徒然草「家居のつきづきしく」(第10段)原文と現代語訳・文法|家居のつきづきしく、あらまほしきこそ(西行と鳶の縄)

ミスターT先生

第10段

徒然草の「家居のつきづきしく、あらまほしきこそ」から始まる段(第10段「家居のつきづきしく」)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。

解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)

この段を30秒で(あらすじと要点)

  • 兼好の主張:住まいはその人に似つかわしく理想的なのがよい。教養ある人の、古びて落ち着いた家は奥ゆかしいが、職人に作りこませたぜいたくな家は見苦しい。住まいを見れば人柄が分かる。屋根に縄を張った後徳大寺の大臣を西行は見限ったが、綾小路宮には烏から蛙を守るという理由があった。
  • 文法の要点:係り結び(こそ〜已然形・やは〜べき・か〜けん)、反語「やは・かは」、自発の「る・らる」(思はるる・おしはからるれ)、尊敬の「る」、最高敬語「せたまふ」、結びの省略(さばかりにこそ・てなん)。
  • テストの定番:「あらまほし」=理想的だ、「心にくし」=奥ゆかしい、「家居にこそ、ことざまはおしはからるれ」が主題、西行が参らなくなった理由がよく問われる。
うかるくん
うかるくん
T先生、「家居」って家のことですか? 住まいの話なんて、受験に関係あるんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
関係大ありや。この段は「家を見れば、住む人の人柄が分かる」という話や。後半には、歌人の西行が「鳶よけの縄」を見て、ある大臣を見限ったエピソードも出てくる。反語・自発・最高敬語と、文法もぎっしりやで。
サクラちゃん
サクラちゃん
縄一本で人を見限るって…。なんだか西行さん、きびしすぎませんか?

この段で覚える文法(テストに出る順)

  1. あらまほし=理想的だ、つきづきし=似つかわしい、心にくし=奥ゆかしい
  2. 反語やは〜べき・何かは〜べき(〜だろうか、いや〜ない)
  3. 自発のる・らる(思はるる・おしはからるれ・思ひ出でられ)
  4. 最高敬語悲しませたまひ(綾小路宮への敬意)
  5. 主題:家居にこそ、ことざまはおしはからるれ

「家居のつきづきしく」はどんな段?(住まいと人柄・西行と鳶の縄)

第10段は、住まいについて述べた段です。兼好は、教養のある人が落ち着いて暮らす、古びて飾り気のない家を「心にくし(奥ゆかしい)」とほめ、たくさんの職人に作りこませた、ぜいたくで人工的な家を「見苦しい」と批判します。そして「住まいを見れば、住む人の人柄はおしはかられる」とまとめます。

この考えの土台には、「この世は仮の宿り(一時の住まい)にすぎない」という無常観があります。どんなりっぱな家も、火事であっという間に煙になってしまうかもしれない。だからこそ、見せびらかすための家より、その人らしい自然な住まいがよい、というのです。

後半には、後徳大寺の大臣(藤原実定)が屋根に鳶よけの縄を張ったのを見て、歌人の西行が「心がせまい」と見限ったという話が出てきます。一方、兼好の時代に綾小路宮が縄を張ったのは、烏に池の蛙をとられるのを悲しんだためでした。兼好は最後に「後徳大寺の大臣にも理由があったのかもしれない」と書き、見た目だけで人を決めつけない姿勢を見せています。

1. 理想の住まい 人に似合い理想的な家居 2. 奥ゆかしい家 古びて自然な落ち着いた家 3. 見苦しい家 作りこんだぜいたくな家 4. 家と人柄 家居で人柄はおしはかられる 5. 西行と鳶 縄を見て大臣を見限る 6. 綾小路宮の縄 蛙を守るためならすばらしい
図1 徒然草「家居のつきづきしく」の流れ(6つの場面・ことがら)

本文と現代語訳・文法(1文ずつ)

色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)

1

家居のつきづきしく、あらまほしきこそ、仮の宿りとは思へど、興あるものなれ。

現代語訳住まいが(住む人に)似つかわしく、理想的であるのは、(この世は)仮の宿だとは思うけれど、おもしろいものである。

サクラちゃん
サクラちゃん
「仮の宿り」って、旅館のことですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
旅館やない。この世そのものが「一時の仮住まい」やという意味や。人はいつか死ぬし、家もいつかなくなる。これが徒然草によく出る無常観やで。

2

よき人の、のどやかに住みなしたる所は、さし入りたる月の色も、ひときはしみじみと見ゆるぞかし。

現代語訳教養のある身分の高い人が、ゆったりと住んでいる所は、さしこんでいる月の光も、いっそうしみじみと見えるものだよ。

  • 「よき人」は「身分が高く教養のある人」。「のどやかなり」は「ゆったりと落ち着いている」。
  • 「ぞかし」は文末で念をおす言い方(〜だよ)。

3

今めかしく、きららかならねど、木立もの古りて、わざとならぬ庭の草も心あるさまに、簀子・透垣のたよりをかしく、うちある調度も昔おぼえてやすらかなるこそ、心にくしと見ゆれ。

現代語訳当世風で、きらびやかではないけれど、木立がなんとなく古びていて、わざわざ手を入れたわけではない庭の草も趣のある様子で、簀子や透垣の配置もおもしろく、何気なく置いてある道具類も古風に感じられて落ち着いているのは、奥ゆかしいと思われる。

  • 「きららかならねど」の「ね」は打消「ず」の已然形。「ねど」で「〜ないけれど」。→打消の助動詞「ず」の活用(ね・ぬ)
  • 「心にくし」は今の「にくらしい」ではなく「奥ゆかしい・心ひかれる」。「今めかし」は「当世風だ・はなやかだ」。→古今異義語(心にくし・今めかし)
  • 「簀子」は寝殿造りの外側の縁側、「透垣」は板や竹で間をすかして作った垣根。「調度」は身の回りの道具・家具。
  • 「こそ〜見ゆれ」は係り結び。「見ゆ」はヤ行下二段で、已然形は「見ゆれ」。
うかるくん
うかるくん
「心にくし」って、「にくい」だから悪口ですよね?
ミスターT先生
ミスターT先生
逆や逆! 古文の「心にくし」は「奥ゆかしい・心ひかれる」というほめ言葉や。「こちらが気後れするほど、心の奥が見えない」→「奥ゆかしい」。古今異義語の代表選手や。

4

多くの工の、心を尽くしてみがきたて、唐の、大和の、めづらしく、えならぬ調度ども並べ置き、前栽の草木まで心のままならず作りなせるは、見る目も苦しく、いとわびし。

現代語訳多くの大工が、心をつくしてりっぱに仕上げ、中国のものや日本のものなど、めずらしくて、なんとも言えないほどすばらしい道具類を並べて置き、庭の植えこみの草木まで自然のままでなく作りあげているのは、見た目にも見苦しく、たいそう興ざめだ。

  • 「えならず」は「なんとも言えないほどすばらしい」。「え〜ず(できない)」から生まれた言い方で、「言いようもないほど」の意味。→呼応の副詞「え〜ず」
  • 「作りなせる」の「る」は存続「り」の連体形(四段「作りなす」の已然形につく)。→完了・存続の助動詞「たり・り」
  • 「わびし」は「つらい・興ざめだ」。人工的に作りこんだ家への、兼好のきびしい評価。

5

さてもやは長らへ住むべき。また、時の間の煙ともなりなんとぞ、うち見るより思はるる。

現代語訳そのようにして(いつまでも)長く住んでいられるだろうか、いや住めはしない。また、あっという間に(火事で)煙ともなってしまうだろうと、ちょっと見ただけで(自然と)思われる。

  • 「やは〜べき」は反語(〜できようか、いやできない)。「やは」「かは」が出てきたら、まず反語を疑う。→係り結びと反語(やは・かは)
  • 「なりなん」の「な」は強意、「ん」は推量で「きっと〜てしまうだろう」。→「なむ」の識別(強意+推量)
  • 「思はるる」の「るる」は自発(自然と〜される)。「思ふ」「しのぶ」など心の動きを表す動詞につく「る・らる」は自発が多い。→「る・らる」の自発の見分け方
  • 「時の間の煙」は、家が一瞬で火事に焼けてしまうこと。ぜいたくな家も、無常の前ではもろいという考え。
サクラちゃん
サクラちゃん
「さてもやは長らへ住むべき」は、「長く住むことができるだろう」でいいんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
「やは」を見落としたらあかん。「やは〜べき」は反語。「長く住めるだろうか、いや住めない」や。ぜいたくな家ほど、すぐ火事で煙になるかもしれん、と言うとる。反語の訳は「いや〜ない」まで書く。ここ、テストに出るで!

6

大方は、家居にこそ、ことざまはおしはからるれ。

現代語訳だいたいは、住まいによって、(住む人の)人柄は自然と推しはかられるものだ。

  • 「おしはからるれ」は自発「る」の已然形。係助詞「こそ」の結び。
  • 「ことざま」は「ようす・人柄」。この一文が、段の前半のまとめ。
合格先生
合格先生
T先生は「この段は家居にこそ、ことざまはおしはからるれの一文で答えられる」と言っていました。わたしは「部屋を見れば勉強の様子が分かる」と言われて、あわてて机を片づけました。

7

後徳大寺の大臣の、寝殿に鳶ゐさせじとて縄を張られたりけるを、西行が見て、「鳶のゐたらんは、何かは苦しかるべき。この殿の御心、さばかりにこそ。」とて、その後は参らざりけると聞きはべるに、

現代語訳後徳大寺の大臣が、寝殿に鳶をとまらせまいと縄をお張りになっていたのを、西行が見て、「鳶がとまっているようなことが、何の不都合があろうか、いや何もない。この殿のお心は、その程度なのだろう。」と言って、その後は(大臣の屋敷に)参上しなかったと聞いておりますが、

  • 「ゐさせじ」は「ゐる(すわる・とまる)+使役さす+打消意志じ」で「とまらせまい」。→打消意志・打消推量の「じ」
  • 「張られたりける」の「れ」は大臣への尊敬(お〜になる)。→「る・らる」の尊敬
  • 「何かは苦しかるべき」は反語(何の不都合があろうか、いやない)。「さばかりにこそ」は「あらめ」などの結びが省略された形。
  • 「聞きはべるに」の「はべる」は丁寧語で、書き手の兼好から読者への敬意。→「侍り」の丁寧語と謙譲語
  • 後徳大寺の大臣は藤原実定。西行は平安時代末の歌人で、もとは武士(北面の武士)だった人。
うかるくん
うかるくん
鳶をよけるために縄を張っただけで、どうして西行はおこったんですか?
ミスターT先生
ミスターT先生
鳶がとまるくらい、何が困るんや、と。つまり心がせまいと思ったんやな。「何かは苦しかるべき」は反語で「何の不都合があろうか、いやない」。そう思った西行は、二度とその屋敷に行かへんかった。
屋根に縄を張った寝殿と、それを見る西行(徒然草の古い絵)
屋根に縄を張った寝殿と、それを見る西行
出典:西川祐信 画『絵本徒然草(祐信画鑑)』上巻(国立国会図書館デジタルコレクション)

8

綾小路宮のおはします小坂殿の棟に、いつぞや縄を引かれたりしかば、かのためし思ひ出でられはべりしに、「まことや、烏の群れゐて池の蛙をとりければ、御覧じ悲しませたまひてなん。」と人の語りしこそ、さてはいみじくこそとおぼえしか。

現代語訳綾小路宮がお住まいになっている小坂殿の棟に、いつだったか縄をお張りになったので、あの(西行の)例が思い出されましたが、(ある人が)「そういえば、烏が群れてとまって池の蛙をとったので、(宮が)それをご覧になってお悲しみになって(縄を張られたのです)。」と話したのは、それならばすばらしいことだと思われた。

  • 「おはします」「御覧ず」「せたまふ」はどれも尊敬語で、綾小路宮への敬意。「悲しませたまひ」は尊敬「す」+尊敬「たまふ」が重なった最高敬語(二重尊敬)。→最高敬語(せたまふ・させたまふ)
  • 「引かれたりしかば」は「已然形+ば」で確定条件(〜たので)。「思ひ出でられ」の「られ」は自発(自然と思い出される)。
  • 「悲しませたまひてなん」は係助詞「なむ」のあとの結びが省略された形(「縄を引かせたまふ」などをおぎなう)。→「なむ」の識別(係助詞・願望・強意+推量)
  • 「人の語りしこそ…おぼえしか」で係り結び(過去「き」の已然形「しか」)。間の「いみじくこそ」は結びが省略されている。「まことや」は「そういえば」と話を思い出す言葉。
サクラちゃん
サクラちゃん
綾小路宮の縄は、カエルを守るためだったんですね! やさしい理由で安心しました。
ミスターT先生
ミスターT先生
そうや。見た目は同じ縄でも、理由がわかると評価が変わる。だから兼好は最後に、後徳大寺の大臣にも何か理由があったんちゃうか、と書いとるんや。敬語では「悲しませたまひ」が最高敬語やで。

9

後徳大寺にも、いかなる故かはべりけん。

現代語訳後徳大寺の大臣の場合にも、どのような理由があったのでございましょうか。

  • 「はべり」はここでは「あり」の丁寧語(あります・ございます)。「けん」は過去推量(〜ただろう)で、係助詞「か」の結び。→過去推量の助動詞「けむ」
  • 兼好は最後に、「後徳大寺の大臣にも、何か理由があったのかもしれない」と、すぐに人を決めつけない見方をしめしている。
合格先生
合格先生
T先生に「最後の一文で、兼好は人を決めつけない。そこまで読めたら記述問題も書ける」と教わりました。結論を急がないのも、兼好らしさなんです。

二つの縄の話を図で比べる(西行と後徳大寺の大臣・綾小路宮)

後徳大寺の大臣(昔の話) 綾小路宮(兼好の時代) 寝殿の屋根に縄を張る (鳶をとまらせないため) 小坂殿の棟に縄を張る (同じように見える) 西行「鳶がいて何が困る? 心がせまい人だ」 理由:烏が池の蛙を とるのを悲しまれた 西行はその後行かなくなった 兼好「それはすばらしい」 兼好の結び:後徳大寺にも何か理由があったのでは?
図2 屋根に縄を張った二つの話(見た目は同じでも、理由で評価が変わる)
ミスターT先生
ミスターT先生
同じ「屋根に縄を張る」でも、理由しだいで見え方がまるでちがう。兼好は西行の話を出しておいて、最後に「もしかしたら…」と考え直す。この流れを図で押さえたら、記述問題もこわくないで。

重要な古語(単語帳)

古語読み意味
家居いえい住まい・住居
つきづきしつきづきし似つかわしい・ふさわしい
あらまほしあらまほし理想的だ・望ましい
仮の宿りかりのやどり一時の住まい(この世)
よき人よきひと身分が高く教養のある人
今めかしいまめかし当世風だ・はなやかだ
心にくしこころにくし奥ゆかしい・心ひかれる
調度ちょうど身の回りの道具・家具
えならずえならずなんとも言えないほどすばらしい
前栽せんざい庭の植えこみ
わびしわびしつらい・興ざめだ
ことざまことざまようす・人柄
さばかりさばかりその程度
まことやまことやそういえば・ああ本当に
いみじいみじすばらしい・たいそう

テストに出る問題(答えは押すと開く)

問1 「家居のつきづきしく、あらまほしきこそ」の「あらまほし」の意味は?

「理想的だ・望ましい」。

問2 「心にくしと見ゆれ」の「心にくし」の意味は?

「奥ゆかしい・心ひかれる」。今の「にくらしい」とはちがう。

問3 「さてもやは長らへ住むべき」を現代語訳しなさい。

「そのようにして長く住んでいられるだろうか、いや住めない」。「やは〜べき」は反語。

問4 「家居にこそ、ことざまはおしはからるれ」の「るれ」の意味と活用形は?

自発の助動詞「る」の已然形。係助詞「こそ」の結び。

問5 西行が後徳大寺の大臣の屋敷に行かなくなったのはなぜか。

鳶をとまらせまいと縄を張ったのを見て、心のせまい人だと思ったから。

問6 綾小路宮が小坂殿の棟に縄を張った理由は何か。

烏が群れて池の蛙をとるのをご覧になって悲しまれたから。

問7 「悲しませたまひて」の敬語を説明しなさい。

尊敬の助動詞「す」+尊敬の補助動詞「たまふ」の最高敬語(二重尊敬)で、綾小路宮への敬意。

問8 最後の一文「後徳大寺にも、いかなる故かはべりけん」から分かる兼好の考えは?

後徳大寺の大臣にも何か理由があったのかもしれないと、見た目だけで人を決めつけない考え。

うかるくん
うかるくん
家を見れば人柄が分かる…。ぼくも、部屋を片づけてから勉強します!

徒然草「家居のつきづきしく」原文(全文・通し)

1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。

家居のつきづきしく、あらまほしきこそ、仮の宿りとは思へど、興あるものなれ。

よき人の、のどやかに住みなしたる所は、さし入りたる月の色も、ひときはしみじみと見ゆるぞかし。

今めかしく、きららかならねど、木立もの古りて、わざとならぬ庭の草も心あるさまに、簀子・透垣のたよりをかしく、うちある調度も昔おぼえてやすらかなるこそ、心にくしと見ゆれ。

多くの工の、心を尽くしてみがきたて、唐の、大和の、めづらしく、えならぬ調度ども並べ置き、前栽の草木まで心のままならず作りなせるは、見る目も苦しく、いとわびし。

さてもやは長らへ住むべき。また、時の間の煙ともなりなんとぞ、うち見るより思はるる。

大方は、家居にこそ、ことざまはおしはからるれ。

後徳大寺の大臣の、寝殿に鳶ゐさせじとて縄を張られたりけるを、西行が見て、「鳶のゐたらんは、何かは苦しかるべき。この殿の御心、さばかりにこそ。」とて、その後は参らざりけると聞きはべるに、

綾小路宮のおはします小坂殿の棟に、いつぞや縄を引かれたりしかば、かのためし思ひ出でられはべりしに、「まことや、烏の群れゐて池の蛙をとりければ、御覧じ悲しませたまひてなん。」と人の語りしこそ、さてはいみじくこそとおぼえしか。

後徳大寺にも、いかなる故かはべりけん。

徒然草「家居のつきづきしく」現代語訳(全文・通し)

住まいが(住む人に)似つかわしく、理想的であるのは、(この世は)仮の宿だとは思うけれど、おもしろいものである。

教養のある身分の高い人が、ゆったりと住んでいる所は、さしこんでいる月の光も、いっそうしみじみと見えるものだよ。

当世風で、きらびやかではないけれど、木立がなんとなく古びていて、わざわざ手を入れたわけではない庭の草も趣のある様子で、簀子や透垣の配置もおもしろく、何気なく置いてある道具類も古風に感じられて落ち着いているのは、奥ゆかしいと思われる。

多くの大工が、心をつくしてりっぱに仕上げ、中国のものや日本のものなど、めずらしくて、なんとも言えないほどすばらしい道具類を並べて置き、庭の植えこみの草木まで自然のままでなく作りあげているのは、見た目にも見苦しく、たいそう興ざめだ。

そのようにして(いつまでも)長く住んでいられるだろうか、いや住めはしない。また、あっという間に(火事で)煙ともなってしまうだろうと、ちょっと見ただけで(自然と)思われる。

だいたいは、住まいによって、(住む人の)人柄は自然と推しはかられるものだ。

後徳大寺の大臣が、寝殿に鳶をとまらせまいと縄をお張りになっていたのを、西行が見て、「鳶がとまっているようなことが、何の不都合があろうか、いや何もない。この殿のお心は、その程度なのだろう。」と言って、その後は(大臣の屋敷に)参上しなかったと聞いておりますが、

綾小路宮がお住まいになっている小坂殿の棟に、いつだったか縄をお張りになったので、あの(西行の)例が思い出されましたが、(ある人が)「そういえば、烏が群れてとまって池の蛙をとったので、(宮が)それをご覧になってお悲しみになって(縄を張られたのです)。」と話したのは、それならばすばらしいことだと思われた。

後徳大寺の大臣の場合にも、どのような理由があったのでございましょうか。

徒然草「家居のつきづきしく」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)

よくある質問(徒然草の基本)

徒然草の作者は誰?

兼好法師(吉田兼好・卜部兼好)です。もとは朝廷に仕えた役人で、のちに出家しました。歌人としても知られます。

徒然草はいつの作品?

鎌倉時代の終わりごろ、1330年ごろにまとめられたとする説が有力ですが、諸説あります。

徒然草の冒頭(書き出し)は?

序段の「つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」です。

徒然草はどんな作品?

序段と243の段からなる随筆で、清少納言『枕草子』、鴨長明『方丈記』と並ぶ三大随筆の一つです。無常観(すべては移り変わるという考え)、人の生き方、季節の趣、おもしろい失敗談など、話題はさまざまです。

徒然草の目次(教科書に出る段)

徒然草の入口(教科書に出る段の一覧・作者兼好法師と無常観) 「定番」は教科書によく出る段です。

ミスターT先生
ミスターT先生
次は第18段「人は己をつづまやかにし」。ひょうたん一つさえうるさいと捨てた、中国の許由という人の話や。ぜいたくをきらう兼好の考えがよう分かるで。お楽しみに!

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本文は『徒然草』を、教科書で広く読まれる形にそろえ、新字体・歴史的仮名遣いに直したものです(参考にした古い本:Wikisource の徒然草、大正の『校註日本文學大系』)。徒然草は本によって語句が少しずつちがいます。段の番号は広く使われている番号(序段と第1〜243段)です。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。