この公式のポイント
- ヤコビアン J=xuyv−xvyu は面積の倍率
- 極座標では dxdy=rdrdθ
- 1次変換なら面積はちょうど ∣det∣ 倍
- 答案では絶対値と新しい範囲を必ず書く

うかるくん
極座標にすると、どうして dxdy が rdrdθ になって r がつくの?
![合格先生]()
合格先生
小さな区画は、たて Δr、よこ rΔθ のほぼ長方形だ。外側ほど横に広いから r がかかる。ヤコビアンを計算しても r だぞ。
変数変換の公式とヤコビアン
重積分 ∬Df(x,y)dxdy を、別の変数 u, v で計算しなおす公式です。置換積分の dx=g′(t)dt にあたる「面積の倍率」がヤコビアンです。
2変数の変数変換
x=x(u,v), y=y(u,v) で、uv 平面の領域 E が xy 平面の領域 D に1対1にうつるとき
∬Df(x,y)dxdy=∬Ef(x(u,v),y(u,v))∣J∣dudvJ=∂(u,v)∂(x,y)=det(xuyuxvyv)=xuyv−xvyu極座標 x=rcosθ, y=rsinθ では J=r、つまり
dxdy=rdrdθ
極座標の小さな区画は、たて Δr、よこ rΔθ のほぼ長方形。だから r がかかる
J は1次の近似(偏微分の行列)の行列式です。絶対値をとるのは、面積は負にならないからです。
証明
① 1次変換なら、面積はちょうど ∣det∣ 倍
x=au+bv, y=cu+dv とします。uv 平面の辺が Δu, Δv の長方形は、ベクトル (aΔu, cΔu) と (bΔv, dΔv) が作る平行四辺形にうつります。その面積は
∣aΔu⋅dΔv−bΔv⋅cΔu∣=∣ad−bc∣ΔuΔv
なので、面積はどこでも ∣ad−bc∣ 倍になります。
1次変換では、正方形が平行四辺形にうつり、面積は ∣J∣ 倍
② 一般の変換は、小さな区画ごとに1次変換で近似(略証)
点 (u,v) の近くでは、全微分により
(ΔxΔy)≒(xuyuxvyv)(ΔuΔv)
と1次変換で近似できます。よって uv 平面の小さな長方形 ΔuΔv は、面積がほぼ ∣J∣ΔuΔv の区画にうつります。D を細かく分けて f×(面積) を足し、細かくする極限をとると公式になります(誤差が極限で0になることの厳密な証明は、微積分の教科書にゆずります)。
③ 極座標のヤコビアン
J=det(cosθsinθ−rsinθrcosθ)=rcos2θ+rsin2θ=r
r≥0 なので ∣J∣=r。図1の「たて Δr、よこ rΔθ」と一致します。
大学院入試では
院試では「領域を見て、どの変換を使うか決める」→「ヤコビアンを計算」→「新しい変数の範囲を正しく書く」の3つが問われます。
大学院入試例題1(極座標)
D: x2+y2≤4 のとき、
∬De−(x2+y2)dxdy を求めなさい。
解き方
x=rcosθ, y=rsinθ とすると D は 0≤r≤2, 0≤θ≤2π、dxdy=rdrdθ。
∫02π∫02e−r2rdrdθ=2π[−21e−r2]02=π(1−e−4)。
r がかかるおかげで e−r2 が積分できる形になります。
答え π(1−e−4)
大学院入試例題2(1次変換)
D: 0≤x+y≤1, 0≤x−y≤1 のとき、
∬D(x+y)dxdy を求めなさい。
解き方
u=x+y, v=x−y とおくと E: 0≤u≤1, 0≤v≤1(正方形)。x=2u+v, y=2u−v より
J=xuyv−xvyu=21⋅(−21)−21⋅21=−21、∣J∣=21(図2)。
∬Eu⋅21dudv=21∫01udu∫01dv=41。
答え 41
大学院入試例題3(だ円の面積)
a>0, b>0 とする。だ円
a2x2+b2y2≤1 の面積を、変数変換で求めなさい。
解き方
x=arcosθ, y=brsinθ とおくと、領域は 0≤r≤1, 0≤θ≤2π。
J=xryθ−xθyr=acosθ⋅brcosθ−(−arsinθ)⋅bsinθ=abr(≥0)。
面積 =∫02π∫01abrdrdθ=ab⋅21⋅2π=πab。
答え πab
学部の授業とのつながり・院試での注意
- どの授業で習うか:大学1年の微分積分学(多変数の積分・重積分)で習います。ヤコビアンの行列式は線形代数の行列式そのものです。
- 答案で示すこと:①変換の式、②ヤコビアンの計算と絶対値、③新しい変数の範囲(図をかくと安全)。この3つを省かずに書きます。
- よく出る形:円・扇形・円環なら極座標、x+y や x−y がそろって出てくるなら1次変換、だ円なら x=arcosθ, y=brsinθ。ガウス積分の計算や、3次元の極座標(J=r2sinθ、球の体積)もよく問われます。
- 逆向きのヤコビアン:u, v を x, y で表した式しかないときは、∂(u,v)∂(x,y)=1/∂(x,y)∂(u,v) を使えます。
よくある間違い
![腕でバツを作る合格先生]()
合格先生
ヤコビアンは負になることがある。面積の倍率は絶対値 ∣J∣ だ。例題2の −21 もそのままかけてはだめだぞ。
- r を忘れる:dxdy=drdθ と書くのは誤り。必ず dxdy=rdrdθ。
- 絶対値をとらない:例題2のように J が負になることがあります。面積の倍率は ∣J∣ です。
- 範囲を変えない:変数を変えたら、積分の範囲も新しい変数で書きなおします。D がどんな E にうつるかを図で確かめましょう。
練習問題
![指さして説明するサクラちゃん]()
サクラちゃん
新しい変数の範囲は、図をかいて確かめよう!
- 大学院入試 D: x2+y2≤1, x≥0, y≥0 のとき、∬Dxydxdy を求めなさい。
答えと解説を見る
極座標で 0≤r≤1, 0≤θ≤2π。∫02πcosθsinθdθ∫01r3dr=21⋅41=81。答え 81 - 大学院入試 D: 1≤x2+y2≤4 のとき、∬Dx2+y2dxdy を求めなさい。
答えと解説を見る
極座標で ∫02π∫12r21rdrdθ=2π[logr]12=2πlog2。答え 2πlog2 - 大学院入試 3次元の極座標 x=rsinθcosφ, y=rsinθsinφ, z=rcosθ のヤコビアンは r2sinθ である。これを使って、半径 a の球の体積を求めなさい。
答えと解説を見る
0≤r≤a, 0≤θ≤π, 0≤φ≤2π。∫02πdφ∫0πsinθdθ∫0ar2dr=2π⋅2⋅3a3=34πa3。答え 34πa3
関連する公式
よくある質問
ヤコビアンとは?
変数変換 x=x(u,v), y=y(u,v) の偏微分を並べた行列の行列式 J=x_u y_v−x_v y_u のことです。uv平面の小さな面積が、xy平面で何倍になるかを表します。
極座標で dxdy=r dr dθ になるのはなぜ?
半径r、角θの近くの小さな区画は、たてΔr、よこrΔθのほぼ長方形なので、面積がrΔrΔθになるからです。ヤコビアンを計算しても r になります。
ヤコビアンに絶対値をつけるのはなぜ?
ヤコビアンは変換の向きによって負になることがありますが、面積の倍率は負にならないので、絶対値|J|をかけます。
大学院入試ではどんな問題が出ますか?
円や円環の領域での極座標の重積分、1次変換で領域を正方形にする問題、ガウス積分の計算、3次元の極座標で体積を求める問題などがよく出ます。
あわせて読みたい
出典・参考
- 大学初年級の微分積分学(多変数の積分)
- 大学初年級の線形代数学(行列式)
最終更新:2026年10月11日/作成:大学受験合格大作戦