丘成桐(ヤウ)は何をした人?業績をわかりやすく|カラビ予想・カラビ・ヤウ多様体・フィールズ賞

丘成桐(ヤウ)は何をした人?業績をわかりやすく|カラビ予想・カラビ・ヤウ多様体・フィールズ賞

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丘成桐Shing-Tung Yau

ひとことで言うと

カラビ予想を証明してカラビ・ヤウ多様体を生み出し、1982年にフィールズ賞を受けた数学者。弦理論の「見えない6次元」の形としても有名。

名前丘成桐(Shing-Tung Yau、シン=トゥン・ヤウ)
生年1949年4月4日生まれ(存命)
国中国生まれ。香港で育ち、アメリカ(ハーバード大学)、中国(清華大学)で研究
分野微分幾何学・幾何解析・偏微分方程式
主な業績カラビ予想の証明(1976〜78年)、カラビ・ヤウ多様体、正質量定理(1979年・シェーンと)、ミラー対称性への貢献
主な受賞フィールズ賞(1982年)、クラフォード賞(1994年)、米国国家科学賞(1997年)、ウルフ賞(2010年)、ショー賞(2023年)
名前がつくものカラビ・ヤウ多様体・カラビ予想(ヤウの定理)・SYZ予想

このページのポイント

  • カラビ予想(形の性質から曲がり方が決まる)を1970年代に証明し、カラビ・ヤウ多様体を生み出した
  • 1982年にフィールズ賞。1979年にシェーンと正質量定理(エネルギーは負にならない)を証明
  • カラビ・ヤウ多様体は弦理論の余剰次元の形として使われ、ミラー対称性など数学と物理の橋わたしに

丘成桐(シン=トゥン・ヤウ)は何をした人?(業績をひとことで)

丘成桐(きゅう・せいとう、Shing-Tung Yau、シン=トゥン・ヤウ、1949年〜)は、中国出身でアメリカで活躍する数学者です。1982年にフィールズ賞を受けました。フィールズ賞は、数学のノーベル賞ともいわれる賞で、4年に一度、40歳未満の数学者に贈られます。授賞の理由は、偏微分方程式、カラビ予想、正質量予想(正エネルギー予想)、複素モンジュ・アンペール方程式への貢献でした。

丘成桐の名前を世界に広めたのが、カラビ予想の証明です。1954年にエウジェニオ・カラビが出した予想を、丘成桐は1970年代に解決しました。この結果から生まれた空間が「カラビ・ヤウ多様体」です。のちに物理学者たちが、弦理論で「宇宙にはこの形の小さな空間が丸まっている」と考え、数学と物理の両方で有名になりました。

もう1つの大きな業績が、正質量定理です。1979年にリチャード・シェーンとともに、「アインシュタインの重力理論で、孤立した物体の質量は負にならない」ことを数学的に証明しました。受験生に身近な言葉でいえば、「ふつうの条件のもとでは、エネルギーはマイナスにならない」という、とても大切な性質です。

丘成桐は、陳省身(チャーン)の業績と生涯の弟子としても知られます。バークレーでチャーンのもとで博士号を取り、のちにハーバード大学の教授、さらに清華大学の教授となりました。香港や北京・杭州などで、数学研究所づくりにも力を入れてきたと紹介されています。なお、丘成桐は今も現役の数学者です。この記事は、公に知られた業績・受賞・論文だけを書いています。

うかるくん

うかるくん

カラビ・ヤウ多様体って、いったいどんな形なんですか?

合格先生

合格先生

3次元の絵にはかけない、6次元(複素数で3次元)の空間なんだ。たとえるなら、遠くから見ると線にしか見えない「ホース」。近づいてみると、小さな円になっている。そんな見えない小さな次元が、宇宙のあちこちに丸まっているかもしれない、と物理学者は考えているんだよ。

丘成桐の生涯と年表

1949年に生まれ、香港で数学を学ぶ

丘成桐は1949年4月4日、中国の広東省で生まれました(MacTutor)。のちに香港で育ち、香港の崇基学院(チョン・チ・カレッジ)で数学を学びます。1968年に学院を卒業しないまま離れ、1969年にアメリカへ渡ったと記録されています。

バークレーでチャーンに学ぶ

アメリカのカリフォルニア大学バークレー校の大学院で学び、陳省身の業績と生涯のもとで研究を進めて、1971年に博士号を受けました。わずか22歳でした。博士号を受けたあとは、スタンフォード大学などで研究・教育に取り組みます。

1970年代のカラビ予想と正質量定理

丘成桐は、1976年にカラビ予想の解決を発表します。論文は1977〜78年に出ています。1979年には、シェーンと共同で正質量定理を証明しました。この2つの仕事で、世界の数学者から大きく注目されます。

1982年、フィールズ賞

1982年のフィールズ賞は、この年に3人が受けました(ほかはコンヌとサーストン)。メダルは1982年8月にワルシャワでの発表予定がありましたが、国際数学者会議が延期されたため、授賞式は1983年に行われました(MacTutor)。丘成桐は、中国系の数学者として初めてフィールズ賞を受けた人とされています。

ハーバード大学、そして清華大学へ

1988年にハーバード大学の教授になり、ウィリアム・カスパー・グラウスタイン記念教授の称号を受けました。2022年4月にハーバード大学を退き、清華大学の教授になりました。清華大学には、2015年に「丘成桐数学科学センター」が開かれています(MacTutor)。

ヤウの歩み1949生まれる1971バークレーで博士号1976〜78カラビ予想を証明1979正質量定理1982フィールズ賞1988ハーバード大学の教授2010ウルフ賞2022清華大学の教授に公に知られた経歴・受賞だけを年表にした
丘成桐の歩み。バークレー→カラビ予想→フィールズ賞→ハーバード→清華大学
年できごと
1949年4月4日、中国の広東省で生まれる
1954年カラビがカラビ予想を出す(丘成桐が生まれたころ)
1971年カリフォルニア大学バークレー校で博士号(指導はチャーン)
1976年カラビ予想の解決を発表(論文は1977〜78年)
1979年シェーンと正質量定理を証明
1981年ヴェブレン賞
1982年フィールズ賞(授賞式は1983年)
1985年弦理論の物理学者が、カラビ・ヤウ多様体を余剰次元の形として提案
1994年クラフォード賞
1997年米国の国家科学賞(National Medal of Science)
2010年ウルフ賞(幾何解析への貢献)
2015年清華大学に丘成桐数学科学センターが開かれる
2022年ハーバード大学を退き、清華大学の教授に
2023年ショー賞(数学部門、ドリンフェルトと同時受賞)

丘成桐の主な業績をやさしく解説

業績1 カラビ予想の証明:形が「曲がり方」を決める

まず「複素多様体」とは何かから説明します。複素数とはを座標に使った空間のことで、複素数1つは実数2つに相当するので、複素1次元の空間は、実数で考えると平面(曲面)になります。地球の表面のような曲面は、まさに「複素1次元」です。

1954年、アメリカの数学者エウジェニオ・カラビは、とても大胆な予想を出しました。形の性質(チャーン類)が「ゼロ」になっている空間では、曲がり具合の一部(リッチ曲率)がぴったり0になる曲がり方が存在する、という予想です。チャーン類は、空間の「ねじれ」をはかる整数のことでした。ねじれが打ち消しあう形ならば、きれいに曲がりがならされた計量(長さのものさし)が見つかる、と言っています。

ここで出てくるリッチ曲率は、空間の曲がり具合を、「体積の増えかた」で測る道具です。球の表面では、ある点から同じ距離にある点を集めた円の長さが、平らな面より短くなります。この「ずれ」を方向ごとに足し合わせたものが、リッチ曲率のイメージです。リッチ曲率が0とは、「小さな球を置いたとき、体積が平らな空間とほとんど同じ」になる、バランスのとれた曲がり方のことです。アインシュタインの重力理論でも、物質がない真空の空間は、リッチ曲率が0という式(真空のアインシュタイン方程式)で表されます。そのため、カラビ・ヤウ多様体は、数学だけでなく物理学者にも特別な意味を持つ空間になりました。

カラビ予想:形から「曲がり方」が決まる①形の性質(位相)「チャーン類」の第1番目が 0(ねじれが打ち消し合っている)難しい方程式②方程式を解く複素モンジュ・アンペール方程式(非線形の偏微分方程式)③曲がり方が存在するリッチ曲率が 0 の計量(カラビ・ヤウ多様体)1954年に予想(カラビ)→ 1970年代に証明(ヤウ)
カラビ予想。①形の性質(チャーン類が0)から、②方程式を解くことで、③曲がり方が存在する

むずかしい点は、「存在する」ことを示すために、複素モンジュ・アンペール方程式という、とても難しい偏微分方程式を解く必要があったことです。丘成桐は、この方程式の解が存在することを示し、予想を証明しました。1976年に結果が発表され、1977〜78年に論文になりました。多くの数学者が「この予想は正しくないかもしれない」と考えていた時代に、丘成桐は正しいことを示したと伝えられています。

この証明で、「形の性質(位相)から曲がり方(幾何)が決まる」という、とても美しい橋がかかりました。この橋は、のちに「幾何解析」という分野を大きく育てました。幾何解析とは、微分方程式の力で図形の性質を調べる学問です。

業績2 カラビ・ヤウ多様体と弦理論

カラビ予想が正しいと分かると、リッチ曲率が0の複素多様体が、実際に存在することが保証されました。この空間が、カラビ・ヤウ多様体です。いちばん身近な例は、平面の3次曲線(楕円曲線)です。次数が空間の次元より1だけ大きい式で作る曲線・曲面が、この条件を満たします。

次数=次元+1 のとき、カラビ・ヤウ楕円曲線平面(P²)の中の3次式複素1次元 = 実2次元K3曲面3次元(P³)の中の4次式複素2次元 = 実4次元5次超曲面4次元(P⁴)の中の5次式複素3次元 = 実6次元5次超曲面が弦理論でよく使われる「3次元のCY」
平面の3次曲線(楕円曲線)、4次曲面(K3曲面)、5次超曲面。次数=次元+1のとき、カラビ・ヤウになる

1985年、物理学者のキャンデラス、ホロウィッツ、ストロミンジャー、ウィッテンが、弦理論という理論で、このカラビ・ヤウ多様体を使えることに気づきました。弦理論では、宇宙は10次元で、そのうち私たちが感じるのは4次元(縦・横・高さ・時間)だけです。残りの6次元は、とても小さく丸まっていて見えない、と考えます。その丸まった6次元の形が、3次元(実6次元)のカラビ・ヤウ多様体だというのです。

ホースのたとえ:見えない小さな次元遠くから見ると…1本の線拡大近づくと…小さな円がならんでいる弦理論:10次元 = 見える4次元 + 丸まった6次元
ホースのたとえ。遠くからは線、近づくと小さな円。弦理論の余剰次元もこのように丸まっていると考える

これは、あくまで理論上のアイデアで、実験で確かめられたわけではありません。しかし、この理論の必要から、数学者と物理学者が互いに新しい問題を出しあうようになりました。丘成桐は、その中心にいた数学者の1人です。ヤウの名前がついたカラビ・ヤウ多様体は、数学と物理学の2つの世界をつなぐ、象徴のような存在になりました。

業績3 正質量定理:エネルギーは負にならない

アインシュタインの一般相対性理論では、重力は空間(と時間)のゆがみとして説明されます。ゴムの膜の上に重い玉を置くとへこむように、質量があれば空間はたわみます。このとき、全体の質量(エネルギー)は、玉が重いほど大きく、玉がなければ0です。では、質量が負、つまり上に盛り上がるような空間はありえるでしょうか。

正質量定理:エネルギーは負にならない質量 0平らな空間質量 > 0へこむ(ふつうの星)質量 < 0起こらない!全エネルギーは 0 以上、0 になるのは平らな時だけ
質量0なら平ら、質量が正ならへこむ。負の質量にあたる盛り上がりは起こらない(正質量定理)

1979年、丘成桐とシェーンは、「物質の密度が負でなければ、孤立した系の全質量は0以上で、0になるのは平らな空間のときだけ」ということを、数学的に証明しました。証明には、シャボン玉の膜のような「極小曲面」(まわりの枠が決まったとき、面積が最も小さくなる曲面)という道具が使われました(MacTutor)。その後、物理学者のウィッテンが、別の方法(スピノールという道具)でも証明を与えています。

この定理が示すのは、「宇宙が不安定にならない」ための数学的な裏づけの1つです。もし質量が負になれる空間があれば、エネルギーをどんどん取り出せる奇妙な状況が生まれてしまいます。数学の定理が、物理の世界の安全を保証したのです。

業績4 ミラー対称性への貢献

弦理論から生まれた、不思議な現象がミラー対称性です。形がまったくちがう2つのカラビ・ヤウ多様体が、物理の上では「鏡に映したように」同じ結果を出す、という現象です。5次超曲面の場合、ホッジ数という数(h1,1=1h^{1,1}=1、h2,1=101h^{2,1}=101)が、ミラーの空間では入れかわります。

ミラー対称性:数が入れかわる5次超曲面 Xh¹¹ = 1h²¹ = 101χ = −200ミラー Yh¹¹ = 101h²¹ = 1χ = +200鏡h²¹=101 は「形の変えかたの数」126個の係数 − 25(座標の取りかえ)= 101h¹¹・h²¹ はホッジ数。くわしくは大学の数学で
5次超曲面とそのミラー。h¹¹とh²¹が入れかわり、オイラー標数も −200 と +200 になる

h2,1=101h^{2,1}=101 という数は、「形をどれだけ自由に変えられるか」の数に対応します。5次式の係数は126個あり、座標の取りかえによる25個分の自由度を引いて、126−25=101126-25=101 です。1990年代、物理学者たちは、5次超曲面の中に何本の直線や曲線があるかを、ミラー対称性を使って予想しました。丘成桐は、ボン・リアン、リュウ・クーフェンとともに、この予想の公式を数学として厳密に証明しました(1997年ごろ)。また、ストロミンジャー、ザスローとともに、ミラー対称性の幾何学的な見方(SYZ予想、1996年)を提案しました。

業績5 幾何解析という分野と、数学の発信

丘成桐は、微分方程式と幾何学を結びつける幾何解析を、ひとつの分野として育てた数学者の1人です。ほかにも、ラプラス作用素の固有値の研究や、極小曲面の理論など、多くの成果があります。学術雑誌の編集や、研究所づくり、一般向けの数学の本も書いており、数学の魅力を広めることにも力を入れています。2010年のウルフ賞は、幾何解析への貢献に対して贈られました。

丘成桐の名前がつく公式・定理・用語

  • カラビ・ヤウ多様体:リッチ曲率が0の複素多様体。弦理論で余剰次元の形として使われる。
  • カラビ予想(ヤウの定理):チャーン類が0なら、リッチ曲率が0の計量が存在する。
  • 正質量定理(シェーン・ヤウ):孤立した系の全質量は0以上。
  • SYZ予想:ストロミンジャー・ヤウ・ザスローが提案した、ミラー対称性の幾何学的な見方。
  • ヤウの予想(固有値など):幾何解析の分野には、ヤウの名がつく予想がいくつかある。

高校数学までで、関係する公式・用語は次のとおりです。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

カラビ・ヤウ多様体のポイントは「形の性質が、曲がり方を決める」こと。入試でも「条件から答えの形が決まる」場面があるね。条件を丁寧に使うのが大切だよ。

丘成桐の逸話(公に知られた話)

22歳で博士号、そして難問へ

丘成桐は、22歳でバークレーの博士号を受けたあと、カラビ予想という難問に取り組みました。1976年に解決を発表し、1982年にフィールズ賞を受けた、というのが公式の記録にある事実です。「何歳で何をしたか」といった細かい逸話は、報道や本によって話が少しずつ変わるとされるため、公式の記録にある事実を中心に紹介します。

偏微分方程式、カラビ予想、正質量予想、複素モンジュ・アンペール方程式への貢献

1982年のフィールズ賞の授賞理由(MacTutorによる要約)(MacTutor「Shing-Tung Yau」より)

なぜ「存在する」ことを示すのが大変なのか

数学で「〜という性質の図形が存在する」ことを示すには、2つの方法があります。実際に1つ作ってみせる方法と、方程式を立てて「その方程式に解がある」と示す方法です。カラビ予想では、前者が不可能でした。条件を満たす曲がり方を、式で具体的に書き出すことが、ほとんどの場合にできないからです。そこで丘成桐は、方程式の解が存在することを、別の道具(評価式とよばれる不等式)を積み上げて示しました。たとえるなら、迷路のゴールまでの道筋を描けなくても、「この迷路には必ずゴールがある」と、壁の配置から証明するようなものです。具体的な形が見えなくても、存在だけは保証される。これは現代数学の大切な考え方の1つで、大学の解析学で本格的に学びます。

数学と物理学の橋わたし

丘成桐の仕事は、数学の研究が物理学に思わぬ影響を与えた例としてよく紹介されます。カラビ予想は純粋な数学の問題でしたが、その解(カラビ・ヤウ多様体)が、のちに弦理論の中心的な道具になりました。数学の研究は、すぐに役立つことを目的にしなくても、あとになって大きな意味を持つことがあります。

数学を広める活動

丘成桐は、香港・北京・杭州などに数学の研究所をつくる活動に関わってきました(MacTutor)。2010年には、科学ライターのスティーヴ・ネイディスと共著で、カラビ・ヤウ多様体を一般向けに紹介する本を書いたと紹介されています。数学の研究と教育の両方に力を入れてきた数学者です。

サクラちゃん

サクラちゃん

6次元なんて想像できません……。見えないものを、どうやって研究するんですか?

合格先生

合格先生

式で調べるんだよ。見えなくても、「次数が5の式のグラフ」のように、式から性質を引き出せる。たとえば5次式の係数は126個あって、そこから25個ひいて101、と数えられるよね。入試の「場合の数」も、見えない全体を式で数える練習なんだ。

受験・勉強と丘成桐のつながり

中学受験:曲がり方と図形

中学受験で直接出ることはありませんが、「立体の展開図」や「球の表面積」を学ぶ段階で、曲がった面の面積の考え方に触れます。曲面を平面に開く作業は、曲がり具合の考え方のはじまりです。

高校受験:式と図形

高校受験の関数の分野では、式(方程式)と図形の関係を学びます。放物線 y=ax2y=ax^2 や直線の式を使った問題は、「式で図形を調べる」という丘成桐の仕事の考え方の出発点です。

大学受験:複素数平面・微分・曲線

大学受験では、複素数平面(数学C)が、複素多様体の入り口です。複素数 a+bia+bi を平面上の点として表す考え方は、ガウスが広めたものでした(ガウスの複素数平面)。また、数学IIIの微分の意味・曲線の曲がり具合(曲率)は、曲がった空間を調べる幾何学の基礎になります。京都大学・東京大学の図形・空間の問題の傾向は京大理系数学の出題分析(図形・空間の出方)で確認できます。

大学・大学院:多様体と偏微分方程式

大学の数学科では、「多様体」「リーマン計量」「偏微分方程式」を学びます。カラビ予想の証明は、これらを組み合わせた代表例で、大学院の幾何学や解析学の講義でも紹介されます。

勉強法として:条件から形を決める

カラビ予想のスローガンは「条件(チャーン類=0)から、形(計量)が決まる」です。受験でも、問題文の条件を式に直して整理すると、答えの形が見えてきます。条件を式に直す練習をくり返すと、見えない全体も少しずつ見えてくるはずです。考え方の整理は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も読んでください。

丘成桐がその後の数学にあたえた影響

  • 幾何解析という分野:微分方程式で図形を調べる方法が、広く使われるようになりました。
  • カラビ・ヤウ多様体の研究:数学の幾何学と、物理学の弦理論をむすぶ、新しい研究分野が生まれました。
  • ミラー対称性:形がちがう空間に同じ数が現れるという現象が、数え上げ幾何学など多くの分野に影響しました。
  • 相対性理論の数学:正質量定理は、一般相対性理論を数学的に厳密に扱うための基本的な定理になりました。
  • 数学教育と国際交流:研究所や会議を通して、アジアの若い数学者を世界とつなぐ活動が続いています。

この流れは、ガウスの曲面の研究から、リーマンの幾何学、ポアンカレの位相幾何学、チャーンの特性類、アティヤの指数定理へとつながる、約200年の歴史の上にあります。ペレルマンが証明したポアンカレ予想の仕事とも、幾何学の同じ大きな流れにあります。

なお、丘成桐は現在も研究と教育を続けています。この記事は、2026年11月時点で公に知られている内容にもとづいています。新しい情報は、大学の発表や専門誌で確かめてください。

丘成桐の仕事をたどると、「形」と「曲がり」と「方程式」が、ひとつの糸でつながっていることが分かります。形が決める情報から曲がり方が決まり、その曲がり方が物理の世界でも意味を持つ。このつながりを、高校生のうちに少しでも感じておくと、大学で数学を学ぶ楽しさが増すはずです。

丘成桐に挑戦!練習問題

やさしい

  1. 半径2の球面のガウス曲率 K=1/r2K=1/r^2 と、表面積 4πr24\pi r^2 を使って、曲がりの合計 K×K\times(面積)を求めなさい。
    答えと解説を見るK=14K=\frac14、面積は 4π×4=16π4\pi\times4=16\pi。14×16π=\frac14\times16\pi=4π4\pi。半径によらず 4π4\pi になります。
  2. 弦理論では、宇宙は10次元で、私たちが感じるのは4次元です。丸まっている次元の数はいくつですか。
    答えと解説を見る10−4=10-4=6次元(複素数で数えると3次元)。この6次元の形がカラビ・ヤウ多様体と考えられています。

ふつう

  1. 射影空間 Pn\mathbb{P}^n の中の dd 次式で作る超曲面がカラビ・ヤウになる条件は d=n+1d=n+1 です。n=2, 3, 4n=2,\ 3,\ 4 のとき、dd はいくつですか。
    答えと解説を見るn=2n=2 のとき3次(楕円曲線)、n=3n=3 のとき4次(K3曲面)、n=4n=4 のとき5次(5次超曲面)。
  2. 穴が2つの曲面について、ガウス・ボンネの公式 ∫K dA=2πχ\int K\,dA=2\pi\chi(χ=2−2g\chi=2-2g)から、曲がりの合計を求めなさい。
    答えと解説を見るg=2g=2 より χ=2−4=−2\chi=2-4=-2。曲がりの合計は 2π×(−2)=2\pi\times(-2)=−4π-4\pi。

むずかしい

  1. 5次超曲面のホッジ数が h1,1=1, h2,1=101h^{1,1}=1,\ h^{2,1}=101 のとき、オイラー標数 χ=2(h1,1−h2,1)\chi=2(h^{1,1}-h^{2,1}) を求めなさい。ミラーでは値がどうなりますか。
    答えと解説を見る2(1−101)=2(1-101)=−200。ミラーでは2つの数が入れかわるので、2(101−1)=2(101-1)=+200。符号が変わります。
  2. 5変数の5次の同次式(すべての項が5次)の単項式(x1a1⋯x5a5x_1^{a_1}\cdots x_5^{a_5} で a1+⋯+a5=5a_1+\cdots+a_5=5)は何個ありますか。重複組合せで求めなさい。さらに25を引くといくつですか。
    答えと解説を見る5+5−1C5=9C4={}_{5+5-1}\mathrm{C}_5={}_9\mathrm{C}_4=126個。126−25=126-25=101。(ホッジ数 h2,1=101h^{2,1}=101 に一致)

丘成桐と関係する数学者

数学の公式を1つずつ学ぶなら算数・数学の公式一覧(公式辞典)、数学全体の入口は算数・数学 公式と用語の一覧(学年別・分野別)もどうぞ。

現代(1940年以降生まれ)の数学者

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読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

丘成桐(ヤウ)は何をした人ですか?

丘成桐は、中国出身でアメリカで活躍する数学者です。カラビ予想を証明してカラビ・ヤウ多様体を生み出し、1982年にフィールズ賞を受けました。正質量定理の証明やミラー対称性の研究でも知られます。

カラビ・ヤウ多様体とは何ですか?

形のねじれ(チャーン類)が打ち消し合う複素多様体のうち、リッチ曲率が0になる曲がり方を持つ空間です。弦理論では、私たちに見えない丸まった6次元の形だと考えられています。

カラビ予想とは何ですか?

1954年にカラビが出した、形の性質(チャーン類)が0ならリッチ曲率が0の計量が存在するという予想です。丘成桐が1970年代に証明しました。

丘成桐はいつフィールズ賞を受けましたか?

1982年に受賞しました。理由は、偏微分方程式、カラビ予想、正質量予想、複素モンジュ・アンペール方程式への貢献です。授賞式は1983年に行われました。

正質量定理とは何ですか?

一般相対性理論で、物質の密度が負でなければ、孤立した系の全質量は0以上で、0になるのは平らな空間のときだけ、という定理です。1979年に丘成桐とシェーンが証明しました。

丘成桐の先生はだれですか?

1971年にカリフォルニア大学バークレー校で博士号を受け、指導教員は陳省身(チャーン)でした。

ミラー対称性とは何ですか?

形がまったくちがう2つのカラビ・ヤウ多様体が、物理の上では同じ結果を出すという現象です。ホッジ数のh¹¹とh²¹が入れかわります。丘成桐は証明や提案に貢献しました。

丘成桐はどんな賞を受けていますか?

フィールズ賞(1982年)、ヴェブレン賞(1981年)、クラフォード賞(1994年)、米国国家科学賞(1997年)、ウルフ賞(2010年)、ショー賞(2023年)などがあります。

丘成桐の仕事は受験に関係がありますか?

複素数平面や微分、曲線の式など、高校数学の内容が土台です。大学の数学科では多様体や偏微分方程式として学び、カラビ予想の証明はその代表例になっています。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Shing-Tung Yau」(セント・アンドルーズ大学)
  • S.-T. Yau, “On the Ricci curvature of a compact Kähler manifold and the complex Monge-Ampère equation, I”, Communications on Pure and Applied Mathematics 31(1978年)
  • R. Schoen, S.-T. Yau, “On the proof of the positive mass conjecture in general relativity”, Communications in Mathematical Physics 65(1979年)
  • 国際数学連合(IMU)「Fields Medal 1982」

最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦