プトレマイオス(トレミー)は何をした人?業績・生涯・名言|トレミーの定理・弦の表・天動説

プトレマイオス(トレミー)は何をした人?業績・生涯・名言|トレミーの定理・弦の表・天動説

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プトレマイオスPtolemy

ひとことで言うと

『アルマゲスト』で天動説を数学で完成させ、三角比のもとになる弦の表と、円に内接する四角形のトレミーの定理で知られる古代ギリシャ・ローマ時代の天文学者・数学者。

名前クラウディオス・プトレマイオス(Claudius Ptolemaeus)。英語読みはトレミー(Ptolemy)
生没年85年ごろ〜165年ごろ(MacTutor)。日本語版ウィキペディアでは83年ごろ〜168年ごろ。資料により異なり、はっきりしない
国古代ローマ帝国のエジプト(アレクサンドリアで活やく)
分野天文学・幾何学・三角法・地理学・光学
主な業績『アルマゲスト』(天動説の集大成)、弦の表、トレミーの定理、『ゲオグラフィア』(緯度・経度による地図)、『光学』
名前がつくものトレミーの定理・トレミーの不等式・プトレマイオスの宇宙・月のクレーター「プトレマイオス」
よばれ方神のごときプトレマイオス(古代の占星術師ヘファイスティオンが使った呼び名)

このページのポイント

  • 円に内接する四角形ABCDで、AC×BD=AB×CD+AD×BC。これがトレミーの定理で、三平方の定理や正五角形の黄金比まで一気に出せる
  • 『アルマゲスト』の弦の表は、サイン(三角比)の表のご先祖さま。トレミーの定理が加法定理のもとになった
  • 導円・周転円・エカントで天動説を数学で完成させ、約1400年のあいだ天文学の標準となった

プトレマイオス(トレミー)は何をした人?(業績をひとことで)

クラウディオス・プトレマイオス(英語読みでトレミー、2世紀ごろ)は、古代ローマ帝国の時代にエジプトのアレクサンドリアで活やくした数学者・天文学者・地理学者です。大著『アルマゲスト』で、地球が宇宙の中心にある天動説を数学で完成させ、その理論は約1400年のあいだ天文学の標準になりました。また、『アルマゲスト』の中で弦の表(三角比の表のもと)を作り、そのために使った「円に内接する四角形」の定理が、のちにトレミーの定理とよばれるようになりました。

受験生にとってのトレミーは、まず「トレミーの定理」の人です。四角形が円に入っているとき、対角線の積は、向かい合う辺の積の和に等しい――この美しい関係を、数学Aの図形の応用問題や、大学入試の図形問題で見かけます。くわしい使い方はトレミーの定理の証明と使い方(例題つき)で、前提になる円に内接する四角形の性質や円に内接する四角形とはもあわせて読むと理解が深まります。

うかるくん

うかるくん

トレミーって、星の先生ですか?それとも数学の先生ですか?

合格先生

合格先生

どっちもだよ。昔は星の動きを予想するために、角度や長さを計算する数学が必要だった。だからトレミーは星の動きを計算するために、三角比のもとになる表と定理を作ったんだ。数学と天文学は、そのころ1つの学問のようなものだったんだね。

空を観測するプトレマイオスを描いた中世の写本の挿絵
空を見あげるプトレマイオス(1468年ごろの写本の挿絵。実際の顔は伝わっていないので、のちの時代の想像図です)画像:Conrad Heingartner(1468年ごろ、フランス国立図書館 Latin 7432)/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

プトレマイオスの生涯と年表

ほとんど分かっていない生涯

プトレマイオスは、くわしい生涯がほとんど伝わっていない人です。分かっているのは、アレクサンドリア(エジプトの大都市で、大図書館のある学問の中心)で、西暦127年3月26日から141年2月2日までの天体観測を記録していることです。この観測記録が、彼が活やくした時期を知る確かな手がかりになっています。生まれた年・亡くなった年は資料によって少しちがい、数学史の資料 MacTutor では「85年ごろ〜165年ごろ」、日本語版ウィキペディアでは「83年ごろ〜168年ごろ」とされ、はっきりしません。

生まれた場所も確かではありません。中世の記録では上エジプトのプトレマイスとされていますが、確かめられていません。「プトレマイオス」という名前はエジプトを治めたギリシャ系の王家(プトレマイオス朝)と同じですが、王家の一族とは関係がないと考えられています。名前の「クラウディオス」はローマ市民としての名前で、ローマ皇帝の家と関係のある人に与えられた名前ともいわれますが、これも確かな話ではありません。

『アルマゲスト』と地理学・光学

プトレマイオスの主な著作は、次の5つです。

  • 『アルマゲスト』(全13巻):天文学の大著。もとのギリシャ語の題は「数学的集大成」で、のちに「最も偉大なもの」とよばれ、アラビア語の「アル・マジスティ」がなまって『アルマゲスト』になりました。
  • 『ゲオグラフィア(地理学)』(全8巻):世界の都市や地名を緯度・経度で示し、地図の描き方を説明した本。
  • 『光学』(全5巻):光の反射や屈折を、実験をまじえて調べた本。
  • 『ハンディ・テーブルズ(便利な表)』:『アルマゲスト』の数表を、計算に使いやすい形にまとめたもの。
  • 『テトラビブロス』:占星術の古典。当時は天文学と占星術が近い関係にあり、プトレマイオスもその両方を書きました。

1400年つづいた天動説

『アルマゲスト』は、イスラム世界でアラビア語に訳されて研究され、のちにヨーロッパでもラテン語に訳されて、約1400年のあいだ天文学の教科書として使われました。1543年にコペルニクスが太陽中心の説(地動説)を発表するまで、天体の位置を予想する標準の計算方法だったのです。

年できごと
前200年ごろアポロニウスが円錐曲線を研究し、周転円の考えが広まる(のちのトレミーの理論の土台)
前2世紀ヒッパルコスが星の位置を観測し、弦の表のもとを作る(トレミーが引きついだ)
85年ごろプトレマイオスが生まれたとされる(MacTutor。資料により83年ごろとも。はっきりしない)
127年3月26日アレクサンドリアでの天体観測の記録がはじまる(確かな年代)
2世紀なかごろ『アルマゲスト』(全13巻)を書く。弦の表とトレミーの定理がのる
2世紀なかごろ『ゲオグラフィア』『光学』『ハンディ・テーブルズ』などを書く
141年2月2日最後の観測の記録(確かな年代)
165年ごろ亡くなったとされる(MacTutor。資料により168年ごろとも。はっきりしない)
9世紀ごろアラビア語に訳される(のちに『アルマゲスト』とよばれる)
1543年コペルニクスが地動説を発表。約1400年つづいた天動説が見なおされはじめる

プトレマイオスの主な業績をやさしく解説

業績1 トレミーの定理(円に内接する四角形)

円の上に4つの点 A・B・C・D を、この順にとって四角形をつくります。このとき、対角線 AC と BD の積は、向かい合う辺の積の和に等しくなります。これがトレミーの定理です。

AC×BD=AB×CD+AD×BCAC\times BD=AB\times CD+AD\times BC
トレミーの定理ABCDAC×BD = AB×CD + AD×BC
円に内接する四角形ABCD。赤い対角線の積は、向かい合う辺の積(AB×CD と AD×BC)の和に等しい

たとえば長方形は、いつでも円に内接します。縦3・横4の長方形なら、対角線は2本とも同じ長さ dd なので、d×d=3×3+4×4d\times d=3\times 3+4\times 4 から d2=25d^2=25、d=5d=5 と出ます。ふつうの三平方の定理(三平方の定理の証明と使い方)そのものです。つまりトレミーの定理は、三平方の定理をさらに広げた定理だと言えます。

証明のあらすじは次のとおりです。対角線 AC 上に点 E を、角 ABE と角 DBC が等しくなるようにとります。すると三角形 ABE と DBC が相似になり、そこから AE×BD=AB×CD が出ます。さらに三角形 ABD と EBC も相似になって、EC×BD=AD×BC が出ます。この2つを足すと、AC×BD=AB×CD+AD×BC になります。「円周角が等しい」ことから相似をつくるのが、証明のかぎです(円周角の定理の使い方)。

なお、トレミーが『アルマゲスト』で示したのは、定理そのものと弦の長さの計算への使い方です。のちの時代に、ヨーロッパの数学者が「トレミーの定理」とよぶようになりました。逆も成り立ち、「AC×BD=AB×CD+AD×BC が成り立つなら、四角形は円に内接する」こともいえます(トレミーの定理の逆)。

業績2 弦の表(三角比のはじまり)

トレミーが天体の位置を計算するために作ったのが、弦の表です。半径を60とする円を考え、中心角 θ に対する弦(円周上の2点をむすぶ線分)の長さ Crd(θ) を、0.5度きざみで表にしました。弦の長さは、今の言葉でいえば次の式になります。

Crd(θ)=120sin⁡θ2\mathrm{Crd}(\theta)=120\sin\frac{\theta}{2}
弦の表(これが三角法のはじまり)θ弦 Crd(θ)60角θ → 弦30° → 31.160° → 60.090° → 84.9120° → 103.9180° → 120.0半径=60、直径=120と決めた。Crd(θ)=120 sin(θ/2)
半径60の円で、中心角θの弦の長さを表にした弦の表。60度の弦は半径と同じ60、180度の弦は直径の120

つまりトレミーの弦の表は、サイン(三角比とは)の表のご先祖さまです。ただし、当時はサインではなく「弦」の長さを使っていました。のちにインドの数学者が半分の弦を使うようになり、それがアラビア語・ラテン語を通って「sine(サイン)」という言葉になったといわれます。三角比のくわしい扱いは三角比・三角関数の基本で確かめられます。

この表を作るのに、トレミーの定理がはたらきます。円に内接する四角形に定理を使うと、弦の「たし算」「ひき算」の公式がえられます。これは、今の加法定理(三角関数の加法定理の証明と例題)と同じ内容です。弦の長さが分かる角(たとえば60度・72度・36度・90度)から、そのたし算・ひき算・半分で、ほかの角の弦の長さを次々に計算していったのです。

業績3 天動説の完成(導円・周転円・エカント)

夜空の星は、毎晩ほぼ同じ形のまま動きますが、惑星(火星・木星・金星など)は星座の中を行ったり来たり、ときには逆もどりするように見えます。この複雑な動きを、円運動だけで説明するのが、古代ギリシャ以来の目標でした。プトレマイオスはそれを次のような仕組みで完成させます。

  • 導円:地球のまわりの大きな円。ただし地球は中心から少しずれた位置にあります。
  • 周転円:導円の上を動く点を中心にした、小さな円。惑星はこの小さな円の上を回ります。
  • エカント:導円の中心をはさんで、地球の反対側にある点。ここから見ると、周転円の中心が同じ速さで回っているように見えるとしました。
プトレマイオスの宇宙(天動説)地球エカント中心惑星周転円導円円の上の円で、行ったり来たりする惑星の動きを説明した
地球・導円・周転円・エカント。惑星は周転円の上を回り、周転円の中心は導円の上を動く

円の上の円という考え方は、アポロニウス(アポロニウスの円錐曲線と円の業績)やヒッパルコスから受けついだものです。プトレマイオスは、それを全部の天体に使える完全な計算の道具に仕上げました。この方法で日食・月食や惑星の位置を予測でき、実際の観測と、かなりよく合ったのです。

いまの私たちは、地球が太陽のまわりを回っていることを知っています。それでも天動説の計算は、「観測データに数学をあてはめて予測する」という科学の方法の見本として、今もたいへん大事に学ばれています。ふつうの人の見た目で星を調べれば、「地球が止まっていて星が動く」と見えるのは自然です。それをきちんと数字で説明しきったことが、すごいのです。

業績4 円周率と、星のカタログ

『アルマゲスト』では、円周率を3と17/120(377/120=約3.1417)としています。これは、半径60の円の周の長さを、六十進法(60で位が上がる数え方)で「3;8,30」と表したものです。ふつうの3.14と比べると、小数第3位までは合っています。この値は、アルキメデスの円周率の計算の求めた範囲(3と10/71より大きく、3と1/7より小さい)の中に入っています。

また『アルマゲスト』の7・8巻には、1000個をこえる星の位置が表になっています。星座の名前、星の明るさのランク、位置が書かれた、いわば最初の本格的な星のカタログのひとつです。このカタログのかなりの部分は、先輩のヒッパルコスの観測にもとづくと考えられています。プトレマイオスの星の表がヒッパルコスのデータを使ったものか、自分で観測したものかは、学者のあいだでも意見が分かれていて、今でも研究が続いています。

業績5 地理学――緯度と経度で世界を表す

『ゲオグラフィア』は、地球が丸いことを前提に、緯度と経度で場所の位置を表し、球面の地図を平面に描く方法を考えた本です。数千の地名の座標が書かれています。ただし、これらの座標は、旅人の話や道のりの記録から計算したものが多く、実際の位置とはかなりずれていました。とくにローマ帝国の外の地域は不正確でした。それでも、地図を「数」で表すという考え方は、のちの世界地図づくりに大きな影響をあたえました。大航海時代のコロンブスたちも、プトレマイオスの地図を参考にしたといわれます。

プトレマイオス(トレミー)の名前がつく公式・定理・用語

  • トレミーの定理:円に内接する四角形で、対角線の積=向かい合う辺の積の和。→ トレミーの定理の証明と使い方
  • トレミーの定理の逆:上の式が成り立つなら、その四角形は円に内接する。
  • トレミーの不等式:円に内接していない一般の四角形では、AC×BD ≦ AB×CD+AD×BC となり、等号が成り立つのは円に内接するときだけ。
  • プトレマイオスの宇宙(プトレマイオス体系):天動説にもとづく、導円・周転円・エカントの宇宙モデル。
  • 『アルマゲスト』・『ゲオグラフィア』:天文学と地理学の古典。
  • 弦の表:三角比の表のもと。→ 三角比・三角関数の基本

トレミーの定理と一緒に覚えたいのが、円に内接する四角形の性質です。向かい合う角の和が180度になる性質(円に内接する四角形の性質)や、円周角の定理の逆(4点が同一円周上にある条件)も、あわせて使う場面が多いです。

指し棒で説明する合格先生

合格先生

図形の問題で「円に内接する四角形」が出たら、トレミーの定理・向かい合う角の和が180度・方べきの定理の3つを思い出そう。使う道具をすぐ取り出せると、解く時間がぐっと縮むよ。

プトレマイオス(トレミー)の逸話と名言

「神のごときプトレマイオス」と、うたがわれた観測データ

プトレマイオスの著作は、中世からルネサンスの時代にかけて絶大な権威を持ち、古代の占星術師ヘファイスティオンが「神のごときプトレマイオス」とよんだことが知られ、尊敬は信仰に近いほどだったといわれます。しかし、近代の天文学者の中には、プトレマイオスを疑う人も出てきました。ティコ・ブラーエが星のカタログのかたよった誤差を指摘し、デランブルが強く批判したとされます。20世紀にはロバート・ニュートンが『クラウディオス・プトレマイオスの犯罪』(1977年)で、「観測の結果を自分で測ったように見せかけたのではないか」とまで主張しました。この主張には反対の意見も多く出ています。のちの研究者の中には、反対に、プトレマイオスは自分でも観測したのだと主張する人もいて、この論争は決着していないとされます。

数学に「王道なし」は、プトレマイオスの話?

「幾何学に王道なし」(王様でも特別な近道はない)という言葉は、ふつうユークリッドの『原論』と業績の話として知られます。ところが、ほぼ同じ話がプトレマイオスと一人の王のやりとりとして伝えられることもあります。「プトレマイオス」という名の王が(プトレマイオス朝の王)、ユークリッドに「もっと近道はないのか」と尋ねた、という形で語られます。この王と、天文学者のプトレマイオスは別人です。ふたりが混ざって伝わっているとされますが、本当にあった話かどうかは確かめられていません。

なんと、私は、死すべき者でありながら、星々の通りみちを追いかけているときには、もう地上にはいない。ゼウスのそばにいて、神々の食べものであるアンブロシアをおなかいっぱいに味わっているのだ。

プトレマイオスの言葉として伝えられるもの(ギリシャ詞華集に収められた詩。本人の作かどうかは確かめられていません)

この詩は、古代ギリシャ・ローマの詩を集めた『ギリシャ詞華集』に、プトレマイオスの作として載っていると伝えられています。夜空を観測する喜びが、そのまま伝わってきます。ただし、本当にプトレマイオス本人が作ったのか、のちの人が作ったのかははっきりしていません。

数学は星を読むための道具だった

プトレマイオスにとって、数学は星のうごきを読むための道具でした。『アルマゲスト』の最初のほうで、数学(幾何学・三角法)を長い時間をかけて説明しているのは、その後の天文学の計算がこの道具で成り立っているからです。現代の私たちが、「三角比や図形の定理が何の役に立つの?」と思ったときに、プトレマイオスの仕事は、たいへん分かりやすい答えになります。

サクラちゃん

サクラちゃん

天動説って、まちがっていたんですよね?それなのに、なんで今でも勉強するんですか?

合格先生

合格先生

結論がまちがっていても、方法には価値があるからだよ。観測を集めて、数学でモデルを作り、予測して、ずれたら直す。この流れは今の科学と同じなんだ。それに、トレミーの定理や弦の表は天動説とは関係なく、今も数学で使えるしね。

受験・勉強とプトレマイオス(トレミー)のつながり

中学受験:円と図形の基礎

中学受験では、トレミーの定理そのものは出ません。ただ、長方形の対角線や、円の中に入った図形の性質を調べる問題は、トレミーの定理の特別な場合です。三平方の定理や、円の面積・円周(円の面積と円周の長さの公式)をしっかり使えるようにしておきましょう。

高校受験:円周角と相似

高校受験では、円周角の定理(円周角とは)を使った角度の問題や、円の中の三角形の相似の問題が出ます。トレミーの定理の証明に出てきた「円周角が等しいから相似」という考え方は、そのまま高校入試の証明問題にも使えます。円と相似の問題の解き方も練習しておくとよいでしょう。

大学受験:トレミーの定理が使える場面

大学受験では、数学Aの「図形の性質」で、円に内接する四角形・方べきの定理(方べきの定理)とともに登場します。次のような場面で、トレミーの定理がスピードの切り札になります。

  • 円に内接する四角形の対角線の長さや、辺の長さを求める問題(余弦定理より早く解けることがあります)。
  • 正五角形・正六角形・正八角形などの対角線の長さを求める問題。特に正五角形では、対角線と辺の比が黄金比(黄金比と白銀比)になることが、トレミーの定理で一気に出ます。
  • 正三角形の外接円の上の点Pについて、PA=PB+PCを示す問題。
  • 三角関数の加法定理を、図で証明する問題。
正五角形と黄金比ABCDE辺=1対角線=dd×d=d×1+1×1 → d=(1+√5)/2 ≒ 1.618
正五角形の辺を1、対角線をdとし、四角形ABCDにトレミーの定理を使う。d×d=d×1+1×1から、dは黄金比になる

正五角形の例を見てみましょう。辺の長さを1、対角線の長さを dd とします。四角形 ABCD(正五角形の4つの頂点)に、トレミーの定理を使います。対角線は AC と BD で、どちらも長さ dd。向かい合う辺の組は、AB と CD(どちらも1)、AD(これは対角線で dd)と BC(1)です。だから

d×d=1×1+d×1⟹d2−d−1=0⟹d=1+52d\times d=1\times 1+d\times 1\quad\Longrightarrow\quad d^2-d-1=0\quad\Longrightarrow\quad d=\frac{1+\sqrt5}{2}

となり、黄金比があっというまに出ます。二次方程式の解の公式を使う練習にもなります。

正三角形の外接円の上の点PABCPPA = PB + PC
正三角形ABCの外接円の弧BC上の点P。トレミーの定理から PA×BC=PB×CA+PC×AB となり、辺がすべて等しいので PA=PB+PC

もう1つの代表例は、正三角形の外接円の上の点です。弧 BC 上に点 P をとると、四角形 ABPC は円に内接します。トレミーの定理で PA×BC=PB×CA+PC×AB。正三角形なので BC=CA=AB だから、PA=PB+PC。長さを1つだけ測れば残りが出る、うれしい関係です。図形の問題で「円に内接する」という言葉を見たら、トレミーの定理を使えないか一度考えるくせをつけましょう。

京大・東大などの難関大での出題

難関大学の図形問題では、トレミーの定理が答案に書かれても、そのまま使ってよいかが気になるところです。教科書に載っていない定理を使うときは、定理の名前と、使う理由を答案にはっきり書くのが基本です。くわしくは各大学の採点方針によりますが、心配なときは、相似や余弦定理で書きなおす方法も練習しておくと安心です。京大の出題傾向は京大理系数学の出題分析(図形問題の出方)や京大文系数学の出題分析で確かめられます。

勉強法として:道具の名前を覚え、使う場面で取り出す

トレミーの定理のように、「名前を知っていると、問題を解く速さがちがう」道具が数学にはたくさんあります。一方、定理を知らなくても、相似・円周角・余弦定理で解ける問題がほとんどです。勉強の順番としては、①教科書の基本を確実に、②便利な定理をいくつか、③名前がつく定理のいわれ(歴史)も、というように進めると、記憶に残りやすくなります。勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)にまとめています。ギリシャ文字(θ・π)の読み方はギリシャ文字の読み方一覧(θ・Σ・π・λ)で確かめられます。

プトレマイオス(トレミー)がその後の数学にあたえた影響

  • 三角法:弦の表は、イスラム世界のアラビアの数学者たちにうけつがれ、サイン・コサインの表に発展しました。のちのオイラーの公式と三角関数につながる土台です。
  • 天文学:天動説は1400年つづき、のちのコペルニクス・ケプラー(ケプラーの法則と業績)の研究の出発点となりました。ケプラーは、円ではなく楕円で惑星の動きを説明し、プトレマイオスの周転円を使わなくてもよいことを示しました。
  • 地図づくり:緯度・経度で場所を表す考え方は、現代の地図やGPSの基本です。
  • 図形の定理:トレミーの定理は、現在も高校数学・大学入試の図形問題の定番です。
  • アラビアの数学・天文学:『アルマゲスト』を研究して計算を改良する流れから、アルフワーリズミー(フワーリズミーと代数学の誕生)らの仕事も生まれました。

月には、プトレマイオスの名前をつけたクレーター「プトレマイオス」があります。月面のほぼ中央にある大きなクレーターで、望遠鏡でも見つけやすい場所にあります。数学・天文学に残した足あとが、月の地図にも刻まれているのです。

プトレマイオス(トレミー)に挑戦!練習問題

やさしい

  1. 縦3、横4の長方形ABCDは円に内接します。トレミーの定理を使って、対角線ACの長さを求めなさい。
    答えと解説を見る長方形の対角線は2本とも同じ長さなので AC=BD=d とします。トレミーの定理より AC×BD=AB×CD+AD×BC。d×d=3×3+4×4=25。したがって d=5。
  2. 1辺の長さが1の正方形が円に内接しています。トレミーの定理を使って、対角線の長さを求めなさい。
    答えと解説を見る対角線を d とします。d×d=1×1+1×1=2。したがって d=√2。

ふつう

  1. 円に内接する等脚台形ABCDがあります。上底 AD=6、下底 BC=14、脚 AB=CD=5 です。対角線 AC の長さを求めなさい。
    答えと解説を見る等脚台形なので AC=BD=d。トレミーの定理より d×d=AB×CD+AD×BC=5×5+6×14=25+84=109。したがって d=√109。(高さ3の直角三角形で確かめると、横の長さが 4+6=10 なので、10²+3²=109 で一致します)
  2. 正三角形ABCの外接円の弧BC上(Aをふくまない側)に点Pがあり、PB=3、PC=5 です。PAの長さを求めなさい。
    答えと解説を見る四角形ABPCは円に内接する四角形です。トレミーの定理より PA×BC=PB×CA+PC×AB。正三角形なので BC=CA=AB。両辺を BC でわって PA=PB+PC=3+5=8。

むずかしい

  1. 1辺の長さが1の正五角形の対角線の長さ d を、トレミーの定理を使って求めなさい。
    答えと解説を見る正五角形の4頂点 ABCD に注目します。対角線 AC・BD は d。辺 AB・BC・CD は1、AD は対角線で d。AC×BD=AB×CD+AD×BC より d×d=1×1+d×1。d²−d−1=0 を解いて d=(1+√5)/2(d>0)。答えは(1+√5)/2(約1.618。黄金比)。
  2. 円に内接する四角形ABCDで、AB=1、BC=2、CD=3、DA=4 です。対角線の積 AC×BD を求めなさい。
    答えと解説を見るトレミーの定理より AC×BD=AB×CD+BC×DA=1×3+2×4=3+8=11。(さらに、AC:BD=(AB×AD+CB×CD):(BA×BC+DA×DC)=10:14=5:7 となることも知られています)

プトレマイオス(トレミー)と関係する数学者

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古代の数学者

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よくある質問

プトレマイオス(トレミー)は何をした人ですか?

プトレマイオスは、2世紀ごろにエジプトのアレクサンドリアで活やくした古代ローマ帝国の天文学者・数学者です。『アルマゲスト』で天動説を数学で完成させ、三角比のもとになる弦の表と、円に内接する四角形のトレミーの定理を示したことで知られます。

トレミーの定理とは何ですか?

トレミーの定理は、円に内接する四角形ABCDで、対角線の積が向かい合う辺の積の和に等しいという定理です。式では AC×BD=AB×CD+AD×BC と書きます。長方形に使うと三平方の定理になります。

プトレマイオスとトレミーは同じ人ですか?

同じ人です。プトレマイオスはギリシャ語に近い読み方、トレミーは英語読み(Ptolemy)です。なお、エジプトを治めた王家の王たち(プトレマイオス朝の王)とは別の人物と考えられています。

プトレマイオスの生没年はいつですか?

はっきりしません。数学史の資料 MacTutor では85年ごろ〜165年ごろ、日本語版ウィキペディアでは83年ごろ〜168年ごろとされています。確かなのは、127年から141年にかけてアレクサンドリアで天体観測をしたという記録です。

『アルマゲスト』とはどんな本ですか?

『アルマゲスト』は、プトレマイオスが書いた全13巻の天文学の大著です。弦の表のような数学の基礎から、太陽・月・惑星の動きの計算、1000個をこえる星のカタログまでがのっています。約1400年のあいだ、天文学の標準の教科書でした。

天動説とは何ですか?なぜまちがいなのに有名ですか?

天動説は、地球が宇宙の中心にあり、太陽や星が地球のまわりを回るという考え方です。今は地動説が正しいと分かっていますが、プトレマイオスは導円・周転円で惑星の動きを数学で説明し、観測とよく合う予測ができたため、科学の方法として評価されています。

弦の表と三角比はどんな関係がありますか?

弦の表は、半径60の円で中心角に対する弦の長さを表にしたものです。弦の長さは120×sin(θ/2) にあたり、サインの表と同じ内容です。のちにインドやアラビアの数学者が半分の弦を使うようになり、サインとして発展しました。

トレミーの定理は受験に出ますか?

大学入試の図形問題で、円に内接する四角形の対角線や正五角形の対角線、正三角形の外接円の上の点の問題に使われます。教科書の必修ではありませんが、知っていると余弦定理より早く解けることがあります。

プトレマイオスの名言はありますか?

「星々の通りみちを追いかけているときは、ゼウスのそばで神々の食べものを味わっている」という内容の詩がプトレマイオスの作として伝えられています。ギリシャ詞華集にのる詩ですが、本人の作かどうかは確かめられていません。

プトレマイオスはどんな地図を作りましたか?

『ゲオグラフィア』で、世界の数千の地名を緯度と経度で表し、球面の地図を平面に描く方法を説明しました。座標は実際の位置とずれた部分が多いものの、場所を数で表す考えは、のちの地図づくりに大きな影響をあたえました。

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出典・参考

  • MacTutor History of Mathematics「Claudius Ptolemy」(セント・アンドルーズ大学)
  • 日本語版ウィキペディア「クラウディオス・プトレマイオス」
  • プトレマイオス『アルマゲスト』(全13巻)
  • 図版:Conrad Heingartner、写本挿絵(1468年ごろ、フランス国立図書館 Latin 7432)、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦