
定番 教科書によく出る定番の段 第19段
徒然草の「折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ」から始まる段(第19段)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。
解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)
この段を30秒で(あらすじと要点)
- 兼好の主張:季節の移り変わりは、何につけてもしみじみと心ひかれる。春の花、夏の祭や夕顔、秋の雁や野分、冬枯れや年の暮れ、元日の門松まで、一年の行事と景色を順に挙げ、どの季節にもそれぞれの趣があると語る。
- 文法の要点:係り結び(こそ〜已然形、ぞ〜連体形)がとても多い。こそ〜已然形の逆接、推定「めり」、自発「らる」、反語「心細からぬかは」、打消推量「まじ」、存続「り」。
- テストの定番:教科書によく出る段。主題は冒頭の「折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ」。「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ」、古今異義語なまめかし・すさまじ・ののしるもよく問われる。



この段で覚える文法(テストに出る順)
- 主題:折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ
- こそ〜已然形、で文が続くと逆接(ほどこそあれ、・名にこそ負へれ、)
- 自発のらる(思ひ出でらるる)、推定のめり(言ふめれ・あめれ)
- 反語心細からぬかは、呼応をさをさ〜まじ=ほとんど〜ない
- 古今異義語なまめかし=優雅だ、すさまじ=興ざめだ、ののしる=大声で騒ぐ
第19段はどんな段?(四季の移り変わりと年末年始の行事)
第19段は、季節の移り変わりそのものに心ひかれる、と語る段です。春・夏・秋・冬の景色や行事を順に挙げ、最後は大晦日から元日の朝までを書いて、一年をひとめぐりします。
兼好は途中で、「こうした季節の趣は、もう『源氏物語』や『枕草子』で言いふるされている」と自分で認めます。それでも「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ(思うことを言わないのは、おなかがふくれるようで気持ちが悪い)」から書くのだ、と言います。ここは、序段の「書く理由」とも通じる大事な部分です。
後半には、御仏名・荷前の使ひ・追儺・四方拝など、年末年始の宮中行事がたくさん出てきます。また、大晦日に亡くなった人の魂をまつる習わしが、都ではすたれたのに東国には残っていた、という兼好自身の体験も書かれています。
※手元の古い本の「かいやり捨つべき」は、教科書で広く読まれる「かつ破り捨つべき」にしました。ほかにも「秋こそまされ」「春の景色にこそあめれ」など、かな・漢字の書き方を教科書でよく見る形にそろえています。
本文と現代語訳・文法(1文ずつ)
色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)
1
折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ。
現代語訳季節が移り変わっていくことこそ、何ごとにつけても、しみじみと心ひかれるものだ。
- この段の主題。係り結び:「こそ」を受けて、形容動詞「あはれなり」が已然形「あはれなれ」で結ぶ。→係り結びとは?ぞ・なむ・や・か・こそと結びの形
- 「折節」は「季節・そのときどき」。「移り変はる」の下に「こと」をおぎなって読む。
- 「あはれなり」は、しみじみと心を動かされるようす。→古今異義語の一覧(あはれ・をかし・すさまじ)

2
「もののあはれは秋こそまされ」と人ごとに言ふめれど、それもさるものにて、今一きは心も浮き立つものは、春の景色にこそあめれ。
現代語訳「しみじみとした情趣は秋がいちばんまさっている」とだれもが言うようだが、それももっともなことではあるが、いっそう心も浮き立つものは、春の景色であるようだ。
- 「言ふめれど」の「めり」は推定(〜ようだ)。目で見たようすから推しはかる助動詞。→推定の助動詞「めり」(見た目から〜ようだ)
- 「あめれ」は「あるめれ」が「あんめれ」となり、「ん」を書かない形。読むときは「あんめれ」。
- 「景色にこそあめれ」の「に」は、下に「あり」があるので断定「なり」の連用形(〜である)。→「に」の識別(断定・完了・格助詞)
- 「さるものにて」は「それはそれでもっともだが」。秋がよいという意見もみとめつつ、春をおしている。


3
鳥の声などもことのほかに春めきて、のどやかなる日影に、垣根の草萌え出づるころより、やや春深く霞みわたりて、花もやうやう気色だつほどこそあれ、折しも雨風うち続きて、心あわたたしく散り過ぎぬ。青葉になりゆくまで、よろづにただ心をのみぞ悩ます。
現代語訳鳥の声なども格別に春らしくなって、のどかな日の光の中で、垣根の草が芽を出すころから、だんだん春が深まって一面にかすみ、桜の花もしだいに咲きそうなようすになるちょうどそのときに、あいにく雨や風が続いて、(花は)あわただしく散ってしまう。青葉になっていくまで、何かにつけてただ心を悩ませるばかりだ。
- 「こそ〜已然形、」の逆接:「ほどこそあれ、」のように、こそ〜已然形で文が終わらずに続くときは「〜けれども」と逆接になる。→係り結びの注意(こそ〜已然形の逆接)
- 「やうやう」は「しだいに・だんだん」。「気色だつ」は「きざしが見える・(花が)咲きそうになる」。
- 「散り過ぎぬ」は文末なので完了「ぬ」の終止形。→「ぬ」の識別(完了と打消)
- 「心をのみぞ悩ます」は「ぞ」の結びで連体形(四段動詞なので終止形と同じ形)。


4
花橘は名にこそ負へれ、なほ梅の匂ひにぞ、いにしへのことも立ち返り恋しう思ひ出でらるる。山吹の清げに、藤のおぼつかなきさましたる、すべて、思ひ捨てがたきこと多し。
現代語訳橘の花は(昔をしのばせる花として)有名ではあるが、やはり梅の香りによって、昔のことも今に立ちもどって恋しく自然と思い出される。山吹がさっぱりと美しく咲き、藤の花がぼんやりとかすんだようにたれさがっているようすなど、すべて、心から捨てさりにくいものが多い。
- 「花橘は名にこそ負へれ」は、橘の花の香りが昔の人を思い出させるものとして和歌でよく詠まれ、名高いことをふまえる。「こそ〜負へれ、」と文が続くので、ここも逆接(有名ではあるが)。
- 「思ひ出でらるる」の「らる」は自発(自然と〜される)。「思ふ・思ひ出づ・しのぶ」など心の動きを表す語につくと自発が多い。→助動詞「る・らる」の4つの意味(自発・可能・受身・尊敬)
- 「恋しう」は「恋しく」のウ音便。「おぼつかなし」はここでは「ぼんやりしている」。→古文の音便(イ音便・ウ音便)

5
「灌仏のころ、祭のころ、若葉の梢涼しげに茂りゆくほどこそ、世のあはれも、人の恋しさもまされ」と人の仰せられしこそ、げにさるものなれ。
現代語訳「灌仏会のころや、賀茂の祭のころ、若葉の梢が涼しそうに茂っていくころこそ、世の中のしみじみとした情趣も、人恋しさもまさるものだ」と、ある方がおっしゃったのは、本当にそのとおりである。
- 「灌仏」は陰暦四月八日に釈迦の誕生を祝う行事、「祭」は京都の賀茂祭(葵祭)。古文で「祭」とだけあれば賀茂祭を指すことが多い。
- 係り結びが二つ:かぎかっこの中の「こそ〜まされ」と、外の「こそ〜なれ」。どちらも已然形で結ぶ。→係り結びとは?ぞ・なむ・や・か・こそと結びの形
- 「仰せられ」は尊敬語「仰す」+尊敬の「らる」。話した人への敬意。→敬語動詞の一覧(仰す・のたまふ・聞こゆ)
- 「げに」は「本当に・なるほど」。
6
五月、あやめ葺くころ、早苗取るころ、水鶏のたたくなど、心細からぬかは。六月のころ、あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊遣火ふすぶるもあはれなり。六月祓、またをかし。
現代語訳五月、(端午の節句に)菖蒲を軒にふくころ、早苗を取るころ、水鶏が戸をたたくような声で鳴くのなど、心細くないことがあろうか、いや心細い。六月のころ、粗末な家に夕顔の花が白く見えて、蚊遣火がくすぶっているのもしみじみとした趣がある。六月祓もまたおもしろい。
- 反語:「心細からぬかは」は「心細くないことがあろうか、いや心細い」。打消(ぬ)+反語(かは)で、強い肯定になる。→係り結びと反語(や・か・かは・やは)
- 「あやし」はここでは「身分が低い・粗末だ」。序段の「不思議だ」とはちがう意味。→古今異義語の一覧(あやし・あはれ・をかし)
- 「水鶏のたたく」は、水鶏(くいな)の鳴き声が戸をたたく音に似ていることから。「六月祓」は六月の末日に行う、半年のけがれをはらう行事。
- 「ふすぶる」は「くすぶる・けむる」。蚊遣火は、蚊を追いはらうためにたく火。


7
七夕祭るこそなまめかしけれ。やうやう夜寒になるほど、雁鳴きて来るころ、萩の下葉色づくほど、早稲田刈り干すなど、取り集めたることは秋のみぞ多かる。また、野分の朝こそをかしけれ。
現代語訳七夕の星をまつる行事は優雅である。しだいに夜の寒さを感じるようになるころ、雁が鳴いて(北から)渡って来るころ、萩の下の方の葉が色づくころ、早稲の田を刈って干すことなど、(趣深いことが)たくさん集まっているのは、秋がいちばん多い。また、野分(台風)の吹いた翌朝はおもしろい。
- 「なまめかし」は古今異義語。今の「色っぽい」ではなく、優雅だ・上品で美しい。→古今異義語の一覧(なまめかし・すさまじ・あさまし)
- 「秋のみぞ多かる」は「ぞ」の結びで、形容詞「多し」の連体形「多かる」。
- 「野分」は秋に吹く強い風(台風など)。「野分の朝」は、嵐の過ぎたあとの朝のようす。
8
言ひ続くれば、みな源氏物語・枕草子などにことふりにたれど、同じこと、また今さらに言はじとにもあらず。
現代語訳こうして言い続けると、どれもみな『源氏物語』や『枕草子』などで言いふるされてしまっていることだが、同じことを、今さらまた言うまいというのでもない。
- 「ことふる」は「言いふるされる・ありふれたものになる」。兼好は、季節の趣はすでに『源氏物語』や『枕草子』に書かれていると自分で認めている。
- 「言はじ」の「じ」は打消意志(〜まい)。「む」の打消にあたる助動詞。→打消推量の助動詞「じ・まじ」
- 「ふりにたれ」の「に」は完了「ぬ」の連用形。「〜にたり」「〜にけり」の「に」は完了と覚えておく。→「に」の識別(断定・完了・格助詞)
9
おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざなれば、筆にまかせつつ、あぢきなきすさびにて、かつ破り捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。
現代語訳思っていることを言わないのは、腹がふくれるような(すっきりしない)ことなので、筆にまかせて書きながら、つまらない慰みごととして、書くそばから破り捨てるはずのものなので、人が見るようなものでもない。
- 「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ」は、思うことを言わずにいるのはおなかがふくれるように気持ちが悪い、という意味で、有名な言い回し。兼好が「なぜ書くのか」を語っている。
- 「あぢきなし」は「つまらない・どうにもならない」、「すさび」は「慰みごと・気まぐれ」。序段の「よしなしごと」と同じく、自分の文章をへりくだって言っている。
- 「わざなれば」は断定「なり」の已然形+「ば」で「〜ことなので」。→断定の助動詞「なり・たり」
- 「かつ」は「〜するそばから・すぐに」。手元の古い本では「かいやり捨つべき」とあるが、教科書で広く読まれる「かつ破り捨つべき」の形にした。


10
さて、冬枯れの景色こそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。汀の草に紅葉の散りとどまりて、霜いと白うおける朝、遣水より煙の立つこそをかしけれ。
現代語訳さて、冬枯れの景色こそ、秋にはほとんど劣らないだろう。池の水ぎわの草に紅葉が散って止まっていて、霜がたいそう白く降りている朝、遣水から(湯気が)煙のように立ちのぼっているのは趣がある。
- 「をさをさ〜まじ(打消)」は「ほとんど〜ない」という呼応。「まじけれ」は打消推量「まじ」の已然形で、「こそ」の結び。→打消推量の助動詞「じ・まじ」
- 「おける」の「る」は、四段「おく」の已然形(e の音)につく存続「り」の連体形(〜ている)。→「り」の接続(サ未四已)
- 「汀」は水ぎわ、「遣水」は庭に引きこんだ小さな流れ。寒い朝、水面から湯気が立つようす。「白う」はウ音便。
11
年の暮れ果てて、人ごとに急ぎあへるころぞ、またなくあはれなる。すさまじきものにして見る人もなき月の、寒けく澄める二十日あまりの空こそ、心細きものなれ。
現代語訳年がすっかり暮れて、だれもかれもが(新年の準備に)急ぎあっているころは、このうえなくしみじみとした趣がある。興ざめなものとして見る人もいない月が、寒々と澄んでいる(十二月)二十日すぎの空は、もの寂しいものである。
- 「すさまじ」は古今異義語。今の「ものすごい」ではなく、興ざめだ・殺風景だ。本文にあるとおり、冬の月は興ざめなものとして、ながめる人がいなかった。→古今異義語の一覧(すさまじ・あはれ・をかし)
- 「ぞ〜あはれなる(連体形)」「こそ〜なれ(已然形)」と、係り結びが続く。「またなし」は「このうえない」。
- 「急ぎ」は、ここでは「(正月の)準備・用意」の意味。「急ぎあへる」は「みんなで準備している」。


12
御仏名、荷前の使ひ立つなどぞ、あはれにやんごとなき。公事ども繁く、春の急ぎに取り重ねて催し行はるるさまぞ、いみじきや。追儺より四方拝に続くこそ、おもしろけれ。
現代語訳御仏名の法会や、荷前の使いが出発することなどは、しみじみとして尊い。宮中の行事が多く、新春の準備と重なって行われるようすは、たいへんなものだよ。追儺から(元日の)四方拝へと続いていくのはおもしろい。
- ここからは年末の宮中行事。「御仏名」は十二月に仏の名をとなえて罪をはらう法会、「荷前の使ひ」は年末にその年の貢ぎ物を天皇の陵墓に届ける使い、「追儺」は大晦日の夜の鬼やらい(節分の豆まきのもと)、「四方拝」は元日の朝に天皇が四方を拝む儀式。
- 「やんごとなし」は「尊い・格別だ」。「公事」は朝廷の行事。「いみじきや」の「や」は詠嘆(〜だなあ)。
- 「ぞ〜やんごとなき」「ぞ〜いみじき」は連体形、「こそ〜おもしろけれ」は已然形の結び。→係り結びとは?ぞ・なむ・や・か・こそと結びの形
13
晦日の夜、いたう暗きに、松どもともして、夜半過ぐるまで、人の門たたき走りありきて、何事にかあらん、ことことしくののしりて、足を空にまどふが、暁がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、年のなごりも心細けれ。
現代語訳大晦日の夜、たいそう暗い中を、たいまつをともして、夜中過ぎまで、人の家の門をたたいて走りまわって、何ごとであろうか、大げさに大声で騒いで、足が地につかないほどあわてて走りまわっていたのが、明け方からは、さすがに音がしなくなってしまうのは、過ぎゆく年の名残も心細く感じられる。
- 「何事にかあらん」は「何ごとであろうか」。「に」は断定「なり」の連用形、「か」の結びで推量「む」が連体形「ん」になる。文中にはさまった挿入句。→「に」の識別(断定・完了・格助詞)
- 「ののしる」は古今異義語。今の「悪口を言う」ではなく、大声で騒ぐ。→古今異義語の一覧(ののしる・あさまし・すさまじ)
- 「なりぬる」は完了「ぬ」の連体形。「いたう」は「いたく」のウ音便。→完了の助動詞「つ・ぬ」の違い
- 「足を空にまどふ」は「足が地につかないほどあわてる」。年末の支払いや取り立てなどでかけまわっていたのだろう、という読み方がある。

14
亡き人の来る夜とて魂祭るわざは、このごろ都にはなきを、東のかたには、なほすることにてありしこそ、あはれなりしか。
現代語訳亡くなった人の魂が帰ってくる夜だといって、魂をまつる行事は、近ごろの都ではもうしないが、東国では、まだ行っていたのは、しみじみと心ひかれた。
- 「魂祭る」は、亡くなった人の魂をむかえてまつること。兼好のころ、大晦日に魂をまつる習わしは都ではすたれていたが、東国(関東)には残っていたと書いている。兼好は関東にも行ったことがあるとされる。
- 「ありし」「あはれなりしか」の「き」は過去。「き」は自分が直接体験した過去に使うことが多い。→過去の助動詞「き・けり」の違い
15
かくて明けゆく空の気色、昨日に変はりたりとは見えねど、ひきかへめづらしき心地ぞする。大路のさま、松立てわたして、はなやかにうれしげなるこそ、またあはれなれ。
現代語訳こうして明けていく(元日の)空のようすは、昨日と変わったとは見えないけれど、うって変わって新鮮な気持ちがする。都の大通りのようすは、門松をずらりと立てて、はなやかでうれしそうなのも、またしみじみと趣がある。
- 「見えねど」の「ね」は打消「ず」の已然形。下に逆接の「ど」がつく。完了「ぬ」の命令形「ね」とまちがえない。→「ね」の識別(打消と完了)
- 「ひきかへ」は「うって変わって」、「めづらし」は「新鮮だ・すばらしい」。
- 最後は「こそ〜あはれなれ」。第1段落の「こそ〜あはれなれ」と同じ形で、一年の話をきれいにしめくくっている。
春夏秋冬の移り変わりを図で確かめる(第19段の四季めぐり)

重要な古語(単語帳)
| 古語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 折節 | おりふし | 季節・そのときどき |
| あはれなり | あわれなり | しみじみと心ひかれる |
| さるものにて | さるものにて | それはそれでもっともだが |
| やうやう | ようよう | しだいに・だんだん |
| 気色だつ | けしきだつ | きざしが見える・(花が)咲きそうになる |
| おぼつかなし | おぼつかなし | ぼんやりしている・気がかりだ |
| げに | げに | 本当に・なるほど |
| あやし | あやし | 身分が低い・粗末だ(不思議だ、の意味もある) |
| なまめかし | なまめかし | 優雅だ・上品で美しい |
| 野分 | のわき | 秋に吹く強い風・台風 |
| ことふる | ことふる | 言いふるされる・ありふれる |
| あぢきなし | あじきなし | つまらない・どうにもならない |
| をさをさ〜打消 | おさおさ〜 | ほとんど〜ない |
| すさまじ | すさまじ | 興ざめだ・殺風景だ |
| ののしる | ののしる | 大声で騒ぐ |
テストに出る問題(答えは押すと開く)
問1 この段の主題を、本文の最初の一文で答えなさい。
「折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ。」
問2 「花もやうやう気色だつほどこそあれ、」の「こそ〜あれ、」はどんな意味になるか。
逆接(〜けれども)。「こそ〜已然形」で文が終わらずに続くときは逆接になる。
問3 「恋しう思ひ出でらるる」の「らるる」の意味を答えなさい。
自発(自然と〜される)。
問4 「心細からぬかは」を、反語に注意して現代語訳しなさい。
「心細くないことがあろうか、いや心細い。」
問5 「なまめかし」「すさまじ」「ののしる」の古文での意味をそれぞれ答えなさい。
なまめかし=優雅だ、すさまじ=興ざめだ・殺風景だ、ののしる=大声で騒ぐ。
問6 兼好は、季節の趣についての話がどんな作品で言いふるされていると述べているか。二つ答えなさい。
『源氏物語』と『枕草子』。
問7 「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざなれば」とはどういうことか。
思っていることを言わずにいるのは、腹がふくれるように気持ちがすっきりしないことなので(だから書く)、ということ。
問8 「昨日に変はりたりとは見えねど」の「ね」の文法的な説明を答えなさい。
打消の助動詞「ず」の已然形。下に接続助詞「ど」があるから。

徒然草「折節の移り変はるこそ」原文(全文・通し)
1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。
折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ。
「もののあはれは秋こそまされ」と人ごとに言ふめれど、それもさるものにて、今一きは心も浮き立つものは、春の景色にこそあめれ。
鳥の声などもことのほかに春めきて、のどやかなる日影に、垣根の草萌え出づるころより、やや春深く霞みわたりて、花もやうやう気色だつほどこそあれ、折しも雨風うち続きて、心あわたたしく散り過ぎぬ。青葉になりゆくまで、よろづにただ心をのみぞ悩ます。
花橘は名にこそ負へれ、なほ梅の匂ひにぞ、いにしへのことも立ち返り恋しう思ひ出でらるる。山吹の清げに、藤のおぼつかなきさましたる、すべて、思ひ捨てがたきこと多し。
「灌仏のころ、祭のころ、若葉の梢涼しげに茂りゆくほどこそ、世のあはれも、人の恋しさもまされ」と人の仰せられしこそ、げにさるものなれ。
五月、あやめ葺くころ、早苗取るころ、水鶏のたたくなど、心細からぬかは。六月のころ、あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊遣火ふすぶるもあはれなり。六月祓、またをかし。
七夕祭るこそなまめかしけれ。やうやう夜寒になるほど、雁鳴きて来るころ、萩の下葉色づくほど、早稲田刈り干すなど、取り集めたることは秋のみぞ多かる。また、野分の朝こそをかしけれ。
言ひ続くれば、みな源氏物語・枕草子などにことふりにたれど、同じこと、また今さらに言はじとにもあらず。
おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざなれば、筆にまかせつつ、あぢきなきすさびにて、かつ破り捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。
さて、冬枯れの景色こそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。汀の草に紅葉の散りとどまりて、霜いと白うおける朝、遣水より煙の立つこそをかしけれ。
年の暮れ果てて、人ごとに急ぎあへるころぞ、またなくあはれなる。すさまじきものにして見る人もなき月の、寒けく澄める二十日あまりの空こそ、心細きものなれ。
御仏名、荷前の使ひ立つなどぞ、あはれにやんごとなき。公事ども繁く、春の急ぎに取り重ねて催し行はるるさまぞ、いみじきや。追儺より四方拝に続くこそ、おもしろけれ。
晦日の夜、いたう暗きに、松どもともして、夜半過ぐるまで、人の門たたき走りありきて、何事にかあらん、ことことしくののしりて、足を空にまどふが、暁がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、年のなごりも心細けれ。
亡き人の来る夜とて魂祭るわざは、このごろ都にはなきを、東のかたには、なほすることにてありしこそ、あはれなりしか。
かくて明けゆく空の気色、昨日に変はりたりとは見えねど、ひきかへめづらしき心地ぞする。大路のさま、松立てわたして、はなやかにうれしげなるこそ、またあはれなれ。
徒然草「折節の移り変はるこそ」現代語訳(全文・通し)
季節が移り変わっていくことこそ、何ごとにつけても、しみじみと心ひかれるものだ。
「しみじみとした情趣は秋がいちばんまさっている」とだれもが言うようだが、それももっともなことではあるが、いっそう心も浮き立つものは、春の景色であるようだ。
鳥の声なども格別に春らしくなって、のどかな日の光の中で、垣根の草が芽を出すころから、だんだん春が深まって一面にかすみ、桜の花もしだいに咲きそうなようすになるちょうどそのときに、あいにく雨や風が続いて、(花は)あわただしく散ってしまう。青葉になっていくまで、何かにつけてただ心を悩ませるばかりだ。
橘の花は(昔をしのばせる花として)有名ではあるが、やはり梅の香りによって、昔のことも今に立ちもどって恋しく自然と思い出される。山吹がさっぱりと美しく咲き、藤の花がぼんやりとかすんだようにたれさがっているようすなど、すべて、心から捨てさりにくいものが多い。
「灌仏会のころや、賀茂の祭のころ、若葉の梢が涼しそうに茂っていくころこそ、世の中のしみじみとした情趣も、人恋しさもまさるものだ」と、ある方がおっしゃったのは、本当にそのとおりである。
五月、(端午の節句に)菖蒲を軒にふくころ、早苗を取るころ、水鶏が戸をたたくような声で鳴くのなど、心細くないことがあろうか、いや心細い。六月のころ、粗末な家に夕顔の花が白く見えて、蚊遣火がくすぶっているのもしみじみとした趣がある。六月祓もまたおもしろい。
七夕の星をまつる行事は優雅である。しだいに夜の寒さを感じるようになるころ、雁が鳴いて(北から)渡って来るころ、萩の下の方の葉が色づくころ、早稲の田を刈って干すことなど、(趣深いことが)たくさん集まっているのは、秋がいちばん多い。また、野分(台風)の吹いた翌朝はおもしろい。
こうして言い続けると、どれもみな『源氏物語』や『枕草子』などで言いふるされてしまっていることだが、同じことを、今さらまた言うまいというのでもない。
思っていることを言わないのは、腹がふくれるような(すっきりしない)ことなので、筆にまかせて書きながら、つまらない慰みごととして、書くそばから破り捨てるはずのものなので、人が見るようなものでもない。
さて、冬枯れの景色こそ、秋にはほとんど劣らないだろう。池の水ぎわの草に紅葉が散って止まっていて、霜がたいそう白く降りている朝、遣水から(湯気が)煙のように立ちのぼっているのは趣がある。
年がすっかり暮れて、だれもかれもが(新年の準備に)急ぎあっているころは、このうえなくしみじみとした趣がある。興ざめなものとして見る人もいない月が、寒々と澄んでいる(十二月)二十日すぎの空は、もの寂しいものである。
御仏名の法会や、荷前の使いが出発することなどは、しみじみとして尊い。宮中の行事が多く、新春の準備と重なって行われるようすは、たいへんなものだよ。追儺から(元日の)四方拝へと続いていくのはおもしろい。
大晦日の夜、たいそう暗い中を、たいまつをともして、夜中過ぎまで、人の家の門をたたいて走りまわって、何ごとであろうか、大げさに大声で騒いで、足が地につかないほどあわてて走りまわっていたのが、明け方からは、さすがに音がしなくなってしまうのは、過ぎゆく年の名残も心細く感じられる。
亡くなった人の魂が帰ってくる夜だといって、魂をまつる行事は、近ごろの都ではもうしないが、東国では、まだ行っていたのは、しみじみと心ひかれた。
こうして明けていく(元日の)空のようすは、昨日と変わったとは見えないけれど、うって変わって新鮮な気持ちがする。都の大通りのようすは、門松をずらりと立てて、はなやかでうれしそうなのも、またしみじみと趣がある。
徒然草「折節の移り変はるこそ」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)
よくある質問(徒然草の基本)
徒然草の作者は誰?
兼好法師(吉田兼好・卜部兼好)です。もとは朝廷に仕えた役人で、のちに出家しました。歌人としても知られます。
徒然草はいつの作品?
鎌倉時代の終わりごろ、1330年ごろにまとめられたとする説が有力ですが、諸説あります。
徒然草の冒頭(書き出し)は?
序段の「つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」です。
徒然草はどんな作品?
序段と243の段からなる随筆で、清少納言『枕草子』、鴨長明『方丈記』と並ぶ三大随筆の一つです。無常観(すべては移り変わるという考え)、人の生き方、季節の趣、おもしろい失敗談など、話題はさまざまです。
徒然草の目次(教科書に出る段)
徒然草の入口(教科書に出る段の一覧・作者兼好法師と無常観) 「定番」は教科書によく出る段です。
- 徒然草「つれづれなるままに」(序段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「いでや、この世に生まれては」(第1段)の原文・現代語訳
- 徒然草「あだし野の露消ゆる時なく」(第7段)の原文・現代語訳 定番
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本文は『徒然草』を、教科書で広く読まれる形にそろえ、新字体・歴史的仮名遣いに直したものです(参考にした古い本:Wikisource の徒然草、大正の『校註日本文學大系』)。徒然草は本によって語句が少しずつちがいます。段の番号は広く使われている番号(序段と第1〜243段)です。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。


