この公式のポイント
- A をかけても向きが変わらないベクトルが固有ベクトル
- 固有値はdet(λE−A)=0 の解
- 固有値の和=トレース、積=行列式(検算に使える)
- 固有ベクトルは0 でない。重解では本数に注意

うかるくん
固有値って、なんで det(λE−A)=0 を解くと出てくるの?
![合格先生]()
合格先生
(λE−A)x=0 が0でない解をもつのは、λE−A に逆行列がないときだ。それが行列式0の意味だぞ。
固有値・固有ベクトルの定義と固有多項式
行列 A をかけても向きが変わらず、何倍かされるだけのベクトルを固有ベクトル、その倍率を固有値といいます。対角化・行列の n 乗・2次形式・微分方程式など、線形代数の後半はすべてここから始まります。
固有値と固有ベクトル
n 次の正方行列 A について
Ax=λx(x=0)となる数 λ を固有値、x を λ に対する固有ベクトルという。固有値は固有方程式
φA(λ)=det(λE−A)=0の解。φA(λ) を固有多項式(特性多項式)という。固有値 λ の固有ベクトルは (λE−A)x=0 の 0 でない解。
固有値を重複も数えて λ1,⋯,λn(複素数も含む)とすると
λ1+⋯+λn=trA (対角成分の和),λ1λ2⋯λn=detA
2次なら φA(λ)=λ2−(a+d)λ+(ad−bc)。これはケーリー・ハミルトンの定理に出てくる2次式と同じです。
A=(41−21) でうつすと、(1,1) と (2,1) は向きが変わらない(固有ベクトル)。(1,0) は向きが変わる
なぜ成り立つのか(証明)
① 固有値は det(λE−A)=0 の解
Ax=λx は (λE−A)x=0 と同じです。これが 0 でない解をもつ
⟺λE−A が逆行列をもたない⟺det(λE−A)=0
(逆行列があれば左からかけて x=0 しか解がない。逆行列がなければ階数が n より小さく、自由度が1以上あるので 0 でない解がある。)
② 固有値の和と積
det(λE−A) を定義どおり展開すると、λn−1 の項は対角成分の積 (λ−a11)⋯(λ−ann) からしか出ないので
φA(λ)=λn−(trA)λn−1+⋯+(−1)ndetA
(定数項は λ=0 を入れて det(−A)=(−1)ndetA)。一方 φA(λ)=(λ−λ1)⋯(λ−λn) なので、係数を比べると和が trA、積が detA です(解と係数の関係)。
③ 異なる固有値の固有ベクトルは1次独立
λ1,⋯,λk が互いに異なり、xi がそれぞれの固有ベクトルとします。k についての帰納法で示します。c1x1+⋯+ckxk=0 とすると、A をかけた式から λk 倍した式を引いて
c1(λ1−λk)x1+⋯+ck−1(λk−1−λk)xk−1=0
帰納法の仮定から ci(λi−λk)=0、λi=λk なので c1=⋯=ck−1=0。すると ckxk=0 で ck=0。この性質が対角化の土台です。
例題1の手順:固有多項式 → それぞれの固有値で連立方程式 → 和と積で検算
大学院入試では
院試では、3次の行列の固有値・固有ベクトル(重解をふくむ)、Ak や A−1 の固有値、実数の固有値をもたない場合がよく出る形です。
大学院入試例題1(3次・重解あり)
A=321141123 の固有値と固有ベクトルをすべて求めなさい。
解き方
第1行から第3行を引くと第1行は (λ−2, 0, −(λ−2)) となり、λ−2 をくくり出せる。次に第1列を第3列に足す。λ−3−2−1−1λ−4−1−1−2λ−3=(λ−2)1−2−10λ−4−1−1−2λ−3=(λ−2)1−2−10λ−4−10−4λ−4
第1行で展開して (λ−2){(λ−4)2−4}=(λ−2)2(λ−6)。固有値は 2(重解)と 6。
λ=2:A−2E の3行はどれも (1,1,1) の定数倍で、x+y+z=0。y=−s, z=−t とおくと x=s+t。
λ=6:−3x+y+z=0、2x−2y+2z=0、x+y−3z=0 を解いて x:y:z=1:2:1。
検算:2+2+6=10=3+4+3、2⋅2⋅6=24=detA。
答え 固有値 2 の固有ベクトルは s1−10+t10−1((s,t)=(0,0))、固有値 6 の固有ベクトルは u121(u=0)
大学院入試例題2(行列の多項式の固有値)
3次の正方行列
A の固有値が
1, 2, 3 のとき、
det(A2+E) と
trA−1 を求めなさい。
解き方
固有値が異なるので A は対角化でき、A=PDP−1(D は対角成分 1,2,3)と書ける。
A2+E=P(D2+E)P−1 なので、A2+E の固有値は 12+1, 22+1, 32+1、つまり 2, 5, 10。行列式は固有値の積で 100。
A−1=PD−1P−1 の固有値は 1, 21, 31。トレースは固有値の和で 611。
答え det(A2+E)=100、trA−1=611
大学院入試例題3(実数の固有値がない行列)
A=(01−10)(
90∘ 回転)の固有値と固有ベクトルを、複素数の範囲で求めなさい。
解き方
det(λE−A)=λ2+1=0 より λ=±i。90∘ 回すと向きが変わらないベクトルはないので、実数の固有値はない。
λ=i:(iE−A)x=0 の第1式 ix+y=0 より y=−ix。x=1 として (1, −i)。実際 A(1,−i)=(i, 1)=i(1, −i)。
λ=−i:同じように y=ix で (1, i)。
答え 固有値 ±i。i の固有ベクトルは (1−i)、−i の固有ベクトルは (1i) の 0 でない定数倍
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:大学1年の線形代数学の後半(行列式のあと)で学び、対角化・ジョルダン標準形・2次形式へ進みます。微分方程式・量子力学・統計(主成分分析)・グラフ理論など、ほかの授業でも何度も出てきます。
- 答案で示すこと:固有ベクトルには必ず「0 でない」「(s,t)=(0,0)」などの条件をつけます。固有多項式は展開してから因数分解するより、行や列の操作で因数をくくり出す方がミスが少なくなります。
- 検算:固有値の和=対角成分の和、積=行列式。求めた固有ベクトルに A をかけて λ 倍になるかを確かめます。
- よくある出題の形:3次の行列の固有値・固有ベクトル、固有空間の次元、Ak・A−1・A+cE の固有値、A2=A や Ak=O などの条件から固有値をしぼる問題。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
重解の固有値で固有ベクトルを1本だけ答えるのは早い。固有空間が2次元のこともあるぞ。
- 0 を固有ベクトルに入れる:A0=λ0 はどんな λ でも成り立つので、固有ベクトルは 0 でないものに限ります。
- 重解の固有値で固有ベクトルを1本だけ答える:例題1の λ=2 のように、固有空間が2次元のことがあります。(A−λE)x=0 の自由度を確かめます。
- 行基本変形をした行列の固有値を答える:行基本変形で行列式の0・非0は変わりませんが、固有値は変わります。固有値は det(λE−A) から求めます。
練習問題
![指さして説明するサクラちゃん]()
サクラちゃん
和はトレース、積は行列式で検算しよう!
- 大学院入試 A=(1141) の固有値と固有ベクトルを求めなさい。
答えと解説を見る
λ2−2λ−3=(λ−3)(λ+1)=0。λ=3:−2x+4y=0 より x=2y。λ=−1:2x+4y=0 より x=−2y。答え 固有値 3 に (21)、固有値 −1 に (2−1)(それぞれ 0 でない定数倍) - 大学院入試 A2=A をみたす正方行列 A の固有値は、0 か 1 しかないことを示しなさい。
答えと解説を見る
Ax=λx(x=0)とすると A2x=λAx=λ2x。A2=A より λ2x=λx、(λ2−λ)x=0。x=0 なので λ(λ−1)=0。答え λ=0 または 1 - 大学院入試 2次の正方行列 A の固有値が 2 と −3 のとき、trA、detA、A+E の固有値を求めなさい。
答えと解説を見る
和 2+(−3)=−1、積 −6。(A+E)x=(λ+1)x なので固有値は 1 ずつ増える。答え trA=−1、detA=−6、A+E の固有値は 3, −2
関連する公式
よくある質問
固有値と固有ベクトルとは?
行列Aをかけても向きが変わらず λ 倍になるだけの0でないベクトル x を固有ベクトル、その倍率 λ を固有値といいます。式で書くと Ax=λx です。
固有値はどうやって求めますか?
固有方程式 det(λE−A)=0 を解きます。(λE−A)x=0 が0でない解をもつのは、λE−A が逆行列をもたないとき、つまり行列式が0のときだからです。
固有値の和と積には何か関係がありますか?
重複も数えた固有値の和は対角成分の和(トレース)、積は行列式に等しくなります。計算の検算に使えます。
実数の固有値がない行列はありますか?
あります。たとえば90°回転の行列は固有方程式が λ²+1=0 で、固有値は ±i(複素数)です。
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出典・参考
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦