この公式のポイント
- 逆行列があるのはdetA=0 のときだけ
- 余因子行列は余因子を並べて転置する
- 掃き出し法は行基本変形だけで (A∣E)→(E∣A−1)
- (AB)−1=B−1A−1(順番が入れかわる)

うかるくん
余因子行列って、余因子をそのまま並べるだけじゃだめなの?
![合格先生]()
合格先生
並べたあとに転置が必要だ。(i,j) 成分は Δji から作る。そう並べると AA~ が余因子展開の形になるんだ。
逆行列の公式(余因子行列・掃き出し法)
正方行列 A に対して AX=XA=E となる X を逆行列 A−1 といいます。求め方は、公式(余因子行列)と計算法(掃き出し法)の2つです。
逆行列の存在条件と2つの求め方
存在条件:A−1 がある ⟺ detA=0
余因子行列による公式(Δij は第 i 行・第 j 列を除いた行列式)
A−1=detA1A~,A~ の (i,j) 成分=(−1)i+jΔji添え字が ji と逆なのに注意。余因子を並べた行列を転置したものが A~ です。2次なら
(acbd)−1=ad−bc1(d−c−ba)掃き出し法:(A∣E) に行基本変形だけをくり返して左側を E にすると、右側が A−1 になる。
(A∣E) ⟶ (E∣A−1)
積と転置の逆行列は (AB)−1=B−1A−1(順番が入れかわる)、(A⊤)−1=(A−1)⊤ です。
掃き出し法:左の A を E にすると、右の E が A−1 に変わる(例題1の数)
なぜ成り立つのか(証明)
① 余因子行列の公式
AA~ の (i,k) 成分を計算します。
(AA~)ik=j=1∑naij(−1)k+jΔkj
これは「A の第 k 行を、第 i 行の成分 ai1,⋯,ain に取りかえた行列」を第 k 行で余因子展開した式です(Δkj は第 k 行を使わないので、取りかえても変わらない)。
- i=k なら、取りかえても元の A なので値は detA。
- i=k なら、第 i 行と第 k 行が等しい行列になるので値は 0。
よって AA~=(detA)E。列の展開を使えば同じように A~A=(detA)E。detA=0 なら両辺を detA でわって A⋅detAA~=detAA~⋅A=E です。
② 存在条件
逆に A−1 があれば、AA−1=E の行列式をとって detA⋅detA−1=detE=1(積の行列式)なので detA=0。①とあわせて「A−1 がある ⟺detA=0」です。このとき detA−1=detA1。
③ 掃き出し法
行基本変形(2行の入れかえ・1行を0でない数倍・1行に別の行の定数倍を足す)は、どれも左から基本行列をかけることと同じです。変形をまとめて P(基本行列の積)とすると、(A∣E) は (PA∣PE)=(PA∣P) に変わります。左側が E になったなら PA=E。基本行列はどれも逆行列をもつので P も逆行列をもち、A=P−1、AP=P−1P=E。よって P=A−1 で、右側にそれが現れます。
左側をどうしても E にできない(ある行が全部0になる)ときは、detA=0 で逆行列はありません。
余因子行列:余因子を並べて転置し、detA でわる(例題2の数)
大学院入試では
3次の逆行列を掃き出し法で正確に求める問題と、文字を含む行列の正則(逆行列をもつ)条件、逆行列の1つの成分だけを求める問題がよく出る形です。
大学院入試例題1(掃き出し法)
A=121132012 の逆行列を、掃き出し法で求めなさい。
解き方
(A∣E) から始める。121132012100010001
第1行の −2 倍を第2行に、−1 倍を第3行に足す。1001110121−2−1010001
第2行の −1 倍を第1行と第3行に足す。100010−1113−21−11−1001
第3行を第1行に足し、第3行の −1 倍を第2行に足す。1000100014−31−22−11−11
検算:A と答えをかけると E になる。
答え A−1=4−31−22−11−11
大学院入試例題2(余因子行列)
A=120011102 の逆行列を、余因子行列を使って求めなさい。
解き方
第1行で展開して detA=1⋅(2−0)−0+1⋅(2−0)=4。
(i,j) 余因子 (−1)i+jΔij を、その位置に並べると 21−1−4222−11。たとえば (1,2) 余因子は、第1行・第2列を除いた行列式に符号 (−1)1+2 をつけて −(2⋅2−0⋅0)=−4。
これを転置して detA=4 でわる。
答え A−1=412−4212−1−121
大学院入試例題3(正則条件と1つの成分)
A=1111a111a が逆行列をもつための
a の条件を求め、そのとき
A−1 の
(1,1) 成分を求めなさい。
解き方
detA=1⋅(a2−1)−1⋅(a−1)+1⋅(1−a)=(a−1)(a+1)−2(a−1)=(a−1)2。
よって逆行列をもつ ⟺a=1。
A−1 の (1,1) 成分は detA(−1)1+1Δ11=(a−1)2a2−1=a−1a+1((1,1) は転置しても同じ位置)。
答え a=1、(1,1) 成分は a−1a+1
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:大学1年の線形代数学で、行基本変形(掃き出し法)は連立1次方程式・階数と一緒に、余因子行列は行列式のあとに学ぶことが多い内容です。
- 答案で示すこと:掃き出し法では、各段階でどの行基本変形をしたかを書き、最後に AA−1=E を確かめると計算ミスに気づけます。余因子行列では転置をしたことがわかるように書きます。
- 使い分け:3次以上の具体的な数の行列は掃き出し法が速く、文字を含む行列や「1つの成分だけ」は余因子行列が便利です。
- よくある出題の形:3次の逆行列の計算、正則条件(detA=0)を求める問題、Ak=O(べき零)のとき E−A の逆行列を求める問題、(AB)−1=B−1A−1 などの性質の証明。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
(AB)−1=A−1B−1 は誤りだ。順番が入れかわって B−1A−1 になるぞ。
- 転置を忘れる:A~ の (i,j) 成分は Δji から作ります。余因子を並べただけの行列でわると、対称でない行列では答えがずれます。
- (AB)−1=A−1B−1 としてしまう:正しくは (AB)−1=B−1A−1。(AB)(B−1A−1)=E で確かめられます。
- 掃き出し法で列の変形を混ぜる:(A∣E) の形で使えるのは行基本変形だけ。列の入れかえなどを混ぜると右側は A−1 になりません。
練習問題
![ひらめいたうかるくん]()
うかるくん
最後に AA−1=E を確かめれば安心だね。
- 大学院入試 (2513) の逆行列を求めなさい。
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ad−bc=6−5=1。a と d を入れかえ、b, c の符号を変えて 1 でわる。答え (3−5−12) - 大学院入試 100210341 の逆行列を求めなさい。
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上三角行列なので掃き出しは下から。第3行の −4 倍を第2行に、−3 倍を第1行に足し、次に第2行の −2 倍を第1行に足す。右側は (1,3) 成分が −3+8=5 となって、答え 100−2105−41 - 大学院入試 正方行列 A が A3=O をみたすとき、E−A は逆行列をもつことを示し、それを A で表しなさい。
答えと解説を見る
(E−A)(E+A+A2)=E−A3=E、(E+A+A2)(E−A)=E−A3=E。よって E−A は逆行列をもち、答え (E−A)−1=E+A+A2
関連する公式
よくある質問
逆行列があるための条件は?
正方行列 A の行列式が0でないことです(detA≠0)。このとき det(A⁻¹)=1/detA になります。
掃き出し法で逆行列が求まるのはなぜですか?
行基本変形は左から基本行列をかけることと同じです。変形をまとめた行列を P とすると (A|E) は (PA|P) になり、PA=E なら P=A⁻¹ だからです。
余因子行列で転置するのはなぜですか?
A と Ã の積の (i, k) 成分が、第 k 行での余因子展開の式になるように並べる必要があるからです。そのため Ã の (i, j) 成分は Δji(添え字が逆)から作ります。
掃き出し法と余因子行列はどちらを使えばよいですか?
数の入った3次以上の行列は掃き出し法が速く、文字を含む行列や1つの成分だけを求めるときは余因子行列が便利です。
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出典・参考
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦