
この記事の結論
- 方舟は「はこぶね」、杜撰は「ずさん」、言質は「げんち」、雑言は「ぞうごん」、初産は「ういざん」、納戸は「なんど」、注すは「さす」、和えるは「あえる」、生糸は「きいと」、十八番は「おはこ」と読みます
- ほとんどが小学校で習うやさしい字ですが、ふだん使わない特別な読み(言質の「チ」、納戸の「ナン」、雑言の「ゾウ」など)をするので読みまちがえやすいのです。舟は中学で習う字、杜と撰は常用漢字にない字です
【国語のお勉強】

「読めそうで読めない漢字」シリーズの9回目です。シリーズの一覧はこちらです。
- 読めそうで読めない漢字(パート1)
- 読めそうで読めない漢字~パート2
- 読めそうで読めない漢字~パート3
- 読めそうで読めない漢字~パート4
- 読めそうで読めない漢字~パート5【二十四節気編】
- 読めそうで読めない漢字~パート6
- 読めそうで読めない漢字~パート7【国の名前編】
- 読めそうで読めない漢字~パート8
- 読めそうで読めない漢字~パート9(この記事)
- 読めそうで読めない漢字~パート10
- 読めそうで読めない漢字~パート11【日本の伝統色】
- 読めそうで読めない漢字~パート12
※元の一覧では「パート9」のリンク先がパート8になっていたので直しました。パート10〜12も足しています。
読めそうで読めない漢字。みんなが読める漢字は読めて当たり前。誰も知らない漢字は読めなくても仕方が無い。差がつくのは、読めそうで読めない漢字を読めるかどうかです。今回は読めそうで読めない漢字10個を集めてみました。
ほとんどが小学校で習う漢字です。
この記事の漢字は「漢字合格大作戦」で1字ずつ調べられます
「方」「舟」「質」「納」のような1字の書き順・音読み・訓読み・漢検の級は「漢字合格大作戦」(常用漢字2136字)で確かめられます。中学で習う字は漢検4級など級別の一覧で、「チ」「ナン」のような特別な読みは高校で習う読みで確かめましょう。
読めそうで読めない漢字 パート9:10問クイズ

読めそうで読めない漢字~パート9
- 方舟
- 杜撰
- 言質
- 雑言
- 初産
- 納戸
- 注す
- 和える
- 生糸
- 十八番
ヒント:送り仮名のある「注す」「和える」は、音読みではなく訓読みです。「十八番」は数字の読みではありません。
それでは答え合わせしてみましょう。↓

答え(押すと開きます)
10問の答えを見る
- はこぶね ×「ほうせん」と間違える人が多い
- ずさん ×「とさん」「とせん」と間違える人が多い⇒「杜撰」漢字の読み方・由来・語源
- げんち ×「げんしつ」と間違える人が多い
- ぞうごん ×「ざつげん」と間違える人が多い
- ういざん ×「しょざん」と間違える人が多い
- なんど ×「のうど」と間違える人が多い
- さす 意味:液体を注ぎ入れること。×「ちゅうす」と間違える人が多い。
- あえる 意味:混ぜ合わせる。 ×「わえる」と間違える人が多い
- きいと 意味:蚕の繭(まゆ)を製糸し、引き出した極細の繭糸を数本揃えて繰糸の状態にしたままの絹糸
- おはこ 意味:得意とすること。「じゅうはちばん」とも読むが、この意味では「おはこ」と読む
(ここまで2013年11月の元の記事の答えです。5の「しょざん」と10の「じゅうはちばん」には、下の解説で補足があります。)
さていくつ読めたでしょうか?
杜撰(ずさん)以外は小学校で習う漢字です。
※2026年の補足:「方舟」の「舟」は、小学校ではなく中学校で習う常用漢字でした(小学校で習うのは「船」)。「杜」と「撰」は常用漢字にない字です。下の図で、どの字を何年生で習うかを確かめられます。
8問以上読めた人は、ことばの力がかなりある人です。半分も読めなかった人も心配はいりません。この10問は「字がむずかしい」のではなく、「読み方が特別」なだけです。読み方のしくみがわかれば、次からは同じ仲間の言葉もまとめて読めるようになります。
読み方の答え一覧と、よくある読み間違い
※ここから下は読み(答え)が出てきます。
| 言葉 | 読み | よくある読み間違い(元の記事) | 意味 | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 方舟 | はこぶね | ほうせん | 四角い箱のような大きな舟。「箱舟」とも書く |
| 2 | 杜撰 | ずさん | とさん・とせん | いいかげんで、まちがいが多いこと |
| 3 | 言質 | げんち | げんしつ | あとで証拠になる言葉・約束 |
| 4 | 雑言 | ぞうごん | ざつげん | いろいろな悪口 |
| 5 | 初産 | ういざん | しょざん | はじめてのお産 |
| 6 | 納戸 | なんど | のうど | 衣服や道具をしまっておく部屋 |
| 7 | 注す | さす | ちゅうす | 液体を注ぎ入れる |
| 8 | 和える | あえる | わえる | 野菜などを調味料と混ぜ合わせる |
| 9 | 生糸 | きいと | ― | 繭から引き出したままの絹糸 |
| 10 | 十八番 | おはこ | ― | いちばん得意な芸・得意なこと |
まちがえ方には、はっきりした共通点があります。「方舟→ほうせん」「納戸→のうど」「雑言→ざつげん」のように、いちばんよく使う音読みをそのままつないでしまうパターンです。「方法(ほうほう)」「収納(しゅうのう)」「雑誌(ざっし)」と、ふだん目にする熟語の読みが頭にあるので、ついその読みで読んでしまうのです。
反対に、正しい読みは「はこぶね」「なんど」「ぞうごん」と、ふだんあまり使わないほうの読みです。読めそうで読めない漢字の正体は、ほとんどがこれです。
何年生で習う漢字? 常用漢字かどうかを確かめる
元の記事では「杜撰以外は小学校で習う漢字」と書きました。1字ずつ確かめると、次の図のようになります。
小学校で習う字(教育漢字)が15字、中学で習う字が「舟」の1字、常用漢字にない字が「杜」「撰」の2字です。「舟」は小学校で習う「船」と同じ「ふね」ですが、習うのは中学校です。漢検では4級の字です。
つまり、字そのものは小学生でも書けるのに、読めない。ここが「読めそうで読めない漢字」のおもしろいところです。読めない理由は字のむずかしさではなく、その字の、ふだん使わない読み方にあります。
2010年に改定された常用漢字表には、1つの字に「よく使う読み」と「特定の言葉でしか使わない読み」が両方のっています。たとえば「質」には「シツ(質問)」「シチ(質屋)」「チ(言質)」の3つの音読みがあり、「チ」は言質という1語のためにあるような読みです。こうした読みは、中学・高校で少しずつ習うので、「高校で習う読み」の一覧でまとめて確かめておくと安心です。
1問ずつ解説:方舟・杜撰・言質・雑言・初産の読み方と意味
ここからは1問ずつ、読み方・意味・使い方の例文・覚え方を見ていきます。リンクのある字は「漢字合格大作戦」の1字ページで、書き順や漢検の級まで確かめられます。
1. 方舟(はこぶね):「ほうせん」ではない
方舟は「はこぶね」と読みます。四角い箱のような形の大きな舟のことで、「箱舟」とも書きます。いちばん有名なのは、旧約聖書『創世記』に出てくる「ノアの方舟(ノアの箱舟)」です。大洪水のとき、ノアが家族と動物たちを乗せたという大きな舟の話です。
「方」は「方法」の「ホウ」、「舟」は「舟艇」の「シュウ」なので、音読みをつなぐと「ほうしゅう」、さらに「船」とまぜて「ほうせん」と読みたくなります。でも「方舟」は、2字まとめて「はこぶね」と読む言葉です。「方」に「はこ」という読みがあるわけではありません。
覚え方のコツは、「方」には「四角」という意味がある、と知っておくことです。正方形・長方形の「方」です。「四角い舟=箱のような舟=はこぶね」とつなげると、忘れにくくなります。
- 例文:ノアの方舟に乗った動物たちは、2匹ずつだったといわれる。
- 例文:その小説は、人類を乗せて宇宙を旅する「方舟」の物語だ。
2. 杜撰(ずさん):「とさん」「とせん」ではない
杜撰は「ずさん」と読みます。意味は「いいかげんで、まちがいが多いこと」です。もとは「詩や文章に、確かなよりどころのないことを書くこと」という意味でした。
「杜」も「撰」も常用漢字にない字なので、パート9のなかではいちばん「字そのもの」がむずかしい問題です。「杜」は「森(もり)」の意味で、「杜の都・仙台」のように使われます。音読みは「ト」なので「とさん」と読みたくなりますが、「杜撰」では「ず」と読みます。
由来には諸説あります。よく知られているのは、中国の宋の時代の杜黙(ともく)という人が作った詩が、漢詩の決まり(律)に合わないことが多かったから、という説です。「撰」は詩や文章を作る・編集するという意味で、「杜(杜黙)の撰(作った詩)」が「いいかげんな作品」のたとえになった、というわけです。「杜」をほかの人物とする説もあります。くわしくは「「杜撰」漢字の読み方・由来・語源」で解説しています。
- 例文:杜撰な計画のせいで、文化祭の準備が間に合わなかった。
- 例文:データの管理が杜撰だと、大きな事故につながる。
ニュースでは「ずさんな管理」のように、ひらがなで書かれることもよくあります。ひらがなで見なれている人ほど、漢字の「杜撰」が読めない、ということが起こります。
3. 言質(げんち):「げんしつ」ではない
言質は「げんち」と読みます。意味は「あとで証拠になる言葉、約束の言葉」です。「言質を取る」「言質を与える」の形で使います。
「言」は「ゲン」、「質」は「チ」です。「質」の「チ」は、人や物を約束のかたにするという意味です。人質(ひとじち)・質屋(しちや)の「質」と同じ意味で、「言葉を約束のかたに取る」から「言質」になりました。
国語辞典を見ると、「げんしつ」は誤った読みとされることが多いようです(辞書により扱いが違います)。ふだんの会話で聞くこともありますが、試験やていねいな場では「げんち」と読みましょう。
- 例文:相手から「必ず協力する」という言質を取った。
- 例文:記者の質問に、大臣は言質を与えないように慎重に答えた。
4. 雑言(ぞうごん):「ざつげん」ではない
雑言は「ぞうごん」と読みます。意味は「いろいろな悪口」です。一語で使うより、「悪口雑言(あっこうぞうごん)」「罵詈雑言(ばりぞうごん)」という四字熟語の形でよく出てきます。
「雑」は「雑誌」の「ザツ」がよく使う読みですが、もう1つ「ゾウ」という読みがあります。雑巾(ぞうきん)・雑煮(ぞうに)・雑木林(ぞうきばやし)の「ゾウ」です。「言」は「ゲン」のほかに「ゴン」と読み、無言(むごん)・伝言(でんごん)の「ゴン」です。どちらも「2番目の読み」を組み合わせた言葉なので、読みまちがえやすいのです。
国語辞典には「ぞうげん」という読みものっています。一方、漢詩の形式を表す「雑言体(ざつげんたい)」のように「ざつげん」と読む専門用語もありますが、悪口の意味の言葉ではありません。悪口の意味では「ぞうごん」と覚えておけば安心です。
- 例文:試合に負けたチームに、悪口雑言を浴びせるのはよくない。
- 例文:ネットの罵詈雑言は気にせず、自分の勉強を続けよう。
5. 初産(ういざん):「しょさん」などの読みもある
初産は「ういざん」と読みます。意味は「はじめて子を産むこと、最初のお産」です。
「初」の「うい」は「はじめての」という意味で、初々しい(ういういしい)・初陣(ういじん)の「うい」です。「産」は「サン」ですが、「うい」のあとでは「ざん」とにごります。
元の記事では「×しょざん」と書きましたが、国語辞典によっては、「ういざん」のほかに「しょさん」「はつざん」などの読みも載せていて、どれも「はじめての出産」の意味です(辞書により扱いが違います)。つまり初産には複数の読みがあると考えられます。病院では「初産婦(しょさんぷ)」のように「しょさん」と読むこともあります。ここでの「しょざん」は、元の記事が間違いの例にあげた読みです。クイズとしては、いちばん「読めそうで読めない」読みとして「ういざん」を答えにしています。
うかるくん
初産を「しょざん」って読んでいました…。まちがいなんですか?
合格先生
辞書によっては「ういざん」のほかに「しょさん」「はつざん」も載っているよ。だから読みは1つとは限らないんだ。でも「うい」という読みを知っていると、初陣(ういじん)や初々しい(ういういしい)も読めるようになる。
サクラちゃん
1つの読みを覚えると、ほかの言葉も読めるようになるんですね。
合格先生
そのとおり。漢字の読みは言葉の仲間でまとめて覚えるのがいちばんの近道だよ。
1問ずつ解説:納戸・注す・和える・生糸・十八番の読み方と意味
6. 納戸(なんど):「のうど」ではない
納戸は「なんど」と読みます。意味は「衣服や道具などをしまっておく部屋」です。今でいう物置部屋・収納部屋です。昔の家では、納戸が寝室として使われることもありました。
「納」は「収納」の「ノウ」がよく使う読みですが、ほかにも読みがたくさんあります。納得(なっとく)の「ナッ」、納屋(なや)の「ナ」、出納(すいとう)の「トウ」、そして納戸の「ナン」です。「戸」は「と」が「ど」とにごっています(雨戸=あまど と同じ)。
家の間取りを見ると、今でも「納戸」と書かれた部屋があります。不動産の広告では、窓が小さいなどの理由で、法律上「居室(ふだん人が過ごす部屋)」と認められない部屋を「納戸」と表示することがあります。また、日本の伝統色には「納戸色(なんどいろ)」という色の名前もあります(伝統色の漢字は「パート11【日本の伝統色】」へ)。
- 例文:季節はずれのストーブを納戸にしまう。
- 例文:新しいマンションの間取りには、小さな納戸がついていた。
7. 注す(さす):「ちゅうす」ではない
注すは「さす」と読みます。意味は「液体を注ぎ入れること」です。「自転車のチェーンに油を注す」「鍋に水を注す」のように使います。
「注」の訓読みとして常用漢字表にのっているのは「そそ(ぐ)」だけで、「さす」は常用漢字表にない読みです。そのため、ふだんは「油をさす」とひらがなで書くことも多く、漢字で書かれると読めなくなるのです。「ちゅうす」と読む言葉はありません。
「さす」と読む漢字はたくさんあります。差す(傘を差す)・指す(指で指す)・刺す(針で刺す)・挿す(花を挿す)・点す(目薬を点す)など。どれも「さす」ですが、意味で漢字が変わります。「注す」は液体を入れるときの「さす」です。
8. 和える(あえる):「わえる」ではない
和えるは「あえる」と読みます。意味は「野菜や魚などを、みそ・ごま・酢などと混ぜ合わせること」です。料理の「和え物(あえもの)」「ほうれん草のごま和え」の「あえ」です。
「和」は「平和」「和食」の「ワ」がよく使う読みなので、「わえる」と読みたくなります。でも常用漢字表の「和」の訓読みは、和らぐ(やわらぐ)・和らげる(やわらげる)・和む(なごむ)・和やか(なごやか)で、「あえる」は常用漢字表にない読みです。「和」には「調子を合わせる・まぜ合わせる」という意味があるので、「混ぜて合わせる=和える」と考えると覚えやすくなります。
「注す」「和える」のように送り仮名がついた言葉は訓読みです。「ちゅうす」「わえる」のように、音読みに送り仮名をつけた読み方はまずありません。送り仮名を見たら「訓読みは何だろう?」と考えるクセをつけましょう。古文でも、送り仮名や活用で動詞を見分ける力は大切です(「古文文法辞典」)。
9. 生糸(きいと):繭から引き出したままの絹糸
生糸は「きいと」と読みます。意味は「蚕(かいこ)の繭(まゆ)から引き出した細い糸を、数本そろえて1本にしたままの絹糸」です。まだ精練(せいれん)という加工をしていない糸です。
「生」には読みがとても多く、常用漢字表だけでも10以上あります。そのなかの「き」は「まだ手を加えていない・まじりけがない」という意味の読みで、生地(きじ)・生糸(きいと)・生一本(きいっぽん)の「き」です。「糸」はそのまま「いと」です。
生糸の表面はセリシンという成分でおおわれていて、少しかためです。精練でセリシンを落とすと、つやがあってやわらかい「練り糸(ねりいと)」になります。生=まだ練っていない糸、と覚えると「きいと」が読めます。
生糸は日本史でも大事な言葉です。明治時代、生糸は日本の重要な輸出品で、群馬県の富岡製糸場(とみおかせいしじょう)は2014年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界文化遺産に登録されました。日本史の勉強法は「日本史の勉強法」で。
10. 十八番(おはこ):いちばん得意な芸
十八番は「おはこ」と読みます。意味は「その人がいちばん得意とする芸、得意なこと」です。「カラオケの十八番」「彼の十八番は物まねだ」のように使います。
「おはこ」と読む由来には諸説あります。よく知られているのは、江戸時代の後半、歌舞伎の市川團十郎(七代目)が、家に伝わる得意の演目を18えらんで「歌舞伎十八番」としたことから、という説です。その台本を箱に入れて大切にしたので「おはこ」というようになった、という話もありますが、はっきりしたことはわかっていません。
元の記事では「この意味では『おはこ』と読む」と書きましたが、国語辞典には「じゅうはちばん」の見出しにも「得意の芸」という意味がのっています。十八番は「おはこ」「じゅうはちばん」の両方の読みがある言葉です。ふだんの会話では「おはこ」と読むのが一般的です。
「十」「八」「番」はどれも小学1〜2年で習う字です。3字とも読めるのに、3字まとめると「おはこ」。まさに読めそうで読めない漢字の代表です。「歌」「舞」「伎」の歌舞伎も、「伎」が中学で習う字なので、あわせて書けるようにしておきましょう。

合格先生
読めない理由はほとんどが「ふだん使わないほうの読み」。いちばんよく使う音読みでつなぎたくなったら、一度立ち止まって考えよう!
読めそうで読めない漢字の4つのタイプ
パート9の10問を、常用漢字表を手がかりに分けると、次の4つのタイプになります。
- 表にある「特別な読み」:言質の「チ」、納戸の「ナン」、雑言の「ゾウ」、初産の「うい」、生糸の「き」。常用漢字表にのっている読みですが、使う言葉が少ないので見なれていません。
- 表にない訓読み:注すの「さす」、和えるの「あえる」。常用漢字表にない読みなので、ふだんはひらがなで書かれることが多い言葉です。
- 2字まとめて読む言葉:方舟の「はこぶね」、十八番の「おはこ」。1字ずつの読みを足しても答えになりません。言葉ごと覚えるしかないタイプです。
- 字が常用漢字表にない:杜撰。字そのものを見る機会が少ないタイプです。
タイプがわかると、覚え方も変わります。1のタイプは「同じ読みを使う仲間の言葉」とセットで、2のタイプは「送り仮名を見て訓読みを考える」、3のタイプは「由来の話と一緒に」、4のタイプは「書いて覚える」のが効果的です。同じように特別な読みを集めた記事に「「口遊む」古文によく出る漢字」「「面映ゆい」の読み方と意味」もあります。
発展問題:同じ読みを使う仲間の漢字10問
パート9で覚えた読みを使うと、次の10個も読めるはずです。チャレンジしてみましょう。
- 人質
- 出納
- 納屋
- 雑木林
- 雑煮
- 初陣
- 初々しい
- 生地
- 発足
- 相殺
発展問題の答えを見る
| 言葉 | 読み | ポイント |
|---|---|---|
| 人質 | ひとじち | 言質(げんち)と同じく「質=人や物を約束のかたにする」意味 |
| 出納 | すいとう | 納戸(なんど)の「ナン」と同じく、「納」の特別な読み(トウ) |
| 納屋 | なや | 「納」を「ナ」と読む。物をしまう小屋 |
| 雑木林 | ぞうきばやし | 雑言(ぞうごん)と同じ「ゾウ」 |
| 雑煮 | ぞうに | 正月のお雑煮も「ゾウ」 |
| 初陣 | ういじん | 初産(ういざん)と同じ「うい」 |
| 初々しい | ういういしい | 「うい」は「はじめての」の意味 |
| 生地 | きじ | 生糸(きいと)と同じ「き」=手を加えていない |
| 発足 | ほっそく | 「はっそく」とも読まれるが、辞書の見出しは「ほっそく」 |
| 相殺 | そうさい | 「そうさつ」と読みまちがえやすい |
「陣」(初陣)・「煮」(雑煮)・「地」(生地)・「屋」(納屋)のように、1字ページで読みの例を見ると、同じ読みの仲間がほかにも見つかります。「殺」を「サイ」と読む相殺も、読めそうで読めない言葉の代表です。
漢字の読みは入試・漢検にどう役立つ?
言質・杜撰・雑言は、どれも新聞や評論文で見かける言葉です。現代文の評論や小説を読むとき、読めない言葉が1つあるだけで、文の意味がとれなくなることがあります。読みと意味をセットで覚えておけば、そのまま読解の力になります。現代文の記述の勉強法は「現代文の記述問題への対策・勉強法」で解説しています。
大学によっては、2次試験の国語で漢字の読み書きが出ます。京都大学(京大)の国語で出た漢字は「2014年 京大の漢字」にまとめています。漢字の読み書きは、覚えたぶんだけ確実に点になる分野です。
漢字検定(漢検)では、級ごとに出る字と読みが決まっています。パート9の字では、小学校の字は5級〜10級、「舟」「舞」「伎」は中学の字です(舟・舞は4級、伎は2級)。常用漢字表の「特別な読み」も出題の対象になるので、「漢字合格大作戦」で級別に確かめておきましょう。国語全体の勉強の入口は「国語まとめ」です。
サクラちゃん
「注す」と「差す」って、どっちを使えばいいんですか? 作文で迷いそうです。
合格先生
液体を入れるなら「注す」、目薬なら「点す」、傘なら「差す」と意味で使い分けるよ。でも「注す」「点す」は常用漢字表にない読みだから、作文や答案ではひらがなで「さす」と書いてもまちがいではないんだ。
サクラちゃん
読めるようにしておいて、書くときは無理をしない、ですね。
合格先生
うん。読める漢字は多いほど得。書く漢字は、まず常用漢字を正しく書けるようにしよう。
読めそうで読めない漢字の覚え方:4つのステップ
- まず読んでみる:答えを見る前に、自分の読みを紙に書きます。まちがえた問題だけが、あなたの「読めそうで読めない漢字」です。
- まちがえた理由を1つ書く:「いちばんよく使う音読みでつないだ」「送り仮名を見ていなかった」など、理由を短く書きます。理由がわかると、同じまちがいをしなくなります。
- 仲間の言葉とセットにする:言質(げんち)なら人質(ひとじち)、雑言(ぞうごん)なら雑煮(ぞうに)、初産(ういざん)なら初陣(ういじん)。同じ読みの言葉を1つ添えると、記憶が強くなります。
- 例文で使ってみる:「言質を取る」「杜撰な管理」「カラオケの十八番」のように、短い文で声に出します。意味と使い方がいっしょに残ります。
1週間後に、このページの10問にもう一度挑戦してみてください。全問読めれば合格です。ほかの回の問題にも進みましょう。季節の言葉なら「パート5【二十四節気編】」、国名の漢字なら「パート7【国の名前編】」、動詞の読みなら「パート10」がおすすめです。食べ物の難読漢字なら「「心太」読めますか?」「「無花果」読めたらすごい漢字」も楽しめます。

うかるくん
よく使う音読みでつながない! 送り仮名を見る! 仲間の言葉とセット! これで「ほうせん」「わえる」とは読まないぞ!
受験生へのメッセージ
さていくつ読めたでしょうか?
杜撰(ずさん)以外は小学校で習う漢字です。
(ここまで2013年11月の元の記事のメッセージです。「舟」は中学で習う字、という補足は上の図のとおりです。)
知っている字でも、読み方を知らなければ読めません。逆にいえば、読み方のしくみを1つ覚えるだけで、読める言葉が一気に増えます。わからない漢字や勉強の悩みがあれば「受験の質問・相談」でどうぞ。そのほかの難読漢字の記事は「イビツの意味・語源」「「長閑」読めそうで読めない漢字」「「双六」読めますか?」もどうぞ。
書き順・読み・漢検の級は「漢字合格大作戦」で
「方」「舟」「質」「納」のような1字の書き順・音読み・訓読み・漢検の級は「漢字合格大作戦」(常用漢字2136字)で確かめられます。中学で習う字は漢検4級など級別の一覧で、「チ」「ナン」のような特別な読みは高校で習う読みで確かめましょう。
読めそうで読めない漢字シリーズ
- 読めそうで読めない漢字(パート1)
- 読めそうで読めない漢字~パート2
- 読めそうで読めない漢字~パート3
- 読めそうで読めない漢字~パート4
- 読めそうで読めない漢字~パート5【二十四節気編】
- 読めそうで読めない漢字~パート6
- 読めそうで読めない漢字~パート7【国の名前編】
- 読めそうで読めない漢字~パート8
- 読めそうで読めない漢字~パート9(この記事)
- 読めそうで読めない漢字~パート10
- 読めそうで読めない漢字~パート11【日本の伝統色】
- 読めそうで読めない漢字~パート12
「杜撰」の由来をもっとくわしく知りたい人は「「杜撰」漢字の読み方・由来・語源」へ。
よくある質問
杜撰の読み方は?
「ずさん」と読みます。いいかげんで、まちがいが多いことという意味です。「杜」「撰」はどちらも常用漢字にない字です。
言質の読み方は「げんしつ」ですか?
正しくは「げんち」です。「げんしつ」は誤読とされることが多い読みです(辞書により扱いが違います)。
十八番の読み方は「おはこ」?「じゅうはちばん」?
どちらの読みも国語辞典にあり、得意な芸という意味です。ふだんの会話では「おはこ」と読むのが一般的です。
初産の読み方は?
「ういざん」と読みます。辞書によっては「しょさん」「はつざん」も載っていて、どれもはじめての出産という意味です。
方舟の読み方は?
「はこぶね」と読みます。「箱舟」とも書き、「ノアの方舟」で知られています。
あわせて読みたい
- 「杜撰」漢字の読み方・由来・語源
- 読めそうで読めない漢字~パート8
- 戦く・屯する・購うの読み方は?読めそうで読めない漢字10問【動詞編】パート10
- 読めそうで読めない漢字~パート11【日本の伝統色】
- 読めそうで読めない漢字10問|長ける・朋友・潔い・手水・捏造・極刑の読み方と意味【パート12】
- 漢字合格大作戦
出典・参考
- 問題と答え・よくある読み間違い・写真・受験生へのメッセージ:2013年11月の元の記事(大学受験合格大作戦)
- 読み・意味(初産・雑言・言質・十八番・杜撰・納戸・生糸):デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典ほか(コトバンク)
- 漢字を習う学年・常用漢字表の読み:小学校学習指導要領の学年別漢字配当表・常用漢字表(2010年)による(漢字合格大作戦のデータ)
- 十八番(おはこ)・杜撰の由来:諸説あり。歌舞伎十八番は世界大百科事典など、杜撰の杜黙の故事は『野客叢書』による説
最終更新:2026年10月22日/作成:大学受験合格大作戦












