マクローリンは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|マクローリン展開・積分判定法・オイラー・マクローリンの公式

マクローリンは何をした人?業績・生涯をわかりやすく|マクローリン展開・積分判定法・オイラー・マクローリンの公式

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マクローリンColin Maclaurin

ひとことで言うと

マクローリン展開にその名が残るスコットランドの数学者。11歳で大学に入り、19歳で教授になった。

名前コリン・マクローリン(Colin Maclaurin)
生没年1698年2月〜1746年6月14日(48歳)
国イギリス(スコットランド)
分野解析学・幾何学・力学
主な業績マクローリン展開、『流率論』(1742年)、積分判定法、オイラー・マクローリンの公式、回転する流体の形の研究
名前がつくものマクローリン展開、マクローリン・コーシーの積分判定法、オイラー・マクローリンの公式、マクローリン楕円体
よばれ方ニュートンの微積分を厳密に説明した数学者。エディンバラ大学教授

このページのポイント

  • マクローリン展開(テイラー展開で中心を0にした形)に名前が残る。exe^x、sin⁡x\sin x、cos⁡x\cos x の展開が受験の定番
  • 『流率論』で、ニュートンの微積分を厳密に説明。積分判定法やオイラー・マクローリンの公式も
  • 11歳で大学入学、19歳で大学教授。ニュートンが推薦した神童

マクローリンは何をした人?(業績をひとことで)

コリン・マクローリン(1698〜1746年)は、スコットランドの数学者です。高校の数学Ⅲや大学の微積分で習うマクローリン展開に、名前が残っています。マクローリン展開は、関数を「xx のべき乗の足し算」で表す方法で、テイラーが示したテイラー展開の、中心を x=0x=0 にした場合です。

f(x)=f(0)+f′(0)x+f′′(0)2!x2+f′′′(0)3!x3+⋯f(x)=f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\frac{f'''(0)}{3!}x^3+\cdots

ところが、マクローリン自身は、この展開がテイラーの結果の特別な場合だと、1742年の本ではっきり書いていた、と伝えられます。それでも、x=0x=0 で展開する形は使いやすく、教科書ではマクローリンの名前で定着しました。数学の名前が、最初の発見者ではなく、広めた人に残る例のひとつです。

マクローリンの実際の仕事は、展開の名前だけではありません。11歳で大学に入り、19歳で大学教授になった神童で、ニュートンの微積分(流率法)を、きちんとした形で説明する大きな本を書きました。また、積分判定法(無限級数が収束するか調べる方法)や、回転する流体の形の研究、連立方程式の解法(のちのクラメルの公式の先がけ)など、多くの業績があります。→ マクローリン展開の公式と例題

eˣ を多項式でまねる赤:eˣ(もとの曲線)青:1+x(1次)緑:2次まで金:3次まで項をふやすほど、x=0 の近くでぴったり重なるeˣ = 1+x+x²/2!+x³/3!+…
eˣ に、1次・2次・3次の多項式を重ねる。項をふやすほど、原点の近くでぴったり重なる
コリン・マクローリンの肖像画
コリン・マクローリンの肖像画(1795年ごろ、デイヴィッド・スチュアート・アースキン作)画像:David Steuart Erskine(11th Earl of Buchan)/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

このページでは、マクローリンの生涯、マクローリン展開、積分判定法、オイラー・マクローリンの公式、そして受験とのつながりを、図を見ながら説明します。

うかるくん

うかるくん

マクローリン展開って、公式の形を覚えるのが大変です……。

合格先生

合格先生

覚えるのはeˣ、sin x、cos x、log(1+x)、(1+x)^α の5つで十分だよ。まず「微分をくり返して x=0 を入れる」という作り方を知っておけば、忘れてもその場で作れるんだ。

マクローリンの生涯と年表

幼くして両親を亡くし、おじに育てられる

マクローリンは1698年2月、スコットランド西部アーガイル地方のキルモダンで生まれました。父は牧師でしたが、マクローリンが生まれてまもなく亡くなったとされます。母も早く亡くなり、マクローリンは、牧師だった叔父に育てられました。叔父は、甥の才能をはやくから見ぬいて、大学へ進ませたと伝えられます。

11歳で大学入学、14歳で修士

1709年、わずか11歳でグラスゴー大学に入りました。1712年、14歳のときに、「重力の力」についての論文を書いて、修士の学位(M.A.)を取っています。この論文は、ニュートンの重力の理論を発展させたものでした。

19歳で、アバディーンの数学教授に

1717年8月、マクローリンは19歳で、アバディーンのマリシャル・カレッジの数学教授に選ばれました。競争試験の結果で、ほかの志望者をぬいたとされます。これは、当時としても、きわめて若い大学教授でした。1719年には、ロンドンを訪れて、ニュートンに会い、王立協会の会員にも選ばれています。1720年には、最初の主著『有機的幾何学(Geometria Organica)』を出版しました。

エディンバラ大学へ

1725年11月3日、エディンバラ大学の数学教授に就任しました。これはニュートンが強く推薦し、その給料の一部を自分で出すとまで申し出た、とされています。マクローリンは、エディンバラで、数学の教育を立て直し、スコットランドの数学を、ヨーロッパの水準にまで引き上げました。

『流率論』と、ジャコバイトの反乱

1734年、哲学者バークリーが、微積分の考え方を「あいまいだ」と批判しました。これに答えるため、マクローリンは1742年に、2巻の大きな本『流率論(Treatise of Fluxions)』を出しました。微積分の議論を、ギリシャ数学のように厳密な形に整えようとした本です。この本にマクローリン展開、積分判定法、回転する流体の形の研究が入っています。1745年、ジャコバイト(追放された王家の復権をめざす人々)が反乱を起こし、エディンバラが攻められました。マクローリンは町の防衛を手伝いましたが、反乱軍が近づいたため、イングランドへ避難しました。この心労と体の不調がたたって、1746年6月14日、エディンバラで亡くなりました。48歳でした。

年できごと
1698年2月、スコットランドのキルモダンで生まれる
1709年11歳でグラスゴー大学に入る
1712年14歳で修士の学位。重力についての論文
1717年19歳でアバディーンの数学教授になる
1719年ロンドンでニュートンに会う。王立協会の会員になる
1720年『有機的幾何学』を出版
1725年エディンバラ大学の数学教授になる
1740年パリ科学アカデミーの潮汐論の賞を、オイラー、ダニエル・ベルヌーイらと分け合う
1742年『流率論』を出版(マクローリン展開・積分判定法・回転する流体)
1745年ジャコバイトの反乱。エディンバラの防衛を手伝う
1746年6月14日、エディンバラで亡くなる(48歳)
1748年死後に『代数学論』が出版される(連立方程式の解法を含む)

マクローリンの主な業績をやさしく解説

業績1 マクローリン展開(べき級数への展開)

関数を、xx のべき乗の足し算に直す方法です。作り方は、次の3つの手順です。

  • (1) 関数 f(x)f(x) を、何回も微分する。
  • (2) それぞれに x=0x=0 を入れて、値 f(0),f′(0),f′′(0),…f(0),f'(0),f''(0),\dots を出す。
  • (3) f(n)(0)n!xn\dfrac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n を、n=0,1,2,…n=0,1,2,\dots と足す。

微分の意味と階乗の意味が材料です。とくに大事な展開は、次の5つです。

ex=1+x+x22!+x33!+⋯sin⁡x=x−x33!+x55!−⋯e^x=1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots\qquad\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\cdots cos⁡x=1−x22!+x44!−⋯ln⁡(1+x)=x−x22+x33−⋯\cos x=1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\cdots\qquad\ln(1+x)=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}-\cdots (1+x)α=1+αx+α(α−1)2!x2+⋯(1+x)^{\alpha}=1+\alpha x+\frac{\alpha(\alpha-1)}{2!}x^2+\cdots

ln⁡(1+x)\ln(1+x) の展開は −1<x≦1-1<x\leqq1 で、(1+x)α(1+x)^\alpha は ∣x∣<1|x|<1 で成り立ちます。最後の式は、ニュートンの一般二項定理と同じ形で、α\alpha が自然数なら、二項定理そのものになります。図1のように、項をふやすほど、x=0x=0 の近くで関数にぴったり重なります。

どんな範囲で成り立つの? 収束半径

展開が成り立つ範囲を、収束半径といいます(べき級数と収束半径)。たとえば 11+x2=1−x2+x4−⋯\dfrac{1}{1+x^2}=1-x^2+x^4-\cdots は、∣x∣<1|x|<1 でしか成り立ちません。不思議に見えますが、x2=−1x^2=-1 となる複素数 x=±ix=\pm i で、もとの関数の分母が0になり、値が無限大になってしまうからです。実数の範囲に特別な点はなくても、複素数の世界で、展開できる範囲が決まっています。

収束半径:なぜ 1 までなのかi(値が無限大)−i(値が無限大)01−11/(1+x²) = 1 − x² + x⁴ − …緑の円の内側(|x|<1)でだけ成り立つx²=−1 となる点 ±i が円周上にあるため
1/(1+x²) は、虚数 ±i で無限大になるため、収束半径は1。展開は半径1の円の内側で成り立つ

業績2 『流率論』(ニュートンの微積分を厳密に)

ニュートンの微積分は、「限りなく小さい量(流率)」を使うため、哲学者バークリーから「消えかかった量の幽霊だ」とからかわれました。マクローリンの『流率論』は、このあいまいさを、ギリシャ数学の「取りつくし法」(アルキメデスの方法と同じ、外側と内側から極限をはさむ方法)で証明し直した本です。

この本は、微積分を解説した最初の体系的な教科書のひとつで、のちのヨーロッパで、長く標準的な本として読まれたとされます。流率という言葉は使わなくなっても、「数列や面積を、外側・内側から近づけてはさむ」考え方は、いまの極限の考え方や定積分の意味の定義にも通じています。

業績3 積分判定法(和が収束するかを面積で判定)

無限に足し続ける和が、有限の値に収まるかを、面積で調べる方法です。たとえば、1+14+19+116+⋯1+\dfrac14+\dfrac19+\dfrac1{16}+\cdots(∑1n2\sum\dfrac1{n^2})を考えます。幅1・高さ 1n2\dfrac1{n^2} の長方形を、y=1x2y=\dfrac1{x^2} のグラフの下にならべると、すべての長方形が曲線の下に収まります。

和を面積でおさえる(積分判定法)17長方形の和:1/4+1/9+1/16+…曲線の下の面積(1から∞まで)= 1だから 1+1/4+1/9+… < 1+1 = 2
長方形の面積の和は、曲線の下の面積以下。だから 1/4+1/9+… は 1 以下で、全体は 2 未満

曲線の下の面積 ∫1∞dxx2=1\displaystyle\int_1^\infty\dfrac{dx}{x^2}=1 なので、∑n=2∞1n2<1\sum_{n=2}^\infty\dfrac1{n^2}<1、全体は 22 より小さい、と分かります。この方法は、のちにコーシーも同じ内容を示したため、マクローリン・コーシーの積分判定法とよばれます。マクローリンの発見は、コーシーが生まれる約50年前でした。入試でよく出る「和を積分ではさむ」考え方(積分による不等式の評価(和と積分の大小))の原型です。

業績4 オイラー・マクローリンの公式(和と積分をむすぶ)

f(0)+f(1)+⋯+f(n)f(0)+f(1)+\cdots+f(n) のような和を、積分で近づける公式が、オイラー・マクローリンの公式です。オイラーとマクローリンが、ほぼ同じころ、別々に見つけたとされます。もっとも簡単な形は、

∑k=0nf(k)≈∫0nf(x) dx+f(0)+f(n)2+112(f′(n)−f′(0))−⋯\sum_{k=0}^{n}f(k)\approx\int_0^nf(x)\,dx+\frac{f(0)+f(n)}{2}+\frac1{12}\bigl(f'(n)-f'(0)\bigr)-\cdots

です。図4は、f(x)=x2f(x)=x^2 で、00 から 44 までを台形4つで近づけたものです。台形の面積の和は22、本当の面積は 643≈21.33\dfrac{64}3\approx21.33。差は 23\dfrac23 ですが、これは、112(f′(4)−f′(0))=812=23\dfrac1{12}(f'(4)-f'(0))=\dfrac{8}{12}=\dfrac23 とぴったり一致します。補正の項に出てくる係数 112\dfrac1{12} などは、ヤコブ・ベルヌーイのベルヌーイ数から決まります。

台形で面積を近づける04台形4つの和 = 22本当の面積 ∫x²dx = 64/3 ≒ 21.33差 2/3 = (f′(4)−f′(0))/12 と一致
台形の面積22と、本当の面積64/3の差は、(f′(4)−f′(0))/12=2/3 と一致する

この公式は、スターリングの公式(n!n! の近似)や、数値積分(台形公式、シンプソン公式)の誤差の理論の土台になりました。

業績5 回転する流体の形(マクローリン楕円体)

地球は、回転しているため、赤道方向がふくらんだ平たい形(回転楕円体)をしています。ニュートンは、これを予想しましたが、きちんとした数学的な証明は不十分でした。マクローリンは1742年の『流率論』で、自分の重力でまとまった均一な流体が回転するとき、つり合いの形が平たい楕円体になることを数学で示しました。この形は、いまもマクローリン楕円体とよばれます。

回る流体は、平たい形になるa(赤道)c(極)自転軸a > c:赤道がふくらみ、極がへこむ(へこみは見やすいよう大きくしてあります)
赤道方向がふくらみ、極方向がへこんだ回転楕円体。マクローリンが回転する流体のつり合いの形として示した

この研究は、のちのラグランジュやラプラスの天体の形の理論に引きつがれました。地球の形をめぐっては、フランスの学者との論争もあり、マクローリンの仕事は、ニュートンの重力理論を支える大事な成果とされました。

業績6 幾何学・代数学の仕事

1720年の『有機的幾何学』では、円錐曲線や高次の曲線を、棒を動かして作る方法を研究しました。また、死後の1748年に出版された『代数学論』には、2つ・3つの未知数をもつ連立方程式を、行列式に似た式で解く方法が出てきます。この方法は、のちにスイスの数学者クラメルが1750年に発表したクラメルの公式と同じ形で、マクローリンのほうが先に見つけていた可能性があると指摘されています。数学の名前は、発見の順番とは必ずしも一致しない、という例のひとつです。

マクローリンの名前がつく公式・定理・用語

  • マクローリン展開:テイラー展開で a=0a=0 とした形。exe^x、sin⁡x\sin x、cos⁡x\cos x など。→ マクローリン展開、テイラー展開とテイラーの定理
  • マクローリン・コーシーの積分判定法:∑f(n)\sum f(n) の収束を、∫f(x) dx\int f(x)\,dx で調べる方法。
  • オイラー・マクローリンの公式:和を積分と補正項で表す公式。
  • マクローリン楕円体:回転する均一な流体のつり合いの形。
  • マクローリンの三等分曲線:角の三等分に使える3次曲線。
  • 関連する用語:→ べき級数と収束半径、ロピタルの定理、極限の考え方
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

マクローリン展開は、「微分して0を入れ、n!でわって、xⁿをかけて足す」。この作り方を、まず体で覚えよう。

マクローリンの逸話と名言

11歳の大学生と、19歳の教授

マクローリンは、11歳でグラスゴー大学に入り、14歳で「重力」の論文で学位を取り、19歳で数学教授になった、と伝えられます。教授になるための試験でライバルを破ったときの話は、スコットランドの大学で語り継がれたとされます。ただ、年齢の数え方などの細かい点は、資料によって少しちがうこともあります。

「テイラーの結果の特別な場合」と書いた誠実さ

マクローリンは、1742年の『流率論』で、x=0x=0 で展開する形を取りあげましたが、そこで「この展開はテイラー氏の結果の特別な場合である」と書いた、とされます。ところが、教科書では、その形がマクローリンの名前で呼ばれるようになりました。マクローリン自身は、先に見つけたテイラーの名誉を、きちんと守っていたのです。

ニュートンの推薦

1725年、エディンバラ大学の教授の席があいたとき、ニュートンは強く推薦しました。ニュートンは、マクローリンの給料の一部を自分で出す、とまで申し出たと伝えられています。これは、ニュートンがマクローリンの才能を、それほど高く評価していたことを示す話です。

反乱のなかで町を守る

1745年にジャコバイトの反乱が起きたとき、マクローリンは、町を守るために防壁をつくる仕事を手伝いました。ところが反乱軍がエディンバラに入ってくると、イングランドに避難し、そのときの苦労で体を弱らせたとされます。翌年に亡くなったのは、そのためだと言われています。数学者が、戦争のなかで命を縮めた、悲しい話です。

スターリングとの友情

マクローリンは、同じスコットランドの数学者スターリングと、手紙を通じて友情を結びました。スターリングは、ジャコバイトの立場のために、マクローリンの死後に後任の教授になれなかったとされます。2人の友情は、政治に引き裂かれた、数学者の友情でもありました。

名言について

マクローリンの名言として広く知られた言葉は、確かな出典つきでは確かめられませんでした。そのため、作られた名言を載せないことにしました。そのかわり、マクローリンが示した ex=1+x+x22!+⋯e^x=1+x+\dfrac{x^2}{2!}+\cdots が、どんな名言よりも、数学の美しさを教えてくれます。「複雑な曲線を、簡単な足し算の形で見る」。この考え方が、マクローリンの残したものです。→ 数学でよく使う記号の意味一覧

サクラちゃん

サクラちゃん

積分判定法って、どういうときに使うんですか?

合格先生

合格先生

「たくさんの項を足した和が、ある値より小さい(または大きい)」ことを示したいときに使うんだ。足し算を、長方形の面積に直して、曲線の下の面積と比べる。入試では「Σ1/k² < 2」や「n! の評価」で出るよ。

受験・勉強とマクローリンのつながり

大学受験:数学Ⅲの近似・極限・不等式

高校の教科書には、マクローリン展開そのものは出てきません。しかし、次のような形で、入試に出ます。

  • 1次・2次近似:xx が小さいとき、ex≈1+xe^x\approx1+x、sin⁡x≈x\sin x\approx x、cos⁡x≈1−x22\cos x\approx1-\dfrac{x^2}2、ln⁡(1+x)≈x\ln(1+x)\approx x、1+x≈1+x2\sqrt{1+x}\approx1+\dfrac x2。
  • 極限:lim⁡x→0ex−1−xx2=12\displaystyle\lim_{x\to0}\dfrac{e^x-1-x}{x^2}=\dfrac12 のように、展開して消える項を先に取りのぞく。ロピタルの定理より速く解けることがあります。
  • 不等式の証明:ex≧1+xe^x\geqq1+x、sin⁡x≦x\sin x\leqq x、ln⁡(1+x)≦x\ln(1+x)\leqq x などを、微分で証明する。展開の最初の項から見当がつく。
  • 和を積分ではさむ:∑1k2<2\sum\dfrac1{k^2}<2 のような問題。→ 積分による不等式の評価、区分求積法の使い方

大学入試・大学院入試:収束半径とべき級数

難関大や大学院の入試では、マクローリン展開を使って近似値を求める問題、収束半径を求める問題(べき級数と収束半径)、オイラーの公式を展開から導く問題などが出ます。広義積分とガウス積分の計算で、展開を使うこともあります。

近似の「ずれ」を見積もるには

展開を途中で打ち切ったとき、本当の値とのずれは、次の項くらいになります。たとえば sin⁡0.2\sin0.2 を 0.2−0.236=0.198670.2-\dfrac{0.2^3}{6}=0.19867 と近似したとき、次の項は 0.25120≈0.0000027\dfrac{0.2^5}{120}\approx0.0000027 なので、ずれはその程度です。実際の値は 0.198669⋯0.198669\cdots で、小数第5位まで合っています。交代する級数(プラスとマイナスが交互に出る級数)では、「ずれは、最初に捨てた項より小さい」という性質もあり、入試で誤差を評価する問題に使われます。このように、ずれの大きさまで分かるのが、近似式にはない、展開の強みです。

中学受験・高校受験:数列の規則

マクローリンの業績は、中学受験・高校受験には直接は出ません。ただ、1+12+14+18+⋯=21+\dfrac12+\dfrac14+\dfrac18+\cdots=2 のように、無限に足しても有限の値になる、という考え方は、中学受験の算数の問題にもときどき出ます。→ 数列の極限・無限等比級数

物理とのつながり:近似の道具

高校物理で「sin⁡θ≈θ\sin\theta\approx\theta(振り子)」「1+x≈1+x2\sqrt{1+x}\approx1+\dfrac x2(相対性理論の近似)」と使うのは、マクローリン展開の最初の項です。これらの近似の精度を、「次の項がどれくらい小さいか」で見積もるのが、展開のよさです。

勉強法として:「作り方」を覚える

マクローリン展開は、公式として丸暗記するより、作り方(微分して0を入れ、n!n! でわる)を覚えるほうが確実です。忘れても自分で出せます。勉強の進め方は数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)で、難関大の出題は京大理系数学の出題分析で確かめてください。

マクローリンがその後の数学にあたえた影響

  • 解析学:べき級数による展開は、オイラー、ラグランジュ、コーシーへと受けつがれ、現代の解析学の中心的な道具になりました。
  • 数値計算:オイラー・マクローリンの公式は、台形公式やシンプソン公式の誤差の評価に使われます。
  • 天体の形の理論:マクローリン楕円体は、星や惑星の形の理論の出発点になりました。
  • 微積分の厳密化:『流率論』は、のちのコーシーやワイエルシュトラスによる、極限を使った厳密な微積分の準備になりました。
  • スコットランドの数学:マクローリンの教育によって、エディンバラ大学が数学の拠点になりました。

数学の公式は算数・数学の公式一覧(公式辞典)、用語は数学用語辞典(用語の意味を1語1ページ)の一覧もどうぞ。

マクローリンに挑戦!練習問題

やさしい

  1. ex≈1+x+x22e^x\approx1+x+\dfrac{x^2}2 を使って、e0.2e^{0.2} の近似値を求めなさい。
    答えと解説を見る1+0.2+0.042=1+0.2+0.02=1+0.2+\dfrac{0.04}{2}=1+0.2+0.02= 1.22。(正しい値は 1.2214…)
  2. ln⁡(1+x)≈x−x22+x33\ln(1+x)\approx x-\dfrac{x^2}2+\dfrac{x^3}3 を使って、ln⁡1.1\ln1.1 の近似値を求めなさい。
    答えと解説を見るx=0.1x=0.1:0.1−0.012+0.0013=0.1−0.005+0.000333=0.1-\dfrac{0.01}2+\dfrac{0.001}3=0.1-0.005+0.000333= 約0.0953。(正しい値は 0.09531…)

ふつう

  1. cos⁡x=1−x22+x424−⋯\cos x=1-\dfrac{x^2}2+\dfrac{x^4}{24}-\cdots を使って、lim⁡x→0cos⁡x−1+x22x4\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\cos x-1+\frac{x^2}2}{x^4} を求めなさい。
    答えと解説を見る分子は x424−x6720+⋯\dfrac{x^4}{24}-\dfrac{x^6}{720}+\cdots。x4x^4 でわると 124−x2720+⋯\dfrac1{24}-\dfrac{x^2}{720}+\cdots で、x→0x\to0 のとき 124\dfrac1{24}。
  2. e−x2≈1−x2+x42−x66e^{-x^2}\approx1-x^2+\dfrac{x^4}2-\dfrac{x^6}6 を使って、∫01e−x2 dx\displaystyle\int_0^1e^{-x^2}\,dx の近似値を求めなさい。
    答えと解説を見る各項を積分して 1−13+110−142=1-\dfrac13+\dfrac1{10}-\dfrac1{42}= 約0.743。(正しい値は 0.7468…。項をふやすと近づく)

むずかしい

  1. すべての自然数 nn について ∑k=1n1k2<2\displaystyle\sum_{k=1}^n\frac1{k^2}<2 が成り立つことを、積分を使って示しなさい。
    答えと解説を見るk≧2k\geqq2 のとき、1k2<∫k−1kdxx2\dfrac1{k^2}<\int_{k-1}^k\dfrac{dx}{x^2}。k=2k=2 から nn まで足すと ∑k=2n1k2<∫1ndxx2=1−1n<1\sum_{k=2}^n\dfrac1{k^2}<\int_1^n\dfrac{dx}{x^2}=1-\dfrac1n<1。最初の項 1 をたして、∑k=1n1k2<\sum_{k=1}^n\dfrac1{k^2}< 2。
  2. マクローリン展開を使って、lim⁡x→0ex−1−x−x22x3\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{e^x-1-x-\frac{x^2}2}{x^3} を求めなさい。
    答えと解説を見るex−1−x−x22=x36+x424+⋯e^x-1-x-\dfrac{x^2}2=\dfrac{x^3}6+\dfrac{x^4}{24}+\cdots。x3x^3 でわって x→0x\to0 とすると、16\dfrac16。

マクローリンと関係する数学者

18世紀の数学者

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有名な数学者一覧(年代順・国別・分野別)で、ほかの数学者も見られます。数学者たちが挑んだ問題は数学の難問・未解決問題の一覧にまとめています。

読みもの(合格大作戦の数学の記事)

よくある質問

マクローリンは何をした人ですか?

コリン・マクローリンは、18世紀前半のスコットランドの数学者です。11歳で大学に入り、19歳で教授になりました。マクローリン展開の名前で知られ、『流率論』でニュートンの微積分を厳密に説明し、積分判定法や回転する流体の形も研究しました。

マクローリン展開とは何ですか?

関数を、x のべき乗の足し算(べき級数)で表す方法で、テイラー展開の中心を x=0 にした場合です。e^x、sin x、cos x、log(1+x) などの展開が、数学Ⅲの近似や大学入試で使われます。

マクローリン展開とテイラー展開の違いは何ですか?

マクローリン展開は、テイラー展開で展開する点を a=0 に決めた特別な場合です。マクローリン自身も、1742年の本で、これがテイラーの結果の特別な場合だと書いたとされます。入試ではマクローリン展開のほうがよく使われます。

積分判定法とは何ですか?

無限に足し続ける和が収束するかどうかを、曲線の下の面積(積分)で調べる方法です。長方形の面積の和を、曲線の下の面積と比べます。マクローリンが見つけ、のちにコーシーも示したので、マクローリン・コーシーの積分判定法とよばれます。

オイラー・マクローリンの公式とは何ですか?

和 f(0)+f(1)+…+f(n) を、積分と、両端の値や微分の補正項で近似する公式です。オイラーとマクローリンが別々に見つけたとされます。補正項の係数には、ベルヌーイ数が現れます。

マクローリンは何歳で亡くなりましたか?

1746年6月14日にエディンバラで、48歳で亡くなりました。1745年のジャコバイトの反乱の際、エディンバラの防衛を手伝い、その後イングランドに避難したときの苦労で体を弱めたとされます。

マクローリンとニュートンはどんな関係ですか?

マクローリンは、1719年にロンドンでニュートンに会いました。ニュートンはマクローリンの才能を評価し、1725年のエディンバラ大学の教授職に強く推薦したと伝えられます。マクローリンは、ニュートンの微積分を擁護する本を書きました。

マクローリン展開は受験に出ますか?

マクローリン展開そのものは高校の教科書にありませんが、1次近似(sin x≒x など)、極限、不等式の証明、和を積分ではさむ問題など、その考え方を使う問題が大学入試に出ます。大学の微積分や大学院入試では本格的に使います。

収束半径とは何ですか?

べき級数が成り立つ範囲の半径のことです。たとえば 1/(1+x²) の展開は |x|<1 でだけ成り立ち、収束半径は1です。複素数の ±i で値が無限大になるため、範囲が半径1に限られます。

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出典・参考

  • J. J. O’Connor, E. F. Robertson, “Colin Maclaurin”, MacTutor History of Mathematics Archive(St Andrews 大学)
  • C. Maclaurin, “Geometria Organica”(1720年)、“A Treatise of Fluxions”(1742年)、“A Treatise of Algebra”(1748年)
  • 肖像画:David Steuart Erskine「Colin Maclaurin」(1795年ごろ)、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

最終更新:2026年11月2日/作成:大学受験合格大作戦