サーストンは何をした人?業績をわかりやすく|幾何化予想・8つの幾何・フィールズ賞・3次元多様体

サーストンは何をした人?業績をわかりやすく|幾何化予想・8つの幾何・フィールズ賞・3次元多様体

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サーストンWilliam Thurston

ひとことで言うと

3次元の形(多様体)を8種類の幾何で整理する幾何化予想を1982年に提案し、同じ年にフィールズ賞を受けたアメリカの数学者。予想は2002〜03年にペレルマンが証明した。

名前ウィリアム・サーストン(William Paul Thurston)
生没年1946年10月30日〜2012年8月21日(65歳)
国アメリカ(ワシントンD.C.生まれ)
分野位相幾何学・3次元多様体・葉層構造
主な業績葉層構造の理論、双曲化定理、幾何化予想(1982年)、3次元多様体の双曲幾何
名前がつくものサーストンの幾何化予想、8つの幾何、サーストン・ノルム
主な受賞ヴェブレン賞(1976年)、フィールズ賞(1982年)、AMS書籍賞(2005年)、スティール賞(2012年)
よばれ方3次元多様体の幾何学を変えた人

このページのポイント

  • 3次元の形を8つの幾何で分類する幾何化予想を1982年に提案。この年にフィールズ賞
  • 幾何化予想はポアンカレ予想をふくみ、2002〜03年にペレルマンが証明した
  • 数学の進歩は「理解」が深まることだと考え、図や模型で考える姿勢で、3次元多様体論と結び目理論の見方を一新した

ウィリアム・サーストンは何をした人?(業績をひとことで)

ウィリアム・サーストン(William Paul Thurston、1946〜2012)は、アメリカの数学者です。3次元の空間の形(3次元多様体)を調べる分野で革命を起こし、1982年に数学界の最高の賞であるフィールズ賞を受けました。

サーストンの最大の仕事は、「3次元の空間は、8種類の幾何のどれかを持つ部品に切り分けられる」という幾何化予想(1982年)です。この予想は、ポアンカレ予想をふくむ、より大きな予想でした。2002〜2003年にペレルマンが証明して、ポアンカレ予想も同時に解決されました。

サーストンは、図や模型や頭の中のイメージを使って考えることで知られ、数学の進歩とは、人々の「理解」が深まることだという考え方を大切にしました。この記事では、ロバチェフスキーの非ユークリッド幾何から、ポアンカレ、ペレルマンへの流れの中に、サーストンを置いて説明します。

うかるくん

うかるくん

3次元の形って、私たちが住んでいる空間のことですよね。それを調べるのに、どうして「8種類」とか難しい話になるんですか?

合格先生

合格先生

いい質問だね。実は「宇宙全体は、どんな形をしているのか」という大きな問いにもつながる話なんだ。サーストンは、図形を「ゆがみ方」で整理すると、3次元の形がすっきり分類できると考えたんだよ。

ウィリアム・サーストンの生涯と年表

ここでは、MacTutor(セント・アンドルーズ大学の数学史の資料)やアメリカ数学会などの公式な紹介で確かめられる事実を書きます。

ワシントンに生まれ、フロリダの小さな大学へ

サーストンは1946年10月30日、アメリカの首都ワシントンD.C.で生まれました。大学は、フロリダ州サラソタにあるニュー・カレッジで、1967年に学士の学位を受けています。

バークレーで博士の学位

大学院は、カリフォルニア大学バークレー校です。モリス・ハーシュ(そしてスティーブン・スメール)のもとで研究し、1972年に博士の学位を受けました。題は「円束である3次元多様体上の葉層構造」で、円周を束ねた形の3次元多様体に、葉層構造がどのように作れるかを調べた仕事です。

教授として

1972〜73年にプリンストン高等研究所に滞在し、1973年にMIT(マサチューセッツ工科大学)の助教授、1974年にプリンストン大学の教授になりました。1991年にバークレーに戻り、1990年代には数学科学研究所(MSRI)の所長も務めました。2003年にはコーネル大学の教授になっています。

フィールズ賞と、その後

1982年、サーストンはフィールズ賞を受けました(授賞式は、ワルシャワで開かれた1983年の国際数学者会議)。1976年にはアメリカ数学会のヴェブレン賞(幾何学)、1979年にはウォーターマン賞を受けています。1978年のプリンストン大学の講義ノートは、世界中の数学者に読まれ、3次元多様体の研究の道しるべになりました。このノートをもとにした本『Three-Dimensional Geometry and Topology』(1997年)は、2005年にアメリカ数学会の賞を受けています。サーストンは2012年8月21日に、アメリカ・ニューヨーク州ロチェスターで亡くなりました。65歳でした。

サーストンの歩み194610月30日、ワシントンD.C.で生まれる1967ニュー・カレッジを卒業1972バークレーで博士の学位1982フィールズ賞(葉層構造・3次元)1997『3次元の幾何と位相』を出版2003コーネル大学の教授に20128月21日、ニューヨーク州で死去
サーストンの歩み。1946年生まれ、1982年にフィールズ賞、2012年に没
年できごと
1946年10月30日、アメリカのワシントンD.C.で生まれる
1967年ニュー・カレッジ(フロリダ州)を卒業
1972年カリフォルニア大学バークレー校で博士の学位
1974年プリンストン大学の教授になる
1976年アメリカ数学会のヴェブレン賞(幾何学)
1978年プリンストン大学の3次元多様体の講義ノートが広まる
1979年ウォーターマン賞
1982年フィールズ賞。幾何化予想を提案(授賞式は1983年)
1991年バークレーに戻る(1990年代にMSRIの所長)
1997年『Three-Dimensional Geometry and Topology』を出版
2003年コーネル大学の教授になる
2012年8月21日、ニューヨーク州ロチェスターで亡くなる

ウィリアム・サーストンの主な業績をやさしく解説

業績1 3つの幾何と、曲面の分類

まず、2次元の曲面の話から始めましょう。ボールの表面(球面)、ドーナツの表面(トーラス)、穴が2つの浮き輪のような曲面……。曲面は、穴の数で分けられます。穴が0なら球面、1ならトーラス、2以上ならもっと複雑な形です。

このとき、穴の数が決まると、その曲面にふさわしい幾何も決まります。球面は「球面の幾何」、トーラスは「平らな面の幾何」(ふつうのユークリッド幾何)、穴が2つ以上の曲面は「双曲幾何」です。三角形の内角の和が、180°より大きい(球面)、180°ちょうど(平面)、180°より小さい(双曲面)という違いで見分けられます。平行線と角・三角形の内角の和は、平らな面の話でした。

3つの幾何:三角形の内角の和 球面平らな面双曲面 180°より大きい180°ちょうど180°より小さい 空間の「ゆがみ方」で、図形のルールが変わる(正の曲率・曲率0・負の曲率)
球面・平らな面・双曲面での三角形の内角の和の比較
曲面:穴の数と幾何 穴0穴1穴2以上 球面幾何平らな幾何双曲幾何 2−2g=22−2g=02−2g<0 曲面はどれも3つの幾何のどれかを持つ(2次元)3次元では8つの幾何になる、というのが幾何化予想
穴の数が0、1、2以上の曲面と、対応する3つの幾何

ロバチェフスキーやボヤイの業績と生涯が見つけた非ユークリッド幾何、リーマンが整えた曲がった空間の幾何は、この「3つの幾何」の土台でした。平行線公準の問題の長い歴史を、サーストンは3次元に広げたとも言えます。

業績2 8つの幾何と「幾何化予想」(1982年)

ここで出てくる「多様体」とは、「ごく小さく見れば、ふつうの空間と同じに見える形」のことです。地球の表面は大きく見れば球ですが、足元の地面は平らに見えます。このように、近くを見ると平らで、全体では曲がったりつながったりしている形が、2次元の多様体(曲面)です。3次元の多様体は、その3次元版で、「ごく近くを見ると、私たちの住む空間と同じに見える、3次元の形」です。たとえば、「宇宙は有限で、まっすぐ進むと、いつかもとの場所に戻ってくる」というモデルも、3次元の閉じた多様体のひとつの例です。

では、3次元ではどうでしょうか。3次元の閉じた空間(多様体)は、いろいろな形があります。サーストンは1982年、次の大胆な予想を述べました。「3次元の閉じた多様体は、球とトーラスで適切に切り分けると、それぞれの部品が8種類の幾何のどれかを持つ」。これが幾何化予想です。

幾何化予想のイメージ 3次元の多様体(閉じていて有限) 球で切る 素な多様体(それ以上分けない) トーラスで切る 部品(いくつかの断片) 各部品は8つの幾何のどれかを持つ(サーストンの予想、1982年)
3次元の多様体を球・トーラスで切り分けると、各部品が8つの幾何を持つ
サーストンの8つの幾何 3次元球面 S³ポアンカレ予想の舞台ふつうの空間 E³平らな3次元双曲空間 H³ほとんどの多様体がここS²×R球面×直線H²×R双曲面×直線Nilねじれた空間Sol引き伸ばす空間SL(2,R)の被覆ねじれた双曲面 3次元は2次元の「3つ」より多く、全部で8つ
サーストンの8つの幾何の一覧

8つの幾何のうち、とくに重要なのは3つです。1つ目は3次元球面の幾何です。ポアンカレ予想は、「この幾何を持つ形は、3次元球面しかない」という主張に近い内容でした。2つ目はふつうの平らな空間、3つ目は双曲空間です。サーストンは、ほとんどの3次元多様体が双曲幾何を持つことを、豊富な例で示しました。

業績3 双曲化定理とハーケン多様体

サーストンは1980年代、ある条件を満たす3次元多様体(ハーケン多様体)が、必ず双曲幾何を持つことを証明しました(双曲化定理)。また、結び目の補空間の多くが双曲幾何を持つことも示しました。結び目は、ひもの絡み方の問題ですが、その外側の空間の形がきれいな幾何で決まるのは、驚きの発見でした。これらの結果は「双曲デーン手術」という方法とともに、結び目理論の見方を一新したとされます。

たとえば、8の字結び目(ひもを8の字に結んで、両端をつないだもの)の外側の空間は、双曲幾何を持つ代表的な例です。ロバート・ライリーも1970年代半ばに別の方法でこの結果に至っていますが、サーストンは1970年代に、この空間を2つの正四面体(理想の頂点を持つもの)に分けて、双曲幾何を持つことを示した、と紹介されます。この空間の「双曲体積」は約2.0299という決まった数になり、結び目ごとに違う値になります。結び目の見分けに、この「体積」という幾何の量が使えるのです。ひもの絡み方という身近な問題に、幾何が答えを出した例です。

業績4 葉層構造(1970年代)

博士論文と初期の仕事は、葉層構造という分野のものでした。葉層構造とは、空間を、薄い紙(葉)を何枚も重ねたような形に分けるしくみです。サーストンは1970年代に、この分野の未解決の問題をつぎつぎ解決しました。その中には、「オイラー標数が0の閉じた多様体なら、必ず余次元1の葉層構造を持つ」という、大きな結果もふくまれます(1976年)。オイラーの多面体定理の「頂点−辺+面」と同じ、オイラーの数が重要な役割を果たすのがおもしろいところです。

業績5 擬アノソフ写像・サーストンのノルム・オービフォールド

サーストンは、曲面をぐにゃぐにゃと変形する写像の分類(擬アノソフ写像)、3次元多様体の中の曲面の「大きさ」をはかるサーストン・ノルム(1986年)、そして、折り返しや回転でできる空間オービフォールド(orbifold、軌道体)という考え方も広めました(もとは佐武一郎のV多様体の考えで、オービフォールドという名前はサーストンがつけたとされます)。オービフォールドの考え方は、コンウェイの対称性の分類の本(『The Symmetries of Things』)でも使われています。

擬アノソフ写像をやさしく言うと、「ゴムの曲面を、ある方向には引き伸ばし、それと交わる方向にはちぢめる、という変形」です。パン生地をこねるとき、一方向に引き伸ばしては、折りたたむ動きに似ています。サーストンは、曲面のどんな変形も、おおまかに「何もしない」「ひとまとまりでくり返す」「このように引き伸ばす」の3つのどれかに分けられると示しました。この分類は、のちの曲面の研究の基礎になり、ミルザカニの業績と生涯の仕事にも受けつがれていきます。サーストンの理論が、1つの分野を超えて、多くの数学者に影響した例です。

オービフォールドは、紙を折りたたんでできる形にたとえられます。正方形の紙を対角線で折ると、折り目のところは「鏡」の役目をします。このような折り目や回転の中心をもつ空間が、オービフォールドです。壁紙の模様や結晶の対称性を数学の言葉で整理するときにも役立ちます。

ウィリアム・サーストンの名前がつく公式・定理・用語

  • 幾何化予想(サーストンの幾何化予想):3次元多様体を8つの幾何で分類する予想。ペレルマンが証明。
  • サーストンの8つの幾何:3次元球面、ふつうの空間、双曲空間など8つのモデル。
  • 双曲化定理:ハーケン多様体が双曲幾何を持つという定理。
  • サーストン・ノルム:3次元多様体の中の曲面の複雑さを測る道具(1986年)。
  • オービフォールド:折りたたまれた空間。名前はサーストンの講義で決まったとされます。
  • 擬アノソフ写像(サーストン分類):曲面の写像を3種類に分ける理論。
  • サーストンの葉層構造の定理・円周の写像のはなし:葉層構造の存在を示した結果。

三平方の定理は平らな面の幾何の基本で、球面や双曲面では形が変わります。公式の一覧は数学の公式辞典、用語は数学用語辞典を使ってください。曲がった空間の言葉は、展開図(立体を平面に開く)や球の性質から入ると近づきやすくなります。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

「図で考える」ことが、サーストンの数学のカギだよ。式を並べる前に、まず絵に描いてみる。入試の図形問題でも、ていねいな図が解き方の半分だと思ってね。

ウィリアム・サーストンの逸話と名言

ここでは、伝記や追悼文などで語られている話を紹介します。確かめられない話は、そう書き添えます。

プリンストンの講義ノートは「読まれすぎた」

サーストンが1978年から数年間行ったプリンストン大学の講義は、手書きのノートとしてコピーされ、世界中の数学者に回し読みされたと伝えられます。正式な本になるのは1997年(第1巻)で、20年近くも、このノートが3次元の幾何の「教科書」の役目を果たしていたことになります。

「理解すること」が数学

サーストンは、論文の中で、数学の進歩は「定理を証明する」ことだけでなく、人の「理解」が進むことだと強く述べました。1994年のアメリカ数学会の会報に載せた文章『On Proof and Progress in Mathematics』は、数学とは何かを考えるときによく引用されます。

数学が生みだすものは、明快さと理解である。定理そのものではない。

ウィリアム・サーストン(訳。数学の質問サイト MathOverflow への回答(2010年、原文:The product of mathematics is clarity and understanding. Not theorems, by themselves.)。同じ考えは1994年の論文『On Proof and Progress in Mathematics』にも見られます)

なお、「数学とは、数や式や計算のことではなく、理解することだ」という言い方でも広く知られていますが、こちらは出典が確かめられていないので、サーストン本人の言葉としては紹介しません。

球面の裏返し「Outside In」

サーストンは、球面を穴をあけず、折り目もつけずに、裏返す方法の考え方でも知られます(球面の反転)。その様子を映像にした「Outside In」は、1994年に制作されたCGの教育映像として有名です。図形を頭の中で動かし、人に見せる、という彼らしい仕事です。

弟子への接し方

多くの数学者が、サーストンを「学生にも同僚にも、自分のアイデアを惜しまずに渡した人」と回想しています。その気前のよさが、3次元多様体の研究を一気に広げた、とも言われます。

サクラちゃん

サクラちゃん

「理解すること」が数学……。入試だと、どうしても「正解すること」を考えてしまいます。

合格先生

合格先生

そうだね。でも、理解して解いた問題は、次に忘れにくいんだ。サーストンの言葉は、「なぜそうなるのか」を考えることが、結局は一番の近道だと教えてくれるよ。

受験・勉強とウィリアム・サーストンのつながり

中学受験・高校受験との関係

三角形の内角の和が180°になることは、平行線と角・三角形の内角の和で習います。実はこれは「平らな面」だけの性質で、球面(地球の表面)では成り立ちません。大きな三角形を地球上に描くと、内角の和は180°をこえます。立体の展開図は立方体の展開図(11種類・向かい合う面)、オイラーの多面体定理(頂点−辺+面)は、サーストンの3次元の話の入口にもなります。

身近な例もあります。東京からニューヨークへの飛行機の経路を、ふつうの世界地図の上で見ると、まっすぐではなく、北へふくらんだ曲線に見えます。これは、地球が球面で、球面の上の「最短の道」(大円)が、平らな地図ではまがって見えるからです。平らな面の「直線」と、球面の「直線」は、ちがう性質を持っています。サーストンの幾何は、この考え方を3次元の空間そのものに広げたものと言えます。

うかるくん

うかるくん

地球の上で三角形を描くと、内角の和が180°をこえるなんて、知りませんでした。じゃあ、ほんとうの宇宙の三角形は、どうなっているんでしょう?

合格先生

合格先生

それは、天文学者や物理学者が今も調べている大きな問題だよ。私たちの身の回りでは、ほぼ180°に見えるけれど、宇宙の大きなスケールでは分からない。空間がどんな幾何を持つかは、数学の問いであり、宇宙の問いでもあるんだ。

大学受験との関係

大学・大学院でつながる分野

位相幾何学(トポロジー)、微分幾何学、群論、力学系などです。「サーストンの3次元多様体」と聞くと難しそうですが、土台は、図形の性質を調べるという中学・高校の幾何の延長にあります。入試の図形問題の練習も数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)を参考にしてください。京都大学の図形・空間の問題は京大理系数学の出題分析も役立ちます。

勉強法として:図に描いて、手で動かす

サーストンは、紙を折ったり、模型を作ったり、手を動かして考えたと伝えられます。頭の中だけで考えず、体を使って形をつかむ、ということです。図形の問題でも、図を大きくていねいに描き、実際に動かして確かめる習慣が、力になります。

ウィリアム・サーストンがその後の数学にあたえた影響

  • ポアンカレ予想の解決(流れは下の図):ペレルマンは、ポアンカレの予想と、サーストンの幾何化予想を、リッチフローという方法で証明しました(2002〜03年)。サーストンの予想は、この証明の「ゴール」を決めた、と言えます。
  • 3次元多様体論の一新:双曲幾何を使った新しい見方で、3次元の形の研究は大きく進みました。
  • 結び目理論:結び目の外側の空間を、双曲幾何で調べる方法が標準になりました。
  • 幾何学的群論・力学系:曲面の写像の分類は、のちの研究の土台になっています。
  • 「理解を重んじる」数学観:数学の進歩とは何かという議論に、今も大きな影響を与えています。
ポアンカレ予想から幾何化予想へ1904ポアンカレが予想を述べる19615次元以上の場合をスメールが解く1982サーストンが幾何化予想を提案1982ハミルトンがリッチフローを導入2002〜03ペレルマンが論文を公開2006検証が進む(賞は辞退)
1904年のポアンカレ予想から、1982年の幾何化予想、2002〜03年のペレルマンの証明まで

ポアンカレ予想は、100年近く、数学者たちを悩ませました。1960年代には5次元以上の場合が、1980年代には4次元の場合が解決されたのに、いちばん身近なはずの3次元は最後まで残りました。サーストンの幾何化予想は、この3次元の問題に、「幾何で分類する」という新しい道を開いたのです。リチャード・ハミルトンが1982年に導入した「リッチフロー」(形を熱が広がるように変化させる方法)が、のちにペレルマンの証明に使われました。

ポアンカレ予想とは?では、予想の中身と、ペレルマンの証明のあらましを説明しています。ガウスの業績と生涯が考えた曲面の曲がり方から、サーストンの幾何化まで、曲がった空間の研究は、長い歴史の上に成り立っています。

ウィリアム・サーストンに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 立方体の頂点の数 VV、辺の数 EE、面の数 FF について、V−E+FV-E+F を求めなさい。
    答えと解説を見る立方体は V=8V=8、E=12E=12、F=6F=6 なので、8−12+6=8-12+6=2。(穴のない立体は、いつも2になります)
  2. 北極から赤道に向かう2本の経線が、北極で90°をなしています。この2本の経線と赤道でつくる球面上の三角形の内角の和を求めなさい。
    答えと解説を見る北極の角は90°、赤道との交点の角はそれぞれ90°なので、90°×3=90°\times3=270°。平らな面の三角形(180°)より大きくなっています。

ふつう

  1. 穴が1つの多面体(ドーナツ形)で、頂点が16個、辺が32本のとき、面の数を求めなさい。(穴が1つのとき V−E+F=0V-E+F=0)
    答えと解説を見る16−32+F=016-32+F=0 より F=F=16。
  2. 半径1の球面上で、北極と、赤道上の2点でつくる三角形の内角が 90°90°、90°90°、60°60° のとき、この三角形の面積を求めなさい。(球面三角形の面積は、内角の和から 180°180° をひいた値をラジアンで表したものに半径の2乗をかけたものです)
    答えと解説を見る内角の和は 240°240°。240°−180°=60°=π3240°-180°=60°=\dfrac{\pi}{3}。半径1なので面積はπ3\dfrac{\pi}{3}。(球の表面積 4π4\pi の 112\dfrac{1}{12} です)

むずかしい

  1. 曲率が −1-1 の双曲面上で、内角の和が 150°150° の三角形の面積を求めなさい。(面積=π−\pi-内角の和)
    答えと解説を見る150°=5π6150°=\dfrac{5\pi}{6} なので、面積は π−5π6=\pi-\dfrac{5\pi}{6}=π6\dfrac{\pi}{6}。
  2. 穴が3つの曲面について、オイラー標数 2−2g2-2g を求め、どの幾何を持つか答えなさい。
    答えと解説を見るg=3g=3 なので 2−2×3=2-2\times3=−4-4。マイナスなので、双曲幾何を持つ曲面です。

ウィリアム・サーストンと関係する数学者・難問

ポアンカレ予想とは?と平行線公準の問題では、サーストンの仕事の前後の歴史を説明しています。公式を調べるなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、数学用語は数学用語辞典(用語の意味を1語1ページ)、ノーベル賞と数学の関係はノーベル賞と数学が便利です。

現代(1940年以降生まれ)の数学者

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読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

ウィリアム・サーストンは何をした人ですか?

ウィリアム・サーストンは、アメリカの数学者です。3次元の形(3次元多様体)を調べる分野で革命を起こし、1982年にフィールズ賞を受けました。3次元の形を8つの幾何で整理する幾何化予想を提案したことで知られます。

幾何化予想とは何ですか?

3次元の閉じた多様体を、球とトーラスで切り分けると、それぞれの部品が8種類の幾何のどれかを持つ、という予想です。サーストンが1982年に提案し、ペレルマンが2002〜2003年に証明しました。

8つの幾何とは何ですか?

3次元球面、ふつうの3次元空間、双曲空間、球面×直線、双曲面×直線、Nil、Sol、SL(2,R)の普遍被覆の8つです。3次元の部品の形は、このどれかの幾何で表されます。

ポアンカレ予想とサーストンの関係は?

ポアンカレ予想は、サーストンの幾何化予想の特別な場合にあたります。ペレルマンが幾何化予想を証明したことで、ポアンカレ予想も解決しました。

サーストンはいつフィールズ賞を受けましたか?

1982年に受賞が決まり、授賞式は1983年にワルシャワで開かれた国際数学者会議で行われました。葉層構造と3次元多様体の研究が評価されました。

サーストンはいつ、どこで亡くなりましたか?

2012年8月21日に、アメリカ・ニューヨーク州ロチェスターで亡くなりました。65歳でした。当時はコーネル大学の教授でした。

双曲幾何とは何ですか?

三角形の内角の和が180°より小さくなる、曲がった世界の幾何です。ロバチェフスキーやボヤイが見つけた非ユークリッド幾何のひとつで、サーストンは3次元の多様体の多くが双曲幾何を持つことを示しました。

サーストンとほかの数学者の関係を教えてください。

幾何化予想はポアンカレの予想を含み、ペレルマンが証明しました。サーストンのオービフォールドの考え方は、コンウェイの対称性の分類にも使われています。ミルザカニは曲面の理論でサーストンの流れを受けつぎました。

サーストンの研究は受験に関係がありますか?

研究そのものは出ませんが、三角形の内角の和、オイラーの多面体定理、空間図形などの入試の幾何は、サーストンの話の入口です。図に描いて考える姿勢が大切です。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「William Thurston」(セント・アンドルーズ大学)
  • 日本語版ウィキペディア「ウィリアム・サーストン」、英語版ウィキペディア「William Thurston」
  • W. P. Thurston, “Three-dimensional manifolds, Kleinian groups and hyperbolic geometry”, Bulletin of the AMS 6(1982年)
  • W. P. Thurston, “Three-Dimensional Geometry and Topology, Volume 1”(1997年)
  • W. P. Thurston, “On Proof and Progress in Mathematics”, Bulletin of the AMS 30(1994年)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦