莫逆の友(ばくぎゃくのとも)の意味と由来|荘子・大宗師の原文・書き下し文・現代語訳、管鮑の交わり・水魚の交わりとのちがいをイラストで【故事成語】

莫逆の友(ばくぎゃくのとも)の意味と由来|荘子・大宗師の原文・書き下し文・現代語訳、管鮑の交わり・水魚の交わりとのちがいをイラストで【故事成語】

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莫逆の友ばくぎゃくのとも

ひとことで言うと

たがいに心がぴったり合い、少しも逆らうところのない親友のこと。「莫逆の交わり」とも。『荘子』大宗師で、四人が顔を見合わせて笑い「心に逆らふ莫し」と友になった話から。

読み方ばくぎゃくのとも(ばくげきのとも)
意味たがいに心が通じ合い、少しも逆らうところのない、きわめて親しい友。
出典『荘子』大宗師「四人相視而笑,莫逆於心,遂相與爲友」
お話子祀・子輿・子犁・子来の四人が、同じ考えをもつ者どうしと分かって顔を見合わせて笑い、心に逆らうところがなく友となった
似た言葉管鮑の交わり(かんぽう)・水魚の交わり(すいぎょ)・刎頸の交わり(ふんけい)・知己
反対の言葉犬猿の仲・面従腹背
漢文の句法否定(莫)・疑問(孰か)・「与」(と・ともに)

このページのポイント

  • 「莫逆の友」は、心がぴったり合い、少しも逆らうところのない親友。読みは「ばくぎゃく」
  • もとは『荘子』大宗師の「莫逆於心(心に逆らふ莫し)」。四人が顔を見合わせて笑い、友となった話
  • 管鮑の交わり・水魚の交わり・刎頸の交わり・竹馬の友とのちがい、論語の友との比べ方、入試での出方まで分かります

「莫逆の友」の意味と読み方

「莫逆の友」はばくぎゃくのともと読みます(「ばくげきのとも」と読むこともあります)。意味は「たがいに心がぴったり合い、少しも逆らうところのない、とても親しい友だち」です。「莫逆の交わり」とも言います。

「莫(ばく)」は漢文で「なし(ない)」、「逆(ぎゃく)」は「さからう」という意味です。もとの文は「莫逆於心(心に逆らふ莫し)」で、「心の中で、少しも逆らうところがない」ということ。つまり莫逆の友とは、言葉にしなくても考えが通じ合う友のことなのです。中国の思想家・荘子の本『荘子』の「大宗師(だいそうし)」という篇の話から生まれました。

「莫逆」のなりたち莫ない逆さからう於心心に心に逆らふ莫し心の中で、少しも逆らうところがない莫逆の友心がぴったり合った親友
「莫逆於心」=心に逆らふ莫し。そこから、心がぴったり合った親友を莫逆の友と言います
うかるくん

うかるくん

ふつうの「親友」と、「莫逆の友」は何がちがうんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

意味はとても近いよ。ただ、莫逆の友は「考え方や生き方の根っこが同じで、だまっていても通じ合う」という感じが強いんだ。いっしょにいる時間が長い友だちというより、心の深いところで一致している友。だから、作文や手紙で使うと、ぐっと重みのある言い方になるね。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○二人は学生時代からの莫逆の友で、何でも相談し合う仲だ。
  • ○祖父には、六十年来の莫逆の友がいる。
  • ○研究の考え方が同じ二人は、たちまち莫逆の交わりを結んだ。

「逆」は「逆」の読み方・書き順・部首、「友」は「友」の読み方・書き順・部首、「心」は「心」の読み方・書き順・部首で、読み方と書き順を確かめておきましょう。「莫」は常用漢字ではありませんが、「莫大(ばくだい)」の「莫」と同じ字です。

「莫逆」の読み方莫音読み:バク莫大(ばくだい)漢文では「なし」逆ギャク/ゲキ逆転(ぎゃくてん)逆鱗(げきりん)莫逆=ばくぎゃく「ばくげき」と読むこともある×「まくぎゃく」「ぼぎゃく」とは読まない
「莫逆」は「ばくぎゃく」。「ばくげき」と読むこともあります

絵で読む「莫逆の友」のお話

お話の主人公は、子祀(しし)・子輿(しよ)・子犁(しり)・子来(しらい)という四人です(「子犁」は「子犂」と書く本もあります)。四人が何を語り合い、どうして友になったのか、4つの場面で見てみましょう。

絵で読む「莫逆の友」(『荘子』大宗師の4こま)

1四人が語り合うすべてを一つと見られる人と、友になろう子祀子輿子犁子来四人相与に語りて曰く
1子祀(しし)・子輿(しよ)・子犁(しり)・子来(しらい)の四人が語り合いました。「すべてを一つのつながりとして見られる人がいたら、その人と友になろう」。
2顔を見合わせて笑うはははははは子祀子輿子犁子来四人相視て笑ふ
2その言葉を聞いた四人は、たがいに顔を見合わせて、にっこりと笑いました(相視て笑ふ)。
3心がぴったり合う言わなくても分かる子祀子輿子犁子来心に逆らふ莫し
3四人の心には、少しも逆らうところがありませんでした(心に逆らふ莫し)。言葉にしなくても、考えがぴったり合っていたのです。
4ついに友となるいっしょに行こう!子祀子輿子犁子来遂に相与に友と為る
4こうして四人は、ついにいっしょに友となりました(遂に相与に友と為る)。ここから、心がぴったり合った親友を「莫逆の友」と言うようになりました。

四人が語り合った言葉は、原文では少しふしぎな言い方をしています。「無を頭とし、生を背骨とし、死を尻とすることができる者はだれか」。つまり、何もないところから生まれ、生き、やがて終わっていく――そのすべてを、頭・背中・尻のように一つの体としてつながったものと見られる人はいないか、と問いかけたのです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

四人は、生きていることも、いつか終わることも、一つの大きな流れとして受け入れる考えをもっていた。その考えがまったく同じだったから、説明しなくても笑い合えたんだ。「莫逆」は、そういう心の一致を表しているんだよ。

このあと、『荘子』の話は続きます。四人のうち子輿(しよ)が病気になり、体が大きく曲がってしまいますが、子輿は少しもなげかず、「時に安んじて順に処れば、哀楽入る能はず(めぐってきた時を受け入れて、なりゆきにしたがえば、悲しみも喜びも心に入りこまない)」と語ります。のちに子来(しらい)が重い病気になったときも、子犁がたずねて行き、二人はおだやかに語り合いました。どんなことが起きても、四人の心は同じところにあった――それが「莫逆の友」の深さなのです。

「莫逆の友」の原文・書き下し文・現代語訳

もとになった文章は、『荘子』大宗師篇にあります。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方とルールでくわしく説明しています。

白文(『荘子』大宗師、一部)子祀・子輿・子犁・子来四人相与語曰、孰能以無為首、以生為脊、以死為尻。孰知死生存亡之一体者、吾与之友矣。四人相視而笑、莫逆於心、遂相与為友。

1文目:その人と友になろう

書き下し文孰たれか死し生せい存そん亡ばうの一いつ体たいなるを知しる者ものぞ、吾われ之これと友ともたらん。

(『荘子』大宗師)

現代語訳生まれることと終わること、あることとなくなることが、一つにつながっていると知っている者はだれか。(そういう人がいれば)わたしはその人と友になろう。

ここがポイント「孰(たれ)か」は「だれが〜か」という疑問の字。疑問の句法(何・誰・孰・安)で整理しています。「与(と)」は「〜と」と読む字で、「与」の読み方と用法(と・ともに)でくわしく説明しています。文の終わりの「矣」は読まない置き字です。

2文目:顔を見合わせて笑い、心に逆らうことがない

書き下し文四し人にん相あひ視みて笑わらひ、心こころに逆さからふ莫なし。

(『荘子』大宗師)

現代語訳四人はたがいに顔を見合わせて笑い、心の中で少しも逆らうところがなかった。

ここがポイントここが「莫逆」のもとの文です。「莫(なし)」は否定の字で、否定の句法(不・弗・非・無・莫)でまとめています。「而」「於」は読まない字で、置き字(而・於・于・乎・矣・焉)のなかまです。

3文目:ついにいっしょに友となる

書き下し文遂つひに相あひ与ともに友ともと為なる。

(『荘子』大宗師)

現代語訳こうして、とうとう四人はいっしょに友となった。

ここがポイント「相与に(あひともに)」は「たがいにいっしょに」。ここでの「与」は「ともに」と読みます。1文目の「与(と)」と読み方がちがうことに注意しましょう。「為(なる)」の読み方は「為」の読み方と用法(なす・なる・ために)で確かめられます。

4文目:子輿の言葉――時に安んじて順に処る

書き下し文時ときに安やすんじて順じゆんに処をれば、哀あい楽らく入いる能あたはざるなり。

(『荘子』大宗師)

現代語訳めぐってきた時を受け入れ、なりゆきにしたがって生きれば、悲しみも喜びも心に入りこむことはない。

ここがポイント病気になった子輿が、おだやかに語った言葉です。「不能〜(〜する能はず)」は「〜できない」。可能の句法(可・能・得・足)でまとめています。四人が「心に逆らふ莫し」だったのは、こうした考えを同じようにもっていたからです。

5文目:三人の話にも同じ言葉

書き下し文三さん人にん相あひ視みて笑わらひ、心こころに逆さからふ莫なし、遂つひに相あひ与ともに友ともたり。

(『荘子』大宗師)

現代語訳三人はたがいに顔を見合わせて笑い、心の中で少しも逆らうところがなく、こうしてともに友となった。

ここがポイント同じ大宗師篇の、子桑戸・孟子反・子琴張の三人の話です。四人の話とほとんど同じ形で、こちらは「為」の字がなく「相与に友たり」と読みます。同じ言い方が2回出てくることから、「莫逆於心」は荘子が大切にした友のあり方を表す決まり文句のような言葉だったと分かります。
原文で覚える句法4つ孰〜孰か〜だれが〜か疑問莫〜〜莫し〜ない否定与之〜之と〜その人と〜「与」相〜相〜たがいに〜副詞
「莫逆の友」の原文には、疑問の「孰」・否定の「莫」・「与」・「相」が出てきます

原典(『荘子』大宗師)の本文では

維基文庫(中国語のウィキソース)の『荘子』大宗師の本文では、この部分は次のようになっています(句読点は維基文庫の本文のとおり)。

『荘子』大宗師の本文(一部)子祀、子輿、子犁、子來四人相與語曰:「孰能以无爲首,以生爲脊,以死爲尻?孰知死生存亡之一體者,吾與之友矣!」四人相視而笑,莫逆於心,遂相與爲友。
  • 「與」「來」「體」「爲」:昔の字体(旧字体)です。今の字では「与」「来」「体」「為」です。
  • 「无」:「無」の古い書き方です。『荘子』では「无」と書かれることが多くあります。
  • もう一つの「莫逆於心」:同じ大宗師篇には、子桑戸(しそうこ)・孟子反(もうしはん)・子琴張(しきんちょう)の三人の話もあり、ここでも「三人相視而笑,莫逆於心,遂相與友」と、ほとんど同じ言い方が出てきます。
大宗師篇に2回出る「莫逆於心」1つ目:四人の話子祀・子輿・子犁・子来四人相視て笑ひ、心に逆らふ莫し→ 遂に相与に友と為る2つ目:三人の話子桑戸・孟子反・子琴張三人相視て笑ひ、心に逆らふ莫し→ 遂に相与に友たり※どちらも「同じ考えの人どうし」が友になる話
大宗師篇には「莫逆於心」が2回。四人の話と三人の話です

出典『荘子』大宗師と話の背景

出典の『荘子』は、中国の戦国時代(紀元前4世紀ごろ)の思想家・荘周(荘子)と、その流れをくむ人々の考えをまとめた本です。老子とならぶ道家(どうか)の代表で、二人の考えはあわせて「老荘思想」と呼ばれます。道家と儒家・法家のちがいは諸子百家(儒家・道家・法家)の考え方で図にしています。

「大宗師(だいそうし)」は『荘子』内篇の6番目の篇です。「大宗師」とは「大いに宗(おおもと)として師とすべきもの」という意味で、天地自然の大きなはたらき(道)を表すと考えられています。この篇には、生と死をふくめて、すべてを自然の流れとして受け入れる人たちの話がいくつも出てきます。莫逆の友の四人は、その代表です。

「同じ考え」で結ばれた友

四人の友情は、いっしょに遊んだ思い出や、助けてもらった恩から生まれたものではありません。「すべてを一つのつながりとして受け入れる」という考え方が同じだったことから、顔を見合わせて笑っただけで友になったのです。これが、ほかの友情の故事成語とのいちばんのちがいです。

友情を表す故事成語を比べよう莫逆の友『荘子』心に逆らうことがない考え方がぴったり合う管鮑の交わり『史記』管仲と鮑叔牙たがいをよく理解し合う水魚の交わり『三国志』劉備と諸葛亮離れられないほど親密刎頸の交わり『史記』廉頗と藺相如命をかけてもよい友情竹馬の友『晋書』桓温と殷浩幼いころからの友だち※莫逆の友は「人物の出来事」より「考えの一致」が中心
友情の故事成語はたくさん。莫逆の友は「考えの一致」が中心です

論語の「友」と荘子の「友」

儒家の本『論語』にも、友についての有名な言葉があります。「朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや」(学而篇)や、「益者三友(ためになる友は三種類:まっすぐな人・誠実な人・物知りな人)」(季氏篇)です。論語の友は、ともに学び、たがいを正し合う友と言えます。

論語の友・荘子の友論語(儒家)朋有り遠方より来たる亦た楽しからずや益者三友・まっすぐな人(直)・誠実な人(諒)・物知りな人(多聞)荘子(道家)同じ考えの人どうし顔を見合わせて笑う莫逆の友・言わなくても分かる・心に逆らわない・しばられない友学び合う友(論語)と、心が通う友(荘子)
論語は「学び合う友」、荘子は「心が通う友」

それに対して荘子の莫逆の友は、何も言わなくても通じ合い、相手をしばらない友です。どちらがよいということではなく、友だちには「学び合う」面と「心が通う」面の両方がある、と考えるとよいでしょう。同じ『荘子』の胡蝶の夢の意味と由来(荘子・斉物論)にも、「区別にとらわれず、移り変わる世界をそのまま受け入れる」という、大宗師とよく似た考えが出てきます。

「江湖に相忘る」――荘子の考える理想の仲

大宗師篇には、友情や人と人とのつながりを考えるうえで、とても有名なたとえがもう一つあります。原文は「泉涸,魚相與處於陸,相呴以濕,相濡以沫,不如相忘於江湖」。書き下すと「泉涸れて、魚相与に陸に処り、相呴くに湿を以てし、相濡すに沫を以てするは、江湖に相忘るるに如かず」となります。

意味は、「泉の水がかれると、魚たちは陸の上に取り残され、たがいに息をふきかけ、口の泡でぬらし合って助け合う。けれどもそれは、広い川や湖(江湖)で、たがいのことを忘れてのびのびと泳いでいるのには及ばない」ということです。苦しいときに助け合うのは美しいことですが、荘子は、そもそも助け合わなくてもよいほど自由で、しばり合わない関係のほうが、もっと自然でよいと考えたのです。

泉の魚と、江湖の魚泉がかれて陸の上泡でぬらし合う(相濡すに沫を以てす)広い川や湖(江湖)たがいを忘れて泳ぐ(江湖に相忘る)助け合うのもよいが、しばられず自由にいられる仲はもっとよい
陸で泡をかけ合う魚より、江湖でたがいを忘れて泳ぐ魚。荘子の考える「自由な仲」です

三人の話(子桑戸・孟子反・子琴張)のあとでも、孔子の言葉として「魚は江湖に相忘れ、人は道術に相忘る」と語られます。魚が水の中で水を意識しないように、人も大きな道の中にいれば、相手を気にしてしばり合う必要がない――。莫逆の友とは、まさにこの「相忘る」ことのできる友、つまり、いちいち確かめ合わなくても、心がもともと一つになっている友なのです。中国語では「相濡以沫」が、苦しいときに助け合う夫婦や仲間をたたえる言葉としても使われています。

また、子来が重い病気になったときには、こんなたとえも語られます。「鍛冶屋が金属をとかして器を作ろうとしているとき、金属がおどり上がって『わたしは必ず名剣・莫邪(ばくや)になるぞ』と言ったら、鍛冶屋はきっと不吉な金属だと思うだろう」。自分の形や行き先にこだわらず、大きな自然の流れにまかせるという考えです。こうした考えを分かち合えたからこそ、四人は「心に逆らふ莫し」だったのです。

「莫逆の友」の使い方と例文・似た言葉

「莫逆の友」は、長い年月を通じて、心から信頼し合っている親友を、少しあらたまって言うときに使います。手紙・スピーチ・作文・伝記などでよく使われる、重みのある言葉です。

  • ○彼とは高校の寮で出会って以来の莫逆の友だ。
  • ○二人の作家は、作風はちがっても莫逆の友として生涯手紙をやりとりした。
  • ○結婚式のスピーチで、新郎の莫逆の友として紹介された。
  • ○意見がちがっても本音で話せる、莫逆の交わりを大切にしたい。
  • ×昨日知り合ったばかりの人と、もう莫逆の友だ。(長く深い信頼がある間柄に使う)
  • ×二人はいつも反対意見ばかりで、莫逆の友だ。(「逆」があるから、逆らい合う仲だと思うのはまちがい)

作文・スピーチで使うときのコツ

莫逆の友は、ふだんの会話よりも、作文・手紙・スピーチ・伝記のような、少しあらたまった文章に向いた言葉です。使うときは、「いつからの友か」「どんなところで心が通じ合うのか」を一言そえると、言葉の重みが伝わります。たとえば「小学校の同じクラスで出会い、部活もいっしょだった〇〇くんは、言わなくても気持ちが分かる莫逆の友です」のように書くと、読む人にも二人の関係が目にうかびます。反対に、何のエピソードもなく「莫逆の友です」とだけ書くと、むずかしい言葉を飾りで使っているように見えてしまうので気をつけましょう。

似た言葉

反対の言葉

  • 犬猿の仲(けんえんのなか):とても仲が悪いこと。
  • 不倶戴天の敵:同じ天の下に生かしておけないほどの敵(不倶戴天の意味と由来)。
  • 面従腹背(めんじゅうふくはい):表では従うふりをして、心の中では逆らうこと。「心に逆らふ莫し」の正反対です。

英語では、"a bosom friend"(心の友)や "a kindred spirit"(気の合う人・同じ魂をもつ人)が近い言い方です。"a friend of one's heart" と説明することもできます。

受験勉強への生かし方

受験は一人で戦うものですが、心が通い合う仲間は大きな力になります。ただし、いっしょにいる時間が長いだけの友だちが、よい勉強仲間とは限りません。おしゃべりや遊びで勉強時間がけずられてしまうなら、それは「莫逆の友」ではなく、ただの「なかよし」です。

受験の「莫逆の友」の3つのポイント1目標を話し合える志望校や目標を、正直に言い合える2じゃまをしない勉強時間をうばう遊びにさそわない3たがいに高め合う分からない所を教え合い、競い合う言わなくても相手の勉強を大切にできる
目標を話し合え、じゃまをせず、たがいに高め合う。それが受験の「莫逆の友」

直前期の人間関係のコツは、受験の格言「予備校や塾で友達を作るな」の本当の意味(勉強仲間とのつきあい方)でくわしく説明しています。また、心が通い合う仲間とは、たがいにみがき合う切磋琢磨の意味と由来(詩経・論語)の関係にもなれます。最後に勝たなければならない相手は、仲間ではなく自分自身――受験の格言「最大の敵は自分自身だ」の意味も読んでみてください。ことばの話として、「友達」の「達」が複数を表す字なのかは友達の「達」は複数?1人でも友達と言える理由で読めます。

「莫逆の友」のよくあるまちがい

  • 「まくぎゃく」「ぼぎゃく」と読む:正しくは「ばくぎゃく」です(「ばくげき」とも読みます)。「莫大(ばくだい)」の「ばく」と覚えましょう。
  • 「逆らい合う友」「けんか友だち」の意味だと思う:「莫逆」は「逆らうことが莫い(ない)」。心がぴったり合う親友のことで、正反対の意味です。
  • 「漠逆」「幕逆」と書く:くさかんむりに「日」と「大」の「莫」です。さんずいの「漠」(砂漠)、はばの「幕」とはちがいます。
  • 知り合ったばかりの人に使う:莫逆の友は、長く深い信頼でつながった友のこと。気が合っても、知り合ったばかりの相手にはふつう使いません。
  • 出典を『論語』や『史記』だと思う:出典は『荘子』大宗師です。管鮑の交わり・刎頸の交わり(『史記』)、水魚の交わり(『三国志』)と混ぜないようにしましょう。
サクラちゃん

サクラちゃん

「莫逆の友」と「管鮑の交わり」、テストでどっちを選べばいいか迷います……。

ミスターT先生

ミスターT先生

出典と人物で分けよう。荘子・四人・心が通うなら莫逆の友。史記・管仲と鮑叔牙・理解し合うなら管鮑の交わり。意味を選ぶ問題では、どちらも「親しい友情」だから両方正解に見えるけれど、「心に逆らうところがない」という説明があれば莫逆の友だよ。

入試ではこう出る

「莫逆の友」は、おもに大学受験や、漢字・語彙の問題で出てくる言葉です。中学受験・高校受験の故事成語の問題で出ることは多くありませんが、友情を表す言葉をまとめて覚えるときにいっしょに覚えておくと安心です。

  • 漢字・読みの問題:「莫逆」の読み(ばくぎゃく)や、「莫」の字を書かせる問題で見られます。「莫大」とあわせて覚えましょう。
  • 故事成語の意味:「莫逆の友」「管鮑の交わり」「水魚の交わり」「刎頸の交わり」など、友情を表す言葉の意味や出典の組み合わせを選ぶ問題になります。
  • 大学受験の漢文:『荘子』の本文が出たとき、「莫逆於心」の「莫」の読み(なし)、「与之友」の「与」の読み(と)、「相与」の「与」の読み(ともに)の読み分けが問われることがあります。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「莫逆の友」は心がぴったり合う親友。「莫逆於心」=心に逆らふ莫し。出典は『荘子』大宗師で、四人が顔を見合わせて笑った話です!

練習問題

やさしい

  1. 「莫逆の友」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア いつも反対意見を言い合う友 イ 心がぴったり合い、少しも逆らうところのない親友 ウ 知り合ったばかりの友 エ 敵だったが味方になった人
    答えと解説を見るイ。「莫逆」は「逆らうことが莫い(ない)」という意味です。
  2. 「莫逆」の読み方を、ひらがなで答えましょう。
    答えと解説を見るばくぎゃく(「ばくげき」とも読みます)。

ふつう

  1. 「莫逆於心」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
    答えと解説を見る心に逆らふ莫し。訳:心の中で、少しも逆らうところがない。
  2. 次の故事成語と出典の組み合わせで、正しいものを選びましょう。
    ア 莫逆の友―『史記』 イ 水魚の交わり―『荘子』 ウ 莫逆の友―『荘子』 エ 管鮑の交わり―『三国志』
    答えと解説を見るウ。莫逆の友は『荘子』大宗師、水魚の交わりは『三国志』、管鮑の交わりは『史記』です。

むずかしい

  1. 「吾与之友矣」と「遂相与為友」の「与」を、それぞれどう読みますか。
    答えと解説を見る「吾与之友矣」の与はと(吾之と友たらん)、「遂相与為友」の与はともに(遂に相与に友と為る)と読みます。
  2. 四人が言葉で説明し合わなくても友になれたのはなぜですか。原文の内容にそって説明しましょう。
    答えと解説を見る四人とも、生まれることも終わることも一つのつながりとして受け入れるという同じ考えをもっていたため、顔を見合わせて笑っただけで、心に逆らうところがない(莫逆於心)と分かったからです。

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よくある質問

莫逆の友とはどういう意味ですか?

莫逆の友とは、たがいに心がぴったり合い、少しも逆らうところのない、とても親しい友だちという意味です。「莫逆の交わり」とも言います。

莫逆の友の読み方は何ですか?

「ばくぎゃくのとも」と読みます。「ばくげきのとも」と読むこともあります。「莫」は「莫大(ばくだい)」の「ばく」です。

莫逆の友の由来・出典は何ですか?

中国の思想書『荘子』の大宗師篇が由来です。子祀・子輿・子犁・子来の四人が、同じ考えをもつ者どうしだと分かって顔を見合わせて笑い、「心に逆らふ莫し」と友になった話から生まれました。

莫逆の友の原文と書き下し文は?

原文は「四人相視而笑、莫逆於心、遂相与為友」で、書き下し文は「四人相視て笑ひ、心に逆らふ莫し。遂に相与に友と為る」です。「莫逆」は「莫逆於心」から来ています。

「莫逆」の「逆」はどういう意味ですか?

「逆」は「さからう」という意味で、「莫」は「ない」という意味です。「莫逆」で「逆らうところがない」となり、けんか友だちのような意味ではありません。

莫逆の友の例文・使い方は?

「二人は学生時代からの莫逆の友だ」「祖父には六十年来の莫逆の友がいる」のように使います。長く深い信頼でつながった親友を、少しあらたまって言うときに使う言葉です。

莫逆の友の似た言葉・反対の言葉は?

似た言葉には「管鮑の交わり」「水魚の交わり」「刎頸の交わり」「知己」「肝胆相照らす」があります。反対の意味の言葉には「犬猿の仲」「面従腹背」があります。

莫逆の友と管鮑の交わりのちがいは?

どちらも深い友情ですが、莫逆の友は『荘子』の四人の話で「考え方がぴったり合う」友情です。管鮑の交わりは『史記』の管仲と鮑叔牙の話で「たがいをよく理解し合う」友情を表します。

莫逆の友は英語で何と言いますか?

"a bosom friend"(心の友)や "a kindred spirit"(気の合う人)が近い言い方です。

莫逆の友は入試でどう出ますか?

「莫逆」の読みを問う問題や、友情を表す故事成語の意味・出典を選ぶ問題で見られます。大学受験の漢文では「莫逆於心」の「莫」の読みや、「与」の読み分け(と・ともに)が問われることがあります。

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出典・参考

  • 原文:『荘子』大宗師(維基文庫の本文で確認)
  • 読み(ばくぎゃく・ばくげき):一般的な国語辞典による
  • 『論語』学而・季氏の言葉:一般的な説明
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(教科書で多い読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦