
第117段
徒然草の「友とするにわろき者、七つあり」から始まる段(「友とするにわろき者」・第117段)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。友だちにしてはいけない七つの者と、よい友だち三つを挙げた、短くて印象に残る段です。
解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)
この段を30秒で(あらすじと要点)
- 兼好の主張:友にするのによくない者は七つ(身分の高い人・若い人・病気をせず体の丈夫な人・酒好き・血気さかんな武士・うそつき・欲深い人)。よい友は三つ(物をくれる友・医師・知恵のある友)。理由は書かず、短く言い切る。
- 文法の要点:存続の助動詞「り」の連体形(勇める)、評価の言葉「よし・わろし」、「やんごとなし」「たけし」「虚言」などの古語。
- テストの定番:教科書の定番ではないが、「よき友三つ」の中身、「病なく身強き人」が悪い理由の読み取り、「勇める」の「る」の識別が問われやすい。



この段で覚える文法(テストに出る順)
- 存続のりの連体形(勇め+る)
- わろし=よくない(よし・よろし・わろし・あし)
- やんごとなし=身分が高い・尊い
- よき友は物くるる友・医師・知恵ある友
「友とするにわろき者」はどんな段?(兼好の人を見る目)
第117段は、徒然草の中でもとくに短い段の一つです。友にするのによくない者を七つ、よい友を三つ、数を示して一つずつ並べています。理由はひと言も書かれていないので、「なぜそう言えるのか」を考えるところに読む楽しさがあります。
よく言われる読み方を紹介します。身分の高い人とは対等につきあえず、気をつかう。若い人や血気さかんな武士は、思慮が浅く、むちゃをしがち。病気をしない丈夫な人は、弱い人の苦しみが分からない。酒好きは乱れやすく、うそつきや欲深い人は信用できない。一方、よい友の一つめに「物くるる友」を挙げるのは、きれいごとだけでない兼好のユーモアと本音だと読まれます。医師と知恵ある友は、病気や困りごとのときに本当に助けになる友です。
兼好は出家して、世の中から一歩はなれて暮らしました。それでも人づきあいをよく観察していたことが、この短い段から伝わってきます。
本文と現代語訳・文法(1文ずつ)
色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)
1
友とするにわろき者、七つあり。
現代語訳友だちにするのによくない者が、七つある。
- 「わろし」は「よくない・感心しない」。「あし(悪い)」よりも軽く、「よし」より下の「よろし」のさらに下、というくらいの評価。→古文の重要古語と古今異義語の一覧(よし・よろし・わろし・あし)
- 最初に「七つ」と数を出してから一つずつ挙げる、分かりやすい書き方。
2
一つには、高くやんごとなき人。二つには、若き人。三つには、病なく身強き人。四つには、酒を好む人。
現代語訳一つめには、身分が高く尊い人。二つめには、若い人。三つめには、病気をせず体の丈夫な人。四つめには、酒を好む人。
- 「やんごとなし」は「身分が高い・尊い」。もとは「やむごとなし(そのままにしておけない)」で、「大切だ・格別だ」の意味もある。
- 「病なく身強き人」が悪い友とされるのは意外に思える。なぜ悪いのか、兼好は理由を書いていない。


3
五つには、たけく勇める兵。六つには、虚言する人。七つには、欲深き人。
現代語訳五つめには、勇ましく血気にはやる武士。六つめには、うそをつく人。七つめには、欲の深い人。
- 「勇める」の「る」は、四段動詞「勇む」の已然形「勇め」についた存続の助動詞「り」の連体形(〜ている)。e の音+「る」は存続「り」、と覚えよう。→完了・存続の助動詞「たり・り」(サ未四已)
- 「たけし」は「勇ましい・強い」。「兵(つはもの)」は武士。手元の古い本(校註日本文學大系)では「勇める人」となっている。
- 「虚言(そらごと)」は「うそ・つくり話」。



出典:西川祐信 画『絵本徒然草(祐信画鑑)』中巻(国立国会図書館デジタルコレクション)
4
よき友、三つあり。
現代語訳よい友だちが、三つある。
- 悪い友の「七つ」に対して、よい友は「三つ」。数の差そのものにも、兼好のちょっとした皮肉が感じられる。
- 「よし」は「すぐれている・よい」で、「わろし」と反対の評価。
5
一つには、物くるる友。二つには、医師。三つには、知恵ある友。
現代語訳一つめには、物をくれる友。二つめには、医者。三つめには、知恵のある友。
- 「くるる」は下二段動詞「くる(呉る)」の連体形で「くれる・あたえる」。助動詞ではない。
- 「物くるる友」をいちばん最初に挙げるところに、兼好らしいユーモアと本音がある。医師・知恵ある友は、困ったときに本当に助けてくれる友。



わろき者七つ・よき友三つを図で整理する

重要な古語(単語帳)
| 古語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| わろし | わろし | よくない・感心しない |
| よし | よし | すぐれている・よい |
| やんごとなし | やんごとなし | 身分が高い・尊い・格別だ |
| 病 | やまい | 病気 |
| たけし | たけし | 勇ましい・強い |
| 勇む | いさむ | 勇み立つ・血気にはやる |
| 兵 | つわもの | 武士・兵士 |
| 虚言 | そらごと | うそ・つくり話 |
| 欲 | よく | 欲望 |
| くる(呉る) | くる | (物を)くれる・あたえる |
| 医師 | くすし | 医者 |
| 知恵 | ちえ | 物事の道理を見ぬく力 |
テストに出る問題(答えは押すと開く)
問1 「友とするにわろき者」の「わろし」の意味は?
よくない・感心しない(「あし」よりも軽い評価)。
問2 「高くやんごとなき人」の「やんごとなし」の意味は?
身分が高い・尊い。
問3 「たけく勇める兵」の「る」の文法的説明をしなさい。
存続の助動詞「り」の連体形。四段動詞「勇む」の已然形「勇め」に接続している。
問4 兼好が挙げた「よき友」三つを答えなさい。
物くるる友(物をくれる友)、医師、知恵ある友。
問5 「病なく身強き人」が友として悪いとされる理由として、よく言われる考えを答えなさい。
自分が病気をしないので、病人や弱い人の苦しみや気持ちが分からないから(本文に理由は書かれていない)。
問6 この段の書き方の特徴を答えなさい。
最初に「七つ」「三つ」と数を示し、「一つには〜」と一つずつ挙げていく、箇条書きのような書き方。

徒然草「友とするにわろき者」原文(全文・通し)
1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。
友とするにわろき者、七つあり。
一つには、高くやんごとなき人。二つには、若き人。三つには、病なく身強き人。四つには、酒を好む人。
五つには、たけく勇める兵。六つには、虚言する人。七つには、欲深き人。
よき友、三つあり。
一つには、物くるる友。二つには、医師。三つには、知恵ある友。
徒然草「友とするにわろき者」現代語訳(全文・通し)
友だちにするのによくない者が、七つある。
一つめには、身分が高く尊い人。二つめには、若い人。三つめには、病気をせず体の丈夫な人。四つめには、酒を好む人。
五つめには、勇ましく血気にはやる武士。六つめには、うそをつく人。七つめには、欲の深い人。
よい友だちが、三つある。
一つめには、物をくれる友。二つめには、医者。三つめには、知恵のある友。
徒然草「友とするにわろき者」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)
よくある質問(徒然草の基本)
徒然草の作者は誰?
兼好法師(吉田兼好・卜部兼好)です。もとは朝廷に仕えた役人で、のちに出家しました。歌人としても知られます。
徒然草はいつの作品?
鎌倉時代の終わりごろ、1330年ごろにまとめられたとする説が有力ですが、諸説あります。
徒然草の冒頭(書き出し)は?
序段の「つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」です。
徒然草はどんな作品?
序段と243の段からなる随筆で、清少納言『枕草子』、鴨長明『方丈記』と並ぶ三大随筆の一つです。無常観(すべては移り変わるという考え)、人の生き方、季節の趣、おもしろい失敗談など、話題はさまざまです。
徒然草の目次(教科書に出る段)
徒然草の入口(教科書に出る段の一覧・作者兼好法師と無常観) 「定番」は教科書によく出る段です。
- 徒然草「つれづれなるままに」(序段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「いでや、この世に生まれては」(第1段)の原文・現代語訳
- 徒然草「あだし野の露消ゆる時なく」(第7段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「家居のつきづきしく」(第10段)の原文・現代語訳
- 徒然草「神無月のころ」(第11段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「人は己をつづまやかにし」(第18段)の原文・現代語訳
- 徒然草「折節の移り変はるこそ」(第19段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「九月二十日のころ」(第32段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「五月五日、賀茂の競べ馬を」(第41段)の原文・現代語訳
- 徒然草「公世の二位のせうとに」(第45段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「亀山殿の御池に」(第51段)の原文・現代語訳
- 徒然草「仁和寺にある法師」(第52段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「これも仁和寺の法師」(第53段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「真乗院に、盛親僧都とて」(第60段)の原文・現代語訳
- 徒然草「筑紫に、なにがしの押領使」(第68段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「名を聞くより」(第71段)の原文・現代語訳
- 徒然草「世に語り伝ふること」(第73段)の原文・現代語訳
- 徒然草「人の心すなほならねば」(第85段)の原文・現代語訳
- 徒然草「奥山に、猫またといふもの」(第89段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「ある人、弓射ることを習ふに」(第92段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「荒れたる宿の」(第104段)の原文・現代語訳
- 徒然草「高名の木登り」(第109段)の原文・現代語訳 定番
- 友とするにわろき者(第117段・このページ)
- 徒然草「花は盛りに」(第137段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「能をつかんとする人」(第150段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「世に従はん人は」(第155段)の原文・現代語訳
- 徒然草「相模守時頼の母は」(第184段)の原文・現代語訳
- 徒然草「一事を必ずなさんと思はば」(第188段)の意味と現代語訳 定番
- 徒然草「平宣時朝臣」(第215段)の原文・現代語訳
- 徒然草「丹波に出雲といふ所あり」(第236段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「八つになりし年」(第243段)の原文・現代語訳 定番

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本文は『徒然草』を、教科書で広く読まれる形にそろえ、新字体・歴史的仮名遣いに直したものです(参考にした古い本:Wikisource の徒然草、大正の『校註日本文學大系』)。徒然草は本によって語句が少しずつちがいます。段の番号は広く使われている番号(序段と第1〜243段)です。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。


