算額とは?江戸時代の数学の絵馬をわかりやすく|和算・関孝和・神社に奉納された問題

この記事の結論

  • 算額(さんがく)は、数学(和算)の問題や解き方を書いて、神社やお寺に奉納した絵馬(額)です。
  • 江戸時代の寛文年間(1661〜1673年)ごろから広まったとされ、今も全国に約1,000面が残っています(国立国会図書館の解説)。
  • 問題が解けた感謝、腕前の披露、「この問題を解けるか」という挑戦など、目的はさまざまでした。円や三角形がぴったり接する図形の問題が多く、今の中学・高校の数学で解けるものもあります。

算額とは?ひとことで言うと「数学の絵馬」

神社に行くと、願いごとを書いた絵馬がたくさん掛かっています。江戸時代には、その絵馬に数学の問題を書いて奉納する人たちがいました。これが算額(さんがく)です。「算」は計算・数学、「額」は神社やお寺に掲げる板のことです。

算額には、円や三角形を組み合わせた美しい図と、「この円の直径はいくつか」といった問い、その答え、そして解き方が書かれています。江戸時代の日本で独自に発展した数学を和算(わさん)といい、算額は和算を学ぶ人たちの「発表の場」でもありました。

項目内容
読み方算額(さんがく)
ひとことで数学の問題・答え・解き方を書いて、神社やお寺に奉納した絵馬(額)
始まり江戸時代の寛文年間(1661〜1673年)ごろから、江戸の神社に掲げられるようになったとされる
記録に残る最も古い算額村瀬義益『算法勿憚改』(1673年)に記録された、目黒不動の算額
今残る最も古い算額星宮神社(栃木県佐野市)の天和3年(1683年)の算額。1975年の火事で読めなくなり、今は複製が掛けられている
いくつ残っている?全国に約1,000面(うち江戸時代のものは約400面)。記録だけに残るものも1,749面ある(国立国会図書館)
多い県1997年の調べでは、福島県103面・岩手県93面・埼玉県91面(福島県田村市の文化財ページ)
問題の中身円・三角形・正方形などが接する図形の問題が多い
うかるくん

うかるくん

神社に数学の問題を? 合格祈願の絵馬なら書いたことがあるけど……。

合格先生

合格先生

そう、江戸時代の人は「問題が解けました、ありがとうございます」と神様に報告したり、「この問題、解けるものなら解いてみよ」と腕前を見せたりしたんだ。神社は人がたくさん集まるから、今でいうSNSに問題を投稿するような感じでもあったんだよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

江戸時代の数学の投稿サイト! ちょっと解いてみたくなります。

なぜ神社に数学の問題を奉納したの?

算額を奉納した理由は1つではありません。百科事典や辞典の説明をまとめると、次のようになります。

理由くわしく
① 感謝難しい問題が解けたことを神仏に感謝し、さらに学問が上達するよう願った(デジタル大辞泉)
② 腕前の披露解けた問題をみんなに見せて実力を示す。のちにはこれが中心になったともいわれる(マイペディア)
③ 問題の発表新しい問題を発表し、広く答えを求める手段だった(精選版日本国語大辞典)
④ 挑戦と訂正の場ほかの人の算額の問題に答えたり、まちがいを正したりする算額も奉納された(山川日本史小辞典)
⑤ さまざまな願い学問の願いに限らず、家内安全、塾(数学の塾)の繁栄などを願うものもあった(日本大百科全書)

おもしろいのは④です。ある人が算額で問題を出すと、別の人が「その答えはこうだ」という算額を同じ神社や別の神社に奉納する。こうして、神社の壁で数学のやりとりが行われていました。

江戸時代には、本の終わりに答えをつけない問題を出し、次の人が本で答えて、また新しい問題を出す「遺題継承(いだいけいしょう)」という習慣もありました。算額も同じように、問題を出し合い、解き合う文化の中で広まりました。

人差し指を立てて説明する合格先生

合格先生

「解けたらうれしい」「みんなに見せたい」「もっと上手になりたい」。江戸時代の人が数学を楽しんだ気持ちは、今の受験生と同じなんだ。

算額には何が書いてある?

算額のつくりは、だいたい決まっています。上には図が描かれ、その横に問(問題)・答(答え)・術(じゅつ=解き方の手順)が書かれます。最後に、奉納した人の名前と年月が入ります。先生の名前と弟子の名前が並ぶものもあります。

問(もん)図のような円の直径はいくつか 答(こたえ)直径〇寸 術(じゅつ)=解き方の手順 奉納した人の名前・年月 神社やお寺に納めた「数学の絵馬」
図1 算額のつくり(自作の図)。図・問・答・術・奉納者の名前と年月が書かれる

図には色がつけられ、円や三角形がぴったり接する美しい形がよく選ばれました。絵としても見ごたえがあるので、神社にお参りに来た数学を知らない人も足を止めたことでしょう。

伊佐爾波神社(愛媛県松山市)に奉納された明治時代の算額。円などの図と問題文が書かれている
伊佐爾波神社(愛媛県松山市)の算額(1873年)。出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)、もとの画像は松山市

この写真は、愛媛県松山市の伊佐爾波神社(いさにわじんじゃ)の算額です。この神社にはたくさんの算額が残っていて、松山市の文化財のページでも紹介されています。

算額と和算の歴史(年表)

算額が生まれるまでには、日本で数学がブームになるきっかけがありました。それが1627年の『塵劫記(じんこうき)』です。

年できごと
1627年(寛永4年)吉田光由(1598〜1672年)が『塵劫記』を出す。九九・そろばん・面積や体積・両替・利息など、暮らしの計算をやさしく教えた本で、大ベストセラーになった
1641年『塵劫記』の新しい版の巻末に、答えのない問題12問がつく。これが「遺題」の始まり
1653年榎並和澄『参両録』が遺題に答え、新しい問題を出す。遺題継承が始まる
1661〜1673年(寛文年間)このころから算額が江戸の神社に掲げられるようになったとされる
1673年村瀬義益『算法勿憚改』に、目黒不動の算額が記録される(記録に残る最古の算額)
1674年関孝和が『発微算法』を出す。沢口一之『古今算法記』(1671年)の遺題15問に答えた本
1683年(天和3年)星宮神社(栃木県佐野市)に算額が奉納される(今残る最古の算額)
1691年(元禄4年)京都・八坂神社に算額が奉納される。1993年に国の重要文化財に指定
1789年(寛政元年)算額の問題を集めた最初の本『神壁算法』が出る(藤田嘉言 編・藤田貞資 閲)
1807年(文化4年)続編の『続神壁算法』が出る
1822年相模国(神奈川県)の寒川神社に、6つの球の輪の問題の算額が奉納される
1850年全国を旅して算額を記録した遊歴算家・山口和が亡くなる
明治時代学校で西洋の数学(洋算)を教えるようになり、和算はしだいに表舞台から消えていく。それでも明治時代にも算額は奉納された

『塵劫記』で計算に親しんだ人たちが、もっと難しい問題に挑み、先生について学び、その成果を算額にして奉納する。こうして算額は、江戸時代の後半には全国に広がりました。武士だけでなく、町人や農民も算額を奉納したとされます。

算額の問題を解いてみよう(小学生〜高校生)

算額の問題には、今の算数・数学で解けるものがたくさんあります。算額によく出る「円が接する」形を、やさしい順に4つ解いてみましょう。

① 小学生:正方形の中の円

1辺10cmの正方形に、ぴったり入る円をかきます。円の面積と、四すみの部分の面積の合計を求めましょう(円周率は3.14)。

10cm 直径10cm 円の面積5×5×3.14=78.5cm² 四すみの合計100−78.5=21.5cm²
図2 正方形にぴったり入る円(自作の図)

円の直径は正方形の1辺と同じ10cmなので、半径は5cm。円の面積は 5×5×3.14=78.5cm²。正方形の面積は 10×10=100cm² なので、四すみの合計は 100−78.5=21.5cm² です。くわしくは円の面積と円周の公式で確かめられます。

② 中学生:直線に接する2つの円

算額で最もよく見かける形の1つが、1本の直線に接していて、おたがいにも接している大小2つの円です。半径を a、b とすると、2つの接点の間の長さはいくつでしょう。

ab a+b a−b x 接点の間=x x²+(a−b)²=(a+b)² → x=2√(ab)
図3 直線に接する2つの円。中心を結ぶと直角三角形ができる(自作の図)

2つの円の中心を結ぶ線の長さは a+b(円が接しているから)。高さの差は a−b。横の長さを x とすると、直角三角形ができるので、三平方の定理(ピタゴラスの定理)から

x²+(a−b)²=(a+b)² → x²=4ab → x=2√(ab)

たとえば半径9と4の円なら、x=2√36=12 です。この「2√(ab)」は、算額を解くときの基本の道具でした。円の外から引いた接線の意味と性質、接線の長さの公式とあわせて覚えておくと、高校入試の図形問題でも役に立ちます。

③ 中学生〜高校生:直角三角形にぴったり入る円

三角形の中にぴったり入る円(内接円)も、算額の定番です。辺が3・4・5の直角三角形に入る円の半径を求めましょう。

43 5 r 内接円の半径r=(a+b−c)÷2=(3+4−5)÷2=1
図4 3・4・5の直角三角形の内接円(自作の図)

円の中心から各辺へ垂直に線を引くと、接点で辺が分けられます。直角の頂点から接点までは、どちらも半径 r です。残りの部分の長さは「同じ点から引いた接線の長さは等しい」ことを使うと、斜辺について (3−r)+(4−r)=5 が成り立ちます。これを解くと r=1。一般に、直角をはさむ辺が a、b、斜辺が c なら、r=(a+b−c)÷2 です。外接円と内接円の公式もあわせて見ておきましょう。

④ 高校生:直線の上に並ぶ3つの円

②の形にもう1つ円を加えます。直線に接する2つの円のすき間に、直線と両方の円に接する小さな円を入れると、その半径はいくつでしょう。

半径9 半径36 半径? 1/√c=1/√a+1/√b 1/3+1/6=1/2 なので √c=2、c=4
図5 直線に接する3つの円(自作の図)

大きい2つの円(半径 a、b)と小さな円(半径 c)について、②の式を3回使います。大きい2つの接点の間は 2√(ab)。これが、小さな円をはさんだ2つの部分 2√(ac) と 2√(bc) の和になるので

2√(ab)=2√(ac)+2√(bc)

両辺を 2√(abc) でわると、1/√c=1/√a+1/√b というきれいな式になります。半径9と36なら、1/3+1/6=1/2 なので √c=2、c=4 です。同じような「円が接する」問題は、古代ギリシャのアポロニウスの接円問題や、4つの円の半径の関係を表すデカルトの円定理にもつながっています。

サクラちゃん

サクラちゃん

全部、三平方の定理と接線で解けました! 江戸時代の人も、こうやって考えたんですか?

合格先生

合格先生

和算家は記号の使い方こそ今とちがうけれど、直角三角形を見つけて長さの関係を式にする、という考え方は同じなんだ。だから算額は図形問題の最高の練習帳なんだよ。

『塵劫記』と、つるかめ算・百五減算

算額のブームの土台になった『塵劫記』には、暮らしの計算のほかに、ねずみ算や「ままこ立て」のような数学の遊びも入っていました。今の中学受験の「特殊算」につながる問題もあります。

百五減算(ひゃくごげんざん)

国立国会図書館の解説によると、『新編塵劫記』には「百五減」という問題があります。「ある数を3でわると2余り、5でわると1余り、7でわると2余る。その数は何か」というものです。

3・5・7をかけると105。答えを105より小さい数で探すので「百五減算」と呼ばれます。3でわると2余り、7でわると2余る数は、21でわると2余る数(2、23、44、65、86……)です。このうち5でわると1余るのは86。この考え方は、中国の『孫子算経』の問題にさかのぼる中国の剰余定理そのものです。関孝和の業績の中でも、この解き方は「翦管術(せんかんじゅつ)」として扱われました。13世紀の中国の秦九韶の大衍求一術も、同じ種類の問題を解く方法です。

70・21・15を使った解き方や、干支・暗号とのつながりは、百五減算とは?3・5・7の余りから数を当てる方法でくわしく紹介しています。

つるかめ算のもとは「キジとウサギ」

中学受験でおなじみのつるかめ算の解き方は、中国の古い本『孫子算経』の「雉兎同籠(ちとどうろう)」という問題がもとです。キジとウサギが同じかごに入っていて、頭が35、足が94。それぞれ何びきか、という問題です。日本ではこれが江戸時代に鶴と亀に置きかえられ、坂部広胖という和算家の本(1810年代)でその形になったとされます。

全部キジ(足2本)だとすると足は70本。実際は94本なので、24本たりません。キジをウサギ(足4本)に1羽かえるごとに足は2本ふえるので、ウサギは 24÷2=12ひき、キジは 35−12=23羽 です。旅人算や植木算と同じく、江戸時代から続く「考える算数」です。

算額にかかわった和算家たち

和算には、世界の数学と比べても見劣りしない業績を残した人たちがいます。合格大作戦の数学者データベースには、和算家のページもあります。

和算家生没年どんな人?
関孝和1642ごろ?〜1708「算聖」と呼ばれる和算の第一人者。文字を使って方程式を表す方法(傍書法)を工夫し、『発微算法』で遺題に答えた
建部賢弘1664〜1739関孝和の弟子。円周率の計算などで、関の数学を大きく発展させた
久留島義太?〜1757魔方陣や、のちの行列式に通じる考えを研究した
安島直円1732〜1798円の中に円を並べる問題や、積分にあたる計算を進めた
和田寧1787〜1840「円理表」と呼ばれる表で、曲線で囲まれた面積や長さを計算した
伊能忠敬1745〜181850歳から天文・暦学を学び、全国を歩いて測量し、正確な日本地図を作った
山口和(やまぐち かず)?〜1850全国を旅しながら和算を教えた「遊歴算家」。旅の日記に、各地で見た算額の問題を書き残した

山口和の『道中日記』には324題もの問題が書き留められていると、国立国会図書館は紹介しています。今は失われてしまった算額の問題も、こうした記録のおかげで分かるのです。

ひらめいたうかるくん

うかるくん

旅をしながら神社の算額を見て回るなんて、江戸時代の「数学の聖地めぐり」だ!

算額はどこにある?京都と全国

算額は今も全国の神社やお寺に残っています。いくつか有名なものを紹介します(見学できるかどうか、算額が掛けてある場所は、それぞれの神社・お寺で確かめてください)。

場所算額ポイント
星宮神社(栃木県佐野市)天和3年(1683年)今残るものとして最も古い。1975年の火事で読めなくなり、今は複製
八坂神社(京都市東山区)元禄4年(1691年)1993年に国の重要文化財に指定(国立国会図書館)
北野天満宮(京都市上京区)貞享3年(1686年)と紹介されている学問の神様・菅原道真をまつる。完全な形で残る古い算額として大学の講義資料で紹介されている
寒川神社(神奈川県寒川町)1822年(もとの額は失われ、記録をもとに復元)6つの球の輪の問題。西洋で知られるより100年以上早い
伊佐爾波神社(愛媛県松山市)明治時代の算額などたくさんの算額が残る。松山市の文化財ページで紹介

京都は和算がさかんな町の1つでした。八坂神社の算額は、伏見の御香宮神社に出された問題に答えたものともいわれ、算額どうしの「やりとり」を今に伝えています。京大数学の参考書ロードマップで京大の図形問題に挑む前に、京都の算額を見に行くのもおすすめです。

世界が驚いた算額:6つの球の輪

算額が世界で注目されるきっかけの1つが、6つの球の輪の問題です。大きな球の中に、2つの球と、そのまわりを取り囲むように並ぶ6つの球がおたがいに接している――という立体の問題です。

平面で描くと同じ円6つでちょうど1周 立体(球)では6つの球の輪の問題が算額に
図6 平面で描くと、同じ円6つでちょうど1周する(自作の図)

平面で同じ大きさの円を並べると、真ん中の円のまわりにちょうど6つ並びます。立体の球の場合、条件をみたす球の輪はどんなときも6つになることが知られています。イギリスの化学者フレデリック・ソディが1936年に科学雑誌「ネイチャー」に詩の形で発表し、「ソディの6球連鎖(ヘキスレット)」と呼ばれるようになりました。

ところが日本では、その100年以上前の1822年、相模国の寒川神社に、同じ内容の算額が奉納されていました。奉納したのは和算家・内田五観の門人の入澤新太郎博篤です。もとの算額は失われましたが、内田五観が『古今算鑑』(1832年)に記録していたため内容が分かり、寒川神社では記録をもとに復元した算額を展示しています(nippon.com の記事による)。

この話を世界に広めたのが、愛知県の高校の数学の先生だった深川英俊さんです。数学者ダン・ペドーとの共著『Japanese Temple Geometry Problems』(1989年)、トニー・ロスマンとの共著『Sacred Mathematics』(2008年、プリンストン大学出版局。日本語版『聖なる数学:算額』森北出版)で、算額は「Sangaku」として世界中の数学ファンに知られるようになりました。

算額と合格祈願

算額は、ある意味で「学問の絵馬」です。問題が解けた感謝と、さらに上達したいという願いをこめて奉納されたものですから、今の受験生が書く合格祈願の絵馬と気持ちはよく似ています。学問の神様・菅原道真をまつる北野天満宮に算額があるのも、うなずけます。

全国の合格祈願の神社は合格祈願の神社 全国一覧(47都道府県)にまとめています。お参りのついでに、その神社に算額がないか探してみると、旅が楽しくなります。ネットでお参りしたい人は、合格大作戦の合格神社(合格祈願のおみくじ)もどうぞ。

うかるくん

うかるくん

ぼくも合格したら、「解けた問題」を書いて奉納しようかな。

合格先生

合格先生

いいね。江戸時代の人のように「解けてうれしい」を積み重ねることが、いちばんの合格祈願だよ。

自分で算額を作ってみよう

算額は、見るだけでなく作ってみるのもおすすめです。自由研究や数学の授業で、算額づくりに取り組む学校もあります。作り方の流れは次のとおりです。

順番することコツ
1図を決める円・三角形・正方形を2〜3個組み合わせる。左右対称にすると美しい
2長さを決めて答えを計算するまず答えがきれいな整数になる数を選ぶ(例:3・4・5の直角三角形、半径9と36の円)
3問・答・術を書く問は「〜を求めよ」、答は数、術は解き方の手順を短く
4友だちと解き合う江戸時代の人のように、問題を出し合い、答えの算額を作り合う
5清書して飾る画用紙や板に色をつけて仕上げる。名前と日付を入れれば完成

ポイントは「答えがきれいな数になるように、逆から作る」ことです。たとえば④の3つの円の問題なら、1/√a+1/√b がきれいな分数になるように a と b を選べば、すっきりした答えの問題が作れます。半径4と36、9と36、16と144など、平方数の組み合わせで試してみましょう。

江戸時代の算額では、長さを「尺(しゃく)」や「寸(すん)」で表しました。1尺は10寸で、1寸は約3.03cmです。算額の答えに「直径〇寸」とあるのはこのためです。自分の算額でも、あえて寸を使うと江戸時代の雰囲気が出ます。

サクラちゃん

サクラちゃん

問題を作るのって、解くよりむずかしいかも……。

合格先生

合格先生

問題を作ると、どこに直角三角形がかくれているか、どの長さが決まれば全部決まるかがよく分かるようになる。作る側に回るのは、いちばん深い勉強なんだよ。

受験とのつながり

算額の問題は「円と直線が接する」「三角形に円が入る」形が中心なので、入試の図形問題とそのまま重なります。

入試算額とつながる内容公式・用語
中学受験円の面積、正方形と円の組み合わせ、つるかめ算、余りの問題(百五減算)つるかめ算・円の面積
高校受験三平方の定理、円の接線、内接円三平方の定理・三平方の定理とは
大学受験2つの円の位置関係、方べきの定理、円の方程式、整数の余り2円の位置関係・方べきの定理

図形問題で手が止まったら、算額の和算家のように「中心を結ぶ・垂線を下ろす・直角三角形を見つける」の3つを試してみてください。これだけで解ける問題がぐっとふえます。図形の勉強の進め方は数学の勉強法、公式の確認は算数・数学の公式一覧が便利です。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

円の問題は「中心と接点を結ぶ」。接点で半径と接線は垂直になる。これが算額でも入試でもいちばん大事なコツだ!

練習問題(答えは押すと開きます)

問題1(小学生)

1辺20cmの正方形にぴったり入る円の面積と、四すみの部分の面積の合計を求めなさい(円周率は3.14)。

答えと解き方
円の半径は10cm。円の面積は 10×10×3.14=314cm²。正方形は 20×20=400cm² なので、四すみの合計は 400−314=86cm²。

問題2(小学生)

キジとウサギが合わせて35、足の数の合計が94本です。キジとウサギはそれぞれ何びきですか(『孫子算経』の雉兎同籠)。

答えと解き方
全部キジなら足は 2×35=70本。94−70=24本たりない。キジ1羽をウサギにかえると足が2本ふえるので、ウサギは 24÷2=12ひき、キジは 35−12=23羽。

問題3(中学生)

1本の直線に接し、おたがいにも外側で接している半径16cmと半径9cmの円があります。2つの円と直線との接点の間の長さを求めなさい。

答えと解き方
2√(ab) を使う。2√(16×9)=2×12=24cm。中心を結ぶ線(16+9=25)、高さの差(16−9=7)、接点の間 x で直角三角形ができ、x²=25²−7²=576 から x=24 と確かめられる。

問題4(中学生)

直角をはさむ2辺が5cmと12cmの直角三角形にぴったり入る円の半径を求めなさい。

答えと解き方
斜辺は三平方の定理で √(25+144)=13cm。内接円の半径は r=(5+12−13)÷2=2cm。(面積を使って、三角形の面積30=r×(5+12+13)÷2 から r=2 としても求められる)

問題5(高校生)

1本の直線に接し、おたがいに接している半径4と半径36の円のすき間に、直線と両方の円に接する円をかきます。この円の半径を求めなさい。

答えと解き方
1/√c=1/√4+1/√36=1/2+1/6=2/3。よって √c=3/2、c=9/4。

問題6(高校生)

3でわると2余り、5でわると3余り、7でわると2余る正の整数のうち、最も小さいものを求めなさい(百五減算)。

答えと解き方
3でも7でもわると2余る数は、21でわると2余る数:2、23、44、65、86。このうち5でわると3余るのは 23。(3・5・7の最小公倍数105ごとに同じ余りになるので、23、128、233……がすべての答え)

あわせて知りたい数学者・公式

よくある質問

算額とは何ですか?

算額(さんがく)とは、数学(和算)の問題や答え、解き方を書いて神社やお寺に奉納した絵馬(額)です。江戸時代の寛文年間(1661〜1673年)ごろから広まったとされ、今も全国に約1,000面が残っています。

算額はなぜ神社に奉納されたのですか?

難しい問題が解けたことを神仏に感謝し、学問の上達を願うためです。人が集まる神社で問題を発表し、腕前を示したり、ほかの人に答えを求めたりする目的もありました。

今残っている最も古い算額はどこにありますか?

栃木県佐野市の星宮神社にある天和3年(1683年)の算額が、今残る最古のものとされています。1975年の火事で読めなくなり、今は複製が掛けられています。記録に残る最古の算額は、1673年の本に記された目黒不動の算額です。

京都で算額が見られる神社はありますか?

京都の八坂神社には元禄4年(1691年)の算額があり、1993年に国の重要文化財に指定されました。北野天満宮にも江戸時代前期の算額があると紹介されています。見学できるかどうかは、それぞれの神社で確かめてください。

算額にはどんな問題が書かれていますか?

円・三角形・正方形などが接し合う図形の問題が多く、「この円の直径はいくつか」のような問いと答え、解き方(術)が書かれています。三平方の定理や接線の性質を使えば、今の中学・高校の数学で解ける問題もたくさんあります。

和算とは何ですか?

和算とは、江戸時代の日本で独自に発展した数学です。1627年の『塵劫記』をきっかけに広まり、関孝和や建部賢弘らが、方程式や円周率、積分にあたる計算などで高い水準の成果を残しました。

ソディの6球連鎖と算額にはどんな関係がありますか?

大きな球の中で6つの球が輪になって接するという定理は、1936年にソディが発表して知られるようになりました。しかし日本では1822年に、同じ内容の算額が神奈川県の寒川神社に奉納されていました。

つるかめ算は江戸時代からあったのですか?

つるかめ算のもとは、中国の『孫子算経』にあるキジとウサギの問題(雉兎同籠)です。日本では江戸時代に鶴と亀の形に置きかえられたとされ、今の中学受験でもおなじみの解き方になりました。

算額は今でも奉納されていますか?

今でも、算額の復元や、新しく作った算額を奉納する取り組みが各地で行われています。数学を学ぶ人が、解けた問題を神社に奉納するという江戸時代の文化は、今も受けつがれています。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 算額の意味・始まり・目的・現存数・記録に残る最古の算額:『日本大百科全書(ニッポニカ)』『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』『ブリタニカ国際大百科事典』『マイペディア』『山川 日本史小辞典』「算額」(コトバンク)
  • 現存最古の算額(星宮神社)・八坂神社の算額の重要文化財指定・現存数と記録数・『神壁算法』・山口和『道中日記』:国立国会図書館 電子展示会「江戸時代の数学」
  • 県別の算額の数(1997年の調べ):福島県田村市「算額」の文化財ページ
  • 『塵劫記』・百五減算・翦管術:国立国会図書館「江戸時代の数学」、コトバンク「塵劫記」「遺題継承」
  • 寒川神社の算額・内田五観・入澤新太郎博篤・ソディ・深川英俊:nippon.com「算額」の記事
  • 『続神壁算法』:京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
  • 『Sacred Mathematics』:Princeton University Press
  • 写真:伊佐爾波神社の算額(Wikimedia Commons、パブリックドメイン。もとの画像は松山市)。図はすべて合格大作戦の自作

最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦

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