この公式のポイント
- 作った方向の正射影を引いて直交させる
- 引いたら長さで割って長さ1に
- 1次独立なら uk=0 で必ず作れる
- 関数の空間では積分で内積を計算

うかるくん
グラム・シュミットって、結局なにを引き算しているの?
![合格先生]()
合格先生
作った方向への正射影だ。それを引いた残りは、前のベクトルすべてに垂直になるぞ。
内積とグラム・シュミットの直交化
1次独立なベクトルの組から、互いに直交し長さ1のベクトルの組(正規直交系)を順に作る方法がグラム・シュミットの直交化です。やることは「すでに作った方向の成分(正射影)を引いて、長さを1にする」のくり返しだけです。
グラム・シュミットの直交化
1次独立な a1,⋯,an に対して、k=1,2,⋯,n の順に
uk=ak−j=1∑k−1(ak,ej)ej,ek=∥uk∥ukとすると、e1,⋯,en は正規直交系 (ei,ej)=δij で、各 k で e1,⋯,ek と a1,⋯,ak は同じ部分空間を張る。
正規化を最後にまとめるなら uk=ak−j<k∑(uj,uj)(ak,uj)uj。
ここで ( , ) は内積です。Rn では標準内積 (x,y)=x1y1+⋯+xnyn ですが、関数の空間で (f,g)=∫abf(x)g(x)dx としても、内積の性質(対称性・線形性・(x,x)>0 (x=0))をみたすので、同じ方法が使えます(例題2)。
2本目:a2 から a1 方向の正射影 (a1,a1)(a2,a1)a1 を引くと、a1 に垂直な u2 が残る
証明:正射影を引くと直交する
k についての帰納法で示します。e1,⋯,ek−1 が正規直交系で、a1,⋯,ak−1 と同じ部分空間 Wk−1 を張っているとします(k=1 では e1=a1/∥a1∥ で明らか)。
① uk は前のすべてと直交する
i<k のとき、内積の線形性と (ej,ei)=δji から
(uk,ei)=(ak,ei)−j=1∑k−1(ak,ej)(ej,ei)=(ak,ei)−(ak,ei)=0
② uk=0 なので正規化できる
もし uk=0 なら ak=∑(ak,ej)ej∈Wk−1 となり、ak が a1,⋯,ak−1 の1次結合になって1次独立に反します。よって ek=uk/∥uk∥ が作れて、e1,⋯,ek は正規直交系です。
③ 張る空間が同じ
ek は ak と Wk−1 の元の1次結合、逆に ak=∥uk∥ek+∑(ak,ej)ej です。よって両方とも同じ空間 Wk を張ります。これで帰納法が完成します。
式の意味は図2のとおりです。∑j<k(ak,ej)ej は ak の Wk−1 への正射影で、それを引いた uk は Wk−1 に垂直な成分です。
3本目のイメージ:e1,e2 の平面への正射影を引くと、平面に垂直な u3 が残る
大学院入試では
数値の直交化、関数の空間での直交化、正射影(最も近い点・距離)の3つが定番です。
大学院入試例題1(R³ の直交化)
a1=(1,1,0)、
a2=(1,0,1)、
a3=(0,1,1) を、標準内積についてグラム・シュミットの方法で正規直交化しなさい。
解き方
e1=21(1,1,0)。
u2=a2−(a1,a1)(a2,a1)a1=(1,0,1)−21(1,1,0)=(21,−21,1)。∥u2∥2=23 より e2=61(1,−1,2)。
(a3,e1)=21、(a3,e2)=61 なので u3=(0,1,1)−21(1,1,0)−61(1,−1,2)=(−32,32,32)。e3=31(−1,1,1)。
確かめ:(e1,e2)、(e1,e3)、(e2,e3) はどれも 0。
答え e1=21(1,1,0)、e2=61(1,−1,2)、e3=31(−1,1,1)
大学院入試例題2(関数の空間での直交化)
2次以下の多項式の空間に内積
(f,g)=∫−11f(x)g(x)dx を入れる。
1, x, x2 を直交化し(正規化はしなくてよい)、それぞれの長さの2乗も求めなさい。
解き方
u1=1、(u1,u1)=2。
(x,1)=∫−11xdx=0 なので u2=x。(u2,u2)=32。
(x2,1)=32、(x2,x)=0 なので u3=x2−22/3⋅1=x2−31。
(u3,u3)=∫−11(x4−32x2+91)dx=52−94+92=458。
答え 1, x, x2−31(長さの2乗は 2, 32, 458)
大学院入試例題3(正射影と距離)
b=(1,2,3) の、
a1=(1,1,0) と
a2=(1,0,1) が張る平面
W への正射影と、
b と
W の距離を求めなさい。
解き方
例題1の e1,e2 は W の正規直交基底。(b,e1)=23、(b,e2)=65。
正射影 p=23(1,1,0)+65(1,−1,2)=(37,32,35)。
b−p=(−34,34,34) は a1,a2 の両方と直交(内積 0)。距離は ∥b−p∥=343。
答え 正射影 (37,32,35)、距離 343
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:大学初年級の線形代数の「内積空間(計量ベクトル空間)」で学びます。対称行列の直交対角化で直交行列を作るときにも使います。
- 答案で示すべきこと:1本ごとに uk の式を書き、最後に内積が 0・長さが 1 になることを確かめた一文を入れると、計算ミスにも気づけます。
- 内積が何かを確認:関数の空間では積分区間や重みで内積が変わり、答えも変わります(例題2の区間 [−1,1] を [0,1] にすると結果が別になる)。
- よくある出題の形:数値ベクトルの正規直交化、多項式の直交化、正射影と距離、直交補空間の基底、A=QR(QR分解)などです。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
長さ1でない uj で引くときは、(uj,uj) で割るのを忘れるな。
- 正規化していないベクトルで (ak,uj)uj を引く:uj の長さが1でないときは (uj,uj) で割ります。例題1で割り忘れると直交しません。
- 元の aj への射影を引く:引くのは直交化済みの ej(または uj)方向の成分です。a1,a2 方向をそれぞれ引いても、3本目は直交しません。
- 順番を変えても同じ結果だと思う:張る空間は同じでも、できる正規直交系は順番で変わります。問題の順に従います。
練習問題
![ひらめいたうかるくん]()
- 大学院入試 a1=(1,1)、a2=(1,3) を、標準内積について正規直交化しなさい。
答えと解説を見る
e1=21(1,1)。u2=(1,3)−24(1,1)=(−1,1)。答え e1=21(1,1)、e2=21(−1,1) - 大学院入試 a1=(1,0,1)、a2=(1,1,1) を、標準内積について正規直交化しなさい。
答えと解説を見る
e1=21(1,0,1)。(a2,a1)=2、(a1,a1)=2 より u2=(1,1,1)−(1,0,1)=(0,1,0)。答え e1=21(1,0,1)、e2=(0,1,0) - 大学院入試 内積 (f,g)=∫01f(x)g(x)dx について、1, x を正規直交化しなさい。
答えと解説を見る
(1,1)=1 より e1=1。(x,1)=21 より u2=x−21。(u2,u2)=∫01(x−21)2dx=121。答え e1=1、e2=23(x−21)
関連する公式
よくある質問
グラム・シュミットの直交化とは?
1次独立なベクトルの組から、すでに作った方向への正射影を引き、長さで割ることをくり返して、正規直交系を作る方法です。
なぜ直交するのですか?
u_kとe_iの内積を計算すると、(a_k,e_i)から(a_k,e_i)を引くことになり0になるからです。正射影を引いた残りは、それまでの空間に垂直です。
関数でも直交化できますか?
できます。(f,g)=∫f(x)g(x)dx のように積分で内積を決めれば、ベクトルと同じ式で直交化できます。区間が[−1,1]なら1、x、x²−1/3が直交します。
順番を変えると結果は変わりますか?
変わります。張る空間は同じですが、できる正規直交系は順番によって異なります。
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出典・参考
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦