
この記事の結論
- 孫子の兵法でいちばん有名な言葉は、謀攻篇の「知彼知己,百戦不殆」(彼を知り己を知れば、百戦殆(あや)うからず)です。相手と自分の両方を知っていれば、何度戦っても危なくない、という意味。続きに「彼を知らずして己を知れば一勝一負す」「彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆うし」があります
- 武田信玄の旗で知られる「風林火山」も『孫子』の軍争篇の言葉です。どちらも返り点・置き字・「如(ごとし)」など、漢文の基本の句法がつまった、受験の教材にぴったりの文です
孫子の兵法で一番有名な言葉(元の記事)
まずは、合格大作戦を始めた2008年6月に書いた元の記事です(あとで「共通テスト」に書きかえた部分もそのままのせます)。
孫子の兵法で一番有名な言葉
【知彼知己者、百戰不殆】(原文)
これを直訳すると
【彼を知り己を知れば百戦危うからず。】
『敵のことを知り、自分のことを知れば必ず勝つ!』
という意味ですが、実はこの言葉には続きがあります。
【不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戰必殆】
【彼を知らずして己を知れば、一勝一敗す。彼を知らずして己を知らざれば、毎戦必ず危うし】
『敵のことを知らないけれど自分のことを知っていれば勝敗つかず引き分ける。敵のことを知らずに自分のことも知らなければ全部まける。』
という意味です。
また、武田信玄で有名な『風林火山』も実は孫子の兵法を引用したものです。
【故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山】
この意味は
【その疾きこと風の如く、その徐かなること林の如く、侵略すること火の如く、動かざること山の如し】
です。
漢文を勉強している受験生諸君は意味を理解できるでしょう。
両文(彼を知り・・・、風林火山)とも共通テストや国公立二次試験、私大入試に出題されてもおかしくありません。記憶に留めておきましょう。
時間があれば【孫子の兵法】を読んでみるのもよいでしょう。
ドキュメンタリーDVDもあるので読書より、ビジュアルはという方は観て覚えるのもよいでしょう。
――ここまでが元の記事です。2026年10月の書き直しで、次の点を直し、漢文として読むための説明を足しました。
- 「一勝一敗す」→「一勝一負す」:原文が「一勝一負」なので、書き下しも「一勝一負す」とするのがふつうです(意味は「勝ったり負けたり」)。
- 「彼を知らずして己を知らざれば、毎戦必ず危うし」→「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」:原文「不知彼不知己」には「而」がないので「して」は入れず、「毎戦」は「戦う毎(ごと)に」と返って読むのが一般的です。
- 「侵略」→「侵掠(しんりゃく)」:『孫子』の原文の字は「侵掠」です(「掠」はかすめ取る意味)。
- 「必ず勝つ」の訳について:「殆うからず」は「危なくない・負けない」という意味で、「必ず勝つ」とまでは言っていません。この記事では「何度戦っても危なくない」と訳します。
- 「者」や「故」のあるなし:『孫子』は古い本なので、テキスト(版)によって字が少しちがいます。この記事の原文は、中国の古典を集めた電子図書館(維基文庫)の『孫子兵法』でたしかめた形を中心にしています。
この「彼を知り己を知る」を、京大受験の作戦の立て方に当てはめたのが「京大合格作戦の立て方|彼を知り己を知る」です。そちらが「受験の作戦」の記事なのに対して、この記事は漢文としての孫子――原文をどう読むか、どんな句法が入っているか――に絞って書いています。
孫子の兵法とは:作者・時代・13篇
『孫子(そんし)』は、中国の春秋時代の兵法家・孫武(そんぶ)の作とされる兵法書です。「孫子の兵法」「孫子兵法」とも呼ばれます。孫武は、呉(ご)の王・闔閭(こうりょ)に仕えたと伝えられます。「孫子」の「子」は「先生」という意味の敬称で、「孔子」「孟子」と同じ使い方です。
今読まれている『孫子』は全13篇です。この13篇の形は、三国時代の魏の曹操(そうそう)が注をつけた本にさかのぼるとされます。また、1972年に中国の山東省・銀雀山(ぎんじゃくざん)の漢代の墓から竹簡(竹の札に書かれた文書)が見つかり、孫武の『孫子』とは別に、子孫とされる孫臏(そんぴん)の兵法書があったことがはっきりしました。世界史で「新しく見つかった資料が古典の研究を変えた」例としても知っておくと役立ちます。
篇の名前には「計(はかりごと)」「謀(はかる)」「争」「変」「間(スパイ)」など、戦う前にどれだけ考えるかを表す字が多く入っています。『孫子』は「どう戦うか」より先に、「戦わずにすむ方法」「戦う前の準備」を重く見る本だ、とよく言われます。その考え方がいちばんよく表れているのが、次の謀攻篇です。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の原文・書き下し・意味
謀攻篇(ぼうこうへん、謀攻第三)の結びの部分です。原文・書き下し文・現代語訳を並べます。
| 原文 | 書き下し文 | 現代語訳 | |
|---|---|---|---|
| ① | 故曰、知レ彼知レ己、百戦不レ殆。 | 故に曰く、彼を知り己を知れば、百戦殆(あや)うからず。 | だから言う。相手を知り自分を知っていれば、百回戦っても危なくない。 |
| ② | 不レ知レ彼而知レ己、一勝一負。 | 彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。 | 相手を知らず自分だけを知っていれば、勝ったり負けたりする。 |
| ③ | 不レ知レ彼不レ知レ己、毎レ戦必殆。 | 彼を知らず己を知らざれば、戦う毎(ごと)に必ず殆うし。 | 相手も自分も知らなければ、戦うたびに必ず危ない。 |
(書き下し文は、本によって「知らば」「知れば」、「百戦して殆うからず」など少しずつ違います。どれも意味は同じです。)
返り点で読む順番を確かめる
漢文は、中国語の語順で書かれた文を、日本語の語順に並べかえて読みます。そのための記号が返り点です。②の文と、同じ謀攻篇の「不戦而屈人之兵(戦はずして人の兵を屈する)」で、読む順番を図にしました。
②の「不レ知レ彼」は、レ点が2つ続く「連続のレ点」です。下から「彼→知→不」と1字ずつ上に返って「彼を知らず」。英語の「don't know him」と同じで、中国語では「否定(不)→動詞(知)→目的語(彼)」の順に並ぶので、日本語にするとき逆から読むことになります。
「殆」「毎」「必」の読み方
- 殆(あやうし):「危うい」と同じ意味。「百戦殆うからず」は「危うし」の未然形「危うから」+打消の「ず」です。今の日本語では「ほとんど(殆ど)」の読みが有名なので、読みを問う問題でねらわれやすい字です。
- 毎(ごとに):「毎レ戦」で「戦う毎に」。下の動詞を読んでから返ります。
- 必(かならず):副詞。「必殆」で「必ず殆うし」。
- 故曰(ゆゑにいはく):「だから〜と言う」。まとめの言葉の前によく置かれます。
漢字そのものの読み・書き順は、漢字合格大作戦の孫・兵・必・毎のページでも確かめられます(「殆」は常用漢字ではありません)。
「百戦百勝は善の善なる者に非ず」:同じ謀攻篇の名言
謀攻篇には、もう一つ有名な一節があります。
原文:是故百戦百勝、非二善之善者一也。不レ戦而屈二人之兵一、善之善者也。
書き下し:是(こ)の故に百戦百勝は、善の善なる者に非(あら)ざるなり。戦はずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。
現代語訳:だから、百回戦って百回勝つのが最もよいのではない。戦わずに相手の軍を降参させるのが、最もよいのである。
「非(あらず)」は否定の字で、「非二〜一」と一・二点で返ります。「〜に非ず」「〜に非ざるなり」の形は、漢文の否定の基本形です。

合格先生
「百戦百勝」より「戦わずに勝つ」。孫子は戦う前の準備をいちばん大事にした人なんだ。受験でいえば、本番の前の過去問研究だね。
風林火山の原文・書き下し・意味(軍争篇)
「風林火山」は、軍争篇(ぐんそうへん、軍争第七)の一節を4字に縮めた言葉です。原文には、旗に書かれた4句のあとに、さらに2句が続きます。
| 原文 | 書き下し文 | 意味 |
|---|---|---|
| 其疾如レ風 | 其の疾(はや)きこと風の如く | 動くときは風のようにすばやく |
| 其徐如レ林 | 其の徐(しづ)かなること林の如く | 待つときは林のように静かに |
| 侵掠如レ火 | 侵掠すること火の如く | 攻めるときは火が燃え広がるように激しく |
| 不レ動如レ山 | 動かざること山の如く | 守るときは山のようにどっしりと |
| 難レ知如レ陰 | 知り難きこと陰の如く | 動きは暗やみのように相手に知られず |
| 動如二雷震一 | 動くこと雷震の如し | 動き出すと雷のようにいきなり |
ポイントは、6つが「全部いつもそうしろ」ではなく、場面によって使い分けろという意味だということです。速く動くべきときと、じっと待つべきときがある。辞書でも「時機や情勢に応じて行動する」ことのたとえとして説明されています。
武田信玄の「孫子の旗」
戦国時代の武将・武田信玄は、この4句を書いた旗を使ったことで知られます。山梨県甲州市の雲峰寺(うんぽうじ)には「孫子の旗」と呼ばれる旗が伝わっていて、山梨県の文化財に指定されています。1582年に武田氏がほろびる天目山の戦いのとき、武田勝頼の一族がこの旗を山伝いに運んだ、と伝えられています。
なお「風林火山」という4字の呼び名は、のちの時代に広まった略し方です。旗に書かれているのは、あくまで『孫子』の原文の4句です。
旗に書かれなかった「陰」と「雷」
原文の後半の「知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如し」は、旗には入っていません。「陰」は日の当たらない暗いところ、「雷震」は雷がとどろくことです。「相手にこちらの動きを悟らせず、動くときは一気に」という意味で、前の4句をしめくくっています。一部だけが有名になった言葉は、原文の続きを知っていると読解で強い――これは元の記事で「彼を知り己を知れば」の続きを紹介したのと同じ考え方です。
漢文の句法:孫子で学ぶ返り点・置き字・「如」
元の記事に「漢文を勉強している受験生諸君は意味を理解できるでしょう」とあります。では、どんな知識があれば理解できるのか。孫子の2つの文に入っている句法を、ひとつずつ取り出します。
返り点の種類(レ点・一二点)
- レ点:すぐ下の1字を読んでから、1字上に返る。「知レ彼」=彼を知る。
- 一・二点:2字以上はなれた字に返る。「屈二人之兵一」=人の兵を屈す。
- 上・下点:一・二点をはさんで、さらに大きく返るときに使う(孫子のこの2文には出てきません)。
書き下し文を書くときの3つの決まり
元の記事では「彼を知り己を知れば…」を「直訳」と呼んでいましたが、漢文の世界ではこれを書き下し文といいます。書き下し文を自分で書くときは、次の3つの決まりを守ります。
- 日本語の助詞・助動詞にあたる字はひらがなにする:「不」は「ず」、「也」は「なり」、「之」は「の」。だから「百戦不殆」は「百戦殆うからず」とひらがなで書きます。
- 置き字は書かない:「而」は書き下し文に出てきません。かわりに前の語の送り仮名「して」で表します。
- 歴史的かなづかいで書く:「戦はずして」「如し」など。試験では、問題文の書き下しの形に合わせれば大丈夫です。
この3つを守るだけで、記述の「書き下し文に改めよ」で落とす点がぐっと減ります。特に「ず」「なり」を漢字のまま残すまちがいは、とても多いので気をつけましょう。
置き字「而」
「不知彼而知己」の「而(じ)」は置き字で、ふつうは読みません。前の語に「て」「して」「ども」などの送り仮名をつけて、つながりを表します。②では「知らずして」の「して」が「而」の働きです。「戦はずして人の兵を屈する」の「して」も同じです。置き字にはほかに「於・于・乎(場所・対象など)」「矣・焉(文末)」などがあります。
「如」の4つの読み
風林火山の「如」は、比況(たとえ)の「ごとし」です。ところが「如」は、入試でよく出る読みの多い字でもあります。
- ごとし:「如レ風」=風の如し(風のようだ)。「〜の如く」と連用形で次につなぐことも多い。「若」も同じ読み方をします。
- しく:「不レ如」で「〜に如かず(〜に及ばない)」。比較の形で、「百聞は一見に如かず」が有名です(これは『孫子』ではなく『漢書』の言葉)。
- もし:文のはじめに置いて仮定(もしも〜ならば)。
- いかん:「如何」で「どうしたらよいか」(方法・処置を問う)。「何如(いかん)」はふつう「どうであるか」(状態を問う)で、意味がちがうので注意。
漢字の如のページでも、音読み・訓読みを確かめられます。
再読文字:1字を2回読む字
孫子のこの2文には入っていませんが、句法の問題でいちばんねらわれるのが再読文字です。1回目は副詞のように、2回目は助動詞などとして読みます。
| 字 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 未 | いまだ〜ず | まだ〜ない |
| 将・且 | まさに〜んとす | 今にも〜しようとする |
| 当 | まさに〜べし | 当然〜すべきだ |
| 応 | まさに〜べし | きっと〜だろう |
| 宜 | よろしく〜べし | 〜するのがよい |
| 須 | すべからく〜べし | ぜひ〜する必要がある |
| 猶・由 | なほ〜ごとし | ちょうど〜のようだ |
| 盍 | なんぞ〜ざる | どうして〜しないのか |
「須(すべからく〜べし)」は、今の日本語で「すべからく=すべて」と誤って使われることが多い言葉です。くわしくは「「すべからく」の正しい意味」の記事で説明しています。未・将・須の漢字のページもあわせてどうぞ。
うかるくん
漢文って、返り点を追いかけてるうちに意味がわからなくなっちゃうんです。
合格先生
最初は「読む順番」と「意味」を分けて練習しよう。まず返り点だけで書き下し文を作る。それができたら、書き下し文を今の日本語に直す。2段に分けると迷わないよ。
サクラちゃん
「彼を知り己を知れば」なら、もう意味を知ってるから、返り点の練習にちょうどいいですね。
合格先生
その通り。意味を知っている有名な文で句法を覚えるのが近道なんだ。孫子や論語の名言は、そのための最高の教材だよ。
孫子から生まれた故事成語・名言一覧
『孫子』からは、今も使われる言葉がたくさん生まれています。原文といっしょに覚えると、漢文の読解でも、現代文・小論文でも使えます。
| 言葉 | 篇 | 原文 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 彼を知り己を知れば百戦殆うからず | 謀攻 | 知彼知己,百戦不殆 | 相手と自分の両方を知れば、何度戦っても危なくない |
| 百戦百勝は善の善なる者に非ず | 謀攻 | 百戦百勝,非善之善者也 | 戦って勝ち続けるより、戦わずに相手を従わせるのが最上 |
| 風林火山 | 軍争 | 其疾如風,其徐如林,侵掠如火,不動如山 | 時と場合に応じて、速さと静けさを使い分ける |
| 呉越同舟 | 九地 | 呉人与越人相悪也,当其同舟而済… | 仲の悪い者どうしでも、同じ危機には助け合う |
| 始めは処女の如く後は脱兎の如し | 九地 | 始如処女…後如脱兎 | はじめはおとなしく見せ、あとで素早く動く |
| 兵は詭道なり | 始計 | 兵者,詭道也 | 戦いは相手をあざむくことが基本 |
| 拙速(兵は拙速を聞く) | 作戦 | 兵聞拙速,未睹巧之久也 | 多少まずくても早く終えるほうがよい(長引かせない) |
「呉越同舟」は、仲の悪かった呉の人と越の人でも、同じ舟で川を渡るときに嵐にあえば左右の手のように助け合う、という九地篇のたとえから。「拙速」は、今では「やり方が雑で速いだけ」という悪い意味で使われることが多いですが、もとの作戦篇では「戦いは長引かせるより、早く終えるほうがよい」という意味で使われています。言葉の意味が時代とともに変わる例として、現代文の語彙問題でも役立ちます。
故事成語の成り立ちは、「杜撰(ずさん)の読み方・意味・由来」でも同じように図解しています。また、論語の「志学・而立・不惑」から生まれた年齢の呼び名は「年齢の名称(還暦・古希・米寿など)」で紹介しています。
孫子は入試にどう出る?共通テスト・2次・私大の漢文
元の記事に「共通テストや国公立二次試験、私大入試に出題されてもおかしくありません」とあります。ここでは、漢文の試験がどんな形なのかを確かめておきましょう。
共通テストの国語と漢文
大学入学共通テスト(共通テスト、旧センター試験)の国語は、2025年度から大問5問・90分・200点になりました。内わけは現代文(評論・小説・実用的な文章など)が110点、古文45点、漢文45点です(2026年度も同じ形)。漢文は200点のうち2割をこえる大きさで、しかも句法と語の読みを知っていれば得点しやすい分野です。2027年の共通テストの日程・時間割は「2027年 共通テストの時間割」にまとめています。
共通テストの漢文では、たとえば次のような形の問いがよく見られます。
- 返り点と書き下し文の組み合わせを選ぶ(図2のような読む順番の問題)
- 語の読み・意味を選ぶ(「殆」「如」「故」など)
- 句法をふまえた解釈を選ぶ(否定・比較・再読文字など)
- 本文の内容と、別の文章・資料とをくらべて考える
『孫子』の文が実際にどの年の試験に出たか、ここでは言い切りません。大事なのは、出典が何であっても、問われる句法は同じだということです。孫子の2文で返り点・置き字・「如」を確実にしておけば、ほかの文章でもそのまま使えます。
国公立2次・私大の漢文
国公立大学の2次試験(個別学力検査)や私立大学の入試で漢文を出すかどうかは、大学・学部によってちがいます。漢文をまったく出さない入試もあれば、書き下し文・現代語訳・説明を記述で書かせる入試もあります。志望校の募集要項と過去問で必ず確かめましょう。志望校の情報をどう集めるかは、同じ時期に書き直した「志望校の情報の集め方」でまとめています。これこそ「彼(志望校の入試)を知る」の第一歩です。
京都大学(京大)の国語の出題の特徴は「京大 国語 文語文の勉強法」、理系の受験生の国語は「理系でも京大は国語が要る」、記述の書き方は「現代文の記述問題の対策・勉強法」が参考になります。
漢文の勉強法:孫子を教材にする5ステップ
元の記事の「記憶に留めておきましょう」を、具体的な手順にします。有名な一節を1つ選んで、次の順に進めてください。
- 音読する:書き下し文を声に出して5回。リズムで覚えると、試験で見たときにすぐ気づけます。
- 返り点だけを見て書き下す:原文(白文に返り点をつけたもの)を見て、ノートに書き下し文を書く。図2の「読む順番の数字」を自分でつけるのが練習になります。
- 句法に印をつける:否定(不・非)、置き字(而)、比況(如)、再読文字など、句法の字を色ペンで囲む。
- 現代語訳を書く:書き下し文を今の日本語に。「殆うし=危ない」のように、1語ずつ意味を確かめます。
- 白文で読めるか試す:返り点のない白文を見て、読めるかどうか。読めたらその文は「自分のもの」です。
覚えた一節を「受験の格言」として机の前にはっておくのもおすすめです。格言の選び方・使い方は「受験の格言・名言100選」、二宮尊徳の「積小為大」を原文から読む例は「「積小為大」の意味と読み方」にあります。覚えにくい読みは、語呂合わせを入口にしてもかまいません(「語呂合わせの覚え方と作り方」)。
サクラちゃん
孫子の言葉って、受験そのものにも使えますよね。「彼を知り己を知る」とか。
合格先生
そう、だから2つの記事に分けているんだ。受験の作戦に使う話は「京大合格作戦の立て方」、漢文として読む話はこの記事。両方読むと、言葉の意味がいっそう深くわかるよ。
うかるくん
早稲田・慶應を目指す友だちにも「敵を知る」の話、教えてあげます!
「孫子の兵法にあるように敵を知り己を知る」という考え方で書いた私立大学の記事もあります。「早稲田・慶應合格大作戦」をどうぞ。京大の配点から目標点を決める方法は「京大合格の戦略の立て方」で、まさに「彼を知る」の実践です。
孫子の兵法をもっと読みたい人へ:本の選び方
元の記事では「時間があれば【孫子の兵法】を読んでみるのもよいでしょう」と、本とDVDを紹介していました。紹介していた本は次の2冊です(元の記事のAmazonの画像の部品は、今は検索のリンクに置きかえています)。
- 『孫子の兵法』(守屋洋、三笠書房)
- 『新訳 孫子』(兵頭二十八、PHP研究所、2008年)
- 孫子の兵法のドキュメンタリーDVD(元の記事の「読書より、ビジュアルは」という方向け)
受験生が孫子の本を選ぶときは、次の3点を見るとよいでしょう。
- 原文・書き下し文・現代語訳の3つがそろっているか:漢文の勉強に使うなら、3つ並んでいる本が便利です。現代語訳だけの本は、読み物としては読みやすいですが、句法の練習にはなりません。
- 13篇の全部が入っているか:名言だけを集めた本もあります。全体の流れを知りたいなら全訳を。
- 受験の直前期には読まない:読み物として楽しむのは、時間のある高1・高2や、入試が終わってからがおすすめです。直前期は句法の問題集と過去問を優先しましょう。
本は版が変わることがあるので、買う前に中身と最新の版を確かめてください。

サクラちゃん
有名な一節で返り点・置き字・「如」を覚えれば、どんな出典の漢文でも読める! まずは「彼を知り己を知れば」を白文で読めるようにします。
まとめ:孫子の兵法を漢文で読む
- 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は謀攻篇の言葉。続きは「彼を知らずして己を知れば一勝一負す」「彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆うし」。
- 「風林火山」は軍争篇の言葉。原文は「其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山」で、さらに「難知如陰、動如雷震」が続く。
- 『孫子』は春秋時代の孫武の作とされる全13篇の兵法書。
- 孫子の2文には、レ点・一二点・置き字「而」・比況の「如」・否定の「不」「非」がそろっている。「如」は ごとし・しく・もし・いかん と読み分ける。
- 共通テストの漢文は第5問・45点。句法と語の読みを、意味を知っている有名な文で固めるのが近道。
- 2次・私大で漢文が出るかは大学・学部で違う。志望校の募集要項と過去問で確かめる(=彼を知る)。
国語の勉強の入口は「国語まとめ」、古文の文法は「古文文法辞典」、漢字は「漢字合格大作戦」にあります。漢文や国語の勉強で聞きたいことがあれば「受験の質問・相談」で受け付けています。
漢文の文法をくわしく(漢文文法・句法辞典)
孫子の原文を自分で書き下せるように、漢文の文法をまとめています。
よくある質問
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の意味は?
相手と自分の両方をよく知っていれば、何度戦っても危なくない、という意味です。『孫子』の謀攻篇の言葉で、原文は「知彼知己,百戦不殆」です。
「彼を知り己を知れば」の続きは?
「彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず殆うし」と続きます。相手を知らなければ勝ったり負けたり、両方知らなければ戦うたびに危ない、という意味です。
風林火山の原文と読み方は?
原文は『孫子』軍争篇の「其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山」で、「其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」と読みます。続きに「難知如陰、動如雷震」があります。
孫子の兵法は誰が書いた本ですか?
中国の春秋時代の兵法家・孫武の作とされます。今読まれている全13篇の形は、魏の曹操が注をつけた本にさかのぼるとされています。
漢文の「如」はどう読みますか?
比況の「ごとし(〜のようだ)」、比較の「しく(不如=〜に及ばない)」、仮定の「もし」、「如何」の「いかん」などがあります。文の形で読み分けます。
あわせて読みたい
- 返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方
- 書き下し文のきまりと書き方
- 京大合格作戦の立て方|彼を知り己を知る、入試分析・自己分析・合格体験記の使い方
- 志望校の情報の集め方
- 早稲田・慶應 合格大作戦
- 「努力した者が全て報われるとは限らん」の意味|「すべからく」の正しい意味
- 杜撰(ずさん)の読み方・意味・由来
- 国語まとめ
出典・参考
- 元の本文:2008年6月の元の記事(大学受験合格大作戦)
- 『孫子』の原文(謀攻第三・軍争第七・始計・作戦・九地、13篇の篇名):維基文庫『孫子兵法』
- 孫武・13篇・曹操の注・1972年の銀雀山の竹簡・孫臏兵法:コトバンク「孫子」の項(日本大百科全書ほか)
- 雲峰寺の「孫子の旗」(山梨県指定文化財、天目山の戦いのとき運ばれたと伝えられる):山梨県の観光サイト「山梨の歴史を秘めた宝物・文化財」
- 守屋洋『孫子の兵法』(三笠書房)、兵頭二十八『新訳 孫子』(PHP研究所、2008年):国立国会図書館サーチの書誌
- 大学入学共通テストの国語の配点(2025年度から 90分・200点、現代文110・古文45・漢文45):大学入試センターの公表による各種報道
最終更新:2026年10月27日/作成:大学受験合格大作戦










