バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(BSD予想)とは?わかりやすく|100万ドルの懸賞・楕円曲線・合同数

バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(BSD予想)とは?わかりやすく|100万ドルの懸賞・楕円曲線・合同数

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未解決

バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想

ひとことで言うと

楕円曲線の上の分数の座標の点が何個あるかを、L関数が1で0になる回数で読み取れるか。2000年に100万ドルの懸賞問題に。2026年11月時点で未解決。

問題楕円曲線の有理点の階数が、L関数の s=1 での0の位数に等しいか(さらにくわしい式も成り立つか)
出された年1965年ごろ(バーチ、スウィンナートン=ダイアー、コンピューター実験から)
状態未解決(2026年11月時点)
懸賞金100万ドル(クレイ数学研究所、2000年のミレニアム懸賞問題)
公式の問題説明アンドリュー・ワイルズ
分かっていること0の位数が0か1のときは成り立つ(グロス・ザギエ、コリヴァギンら)
分野数論(楕円曲線・L関数)

このページのポイント

  • BSD予想は、楕円曲線の有理点(分数の座標の点)の数(階数)を、L関数が1で0になる回数で読み取れるか、という問題。合同数問題とも深く関わる
  • 1960年代のコンピューター実験から生まれ、0の位数が0か1のときは証明済み。2000年にクレイ数学研究所が100万ドルの懸賞問題に
  • 2026年11月時点で未解決。このページは「いつ解けるか」は予想しない。数値実験は予想を支持するが、実験は証明ではない

バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(BSD予想)とは?(ひとことで)

バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(略してBSD予想)とは、「楕円曲線という図形の上に、分数の座標をもつ点が、どれだけたくさんあるか」を、「ある関数が1のところで0になる回数」で読み取れるという予想です。1960年代に、イギリス・ケンブリッジ大学のブライアン・バーチとピーター・スウィンナートン=ダイアーが、コンピューターを使った実験から見つけました。2000年に、アメリカのクレイ数学研究所が7つのミレニアム懸賞問題の1つに選び、解決した人には100万ドルの賞金が用意されています。

クレイ数学研究所のページでは「未解決」とされ、「多くの実験的な証拠に支えられている」と説明されています。公式の問題説明は、フェルマーの最終定理を証明したアンドリュー・ワイルズが書いています。2026年11月時点で、解決は公式に認められていません。このページは「いつ解けるか」を予想しません。

BSD予想は、とても古い問題につながっています。「分数の解を持つか」という問題は、1700年以上前の古代ギリシャの数学者ディオファントスの業績と生涯の時代から考えられてきました。それが、現代の数学の最先端の問題に育ったのです。

うかるくん

うかるくん

「分数の座標の点」って、どういうことですか?

合格先生

合格先生

たとえば円 x²+y²=1 の上には、(3/5, 4/5) のように、分数で表せる点がある。こういう点を有理点というんだ。BSD予想は、楕円曲線という曲線の上の有理点が、有限個なのか、無限にあるのか、あるならどれくらい多いのかを、別の方法で調べられると言っているんだよ。

BSD予想の意味をやさしく解説

楕円曲線とは?

楕円曲線とは、y2=x3+ax+by^2=x^3+ax+b のように、yの2乗が、xの3次式になる方程式のグラフです(ただし、とがったり、自分で交わったりしないもの)。名前に「楕円」とありますが、形が楕円というわけではありません。楕円の周の長さを求める計算(楕円積分)から、この曲線が現れたため、この名前がつきました。

楕円曲線 y²=x³-x+1 PQR P+Q P=(0, 1)Q=(1, 1)R=(-1, 1)P+Q=(-1, -1) 1直線上の3点の和は0 → 点どうしを足せる
楕円曲線 y²=x³-x+1。有理数の点 P・Q・R が1本の直線上にあり、3点を足すと0になる規則がある

楕円曲線の上の点は、足し算ができるという、ふしぎな性質をもっています。上の図のように、曲線の上の2点 P、Q を通る直線を引くと、直線は曲線とあと1点(R)で交わります(連立方程式の解き方で交点を求める考え方です)。この R を x軸について折り返した点を、P+Qと決めます。接線を使えば、P+P(2P)も決まります(接線の方程式)。

たとえば曲線 y2=x3−x+1y^2=x^3-x+1 では、P=(0, 1)、Q=(1, 1) を通る直線は y=1y=1 です。これを代入すると x3−x=0x^3-x=0 となり、x=0, 1, −1x=0,\,1,\,-1 が交点だと分かります。3つ目の点が R=(−1, 1) なので、P+Q は R を折り返した (−1, −1) です。座標がすべて整数の点どうしの足し算ですが、2P を計算すると座標が分数になっていきます。

有理点の集まり:階数(ランク)

楕円曲線の有理点(分数の座標をもつ点)を全部集めると、足し算ができる集まり(群)になります。1922年に、イギリスのルイス・モーデルが、この集まりが「有限個の基本の点から、足し算で作れる」ことを示しました。基本の点の数を階数(ランク)といい、rr と書きます。

  • 階数0:有理点は、有限個だけです。
  • 階数1:1つの点 P から、2P、3P、4P、…と、無限に新しい有理点ができます。
  • 階数2:2つの基本の点 P、Q から、格子のように、無限に有理点ができます。
階数(ランク)=「基本の点」の数 階数 0点は有限個(数えられる) 階数 1P2P3P4P1つの点 P から無限に続く 階数 22つの点から格子のように無限 有理点の集まりは、足し算できる「群」になる
階数は有理点を作る「基本の点」の数。階数が1以上なら、有理点は無限にある

これとは別に、有限個だけ、足し算を繰り返すと元にもどる点(ねじれの点)があります。ねじれの点の種類は、1977年にバリー・メイザーが、15通りしかないことを示しました。

問題は、階数をどうやって知るかです。曲線の方程式を見ただけでは、階数がいくつなのか、すぐには分かりません。点がたくさん見つかれば、階数は大きいと分かりますが、「これ以上は見つからない」ことを証明するのは、とても難しいのです。

素数で割った余りの世界で、点を数える

バーチとスウィンナートン=ダイアーは、違う方向から考えました。曲線の方程式を、素数 pp で割った余りの世界で考えます(合同式(mod の計算)、素数とは)。余りの世界では、x と y は 0 から p−1p-1 までのどれかです。そこで、方程式をみたす点がいくつあるかを数えられます。

p で割った余りの世界で、点を数える 素数 p点の数 Nₚaₚ=p+1-Nₚ 37-358-2712-4111021319-5171441922-2 無限遠点もふくめて数えた点の数。aₚ は小さく収まる
曲線 y²=x³-x+1 を、素数 p で割った余りの世界で考えたときの点の数。p=5 なら8個

点の数 NpN_p(無限遠点という特別な点をふくめる)は、おおよそ p+1p+1 になり、そのずれ ap=p+1−Npa_p=p+1-N_p は小さな値に収まります。

バーチとスウィンナートン=ダイアーは、1960年代の初め、ケンブリッジ大学のコンピューター(EDSAC-2)を使って、たくさんの素数 pp について Np/pN_p/p を次々にかけ算し、その積の増え方を調べました。すると、有理点がたくさんある(階数が大きい)曲線ほど、この積が速く大きくなっていくことに気づきました。この観察から、BSD予想が生まれました。

L関数:すべての素数の情報を1つにまとめる

各素数 pp の apa_p を、すべての pp についてまとめた関数を、楕円曲線のL関数 L(E,s)L(E,s) といいます。すべての素数をかけ合わせる「オイラー積」の形をしていて、オイラーの業績と生涯やリーマンの業績と生涯が研究したゼータ関数の仲間です。リーマン予想で登場するゼータ関数と、よく似た作りをもちます。

BSD予想の中身

BSD予想は、こう言っています。

  • L関数 L(E,s)L(E,s) が s=1s=1 で「0になる回数」(0の位数)は、楕円曲線の有理点の階数 rr に等しい。

クレイ数学研究所の説明では、s=1s=1 でL関数が0なら有理点は無限にあり、0でなければ有限個という形でも説明されています。さらに予想は、s=1s=1 のまわりの関数の値(最初の係数)が、「シャファレヴィッチ・テイト群」「レギュレーター」「周期」などの量で表されるという、くわしい式まで含んでいます。

L関数の s=1 のまわり(イメージ) s=1 緑:0にならない → 階数0青:1回通る → 階数1赤:ふれて戻る → 階数2 0になる回数 = 点の階数(これが予想)
L関数のs=1のまわりのイメージ。0になる回数と、有理点の階数が等しいというのがBSD予想

何がふしぎかというと、左側(L関数)は「素数ごとの余りの世界を全部集めた、解析(微積分)の世界の話」で、右側(階数)は「分数の座標の点という、数論の世界の話」という、まったくちがう世界の量が一致する、と言っていることです。

合同数問題:BSD予想の身近な顔

BSD予想が深く関わる、とてもわかりやすい問題があります。「辺の長さがすべて分数で、面積がちょうど nn になる直角三角形はあるか」という問題です。そのような nn を合同数といいます。

面積5の直角三角形(辺は全部分数) 20/33/241/6 面積=(3/2)×(20/3)÷2=5
辺が 3/2、20/3、41/6 の直角三角形は面積がちょうど5。だから5は合同数

たとえば、辺が 3・4・5 の直角三角形の面積は 6 なので、6 は合同数です。5 は、辺が 3/2、20/3、41/6 の三角形で作れます。7 も合同数ですが、1・2・3・4 は合同数ではありません。1 が合同数でないことは、フェルマーが示したとされています(フェルマーの最終定理の n=4 の場合の証明とも関わります)。

nn が合同数かどうかは、じつは楕円曲線 y2=x3−n2xy^2=x^3-n^2x の階数が1以上かどうかと同じ意味です。1983年にトンネルが、BSD予想が正しいと仮定すると、合同数かどうかを調べる簡単な判定法ができることを示しました。BSD予想が証明されれば、この古い問題が完全に決着する、ということです。

BSD予想の歴史と年表

古代:分数の解を探す

3世紀ごろのディオファントスの『算術』は、方程式の整数や分数の解を探す問題を集めた本です。のちに、13世紀のフィボナッチの業績と生涯は、7が合同数であることを示したとされます。合同数の問題は、とても古くから考えられていた問題です。

1922年:モーデルの定理

1922年、モーデルは、楕円曲線の有理点の集まりが、有限個の点から作れる(有限生成)ことを示しました。のちにフランスの数学者アンドレ・ヴェイユが、より一般の場合に広げました(1928年)。そのためモーデル・ヴェイユの定理とよばれます。これで「階数」という数が決まることになりました。

1960年代前半:コンピューター実験

バーチとスウィンナートン=ダイアーは、ケンブリッジ大学のコンピューター(EDSAC-2)を使って、さまざまな楕円曲線の点の数の積を計算しました。当時のコンピューターは今よりずっと遅く、1つの計算に長い時間がかかりました。予想は1965年の論文で発表されました。

1977年〜1989年:最初の証明

1977年に、コーツとワイルズが、特別な型(虚数乗法をもつ)の楕円曲線で、L関数が s=1s=1 で0にならないとき、有理点が有限個であることを示しました。1986年にはグロスとザギエが、L関数が s=1s=1 で1回だけ0になるとき、無限位数の有理点が存在することを示しました。1989年には、ロシア出身のヴィクトル・コリヴァギンが、これらを使って、L関数の0の位数が0か1のときは、階数がそれに等しいことを証明しました(モジュラー曲線について)。

1995〜2001年:すべての楕円曲線がモジュラー

1995年に、ワイルズの業績と生涯が、フェルマーの最終定理を証明しました。その中心は、「(ある型の)楕円曲線はすべてモジュラー形式と対応する」という、谷山豊の業績と生涯と志村五郎の業績と生涯の予想(谷山・志村予想)の一部の証明でした。2001年に、ブルイユ、コンラッド、ダイアモンド、テイラーの4人が、有理数上のすべての楕円曲線について、これを証明しました。この結果のおかげで、すべての楕円曲線のL関数を、s=1s=1 のまわりで調べられるようになりました。

2000年:100万ドルの懸賞問題

2000年5月24日、クレイ数学研究所はパリで7つのミレニアム懸賞問題を発表しました。BSD予想もその1つです。ほかにはリーマン予想、P≠NP予想、ナビエ–ストークス方程式の問題、ヤン–ミルズ方程式の問題、ホッジ予想、ポアンカレ予想があり、解決とされたのはポアンカレ予想だけです。

2010年代:平均では分かってきた

バーガヴァとシャンカールらは、楕円曲線を「平均」で調べる方法を発展させ、有理数上の楕円曲線の階数の平均が、ある有限の値でおさえられることを示しました。さらに、階数が0の曲線が正の割合で存在することなども示されました。1つ1つの曲線ではなく、「全体の傾向」を明らかにする研究です。

年できごと
1922年モーデルが、楕円曲線の有理点の集まりが有限個の点から作れることを示す
1928年ヴェイユが、モーデルの定理を一般の場合に広げる
1965年バーチとスウィンナートン=ダイアーが、コンピューター実験からBSD予想を発表
1977年メイザーが、ねじれの点の型を15通りに決める。コーツとワイルズが最初の成果
1983年トンネルが、BSD予想を仮定した合同数の判定法を示す
1986年グロスとザギエが、L関数が1回だけ0になるとき無限位数の点があることを示す
1989年コリヴァギンが、0の位数が0か1のとき階数がそれに等しいことを証明
1995年ワイルズがフェルマーの最終定理を証明(楕円曲線のモジュラー性の一部)
2000年クレイ数学研究所が、100万ドルの懸賞問題に選ぶ
2001年ブルイユら4人が、有理数上のすべての楕円曲線がモジュラーであることを証明
BSD予想の歩み1922モーデルの定理(有限生成)1965バーチらがBSD予想を発表1977コーツとワイルズの最初の成果1986グロス・ザギエの定理1989コリヴァギンの定理2000クレイ研究所が懸賞問題に2001すべての楕円曲線がモジュラー2026年10月時点で、予想は未解決
1922年のモーデルの定理から、1965年の予想、2000年の懸賞問題、2001年のモジュラー性の完成まで

BSD予想は今どこまで分かっている?(2026年11月時点)

BSD予想は未解決です。クレイ数学研究所のページでも「未解決」とされています。私たちは「いつ解けるか」を予想しません。分かっていることと分かっていないことを分けて整理します。

分かっていること

  • L関数の0の位数が0か1の場合は、階数が等しい(グロス・ザギエ、コリヴァギンら、1980年代)。つまり、予想の「階数の部分」は、位数が0か1のときには正しいことが証明されています。
  • すべての楕円曲線のL関数を調べられる:2001年に、有理数上のすべての楕円曲線がモジュラーであることが示されました。
  • 平均では分かってきた:階数の平均が有限の値でおさえられることや、階数が0・1の曲線が正の割合で存在することが、2010年代までに示されました。
  • 数値実験は予想を支持:クレイ数学研究所も「多くの実験的な証拠に支えられている」と説明しています。階数が非常に大きい曲線(2006年にエルキーズが見つけた階数28以上の曲線など)でも、確認が進んでいます。

分かっていないこと

  • L関数の0の位数が2以上の場合に、階数がそれに等しいか。
  • 階数がいくらでも大きくなれるのか。それとも、ある数を超えないのか。
  • シャファレヴィッチ・テイト群がいつでも有限か。
  • くわしい式(最初の係数の式)が、一般に成り立つか。

最近の動きと、気をつけたい点

BSD予想は、ミレニアム懸賞問題の中でも、数値実験の証拠が豊富で、部分的な結果が多い問題です。2026年11月に確認した範囲では、専門家に認められた完全な解決はありません。査読(専門家による確認)が終わっていない主張は、そのまま信じないことが大切です。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

たくさんの例で確かめたことと、証明したことはちがうんだ。BSD予想は、何百万もの曲線で確かめられているのに、まだ予想のまま。入試の答案でも「いくつかの例で成り立つ」は証明にならないよ。

BSD予想はなぜ難しいのか

1. 階数を計算する決まった方法がない

楕円曲線の方程式が与えられたとき、有理点が見つかれば、階数は少なくともその分あります。しかし、「これ以上、基本の点はない」ことを確かめる、必ずうまくいく手順(アルゴリズム)は、2026年時点で知られていません。整数の解を決める問題には、「そんな手順は存在しない」という結果(マチヤセビッチ、1970年)がありますが、有理数の解については、まだ分かっていないことが多いのです。

2. 「解析」と「数論」を橋渡しする

L関数は、微積分で調べられる解析的な対象です。一方、階数は、整数や分数の性質、つまり数論の対象です。このまったくちがう世界のつながりを示す必要があります。グロス・ザギエやコリヴァギンの方法は、モジュラー形式や「ヘーグナー点」とよばれる特別な点を使うもので、位数が0か1のときにしか使えません。位数が2以上のとき、同じ方法では特別な点が見つかりません。

3. 「無限」にある曲線を相手にする

楕円曲線は、無限にたくさんあります。1つ1つ確かめることはできません。「どんな曲線でも」成り立つと示すには、すべての曲線に共通する理由が必要です。フェルマーの最終定理も「どんな n でも」を示す必要がありましたが、BSD予想も、同じように「すべて」を相手にしています。

4. 隠れた量:シャファレヴィッチ・テイト群

くわしい式に出てくるシャファレヴィッチ・テイト群は、「局所的には解があるのに、全体では解がない」ものの集まりを数える量です。1974年にジョン・テイトが、この群が有限であることすら、一般には分かっていないと指摘しました。この群の大きさを知るには、さらに別の理論が必要です。

5. 反例も証明もない

P≠NP予想のように、専門家の多くが「たぶん正しい」と考えていても、それは証明ではありません。反例(予想が成り立たない曲線)も見つかっていません。膨大な数値実験が予想を支持していますが、数学では、実験だけでは証明になりません。

サクラちゃん

サクラちゃん

何百万もの曲線で確かめられているのに、どうして「予想」のままなんですか?

合格先生

合格先生

数学では「どの曲線でも」成り立つと示さないと、証明にならないんだ。しかも、曲線は無限にある。もしかしたら、ものすごく大きな曲線で成り立たないものがあるかもしれない。だから、理由をつけて、すべての場合を一度に示す必要があるんだよ。

受験・勉強とBSD予想のつながり

中学受験:整数と分数、直角三角形

中学受験では、直角三角形の辺の長さや面積を考える問題がよく出ます。3・4・5 や 5・12・13 のようなピタゴラス数は、合同数問題の出発点です。辺の長さが整数でなくても、分数なら無数の直角三角形が作れることに気づくのは、数学の見方を広げる体験です。

高校受験・大学受験:余りと素数、2次・3次の方程式

BSD予想の「素数で割った余りの世界」は、合同式(mod の計算)の発展です。フェルマーの小定理は、余りの世界で成り立つ代表的な法則です。素因数分解と約数の個数や、有理数とは何かの理解も、この世界の土台になります。また、直線と曲線の交点を求める問題(連立方程式)は、楕円曲線の足し算の入り口です。大学入試の解と係数の関係も、3次方程式の交点の考え方に役立ちます。

数学の勉強法として:「具体例」から出発する

BSD予想は、バーチとスウィンナートン=ダイアーがたくさんの具体的な計算を観察することから生まれました。数学の勉強でも、まず小さい数や簡単な例を自分で計算して、規則を見つけるクセをつけましょう。フェルマーの最終定理を中学生向けに図解や、唯一の偶数の素数「2」の話も、例から規則を見つける楽しさを教えてくれます。数学の勉強法(解法の暗記→演習→過去問)も参考にしてください。

BSD予想が数学・社会にあたえる影響

  • 暗号(楕円曲線暗号):スマートフォンやインターネットの通信を守る暗号の多くは、楕円曲線の足し算を、素数で割った余りの世界で使っています。1985年に、ニール・コブリッツとヴィクター・ミラーが、それぞれ別々に提案しました。BSD予想が直接使われるわけではありませんが、楕円曲線の理論の応用です。
  • フェルマーの最終定理の証明:楕円曲線は、ワイルズの証明(1995年)の主役でした。BSD予想の研究が、数論の道具を大きく育てました。
  • 合同数問題:BSD予想が証明されれば、古代から考えられていた合同数問題が、完全に決着します。
  • 数論の統一的な見方:BSD予想は、「L関数」と「代数的な量」を結ぶ、数論全体の大きな見取り図(ラングランズ・プログラムなど)の一部です。リーマン予想、ホッジ予想とも、「ゼータ関数と代数幾何」という共通の世界にあります。
  • ほかの難問とのつながり:モーデル予想は、曲線の有理点が有限個かどうかの問題で、BSD予想と同じ「有理点」の世界の問題です。

ガウスの業績と生涯の代数・数論の研究から、ワイルズの証明まで、有理数と整数の世界の探求は、2000年以上続いています。

BSD予想に挑戦!練習問題

やさしい

  1. 直角をはさむ2辺が 3/2 と 20/3 の直角三角形の面積を求めなさい。
    答えと解説を見る(3/2)×(20/3)÷2=10÷2=5。面積がちょうど5なので、5は合同数です。
  2. 辺の長さが 3、4、5 の直角三角形の面積はいくつですか。この結果から、どんな数が合同数と分かりますか。
    答えと解説を見る直角をはさむ2辺が3と4なので、面積は 3×4÷2=6。辺がすべて整数(分数でもある)なので、6は合同数です。

ふつう

  1. 曲線 y2=x3−xy^2=x^3-x を、5で割った余りの世界で考えます。x、y を 0〜4 の整数として、方程式 y2≡x3−x(mod5)y^2\equiv x^3-x\pmod 5 をみたす点 (x, y) は何個ありますか。また、無限遠点を加えた点の数 N5N_5 と、a5=5+1−N5a_5=5+1-N_5 を求めなさい。
    答えと解説を見るx=0, 1, 4 では右辺が 0, 0, 60 で、どれも5で割ると余り0なので y=0 の1点ずつ。x=2 では右辺 6≡1 で y=1,4 の2点。x=3 では右辺 24≡4 で y=2,3 の2点。合計 1+1+2+2+1=7個。無限遠点を加えて N5=8N_5=8、a5=6−8=a_5=6-8= −2。
  2. 曲線 y2=x3−x+1y^2=x^3-x+1 上の点 P=(0, 1) と Q=(1, 1) を通る直線 y=1 が、曲線と交わる3つ目の点 R を求め、P+Q の座標を答えなさい。
    答えと解説を見るy=1 を代入すると x3−x=0x^3-x=0 なので x=0,1,−1x=0,1,-1。3つ目の点は R=(−1, 1)。P+Q は R を x軸について折り返した (−1, −1) です。

むずかしい

  1. 曲線 y2=x3−x+1y^2=x^3-x+1 上の点 P=(0, 1) の2倍 2P を求めなさい。(P での接線を引き、その接線と曲線との3つ目の交点を x軸について折り返す。)
    答えと解説を見る2y y′=3x2−12y\,y'=3x^2-1 より、P での傾きは y′=−1/2y'=-1/2。接線は y=1−x/2y=1-x/2。曲線に代入すると x3−x2/4=0x^3-x^2/4=0、つまり x2(x−1/4)=0x^2(x-1/4)=0 で、x=0x=0(重なり)と x=1/4x=1/4。3つ目の点は (1/4, 7/8)(1/4,\,7/8)(確かめ:(7/8)2=49/64(7/8)^2=49/64、1/64−1/4+1=49/641/64-1/4+1=49/64)。折り返して 2P=(1/4, −7/8)。
  2. 5が合同数であること(辺が 3/2、20/3、41/6 の直角三角形)を使って、20も合同数であることを示しなさい。
    答えと解説を見る三角形の辺を2倍にすると、面積は 2×2=4倍になります。辺が 3、40/3、41/3 の直角三角形ができ、面積は 3×(40/3)÷2=20。一般に、nn が合同数なら n×k2n\times k^2 も合同数です。

BSD予想と関係する数学者・難問

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よくある質問

BSD予想とは何ですか?

バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(BSD予想)とは、楕円曲線の上の有理点(分数の座標の点)がどれだけたくさんあるかを、L関数が s=1 で0になる回数で読み取れるという未解決の予想です。1960年代にバーチとスウィンナートン=ダイアーが、コンピューターによる実験から見つけました。

楕円曲線とは何ですか?

楕円曲線とは、yの2乗がxの3次式で表される方程式のグラフです。形が楕円なのではなく、楕円の周の長さを求める計算から現れたためにこの名前がつきました。曲線の上の点どうしを足し算できるという性質をもちます。

階数(ランク)とは何ですか?

楕円曲線の有理点を足し算で作るための「基本の点」の数です。階数が0なら有理点は有限個、1以上なら無限にあります。1922年にモーデルが、基本の点が有限個で足りることを示しました。

100万ドルの懸賞金とは何ですか?

2000年にアメリカのクレイ数学研究所が、この予想を含む7つの問題を「ミレニアム懸賞問題」に選び、各問題の解決に100万ドルの懸賞金をつけました。解決とされた問題はポアンカレ予想だけです。

BSD予想は解けているのですか?

2026年11月時点で、解決とは公式に認められていません。L関数の0の位数が0か1の場合は、階数がそれに等しいことが証明されていますが、位数が2以上の場合は未解決です。

合同数問題とは何ですか?

辺の長さがすべて分数で、面積がちょうどnになる直角三角形があるかを問う問題です。そのようなnを合同数といい、5や6、7は合同数です。BSD予想が正しいと仮定すると、合同数かどうかを簡単に判定できます(トンネル、1983年)。

なぜ素数で割った余りの世界で点を数えるのですか?

無限にある有理点を直接調べるのは難しいので、素数pで割った余りの世界に移して、有限個の点を数えるのです。すべての素数について点の数をまとめたものがL関数で、有理点の階数の手がかりになります。

BSD予想はフェルマーの最終定理と関係がありますか?

あります。ワイルズによるフェルマーの最終定理の証明は、楕円曲線がモジュラー形式と対応するという谷山・志村予想の一部を示すものでした。2001年にすべての楕円曲線で証明が完成し、BSD予想の研究にも欠かせない土台になりました。

BSD予想は受験に出ますか?

予想そのものは出ませんが、直角三角形の辺と面積、合同式(余り)、素数、有理数、直線と曲線の交点など、基本の考え方は中学受験から大学入試まで関わります。

あわせて読みたい

出典・参考

  • A. Wiles, “The Birch and Swinnerton-Dyer conjecture”(クレイ数学研究所の公式問題説明)
  • クレイ数学研究所「The Birch and Swinnerton-Dyer Conjecture」のページ(claymath.org/millennium/birch-and-swinnerton-dyer-conjecture/)
  • B. J. Birch, H. P. F. Swinnerton-Dyer, “Notes on elliptic curves. II”(Journal für die reine und angewandte Mathematik, 1965年)
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  • C. Breuil, B. Conrad, F. Diamond, R. Taylor, “On the modularity of elliptic curves over Q”(Journal of the AMS, 2001年)
  • M. Bhargava, A. Shankar, “Binary quartic forms having bounded invariants, and the boundedness of the average rank of elliptic curves”(Annals of Mathematics, 2015年)

最終更新:2026年11月3日/作成:大学受験合格大作戦