
定番 教科書によく出る定番の段 第243段
徒然草の最後の段、「八つになりし年、父に問ひていはく」から始まる段(第243段「八つになりし年」)を、全文・現代語訳・文法でいっしょに読みます。
解説:ミスターT先生(京都大学文学部出身の古文の先生。合格大作戦のキャラクターの合格先生に古典を叩き込んだ師匠)
この段を30秒で(あらすじと要点)
- あらすじ:八歳の兼好が父に「仏とは何か」とたずね、答えを聞くたびに「その仏には誰が教えたのか」とさかのぼって質問した。最後に「最初の仏は?」と聞かれた父は答えられず、「空から降ったか、土から湧いたか」と笑い、あとで人々にうれしそうに話した。
- 文法の要点:係り結び(にか候ふらん・やらん・や降りけん)、丁寧語「候ふ・侍り」と尊敬語「たまふ」の敬意の方向、過去推量「けむ」、不可能の「え〜ず」、直接体験の過去「き」。
- テストの定番:教科書によく出る段で、徒然草の最後の段(第243段)。会話文の話し手と、敬語が誰から誰への敬意かがよく問われる。



この段で覚える文法(テストに出る順)
- 係り結び:いかなるものにか候ふらん・空よりや降りけん
- 丁寧語候ふ・侍り(会話の聞き手への敬意)と尊敬語たまふ
- 過去推量けむ(〜ただろう)
- 不可能のえ〜ず(え答へずなり侍りつ)
- 直接体験の過去き(興じき)=作者自身の思い出
「八つになりし年」はどんな段?(徒然草の最後の段・兼好と父)
「八つになりし年」は、徒然草の第243段、つまり最後の段です。作者の兼好法師が八歳だったころ、父と交わした「仏とは何か」という問答を書いています。兼好の家は卜部氏で、代々朝廷の神祇(神まつり)にかかわる家でした。
仏教では、人は仏の教えを受けて仏になると考えます。幼い兼好はそれを聞いて、「では、その仏に教えたのは?」「では、いちばん最初の仏は?」と、答えをさかのぼって問い続けました。答えが同じ形のくり返しになることに気づいた、するどい問いです。父は答えに困って笑いましたが、その後、人々にうれしそうに話して聞かせました。
出家して仏道に入った兼好が、徒然草の最後に、子どものころの「なぜ?」と問い続けた自分を書き残したことには、いろいろな読み方があります。ものごとを鵜呑みにせず、自分の頭で考える姿勢は、徒然草全体に通じるものだと言えます。
本文と現代語訳・文法(1文ずつ)
色の見方:過去 完了・存続 推量・推定・意志 使役・受身・尊敬 断定 打消 敬語 係りの語 結びの語(色の語にふれると説明が出ます)
1
八つになりし年、父に問ひていはく、「仏はいかなるものにか候ふらん。」と言ふ。父が言はく、「仏には人のなりたるなり。」と。
現代語訳(わたしが)八歳になった年、父にたずねて言うことには、「仏とはどのようなものでございましょうか。」と言う。父が言うことには、「仏には人がなったのだ。」と。
- 「いはく」は「言ふ」のク語法で「言うことには」。下にかぎかっこの言葉が続く合図。
- 「いかなるものにか候ふらん」は、疑問の係助詞「か」を受けて、結びが連体形「らん」になる係り結び。→係り結びの法則(ぞ・なむ・や・か・こそ)
- 「候ふ」は丁寧語(〜ございます)。話し手の幼い兼好から、聞き手の父への敬意。→敬語の方向(誰から誰への敬意か)
- 「なりたるなり」は、動詞「なる」+完了「たる」+断定「なり」。最後の「なり」は体言・連体形につく断定(〜のだ)。→「なり」の識別(断定・伝聞推定・動詞)


2
また問ふ、「人は何として仏にはなり候ふやらん。」と。父また、「仏の教へによりてなるなり。」と答ふ。
現代語訳また(わたしが)たずねる、「人はどのようにして仏になったのでございましょうか。」と。父はまた、「仏の教えによって(仏に)なるのだ。」と答える。
- 「何として」は「どのようにして」。疑問の言葉+係助詞「や」で、結びは連体形「らん」。→現在推量の助動詞「らむ」の意味
- 「なるなり」の「なる」は動詞(四段「なる」の連体形)、「なり」は断定の助動詞。同じ音が並ぶので、品詞を分けて見ることが大切。
3
また問ふ、「教へ候ひける仏をば、何が教へ候ひける。」と。また答ふ、「それもまた、先の仏の教へによりてなりたまふなり。」と。
現代語訳また(わたしが)たずねる、「(人に)教えたその仏には、何が教えたのでございますか。」と。(父は)また答える、「それもまた、その前の仏の教えによって(仏に)おなりになったのだ。」と。
- 「何が教へ候ひける」は、係助詞がないのに連体形で終わっている。疑問の言葉(何)を受けて、文末が連体形になる形。→過去の助動詞「き・けり」の活用
- 「なりたまふ」の「たまふ」は尊敬語(お〜になる)。話し手の父から、先の仏への敬意。同じ会話の中でも、子は父に丁寧語、父は仏に尊敬語を使っている。→「たまふ」の尊敬と謙譲の見分け方
- 「仏をば」の「をば」は、格助詞「を」に係助詞「は」がついて濁ったもの(〜を)。


4
また問ふ、「その教へ始め候ひける第一の仏は、いかなる仏にか候ひける。」と言ふ時、
現代語訳また(わたしが)たずねる、「その(いちばん最初に)教え始めた第一の仏は、どのような仏でございましたか。」と言った時、
- 「いかなる仏にか候ひける」の「に」は断定「なり」の連用形。「に+(係助詞)+あり・候ふ」の形は「〜である」と訳す。→「に」の識別(断定・完了・格助詞)
- ここで幼い兼好は「では、いちばん最初の仏は?」と問いをさかのぼらせた。答えが同じ形のくり返しになることを見ぬいた、するどい質問。

5
父、「空よりや降りけん、土よりや湧きけん。」と言ひて笑ふ。
現代語訳父は、「空から降ってきたのだろうか、土からわいて出たのだろうか。」と言って笑う。
- 「けん(けむ)」は過去推量(〜ただろう)。係助詞「や」を受けて連体形で結ぶ。「〜や〜けん、〜や〜けん」と同じ形を二つ並べている。→過去推量の助動詞「けむ」の意味
- 父は答えに困って、わざとおどけた返事をして笑った。答えられなくなったことを、笑いでごまかしている場面。


6
「問ひつめられて、え答へずなり侍りつ。」と諸人に語りて興じき。
現代語訳(父は)「(子に)問いつめられて、答えられなくなってしまいました。」と大勢の人に話して、おもしろがった。
- 「え〜ず」は不可能(〜できない)。「え答へずなり侍りつ」=「答えられなくなってしまいました」。→呼応の副詞(え〜ず・つゆ〜ず・さらに〜ず)
- 「侍り」は丁寧語(〜ます)。話し手の父から、聞き手の人々(諸人)への敬意。
- 文末の「興じき」は、自分が直接体験した過去を表す「き」。兼好が自分の子どものころを思い出して書いている。→「き」と「けり」の違い(直接体験と伝聞)
- 「興ず」は「おもしろがる」。父は困ったはずなのに、わが子の賢さをうれしそうに人に話していた。


図で確かめる問答の流れ(問いをさかのぼる八歳の兼好)

重要な古語(単語帳)
| 古語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| いはく | いわく | 言うことには |
| いかなり | いかなり | どのようだ |
| 候ふ | そうろう | 〜でございます(丁寧語) |
| 何として | なにとして | どのようにして |
| 先の | さきの | 以前の・前の |
| たまふ | たまう | お〜になる(尊敬語) |
| 湧く | わく | わき出る |
| 問ひつむ | といつむ | 問いつめる |
| え〜ず | え〜ず | 〜できない |
| 侍り | はべり | 〜ございます・〜ます(丁寧語) |
| 諸人 | もろびと | 大勢の人・人々 |
| 興ず | きょうず | おもしろがる |
テストに出る問題(答えは押すと開く)
問1 この段で、父に質問をしているのは誰か。
八歳のときの作者(兼好)自身。文末の過去「き」から、作者の直接体験だと分かる。
問2 「仏はいかなるものにか候ふらん」の係り結びを説明しなさい。
疑問の係助詞「か」を受けて、文末が現在推量「らむ(らん)」の連体形で結ばれている。
問3 「候ふ」の敬語の種類と、誰から誰への敬意かを答えなさい。
丁寧語。話し手の幼い兼好から、聞き手の父への敬意。
問4 「先の仏の教へによりてなりたまふなり」の「たまふ」は、誰から誰への敬意か。
尊敬語で、話し手の父から、先の仏への敬意。
問5 「空よりや降りけん」を現代語訳しなさい。
「空から降ってきたのだろうか」。「けん(けむ)」は過去推量。
問6 「え答へずなり侍りつ」の「え〜ず」の意味は?
不可能(〜できない)。「答えられなくなってしまいました」。
問7 父が「空よりや降りけん、土よりや湧きけん」と言って笑ったのはなぜか。
問いをさかのぼらせる子の質問に、最初の仏が何に教わったのかを答えられなくなり、おどけてごまかしたから。
問8 この段は徒然草全体の中でどこにある段か。
最後の段(第243段)。

徒然草「八つになりし年」原文(全文・通し)
1文ずつ区切らずに、原文を通して読みたい人・音読したい人のための全文です。
八つになりし年、父に問ひていはく、「仏はいかなるものにか候ふらん。」と言ふ。父が言はく、「仏には人のなりたるなり。」と。
また問ふ、「人は何として仏にはなり候ふやらん。」と。父また、「仏の教へによりてなるなり。」と答ふ。
また問ふ、「教へ候ひける仏をば、何が教へ候ひける。」と。また答ふ、「それもまた、先の仏の教へによりてなりたまふなり。」と。
また問ふ、「その教へ始め候ひける第一の仏は、いかなる仏にか候ひける。」と言ふ時、
父、「空よりや降りけん、土よりや湧きけん。」と言ひて笑ふ。
「問ひつめられて、え答へずなり侍りつ。」と諸人に語りて興じき。
徒然草「八つになりし年」現代語訳(全文・通し)
(わたしが)八歳になった年、父にたずねて言うことには、「仏とはどのようなものでございましょうか。」と言う。父が言うことには、「仏には人がなったのだ。」と。
また(わたしが)たずねる、「人はどのようにして仏になったのでございましょうか。」と。父はまた、「仏の教えによって(仏に)なるのだ。」と答える。
また(わたしが)たずねる、「(人に)教えたその仏には、何が教えたのでございますか。」と。(父は)また答える、「それもまた、その前の仏の教えによって(仏に)おなりになったのだ。」と。
また(わたしが)たずねる、「その(いちばん最初に)教え始めた第一の仏は、どのような仏でございましたか。」と言った時、
父は、「空から降ってきたのだろうか、土からわいて出たのだろうか。」と言って笑う。
(父は)「(子に)問いつめられて、答えられなくなってしまいました。」と大勢の人に話して、おもしろがった。
徒然草「八つになりし年」原文と現代語訳の印刷用ページ(A4・左右に並べて)
よくある質問(徒然草の基本)
徒然草の作者は誰?
兼好法師(吉田兼好・卜部兼好)です。もとは朝廷に仕えた役人で、のちに出家しました。歌人としても知られます。
徒然草はいつの作品?
鎌倉時代の終わりごろ、1330年ごろにまとめられたとする説が有力ですが、諸説あります。
徒然草の冒頭(書き出し)は?
序段の「つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」です。
徒然草はどんな作品?
序段と243の段からなる随筆で、清少納言『枕草子』、鴨長明『方丈記』と並ぶ三大随筆の一つです。無常観(すべては移り変わるという考え)、人の生き方、季節の趣、おもしろい失敗談など、話題はさまざまです。
徒然草の目次(教科書に出る段)
徒然草の入口(教科書に出る段の一覧・作者兼好法師と無常観) 「定番」は教科書によく出る段です。
- 徒然草「つれづれなるままに」(序段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「いでや、この世に生まれては」(第1段)の原文・現代語訳
- 徒然草「あだし野の露消ゆる時なく」(第7段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「家居のつきづきしく」(第10段)の原文・現代語訳
- 徒然草「神無月のころ」(第11段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「人は己をつづまやかにし」(第18段)の原文・現代語訳
- 徒然草「折節の移り変はるこそ」(第19段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「九月二十日のころ」(第32段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「五月五日、賀茂の競べ馬を」(第41段)の原文・現代語訳
- 徒然草「公世の二位のせうとに」(第45段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「亀山殿の御池に」(第51段)の原文・現代語訳
- 徒然草「仁和寺にある法師」(第52段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「これも仁和寺の法師」(第53段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「真乗院に、盛親僧都とて」(第60段)の原文・現代語訳
- 徒然草「筑紫に、なにがしの押領使」(第68段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「名を聞くより」(第71段)の原文・現代語訳
- 徒然草「世に語り伝ふること」(第73段)の原文・現代語訳
- 徒然草「人の心すなほならねば」(第85段)の原文・現代語訳
- 徒然草「奥山に、猫またといふもの」(第89段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「ある人、弓射ることを習ふに」(第92段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「荒れたる宿の」(第104段)の原文・現代語訳
- 徒然草「高名の木登り」(第109段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「友とするにわろき者」(第117段)の原文・現代語訳
- 徒然草「花は盛りに」(第137段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「能をつかんとする人」(第150段)の原文・現代語訳 定番
- 徒然草「世に従はん人は」(第155段)の原文・現代語訳
- 徒然草「相模守時頼の母は」(第184段)の原文・現代語訳
- 徒然草「一事を必ずなさんと思はば」(第188段)の意味と現代語訳 定番
- 徒然草「平宣時朝臣」(第215段)の原文・現代語訳
- 徒然草「丹波に出雲といふ所あり」(第236段)の原文・現代語訳 定番
- 八つになりし年(第243段・このページ) 定番

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本文は『徒然草』を、教科書で広く読まれる形にそろえ、新字体・歴史的仮名遣いに直したものです(参考にした古い本:Wikisource の徒然草、大正の『校註日本文學大系』)。徒然草は本によって語句が少しずつちがいます。段の番号は広く使われている番号(序段と第1〜243段)です。現代語訳・解説・問題・図は合格大作戦のオリジナルです。挿絵は著作権の切れた古い絵です(それぞれの絵の下に出典)。文法の用語は合格大作戦の古文文法辞典に合わせています。


