逆行列の公式|掃き出し法・余因子行列での求め方と存在条件det A≠0の証明・3次の例題【大学院入試・線形代数】

逆行列の公式|掃き出し法・余因子行列での求め方と存在条件det A≠0の証明・3次の例題【大学院入試・線形代数】

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大学院入試

A−1=1det⁡A A~(A∣E)⟶(E∣A−1)A^{-1}=\frac{1}{\det A}\,\tilde{A}\qquad(A\mid E)\longrightarrow(E\mid A^{-1})

A~\tilde A は余因子行列((i,j)(i,j) 成分は (−1)i+jΔji(-1)^{i+j}\Delta_{ji})。A−1A^{-1} があるのは det⁡A≠0\det A\neq0 のときだけ

この公式のポイント

  • 逆行列があるのはdet⁡A≠0\det A\neq0 のときだけ
  • 余因子行列は余因子を並べて転置する
  • 掃き出し法は行基本変形だけで (A∣E)→(E∣A−1)(A\mid E)\to(E\mid A^{-1})
  • (AB)−1=B−1A−1(AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1}(順番が入れかわる)
うかるくん

うかるくん

余因子行列って、余因子をそのまま並べるだけじゃだめなの?

合格先生

合格先生

並べたあとに転置が必要だ。(i,j)(i,j) 成分は Δji\Delta_{ji} から作る。そう並べると AA~A\tilde A が余因子展開の形になるんだ。

逆行列の公式(余因子行列・掃き出し法)

正方行列 AA に対して AX=XA=EAX=XA=E となる XX を逆行列 A−1A^{-1} といいます。求め方は、公式(余因子行列)と計算法(掃き出し法)の2つです。

逆行列の存在条件と2つの求め方

存在条件:A−1A^{-1} がある   ⟺  \iff det⁡A≠0\det A\neq0

余因子行列による公式(Δij\Delta_{ij} は第 ii 行・第 jj 列を除いた行列式)

A−1=1det⁡A A~,A~ の (i,j) 成分=(−1)i+jΔjiA^{-1}=\frac{1}{\det A}\,\tilde{A},\qquad\tilde{A}\text{ の }(i,j)\text{ 成分}=(-1)^{i+j}\Delta_{ji}

添え字が jiji と逆なのに注意。余因子を並べた行列を転置したものが A~\tilde A です。2次なら

(abcd)−1=1ad−bc(d−b−ca)\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}^{-1}=\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix}

掃き出し法:(A∣E)(A\mid E) に行基本変形だけをくり返して左側を EE にすると、右側が A−1A^{-1} になる。

(A∣E) ⟶ (E∣A−1)(A\mid E)\ \longrightarrow\ (E\mid A^{-1})

積と転置の逆行列は (AB)−1=B−1A−1(AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1}(順番が入れかわる)、(A⊤)−1=(A−1)⊤(A^{\top})^{-1}=(A^{-1})^{\top} です。

AE111000203110102021行基本変形だけをくり返す140−2010−3120−1010−111EA⁻¹(A | E)(E | A⁻¹)
掃き出し法:左の AA を EE にすると、右の EE が A−1A^{-1} に変わる(例題1の数)

なぜ成り立つのか(証明)

① 余因子行列の公式

AA~A\tilde A の (i,k)(i,k) 成分を計算します。

(AA~)ik=∑j=1naij(−1)k+jΔkj(A\tilde A)_{ik}=\sum_{j=1}^{n}a_{ij}(-1)^{k+j}\Delta_{kj}

これは「AA の第 kk 行を、第 ii 行の成分 ai1,⋯ ,aina_{i1},\cdots,a_{in} に取りかえた行列」を第 kk 行で余因子展開した式です(Δkj\Delta_{kj} は第 kk 行を使わないので、取りかえても変わらない)。

  • i=ki=k なら、取りかえても元の AA なので値は det⁡A\det A。
  • i≠ki\neq k なら、第 ii 行と第 kk 行が等しい行列になるので値は 00。

よって AA~=(det⁡A)EA\tilde A=(\det A)E。列の展開を使えば同じように A~A=(det⁡A)E\tilde AA=(\det A)E。det⁡A≠0\det A\neq0 なら両辺を det⁡A\det A でわって A⋅A~det⁡A=A~det⁡A⋅A=EA\cdot\dfrac{\tilde A}{\det A}=\dfrac{\tilde A}{\det A}\cdot A=E です。

② 存在条件

逆に A−1A^{-1} があれば、AA−1=EAA^{-1}=E の行列式をとって det⁡A⋅det⁡A−1=det⁡E=1\det A\cdot\det A^{-1}=\det E=1(積の行列式)なので det⁡A≠0\det A\neq0。①とあわせて「A−1A^{-1} がある   ⟺  det⁡A≠0\iff\det A\neq0」です。このとき det⁡A−1=1det⁡A\det A^{-1}=\dfrac{1}{\det A}。

③ 掃き出し法

行基本変形(2行の入れかえ・1行を0でない数倍・1行に別の行の定数倍を足す)は、どれも左から基本行列をかけることと同じです。変形をまとめて PP(基本行列の積)とすると、(A∣E)(A\mid E) は (PA∣PE)=(PA∣P)(PA\mid PE)=(PA\mid P) に変わります。左側が EE になったなら PA=EPA=E。基本行列はどれも逆行列をもつので PP も逆行列をもち、A=P−1A=P^{-1}、AP=P−1P=EAP=P^{-1}P=E。よって P=A−1P=A^{-1} で、右側にそれが現れます。

左側をどうしても EE にできない(ある行が全部0になる)ときは、det⁡A=0\det A=0 で逆行列はありません。

符号 (−1)^(i+j)+−+−+−+−+余因子を並べる2−4212−1−121転置行と列を入れかえ余因子行列 Ã21−1−4222−11A⁻¹=Ã ÷ det A = Ã ÷ 4
余因子行列:余因子を並べて転置し、det⁡A\det A でわる(例題2の数)

大学院入試では

3次の逆行列を掃き出し法で正確に求める問題と、文字を含む行列の正則(逆行列をもつ)条件、逆行列の1つの成分だけを求める問題がよく出る形です。

大学院入試

例題1(掃き出し法)

A=(110231122)A=\begin{pmatrix}1&1&0\\2&3&1\\1&2&2\end{pmatrix} の逆行列を、掃き出し法で求めなさい。

解き方

(A∣E)(A\mid E) から始める。(110100231010122001)\left(\begin{array}{ccc|ccc}1&1&0&1&0&0\\2&3&1&0&1&0\\1&2&2&0&0&1\end{array}\right)

第1行の −2-2 倍を第2行に、−1-1 倍を第3行に足す。(110100011−210012−101)\left(\begin{array}{ccc|ccc}1&1&0&1&0&0\\0&1&1&-2&1&0\\0&1&2&-1&0&1\end{array}\right)

第2行の −1-1 倍を第1行と第3行に足す。(10−13−10011−2100011−11)\left(\begin{array}{ccc|ccc}1&0&-1&3&-1&0\\0&1&1&-2&1&0\\0&0&1&1&-1&1\end{array}\right)

第3行を第1行に足し、第3行の −1-1 倍を第2行に足す。(1004−21010−32−10011−11)\left(\begin{array}{ccc|ccc}1&0&0&4&-2&1\\0&1&0&-3&2&-1\\0&0&1&1&-1&1\end{array}\right)

検算:AA と答えをかけると EE になる。

答え A−1=(4−21−32−11−11)A^{-1}=\begin{pmatrix}4&-2&1\\-3&2&-1\\1&-1&1\end{pmatrix}

大学院入試

例題2(余因子行列)

A=(101210012)A=\begin{pmatrix}1&0&1\\2&1&0\\0&1&2\end{pmatrix} の逆行列を、余因子行列を使って求めなさい。

解き方

第1行で展開して det⁡A=1⋅(2−0)−0+1⋅(2−0)=4\det A=1\cdot(2-0)-0+1\cdot(2-0)=4。

(i,j)(i,j) 余因子 (−1)i+jΔij(-1)^{i+j}\Delta_{ij} を、その位置に並べると (2−4212−1−121)\begin{pmatrix}2&-4&2\\1&2&-1\\-1&2&1\end{pmatrix}。たとえば (1,2)(1,2) 余因子は、第1行・第2列を除いた行列式に符号 (−1)1+2(-1)^{1+2} をつけて −(2⋅2−0⋅0)=−4-(2\cdot2-0\cdot0)=-4。

これを転置して det⁡A=4\det A=4 でわる。

答え A−1=14(21−1−4222−11)A^{-1}=\frac14\begin{pmatrix}2&1&-1\\-4&2&2\\2&-1&1\end{pmatrix}

大学院入試

例題3(正則条件と1つの成分)

A=(1111a111a)A=\begin{pmatrix}1&1&1\\1&a&1\\1&1&a\end{pmatrix} が逆行列をもつための aa の条件を求め、そのとき A−1A^{-1} の (1,1)(1,1) 成分を求めなさい。

解き方

det⁡A=1⋅(a2−1)−1⋅(a−1)+1⋅(1−a)=(a−1)(a+1)−2(a−1)=(a−1)2\det A=1\cdot(a^2-1)-1\cdot(a-1)+1\cdot(1-a)=(a-1)(a+1)-2(a-1)=(a-1)^2。

よって逆行列をもつ   ⟺  a≠1\iff a\neq1。

A−1A^{-1} の (1,1)(1,1) 成分は (−1)1+1Δ11det⁡A=a2−1(a−1)2=a+1a−1\dfrac{(-1)^{1+1}\Delta_{11}}{\det A}=\dfrac{a^2-1}{(a-1)^2}=\dfrac{a+1}{a-1}((1,1)(1,1) は転置しても同じ位置)。

答え a≠1a\neq1、(1,1)(1,1) 成分は a+1a−1\dfrac{a+1}{a-1}

学部の授業とのつながり・院試での注意

  • どの授業で習うか:大学1年の線形代数学で、行基本変形(掃き出し法)は連立1次方程式・階数と一緒に、余因子行列は行列式のあとに学ぶことが多い内容です。
  • 答案で示すこと:掃き出し法では、各段階でどの行基本変形をしたかを書き、最後に AA−1=EAA^{-1}=E を確かめると計算ミスに気づけます。余因子行列では転置をしたことがわかるように書きます。
  • 使い分け:3次以上の具体的な数の行列は掃き出し法が速く、文字を含む行列や「1つの成分だけ」は余因子行列が便利です。
  • よくある出題の形:3次の逆行列の計算、正則条件(det⁡A≠0\det A\neq0)を求める問題、Ak=OA^k=O(べき零)のとき E−AE-A の逆行列を求める問題、(AB)−1=B−1A−1(AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1} などの性質の証明。

よくある間違い

腕でバツを作る合格先生

合格先生

(AB)−1=A−1B−1(AB)^{-1}=A^{-1}B^{-1} は誤りだ。順番が入れかわって B−1A−1B^{-1}A^{-1} になるぞ。

  • 転置を忘れる:A~\tilde A の (i,j)(i,j) 成分は Δji\Delta_{ji} から作ります。余因子を並べただけの行列でわると、対称でない行列では答えがずれます。
  • (AB)−1=A−1B−1(AB)^{-1}=A^{-1}B^{-1} としてしまう:正しくは (AB)−1=B−1A−1(AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1}。(AB)(B−1A−1)=E(AB)(B^{-1}A^{-1})=E で確かめられます。
  • 掃き出し法で列の変形を混ぜる:(A∣E)(A\mid E) の形で使えるのは行基本変形だけ。列の入れかえなどを混ぜると右側は A−1A^{-1} になりません。

練習問題

ひらめいたうかるくん

うかるくん

最後に AA−1=EAA^{-1}=E を確かめれば安心だね。

  1. 大学院入試 (2153)\begin{pmatrix}2&1\\5&3\end{pmatrix} の逆行列を求めなさい。
    答えと解説を見るad−bc=6−5=1ad-bc=6-5=1。aa と dd を入れかえ、b, cb,\ c の符号を変えて 11 でわる。答え (3−1−52)\begin{pmatrix}3&-1\\-5&2\end{pmatrix}
  2. 大学院入試 (123014001)\begin{pmatrix}1&2&3\\0&1&4\\0&0&1\end{pmatrix} の逆行列を求めなさい。
    答えと解説を見る上三角行列なので掃き出しは下から。第3行の −4-4 倍を第2行に、−3-3 倍を第1行に足し、次に第2行の −2-2 倍を第1行に足す。右側は (1,3)(1,3) 成分が −3+8=5-3+8=5 となって、答え (1−2501−4001)\begin{pmatrix}1&-2&5\\0&1&-4\\0&0&1\end{pmatrix}
  3. 大学院入試 正方行列 AA が A3=OA^3=O をみたすとき、E−AE-A は逆行列をもつことを示し、それを AA で表しなさい。
    答えと解説を見る(E−A)(E+A+A2)=E−A3=E(E-A)(E+A+A^2)=E-A^3=E、(E+A+A2)(E−A)=E−A3=E(E+A+A^2)(E-A)=E-A^3=E。よって E−AE-A は逆行列をもち、答え (E−A)−1=E+A+A2(E-A)^{-1}=E+A+A^2

関連する公式

よくある質問

逆行列があるための条件は?

正方行列 A の行列式が0でないことです(detA≠0)。このとき det(A⁻¹)=1/detA になります。

掃き出し法で逆行列が求まるのはなぜですか?

行基本変形は左から基本行列をかけることと同じです。変形をまとめた行列を P とすると (A|E) は (PA|P) になり、PA=E なら P=A⁻¹ だからです。

余因子行列で転置するのはなぜですか?

A と Ã の積の (i, k) 成分が、第 k 行での余因子展開の式になるように並べる必要があるからです。そのため Ã の (i, j) 成分は Δji(添え字が逆)から作ります。

掃き出し法と余因子行列はどちらを使えばよいですか?

数の入った3次以上の行列は掃き出し法が速く、文字を含む行列や1つの成分だけを求めるときは余因子行列が便利です。

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出典・参考

  • 大学初年級の線形代数学(範囲外の発展内容)

最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦