ミルザハニは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|女性初のフィールズ賞・測地線・モジュライ空間

ミルザハニは何をした人?業績・生涯・名言をわかりやすく|女性初のフィールズ賞・測地線・モジュライ空間

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ミルザハニMaryam Mirzakhani

ひとことで言うと

2014年に女性で初めてフィールズ賞を受けたイラン出身の数学者。穴のある曲面の上の閉じた測地線と、曲面の形を集めたモジュライ空間を研究した。

名前マリアム・ミルザハニ(Maryam Mirzakhani)
生没年1977年5月12日〜2017年7月(40歳)
国イラン(テヘラン生まれ)・アメリカ
分野幾何学・双曲幾何・力学系・モジュライ空間
主な業績双曲面上の単純な閉じた測地線の個数の増え方、モジュライ空間の体積の漸化式、エスキン・モハマディとの軌道閉包の定理
主な受賞ブルメンソール賞(2009年)、フィールズ賞・クレイ研究賞(2014年)
よばれ方女性で初めてのフィールズ賞受賞者(2014年)、イラン出身で初めてのフィールズ賞受賞者

このページのポイント

  • 2014年に、女性として初めて、またイラン出身者として初めて、フィールズ賞を受賞した
  • 穴の数 g の双曲面で、長さ LL 以下の単純な閉じた測地線の個数が L6g−6L^{6g-6} に比例して増えることを示した
  • 国際数学オリンピックで1994年・1995年に金メダル。40歳だった2017年に亡くなった

ミルザハニは何をした人?(業績をひとことで)

マリアム・ミルザハニ(1977〜2017年)は、イランに生まれ、アメリカで活躍した数学者です。2014年に、女性として初めて「フィールズ賞」を受賞しました。フィールズ賞は、数学のノーベル賞ともいわれる賞で、4年に一度、40歳未満の数学者に贈られます。授賞の理由は、リーマン面とそのモジュライ空間の力学と幾何学への、すぐれた貢献でした。2017年7月に、40歳で亡くなりました。

ミルザハニの研究の中心にあるのは、「穴のある曲面の上の、閉じた測地線(曲面の上での“まっすぐな輪”)」です。曲面の上に、自分と交わらずに一周して元にもどる「まっすぐな線」は、長さごとに何本あるのか。その本数の増え方をつかまえたのが、博士論文から始まる大きな仕事でした。さらに、曲面の「形のちがい」をすべて集めた空間(モジュライ空間)の体積を計算する方法も見つけました。

受験生にとってのミルザハニは、まず「国際数学オリンピックで金メダルを2年連続でとり、のちにフィールズ賞に届いた人」です。研究そのものは大学院レベルで、入試に直接出ることはありません。ただ、出発点にある「曲面の穴の数」はオイラーの多面体定理につながりますし、「べき乗の増え方と指数の増え方のちがい」は指数関数とはの勉強で出会います。この記事では、ミルザハニの仕事を「曲面」「測地線」「数え方」の3つのキーワードで、図を使ってやさしく説明します。

うかるくん

うかるくん

フィールズ賞を女性で初めてとった人なんですね。でも、「曲面の上のまっすぐな線」って、曲がっているのにまっすぐなんですか?

合格先生

合格先生

いいところに気がついたね。曲がった面の上で、いちばん「まっすぐ」に進んだ線が測地線なんだ。地球の上を飛行機が飛ぶとき、地図ではカーブして見えるけど、実はいちばん近道のルートでしょう。あれが測地線の例だよ。

ミルザハニの生涯と年表

テヘランに生まれ、数学の道へ

マリアム・ミルザハニは、1977年5月12日にイランの首都テヘランで生まれました。(資料によって生まれた日が5月3日と書かれていることがありますが、MacTutor の伝記は5月12日としています。)イランの優秀な生徒のための学校で学び、数学の才能をのばしました。

国際数学オリンピックで金メダル

1994年と1995年の国際数学オリンピックに、イランの代表として出場し、2年連続で金メダルをとったことが知られています。1995年の大会では、満点を取ったと伝えられています。国際数学オリンピックは、世界の高校生が数学の問題の解き方を競う大会です。数学オリンピックの問題(長方形に詰めた正方形)で、本番の問題の雰囲気を知ることができます。

シャリフ工科大学からハーバード大学へ

1995年にテヘランのシャリフ工科大学に入り、1999年に数学の学士号を受けました。その後アメリカへ渡り、ハーバード大学の大学院で学びます。指導教員は、フィールズ賞を受けた数学者のカーティス・マクマレンでした。2004年、博士論文「双曲面上の単純な測地線と、曲線のモジュライ空間の体積」で博士号を受けます。この論文が、のちのフィールズ賞の大きな柱になりました。

プリンストンからスタンフォードへ

2004年にクレイ数学研究所の研究員、およびプリンストン大学の助教になり、2008年にスタンフォード大学の教授になりました。この時期に、エスキン、モハマディらとの共同研究など、数学の力学系の分野でも大きな成果を出しています。

2014年、女性で初めてのフィールズ賞

2014年8月13日、韓国のソウルで開かれた国際数学者会議で、ミルザハニにフィールズ賞が贈られました。女性としても、イラン出身者としても、初めての受賞でした。授賞の理由は、「リーマン面とそのモジュライ空間の力学と幾何学への傑出した貢献」とされています。

2017年に亡くなる

ミルザハニは、2017年7月、アメリカで40歳の若さで亡くなりました(病気のためと報じられています)。世界中の数学者や大学が追悼の言葉を発表しました。生まれた日の5月12日は、のちに「数学における女性の国際デー」として、世界各地で記念されています。

ミルザハニの歩み1977テヘランに生まれる1994・95国際数学オリンピック金メダル1999シャリフ工科大学を卒業2004ハーバード大学で博士号2008スタンフォード大学の教授2014フィールズ賞(女性で初)201740歳で亡くなるフィールズ賞の女性受賞者は、2022年のヴィアゾフスカが2人目
ミルザハニの歩み。テヘラン→国際数学オリンピック→ハーバード→フィールズ賞
年できごと
1977年5月12日、イランのテヘランで生まれる
1994年国際数学オリンピックで金メダル
1995年国際数学オリンピックで金メダル(満点と伝えられる)。シャリフ工科大学に入学
1999年シャリフ工科大学を卒業。ハーバード大学の大学院へ
2004年ハーバード大学で博士号(指導教員はマクマレン)。クレイ数学研究所の研究員に
2008年スタンフォード大学の教授になる。単純な閉じた測地線の個数の増え方を示す論文
2009年ブルメンソール賞を受ける
2013〜15年エスキン、モハマディとの共同研究(SL(2,R) の作用の軌道閉包)
2014年8月13日、国際数学者会議(ソウル)で、女性で初めてのフィールズ賞。クレイ研究賞も受ける
2017年7月、アメリカで亡くなる(40歳)
2022年ヴィアゾフスカが2人目の女性のフィールズ賞受賞者になる

ミルザハニの主な業績をやさしく解説

業績1 穴のある曲面と「双曲幾何」

図形には「穴の数」という大事な性質があります。穴0個の球、穴1個のドーナツ、穴2個の二重ドーナツ。穴の数を種数(g)といいます。穴が g 個の曲面では、頂点・辺・面の数について V−E+F=2−2gV-E+F=2-2g が成り立ちます(オイラーの多面体定理の一般化です)。

穴の数 g で曲面を分ける穴0個(2−2g=2)穴1個(2−2g=0)穴2個(2−2g=-2)穴3個(2−2g=-4)g が大きいほど「形の種類」がふえる
穴の数が0個から3個までの曲面。穴の数 g が大きいほど、形のちがいが増える

g が2以上の曲面には、ふしぎな性質があります。曲面の上に「ものさし」(距離の測り方)をうまく入れると、どの点でも、曲がり方が同じ(負の曲率)になるのです。これを双曲幾何といいます。ふつうの平面の幾何は、ユークリッドの『原論』で整理された幾何です。そこでは三角形の角の和は180°ですが、双曲幾何の世界では、三角形の角の和が180°より小さくなります。平行線の公理が成り立たない幾何は、ロバチェフスキーの業績と非ユークリッド幾何学とボーヤイが19世紀に見つけ、ガウスの業績も早くから考えていたといわれます。

双曲面のモデル(ポアンカレ円板)三角形角の和 < 180°赤=3つの測地線(直線)で囲まれた三角形青=別の測地線。円のふちに直交する円弧
双曲面のモデル。円のふちに直交する円弧が「直線」。三角形の角の和は180°より小さくなる

ここで、曲面の「形」は、ものさしの入れ方で変わります。ですから、穴 g 個の曲面に入るすべての双曲的なものさしを集めたものを考えると、巨大な空間になります。これがモジュライ空間(形のちがいを集めた空間)で、ミルザハニの研究の舞台です。この空間の次元は、実数でちょうど 6g−66g-6 です(このことは、後の業績2とも関係します)。複素数でいえば 3g−33g-3 次元で、リーマンの業績と生涯が19世紀に考えたリーマン面の研究に始まる、古い分野です。

業績2 閉じた測地線の個数を数える

測地線とは、曲がった面の上の「まっすぐな線」で、2点を結ぶいちばんの近道のようなものです(最短経路の問題と考え方が似ています)。そのうち、出発点にもどって一周するものを閉じた測地線といいます。ゴムひもをドーナツの穴に通してピンと引っぱったとき、ゴムひもが作る輪を思いうかべるとイメージしやすいでしょう。

「単純な」閉じた曲線とは単純自分と交わらない単純でない自分と交わる
自分と交わらない「単純な」閉じた曲線と、交わる曲線のちがい

穴の数 g が2以上の双曲面の上には、閉じた測地線がたくさんあります。長さが LL 以下のものは何本あるのか、というのが基本の問いです。マルグリスという数学者が、すべての閉じた測地線については、個数が指数関数のように急に増えることを示していました。ところが、自分と交わらない単純なものだけに限ると、増え方は急ではなくなります。

ミルザハニは、2008年の論文で、長さ LL 以下の単純な閉じた測地線の個数が、LL の 6g−66g-6 乗に比例して増える、つまりべき乗(多項式)の増え方になることを証明しました(MacTutor などの資料に紹介されています)。指数的な増え方とは、ずいぶんちがうわけです。

長さ L までの個数の増え方(模式図)すべての閉じた測地線:指数的(e の L 乗に近い)単純なもの:L の 6g−6 乗ここで逆転長さ L →個数指数はごく大きな L で、べき乗を追いこす
すべての閉じた測地線は指数的に増えるが、単純なものはべき乗の増え方。差は L が大きいほど開く

べき乗の増え方と指数の増え方の差は、高校の数学でも学びます。たとえば x6x^6 と exe^x を比べると、xx が小さいうちは x6x^6 のほうが大きいこともありますが、xx を大きくしていくと、いつか必ず exe^x が追いこします。指数関数の増え方がどれだけ急かを知っていると、この発見の意味がよく分かります。

業績3 モジュライ空間の体積と、ウィッテンの予想

曲面の「形のちがい」を集めたモジュライ空間は、いくつもの「ちがう形のものさしの入れ方」で作られます。この空間に、ヴェイユ–ピーターソン計量という自然な「体積の測り方」があります。ミルザハニは博士論文で、この体積を漸化式で次々に計算する方法を見つけました。穴の数が増えても、小さい場合から順に求められる、という意味です。

この方法の鍵は、曲面をズボン(パンツ)の形のパーツに切り分けることでした。穴が g 個の曲面は、2g−22g-2 枚のパンツに、3g−33g-3 本の輪で切り分けられます。パンツ1枚は「穴が3つ(ウエスト1つと足2つ)ある球面」で、形が単純なので、体積の計算がしやすくなります。輪1本あたり「長さ」と「ひねり」の2つの数があるので、全体の次元は 2(3g−3)=6g−62(3g-3)=6g-6 になります(業績1と業績2に出てきた数と同じです)。

さらにこの計算は、物理学者ウィッテンが予想した式(2次元の量子重力に関する式で、コンツェビッチが証明していた)とつながっていることが分かり、ミルザハニは、この予想に新しい証明を与えました。曲面の幾何学と、数理物理学が、同じ数でつながっていたのです。

業績4 力学系:「地震の流れ」と軌道閉包

ミルザハニは、数学者サーストンが考えた「地震写像」(曲面を、ある輪にそってずらす操作)の研究でも成果を出しました。サーストンの予想を解決して、この操作を連続して行う流れが、ある意味で「よくかきまぜる」性質(エルゴード性)を持つことを示したと紹介されています。

2013〜2015年には、エスキンとモハマディとの共同研究で、モジュライ空間の上の、ある種の力学系の「軌道の閉包」が、いつも代数的な形になることを示しました。専門家のあいだでは、「魔法の杖定理」とよばれることがあるほど、この分野の見通しを良くした結果だと評価されています。内容は大学院レベルですが、「どんなに複雑な動きでも、最後にはきれいな形にまとまる」ことを示す、という言い方がわかりやすいでしょう。

こうして、ミルザハニの仕事は、幾何学(曲面の形)・力学系(動き)・数理物理学(体積と量子重力)という3つの分野をつなぐものになりました。これほど広い範囲に影響をあたえた数学者は、世界にもそう多くありません。

ミルザハニの名前がつく公式・定理・用語

ミルザハニの名前がつく用語は、研究者のあいだで使われる専門的なものが中心です。受験の教科書にはまだ出てきませんが、大学院以降の勉強では、よく名前が出てきます。

  • ミルザハニの漸化式:ヴェイユ–ピーターソン体積を、小さい曲面から順に計算する式。
  • マクシェーンの恒等式のミルザハニによる一般化:穴のある曲面の測地線の長さについて成り立つ関係式。
  • エスキン–ミルザハニ–モハマディの定理:モジュライ空間上の SL(2,R) の作用の軌道閉包に関する定理。
  • ミルザハニの単純閉測地線の増大度:長さ LL 以下の単純閉測地線の数が L6g−6L^{6g-6} に比例して増えるという定理。

高校数学までで、関係する公式・用語は次のとおりです。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

ミルザハニの研究は「穴の数 g」と「形のちがい」がキーワード。g が大きいと形のちがいが急にふえるけれど、切り分けて数えれば数えられる。むずかしい問題を、小さなパーツに分けるのは、入試の勉強とも同じ発想だね。

ミルザハニの逸話と名言

「数学の美しさは、辛抱強い人にだけ姿を見せる」

ミルザハニは、数学の魅力について聞かれたとき、次のような趣旨の言葉を語ったと伝えられています。

数学の美しさは、辛抱強くつき合う人にだけ、姿を見せてくれる。

ミルザハニ(インタビューでの言葉の趣旨)(2008年ごろのクレイ数学研究所のインタビューなどで紹介された言葉の大意。日本語は意訳で、正確な言い回しは原文で確かめてください)

ミルザハニは、数学の問題を考えるとき、時間をかけて、少しずつ道を探るタイプだったと紹介されています。

大きな紙に、絵をかきながら考える

ミルザハニは、問題を考えるとき、大きな紙に絵(図)を描きながら考えるのが好きだったと伝えられています。報道では、紙に曲面の絵や線を、自由に描きこむ様子が紹介されました。数学者が、ノートに式を書くだけでなく、絵をかいて考えるというのは、ガウスの業績と生涯が測量で曲面の幾何を考えたときにも通じる、大切な方法です。

「ジャングルで道を探す」ようなもの

ミルザハニは、数学の研究について、「ジャングルの中で道に迷って、手持ちの知識をすべて使って新しい工夫を見つけ、運が良ければ出口が見つかる」といった趣旨の話をしたと紹介されています(インタビューの大意)。国際数学オリンピックの金メダリストであっても、研究は「迷いながら進む」作業なのだ、というメッセージです。

国際数学オリンピックから研究者へ

ミルザハニは高校時代の1994年と1995年、国際数学オリンピックのイラン代表として金メダルを取りました。のちの研究とは直接つながりませんが、「むずかしい問題を、自分の力で考え抜く」という経験は、研究者としての土台になったと語られることがあります。受験生のみなさんも、入試問題を時間をかけて考える練習が、将来の考える力につながります。

ミルザハニにちなむ記念

ミルザハニの誕生日の5月12日は、「数学における女性の国際デー」として、世界各地で記念されています。女性の数学者の活躍を紹介する行事が開かれ、ミルザハニの名前もよく引き合いに出されます。フィールズ賞は2022年に、ウクライナ出身のヴィアゾフスカの業績が受賞し、女性の受賞者は2人目になりました。

サクラちゃん

サクラちゃん

私、図形の問題をいつも「むずかしい」ってあきらめちゃうんです……。

合格先生

合格先生

ミルザハニも、絵をかいて考えるのが好きだったと伝えられているよ。むずかしい問題ほど、まず図を大きくかく。そして、パーツに切り分けて、1つずつ考える。その練習から始めてみよう。

受験・勉強とミルザハニのつながり

中学受験・高校受験:図形の「切り分け」と穴

中学受験の図形問題には、「立体を切って平面にする」「折り目を数える」といった問題があります。複雑な図形を単純なパーツに分けて調べるという考え方は、ミルザハニが曲面をパンツに切り分けた方法と通じています。展開図や切断の問題は、立体の「形」を考える練習になります。

大学受験:指数関数・対数・極限

大学受験では、xnx^n と exe^x の増え方の比べ方がよく出ます。たとえば、lim⁡x→∞xnex=0\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{x^n}{e^x}=0 は、数学IIIの重要な極限です。「指数関数は、どんなべき乗よりも速く増える」ことを、グラフと式で理解しておきましょう。極限とはの考え方を丁寧に学ぶと、この問題がすっきり解けます。

大学数学へ:曲面・微分幾何・力学系

大学に進むと、曲面の曲がり方を調べる微分幾何、動きを調べる力学系を学べます。ミルザハニの仕事は、これらの分野が合わさったところにあります。高校でしっかり学んでおくとよいのは、数学IIIの微分積分と、数学Cの複素数平面・ベクトルです。京都大学・東京大学の数学で、整数・図形・極限の問題がどう出題されるかは、京大理系数学の出題分析(1999〜2026年度)を参考にしてください。

数学オリンピックを目指す人へ

国際数学オリンピックには、日本からも毎年代表が出ています。受験勉強と違い、公式の暗記だけでは解けない、発想力が問われる問題が出ます。数学を楽しみたい人は、数学オリンピックの問題(長方形に詰めた正方形)のような過去問から、のぞいてみてください。

勉強法として:「小さく分けて数える」

ミルザハニの発見の鍵は、複雑なものを、単純なパーツに分けて数えることでした。受験の整数問題・場合の数・図形の問題でも、「場合分け」「分割」「漸化式」が、強力な武器になります。勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も読んでください。

ミルザハニがその後の数学にあたえた影響

  • 双曲幾何・タイヒミュラー理論:曲面のモジュライ空間の研究が、新しい段階に入りました。体積の計算方法は、多くの研究者に使われています。
  • 数理物理学:2次元量子重力などと、曲面の幾何学とのつながりが、いっそう明らかになりました。
  • 力学系・エルゴード理論:エスキンらとの共同研究は、モジュライ空間上の力学系研究の基本の定理になり、多くの後続研究が生まれました。
  • サーストンの幾何学の発展:サーストンが考えた曲面の幾何学に、新しい光をあてました。サーストンの幾何化予想は、のちにポアンカレ予想の証明(ペレルマン)へつながった、現代幾何学の大きな流れです。
  • 女性数学者への励まし:女性で初めてのフィールズ賞は、世界中の若い学生・研究者の励みになりました。

ペレルマンの業績がポアンカレ予想を解決したのは、サーストンが築いた幾何学の道筋の上でした。ミルザハニの研究も、同じ「曲面と空間の形を調べる」大きな流れの中に位置づけられます。さらに、リーマンのリーマン面の研究は、およそ160年のときをへて、ミルザハニによって新しい形で花開いたといえるでしょう。

数学の世界でも、これまで女性の研究者は少ない状況が続いてきました。だからこそ、ミルザハニの受賞は多くの人に勇気をあたえました。数学は、性別や国に関係なく、考える力のある人に開かれた学問です。この記事を読んでいるあなたも、気軽に数学の世界に踏み出してみてください。

ミルザハニに挑戦!練習問題

やさしい

  1. 穴が3個ある曲面(種数 g=3)で、2−2g2-2g の値を求めなさい。
    答えと解説を見る2−2×3=2-2\times3=−4。(穴0個なら2、1個なら0、2個なら−2、3個なら−4)
  2. 穴が1個ある多面体(ドーナツ形)で、V−E+F=0V-E+F=0 が成り立ちます。頂点が12個、辺が24本のとき、面は何枚ですか。
    答えと解説を見る12−24+F=012-24+F=0 より F=F=12。

ふつう

  1. 双曲面上の三角形では、面積が π−(α+β+γ)\pi-(\alpha+\beta+\gamma) になります(曲率が−1のとき、角はラジアン)。角が30°、40°、50°の三角形の面積を求めなさい。
    答えと解説を見る角の和は120°=2π3\dfrac{2\pi}{3}。面積は π−2π3=\pi-\dfrac{2\pi}{3}=π3\dfrac{\pi}{3}(約1.05)。ふつうの平面なら角の和は180°で、面積の式は成り立ちません。
  2. 穴が2個の曲面(g=2)で、長さ LL 以下の単純な閉じた測地線の個数が L6g−6L^{6g-6} に比例するとします。LL を2倍にすると、個数はおよそ何倍になりますか。
    答えと解説を見る6g−6=6×2−6=66g-6=6\times2-6=6。LL が2倍なら 26=2^6=64倍。

むずかしい

  1. 穴が3個の曲面(g=3)を、パンツ(球面から3つの円盤を取りのぞいた形)に切り分けます。パンツは何枚できますか。また、切る輪は何本ですか。(パンツ1枚の 2−2g2-2g に当たる値は−1とします)
    答えと解説を見る曲面全体の値は 2−2×3=−42-2\times3=-4。パンツ1枚が−1なので4枚。パンツ4枚のふち(輪)は全部で12本分で、切った輪は2枚のパンツに共有されるので、輪は 12÷2=12\div2=6本。(2g−2=42g-2=4 枚、3g−3=63g-3=6 本)
  2. すべての閉じた測地線の個数が、長さ LL に対して eLL\dfrac{e^L}{L} にほぼ等しいとします。L=10L=10 から L=20L=20 にしたとき、個数はおよそ何倍になりますか。(e10≈22026e^{10}\approx22026)
    答えと解説を見るe20/20e10/10=e102≈220262≈\dfrac{e^{20}/20}{e^{10}/10}=\dfrac{e^{10}}{2}\approx\dfrac{22026}{2}\approx約11000倍。単純なもの(L6L^6 なら 26=642^6=64 倍)と比べて、指数的な増え方がいかに急かが分かります。

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よくある質問

ミルザハニは何をした人ですか?

ミルザハニは、イランに生まれアメリカで活躍した数学者です。穴のある曲面の幾何学を研究し、双曲面上の閉じた測地線の個数の増え方や、曲面の形を集めたモジュライ空間の体積を調べました。2014年に女性で初めてフィールズ賞を受けています。

ミルザハニはいつフィールズ賞を受賞しましたか?

2014年8月13日、韓国のソウルで開かれた国際数学者会議で受賞しました。女性として初めて、またイラン出身者としても初めてのフィールズ賞でした。授賞の理由は、リーマン面とそのモジュライ空間の力学と幾何学への貢献です。

フィールズ賞とは何ですか?

数学のノーベル賞ともいわれる賞で、4年に一度の国際数学者会議で贈られます。受賞する年の1月1日に40歳未満であることが条件です。女性の受賞者は、2014年のミルザハニと2022年のヴィアゾフスカの2人です。

測地線とは何ですか?

曲がった面の上での「まっすぐな線」のことで、2点を結ぶいちばんの近道にあたる線です。地球の上では、飛行機が飛ぶ大圏航路が測地線の例です。ミルザハニは、穴のある双曲面上の閉じた測地線の個数を調べました。

ミルザハニの主な業績は何ですか?

双曲面上で、長さ L 以下の単純な閉じた測地線の個数が L の6g−6乗に比例して増えること(g は穴の数)を示しました。また、モジュライ空間の体積を計算する漸化式を見つけ、エスキンらと軌道閉包の定理も証明しました。

モジュライ空間とは何ですか?

曲面の「形のちがい」をすべて集めてできる空間のことです。穴が g 個の曲面の形は、実数で 6g−6 個の数で決まるため、モジュライ空間の次元も 6g−6 になります。ミルザハニはこの空間の体積を計算しました。

ミルザハニは何歳で亡くなりましたか?

1977年5月12日に生まれ、2017年7月にアメリカで亡くなりました。40歳でした。病気のためと報じられています。誕生日の5月12日は「数学における女性の国際デー」として記念されています。

ミルザハニは国際数学オリンピックに出ましたか?

はい。高校生のとき、イランの代表として1994年と1995年の国際数学オリンピックに出場し、2年連続で金メダルをとったことが知られています。1995年の大会では満点だったと伝えられます。

ミルザハニの仕事は受験に関係がありますか?

研究自体は大学院レベルで入試には出ませんが、穴の数とオイラーの多面体定理、指数関数とべき乗の増え方のちがい、図形をパーツに分けて数える考え方は、中学・高校・大学受験の勉強にもつながります。

あわせて読みたい

出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Maryam Mirzakhani」(セント・アンドルーズ大学)
  • M. Mirzakhani, “Growth of the number of simple closed geodesics on hyperbolic surfaces”, Annals of Mathematics 168(2008年)
  • M. Mirzakhani, “Simple geodesics and Weil–Petersson volumes of moduli spaces of bordered Riemann surfaces”, Inventiones Mathematicae 167(2007年)
  • 国際数学連合(IMU)「Fields Medal 2014」

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦