この公式のポイント
- 2乗の和の積 ≧ 積の和の2乗
- 等号は2組の数が比例するとき
- 証明は判別式か内積と cosθ
- 条件つきの最大・最小で、等号の成立を必ず確かめる

うかるくん
不等式で −5≤3x+4y≤5 と出たら、もう最大値5で決まりなの?
![合格先生]()
合格先生
まだだ。等号が成り立つのは2組の数が比例するときだ。その x, y が実際にあると示して、はじめて最大値と言えるぞ。
コーシー・シュワルツの不等式
「2乗の和どうしの積」と「積の和の2乗」をくらべる不等式です。条件つきの最大・最小や、不等式の証明で強力な道具になります。
実数 a₁,…,aₙ と b₁,…,bₙ について
(a12+a22+⋯+an2)(b12+b22+⋯+bn2)≥(a1b1+a2b2+⋯+anbn)2等号は、2組の数が比例するとき(bk=tak となる実数 t がある、または ak がすべて0のとき)。
よく使う形:(a2+b2)(x2+y2)≥(ax+by)2 (等号は a:b=x:y)
ベクトルの形:∣a⋅b∣≤∣a∣∣b∣
内積は ∣a∣∣b∣cosθ。∣cosθ∣≤1 なので ∣a⋅b∣≤∣a∣∣b∣
なぜ成り立つのか(3通りの証明)
証明①(2つずつの場合:差を作る)
(a2+b2)(x2+y2)−(ax+by)2=a2y2+b2x2−2abxy=(ay−bx)2≥0
等号は ay=bx、つまり a:b=x:y のときです。
証明②(n 個の場合:2次関数の判別式) ak がすべて0なら両辺とも0で成り立ちます。そうでないとき、t の関数
f(t)=k=1∑n(akt−bk)2=(∑ak2)t2−2(∑akbk)t+∑bk2
を考えます。2乗の和なので、すべての実数 t で f(t)≥0。t2 の係数 ∑ak2 は正なので、判別式 D≤0 です。
4D=(∑akbk)2−(∑ak2)(∑bk2)≤0
等号 D=0 は、f(t)=0 となる t があるとき、つまりすべての k で bk=tak のときです。
証明③(ベクトル) n=2, 3 なら、a=(a1,a2,a3)、b=(b1,b2,b3) のなす角を θ として a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ。cos2θ≤1 から (a⋅b)2≤∣a∣2∣b∣2。これを成分で書いたものが、この不等式です。等号は cosθ=±1、つまり2つのベクトルが平行のときです。
例題1の図:直線 3x+4y=k が円 x2+y2=1 と共有点をもつのは −5≤k≤5
大学受験での使い方
大学受験例題1(円の上での最大・最小)
x2+y2=1 のとき、
3x+4y の最大値と最小値を求めなさい。
解き方
コーシー・シュワルツの不等式より (32+42)(x2+y2)≥(3x+4y)2。よって (3x+4y)2≤25、−5≤3x+4y≤5。
等号は x:y=3:4 のとき。x=3t、y=4t を x2+y2=1 に入れて t=±51。
(x, y)=(53, 54) で最大 5、(−53, −54) で最小 −5。
答え 最大値 5、最小値 −5
大学受験例題2(和が一定のときの2乗の和)
実数
x, y, z が
x+y+z=1 をみたすとき、
x2+y2+z2 の最小値を求めなさい。
解き方
(12+12+12)(x2+y2+z2)≥(x+y+z)2=1 より x2+y2+z2≥31。
等号は x:y:z=1:1:1、つまり x=y=z=31 のときで、このとき実際に 31 になる。
答え 31(x=y=z=31 のとき)
大学受験例題3(分数の和の不等式)
a, b, c>0 のとき、
(a+b+c)(a1+b1+c1)≥9 を示しなさい。
解き方
1組目に a, b, c、2組目に a1, b1, c1 をあてはめると、積の和は 1+1+1=3。
よって (a+b+c)(a1+b1+c1)≥32=9。
等号は a:b:c=a1:b1:c1、つまり a=b=c のとき。
答え 証明は解き方のとおり(等号は a=b=c のとき)
高校の範囲をこえる内容と入試での使い方
2つずつの形 (a2+b2)(x2+y2)≥(ax+by)2 は、数学Ⅱ「式と証明」の不等式の証明の問題として、教科書や問題集によく出てきます。一方、n 個の一般の形や「コーシー・シュワルツの不等式」という名前は、高校の教科書の中心内容ではなく、大学の線形代数や解析学で本格的に学ぶ発展内容です。
- 答案での使い方:名前を書いて使ってもまちがいではありませんが、どこまで説明が必要かの採点方針は大学ごとに分かりません。2〜3個の場合なら、証明①や証明②(判別式)を数行で書いてから使うと安全です。
- 等号の条件を必ず確かめる:最大値・最小値の問題では、等号が成り立つ x, y を実際に示さないと「最大値」「最小値」とは言えません。
- 見当づけ・検算:最大・最小の値と、そのときの比がすぐ分かります。微分や図形で解いた答えの検算に便利です。
- 難関大の入試では、この不等式が背景になっている問題があります。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
右辺の2乗を忘れるな。(a2+b2)(x2+y2)≥(ax+by)2 と、積の和を2乗するんだぞ。
- 等号の条件を確かめない:不等式で下限を出しても、その値をとる x, y がなければ最小値ではない。
- 右辺の2乗を忘れる:(a2+b2)(x2+y2)≥ax+by ではなく、(ax+by)2。
- 負の数で を使う:例題3のように a をあてはめる変形は、a>0 のときだけ。
練習問題
![ひらめいたうかるくん]()
- 大学受験 実数 x, y が 2x+y=5 をみたすとき、x2+y2 の最小値を求めなさい。
答えと解説を見る
(22+12)(x2+y2)≥(2x+y)2=25 より x2+y2≥5。等号は x:y=2:1、x=2, y=1 のとき。最小値 5 - 大学受験 実数 x, y, z が x2+y2+z2=9 をみたすとき、x+2y+2z の最大値を求めなさい。
答えと解説を見る
(12+22+22)(x2+y2+z2)≥(x+2y+2z)2 より (x+2y+2z)2≤81、x+2y+2z≤9。等号は (x, y, z)=(1, 2, 2) のとき。最大値 9 - 大学受験 x, y>0、x+y=1 のとき、x1+y4 の最小値を求めなさい。
答えと解説を見る
1組目 x, y、2組目 x1, y2 として (x+y)(x1+y4)≥(1+2)2=9。等号は x:y=x1:y2 より y=2x、x=31, y=32 のとき。最小値 9
関連する公式
よくある質問
コーシー・シュワルツの不等式とは?
(a₁²+…+aₙ²)(b₁²+…+bₙ²)≧(a₁b₁+…+aₙbₙ)² という不等式です。2つずつなら (a²+b²)(x²+y²)≧(ax+by)² です。
等号が成り立つのはいつですか?
2組の数が比例するとき、つまり b₁:…:bₙ が a₁:…:aₙ と同じ比になるとき(一方がもう一方の実数倍のとき)です。
どうやって証明しますか?
すべての t で0以上になる2次関数 Σ(aₖt−bₖ)² の判別式が0以下になることから示せます。2つずつなら、差が (ay−bx)² になることでも示せます。
入試の答案でそのまま使ってよいですか?
使ってもまちがいではありませんが、2〜3個の場合は短い証明をそえてから使うと安全です。最大・最小では等号が成り立つ値を必ず示します。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」数学Ⅱ(式と証明)
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」数学C(ベクトル)
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦