⋱λn2次形式の標準形:x=Py と変数を変えると
x⊤Ax=λ1y12+λ2y22+⋯+λnyn2∣x∣=1 のとき、x⊤Ax の最大値は最大の固有値、最小値は最小の固有値。すべての固有値が正 ⟺ 2次形式が正定値(x=0 なら正)。
5x2+4xy+2y2=6 は、固有ベクトルの向きを軸にとると 6X2+Y2=6 の楕円(例題2)
なぜ成り立つのか(証明)
① 固有値は実数
Ax=λx(x=0、成分は複素数でもよい)とし、xˉ を成分の共役複素数とします。xˉ⊤Ax=λxˉ⊤x。一方、A は実数で対称なので Ax=Axˉ=λˉxˉ で、
xˉ⊤Ax=(A⊤xˉ)⊤x=(Axˉ)⊤x=λˉxˉ⊤x
xˉ⊤x=∣x1∣2+⋯+∣xn∣2>0 なので λ=λˉ、つまり λ は実数です。
② 異なる固有値の固有ベクトルは直交
Ax1=λ1x1、Ax2=λ2x2、λ1=λ2 とします。内積を (u,v)=u⊤v と書くと、A⊤=A より
λ1(x1,x2)=(Ax1,x2)=x1⊤A⊤x2=(x1,Ax2)=λ2(x1,x2)
(λ1−λ2)(x1,x2)=0 で λ1=λ2 なので、(x1,x2)=0。
③ 直交行列で対角化できる(次数についての帰納法・略証)
①より実数の固有値 λ1 と、長さ1の実の固有ベクトル p1 がとれます。p1 を含む正規直交基底 p1,q2,⋯,qn をグラム・シュミットの直交化で作り、並べた直交行列を P1 とします。P1⊤AP1 は対称で、第1列は P1⊤(λ1p1)=λ1e1 なので
P1⊤AP1=(λ100⊤A1)(A1 は n−1 次の実対称行列)
A1 に帰納法の仮定を使って直交行列 Q1 で対角化し、P=P1(100⊤Q1) とすれば、P は直交行列で P⊤AP は対角行列です。
④ 2次形式の標準形と最大・最小
x=Py とおくと x⊤Ax=y⊤(P⊤AP)y=∑λiyi2。また ∣x∣2=y⊤P⊤Py=∣y∣2(直交行列は長さを変えない)。∣y∣=1 のもとで λmin≤∑λiyi2≤λmax で、等号は y をその固有値の方向にとったときに成り立ちます。
単位円上で Q=5x2+4xy+2y2 を動かすと、最大値・最小値は固有値 6、1(例題2の行列)
大学院入試では
院試では、3次の対称行列の直交対角化(重解の固有空間でのグラム・シュミット)、2次曲線の標準形、球面上の2次形式の最大・最小がよく出る形です。
大学院入試例題1(3次の直交対角化)
A=211121112 を直交行列で対角化しなさい。
解き方
det(λE−A)=(λ−1)2(λ−4)(A−E の3行がすべて (1,1,1) になることからもわかる)。固有値は 4 と 1(重解)。
λ=4:(1,1,1)。長さ1にして 31(1,1,1)。
λ=1:固有空間は x+y+z=0(2次元)。(1,−1,0) をとり、これに直交する (1,1,−2) をとる(グラム・シュミット)。長さ1にして 21(1,−1,0)、61(1,1,−2)。
3本は互いに直交し長さ1なので、並べた P は直交行列。
答え P=31313121−2106161−62,P⊤AP=400010001
大学院入試例題2(2次曲線の標準形)
曲線
5x2+4xy+2y2=6 はどんな図形か答えなさい。
解き方
5x2+4xy+2y2=(xy)(5222)(xy)。det(λE−A)=λ2−7λ+6=(λ−1)(λ−6)。
λ=6:(2,1)、λ=1:(−1,2)(直交している)。長さ1にして並べ、(xy)=51(21−12)(XY) とおく(回転)と、6X2+Y2=6、つまり X2+6Y2=1。
答え 主軸が (2,1)、(−1,2) の向きで、その方向の半径がそれぞれ 1、6 の楕円
大学院入試例題3(球面上の最大・最小)
x2+y2+z2=1 のとき、
Q=2x2+2y2+2z2+2xy+2yz+2zx の最大値と最小値を求めなさい。
解き方
Q=x⊤Ax、A は例題1の行列(xy の係数 2 を (1,2) 成分と (2,1) 成分に 1 ずつ分ける)。
例題1の P で x=Py とすると Q=4y12+y22+y32、条件は y12+y22+y32=1。よって Q=1+3y12 で、1≤Q≤4。
最大は y1=±1、つまり (x,y,z)=±31(1,1,1)。最小は y1=0、つまり x+y+z=0 をみたす長さ1のベクトル。
答え 最大値 4、最小値 1
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:大学1年の線形代数学の後半で、内積・グラム・シュミットのあとに学ぶことが多い内容です。多変数関数の極値(ヘッセ行列の正定値)、統計の主成分分析、力学の慣性主軸などで使います。
- 答案で示すこと:P の列が互いに直交し、長さが1であること。重解の固有値では、固有空間から選んだ2本が直交していないことが多いので、グラム・シュミットで直してから並べます。P−1 の代わりに P⊤ が使えるのが、ふつうの対角化との違いです。
- 2次形式の係数:xy の係数は、行列の (1,2) 成分と (2,1) 成分に半分ずつ分けて対称行列にします。
- よくある出題の形:直交行列による対角化、2次曲線・2次曲面の分類(楕円・双曲線など)、条件 ∣x∣=1 のもとでの最大・最小、正定値になる条件、固有値が実数であることや固有ベクトルの直交性の証明。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
xy の係数をそのまま行列に入れるのは誤りだ。(1,2) 成分と (2,1) 成分に半分ずつ分けよう。
- 固有ベクトルの長さを1にしない:長さ1にしないと P は直交行列にならず、P⊤AP は対角行列になりません。
- xy の係数をそのまま行列に入れる:5x2+4xy+2y2 の行列は (5042) や (5442) ではなく、4 を半分ずつ分けた (5222) です。
- 重解の固有空間で直交していない2本を並べる:例題1の (1,−1,0) と (1,0,−1) はどちらも固有ベクトルですが直交していません。そのまま並べると直交行列になりません。
練習問題
![「ここが大事!」と説明する合格先生]()
合格先生
重解の固有空間ではグラム・シュミットで直交させるのだ。
- 大学院入試 A=(1221) を直交行列で対角化しなさい。
答えと解説を見る
固有値は λ2−2λ−3=0 より 3, −1。固有ベクトル (1,1)、(1,−1) を長さ1にして並べる。答え P=21(111−1),P⊤AP=(300−1) - 大学院入試 2次形式 2x2+2kxy+2y2 が正定値になる k の範囲を求めなさい。
答えと解説を見る
行列は (2kk2) で、固有値は (λ−2)2=k2 より 2+k, 2−k。両方正なら正定値。答え −2<k<2 - 大学院入試 曲線 3x2+2xy+3y2=8 を、回転して標準形に直しなさい。
答えと解説を見る
行列 (3113) の固有値は 4((1,1))と 2((1,−1))。4X2+2Y2=8。答え 2X2+4Y2=1((1,1) の向きに半径 2、(1,−1) の向きに半径 2 の楕円)
関連する公式
よくある質問
実対称行列はいつでも対角化できますか?
はい。実数の対称行列は、直交行列Pを使って PᵀAP を対角行列にできます(スペクトル定理)。固有値に重解があってもできます。
なぜ対称行列の固有値は実数なのですか?
Ax=λx のとき、x̄ᵀAx を2通りに計算すると λ|x|² と λ̄|x|² になり、λ=λ̄ が出るからです。
2次形式の標準形とは?
2次形式 xᵀAx を、直交行列による変数変換 x=Py で λ1y1²+λ2y2²+… のように平方の和だけの形に直したものです。係数は A の固有値です。
2次形式が正定値になる条件は?
対称行列 A の固有値がすべて正であることです。このとき 0 でないすべての x で xᵀAx>0 となります。
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出典・参考
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦