ウォリスは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|∞(無限大)の記号・ウォリスの積・ウォリス積分

ウォリスは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|∞(無限大)の記号・ウォリスの積・ウォリス積分

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高校受験大学受験大学院入試

ウォリスJohn Wallis

ひとことで言うと

無限大の記号 ∞ を使い始め、円周率のウォリスの積を見つけたイギリスの数学者。

名前ジョン・ウォリス(John Wallis)
生没年1616年11月23日〜1703年10月28日(86歳)
国イギリス(イングランド)
分野解析学・代数学・暗号
主な業績無限大の記号 ∞(1655年)、ウォリスの積(1656年)、無限算術、数直線による負の数の説明
名前がつくものウォリスの積、ウォリスの公式(ウォリス積分)
よばれ方オックスフォード大学サヴィル幾何学教授。王立協会の創設期のメンバー

このページのポイント

  • 無限大の記号 ∞ を、1655年の本で使い始めたとされる
  • 円周率を整数だけのかけ算で表すウォリスの積と、数学Ⅲのウォリス積分で有名
  • 「パターンを見つけて面積を求める」やり方は、ニュートンの微積分の先がけになった

ウォリスは何をした人?(業績をひとことで)

ジョン・ウォリス(1616〜1703年)は、イギリスの数学者・聖職者です。数学の世界では、無限大の記号「∞」を使い始めた人として最も有名です。1655年の本『円錐曲線論』の中で使ったとされています。いまの数学の教科書にある「∞\infty」は、約370年前のウォリスの本にさかのぼるのです。

もうひとつの大きな仕事が、1656年の本『無限算術(Arithmetica Infinitorum)』です。この本でウォリスは、円周率を無限に長いかけ算で表すウォリスの積を見つけました。式にすると π2=2⋅21⋅3⋅4⋅43⋅5⋅6⋅65⋅7⋯\dfrac{\pi}{2}=\dfrac{2\cdot2}{1\cdot3}\cdot\dfrac{4\cdot4}{3\cdot5}\cdot\dfrac{6\cdot6}{5\cdot7}\cdots です。高校の数学Ⅲで習うウォリスの公式(ウォリス積分)、つまり sin⁡nx\sin^n x を0から π/2\pi/2 まで積分した値の計算とも、深くつながっています。

ウォリスは、ニュートンが登場する直前の時代に、面積や曲線の問題を「無限に細かく分けて足し合わせる」やり方で解きました。これは定積分と面積の先がけです。ウォリスの本を読んだことが、ニュートンが二項定理や微積分に進むきっかけのひとつになったと伝えられます。

∞ = どこまでも続く中心1655年、ウォリスが本の中で使い始めた始まりも終わりもない線のイメージ(記号の由来には諸説あります)
無限大の記号 ∞。1655年にウォリスが使い始めたとされる
ジョン・ウォリスの肖像画
ジョン・ウォリスの肖像画(1701年、ゴドフリー・ネラー作品にもとづく肖像画)画像:Godfrey Kneller(のち)/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

このページでは、ウォリスの生涯、∞ とウォリスの積、ウォリス積分、そして受験とのつながりを、図を見ながら順に説明します。式が苦手な人は、図1〜図4を眺めるだけでも、ウォリスが何をしたのかがつかめます。

うかるくん

うかるくん

∞ って、だれかが「作った」記号なんですか? 昔からあると思っていました。

合格先生

合格先生

数学の記号は、実はだれかが書きはじめたものがほとんどなんだ。∞ を数学の本で使いはじめたのがウォリスだとされているよ。ウォリスはほかにも、円周率の無限積や、積分の計算のくふうなど、受験につながるものをたくさん残している人なんだ。

ウォリスの生涯と年表

牧師の家に生まれ、ケンブリッジで学ぶ

ウォリスは1616年11月23日、イングランド南東部ケント州のアシュフォードで生まれました。父は牧師でしたが、ウォリスが6歳のころに亡くなり、母が家をささえました。少年のころはエセックスの学校でラテン語・ギリシャ語・ヘブライ語を学び、1632年の暮れごろケンブリッジ大学のエマニュエル・カレッジに入りました。1637年に学士、1640年に修士の学位を取り、同じ1640年に聖職者としての資格も得ています。

意外なことに、ウォリスが大学で受けた数学の教育は、ほとんどなかったとされています。数学との出会いは、15歳のころ、弟から商業算数(そろばんのような実用の計算)を教わったことだったと伝えられます。本格的に取り組んだのは1647年ごろで、オートレッドの数学の本などを次々に読み、わずか数年で一流の数学者になりました。

暗号の名人として、議会派に仕える

イギリスでは1642年から内乱が起こり、王党派と議会派が争いました。1642年、ウォリスは議会派が手に入れた暗号文を、約2時間で解読したといわれます。これがきっかけで、ウォリスは王党派の暗号を解読する仕事を続けることになりました。暗号は数字や文字の並びにきまりを見つける仕事で、数学者の力が生きる分野です。

オックスフォードの幾何学教授に

1649年、ウォリスはオックスフォード大学のサヴィル幾何学教授に任命されました。その後、亡くなる1703年まで、50年以上この席にあり続けました。1657年には大学の文書館の管理者にもなっています。1660年に王政が戻ると、新しい王チャールズ2世もウォリスの地位を認め、王室付きの牧師にしました。1663年には、イギリスの科学者の集まりである王立協会の会員に選ばれています。

おもな著作と、ホッブズとの20年の論争

1655年に『円錐曲線論』、1656年に『無限算術』を出しました。1655年には、哲学者トマス・ホッブズが「円と同じ面積の正方形を作図できた(円積問題が解けた)」と主張したのに対し、ウォリスは激しく反論しました。この論争は20年以上続き、ホッブズが亡くなって(1679年)ようやく終わったとされます。1685年に『代数学論』、1687年に『論理学入門』を出し、晩年まで多くの本を書きました。1703年10月28日、オックスフォードで86歳で亡くなりました。

年できごと
1616年11月23日、イングランドのアシュフォードで生まれる
1632年ケンブリッジ大学エマニュエル・カレッジに入る(1637年に学士)
1640年修士の学位を取り、聖職者の資格を得る
1642年暗号文を約2時間で解読し、暗号解読の仕事がはじまる
1649年オックスフォード大学のサヴィル幾何学教授になる
1655年『円錐曲線論』で無限大の記号 ∞ を使う。ホッブズとの論争がはじまる
1656年『無限算術』を出版。ウォリスの積を発表
1663年王立協会の会員になる
1685年『代数学論』を出版(負の数を数直線で説明)
1687年『論理学入門』を出版
1703年10月28日、オックスフォードで亡くなる(86歳)

ウォリスの主な業績をやさしく解説

業績1 無限大の記号 ∞

ウォリスは1655年の『円錐曲線論』で、「無限大」を表す記号として ∞\infty を使いました。それまでの数学者は、無限を言葉で書いたり、別の記号を使ったりしていました。ウォリスは、たとえば「幅が無限に小さい長方形」を「1/∞1/\infty」と書き、無限に大きい数と、無限に小さい数を、同じ記号で表せるようにしました。

∞ = どこまでも続く中心1655年、ウォリスが本の中で使い始めた始まりも終わりもない線のイメージ(記号の由来には諸説あります)
横にした8の字 ∞。始まりも終わりもなく、どこまでも続くことを表す

この記号の形の由来は、はっきりしていません。ローマ数字で1000を表す記号(CIƆ や M)に似せたという説、ギリシャ文字の最後の文字 ω\omega(オメガ)を変形したという説などがあり、諸説あります。ローマ数字についてはローマ数字一覧表と書き方、数学の記号については数学でよく使う記号の意味一覧で、ほかの記号の歴史も確かめられます。

業績2 ウォリスの積(円周率を無限のかけ算で表す)

『無限算術』でウォリスは、円周率 π\pi を次のような、終わりのないかけ算で表しました。

π2=21⋅23⋅43⋅45⋅65⋅67⋯=∏k=1∞(2k)2(2k−1)(2k+1)\frac{\pi}{2}=\frac{2}{1}\cdot\frac{2}{3}\cdot\frac{4}{3}\cdot\frac{4}{5}\cdot\frac{6}{5}\cdot\frac{6}{7}\cdots=\prod_{k=1}^{\infty}\frac{(2k)^2}{(2k-1)(2k+1)}

分子は偶数どうしのペア、分母は奇数のペアです。最初の1組だけなら 2⋅21⋅3=43≈1.333\dfrac{2\cdot2}{1\cdot3}=\dfrac43\approx1.333、2組なら約1.422、3組なら約1.463……と、π/2=1.5708⋯\pi/2=1.5708\cdots にゆっくり近づきます。

ウォリスの積はπ/2に近づくπ/2=1.5708…1.3311.4221.4631.4941.5051.5161.5271.538横軸:かけた組の数(2/1·2/3、4/3·4/5、…)ゆっくりだが、どこまでもπ/2に近づく
1組ずつかけていくと、値はπ/2=1.5708…にゆっくり近づく

円周率は丸い円の話なのに、答えは整数だけのかけ算の形に書けます。これは当時の人々を驚かせました。ホイヘンスは最初、この式を疑いましたが、実際に近似値を計算して π\pi に近づくことを確かめて、納得したと伝えられます。

ウォリスは、直接の証明ではなく、規則性の発見と補間(すき間をうめる考え方)で式を導きました。その後、ウォリス積分を使えば、現代の数学で証明できることが分かりました(業績3)。なお、同じ時期にブラウンカー卿も、π\pi を連分数で表す式を見つけています。

業績3 ウォリスの公式(ウォリス積分)

高校の数学Ⅲで、次の積分の値を求める問題が出ます。

In=∫0π/2sin⁡nx dx=∫0π/2cos⁡nx dxI_n=\int_0^{\pi/2}\sin^n x\,dx=\int_0^{\pi/2}\cos^n x\,dx

部分積分を使うと、漸化式 In=n−1nIn−2I_n=\dfrac{n-1}{n}I_{n-2} が得られます。I0=π2I_0=\dfrac\pi2、I1=1I_1=1 から、順に値が決まります。

sinⁿx の山とその面積0π/2n=1:面積 1n=2:面積 π/4≒0.785n=4:3π/16≒0.589n=8:35π/256≒0.430nがふえると山がやせて面積が減る
n=1、2、4、8のグラフ。nがふえると面積I_nは1、π/4、3π/16、35π/256と小さくなる
  • nn が偶数のとき:In=(n−1)(n−3)⋯3⋅1n(n−2)⋯4⋅2⋅π2I_n=\dfrac{(n-1)(n-3)\cdots3\cdot1}{n(n-2)\cdots4\cdot2}\cdot\dfrac\pi2(例:I2=π4I_2=\dfrac\pi4、I4=3π16I_4=\dfrac{3\pi}{16}、I6=5π32I_6=\dfrac{5\pi}{32})
  • nn が奇数のとき:In=(n−1)(n−3)⋯4⋅2n(n−2)⋯5⋅3I_n=\dfrac{(n-1)(n-3)\cdots4\cdot2}{n(n-2)\cdots5\cdot3}(例:I3=23I_3=\dfrac23、I5=815I_5=\dfrac8{15})

この値を使って、I2n+1≦I2n≦I2n−1I_{2n+1}\leqq I_{2n}\leqq I_{2n-1} をはさみうちにすると、ウォリスの積が証明できます。くわしくはウォリス積分の公式と例題にまとめてあります。偶数と奇数で形が変わること、π\pi が出るのは nn が偶数のときだけであることを、覚えておきましょう。

なぜ偶数だと π が出るのか

I0=∫0π/21 dx=π2I_0=\int_0^{\pi/2}1\,dx=\dfrac\pi2 のように、はじまりに π\pi が入っているからです。漸化式は2つ飛びなので、偶数の nn は I0I_0 からたどり、奇数の nn は I1=1I_1=1 からたどります。偶数側は π\pi をふくみ、奇数側は分数だけの答えになります。これが、偶数と奇数で答えの形が変わる理由です。

業績4 積分の先がけ(パターンから面積を求める)

『無限算術』の大きな仕事は、y=xny=x^n のグラフの下の面積を、数のパターンから見つけたことです。たとえば y=x2y=x^2 のとき、00 から 11 までを細い長方形に分けて面積を近づけると、12+22+⋯+n2n3\dfrac{1^2+2^2+\cdots+n^2}{n^3} のような和になります。ウォリスは、n=5n=5、n=10n=10、n=100n=100 と調べるうちに、この値が 13\dfrac13 に近づくことに気づきました。

x²の下の面積を長方形で近づける015本:(1²+2²+…+5²)/5³=0.4410本:0.385 100本:0.338…どこまでふやすと 1/3 に近づく
5本、10本、100本と長方形をふやすと、面積は0.44、0.385、0.338…と1/3に近づく

ウォリスは、11\dfrac{1}{1}、12\dfrac12、13\dfrac13、14\dfrac14 という流れをとらえ、∫01xn dx=1n+1\int_0^1 x^n\,dx=\dfrac1{n+1} という結果に到達しました。さらに、指数 nn が 12\dfrac12 のような分数でも同じ形になる、と考えました。この調べ方は、数学的帰納法のように厳しい証明ではなく、パターンからの推測(不完全帰納法)でした。ですから、のちにフェルマーやニュートンらが、より確かな方法で整えていきました。区分求積法の入口は区分求積法や区分求積法の使い方で確かめられます。

業績5 数直線と、負の数・虚数の考え方

1685年の『代数学論』でウォリスは、負の数を数直線で説明しました。出発点から前へ進んだ道のりを正の数、後ろへ進んだ道のりを負の数と考える説明です。いまは当たり前の考え方ですが、当時は「0より小さい数」を認めない数学者も多くいました。

数直線:負の数は「後ろ向き」−3−2−10123前へ 3後ろへ 3 (−3)出発点から後ろへ進んだ道のりが「負の数」(ウォリスの説明のしかたとして伝わる)
出発点から前へ進むと正、後ろへ進むと負。ウォリスが広めた数直線の見方

またウォリスは、「2乗すると負になる数」をどう図で表すか、にも挑戦しました。直線の上だけでは足りず、平面の上に置けばよいと考えたのですが、完成はしませんでした。この考えが、のちの複素数平面につながったとされます。くわしくはガウスの業績と生涯を読むと、複素数が平面で表される歴史が分かります。

業績6 言葉・論理・平行線の公準

ウォリスは数学以外にも多くの分野で働きました。1653年には、英語の文法書『英語文法』を書いています。また、耳の聞こえない子どもに話し方を教えたことでも知られ、その一人が、ウォリスのもとで話せるようになったと伝えられます。さらに、1663年の講義で、ユークリッドの第5公準(平行線の公準)を、「相似な三角形が存在する」という別の言いかえで置きかえられることを示しました。これは、非ユークリッド幾何学へつながる、平行線の公準の研究のひとつに数えられます。くわしくはユークリッドの原論と公準を見てください。

ウォリスの名前がつく公式・定理・用語

  • ウォリスの積:π2=∏(2k)2(2k−1)(2k+1)\dfrac\pi2=\prod\dfrac{(2k)^2}{(2k-1)(2k+1)}。円周率を整数だけのかけ算で表す。
  • ウォリスの公式(ウォリス積分):In=∫0π/2sin⁡nx dxI_n=\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx の値。→ ウォリス積分
  • 無限大の記号 ∞:16551655 年から使われた記号。→ 極限の考え方や数列の極限で ∞\infty を使う。
  • ウォリスと補間:「補間(interpolation)」という言葉を数学に持ちこんだとされる。
  • 関連する公式:→ スターリングの公式の定数 2π\sqrt{2\pi} は、ウォリスの積から決められた。
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

ウォリス積分は、偶数なら π が出て、奇数なら分数だけ! 分母と分子が2つずつ飛ぶ形を、まず3つ書いて覚えよう。

ウォリスの逸話と名言

頭の中で、53桁の数の平方根を求めた

ウォリスの暗算は有名で、夜、眠れないときに、頭の中だけで53桁の数の平方根を求めたと伝えられます。しかも、翌朝になってからその27桁の答えを口で伝えた、というのです。紙もない中で、長い数字を覚えておく集中力は、すごいものです。この話は王立協会の書記オルデンバーグが調べさせるほど評判になり、1685年の『フィロソフィカル・トランザクションズ』でも取りあげられたとされますが、細かい点は本当かどうか確かめられていません。

円積問題をめぐる、ホッブズとの20年の戦い

1655年、哲学者として有名なトマス・ホッブズが、「円積問題(円と同じ面積の正方形を作図する問題)を解いた」と主張しました。ウォリスは、その証明の誤りを指摘し、両者のやりとりは20年以上続きました。のちに円積問題は、1882年にリンデマンが π\pi が超越数であることを証明して、作図は不可能と決着します。ウォリスの批判は、正しかったのです。

「ウォリス」と「ホイヘンス」「ニュートン」

ウォリスは、ホイヘンスやニュートンとも交流がありました。ウォリスの積を疑ったホイヘンスは、計算して確かめたあと、その価値を認めました。また、ウォリスの『無限算術』は、若いニュートンが二項定理や無限級数に進むときの、重要な手がかりになったと伝えられます。ニュートン自身もそう語ったとされ、ウォリスが数学史の流れをつないだことが分かります。ニュートンの業績と生涯もあわせて読んでください。

数学を使って、ことばも教えた

ウォリスは、耳の聞こえない人に発音を教える仕事もしたとされ、イギリスで早い時期の聾教育の先駆者の一人と言われています。数のパターンを見つける力は、言葉のしくみを分析する力と、通じていたのかもしれません。

名言について

ウォリスの名言として広く知られている言葉は、確かな出典つきでは確かめられませんでした。そのため、このページでは作られた名言を載せません。ただ、ウォリスの業績そのものが、「規則を見つけて、先へ延ばす」という数学のおもしろさを教えてくれます。1, 4, 9, 16 のような数の列から面積の公式を見つけた姿勢は、受験勉強の「なぜそうなるのか」を考えるときにも役立ちます。

サクラちゃん

サクラちゃん

ウォリスの積って、どうして π がかけ算で出てくるんですか?

合格先生

合格先生

ひとことで言うと、sinⁿx の積分を n=偶数と n=奇数で比べて、はさみうちにするからなんだ。偶数のときだけ π が出るから、その比をとると π が分数のかけ算で現れるんだよ。くわしい流れは、下の「受験とのつながり」で順番に見ていこう。

受験・勉強とウォリスのつながり

大学受験:数学Ⅲの「ウォリス積分」

ウォリスの業績で、大学受験にいちばん直接出るのがウォリス積分です。入試では、「∫0π/2sin⁡nx dx\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx を InI_n とおく」という誘導のもと、次の流れで出題されることが多いです。

  • (1) 漸化式をつくる:部分積分で In=n−1nIn−2I_n=\dfrac{n-1}{n}I_{n-2} を示す。→ 置換積分・部分積分
  • (2) 具体的な値を出す:I3=23I_3=\dfrac23、I4=3π16I_4=\dfrac{3\pi}{16} など。
  • (3) 不等式ではさむ:0≦sin⁡x≦10\leqq\sin x\leqq1 から In+1≦InI_{n+1}\leqq I_n を示し、極限や π\pi の近似式を導く。→ 積分による不等式の評価

sin⁡6x\sin^6x のように次数が高い積分も、毎回部分積分をするのではなく、この公式で一気に計算できます。入試の計算時間が大きく変わるので、ウォリス積分は覚えておく価値があります。また、三角関数のグラフと周期で山の形を確かめておくと、計算が楽になります。

極限の問題:n が大きくなると?

InI_n は、nn が大きくなると 0 に近づきます(図3で山がやせていく様子)。さらに、InI_n と In−1I_{n-1} の積が π2n\dfrac{\pi}{2n} になるという性質もあります。この関係は、数列の極限の入試問題でよく使われます。

中学受験・高校受験:記号と数直線

中学1年の数学で習う正負の数の数直線は、ウォリスが広めた見方です。「0より小さい数」を、「後ろ向き」「借金」「地下の階」などでたとえる説明の根っこには、ウォリスの数直線があります。また、∞\infty の記号は、中学や高校の教科書に「限りなく大きくなる」ことを示す記号として登場します。数学でよく使う記号の意味一覧も読んでみましょう。

円周率の近似:ウォリスの積を電卓で試す

ウォリスの積で円周率に近づくのは、とても遅いです。10組かけても約1.534で、π/2=1.5708\pi/2=1.5708 までまだ差があります。けれども、階乗の意味やスターリングの公式を使うと、大きな nn での近似がずっと正確になります。「速く近づく方法はないか」と考えることが、数学の進歩につながるのです。

勉強法として:「パターンを見つけて、確かめる」

ウォリスは、n=5,10,100n=5, 10, 100 と具体的に調べて、13\dfrac13 に近づくパターンを見つけました。受験の数学でも、まず小さな数で試して規則を見つけ、そのあとで証明する、という進め方が大切です。勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)で、難関大の入試は京大理系数学の出題分析で確かめてください。

ウォリスがその後の数学にあたえた影響

  • 微積分の準備:『無限算術』は、ニュートンやライプニッツの微積分につながる、積分の先がけとなりました。ニュートンは若いころにこの本を読み、無限級数の研究に進んだと伝えられます。
  • スターリングの公式:スターリングは、n!n! の近似式の定数 2π\sqrt{2\pi} を、ウォリスの積を使って決めたとされます。ウォリスの積は、確率や統計の基本公式にまでつながったのです。
  • 解析学の言葉:∞ の記号、補間、極限の考え方など、現代の解析学で使うことばが、ウォリスのころに整えられはじめました。
  • ガンマ関数・オイラー:ウォリスの補間の考え方は、のちにオイラーが階乗を一般化したガンマ関数(ガンマ関数・ベータ関数)を作るときにも生きたとされます。
  • 数直線と複素数:負の数や虚数を図で表そうとした試みは、のちの複素数平面につながりました。
  • 円周率の無限積・無限和:円周率を無限の式で表す研究の出発点になり、ライプニッツの級数 π4=1−13+15−⋯\dfrac\pi4=1-\dfrac13+\dfrac15-\cdots などにつながりました。

数学の公式は算数・数学の公式一覧(公式辞典)、用語は数学用語辞典(用語の意味を1語1ページ)の一覧もどうぞ。

ウォリスに挑戦!練習問題

やさしい

  1. In=∫0π/2sin⁡nx dxI_n=\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx のとき、I2I_2 と I3I_3 の値を求めなさい。
    答えと解説を見るI2=12⋅I0=12⋅π2=I_2=\dfrac12\cdot I_0=\dfrac12\cdot\dfrac\pi2= π4\dfrac\pi4。I3=23I1=23⋅1=I_3=\dfrac23I_1=\dfrac23\cdot1= 23\dfrac23。
  2. ウォリスの積 π2=2⋅21⋅3⋅4⋅43⋅5⋅6⋅65⋅7⋯\dfrac{\pi}{2}=\dfrac{2\cdot2}{1\cdot3}\cdot\dfrac{4\cdot4}{3\cdot5}\cdot\dfrac{6\cdot6}{5\cdot7}\cdots の最初の3組をかけた値を求めなさい。
    答えと解説を見る43⋅1615⋅3635=4⋅16⋅363⋅15⋅35=23041575≈\dfrac43\cdot\dfrac{16}{15}\cdot\dfrac{36}{35}=\dfrac{4\cdot16\cdot36}{3\cdot15\cdot35}=\dfrac{2304}{1575}\approx 1.463。π/2=1.5708\pi/2=1.5708 に、まだ少し足りない。

ふつう

  1. ∫0π/2sin⁡5x dx\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^5x\,dx と ∫0π/2cos⁡4x dx\displaystyle\int_0^{\pi/2}\cos^4x\,dx の値を求めなさい。
    答えと解説を見るsin⁡5\sin^5:I5=45⋅23⋅1=I_5=\dfrac45\cdot\dfrac23\cdot1= 815\dfrac8{15}。cos⁡4\cos^4:cos⁡\cos でも値は同じなので I4=34⋅12⋅π2=I_4=\dfrac34\cdot\dfrac12\cdot\dfrac\pi2= 3π16\dfrac{3\pi}{16}。
  2. ∫01x2 dx\displaystyle\int_0^1x^2\,dx を、12+22+⋯+n2n3\dfrac{1^2+2^2+\cdots+n^2}{n^3} の n→∞n\to\infty の極限として求めなさい。(12+⋯+n2=n(n+1)(2n+1)61^2+\cdots+n^2=\dfrac{n(n+1)(2n+1)}6)
    答えと解説を見るn(n+1)(2n+1)6n3=16(1+1n)(2+1n)→16⋅1⋅2=\dfrac{n(n+1)(2n+1)}{6n^3}=\dfrac16\left(1+\dfrac1n\right)\left(2+\dfrac1n\right)\to\dfrac16\cdot1\cdot2= 13\dfrac13。ウォリスが数のパターンから見つけた値と一致する。

むずかしい

  1. In=∫0π/2sin⁡nx dxI_n=\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx について、In=n−1nIn−2I_n=\dfrac{n-1}{n}I_{n-2} (n≧2)(n\geqq2) が成り立つことを、部分積分で示しなさい。
    答えと解説を見るIn=∫sin⁡n−1x⋅sin⁡x dxI_n=\int\sin^{n-1}x\cdot\sin x\,dx とみて、sin⁡x\sin x が −cos⁡x-\cos x の導関数であることを使って部分積分。In=[−sin⁡n−1xcos⁡x]0π/2+(n−1)∫sin⁡n−2xcos⁡2x dxI_n=[-\sin^{n-1}x\cos x]_0^{\pi/2}+(n-1)\int\sin^{n-2}x\cos^2x\,dx。第1項は0。cos⁡2x=1−sin⁡2x\cos^2x=1-\sin^2x を使うと In=(n−1)(In−2−In)I_n=(n-1)(I_{n-2}-I_n)。よって nIn=(n−1)In−2nI_n=(n-1)I_{n-2}、すなわち In=n−1nIn−2I_n=\dfrac{n-1}nI_{n-2}。
  2. 上の漸化式を使って、InIn−1=π2nI_nI_{n-1}=\dfrac{\pi}{2n} (n≧1)(n\geqq1) を示しなさい。
    答えと解説を見るnInIn−1=(n−1)In−2In−1nI_nI_{n-1}=(n-1)I_{n-2}I_{n-1} より、nInIn−1nI_nI_{n-1} は nn によらず一定。n=1n=1 で 1⋅I1I0=1⋅π2=π21\cdot I_1I_0=1\cdot\dfrac\pi2=\dfrac\pi2。よって nInIn−1=π2nI_nI_{n-1}=\dfrac\pi2、すなわち InIn−1=π2nI_nI_{n-1}=\dfrac{\pi}{2n}。

ウォリスと関係する数学者

16〜17世紀の数学者

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有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

ウォリスは何をした人ですか?

ジョン・ウォリスは、17世紀のイギリスの数学者です。無限大の記号「∞」を使い始めたとされる人で、円周率を無限のかけ算で表すウォリスの積や、積分の先がけとなる『無限算術』(1656年)で知られます。オックスフォード大学の幾何学教授を50年以上務めました。

無限大の記号 ∞ はだれが作りましたか?

数学の本ではじめて使ったのは、1655年のウォリスの『円錐曲線論』だとされます。記号の形の由来は、ローマ数字の1000を表す記号に似せたという説、ギリシャ文字のオメガを変形したという説など、諸説あります。

ウォリスの積とは何ですか?

π/2 を、(2×2)/(1×3) × (4×4)/(3×5) × (6×6)/(5×7) × … という、終わりのないかけ算で表した式です。1656年にウォリスが発表しました。分子と分母は、偶数どうし、奇数どうしのペアでできています。

ウォリスの公式(ウォリス積分)とは何ですか?

0からπ/2までの sinⁿx(または cosⁿx)の積分の値を、n が偶数のとき (n−1)!!/n!!·π/2、奇数のとき (n−1)!!/n!! で表す公式です。部分積分でつくる漸化式 Iₙ=(n−1)/n·Iₙ₋₂ から導けます。

ウォリス積分は大学受験に出ますか?

数学Ⅲの積分の発展として、難関大の入試で漸化式の誘導つきで出ます。Iₙ の漸化式を作る問題、具体的な値を求める問題、不等式ではさんで極限や円周率に関係する式を導く問題が定番です。

ウォリスとニュートンはどんな関係ですか?

ウォリスは、ニュートンより約26歳年上です。ウォリスの『無限算術』は、若いニュートンが二項定理や無限級数に進むときの手がかりになったと伝えられます。ニュートンは、のちにウォリスの業績を高く評価したとされます。

ウォリスとホッブズの論争とは何ですか?

1655年、哲学者のホッブズが「円積問題を解いた」と主張し、ウォリスが誤りを指摘して、20年以上の論争になりました。のちの1882年に、π が超越数であることが証明され、円積問題は作図不可能と分かり、ウォリスの批判が正しかったことになります。

ウォリスは何歳で亡くなりましたか?

1703年10月28日にオックスフォードで、86歳で亡くなりました。1649年からサヴィル幾何学教授を務め、亡くなる直前まで50年以上その席にあったとされます。

ウォリスの積はスターリングの公式とどう関係しますか?

n! の近似式であるスターリングの公式 n! ≒ √(2πn)(n/e)ⁿ の定数 √(2π) は、スターリングがウォリスの積を使って決めたとされます。ウォリスの積は、確率や統計の基本の公式につながっています。

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出典・参考

  • J. J. O’Connor, E. F. Robertson, “John Wallis”, MacTutor History of Mathematics Archive(St Andrews 大学)
  • J. Wallis, “De sectionibus conicis”(1655年)、“Arithmetica infinitorum”(1656年)、“A Treatise of Algebra”(1685年)
  • 肖像画:Godfrey Kneller にもとづく「John Wallis」、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦