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不倶戴天ふぐたいてん
ひとことで言うと
同じ天の下に生きていられないと思うほど、深いうらみやにくしみがあること。『礼記』の「父の讎は与に共に天を戴かず」から。
| 読み方 | ふぐたいてん(書き下し:倶に天を戴かず) |
|---|---|
| 意味 | 同じ天の下にいっしょに生きてはいられないほど、深いうらみ・にくしみがあること。「不倶戴天の敵」の形で使う。 |
| 出典 | 『礼記』曲礼上「父之讎,弗與共戴天」(原文の字は「共」) |
| お話 | 父の仇とは同じ天の下に生きない、兄弟の仇には武器を取りに帰らない、友の仇とは同じ国に住まない、という礼の教え |
| 似た言葉 | 犬猿の仲・宿敵・仇敵 |
| 反対の言葉 | 竹馬の友・管鮑の交わり・刎頸の交わり |
| 漢文の句法 | 否定(弗・不)・与(とも)・重要語(兵) |
このページのポイント
- 「不倶戴天」は同じ天の下に生きていられないほどの深いうらみ。読みは「ふぐたいてん」、書き下すと「倶に天を戴かず」です
- 出典は『礼記』曲礼上の「父の讎は与に共に天を戴かず」。原文の字は「倶」ではなく「共」です
- 「不具」「載」と書くのはまちがい。とても重い言葉なので、ちょっとしたけんかには使いません
「不倶戴天」の意味と読み方
「不倶戴天」はふぐたいてんと読みます。意味は「同じ天の下にいっしょに生きてはいられないと思うほど、深いうらみやにくしみがあること」です。ふつうは「不倶戴天の敵」「不倶戴天の仇(あだ・かたき)」の形で、決して許すことのできない相手を言うときに使います。
4つの字を返り点にしたがって読むと、「倶(とも)に天を戴(いただ)かず」となります。「天を戴く」は、空を頭の上にいただくこと、つまりこの世に生きていることのたとえです。「相手と同じ空の下で、いっしょに生きることはしない」という、とても強い気持ちを表した言葉なのです。
うかるくん
「ふぐたいてん」って、魚のフグと関係あるんですか?
ミスターT先生
よく言われるじょうだんだけど、フグとは関係ないよ(笑)。「不」を「ふ」、「倶」を「ぐ」と読むから「ふぐ」。もとは中国の『礼記(らいき)』という、礼についての本の言葉なんだ。親を殺された子どもの気持ちを書いた、とても重い言葉なんだよ。
ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。とても強い言葉なので、ちょっとした仲たがいには使いません。
- ○小説の主人公は、家族を苦しめた男を不倶戴天の敵と心に決めた。
- ○かつて不倶戴天の間がらだった二つの国が、ついに和平を結んだ。
- ○戦国時代の二人の武将は、不倶戴天の敵として何度も戦った。
絵で読む「不倶戴天」のお話
「不倶戴天」は、ある一人の人物の出来事から生まれた言葉ではありません。昔の中国で、人がどうふるまうべきかを書いた本の一節がもとになっています。4つの場面で、言葉の成り立ちを見てみましょう。
絵で読む「不倶戴天」のお話(4こま)
『礼記』のこの一節は、親や兄弟、友をどれほど大切に思うべきかを、仇(あだ)に対する態度で表したものです。父を殺された子が仇を許さないことを、昔の中国では親への孝行(こうこう)の一つと考えていました。

ミスターT先生
今の日本では、仇討ち(あだうち)は法律で許されていない。明治時代の初め(1873年)に、仇討ちを禁じる命令が出されたんだ。だから「不倶戴天」は、それほど強いうらみ・にくしみがあることを表す言葉として使うと考えよう。
日本でも、江戸時代までは、親や主君の仇を討つことが、一定の手続きのもとで認められていた時代がありました。「忠臣蔵(ちゅうしんぐら)」として知られる赤穂浪士(あこうろうし)の話や、曾我(そが)兄弟の話は、仇討ちを題材にした物語として、歌舞伎や講談で長く語りつがれてきました。こうした物語の中で「不倶戴天の仇」という言い方が使われ、言葉が広く知られるようになったと考えられます。
「不倶戴天」の原文・書き下し文・現代語訳
もとになったのは、『礼記(らいき)』の最初の篇「曲礼上(きょくらいじょう)」の一節です。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で読んでいきましょう。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方で説明しています。
1文目:父の讎
書き下し文父の讎は、与に共に天を戴かず。
(『礼記』曲礼上)
現代語訳父の仇(かたき)とは、いっしょに同じ天の下に生きることはしない。
2文目:兄弟の讎
書き下し文兄弟の讎は、兵を反さず。
(『礼記』曲礼上)
現代語訳兄弟の仇に出会ったときは、武器を取りに家へ戻ることはしない(いつも身につけておく)。
3文目:交遊の讎
書き下し文交遊の讎は、国を同じくせず。
(『礼記』曲礼上)
現代語訳友人の仇とは、同じ国に住むことはしない。
原文の字は「倶」ではなく「共」
原文をよく見ると、「倶(とも)に」にあたる字は「共」で、「弗與共戴天」(与に共に天を戴かず)となっています。中国語では今も「不共戴天」という4字の形がよく使われます。
日本の辞書では「父の讐(あだ)は倶(とも)に天を戴かず」と読み下して紹介されることが多く、日本ではこの「倶」の字を使った「不倶戴天」の形が定着しました。「不倶戴天」という4字の形が、いつ、どの本から使われ始めたのかは、はっきりした資料が見つかりませんでした(諸説あり)。
サクラちゃん
「倶」も「共」も「とも」と読むなら、意味は同じなんですか?
ミスターT先生
そう、どちらも「いっしょに」という意味だ。「倶」は「にんべん(人)」がついていて、「人がそろって、ともに」という感じが出る字だね。「倶楽部(クラブ)」の「倶」と言えば思い出しやすいかな。
出典『礼記』と話の背景
出典の『礼記(らいき)』は、儒家(じゅか)の人々が、礼(れい)=人としての正しいふるまいや、儀式・きまりについての考えをまとめた本です。漢の時代にまとめられ、儒家の大切な5つの本「五経(ごきょう)」の一つに数えられています。孔子・孟子など儒家の考え方は、諸子百家(儒家・道家・法家)の考え方で図にしています。
『礼記』には、「苛政は虎よりも猛し」(檀弓下)や「玉磨かざれば光なし」(学記)など、ほかの故事成語のもとになった言葉もたくさん入っています。「礼記」は「れいき」ではなく「らいき」と読むのがふつうです。
「曲礼」とはどんな篇か
「曲礼(きょくらい)」は、日々の細かなふるまいについての決まりを集めた篇です。目上の人の前での立ち方・すわり方、あいさつのしかた、食事の作法など、こまごまとした教えが並んでいます。「不倶戴天」のもとになった一節も、そうした「人としてのあるべき姿」の一つとして書かれています。
この一節で大切なのは、父・兄弟・友という関係の近さに応じて、態度の強さが変わるところです。父の仇とは「同じ天の下」にいない、兄弟の仇には「武器を取りに帰らない」、友の仇とは「同じ国」に住まない――と、だんだんゆるやかになっていきます。儒家は、親子・兄弟・友人という人と人とのつながりに順番をつけて考えたので、このような書き方になっています。
同じ『礼記』の檀弓上にも似た言葉がある
『礼記』には、もう一か所、よく似た言葉が出てきます。檀弓上(だんぐうじょう)という篇で、孔子の弟子の子夏(しか)が、「父母の仇に対しては、どのようにふるまうべきでしょうか」と孔子にたずねる場面です。孔子は、仕官もせずに喪に服するような暮らしを続け、「与(とも)に天下を共にせず」(同じ天下にはいっしょにいない)と答えています。
「天」が「天下」になっていますが、言っていることは曲礼上の「天を戴かず」とほぼ同じです。子夏はこのあと、兄弟の仇、いとこの仇についても順にたずね、孔子は関係が遠くなるほどゆるやかな態度を答えています。曲礼上の「父・兄弟・友」の3段階と、同じ考え方であることが分かります。「如之何(これをいかんせん)」は「どうしたらよいか」と方法をたずねる言い方で、疑問の句法(何如と如何のちがい)でくわしく説明しています。
漢文の「天」の意味
「不倶戴天」の「天」は、ただの空ではありません。昔の中国では、天は世の中のすべてをおおい、人の運命を決める大きな存在と考えられていました。「天下(てんか)」は世の中全体、「天命(てんめい)」は天があたえた運命や使命のことです。「天を戴く」は、その大きな天を頭の上にいただいて生きること、つまりこの世に生きていることを表しています。だからこそ「倶に天を戴かず」は、「この世にいっしょにいることさえしない」という、とても強い言葉になるのです。
「孝」と仇討ち
儒家は、親を大切にする「孝(こう)」を、もっとも大切な徳の一つとしました。親を殺された子が、そのうらみを忘れずにいることも、孝の表れと考えられていたのです。ただし、昔の中国でも、仇討ちをどこまで認めるかは時代によってちがい、法律で罰するべきか、孝行としてゆるすべきかが、たびたび議論されました。
うらみを忘れずに仇を討つ話としては、「臥薪嘗胆」もよく知られています。呉の王・夫差(ふさ)が、父のかたきである越の王・句践(こうせん)への恨みを忘れないよう、自分を苦しめて心をふるい立たせた、という話です(だれが何をしたかの組み合わせは本によってちがいます)。

サクラちゃん
「不倶戴天」は、こわい話というより、家族をどれだけ大切に思うかを表した言葉だったんですね。今は「とても強い言葉」だと分かって、使う場面を選ぶことが大事なんだ!
うらみを乗りこえる話もある
中国の古典には、深いうらみを乗りこえて手を取り合った話も残っています。たとえば「刎頸の交わり」の話では、趙の将軍・廉頗(れんぱ)が、出世した藺相如(りんしょうじょ)をうらみ、はずかしめようとしました。けれども藺相如は「二人が争えば国のためにならない」と言って争いを避け、それを知った廉頗は自分のあやまちをわびて、二人は生死をともにする親友になりました。
「不倶戴天」という強い言葉を学ぶときは、こうしたうらみを乗りこえた話もいっしょに知っておくと、言葉の重さと、人と人との関係の深さの両方がよく分かります。完璧の話も、同じ藺相如の物語です。
「不倶戴天」の使い方と例文・似た言葉
「不倶戴天」は、決して許すことのできない、深いうらみやにくしみのある相手を言う言葉です。「不倶戴天の敵(仇)」「不倶戴天の間がら」の形がほとんどです。歴史・小説・ニュースなどで、国どうしや組織どうしの深い対立を言うときにも使われます。
- ○源氏と平家は、長いあいだ不倶戴天の敵どうしだった。
- ○物語の終わりで、不倶戴天の仇だった二人が、ついに手を取り合う。
- ○二つの国は、かつての不倶戴天の関係を乗りこえ、友好条約を結んだ。
- ×昨日おやつを取り合った弟は、不倶戴天の敵だ。(ちょっとしたけんかに使うと大げさすぎる。冗談として以外は使わない)
- ×試合では負けたが、彼は不倶戴天の友だ。(「友」には使わない。ほめ合うライバルなら「好敵手」)
使うときに気をつけたいこと
「不倶戴天」は、相手をこの世にいてほしくないほどうらむという、とても強い言葉です。実在の人を指して「あの人は不倶戴天の敵だ」と言うと、聞いた人をおどろかせたり、言われた人を深く傷つけたりします。ふだんの会話や学校生活では、歴史の出来事や物語の登場人物について説明するときに使うのが安心です。
スポーツや勝負の世界で、長年競い合ってきた相手を言うときは、「宿敵」「好敵手(こうてきしゅ)」「ライバル」のほうが合っています。「好敵手」は、たがいに力を認め合うよい競争相手のことで、うらみの気持ちはふくみません。
英語では、mortal enemy(命がけの敵)、sworn enemy(ちかいを立てた敵)などが「不倶戴天の敵」に近い言い方です。
似た言葉
- 犬猿の仲(けんえんのなか):犬と猿のように、とても仲が悪いこと。「不倶戴天」ほどの深いうらみまでは言わないことが多い、やや軽い言い方です。
- 宿敵(しゅくてき):昔からの敵。長いあいだ争ってきた相手。スポーツのライバルにも使います。
- 仇敵(きゅうてき):うらみのある敵。「不倶戴天」に近い強い言葉です。
- 呉越同舟:仲の悪い者どうしが同じ場所にいること。呉と越は、まさに不倶戴天の間がらでした。
反対の言葉
- 竹馬の友:幼いころからいっしょに遊んで育った友だち。
- 管鮑の交わり:損得をこえて、たがいに理解し合う友情。
- 刎頸の交わり:相手のためなら命を失っても悔いのないほどの友情。刎頸之交とも書きます。
- 水魚の交わり:水と魚のように、離れられない親しい関係。
「不倶戴天」のよくあるまちがい
- 「不具戴天」と書く:「具」は「そなえる」「道具」の字で、意味がちがいます。正しくは「ともに」の意味の「倶」(にんべん)です。
- 「戴」を「載」と書く:「戴(いただく)」は頭の上にのせていただくこと。「載(のせる)」は車や本に「のせる」字で、別の字です。字の形は「戴」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。「天」は「天」の読み方・書き順・部首、「敵」は「敵」の読み方・書き順・部首へ。
- 「ふくたいてん」「ふぐうたいてん」と読む:正しくは「ふぐたいてん」です。
- 軽いけんかに使う:もとは親の仇についての言葉で、とても重い意味です。ふだんのちょっとした仲たがいには使いません。
- 「天を戴く」を「天をもらう」と訳す:「戴く」は、ここでは「頭の上にいただく」こと。「天を戴く」でこの世に生きていることを表します。
うかるくん
「不具」と「不倶」、パッと見ると同じに見えちゃいます…。
ミスターT先生
にんべんがあるかどうかを見よう。「倶」は「人といっしょに」の「ともに」、だから人べんだ。「倶に天を戴かず」と書き下しを覚えておけば、「倶」の字も自然に書けるようになるよ。
入試ではこう出る
- 中学受験・高校受験:四字熟語の読み(ふぐたいてん)と意味、「不倶戴□」の空らんを埋める問題、「倶」と「具」の書き分けがよく問われます。
- 大学受験:漢文では、「弗」「与」の読み方、「兵」が武器の意味であること、返り点のつけ方が問われやすいところです。評論文では「不倶戴天の敵」が、国どうし・考え方どうしの深い対立を表す言葉として出てきます。共通テストの漢文の全体像は共通テストの漢文(配点・時間配分)にまとめています。
練習問題
やさしい
- 「不倶戴天」の読み方をひらがなで書きましょう。
答えと解説を見る
ふぐたいてん。 - 「不倶戴天」の意味として正しいものを選びましょう。
ア 空の下で仲よく暮らすこと イ 同じ天の下に生きていられないほど、深くうらむこと ウ 天気が悪いこと エ 幼いころからの友だち答えと解説を見る
イ。エは「竹馬の友」の意味です。
ふつう
- 「不倶戴天」を返り点にしたがって書き下し文にしましょう。
答えと解説を見る
倶に天を戴かず。 - 「兄弟之讎、不反兵」の「兵」は、何を意味しますか。
答えと解説を見る
武器。漢文の「兵」は、兵士よりも武器を指すことが多い字です。
むずかしい
- 「父之讎、弗与共戴天」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
答えと解説を見る
書き下し文は「父の讎は、与に共に天を戴かず」。訳は「父の仇とは、いっしょに同じ天の下に生きることはしない」。 - 『礼記』曲礼上では、父の讎・兄弟の讎・交遊の讎に対する態度が、どのように書き分けられていますか。
答えと解説を見る
父の讎とは同じ天の下に生きない、兄弟の讎には武器を取りに家へ戻らない、友(交遊)の讎とは同じ国に住まない。関係が近いほど、強い態度が求められています。
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四字熟語としての読み・意味
『礼記』から生まれた故事成語(絵で読む)
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よくある質問
不倶戴天の意味を簡単に言うと何ですか?
同じ天の下にいっしょに生きてはいられないと思うほど、深いうらみやにくしみがあることです。「不倶戴天の敵」の形で、決して許せない相手を言うときに使います。
不倶戴天の出典は何ですか?
儒家の礼についての本『礼記』の曲礼上です。「父之讎,弗與共戴天」(父の讎は与に共に天を戴かず)という一節がもとになっています。
不倶戴天の書き下し文はどうなりますか?
「倶に天を戴かず」です。倶→天→戴→不の順に読み、「同じ空の下でいっしょに生きることはしない」という意味になります。
不倶戴天を「不具戴天」と書いてもよいですか?
まちがいです。「倶」は「ともに」という意味の字で、にんべんがつきます。「具」は「そなえる」という別の字です。
不倶戴天の反対の意味の言葉は何ですか?
竹馬の友、管鮑の交わり、刎頸の交わり、水魚の交わりなど、深い友情を表す言葉が反対の意味になります。
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出典・参考
- 原文:『礼記』曲礼上(維基文庫の本文で確認。原文の字は「共」)
- 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(一般的な読み方をもとにした一例)
- お話の絵・図:合格大作戦
最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



